JP4907248B2 - Al−Si系アルミニウム合金の連続鋳造方法 - Google Patents
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この種の連続鋳造法としては、水冷鋳型を用いたDC鋳造法と、断熱鋳型を用いた断熱鋳型連続鋳造法とが公知である。
DC鋳造法は、上下貫通した鋳型の上部に溶湯を供給し、鋳型の下部から鋳塊を連続的に引き出す際に、鋳型を水冷してあるとともに鋳型の下部にて鋳塊の表面に冷却水を噴射して鋳塊を冷却する方法で、水冷鋳型による強力な一次冷却により比較的厚みのある凝固殻を形成するため、殻のブレークアウトが発生しにくいが、水冷鋳型による一次冷却と鋳型下部から噴射される冷却水による二次冷却との冷却幅が広いため内部の金属間化合物の偏析が大きく、鋳塊表面の凹凸も激しいという技術的課題があった。
一方、断熱鋳型連続鋳造法は、断熱してある鋳型の下端から噴射した冷却水のみで鋳塊を冷却する方法で、鋳型による一次冷却を排除しているため、均一な内部組織と平滑な鋳塊表面を得やすいという特徴があるものの、DC鋳造法に比較して表層の凝固殻が薄く形成されることから、凝固殻のブレークアウトが発生し易く、安定した凝固殻が得られない場合がある。
特に、鋳造するアルミニウム合金がJIS4000系アルミニウム合金のようにSi成分が多い場合には、初晶シリコン、共晶シリコン等の金属間化合物の晶出及び成長が複雑化し、安定的な鋳造が困難になるとともに、凹凸等の表面欠陥を誘発しやすい技術的課題があった。
一般的に、4000系アルミニウム合金は共晶成分を超えると初晶シリコンが晶出する。
これらの初晶シリコンは冷却状態によって晶出形態が異なり、冷却が遅い場合には粗大晶出し、不均一組織となるため、機械的性質ならびに切削性を悪くする。
本合金系においては初晶シリコンを微細・均一に分散晶出させることが重要であり、この問題解決の方法としては冷却速度の向上がある。
特開平9−38751号公報には、断熱部と水冷ケースとを設けた鋳型を開示するが冷却域の幅が広くAl−Si系アルミニウム合金のような共晶成分の多いアルミニウム合金の場合には表面欠陥を迎えるのが難しい。
鋳塊の表面に偏析層が発生したり、凹凸ができるとそれだけピーリング代を多くとらざるを得ず、コスト高の一因となっていた。
特に最近ではAl−Si系アルミニウム合金の押出性が極端に悪いことから、従来の大径ビレットを押出材にしてその後に鍛造製品を得る方法の改善策として、小径ビレットの表面をピーリングしてそのまま鍛造する方法を採用するニーズが高い。
このようなニーズに対応するためにはピーリング代を少なく抑えることができる表面欠陥や偏析の少ない連続鋳造方法が必要となっている。
本発明は、Al−Si系アルミニウム合金において、鋳型の下側を一定の肉厚で上側よりも薄くした一体成型の鋳型の下端部を局部的に冷却することで凝固界面直上の温度勾配を大きなものにし、固液共存温度域を狭くして金属間化合物の晶出状態を鋳塊の径方向に均一化させる点に特徴があり、鋳型の下端部に噴射した冷却水が流下して鋳塊の表面を冷却する。
また、鋳型下端部と鋳塊との境界部の冷却をサポートするために請求項2に記載の発明は、鋳型内径が50〜150mmで、鋳型の下側を一定の肉厚で上側よりも薄くした一体成型の断熱鋳型の上部にAl−Si系アルミニウム合金の溶湯を供給し、鋳型の下端部に冷却水を噴射して鋳型の下端部を局部的に冷却し、且つ鋳型の下部から出る鋳塊表面に冷却水を噴射して鋳塊を冷却することを特徴とする。
ここで、Al−Si系アルミニウム合金とは、アルミニウム合金においてアルミニウムの次に多い成分がSi成分であることをいう。
請求項2記載の発明は、鋳型の下端部に冷却水を噴射すると鋳型の下部から出てくる鋳塊表面に冷却水が流下するが、この鋳型の下部から出てくる鋳塊表面にも冷却水を噴射することで流水膜を破るように鋳塊表面を冷却するので、二次冷却効果が高まり界面近傍の温度勾配を大きくすることができるために、鋳塊表面から内部に向けての一方向凝固性がさらに向上し、表面の凹凸が小さくなるとともに鋳造速度を速めることができる。
