以下、本発明の好適な実施の形態を、添付図面に示す実施例に基づいて具体的に説明する。
図1は、5相ステッピングモータ1の各励磁コイルに対し、回動指令パルスが入力される毎に励磁態様を切り替えることが可能な、ステッピングモータ駆動装置10の内部構成を示すブロック図である。
なお、図1は、本発明に係るステッピングモータ駆動装置10をペンダゴン結線方式の5相ステッピングモータ1に接続した状態を示している。同図に示す実施形態では、ペンダゴン結線方式の5相ステッピングモータ1を接続してマイクロステップの駆動制御を行う実施形態を示しているが、本発明はペンタゴン結線方式のステッピングモータ、又は、5相のステッピングモータに限定するものではなく、スター結線方式のステッピングモータ、又は、3相のステッピングモータにも応用することが可能である。また、直動型のステッピングモータにも応用することができる。
図1に示すように、本発明に係るステッピングモータ駆動装置10は、上位のコンピュータ等の外部機器から5相ステッピングモータ1の回動指令パルスCWP(Clock Wise Pulse)、又は、回動指令パルスCCWP(Counter Clock Wise Pulse)を入力し、5相ステッピングモータ1の各励磁コイル1a〜1eを励磁するためのハイサイド指令及びローサイド指令を、各駆動素子TR1〜TR10に出力する励磁波形決定手段12を備えている。なお、駆動素子TR1〜TR10として、MOS−FETやパワートランジスタ、その他のパワー素子を用いることができる。
また、ステッピングモータ駆動装置10は、励磁コイル1a〜1eのインピーダンスに応じて、供給する駆動電源の電流を制御するモータ電流制御手段16と、各相の励磁コイル1a〜1eとモータ電流制御手段16の正極との導通又は遮断を制御するハイサイド駆動素子TR1、TR3、TR5、TR7、及びTR9と、各相の励磁コイル1a〜1eと駆動電源の負極との導通又は遮断を制御するローサイド駆動素子TR2、TR4、TR6、TR8、及びTR10とを備えている。また、ステッピングモータ駆動装置10は、励磁コイル1a〜1eが発した起電力をバイパスするダイオードD1〜D10を備えている。
上述の回動指令パルスCWPは、5相ステッピングモータ1のモータ回転子を所定の回動位置まで時計回りに正転させるための指令パルスであり、CCWPは所定の回動位置まで反時計回りに逆転させるための指令パルスである。
図1に示す励磁波形決定手段12は、単位時間内に入力した回動指令パルスの数量を計数することで、指令されたモータ回転子の指令回転数を検出する指令回転数検出手段12vと、入力した回動指令パルスを用いて微細ステップ及び基本ステップの歩進数を計数する電気角位置管理手段12aと、基本ステップの歩進数に応じて5相ステッピングモータ1のモータ回転子を1の基本ステップ位置に位置決めするための第1励磁組、及び他の基本ステップ位置に位置決めするための第2励磁組との組合せを出力する励磁相組合せ出力手段12bと、回数分割ステップカウンタの値及び基本ステップカウンタの値に応じて2つの励磁組合せの励磁回数割合又は励磁時間割合等を決定する励磁回数割合決定手段12d(励磁割合決定手段の一形態)とを備えている。
また、励磁波形決定手段12は、所定の単位励磁周期Tが計数される毎に単位励磁切替指令を出力する単位励磁周期出力手段12hと、所定の組合せ励磁周期TCが計数される毎に組合せ励磁切替指令を出力する組合せ励磁周期出力手段12cとを備えている。
また、励磁波形決定手段12は、組合せ励磁切替指令が出力される毎、又は基本ステップカウンタの値が更新される毎に新たな励磁回数割合又は励磁時間割合等を記憶する励磁回数割合記憶手段12i(励磁割合記憶手段の一形態)と、励磁回数割合記憶手段12iに記憶されている励磁回数割合又は励磁時間割合等を用いてハイサイド駆動素子を駆動するためのハイサイド指令データ、及び、ローサイド駆動素子を駆動するためのローサイド指令データとを生成する駆動素子指令生成手段12jと、ハイサイド指令データ及びローサイド指令データを用いて、ハイサイド駆動素子及びローサイド駆動素子を駆動するためのハイサイド指令及びローサイド指令を、単位励磁切替指令を入力する毎に切り替えて出力するデッドタイム挿入手段12kとを備えている。
また、励磁波形決定手段12は、励磁コイルに印加する電圧値又はモータ回転子の回転数に応じて定められるデッドタイムを生成するデッドタイム生成手段12lと、励磁コイルに印加する電圧値が第1の閾値を上回っていることを検出する第1閾値判断手段と、励磁コイルに印加する電圧値が第2の閾値を下回っていることを検出する第2閾値判断手段とを備えている。
なお、励磁相組合せ出力手段12bと、励磁回数割合決定手段12dと、励磁回数割合記憶手段12iと、駆動素子指令生成手段12jとの機能を統合し、これらを一つの素子で構成することも可能であるが、本実施例では各機能の説明を容易にするために、各機能毎に構成を分けて記載している。
モータ電流制御手段16は、5相ステッピングモータ1の励磁コイル1a〜1eを励磁する電力を供給する電源PSと、電源PSの電圧を平滑化するコンデンサC1と、定電流駆動を行うために、励磁コイル1a〜1eに流れている電流を検出する電流検出抵抗15(電流検出手段)と、短時間に電圧の供給及び遮断を繰り返すPWM駆動を行うことによって励磁コイル1a〜1eに供給する電圧を調節するトランジスタTR11とを備えている。
