JP2010111338A - 車輌ドアの戸挟み防止装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1に、戸挟み事故が防止可能となり、第2に、スペース面にも優れ容易に取付け可能であり、第3に、しかも耐久性,メンテナンス性,信頼性,コスト面等にも優れた、車輌ドアの戸挟み防止装置を提案する。
【解決手段】この戸挟み防止装置4は、鉄道等の軌道車輌において、自動ドアAによる戸挟み事故を防止する。そして、ドアAの前端部に付設され、閉鎖されたドアAによる戸挟みを検出するセンサ3と、センサ3への給電を実施すべく、車輌本体B側とドアA側とに対をなして付設された非接触給電装置5と、を備えている。非接触給電装置5は、車輌本体B側の1次側7からドアA側の2次側8に、エアギャップ13を存し近接対応位置して、電力を供給する。1次側7および2次側8は、コイル9,10が、渦巻き状に巻回されたフラット構造よりなり、磁心コア11,12も、フラットな平板状をなしている。
【選択図】図1

Description

本発明は、車輌ドアの戸挟み防止装置に関する。すなわち、鉄道等の軌道車輌において、自動ドアによる戸挟み事故を防止する、戸挟み防止装置に関するものである。
《技術的背景》
鉄道等の軌道車輌において、車輌の自動ドアは、多くの場合、車掌室の車掌が開閉操作するようになっている。
これに対し、閉鎖されたドアによる戸挟み事故、更には打撲事故や、戸挟みに起因した引摺り事故が多発しており、戸挟み事故の防止は緊急テーマとなっている。
《従来技術》
戸挟み事故の防止対策としては、まず、車掌や駅員による確認作業が重要である。しかしながら、車掌や駅員の注意力には限界があり、見落とし,確認ミス,確認困難等々の事態発生も予測され、戸挟み事故の防止対策として完全ではない。
又、一旦開放されたドアが実際に閉鎖されたか否かは、車輌本体側に設けられた戸閉まりセンサに基づく表示により、確認されるようになっている。しかしながら、この戸閉まりセンサでは、大雑把なドア位置しか検出できず、戸挟み事故の防止対策として完全ではない。
これらに対し、根本的な戸挟み事故の防止対策としては、戸挟みを検出する専用センサを、ドア前端部に設けることが考えられる。もって、この専用センサが戸挟みを検出した場合に、閉鎖されたドアを再開するシステムが考えられる。
しかしながら、このような戸挟み検出用の専用センサは、実用化されてはいない。
上述したように、ドアに戸挟み検出用の専用センサを設ける対策は、未だ実用化されていない。その理由としては、次の諸点が考えられる。
《ケーブル方式,その他の方式について》
まず、専用センサへの給電用や専用センサからの検出情報伝達用の配線ケーブルに関し、耐久性に問題が指摘されていた。すなわち、車輌のドアは開閉頻度が非常に高く、配線ケーブルの断線や接触不良が懸念されており、耐震動性にも問題がある等、耐久性に不安が指摘されていた。
これに対し、専用センサ用の配線ケーブルに代えて電池、更には無線や光伝送を採用することも検討されたが、前者は、メンテナンス性,信頼性,コスト面に問題があり、後者も、誤作動や検出ミスが懸念され、信頼性に問題があった。
《非接触給電方式について》
そこで、専用センサへの給電用として、最近開発された非接触給電装置の利用も検討されたが、車輌への適用に関しては、取付けスペース面等に大きな難点があり、採用には至っていない。
すなわち、従来の非接触給電装置は、構成が複雑であると共に凹凸構造が必須的であり、大型となりスペースを取るのに対し、設置対象となるドアおよび車輌本体側のドア上戸袋付近は、スペース的に極めて狭く,限られており、その配置は困難視されていた。
更に、これらに関連して、従来の非接触給電装置は、既存車輌への組込み,取付けが容易でない、という問題もあった。又、このような専用センサへの給電問題と共に、専用センサからの検出情報伝達が容易でない、という問題もあった。
《先行技術文献情報》
このような非接触給電装置としては、例えば、次の特許文献1に示されたものが挙げられる。
特開平6−256505号公報
《本発明について》
本発明の車輌ドアの戸挟み防止装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、戸挟み事故が防止可能となり、第2に、スペース面にも優れ容易に取付け可能であり、第3に、しかも耐久性,メンテナンス性,信頼性,コスト面等に優れた、車輌ドアの戸挟み防止装置を提案することを、目的とする。