4032はSi成分の添加により熱膨張率が純アルミに比較して小さく、耐摩耗性に優れ、Cu、Mg、Niの添加により耐熱性を改善したアルミニウム合金である。
Al−Si系アルミニウム合金としては、図3の表に示すように、4032の規格成分範囲内である共晶合金A、亜共晶合金B、過共晶合金Cの3種類のアルミニウム合金溶湯を用いて鋳塊の製造試験評価に供した。
また、比較製造試験評価用にAl−Cu系合金JIS2014、Al−Mg−Si系合金6061及びAl−Zn−Mg系合金7N01を用いた。
図1に示した連続鋳造装置は、溶湯を流し込む受湯部1と、受湯部の下部に設けた上下に貫通した鋳型2を有している。鋳型の材質としては黒煙鋳型を用いた。
鋳型の上部側壁には断熱層3を有し、下部側壁の周囲には水冷ジャケット4を設けてある。
水冷ジャケット4は、給水口4b、冷却水室4c及び冷却水噴射ノズル4aを有している。
冷却水噴射ノズル4aは、鋳型の外側の下端部2aに向けて冷却水が噴射するようになっていて鋳型の下端部を局部的に冷却するようになっている。
また、鋳型の下端部の局部的冷却効果を向上させる観点から、鋳型の下側の肉厚を上側に比較して薄くしてある。
溶湯Mは鋳型の上部から入り、鋳型の下端部内側2bで冷却され凝固界面Mcを形成しつつ、鋳型の下部からビレット等の連続した鋳塊Msとして先端底部を受台6にて受けながら連続鋳造する。
鋳型2の外側の下端部2aを局部的に冷却しているので、従来の断熱型連続鋳造法に比較して固液共存温度域の幅dが小さくなる。
また、鋳型2の下端部に噴射した冷却水5は鋳塊の表面に沿って下方向に流水部5aを形成しながら流下する。
図1に示した連続鋳造装置と異なる点のみを説明する。
水冷ジャケット4は、鋳型冷却水噴射ノズル14aと、鋳塊表面冷却水噴射ノズル14bとを2段に有していて、鋳型冷却水噴射ノズル14aは鋳型2の下端部を局部的に冷却するように冷却水を噴射する。
鋳塊表面冷却水噴射ノズル14bは鋳塊の表面に向けて冷却水が噴射するようになっていて、鋳型の下端部に噴射した冷却水の流れによる流下水膜を破るように冷却することでさらに二次冷却効果が高まり界面近傍の温度勾配を大きくすることができ、鋳型内側下端部Sの冷却能力が高くなる。
本発明に用いる鋳型形状としては、図1及び図2に示したように、鋳型内周径が鉛直方向に同じストレート型、下側が径の大きいテーパー型でもよく、断面形状も円形のみならず異形断面でもよい。
なお、異形断面形状の場合には、最大内接円の径が50〜150mmであることをいう。
表中、合金種A、B、Cは図3に示した成分の合金種であり、2014、6061、7N01はそれぞれJISに規定する合金種である。
また、鋳造方法における「断熱鋳型/下端冷却」は図1に示した連続鋳造装置を用いたことを示し、「水冷鋳型」は従来のDC鋳造法を示し、「断熱鋳型」は従来の断熱鋳型連続鋳造方法を示す。
鋳塊径はビレットの直径を示し、表面性状はビレット鋳塊の表面状態を評価したもので表面凹凸が50μm以下を「評価○」、50μmを超え100μm以下を「評価△」、100μmを超えるものを「評価×」とした。
内部組織はビレットの径方向に沿って金属間化合物の大きさがほぼ同じで、その金属間化合物の大きさが50μm未満を「評価○」、径方向の金属化合物の大きさ変化は小さいがその大きさが50μm以上で100μm未満を「評価△」、径方向に金属間化合物の大きさが変化していて、その大きさが100μm以上を「評価×」とした。
材料特性はビレット鋳塊をT6熱処理した後の物性値を示し、σ:引っ張り強度、σ0.2:0.2%耐力値、ε:伸びを示す。
表中、実施例1〜3は本発明に係る鋳型の下端冷却による鋳造方法であり、実施例4〜6は、本発明に係る二段冷却による鋳造方法を用いた。
JIS4032相当の合金A、実施例2のSi成分4.3%の亜共晶合金B、実施例3のSi成分22.0%の過共晶合金Cはいずれも表面性状が良く、内部組織が均一であった。
