JP2010105004A - 銅または銅合金線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】品質の良い銅または銅合金線を安定して製造する。
【解決手段】坩堝11内に銅または銅合金の原料を連続的または断続的に供給し、前記原料を坩堝11内で加熱溶融した後、坩堝11の下部に取着した鋳型12から、凝固した銅または銅合金からなる線材16を引出す銅または銅合金線の製造方法であって、鋳型12内で溶解または半凝固状態にある前記銅または銅合金の鋳型12の内周面に対する圧力をほぼ一定に保持する。
【選択図】図1A
【解決手段】坩堝11内に銅または銅合金の原料を連続的または断続的に供給し、前記原料を坩堝11内で加熱溶融した後、坩堝11の下部に取着した鋳型12から、凝固した銅または銅合金からなる線材16を引出す銅または銅合金線の製造方法であって、鋳型12内で溶解または半凝固状態にある前記銅または銅合金の鋳型12の内周面に対する圧力をほぼ一定に保持する。
【選択図】図1A
Description
本発明は、銅または銅合金線を製造する方法に関する。
従来、銅や銅合金からなる線材を製造するにあたって、両端を開口した鋳型を用い、その一方の開口部から高温で溶解した金属(溶湯)を注入し、鋳型外周を冷却しながら鋳型内で溶融金属を凝固させ、鋳型の他方の開口部より連続的に引き出す連続鋳造法が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
このような連続鋳造法においては、品質の良い線材を安定して製造できることが重要である。このため、例えば、冷却温度を一定に保つなどの方法が検討されてきた。しかし、冷却温度を一定に保つことにより、ある程度の品質の安定化は図られるものの、品質を向上させることはできなかった。そして、特に、極細マグネットワイヤや極細ケーブルなどの用途に使用される銅銀合金線のように、外径が20mm以下といった細径の線材を製造する場合、ピンチローラなどの引取装置により線材に極めて大きな張力が加わるため、表面欠陥が生じやすく、冷却温度を一定に保つだけでは、品質の良い線材を安定して鋳造することは不可能であった。
本発明者はかかる問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、溶湯が鋳型内で凝固する前、つまり鋳型内で半凝固状態にあるときを適切に管理することによって、品質の向上および安定化を図ることができることを見出した。
特開平11−147162号公報
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、溶湯が鋳型内で半凝固状態にあるときを適切に管理して、細径であっても品質の良い銅または銅合金線を安定して製造することができる方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、坩堝内に銅または銅合金の原料を連続的または断続的に供給し、前記原料を前記坩堝内で加熱溶融した後、前記坩堝の下部に取着した鋳型から、凝固した銅または銅合金からなる線材を引出す銅または銅合金線の製造方法であって、前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある前記銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力をほぼ一定に保持することを特徴とする銅または銅合金線の製造方法である。
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の銅または銅合金線の製造方法において、前記鋳型から、凝固した直径20mm以下の銅または銅合金からなる線材を引出すことを特徴とするものである。
請求項3に記載された発明は、前記鋳型から、凝固した直径6〜16mmの銅または銅合金からなる線材を引出すことを特徴とするものである。
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の銅または銅合金線の製造方法において、前記鋳型から、前記凝固した銅または銅合金からなる線材を連続的に引き出すことを特徴とするものである。
請求項5に記載された発明は、請求項4記載の銅または銅合金線の製造方法において、前記溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の変動幅を、前記凝固した銅または銅合金からなる線材の引出し開始直後の圧力の±30%以下とすることを特徴とするものである。
なお、「線材の引出し開始直後」とは、品質の良好な線材が安定的に引き出される状態になった直後をいう。
なお、「線材の引出し開始直後」とは、品質の良好な線材が安定的に引き出される状態になった直後をいう。