また、モータ電流制御手段16は、電流検出抵抗15の両端に発生した電圧に応じてトランジスタTR11をオン、オフ制御することによって、励磁コイル1a〜1eのインピーダンス変化に依存せずに所定の電流を供給する制御を行う定電流コントロール回路14と、励磁コイル1a〜1eが発する起電力をバイパスするダイオードD11と、PWMにより生じた間欠的な電圧を入力して平滑化したモータ駆動電圧を生成するチョークコイルL1及びコンデンサC2とを備えている。
定電流コントロール回路14は、励磁コイル1a〜1eに供給する電流を検出し、その検出電流と基準電流との差を誤差信号として生成してトランジスタTR11のオン−オフ制御を行う。これにより、励磁コイル1a〜1eに供給する電圧を調節して、ステッピングモータの励磁コイルに対する総電流が所定の電流に定まるように制御することができる。トランジスタTR11のオン、オフにより脈流となった電圧は、チョークコイルL1及びコンデンサC2により平滑化されて、駆動素子TR1〜TR10を介して励磁コイル1a〜1eに供給される。
例えば、電流検出抵抗15を流れる電流が減少した場合には、誤差信号のレベルが上昇するので、トランジスタTR11のオン時間を長くする。すると、トランジスタTR11を通過した電圧は、チョークコイルL1及びコンデンサC2により平滑化されて高い電圧となって励磁コイル1a〜1eに印加されるので、励磁電圧を増加させる制御を行うことができる。また、電流検出抵抗15を流れる電流が増加した場合には、誤差信号のレベルが下降するので、トランジスタTR11のオン時間を短くする。このようにして、励磁コイル1a〜1eに印加する電圧を減少させる制御を行うことができる。
このように、モータ電流制御手段16を用いて5相ステッピングモータ1の励磁電圧を適宜調節することによって、励磁波形決定手段12が出力する第1励磁組又は第2励磁組の励磁周期Tとは無関係に励磁電流を安定化させ、5相ステッピングモータ1を定電流駆動することができる。なお、モータ電流制御手段16には、モータ駆動電圧を測定してその結果を出力する電圧検出手段が設けられている。なお、図1に示す実施形態に代えて、電圧検出手段は、励磁コイルに印加する電圧値を測定するように構成してもよい。なお、電圧検出手段が出力する電圧値として、アナログの電圧値を用いてもよいし、A/D変換器を用いてデジタルの電圧データに変換した電圧値を用いることもできる。
次に、5相ステッピングモータ1の機械角を基本ステップ毎に10分割する際の励磁について、図2〜図4を用いて説明する。
先ず、図2(a)に示すように、ペンタゴン結線方式を採用した5相ステッピングモータ1の励磁コイル1a〜1eと、励磁相ABCDEabcdeの励磁電流の方向とを定義する。そして、図2(b)に示すように、5相ステッピングモータ1の励磁相ABCDEabcdeと、トルクベクトルVA〜Veとの関係とを定義する。
図2(a)に示すように、励磁コイル1aに流す電流の方向に応じて、励磁相A及び励磁相aを定義する。以下同様にして、励磁コイル1b〜1eに流す電流の方向に応じて、それぞれ励磁相BbCcDdEeを定義する。そして、各励磁相を励磁した際のトルクベクトルVA〜VE及びトルクベクトルVa〜Veの向きを、図2(b)に示すように定義する。図2(a)及び図2(b)に示すように、励磁コイル1aに流す電流は、励磁Aと励磁aとでは逆方向であり、トルクベクトルもVAとVaとで逆方向になる。
次に、図3に、モータ回転子を所定の基本ステップ位置に位置決めする励磁相の組み合わせ例を示す。
なお、表現を簡略化するために、5相の励磁コイル1a〜1eのうちの複数の励磁コイルに対して同時に励磁電流を流すことにより、多相励磁によるトルクベクトルの合成を行う際における単位励磁相の組合せを励磁組と呼ぶ。例えば、励磁相A及び励磁相Bの2相の単位励磁相を同時に励磁した状態を2相励磁と呼び、これを励磁組(AB)と表記する。更に、擬似的な4相励磁を実現するために、励磁組(AB)及び励磁組(CD)を時間をずらして時系列的に合成して励磁する場合を、励磁組(AB−CD)と表記することにする。
図3に示す実施例では、5相ステッピングモータ1のモータ回転子をステップ=0*Nの基本ステップで停止させる際に、励磁相ABCDの4相を励磁する。ところが、単一の電源を用いてこの4相を同時に励磁することはできないので、励磁組(BC)及び励磁組(AD)を時間をずらして時系列的に交互に励磁して、4相励磁を実現する。すなわち、モータ回転子をステップ=0*Nの基本ステップで停止させる際には、5相ステッピングモータ1に対して励磁組(BC−AD)の励磁を行う。
また、図3に示すように、5相ステッピングモータ1のモータ回転子を、ステップ=1*Nの基本ステップで停止させる際には、5相ステッピングモータ1に対して励磁組(CD−BE)の励磁を行う。このように、ステップ=0*Nからステップ=9*Nまでの励磁を切り替えることによって、各基本ステップにおける位置決めを行うことができる。
例えば、5相ステッピングモータの基本ステップ角αが0.72°の場合には、励磁相をABCD→BCDE→CDEa→DEab→Eabc→abcd→bcde→cdeA→deAB→eABCの順序で10回切り替えることにより、モータ回転子を7.2°回転させることができる。更に、この10ステップ(0〜9)の歩進を50回繰り返すと、モータ回転子が360°、すなわち丁度1回転することになる。
