JP2011045918A - 線材の製造方法及び線材の鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】品質の高い線材を安定して鋳造する。
【解決手段】溶融金属9が収容される坩堝3と、坩堝3の溶融金属収容部3aに、坩堝3を貫通して接続された、先端に鋳造金属引出口8bを備えた筒状の鋳型8と、坩堝3を鋳型8とともに加熱する誘導加熱装置5と、を有する連続鋳造装置1を用いて、坩堝3に収容された溶融金属から直径15mm以下の線材を引出す際に、鋳型8の坩堝3との接続部近傍の温度を、(T+100)℃以上(T+300)℃以下(ここでTは溶融金属の液相線温度)の温度範囲に保持する。
【選択図】図1
【解決手段】溶融金属9が収容される坩堝3と、坩堝3の溶融金属収容部3aに、坩堝3を貫通して接続された、先端に鋳造金属引出口8bを備えた筒状の鋳型8と、坩堝3を鋳型8とともに加熱する誘導加熱装置5と、を有する連続鋳造装置1を用いて、坩堝3に収容された溶融金属から直径15mm以下の線材を引出す際に、鋳型8の坩堝3との接続部近傍の温度を、(T+100)℃以上(T+300)℃以下(ここでTは溶融金属の液相線温度)の温度範囲に保持する。
【選択図】図1
Description
本発明は、銅や銅合金などからなる線材を鋳造する方法、及びそれに用いる線材の鋳造装置に関する。
従来、銅や銅合金などからなる線材を鋳造するにあたり、両端を開口した筒状の鋳型を用い、その一方の開口部から高温で加熱溶融した金属(溶湯)を注入し、鋳型を外部から冷却しながら鋳型内で溶融金属を凝固させ、鋳型の他方の開口部より連続的に引出す連続鋳造法が広く使用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
このような連続鋳造法においては、品質の良い線材を安定して製造するために、冷却温度を一定に保つなどの方法が検討されてきた。例えば、冷却温度を一定に保つためには、鋳型内に供給された溶融金属を速やかに冷却して凝固させることが必要であることから、鋳型外部からの冷却効率を高めるべく、熱伝導率の高い黒鉛を鋳型の材料として使用する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、高熱伝導率を有する黒鉛からなる鋳型を使用すると、冷却効率は高まるものの、鋳型の溶融金属注入側開口部付近の温度まで低下してしまい、該部の溶湯が凝固してプラグが形成されるという問題を生じた。開口部にかかるプラグが形成されると、開口部が狭められ、鋳造中の溶湯の供給や溶湯圧が不安定になる結果、鋳型内の温度バランスが部分的に崩れ、線材に表面欠陥や不均一な鋳造組織が生じるおそれがある。
特に、鋳型の周りに冷却装置が配置されている場合、鋳型を直接冷却するため、上記問題がより発生し易い。また、極細マグネットワイヤや極細ケーブルなどの用途に使用される銅銀合金線のように、外径が20mm以下といった細径の線材を製造する場合、線材を引き取るピンチローラなどの引取装置により、線材に極めて大きな張力が加わるため、表面欠陥などがより生じ易い。
このように、単に熱伝導率の高い鋳型を用いて冷却温度を管理するだけでは、品質の良い線材を安定して鋳造することは困難であった。
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、品質の高い線材を安定して製造することができる線材の製造方法及び線材の鋳造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、溶融金属が収容される坩堝と、前記坩堝の溶融金属収容部に、前記坩堝を貫通して接続された、先端に鋳造金属引出口を備えた筒状の鋳型と、前記坩堝を加熱する加熱機構と、前記鋳型の先端部側を冷却する冷却機構とを有する鋳造装置を用い、前記坩堝に収容された溶融金属から直径15mm以下の線材を引出す線材の製造方法であって、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍の温度を、(T+100)℃以上(T+300)℃以下(ここで、Tは前記溶融金属の液相線温度である)の範囲に保持しつつ、前記線材を引出すことを特徴とする線材の製造方法である。
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の線材の製造方法において、前記溶融金属から直径が5mm以上15mm以下の線材を引出すことを特徴とするものである。