請求項6に記載された発明は、請求項4記載の銅または銅合金線の製造方法において、前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の変動幅を、前記凝固した銅または銅合金からなる線材の引出し開始直後の圧力の±10%以下とすることを特徴とするものである。
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の銅または銅合金線の製造方法において、前記坩堝内の溶湯の湯面レベルを調整することにより、前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の保持を行うことを特徴とするものである。
請求項8に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の銅または銅合金線の製造方法において、前記坩堝を密閉構造とし、この坩堝内に不活性ガスを供給することにより、前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の保持を行うことを特徴とするものである。
本発明の銅または銅合金線の製造方法によれば、細径であっても品質の良い銅または銅合金線を安定して製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、厚みと長さの関係などは実際のものとは異なることに留意すべきである。さらに、以下の説明において、同一もしくはほぼ同一の機能および構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1Aは、本発明の一実施形態に使用される連続鋳造装置の構成を概略的に示す断面図であり、また、図1Bは、その一部を拡大して示す断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態で使用される連続鋳造装置は、銅または銅合金の溶湯10を収容する黒鉛製の坩堝(るつぼ)11と、この坩堝11の下部に取り付けられた黒鉛製の筒状の鋳型12と、この鋳型12の外周に嵌挿された、内部に冷却水の通路を有する水冷ジャケット13とを備えている。坩堝11と鋳型12は一体に構成されていてもよい。また、溶湯10の上方には、坩堝11内に原料の金属を供給する原料供給装置14と、溶湯10の湯面レベルを検知するセンサ15が配置されている。原料供給装置14とセンサ15は連動しており、センサ15が検知した湯面レベルに応じて原料供給装置14から原料が供給される。本実施形態では、湯面レベルがほぼ一定に保たれるようになっている。なお、図示は省略したが、坩堝11の周囲には高周波誘導加熱コイルなどの加熱手段が配置され、また、鋳型12の延出方向の先には、鋳型12から凝固した銅または銅合金からなる線材を横方向に引出すピンチロールが配置されている。
このような連続鋳造装置において、坩堝11から鋳型12に注入された銅合金からなる溶湯10は、鋳型12を通過する間に、水冷ジャケット13内を流れる冷却水によって冷却されて、その外周部から徐々に凝固し、全体が凝固またはほぼ凝固したところでピンチロール(図示なし)により鋳造ロッド(鋳造物)16として外部に連続的または断続的に引出される。
図1Bは、鋳型12内で溶湯10が徐々に凝固していく状態を示したもので、鋳型12の入口部で溶解状態にあった溶湯10は、半凝固状態10aを経て、完全凝固に至る。本発明者はこのときの、特に半凝固状態にある溶湯10aの量に変動があると、冷却条件が変わって表面割れなどの欠陥を生じやすくなることを見出した。換言すれば、表面割れなどの欠陥のない鋳造ロッドを製造するためには、半凝固状態にある溶湯10aの量をほぼ一定に保持することが重要となる。例えば、本実施形態においては、センサ15と原料供給装置14によって湯面レベルがほぼ一定に保たれるため、溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の鋳型の内周面に対する圧力がほぼ一定に保持され、この結果、鋳型12内の半凝固状態にある溶湯10aの量が一定に保持される。したがって、表面割れなどの欠陥のない鋳造ロッド16を製造することができる。ここで、「鋳型の内周面に対する圧力をほぼ一定に保持する」とは、鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の鋳型の内周面に対する圧力の変動幅を、凝固した銅または銅合金からなる線材の引出し開始直後の圧力の±30%以下、好ましくは、±10%以下とすることをいう。
このようにして得られた鋳造ロッド16は、その後、伸線加工、熱間鍛造などの加工が施され、最終的に、例えば高強度・高導電性線材、導電用ばね材、コネクタなどの製品に加工される。
本発明は、図1Aに示す連続鋳造装置に代えて、例えば図2あるいは図3に示す連続鋳造装置を用いて行うことができる。