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の車輌ドアの戸挟み防止装置は、鉄道等の軌道車輌において、自動ドアによる戸挟み事故を防止する。
そして、該ドアの前端部に付設され、閉鎖された該ドアによる戸挟みを検出するセンサと、該センサへの給電を実施すべく、車輌本体側と該ドア側とに対をなして付設された非接触給電装置と、を備えている。
該非接触給電装置は、該車輌本体側の1次側から該ドア側の2次側に、エアギャップを存し非接触で近接対応位置して、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、電力を供給可能である。そして、該1次側および該2次側は、コイルが、渦巻き状に巻回された環状のフラット構造よりなり、該コイルが配設される磁心コアが、フラットな平板状をなしていること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の車輌ドアの戸挟み防止装置では、請求項1において、該非接触給電装置は、該2次側が、該ドアの上端部に付設されている。又、該1次側が、該車輌本体のドア開口部の上戸袋について、該ドアが閉鎖された場合に該2次側上に対向可能な位置に、付設されていること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。請求項3の車輌ドアの戸挟み防止装置では、請求項2において、該非接触給電装置は、該1次側のコイルおよび磁心コアが、該2次側のコイルおよび磁心コアより、左右開閉方向の長さが長目に設定されていること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の車輌ドアの戸挟み防止装置では、請求項2において、該非接触給電装置の該1次側の給電回路を利用して、該ドア側の該センサの検出情報が、該車輌本体側の制御部に入力される。もって、該車輌本体側において、その表示や、閉鎖された該ドアのドアモータを駆動しての再開が可能となっていること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5の車輌ドアの戸挟み防止装置では、請求項2において、該ドアには更に、戸挟みの解除スイッチが付設されている。そして該解除スイッチは、該非接触給電装置により給電可能であると共に、そのスイッチオン操作に基づき、閉鎖された該ドアのドアモータを駆動しての再開が可能となっていること、を特徴とする。
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)鉄道等の軌道車輌では、ドアが閉鎖され、その旨が確認されてから、車輌が発車する。
(2)ところで、いわゆる戸挟み発生の場合も、ドアが閉鎖されその旨が確認されるが、戸挟みは検出されない。
(3)そこで本発明では、戸挟み検出専用のセンサを、採用してなる。
(4)これと共に本発明では、このセンサへの給電用およびセンサからの検出情報伝達用に、非接触給電装置を採用してなる。ドアが閉鎖されると、非接触給電装置の2次側が、車輌本体側の1次側に対向位置して、給電と情報伝達が行われる。
(5)もって、センサが戸挟みを検出すると、検出情報が、ドア側から車輌本体側へと伝達され、閉鎖されたドアを再開可能そして戸挟みを解消可能となる。
(6)なお、センサについて、薄物は戸挟みとして検出しない設定とした場合は、ドアに戸挟み解除スイッチを付設しておき、そのスイッチオン操作により、ドアを再開可能,戸挟みを解消可能としておくと良い。この解除スイッチの給電と情報伝達は、センサに準じる。
(7)本発明で採用された非接触給電装置は、コイルが環状フラット構造よりなり、磁心コアもフラットな平板状をなし、全体的に凹凸がなく、扁平化,コンパクト化,簡単化されている。もって、スペース的に極めて狭く限られたエリアしか存しない、ドアおよび車輌本体側の上戸袋に対し、容易に取付け可能である。
(8)又、この戸挟み防止装置では、車輌本体側とドア側間を非接触のまま、給電や情報伝達が行われるので、断線,接触不良,耐震動性,誤作動,検出ミス等の虞は回避され、ドアの取外しも容易である。
(9)なお、2次側より1次側を、左右開閉方向に長目に設定しておくと、給電可能範囲や情報伝達可能範囲が余裕をもって広くなり、もって、戸挟みの早期検出,戸挟み対象物への衝撃低下,エアギャップのガタ変動への対応、等の面に優れるようになる。