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の線材の製造方法において、前記溶融金属は、液相線温度が1300℃以下の金属であることを特徴とするものである。
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし3のいずれか1項記載の線材の製造方法において、前記鋳造装置は、前記加熱機構と協働して、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を選択的に加熱する加熱補助機構をさらに具備することを特徴とするものである。
請求項5に記載された発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の線材の製造方法において、前記加熱補助機構は、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を包囲するように配置された金属製の管状部材を備え、かつ前記加熱機構は、前記管状部材とともに前記坩堝を包囲するように配置された誘導加熱用コイルを備えることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載された発明は、溶融金属が収容される坩堝と、前記坩堝の溶融金属収容部に、前記坩堝を貫通して接続された、先端に鋳造金属引出口を備えた筒状の鋳型と、前記坩堝を加熱する加熱機構と、前記鋳型の先端部側を冷却する冷却機構と、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍の温度を前記溶融金属の液相線温度を超える所定の温度範囲に制御する温度制御機構と、を具備することを特徴とする線材の鋳造装置である。
請求項7に記載された発明は、請求項6記載の線材の鋳造装置において、前記加熱機構と協働して、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を選択的に加熱する加熱補助機構をさらに具備することを特徴とするものである。
請求項8に記載された発明は、請求項6または7記載の線材の鋳造装置において、前記加熱補助機構は、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を包囲するように配置された金属製の管状部材を備え、かつ前記加熱機構は、前記管状部材とともに前記坩堝を包囲するように配置された誘導加熱用コイルを備えることを特徴とするものである。
請求項9に記載された発明は、請求項6ないし8のいずれか1項記載の線材の鋳造装置において、前記鋳型は、黒鉛からなることを特徴とするものである。
本発明の線材の製造方法及び線材の鋳造装置によれば、品質の高い線材を安定して製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各構成要素の長さの関係などは実際のものとは異なっている。さらに、以下の説明において、同一もしくは略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付与し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態の連続鋳造装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の連続鋳造装置1は、銅線、銅合金線などの金属からなる線材を鋳造するための装置であって、溶融金属(溶湯)9が収容される坩堝3と、坩堝3の溶融金属収容部3aに、坩堝3を貫通して接続された黒鉛製の鋳型8と、加熱機構としての誘導加熱装置5と、冷却機構である水冷ジャケット10と、加熱補助機構として機能する金属管7と、温度制御機構としての機能を持つ加熱温度調整部16と、を備える。
また、坩堝3の上方には、坩堝3内(溶融金属収容部3a内)に原料の金属を供給するための原料供給装置2およびレベルセンサ14が配置されている。レベルセンサ14は、溶湯9の坩堝3内での湯面レベルを検知する。原料供給装置2は、溶湯9の湯面レベルが略一定に保たれるように、レベルセンサ14が検知した湯面レベルに応じて金属材料の供給量を制御する。