次に、図4に、モータ回転子を所定の基本ステップ位置に位置決めする励磁相の組み合わせの他の実施例を示す。
図4に示す実施例では、モータ回転子をステップ=0*Nの基本ステップで停止させる際に、励磁組(AB−CD)を励磁する。また、モータ回転子をステップ=1*Nの基本ステップで停止させる際には、励磁組(BC−DE)を励磁する。このように、ステップ=0*Nからステップ=9*Nまでの励磁を切り替えることによって、各基本ステップにおける位置決めを行うことができる。
なお、図3及び図4に示す実施例では、励磁コイル1a〜1eの両端が、必ずモータ電流制御手段16の正極(+)又は負極(−)のいずれかの制御された電位に接続されるように励磁している。このように、常に励磁コイル1a〜1eの端子が開放しないように2相励磁を行うことによって、前ステップから次ステップに切り替えて歩進を行った際の電流のオーバーシュートを減少させ、ダンピング特性を向上させることが可能となり、モータ回転子に発生する振動の低減と騒音の低減とを図ることができる。
次に、図1に示した励磁波形決定手段12を構成する各ブロックの処理について、図5を用いて説明する。
図5に示す励磁波形決定手段12は、5相ステッピングモータ1の回動指令パルスを入力し、単位時間内に入力した回動指令パルスの数量を計数して、指令されたモータ回転子の指令回転数を検出する指令回転数検出手段12vを備えている。
また、励磁波形決定手段12の電気角位置管理手段12aは、上位の桁から順に、5相ステッピングモータ1の回動指令パルスをm回入力する毎に基本ステップの歩進数を計数して出力する基本ステップカウンタと、回動指令パルスを入力する毎に基本ステップ角αをm分割した回数分割ステップの歩進数を計数して出力するm分割カウンタ(以降、回数分割ステップカウンタと記載する。)とを備えている。
図5に示す回数分割ステップカウンタは、回動指令パルスCWPを入力する毎に回数分割ステップの歩進数をカウントアップし、回動指令パルスCCWPを入力する毎に回数分割ステップの歩進数をカウントダウンして、その値を励磁回数割合決定手段12dに出力する。なお、回数分割ステップカウンタの下位に、当該回数分割ステップを更に細分割するためのカウンタを別途設けることも可能である。
基本ステップカウンタは、回数分割ステップカウンタの上位の桁に該当し、回数分割ステップカウンタの値が「9」から「0」に切り替わる際に一つカウントアップするように構成する。また回数分割ステップカウンタの値が、「0」から「9」に切り替わる際に一つカウントダウンするように構成する。基本ステップカウンタが計数する基本ステップの歩進数は、図3及び図4に示した基本ステップ位置(ステップ=0*N〜9*N)を表し、モータ回転子を所定のステップの位置に位置決めする励磁相の組み合わせを決定するためのカウンタである。
励磁相組合せ出力手段12bは、基本ステップカウンタから基本ステップの歩進数を入力すると、5相ステッピングモータ1のモータ回転子を1の基本ステップ位置に位置決めするための第1励磁組、及び、他の基本ステップ位置に位置決めするための第2励磁組の、励磁相の組合せを出力する。5相のステッピングモータを駆動する場合には、第1励磁組及び第2励磁組の組合せの数量は、図3及び図4に示したように、5相ステッピングモータ1の相数Nの2倍の10種類存在する。
図5に示す励磁相組合せ出力手段12bの内部には、5相ステッピングモータ1を励磁する際の励磁相の組合せが記憶されている。第1励磁組の4相を励磁する際には、2相の励磁組F1及び2相の励磁組F2を2回に分けて励磁するための励磁組(F1−F2)を出力する。また、第2励磁組の4相を励磁する際には、2相の励磁組F3及び2相の励磁組F4を2回に分けて励磁するための励磁組(F3−F4)を出力する。
例えば、図3に示した励磁を行う場合であって、基本ステップカウンタが基本ステップの歩進数として「0」を出力している場合(ステップ=0*Nの場合)には、基本ステップの歩進数が「0」と「1」との間をm分割したマイクロステップを実現すべく、第1励磁組として励磁組(AD−BC)を出力し、第2励磁組として励磁組(BE−CD)を出力する。
基本ステップカウンタが基本ステップの歩進数として「1」を出力している場合(ステップ=1*Nの場合)には、基本ステップの歩進数が「1」と「2」との間をm分割したマイクロステップを実現するべく、第1励磁組として励磁組(BE−CD)を出力し、第2励磁組として励磁組(Ca−DE)を出力する。以降同様に、基本ステップの歩進数に応じて第1励磁組と第2励磁組とを出力する。
励磁相組合せ出力手段12bの機能を実現する素子として、ROMなどのメモリを用いることができる。その場合には、電気角位置管理手段12aは、メモリのアドレスカウンタとして機能するように構成する。
励磁回数割合決定手段12dは、回数分割ステップの歩進数に応じて、第1励磁組を励磁する回数又は時間等を漸増又は漸減するとともに、第2励磁組を励磁する回数又は時間等を漸減又は漸増することにより、第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合又は励磁時間等を決定して出力する機能を備えている。
例えば、回数分割ステップの分割数をm=10に設定している場合には、第1励磁組を励磁する回数を10回〜1回まで漸減するとともに、第2励磁組を励磁する回数を0回〜9回まで漸増することにより、第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合を10:0〜1:9まで変更して出力する機能を備えている。なお、図5に示す実施例では、4相励磁を実現するために2相励磁を2回出力して合成しているので、励磁回数は2回×m分割=20回(0P〜19P)となっている。