(10)さてそこで、本発明の車輌ドアの戸挟み防止装置は、次の効果を発揮する。
《第1の効果》
第1に、戸挟み事故が防止可能となる。すなわち、本発明の車輌ドアの戸挟み防止装置では、ドアに戸挟み検出専用のセンサが付設されると共に、車輌本体側を1次側としドア側を2次側とする非接触給電装置にて、センサの給電とセンサ検出情報の伝達とが行われる。
センサが、戸挟みを検出すると、検出情報が車輌本体側に入力され、もって閉鎖されたドアを再開して、戸挟みを解消可能となっている。
従って、前述したこの種従来例のように、車掌や駅員の注意力のみに頼ることなく、その見落とし,確認ミス,確認困難等があっても、確実に戸挟み事故を防止可能となり、引摺り事故や打撲事故も解消される。
なお、この戸挟み検出用のセンサについて、薄物は戸挟みとして検出しない設定としておくと、戸挟み検出過多による車輌の運行遅れ発生が防止される。その場合には、ドアに戸挟み解除スイッチを付設しておき、これにより閉鎖されたドアを再開可能としておくと良い。
《第2の効果》
第2に、スペース面にも優れており、容易に取付け可能である。すなわち、本発明の車輌ドアの戸挟み防止装置では、ドアに付設されたセンサの給電と検出情報伝達とを、非接触給電装置にて実施する。
そして、この非接触給電装置は、コイルが渦巻き状のフラット構造よりなり、磁心コアもフラットな平板状をなしている。
従って、設置対象であるドア、および車輌本体側のドア上戸袋に対し、容易に取付け可能である。スペース的に極めて狭く,限られたエリアではあるが、改造等を要せず追加取付け可能である。前述したこの種従来例の非接触給電装置のように、大型,複雑,凹凸構造に起因して、取付け困難となることはない。
既存車輌への組込みも、戸挟み解除スイッチを除外すれば、ドア内部の改造等を要すことなく、容易に追加組込み可能である。
《第3の効果》
第3に、しかも耐久性,メンテナンス性,信頼性,コスト面等に優れている。すなわち、本発明の車輌ドアの戸挟み防止装置では、ドア側のセンサや解除スイッチの給電と情報伝達とを、非接触給電装置にて実施する。
従って、配線ケーブルにて実施する場合に比し、断線や接触不良発生の虞がなく、耐震動性にも不安がない等、耐久性に優れている。又、ドアの取外しも容易であり、ドアのメンテナンス性にも優れている。
更に、構成が簡単容易であり、給電や検出情報伝達を、電池や,無線,光伝達にて実施する場合に比し、メンテナンス性,信頼性,コスト面等に優れており、特に誤作動や検出ミス発生等の虞も少ない。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
《図面について》
以下、本発明の車輌ドアの戸挟み防止装置を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1,図2,図3は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして図1は、全体の正面図である。図2は、非接触給電装置を示し、(1)図は、要部の正面図、(2)図は、要部の側面図、(3)図は、要部の側面図である。図3は、非接触給電装置の回路図である。
図4,図5は、非接触給電装置の一般的説明に供する。そして図4は、正面図、図5は、斜視図である。
《車輌のドアA等の一般例について》
まず、本発明の前提となる鉄道等の軌道車輌のドアA等について、図1を参照して、一般的に説明する。
鉄道等の軌道車輌では、図示したように、左右を開閉方向として可動であると共に、両開き式で自動式のドアAが、一般的に採用されている。そしてドアAは、車輌本体B側に搭載されたドアモータ(図示せず)により、駆動伝達機構を介し開閉される。
そして、ドアAの閉鎖は、車輌本体B側のドア開口部の上戸袋Cに設けられた既存の戸閉まりセンサ(例えば、ドアA閉鎖位置に対応設置されたリミットスイッチ)(図示せず)にて、検出可能となっている。戸閉まりセンサの検出結果は、車掌室にてランプ表示され、車掌がドア閉のランプ表示を確認した後、車輌が発車するシステムとなっている。
ドアAの前端部については、中央部に、軟質縁ゴム1が添設されると共に、足元下部と頭上上部に、硬質縁ゴム2が添設されている。中央部の軟質縁ゴム1は、人体に衝突した場合の打撲,怪我防止用とされ、下部と上部の硬質縁ゴム2は、小さい物でも戸閉まりセンサによる検出を可能とする。