坩堝3は、黒鉛を材料として構成されている。この坩堝3内には、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金など、液相線温度が1300℃以下の金属材料が供給される。鋳型8は、両端を開口させた筒状に形成されている。鋳型8の基端部側開口は、溶湯9の導入口8aとして機能し、鋳型8の先端部側開口は、鋳造物としての線材(鋳造ワイヤロッド)12を引出す引出口(鋳造金属引出口)8bとなる。鋳型8は、その長さ方向を鉛直方向に沿って起立させた姿勢で坩堝3の底部に配置されている。鋳型8の導入口8a側が、坩堝3の底部に連結されている。
水冷ジャケット10の内部には、冷却水を循環させる循環路(図示なし)が形成されている。この水冷ジャケット10は、鋳型8の引出口8b側に、鋳型8を包囲するように配置されている。また、鋳型8の先には、ピンチローラ15が配置されている。ピンチローラ15は、水冷ジャケット10による冷却効果で鋳型8内で凝固した線材(鋳造ワイヤロッド)12を、鋳型8の引出口8bから鉛直方向に引出す。
次に、誘導加熱装置5、金属管7及び加熱温度調整部16の構成について詳述する。誘導加熱装置5は、誘導加熱用コイル5aと高周波電流供給回路5bとを備えている。誘導加熱用コイル5aは、円環状に形成されており、坩堝3を包囲するように配置されている。一方、高周波電流供給回路5bは、誘導加熱用コイル5aに高周波電流を供給する。
高周波電流に供給により、誘導加熱用コイル5aから生じる磁界の磁束が変化し、坩堝3にいわゆる渦電流が流れる。この渦電流が流れる際のジュール熱によって坩堝3が加熱される。さらに、坩堝3が加熱されることで、坩堝3に連結される鋳型8にもその熱が伝達される。つまり、誘導加熱装置5は、坩堝3を鋳型8とともに加熱して金属材料を加熱溶融させる。
また、金属製の管状部材である金属管7は、鋳型8の坩堝3との接続部近傍、つまり、鋳型8の長さ方向における、坩堝3との連結部分8cと、水冷ジャケット10による被冷却部分8dと、の間の加熱対象部分8e、を包囲するように配置されている。誘導加熱用コイル5aは、坩堝3とともにこの金属管7も包囲するように配置されている。
そして、誘導加熱用コイル5aと金属管7は、高周波電流が誘導加熱用コイル5aに供給された場合に、前述した磁束の変化が金属管7にも作用して当該金属管7が加熱され得る位置関係になっている。すなわち、金属管7は、誘導加熱装置5と協働して、鋳型8の加熱対象部分8eを加熱する加熱補助機構として機能する。このような金属管7の材質としては、鋳造する線材の原料にもよるが、一般には、転移点が1300℃以上の高融点金属材料が適しており、例えば耐熱鋼などの鉄系材料が好ましく使用される。
加熱温度調整部16は、供給電流制御回路16aと高耐熱性の温度センサ16bとを備える。温度センサ16bは、鋳型8の坩堝3との接続部近傍に取り付けられており、該部の温度をモニタする。供給電流制御回路16aは、温度センサ16bで検出される鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度が、坩堝3内の溶融金属9の液相線温度を超える所定の温度範囲に調整されるように、高周波電流供給回路5bから誘導加熱用コイル5aへの高周波電流の供給量を制御する。具体的には、加熱温度調整部16は、溶融金属9の液相線温度をT℃としたとき、(T+100)℃以上(T+300)℃以下の範囲になるように、鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度を制御する。好ましくは、(T+150)℃以上(T+250)℃以下の範囲になるように制御する。
上記温度を超えると、水冷ジャケット10による速やかな冷却ができなくなり、品質の良い線材を鋳造することが困難になる。
また、温度が(T+100)℃未満については、理由として、鋳型8を介して金属の溶融温度を管理していることから、実際の溶融金属の温度にはバラツキがある。つまり、鋳型を介して溶融金属の温度管理を液相線温度を越えるよう行っていたとしても、実際の溶融金属の温度が液相線温度を下回る可能性もある。液相線温度が下回った場合には、鋳型8の導入口8a部分に溶湯のプラグが形成され、その開口面積が小さくなり、鋳造中の溶湯の供給や溶湯圧が不安定になる結果、鋳型8内の温度バランスが部分的に崩れ、鋳造される線材に表面欠陥や不均一な鋳造組織が生じるおそれがある。したがって、鋳型を介して金属の金属溶融温度を管理する場合、バラツキを考慮し(T+100)℃以上にて管理する必要がある。
なお、坩堝3にも温度センサを取り付けておき、坩堝3側から検出された温度と鋳型8側から検出された加熱温度とに基づいて、誘導加熱装置5の動作を制御してもよい。