図5に示す実施例によれば、回数分割ステップカウンタが回数分割ステップの歩進数として「0」を出力している場合には、第1励磁組のF1、F2の繰り返しを励磁相0P〜19Pに代入して出力する。これにより、第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合を10:0に設定して、基本ステップの歩進数「0」の位置にモータ回転子を位置決めすることができる。
回数分割ステップカウンタが回数分割ステップの歩進数として「1」を出力している場合には、第2励磁組のF3、F4を励磁相0P、1Pに代入して出力し、第1励磁組のF1、F2の繰り返しを2P〜19Pに代入して出力する。これにより、第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合を9:1に設定して、基本ステップの歩進数「0」と「1」との間を10分割した位置にモータ回転子を位置決めすることができる。
以下同様に、回数分割ステップの歩進数に応じて第1励磁組を励磁する回数を漸増又は漸減するとともに、第2励磁組を励磁する回数を漸減又は漸増することにより励磁相0P〜19Pを定め、第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合を決定して出力する。
なお、図5の励磁回数割合決定手段12dに示した実施形態では、励磁回数割合の遷移を判り易く説明する都合上、励磁組F1(AD)及び励磁組F2(BC)並びに励磁組F3(BE)及び励磁組F4(CD)を交互に時間をずらして時系列的に交互に励磁して、4相励磁を実現する実施形態を示したが、図6に示すようにそれぞれの励磁組を纏めて連続して励磁することもできる。この図6に示すように、それぞれの励磁組を纏めて励磁することによって、励磁の切替回数を減少させて、励磁の切替時に発生する熱損失やノイズの発生等を減少させることができる。
励磁回数割合記憶手段12iは、組合せ励磁切替指令が出力される毎、又は基本ステップカウンタの値が更新される毎に、励磁回数割合決定手段12dが出力する第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合又は励磁時間割合等を記憶する。
単位励磁周期出力手段12hは、所定の単位励磁周期Tが計数される毎に、励磁組を構成する単位励磁相に対する励磁を切り替えるための単位励磁切替指令を出力する。
組合せ励磁周期出力手段12cは、単位励磁周期Tの整数倍で構成される組合せ励磁周期TCが計数される毎に、励磁回数割合又は励磁時間割合等に応じた2つの励磁組合せによる励磁(例えば励磁相0P〜19P。)を切り替えるための組合せ励磁切替指令を出力する。例えば組合せ励磁周期TCとして50μs、単位励磁周期Tとして2.5μsの値を用いることができる。
励磁回数割合決定手段12dが出力する励磁相0P〜19Pを、組合せ励磁周期TC毎に繰り返して出力することにより、基本ステップ角αをm分割したマイクロステップを実現することが可能となる。
例えば、図5の励磁回数割合決定手段12dに示すように、回数分割ステップの歩進数が0の場合には、第1励磁組(F1−F2)のみが組合せ励磁周期TC毎に繰り返し励磁され、モータ回転子は基本ステップ=0*Nの位置に位置決めされる。この状態において回動指令パルスCWPが1パルス入力されると、回数分割ステップカウンタの値が1増加して、回数分割ステップの歩進数が1となる。すると、組合せ励磁周期TC内において第2励磁組(F3−F4)が1回励磁され、第1励磁組(F1−F2)が9回励磁される。この割合での励磁が組合せ励磁周期TC毎に繰り返されることにより、モータ回転子は(基本ステップ=0*N)+(回数分割ステップ=1)の位置に位置決めされる。
このようにして、回数分割ステップの歩進数に応じて第1励磁組を励磁する回数を漸減するとともに、第2励磁組を励磁する回数を漸増することにより、第1励磁組と第2励磁組との励磁回数割合を10:0〜1:9まで変更して、回数分割ステップの歩進数に応じた位置決めを行うことができる。
上記に示した実施形態では、1つの基本ステップの歩進数に対して、励磁回数割合を変更する回数分割により10分割したマイクロステップを実現する実施形態を示したが、本発明は10分割に限定するものではなく、20分割、40分割、その他の分割数を用いることもできる。また、回数分割に加えて、第1励磁組(F1−F2)を励磁する時間を漸減するとともに、第2励磁組(F3−F4)を励磁する時間を漸増することにより、第1励磁組と第2励磁組との励磁時間割合を変更する、時間分割によるマイクロステップを用いることもできる。
駆動素子指令生成手段12jは、励磁回数割合記憶手段12iに記憶されている励磁回数割合又は励磁時間割合等を用い、ハイサイド駆動素子を駆動するためのハイサイド指令データ、及び、ローサイド駆動素子を駆動するためのローサイド指令データとを生成して出力する。
図7に、駆動素子指令生成手段12jが生成するハイサイド指令データ、及びローサイド指令データの構成例を示す。図7に示すハイサイド指令データ及びローサイド指令データは、図5に示す基本ステップの歩進数が0で、回数分割ステップの歩進数が1の場合(図3に示した2相励磁の組合せ1の場合であって、ステップ0*N+(1/10)*1の場合)における0P、1P、2P、3P…のデータである。