そこで、左右ドアAの軟質縁ゴム1間で、例えば25mm以下の厚さの物が挟まった場合でも、ドアAは閉鎖され、戸閉まりセンサが、ドアAの閉鎖を検出するようになっている。25mmは、軟質縁ゴム1の常態からの弾性変形による屈曲寸法である(なお、この寸法は両開き方式の両ドアA間についてであり、その一方側のドアAに関して観察した場合は、半分の12.5mmとなる)。
これに対し、例えば25mmを越える物が挟まった場合は、ドアAは閉鎖されず、戸閉まりセンサはドアA閉鎖を検出しない。
車輌のドアA等は、一般的にこのようになっている。
《戸挟み検出用のセンサ3について》
以下、本発明について説明する。本発明の車輌ドアAの戸挟み防止装置4は、上述した鉄道等の軌道車輌の自動式のドアAについて、ドアAによる戸挟み事故を防止する。
そして、ドアAの前端部に付設され、閉鎖されたドアAによる戸挟みを検出するセンサ3と、このセンサ3への給電等を実施すべく、車輌本体B側とドアA側とに対をなして付設された非接触給電装置5と、を備えている。
そこでまず、図1を参照して、この戸挟み防止装置4の戸挟み検出用のセンサ3について、詳細に説明する。
このセンサ3は、ドアA前端部の中央部の軟質縁ゴム1に、内蔵されている。すなわちセンサ3は、例えばコードスイッチよりなり、ドアA前縁の軟質縁ゴム1取付面に縦に添設されており、その検出情報に基づき、一旦閉鎖されたドアAを、ドアモータを駆動して再開可能となっている。
そしてセンサ3は、具体的には例えば5mm〜25mmの物の戸挟みを、検出可能な設定となっている。すなわち、まず軟質縁ゴム1の弾性変形による屈曲寸法である例えば25mm以下の物(一方側のドアAに関しては、12.5mm以下の物)が、ドアA間に挟まれた場合、このセンサ3は、これを戸挟みとして検出可能となっている。
これに対し、例えば5mm未満の物(一方のドアAに関しては、2.5mm未満の物)が挟まった場合は、このセンサ3は、これを戸挟みとしては検出しない設定よりなる。
その理由としては、まず、衣服のスソ等の薄物(5mm未満の物)が、両ドアAの軟質縁ゴム1間に挟まれた場合、多くの場合は乗客が自力で容易に抜き出して、戸挟みを解消することが可能であり、戸挟みとして検出する必要性は低い。更に、このような場合も、戸挟みとして検出して、いちいちドアAの再開を行うようにすると、検出過多,再開過多となり、車輌の運行遅れの原因ともなる。これらによりセンサ3は、例えば5mm未満の物の場合は、戸挟みとして検出しないようになっている。
なお、例えば25mmを越える物がドアA間に挟まれた場合は、ドアAは閉鎖されておらず、戸閉まりセンサはドアA閉鎖を検出しない。もって、ドアA閉鎖での戸挟みを検出するためのセンサ3も、検出しない設定となる。
戸挟み検出用のセンサ3は、このようになっている。
《戸挟みの解除スイッチ6について》
次に、図1を参照して、この戸挟み防止装置4の戸挟み解除スイッチ6について、説明する。例えば上述した戸挟み検出用のセンサ3の設定に鑑み、図示した戸挟み防止装置4では、ドアAについて更に、戸挟みの解除スイッチ6が付設されている。
そして解除スイッチ6は、非接触給電装置5により給電可能であると共に、そのスイッチオン操作に基づき、閉鎖されたドアAのドアモータを駆動しての再開が、可能となっている。
この解除スイッチ6について、更に詳述する。前述したように戸挟み検出用のセンサ3は、5mm以下の薄物が両ドアAの軟質縁ゴム1間に挟まれた場合、これを戸挟みとは認識,検出しない設定となっている。
しかしながら5mm以下の物でも、乗客が自力で抜き出して戸挟みを解消することが、困難なケースもある(例えば、装飾品のペンダントのチェーン部分が挟まれたケース)。更に、両ドアAの硬質縁ゴム2間で挟まれたケースでは、抜けない虞も十分ある。
そこで、この戸挟み防止装置4では、これらのケースについて、ドアAに設けた戸挟み解除用の解除スイッチ6を、乗客が自らスイッチオン操作することにより、閉鎖されたドアAを一旦再開し、もって乗客が自分で戸挟みを解消することが可能となっている。勿論、車掌が再開操作するようにすることも、可能である。
なお、この解除スイッチ6によるドアAの再開は、挟まれた物を引き抜ける程度の幅寸法、つまり必要最小限の開寸法に設定される。ドアA再開を契機とした駆け込み乗車による、車輌の運行遅れを防止するためである。
戸挟みの解除スイッチ6は、このようになっている。