実施例4、5、6においては、実施例1、2、3とそれぞれ比較してさらに表面性状が平滑で内部組織が均一になっていると共に、鋳造速度も速くなり生産性が向上している。
これに対して比較例1、2に示すように、合金Aであっても従来の水冷鋳型や断熱鋳型を用いると表面の凹凸が大きく、内部組織において金属間化合物が不均一であった。
図6に実施例1、比較例1及び比較例2の鋳塊の表面写真を示す。
図7に実施例1における鋳塊の内部組織写真を示す。
図8に冷却速度の指標となるDAS(Dendrite Arm Spacing)測定結果を示す。
比較例1はビレット径204mmと他のものよりも大きく、水冷鋳型であるためにDASが大きく径方向に不均一である。
実施例1と比較例2はビレット径83mmと小径でありDASが比較例1よりも小さいが比較例2の方が実施例1に比較して表皮部分が不均一になっている。
これは断熱鋳型のため冷却が不足しているためと推定される。
本発明の鋳型の下端部局部冷却による鋳造方法は、比較的小径のビレット鋳造に効果的であり、概ね、ビレット直径50〜150mmの範囲に適している。
150mmを超えると中心部の冷却が不充分となりやすい。
また過共晶合金Cにおいては、Si成分が22%と多く、表面性状も良くなかった。
比較例5〜10はAl−Cu系合金、Al−Mg−Si系合金及びAl−Zn−Mg系合金にて、鋳型下端冷却の影響を調査したものでこれらの合金種ではAl−Si系合金と比較して晶出する金属間化合物も少なく、断熱鋳型の方が表面性状及び内部組織が良いことも明らかになった。
上記のように本件発明はAl−Si系アルミニウム合金の連続鋳造に有効な方法であることの理由を図9に示した凝固モデルにて説明する。
図9(a)はAl−Si系合金における鋳型内壁面での凝固モデルを示し、図9(b)はJIS2014,6061,7N01等のAl−Si系合金に比較して晶出する金属間化合物の少ない低濃度展伸系合金の凝固モデルを示す。
Al−Si系合金の場合には、相対的に個々の凝固単位が大きく、固液界面ではフラット状に凝固が進行するために初晶が晶出後に共晶からなる固相が瞬時に成長する。
これに対して低濃度展伸系合金においては、個々の凝固単位が相対的に小さく、固液界面ではデンドライト組織状に凝固が進行して連続的に固相に変移する。
従って、低濃度展伸系合金においては、断熱鋳型の方が連続的にデンドライト組織状の固相を得ることができるが、Al−Si系合金ではフラット状で断続的に凝固が進行するので凝固界面での冷却速度を速くして、固液界面近傍の温度勾配を大きくしないと平滑な鋳塊表面や内部組織の均一化が図れないことになり、従来の断熱鋳型による連続鋳造では冷却能力が不充分であった。
これに対して本発明に係る連続鋳造方法にあっては、鋳型の下端部を局部的に冷却することで、従来の断熱鋳型よりも局部的な冷却能が高く鋳塊表面から内部に向けての一方向凝固性に優れることが明らかになった。
2 鋳型
3 断熱層
4a 冷却水噴射ノズル
5 冷却水
6 受台
Claims (2)
- 鋳型内径が50〜150mmで、鋳型の下側を一定の肉厚で上側よりも薄くした一体成型の断熱鋳型の上部にAl−Si系アルミニウム合金の溶湯を供給し、鋳型の下端部に冷却水を噴射して鋳型の下端部を局部的に冷却し、且つ鋳型の下端部から流下する水で鋳型下部から出る鋳塊を冷却することを特徴とするAl−Si系アルミニウム合金の連続鋳造方法。
- 鋳型内径が50〜150mmで、鋳型の下側を一定の肉厚で上側よりも薄くした一体成型の断熱鋳型の上部にAl−Si系アルミニウム合金の溶湯を供給し、鋳型の下端部に冷却水を噴射して鋳型の下端部を局部的に冷却し、且つ鋳型の下部から出る鋳塊表面に冷却水を噴射して鋳塊を冷却することを特徴とするAl−Si系アルミニウム合金の連続鋳造方法。
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