ハイサイド駆動素子TR1、TR3、TR5、TR7、又はTR9に対するハイサイド指令データが1の場合には、これらの駆動素子がオンになり、各出力端子を介して+V(V)の正極の電圧を出力することができる。ローサイド駆動素子TR2、TR4、TR6、TR8、又はTR10に対するローサイド指令データが1の場合には、これらの駆動素子がオンになり、各出力端子を0(V)の負極に接続することができる。また、図7には示されていないが、ハイサイド指令データ及びローサイド指令データの双方が0の場合には、その出力端子は+V(V)にも0(V)にも接続されないハイインピーダンス状態となる。
第1閾値判断手段12mは、励磁コイルに印加する駆動電源の電圧値を、モータ電流制御手段16の電圧検出手段から取得して、予め定められている第1閾値との比較を行う。もし、第1閾値よりも駆動電源の電圧値が高くなった場合には、その旨を表す第1回転数情報を記憶するとともにデッドタイム生成手段12lにも第1回転数情報を出力する。デッドタイム生成手段12lは、当該第1回転数情報を取得すると、デッドタイム挿入手段12kに出力していた第2のデッドタイムに代えて、第1のデッドタイムを生成して出力する。
例えば、単位励磁周期Tとして2.5μsを設定しており、モータ電流制御手段16が励磁コイルに印加するための電圧として3〜23(V)を出力することが可能であって、駆動電源の電圧値が第1閾値として設定した10(V)を超えた場合には、デッドタイム生成手段12lは第1のデッドタイムとして50nsを出力する。なお、第2のデッドタイムの値として、0μsを用いても良いし、10ns等の初期値を用いることもできる。なお、デッドタイム生成手段12lは、アナログ値のデッドタイムを出力する構成を用いることもできるし、デッドタイムカウンタを内蔵してデッドタイムを数値として出力する構成を用いることもできる。
第2閾値判断手段12nは、励磁コイルに印加する駆動電源の電圧値を取得して、予め定められている第2閾値との比較を行う。この第2閾値の値は、前記第1閾値よりも低い値に設定することで、電圧値に応じてデッドタイムを設定する際にヒステリシスを設けるためのものである。もし、第2閾値よりも駆動電源の電圧値が低くなった場合には、その旨を表す第2回転数情報を第1閾値判断手段12mに出力する。第1閾値判断手段12mは、当該第2回転数情報を取得すると、記憶していた第1回転数情報をリセットするとともに、第2回転数情報をデッドタイム生成手段12lに出力する。
例えば、駆動電源の電圧値が第2閾値として設定した9(V)を下回った場合には、その旨を表す第2回転数情報を第1閾値判断手段12mに出力する。第2回転数情報を取得した第1閾値判断手段12mは、記憶していた第1回転数情報をリセットするとともに、デッドタイム生成手段12lに第2回転数情報を出力する。
デッドタイム生成手段12lが第2回転数情報を取得すると、デッドタイム挿入手段12kに出力していた第1のデッドタイム(例えば50ns)に代えて、第2のデッドタイム(例えば0ns)を生成して出力する。N相ステッピングモータ1の励磁コイルに印加する電圧が高い場合には、一般にハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子とが同時にオンとなる時間も長くなるので、励磁コイルに印加する電圧値に応じてデッドタイムを長く設定すると良い。
デッドタイム挿入手段12kは、単位励磁周期出力手段12hから単位励磁切替指令が出力される毎に、ハイサイド指令データ及びローサイド指令データに応じたハイサイド指令及びローサイド指令を出力する。
駆動素子TR1〜TR10は、デッドタイム挿入手段12kから取得したハイサイド指令及びローサイド指令に応じて5相ステッピングモータ1の各励磁コイル1a〜1eを励磁する。
上記にて説明したデッドタイム挿入手段12kが出力するハイサイド指令及びローサイド指令の一例を、図8のタイミングチャートに示す。
図8に示すハイサイド指令及びローサイド指令は、図7に示したハイサイド指令データ及びローサイド指令データを用いて、単位励磁切替指令が出力される毎に、ハイサイド指令及びローサイド指令を切り替えて出力する状態を示した図であり、デッドタイムを挿入しない場合の指令である。
図8に示す例では、時刻TF0において、OUT3のハイサイド駆動素子TR5とローサイド駆動素子TR6とが同時に切り替わることになる。この場合には、図35に示したようなゲートオンの重なり部分が生じるとともに、駆動素子のスルーレートに起因する短絡電流が増大するという問題が発生する。なお、同様に、時刻TF1においてハイサイド駆動素子TR1及びTR5と、ローサイド駆動素子TR2及びTR6とが同時に切り替わる。また、時刻TF2においてハイサイド駆動素子TR7とローサイド駆動素子TR8とが同時に切り替わる。また、時刻TF3及びTF4においては、ハイサイド駆動素子TR1及びTR7と、ローサイド駆動素子TR2及びTR8とが同時に切り替わる。
駆動電源の電圧が低い場合には、このハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子とが同時に切り替わることにより発生する短絡電流はあまり問題とはならないが、駆動電源の電圧が上昇した場合(例えば、5相ステッピングモータ1のモータ回転子の回転数が上昇した場合など。)における短絡電流は、消費電力を増大させたり、発熱により機器の信頼性が低下したり、放射ノイズを発するなどの不具合を生ずることになる。