《非接触給電装置5の概要について》
次に、図1,図2を参照して、この戸挟み防止装置4の非接触給電装置5について、その概要を説明する。
この戸挟み防止装置4では、センサ3への給電およびセンサ3からの検出情報伝達が、車輌本体B側とドアA側とに対をなして付設された非接触給電装置5にて、実施される。
非接触給電装置5の1次側7および2次側8は、それぞれコイル9,10が、渦巻き状に巻回された環状フラット構造よりなる。コイル9,10が配設される磁心コア11,12も、フラットな平板状をなす。
そして非接触給電装置5は、まず、車輌本体B側の1次側7からドアA側の2次側8に向け、エアギャップ13を存し非接触で近接対応位置して、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、電力を供給可能である。エアギャップ13寸法は、車輌ドアAの場合はガタを見込んで、例えば6mm程度とされる。
非接触給電装置5の2次側8は、ドアAの上端部に付設されている。1次側7は、車輌本体Bのドア開口部の上戸袋Cについて、ドアAが閉鎖された場合に2次側8に対向可能な位置に、付設されている。
すなわち、受電側,ピックアップ側の2次側8は、図示例では、ドアA上端部の前側上に付設されている。これに対し、給電側,トラック側の1次側7は、車輌本体B側の上戸袋C内において、ドアAが閉鎖された場合にドアA側の2次側8に、対向する位置に配設されている。
なお、このような図示例によらず、2次側8を、ドアA上端部の中央上や後側上に付設するようにしてもよい。1次側7は、勿論、これに対応する位置に配設される。
非接触給電装置5は、概略このようになっている。
《非接触給電装置5の詳細について》
次に、この非接触給電装置5の詳細について、電磁誘導の相互誘導作用,1次側7や2次側8の構造,1次側7の長目設定の順に、説明する。
まず、図5を参照して、非接触給電装置5の電磁誘導の相互誘導作用について、説明する。非接触給電装置5において、電磁誘導の相互誘導作用に基づき電力を供給することは、公知公用である。
すなわち給電に際し、近接対応位置する1次側7のコイル9と、2次側8のコイル10との間で、コイル9での磁束形成により、コイル10に誘導起電力を生成させ、もって、コイル9からコイル10へと電力を供給することは、公知公用である。
相互誘導作用について更に詳述すると、まず、定置された1次側7のコイル9に対し、2次側8のコイル10が、接触することなしに間隙空間であるエアギャップ13を介して、近接対応位置する。そして、1次側7のコイル9に、交流を励磁電流として通電することにより、電流に比例した磁界がその導線の周囲に生じ、磁束がコイル9の面に対して直角方向に形成される。
このように1次側7のコイル9で形成された磁束が、2次側8のコイル10を貫き鎖交することにより、2次側8のコイル10に、電磁誘導による誘導起電力が生成される。このようにして磁場が形成され、磁界を利用して電力が送受される。コイル9側の磁束の磁気回路と、コイル10側の磁束の磁気回路とは、相互間に磁束の磁気回路つまり磁路が形成されて、電磁結合される。
非接触給電装置5では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、給電が実施される。
次に、図2,図4を参照して、この非接触給電装置5の1次側7および2次側8の構造について、説明する。
まず、1次側7について述べる。1次側7のコイル9は、給電回路14を介し電源に接続されている。コイル9は、略平板状で複数回ターン方式のフラット構造をなす。
すなわちコイル9は、それぞれ、絶縁されたコイル導線が、同一平面において相互間で並列化され平行位置関係を維持しつつ、円形(図4を参照)や方形(図2の(1)図を参照)の渦巻き状に複数回巻回ターンされる(例えば30T)。もって、全体的に凹凸のない平坦で肉厚の薄い扁平状のフラット構造をなすと共に環状をなしており、中央部に空間が形成されている。車輌への適用に際しては、方形環状とされることが多い。
磁心コア11としては、フェライトコアが一般的に用いられ、強磁性体よりなる。磁心コア11は、コイル9,10間のインダクタンスを増し電磁結合を強化すると共に、形成される磁束を誘導,収集,方向付けすべく機能する。そしてコイル9より大きな面積よりなり、フラットな平板状や環状をなし、コイル9と同心に配置される。