図2に示す連続鋳造装置は、図1Aに示す連続鋳造装置において、溶湯10を収容する坩堝11を密閉構造とするとともに、その上方に、原料供給装置14に代えて、窒素ガスなどの不活性ガスを供給する装置21を配置したものである。不活性ガス供給装置21とセンサ15は連動しており、センサ15が検知した湯面レベルに応じて不活性ガス供給装置21から不活性が供給され、溶解または半凝固状態にある溶湯10の鋳型12の内周面に対する圧力がほぼ一定に保たれる。
また、図3に示す連続鋳造装置は、図1に示す連続鋳造装置において、溶湯10を収容する坩堝11の上方に、原料供給装置14に代えて、ダミーブロック31およびこのダミーブロック31を溶湯10に向けて進退させる駆動装置32を配置したものである。駆動装置32とセンサ15は連動しており、センサ15が検知した湯面レベルに応じて駆動装置32がダミーブロック31を溶湯10に向けて進退させ、湯面レベルがほぼ一定に保たれる。
このような連続鋳造装置を用いた場合であっても、溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の鋳型12の内周面に対する圧力がほぼ一定に保持され、これにより、鋳型12内の半凝固状態にある溶湯10aの量が一定に保持される。したがって、表面割れなどの欠陥のない鋳造ロッド16を製造することができる。
さらに、図1A、図2および図3に示した各連続鋳造装置は、坩堝11の側壁下部に鋳型12を水平に取り付けた、いわゆる横型(水平ともいう)連続鋳造装置の例であるが、坩堝の底部に鋳型を垂直に取り付け、その上端の開口部より溶湯を注入し、下端の開口部より引き出す、いわゆる縦型連続鋳造装置であってもよい。縦型連続鋳造装置を用いた場合であっても、横型連続鋳造装置と同様、品質の良い鋳造ロッドを安定して鋳造することができる。
ここで、本実施形態の効果を確認するため行った実験およびその実験結果について記載する。
実験は、図1に示す横型連続鋳造装置を用いて行った。坩堝11内に原料供給装置14から供給する原料の金属量を変化させることによって、溶解または半凝固状態にある銅合金の鋳型12の内周面に対する圧力が初期値(鋳造開始直後の圧力)の±5%、±10%、±20%、±30%、±40%および±50%の変動幅で変動するように、溶湯10の湯面レベルを強制的に変化させて、下記に示す鋳造条件でCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造し、その歩留まりを調べた。
結果は表1に示した通りで、変動幅が±30%以内であれば実用可能なレベルの歩留まりが得られ、変動幅が±10%以内のとき、特に良好な結果が得られた。
なお、表面割れなどの欠陥は、鋳造ロッドの外径が細くなるほど特性に大きく影響する。したがって本発明はこのような表面欠陥の影響の大きい細径の鋳造ロッドの製造に特に有用である。具体的には、外径20mm以下の鋳造ロッドの製造に有用であり、特に、外径6〜16mm以下の鋳造ロッドの製造に有用である。
また、表面割れなどの欠陥は、銅よりも銅合金が、また、銅合金では銅に添加する元素の量が多くなるほど生じやすい。したがって、本発明はこのような表面欠陥の生じやすい銅合金、特に添加元素量の多い銅合金からなる鋳造ロッドの製造に有用である。具体的には、銀を2〜15質量%含有する銅合金などからなる鋳造ロッドの製造に有用である。
以下、本発明の実施例を記載する。
実施例1、2
図1に示す横型連続鋳造装置を用い、坩堝11内に原料供給装置14から原料の金属を連続的に供給することにより坩堝11内の溶湯10の湯面レベルを一定に保ちながら、下記に示す鋳造条件でCu(実施例1)およびCu−10質量%Ag合金(実施例2)からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
溶湯温度:1300℃
鋳造速度:380mm/min
図1に示す横型連続鋳造装置を用い、坩堝11内に原料供給装置14から原料の金属を連続的に供給することにより坩堝11内の溶湯10の湯面レベルを一定に保ちながら、下記に示す鋳造条件でCu(実施例1)およびCu−10質量%Ag合金(実施例2)からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
溶湯温度:1300℃
鋳造速度:380mm/min
実施例3
図2に示す横型連続鋳造装置を用い、坩堝11内に不活性ガス供給装置21から不活性ガスとして窒素ガスを供給することによって溶湯10の湯面レベルを一定に保ちながら、実施例1と同様の鋳造条件でCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
図2に示す横型連続鋳造装置を用い、坩堝11内に不活性ガス供給装置21から不活性ガスとして窒素ガスを供給することによって溶湯10の湯面レベルを一定に保ちながら、実施例1と同様の鋳造条件でCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