そこで、本発明では、ハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子とが同時に切り替わることとなる際に、一時期双方の駆動素子を遮断したハイインピーダンス状態を挿入することにした。これにより、図35に示したようなゲートオンの重なり部分に起因する短絡電流を減少させるとともに、駆動素子のスルーレートに起因する短絡電流を減少させることができる。そして、消費電力の増大を防止し、発熱を防止して機器の信頼性が低下する不具合を防止し、発生する放射ノイズを減少させることができる。
なお、デッドタイムを挿入することにより、ハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子の双方を遮断したハイインピーダンス状態を挿入すると、マイクロステップ駆動時の停止精度が悪化したり、5相ステッピングモータ1のモータ回転子の回転数が低い場合の回転が不安定になって振動が発生する。したがってモータ回転子の回転数が低く、駆動電源の電圧が低い場合には、停止精度を向上させたり、モータ回転子の回転を安定させるために、デッドタイムは短い方が好ましい。
図9に、デッドタイム挿入手段12kによりデッドタイムDTが挿入されたハイサイド指令及びローサイド指令のタイミングチャートの一例を示す。図9は、図3に示した2相励磁の組合せ1の場合であって、基本ステップの歩進数=0、回数分割ステップの歩進数=1の場合においてデッドタイムDTを挿入したハイサイド指令及びローサイド指令を表した図である。
図9に示すように、時刻TF0において単位励磁切替指令が出力された際に、ハイサイド駆動素子TR5とローサイド駆動素子TR6が同時に切り替わることとなる場合には、ハイサイド駆動素子TR5に対するハイサイド指令にオンディレイのデッドタイムDTを挿入する。このデッドタイムDTを挿入したことにより、この間出力端子OUT3がハイインピーダンス状態となるので、デッドタイムDTの間において実際に励磁される励磁組は3相のBCEとなる。
励磁組(BCE)のトルクベクトルは図2(b)を参照して算出すると22.4°となる。この励磁組(BCE)のトルクベクトルは、時刻TF0の直前の励磁組(BC)におけるトルクベクトル36°と、時刻TF1までの励磁組(BE)におけるトルクベクトル0°との間に位置するトルクベクトルとなる。このように、デッドタイムDTを挿入することによって得られるトルクベクトルは間に位置するトルクベクトルとなるので、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
次の時刻TF1においては、ローサイド駆動素子TR2及びTR6に対してオンディレイのデッドタイムDTを挿入することで、励磁組(BCDE)の4相励磁を行う。励磁組(BCDE)のトルクベクトルは0°であり、時刻TF1までの励磁組(BE)におけるトルクベクトル0°、及び時刻TF2までの励磁組(CD)におけるトルクベクトル0°と等しい値となる。したがって、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
次の時刻TF2においては、ローサイド駆動素子TR8に対してオンディレイのデッドタイムDTを挿入することで、励磁組(ACD)の3相励磁を行う。励磁組(ACD)のトルクベクトルは13.6°であり、時刻TF2までの励磁組(CD)におけるトルクベクトル0°と、時刻TF3までの励磁組(AD)におけるトルクベクトル36°との間に位置するものである。したがって、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
次の時刻TF3においては、ハイサイド駆動素子TR1及びTR7に対してオンディレイのデッドタイムDTを挿入することで、励磁組(ABCD)の4相励磁を行う。励磁組(ABCD)のトルクベクトルは36°であり、時刻TF3までの励磁組(AD)におけるトルクベクトル36°と、時刻TF4までの励磁組(BC)におけるトルクベクトル36°と等しいものである。したがって、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
以降同様にして、ハイサイド指令及びローサイド指令が同時に切り替わることとなる場合には、当該切替時におけるハイサイド指令又はローサイド指令のいずれかに対して、出力端子をハイインピーダンス状態にするためのデッドタイムを挿入した新たなハイサイド指令又はローサイド指令を生成してゆく。
本発明では、駆動電源の電圧値が上昇するのに従って、デッドタイムを長くするようにしている。したがって、モータ回転子の回転数が上昇するにつれてデッドタイムが長くなることになる。なお、一般にステッピングモータ駆動装置では、モータ回転子の回転数が上昇した場合には、何れかのタイミングでマイクロステップ駆動から基本角ステップ毎に励磁を行うフルステップ駆動に切り替える処理を行っている。
図9に示す実施形態では、ハイサイド指令又はローサイド指令が0から1に変化する部分にオンディレイのデッドタイムDTを挿入した実施形態を示している。この他にも、単位励磁周期Tの経過を待たずにハイサイド指令又はローサイド指令を1から0に変化させることで、ハイサイド駆動素子及びローサイド駆動素子の双方を遮断するためのデッドタイムDTを挿入することもできる。