次に、2次側8は、上述した1次側7のコイル9,給電回路14,磁心コア11等に対応した、コイル10,給電回路15,磁心コア12等を、備えている。
そして、1次側7および2次側8は、それぞれ、エアギャップ13側から順に、樹脂製表面カバー(図示せず)、コイル9,10、磁心コア11,12、ベースプレート16,17等が、配されている。
ベースプレート16,17は、フラットな平板状をなし、アルミプレート等の透磁率の低い金属製よりなり、強度サポート用兼磁気遮蔽用として機能する。図4の例で図示されたモールド樹脂18は、例えばシリコン樹脂製よりなり、コイル9,10や磁心コア11,12の位置決め固定用,機械的強度確保用,放熱用等として用いられている。発泡材19は、モールド樹脂18中に混入,埋め込まれており、軽量化用に用いられている。
次に、図1,図2の(1)図を参照して、この非接触給電装置5の1次側7の長目設定について、説明する。
図示の非接触給電装置5では、1次側7のコイル9および磁心コア11が、2次側8のコイル10および磁心コア12より、ドアAの左右開閉方向に沿った長さが、長目に設定されている。
すなわち、図示の1次側7および2次側8のコイル9,10は、略長方形の環状(トラックフィールド状)をなし、磁心コア11,12は、これに見合った長方形の平板状をなしている。
そして、1次側7のコイル9や磁心コア11は、2次側8のコイル10や磁心コア12と寸法比較すると、上下縦方向の寸法が同一寸法よりなるのに対し、左右横方向の寸法つまりドアAの開閉方向に沿った寸法が、より長く設定されている。このように、1次側7は2次側8より長目に設定されている。
非接触給電装置5の詳細は、このようになっている。
《回路等について》
次に、図3を参照して、この非接触給電装置5の電気回路等について、説明する。
まず、1次側7のコイル9は、電源回路である給電回路14を介し、電源20に接続されている。電源20としては、数Vで数kHz程度、例えば、5Vで3kHz程度の高周波インバータが使用され、24Vの直流電源に接続されている。21は、電源20に接続された制御電源である。給電回路14には、共振同調用に組み合わされたインダクタ22と直列コンデンサ23が付設されると共に、並列コンデンサ24も付設されている。
これに対し、2次側8のコイル10は、共振用の並列コンデンサ25を介した後、戸挟み検出用のセンサ3と戸挟みの解除スイッチ6と終端抵抗26とに、並列接続されており、これらに給電可能となっている。
そして更に、車輌本体B側では、1次側7の給電回路14は、インダクタ22,コンデンサ23,24とコイル9との間で分岐され、制御部27へと接続されている。
すなわち、ドアA側の2次側8のセンサ3,解除スイッチ6,その他の状態変化の情報信号が、2次側8の給電回路15を介し、車輌本体B側の1次側7の給電回路14において、電圧変化としてあらわれる。このように、非接触給電装置5を利用した非接触信号伝達技術が採用されている。
そして、それらの信号が、制御部27に送出されて情報処理される。まず、制御部27の整流回路28で整流された後、各コンパレーター29で信号レベルの判定が実施され、制御部27での判定に基づき、図示例では、次のa.断線検出作動,b.戸挟み検出作動,c.戸挟み解除作動等が、実施される。
回路等は、このようになっている。
《各作動について》
上述した各作動について、図3を参照して説明する。
まずa.断線検出作動が実施可能となっている。すなわち、ドアA側つまり2次側8の給電回路15やセンサ3等において、もしも断線つまり通電不能事態が発生した場合は、その旨が、車輌本体B側のドア開口部付近で、断線状態である旨が例えばランプ表示される。
又b.戸挟み検出作動が実施可能である。すなわち、2次側8の給電回路15の戸挟み検出用のセンサ3の検出情報は、前述により、ドアA側から車輌本体B側の制御部27に入力される。
そして制御部27にて、戸挟み状態と判定された場合は、戸挟み検出作動が実施される。例えば、車輌本体B側のドア開口部付近や車掌室において、戸挟み状態である旨がランプ表示される。これと共に、車掌がドアモータに駆動オン信号を送出操作して、ドアモータを駆動せしめ、もって、閉鎖されたドアAを再開させることになる。なお、自動的にドアモータを駆動して、ドアAを再開させるようにしてもよい。
更にc.戸挟み解除作動が実施可能である。すなわち、2次側8の給電回路15の戸挟み解除用の解除スイッチ6のスイッチオン情報は、前述により、ドアA側から車輌本体B側の制御部27に入力される。