上記した連続鋳造装置1において、誘導加熱装置5を動作させると、坩堝3が加熱され、坩堝3内に供給された金属材料が加熱溶融される。また同時に金属管7が加熱され、金属管7に包囲された部分、すなわち加熱対象部分8eが加熱される。そして、加熱温度調整部16の温度調整機能によって、鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度が、金属材料の液相線温度Tより100〜300℃、好ましくは150〜250℃高くなるように制御される。一方、水冷ジャケット10により、鋳型8の引出口8b側が冷却される。
坩堝3内の溶湯9は、導入口8aを介して鋳型8に注入され、水冷ジャケット10を流れる冷却水によって冷却されて、その外周部から徐々に凝固し、全体が凝固または略凝固したところで、引出口8aから線材(鋳造ワイヤロッド)12として外部に連続的または断続的に引出される。
本実施形態の連続鋳造装置1では、鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度が、溶湯9の液相線温度を超える所定の温度範囲に制御されるので、鋳型8内への溶湯9の導入口8a付近における溶湯9の凝固、それに伴うプラグの形成が防止される。これにより、溶湯9の鋳型8内への供給量や鋳型7内の溶湯圧などが安定化し、プラグが形成された場合のような鋳型内の温度バランスの部分的崩れが生ずることがなくなり、表面欠陥や不均一な鋳造組織のない高品質の線材12を鋳造することができる。
ちなみに、図4は、金属管7及び加熱温度調整部16を有さない以外は上記連続鋳造装置1と同様に構成された連続鋳造装置51を示したものである。このような連続鋳造装置51においては、鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度を溶湯9の液相線温度を超える温度に制御することができないため、鋳型8の導入口8付近に、図に示すようなプラグ52が形成される。このため、溶湯9の鋳型8内への供給量や鋳型7内の溶湯圧などが不安定となり、本実施形態の連続鋳造装置1のような表面欠陥や不均一な鋳造組織のない高品質の線材12を安定して鋳造することはできない。
本実施形態により得られた線材(鋳造ワイヤロッド)12は、その後、伸線加工、熱間鍛造などの加工処理が施され、最終的に、例えば高強度・高導電性線材、導電用ばね材、コネクタなどの製品に加工される。
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1に示した連続鋳造装置1では、鋳型9の周囲に金属管7を配置し、この金属管7を坩堝3と共通の誘導加熱装置5により加熱することで、鋳型8の坩堝3との接続部近傍を加熱するようにしているが、図2に例示するように、金属管7に代えて、鋳型8を選択的に加熱する誘導加熱用コイル17を配置するようにしてもよい。
すなわち、図2に示す連続鋳造装置21は、図1に示す連続鋳造装置1の金属管7に代えて誘導加熱用コイル17を備える。また、誘導加熱用のコイル5a及び高周波電流供給回路5bを有する誘導加熱装置5に代えて、誘導加熱用コイル25a及び高周波電流供給回路25bを有する誘導加熱装置25を備える。さらに、供給電流制御回路16aを有する加熱温度調整部16に代えて、供給電流制御回路26aを有する加熱温度調整部26を備える。
誘導加熱用コイル17は、図2に示すように、鋳型8の加熱対象部分8eを包囲するように配置されている。一方、誘導加熱用コイル25aは、坩堝3を包囲するように配置されている。また、高周波電流供給回路25bは、誘導加熱用コイル25a及び誘導加熱用コイル17に対し個別に高周波電流を供給する。また、加熱温度調整部26の供給電流制御回路26aは、温度センサ16bで検出される鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度が、坩堝3内の溶融金属9の液相線温度を超える所定の温度範囲に調整されるように、誘導加熱用コイル25a及び誘導加熱用コイル17に対し高周波電流供給回路5bからそれぞれ供給される高周波電流の供給量を個別に制御する。具体的には、加熱温度調整部26は、溶融金属9の液相線温度をT℃としたとき、(T+100)℃以上(T+300)℃以下の範囲になるように、鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度を制御する。好ましくは、(T+150)℃以上(T+250)℃以下の範囲になるように制御する。