次に、図9に示す状態から、モータ回転子の回転数の上昇に伴ってデッドタイムDTを徐々に延長してゆく場合について考察する。図9に示す状態からデッドタイムDTを延長してゆき、デッドタイムDT=Tまで延長することも可能である。その場合には、トルクベクトルは22.4°、0°、13.6°、36°、36°…となり、デッドタイムDT=0の本来のトルクベクトル0°、0°、36°、36°…とは若干異なることになる。もし、このトルクベクトルの違いによる問題が顕著化するような場合には、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替えることで問題の発生を回避することができる。
図10に、図3に示した2相励磁の組合せ1の場合であって、基本ステップの歩進数=0のフルステップ駆動を行い、デッドタイムDT=T/2を挿入したハイサイド指令及びローサイド指令のタイミングチャートの一例を示す。
図10に示すように、励磁相(AD−BC)の励磁を行っているところにデッドタイムDTを挿入して励磁相(ABCD)の4相励磁を行っても、トルクベクトルに変化は発生しない。したがって、基本ステップにおいては、更にデッドタイムDTを長く設定してゆき、デッドタイムDT=Tとしても、何ら問題は発生しないこととなる。
すなわち、モータ回転子の回転数の上昇に伴ってハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子とに流れる短絡電流を減少させるためにデッドタイムDTを増加させてゆくとともに、フルステップ駆動に切り替えることによって、自然に4相励磁のフルステップ駆動に移行させることができる。
なお、フルステップ駆動を行う場合には、回数分割ステップ等に関する励磁の組合せが不用となるので、基本ステップの更新周期が2×Tに至るまで、低振動で静穏運転が可能な2相励磁(ステッピングモータの励磁コイルの全ての端子を電源の正極又は負極のいずれかに接続した励磁。)によるフルステップ駆動を行うことができる。また、4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えた場合には、基本ステップの更新周期が更に短くなった場合であっても、通常の高速回転を行うことができる。
上述の図9及び図10では、図3に示した2相励磁の組合せ1を用いた場合であって、基本ステップの歩進数=0の場合における励磁組(AD−BC)及び励磁組(BE−CD)について説明した。この、2相励磁の組合せ1を用いた場合であって、ステップ0*N〜ステップ9*Nの各基本ステップの歩進数における励磁組を図11に示す。図11に示すように、ハイサイド指令又はローサイド指令にデッドタイムDTを挿入することによって、2相励磁の間に3相励磁、又は4相励磁が形成されることになる。
次に、図3に示した2相励磁の組合せ2について説明を行う。図9及び図10では、図3に示した2相励磁の組合せ1について説明したが、同様に2相励磁組合せ2の場合においても、デッドタイムDTを挿入した励磁を行うことができる。図12は、2相励磁の組合せ2の場合であって、基本ステップの歩進数=0、回数分割ステップの歩進数=1の場合においてデッドタイムDTを挿入したハイサイド指令及びローサイド指令を表した図である。
図12に示すように、時刻TF0において単位励磁切替指令が出力された際に、ハイサイド駆動素子TR1とローサイド駆動素子TR2が同時に切り替わることとなる場合には、ハイサイド駆動素子TR1に対するハイサイド指令にオンディレイのデッドタイムDTを挿入する。このデッドタイムDTを挿入したことにより、出力端子OUT1がハイインピーダンス状態となるので、実際に励磁される励磁組は3相のBCEとなる。
励磁組(BCE)のトルクベクトルは図2(b)を参照して算出すると22.4°となる。この励磁組(BCE)のトルクベクトルは、時刻TF0の直前の励磁組(CD)におけるトルクベクトル0°と、時刻TF1までの励磁組(BC)におけるトルクベクトル36°との間にあるトルクベクトルなので、デッドタイムDTを挿入したことによりモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
次の時刻TF1においては、ローサイド駆動素子TR2及びハイサイド駆動素子TR5に対してオンディレイのデッドタイムDTを挿入することで、励磁組(BCDE)の4相励磁を行う。励磁組(BCDE)のトルクベクトルは0°であり、時刻TF1までの励磁組(BC)におけるトルクベクトル36°、及び時刻TF2までの励磁組(DE)におけるトルクベクトル−36°との中間のトルクベクトルとなる。したがって、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
次の時刻TF2においては、ハイサイド駆動素子TR1、ローサイド駆動素子TR6及びTR8に対してオンディレイのデッドタイムDTを挿入することで、励磁組(ABCDE)の5相励磁を行う。励磁組(ABCDE)のトルクベクトルは18°であり、時刻TF2までの励磁組(DE)におけるトルクベクトル−36°と、時刻TF3までの励磁組(AB)におけるトルクベクトル72°との丁度中間に位置するものである。したがって、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