そして制御部27にて、スイッチオン状態と判定された場合は、戸挟み解除作動が実施される。例えば、車輌本体B側のドア開口部付近や車掌室において、解除スイッチ6がスイッチオンされた旨がランプ表示される。これと共に、自動的にドアモータが駆動され、もって閉鎖されたドアAが再開される。車掌がドアモータを駆動操作して、ドアAを再開させるようにしてもよい。
各作動は、このように実施される。
《作用等》
本発明の車輌ドアAの戸挟み防止装置4は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)鉄道等の軌道車輌では、ドアAがドアモータの駆動により、開放されそして閉鎖される。戸閉まりセンサにてドアAの閉鎖が検出され、これが確認されると、車輌が発車するようになっている。
(2)ところで、ドアAの前端部については、中央部に軟質縁ゴム1が、上下部に硬質縁ゴム2が、添設されている(図1を参照)。
そこで、ドアAの軟質縁ゴム1の所で物が挟まれた際、その物が、軟質縁ゴム1の弾性変形による屈曲寸法(両開き方式のドアAの場合、例えば25mm)以下の寸法であった場合、ドアAは閉鎖され、戸閉まりセンサがドアA閉鎖を検出する。つまり従来、このような戸挟みは一切検出されていなかった。
(3)そこで本発明では、戸挟み防止装置4が採用されており、ドアA前端部の軟質縁ゴム1に、戸挟み検出専用のセンサ3が内蔵,付設されている(図1を参照)。
このセンサ3は、前記弾性変形の屈曲寸法以下の物がドアAに挟まれた場合、これを戸挟みとして検出する。
(4)そして本発明では、このセンサ3への給電用,並びにセンサ3からの検出情報伝達用として、非接触給電装置5が採用されている(図1,図2を参照)。
すなわち、ドアAが閉鎖されると、非接触給電装置5のドアA上端部の2次側8が、車輌本体B側の上戸袋Cの1次側7に、対向位置し、もって、対向位置する1次側7と2次側8間で、給電と情報伝達が行われるようになっている。
(5)さて、このようにして、ドアA閉鎖に際し給電されたセンサ3が、ドアAの戸挟みを検出すると、その検出情報が、ドアA側から車輌本体B側の制御部27へと、非接触給電装置5の給電回路14,15等を利用して伝達される(図1,図3を参照)。
もって、閉鎖されていたドアAを、ドアモータの駆動により再開可能、そして戸挟みを解消可能となっている。
(6)なお、戸挟み検出用のセンサ3について、薄物(両開き方式のドアAの場合、例えば5mm以下)は、戸挟みとして検出しない設定とした場合、つまり、制御部27が薄物は戸挟みとは判定しない設定とした場合については、次の通り。
このような設定とした場合は、ドアAに戸挟み解除スイッチ6を付設しておき、そのスイッチオン操作により、ドアモータを駆動してドアAを再開可能、そして薄物の戸挟みを解消可能としておくと良い(図1を参照)。なお、戸挟み解除スイッチ6の給電と情報伝達は、センサ3の場合に準じ非接触給電装置5にて実施される。
(7)ところで、本発明で採用された非接触給電装置5は、車輌本体B側を1次側7とし、ドアA側を2次側8とすると共に、そのコイル9,10が、渦巻き状の環状フラット構造よりなり、その磁心コア11,12も、フラットな平板状をなしている(図2,図4を参照)。
この非接触給電装置5は、このように構成が、全体的に凹凸のない扁平化,コンパクト化,簡単化されている。
もって、スペース的に極めて狭い隙間しか存せず、厳しく限られたエリアしか存しないドアA、および、全く同様の状況にある車輌本体B側のドア開口部の上戸袋Cに対し、この非接触給電装置5は容易に取付け可能である。
(8)又、この戸挟み防止装置4では、ドアA側のセンサ3や解除スイッチ6に関する給電と情報伝達とを、車輌本体B側を1次側7としドアA側を2次側8とする非接触給電装置5にて、実施する(特に図2を参照)。
このように、車輌本体B側とドアA側との間を非接触のまま、給電や情報伝達が行われるので、断線,接触不良,耐震動性等に関する不安は回避される。又、ドアAの取外しも容易であり、誤作動や検出ミス等の発生リスクも低下する。
(9)なお、図示の非接触給電装置5では、2次側8より1次側7が、ドアAの左右開閉方向に沿い、長目に設定されている(図1,図2の(1)図を参照)。つまり2次側8は、広い範囲で1次側7に対向位置となっている。