このような連続鋳造装置21においても、鋳型8の坩堝3との連結部分8c近傍の温度が、溶湯9の液相線温度を超える所定の温度範囲に制御されるので、鋳型8内への溶湯9の導入口8a付近における溶湯9の凝固、それに伴うプラグの形成が防止される。したがって、溶湯9の鋳型8内への供給量や鋳型7内の溶湯圧などが安定化し、プラグが形成された場合のような鋳型内の温度バランスの部分的崩れが生ずることがなくなり、表面欠陥や不均一な鋳造組織のない高品質の線材12を鋳造することができる。
また、以上説明した連続鋳造装置1、21は、いずれも坩堝3の底部に鋳型8を垂直に連結した、いわゆる縦型の連続鋳造装置の例であるが、坩堝3の側壁に鋳型8を水平に取り付けた、いわゆる横型(水平ともいう)の連続鋳造装置であってもよい。図3は、そのような横型連続鋳造装置の一例を示したものである。この図3に示す横型の連続鋳造装置31は、図2に示す縦型の連続鋳造装置21の鋳型8を、坩堝3の側壁下部に連結したものである。このような連続鋳造装置31においても、図1および図2に示す各連続鋳造装置1、21と同様、表面欠陥や不均一な鋳造組織のない高品質の線材12を安定して鋳造することができる。
さらに、図1〜図3に示した各連続鋳造装置では、坩堝3や鋳型8の加熱対象部分8eの加熱に誘導加熱装置を用いているが、これに代えて、電熱線などを使用する抵抗式の加熱装置を用いることも可能である。
なお、表面割れなどの欠陥は、鋳造する線材の外径が細くなるほど特性に大きく影響する。したがって本発明はこのような表面欠陥の影響の大きい細径の線材の鋳造に特に有用である。具体的には、外径15mm以下の線材の鋳造に有用であり、特に、外径5〜10mm以下の線材の鋳造に有用である。
また、表面割れなどの欠陥は、銅よりも銅合金が、また、銅合金では銅に添加する元素の量が多くなるほど生じやすい。したがって、本発明はこのような表面欠陥の生じやすい銅合金、特に添加元素量の多い銅合金からなる鋳造ロッドの製造に有用である。具体的には、銀を2〜15質量%含有する銅合金などからなる鋳造ロッドの製造に有用である。
次に、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
実施例1〜3、比較例1、2
図1に示す連続鋳造装置1を用い、組成がCu−10質量%Agの直径10mmの銅合金ワイヤロッドを鋳造した。具体的には、坩堝3内に原料供給装置2から原料となる20kgの金属材料を投入し、まず水冷ジャケット10を稼働させ、次いで誘導加熱装置5による加熱を開始した。坩堝3内の金属材料が加熱溶融し、温度センサ16bで検出される鋳型8の坩堝3との接続部近傍の温度tが、Cu−10質量%Agの液相線温度(1030℃)よりも50℃、100℃、200℃、300℃、または400℃高い温度に調整されたところで、銅合金ワイヤロッドの鋳造を開始した。鋳造開始に際して、スターティングロッドとして外径10mmの銅ワイヤロッドを鋳型8の引出口8bから導入口8aへ向けて挿入した。ピンチローラ15による引出速度(鋳造速度)は、400mm/minに設定した。
実施例1〜3、比較例1、2
図1に示す連続鋳造装置1を用い、組成がCu−10質量%Agの直径10mmの銅合金ワイヤロッドを鋳造した。具体的には、坩堝3内に原料供給装置2から原料となる20kgの金属材料を投入し、まず水冷ジャケット10を稼働させ、次いで誘導加熱装置5による加熱を開始した。坩堝3内の金属材料が加熱溶融し、温度センサ16bで検出される鋳型8の坩堝3との接続部近傍の温度tが、Cu−10質量%Agの液相線温度(1030℃)よりも50℃、100℃、200℃、300℃、または400℃高い温度に調整されたところで、銅合金ワイヤロッドの鋳造を開始した。鋳造開始に際して、スターティングロッドとして外径10mmの銅ワイヤロッドを鋳型8の引出口8bから導入口8aへ向けて挿入した。ピンチローラ15による引出速度(鋳造速度)は、400mm/minに設定した。
上記各実施例及び比較例で得られた銅合金ワイヤロッドの外観を観察し、表面欠陥の有無を調べた。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例で得られた銅合金ワイヤロッドは、いずれも表面欠陥がほとんどなく、特に、実施例2においては50μm以上の表面欠陥は発見できなかった。また、導電率のばらつきもほとんどなく、実施例については導電率のばらつきを1%未満に抑えることができた。これに対して、比較例では、表面欠陥が観察され、さらに導電率にもばらつきが認められた。なお、実施例及び比較例における導電率のばらつきは、銅合金ワイヤロッドの先端部および後端部の最小値及び最大値により、それぞれ測定した。