実施例4
図3に示す横型連続鋳造装置を用い、ダミーブロック31によって坩堝11内の溶湯10の湯面レベルを一定に保ちながら、実施例1と同様の鋳造条件でCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
図3に示す横型連続鋳造装置を用い、ダミーブロック31によって坩堝11内の溶湯10の湯面レベルを一定に保ちながら、実施例1と同様の鋳造条件でCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
比較例
坩堝11内の溶湯10の湯面レベルを一定に保つための原料の供給を行わなかった以外は実施例2と同様にしてCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
坩堝11内の溶湯10の湯面レベルを一定に保つための原料の供給を行わなかった以外は実施例2と同様にしてCu−10質量%Ag合金からなる線径9.5mmの鋳造ロッドを鋳造した。
上記各実施例および比較例で得られた鋳造ロッドの外観を観察し、表面欠陥の有無を調べた。また、鋳造ロッドの導電率を5m毎に測定し、その最大値および最小値を求めた。これらの結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例で得られた鋳造ロッドは、いずれも表面欠陥がなく、導電率のばらつきもほとんどなく、導電率のばらつきを1%未満に抑えることができた。これに対し、比較例では表面欠陥が観察され、さらに導電率にも大きなばらつきが認められ、導電率のばらつきが1%を超えるものとなった。ちなみに比較例における導電率の最小値および最大値は鋳造ロッドの先端部および後端部でそれぞれ測定された。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
10…溶湯、11…坩堝、12…鋳型、13…水冷ジャケット、14…原料供給装置、15…センサ、16…鋳造ロッド、21…不活性ガス供給装置、31…ダミーブロック、32…駆動装置。
Claims (8)
- 坩堝内に銅または銅合金の原料を連続的または断続的に供給し、前記原料を前記坩堝内で加熱溶融した後、前記坩堝の下部に取着した鋳型から、凝固した銅または銅合金からなる線材を引出す銅または銅合金線の製造方法であって、
前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある前記銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力をほぼ一定に保持することを特徴とする銅または銅合金線の製造方法。 - 前記鋳型から、凝固した直径20mm以下の銅または銅合金からなる線材を引出すことを特徴とする請求項1記載の銅または銅合金線の製造方法。
- 前記鋳型から、凝固した直径6〜16mmの銅または銅合金からなる線材を引出すことを特徴とする請求項1記載の銅または銅合金線の製造方法。
- 前記鋳型から、前記凝固した銅または銅合金からなる線材を連続的に引き出すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の銅または銅合金線の製造方法。
- 前記溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の変動幅を、前記凝固した銅または銅合金からなる線材の引出し開始直後の圧力の±30%以下とすることを特徴とする請求項4記載の銅または銅合金線の製造方法。
- 前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の変動幅を、前記凝固した銅または銅合金からなる線材の引出し開始直後の圧力の±10%以下とすることを特徴とする請求項4記載の銅または銅合金線の製造方法。
- 前記坩堝内の溶湯の湯面レベルを調整することにより、前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の保持を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の銅または銅合金線の製造方法。
- 前記坩堝を密閉構造とし、この坩堝内に不活性ガスを供給することにより、前記鋳型内で溶解または半凝固状態にある銅または銅合金の前記鋳型の内周面に対する圧力の保持を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の銅または銅合金線の製造方法。
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2008
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