このような設定により、1次側7と2次側8間で、給電や情報伝達が行える範囲を、余裕をもって広く取ることが可能となる。戸挟みの場合でも、1次側7と2次側8がズレずに対応位置可能となる。従って、次のa,b,cのようになる。
まずa.他のドアAが完全に閉鎖される前の早い段階で、戸挟みしているドアAを、センサ3にて検出できるようになる。もって、戸挟みドアAの早期再開により、車輌の運行遅れ発生が回避される。
又b.このように早い段階で戸挟みを、センサ3にて検出できるので、自動再開方式を併用すれば、戸挟み対象物への押圧衝撃力が最小で済み、打撲事故も削減される。
更にc.形成磁束に幅が生じるので、エアギャップ13の寸法変動、つまり車輌本体B側の1次側7とドアA側の2次側8との間において、ガタによる間隔寸法変動発生に対する許容度も、向上する。
本発明の作用等は、このようになっている。
本発明に係る車輌ドアの戸挟み防止装置について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、全体の正面図である。 同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、非接触給電装置を示し、(1)図は、要部の正面図、(2)図は、要部の側面図、(3)図は、要部の側面図である。 同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、非接触給電装置の回路図である。 非接触給電装置の一般的説明に供し、正面図である。 非接触給電装置の一般的説明に供し、斜視図である。
符号の説明
1 軟質縁ゴム
2 硬質縁ゴム
3 センサ
4 戸挟み防止装置
5 非接触給電装置
6 解除スイッチ
7 1次側
8 2次側
9 コイル
10 コイル
11 磁心コア
12 磁心コア
13 エアギャップ
14 給電回路
15 給電回路
16 ベースプレート
17 ベースプレート
18 モールド樹脂
19 発泡材
20 電源
21 制御電源
22 インダクタ
23 コンデンサ
24 コンデンサ
25 コンデンサ
26 終端抵抗
27 制御部
28 整流回路
29 コンパレーター
A ドア
B 車輌本体
C 上戸袋

Claims (5)

  1. 鉄道等の軌道車輌において、自動ドアによる戸挟み事故を防止する装置であって、該ドアの前端部に付設され、閉鎖された該ドアによる戸挟みを検出するセンサと、該センサへの給電を実施すべく、車輌本体側と該ドア側とに対をなして付設された非接触給電装置と、を備えており、
    該非接触給電装置は、該車輌本体側の1次側から該ドア側の2次側に、エアギャップを存し非接触で近接対応位置して、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、電力を供給可能であり、
    該1次側および該2次側は、コイルが、渦巻き状に巻回された環状のフラット構造よりなり、該コイルが配設される磁心コアが、フラットな平板状をなしていること、を特徴とする、車輌ドアの戸挟み防止装置。
  2. 請求項1に記載した戸挟み防止装置において、該非接触給電装置は、該2次側が、該ドアの上端部に付設されており、
    該1次側が、該車輌本体のドア開口部の上戸袋について、該ドアが閉鎖された場合に該2次側上に対向可能な位置に、付設されていること、を特徴とする、車輌ドアの戸挟み防止装置。
  3. 請求項2に記載した戸挟み防止装置において、該非接触給電装置は、該1次側のコイルおよび磁心コアが、該2次側のコイルおよび磁心コアより、左右開閉方向の長さが長目に設定されていること、を特徴とする、車輌ドアの戸挟み防止装置。
  4. 請求項2に記載した戸挟み防止装置において、該非接触給電装置の該1次側の給電回路を利用して、該ドア側の該センサの検出情報が、該車輌本体側の制御部に入力され、
    もって、該車輌本体側において、その表示や、閉鎖された該ドアのドアモータを駆動しての再開が可能となっていること、を特徴とする、車輌ドアの戸挟み防止装置。
  5. 請求項2に記載した戸挟み防止装置において、該ドアには更に、戸挟みの解除スイッチが付設されており、
    該解除スイッチは、該非接触給電装置により給電可能であると共に、そのスイッチオン操作に基づき、閉鎖された該ドアのドアモータを駆動しての再開が可能となっていること、を特徴とする、車輌ドアの戸挟み防止装置。
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