なお、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形、変更が可能である。
1,21,31…連続鋳造装置、3,33…坩堝、3a…溶融金属収容部、5,25…誘導加熱装置(加熱機構)、5a,25a…誘導加熱用コイル、5b,25b…高周波電流供給回路、7…金属管(加熱補助機構)、8…鋳型、8a…導入口、8b…引出口、8c…連結部分、8d…被冷却部分、8e…加熱対象部分、9…溶融金属(溶湯)、10…水冷ジャケット(冷却機構)、12…線材(鋳造ワイヤロッド)、15…ピンチローラ、16,26……加熱温度調整部(温度制御機構)、16a,26a…供給電流制御回路、16b…温度センサ。
Claims (9)
- 溶融金属が収容される坩堝と、前記坩堝の溶融金属収容部に、前記坩堝を貫通して接続された、先端に鋳造金属引出口を備えた筒状の鋳型と、前記坩堝を加熱する加熱機構と、前記鋳型の先端部側を冷却する冷却機構とを有する鋳造装置を用い、前記坩堝に収容された溶融金属から直径15mm以下の線材を引出す線材の製造方法であって、
前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍の温度を、(T+100)℃以上(T+300)℃以下(ここで、Tは前記溶融金属の液相線温度である)の範囲に保持しつつ、前記線材を引出すことを特徴とする線材の製造方法。 - 前記溶融金属から直径が5mm以上15mm以下の線材を引出すことを特徴とする請求項1記載の線材の製造方法。
- 前記溶融金属は、液相線温度が1300℃以下の金属であることを特徴とする請求項1または2記載の線材の製造方法。
- 前記鋳造装置は、前記加熱機構と協働して、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を選択的に加熱する加熱補助機構をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の線材の製造方法。
- 前記加熱補助機構は、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を包囲するように配置された金属製の管状部材を備え、かつ前記加熱機構は、前記管状部材とともに前記坩堝を包囲するように配置された誘導加熱用コイルを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の線材の製造方法。
- 溶融金属が収容される坩堝と、
前記坩堝の溶融金属収容部に、前記坩堝を貫通して接続された、先端に鋳造金属引出口を備えた筒状の鋳型と、
前記坩堝を加熱する加熱機構と、
前記鋳型の先端部側を冷却する冷却機構と、
前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍の温度を前記溶融金属の液相線温度を超える所定の温度範囲に制御する温度制御機構と、
を具備することを特徴とする線材の鋳造装置。 - 前記加熱機構と協働して、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を選択的に加熱する加熱補助機構をさらに具備することを特徴とする請求項6記載の線材の鋳造装置。
- 前記加熱補助機構は、前記鋳型の前記坩堝との接続部近傍を包囲するように配置された金属製の管状部材を備え、かつ前記加熱機構は、前記管状部材とともに前記坩堝を包囲するように配置された誘導加熱用コイルを備えることを特徴とする請求項7記載の線材の鋳造装置。
- 前記鋳型は、黒鉛からなることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項記載の線材の鋳造装置。
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JP2009197816A JP2011045918A (ja) | 2009-08-28 | 2009-08-28 | 線材の製造方法及び線材の鋳造装置 |
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