次の時刻TF3においては、ローサイド駆動素子TR2及びハイサイド駆動素子TR7に対してオンディレイのデッドタイムDTを挿入することで、励磁組(ABCD)の4相励磁を行う。励磁組(ABCD)のトルクベクトルは36°であり、時刻TF3までの励磁組(AB)におけるトルクベクトル72°と、時刻TF4までの励磁組(CD)におけるトルクベクトル0°との丁度中間に位置するものである。したがって、デッドタイムDTを挿入することによってモータ回転子の回転数に変動が現れるといった不具合は生じない。
以降同様にして、ハイサイド指令及びローサイド指令が同時に切り替わることとなる場合には、当該切替時におけるハイサイド指令又はローサイド指令のいずれかに対して、出力端子をハイインピーダンス状態にするためのデッドタイムを挿入した新たなハイサイド指令又はローサイド指令を生成してゆく。
前述の場合と同様に、図12に示す状態からデッドタイムDTを延長してゆき、デッドタイムDT=Tまで延長することも可能である。その場合には、トルクベクトルは22.4°、0°、18°、36°、36°…となり、デッドタイムDT=0の本来のトルクベクトル36°、−36°、72°、0°…とは若干異なることになる。もし、このトルクベクトルの違いによる問題が顕著化する場合には、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替えることで問題の発生を回避することができる。
図13に、2相励磁の組合せ2の場合であって、基本ステップの歩進数=0のフルステップ駆動を行い、デッドタイムDT=T/2を挿入したハイサイド指令及びローサイド指令のタイミングチャートの一例を示す。
図13に示すように、励磁相(AB−CD)の励磁を行っているところにデッドタイムDTを挿入して励磁相(ABCD)の4相励磁を行っても、合成後のトルクベクトルに変化は発生しない。したがって、基本ステップにおいては、更にデッドタイムDTを長く設定してゆき、デッドタイムDT=Tとしても、何ら問題は発生しないこととなる。すなわち、モータ回転子の回転数の上昇に伴ってハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子とに流れる短絡電流を減少させるためにデッドタイムDTを増加させてゆくとともに、フルステップ駆動に切り替えることによって、自然に4相励磁のフルステップ駆動に移行させることができる。
上述の図12及び図13では、図4に示した2相励磁の組合せ2を用いた場合であって、基本ステップの歩進数=0の場合における励磁組(AB−CD)及び励磁組(BC−DE)について説明した。この、2相励磁の組合せ2を用いた場合であって、ステップ0*N〜ステップ9*Nの各基本ステップの歩進数における励磁組を図14に示す。図14に示すように、ハイサイド指令又はローサイド指令にデッドタイムDTを挿入することによって、2相励磁の間に3相励磁、4相励磁、又は5相励磁が形成されることになる。
なお、フルステップ駆動を行う場合には、回数分割ステップ等に関する励磁の組合せが不用となるので、基本ステップの更新周期が2×Tに至るまで、低振動で静穏運転が可能な2相励磁(ステッピングモータの励磁コイルの全ての端子を電源の正極又は負極のいずれかに接続した励磁。)によるフルステップ駆動を行うことができる。また、4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えた場合には、基本ステップの更新周期が更に短くなった場合であっても、通常の高速回転を行うことができる。
〔複数のデッドタイムを設定する実施形態〕
上記に説明した実施形態では、駆動電源の電圧値が第1の閾値を上回った場合には、デッドタイム挿入手段12kがハイサイド指令又はローサイド指令のいずれかに第1のデッドタイムを加算し、駆動電源の電圧値が第1の閾値を上回った後、第1の閾値よりも低い第2の閾値を下回った場合には、前記第1のデッドタイムを減算する実施形態の説明を行ったが、駆動電源の電圧値に応じて、更に多くの種類のデッドタイムを設定することができる。
例えば、図15に示すように、駆動電源の電圧値に応じて複数のデッドタイムDTを設定することができる。図15に示す実施形態では、駆動電源の電圧値が10(V)未満の場合にはデッドタイムDT=0nsとし、駆動電源の電圧値が10(V)以上に上昇した場合にはデッドタイムDT=50nsを設定する。その後、駆動電源の電圧値が9(V)未満に降下した場合には、デッドタイムDT=0nsを設定する。
更に、駆動電源の電圧値が12(V)以上に上昇した場合にはデッドタイムDT=100nsを設定し、駆動電源の電圧値が14(V)以上に上昇した場合にはデッドタイムDT=500nsを設定し、駆動電源の電圧値が16(V)以上に上昇した場合にはデッドタイムDT=1000nsを設定し、駆動電源の電圧値が20(V)以上に上昇した場合にはデッドタイムDT=2500ns(=2.5μs=T)を設定する。
その後、駆動電源の電圧値が17(V)未満に下降した場合には、デッドタイムDT=1000nsを設定し、駆動電源の電圧値が13(V)未満に下降した場合には、デッドタイムDT=500nsを設定し、駆動電源の電圧値が12(V)未満に下降した場合には、デッドタイムDT=100nsを設定し、駆動電源の電圧値が10(V)未満に下降した場合には、デッドタイムDT=50nsを設定する。
図15に示すように、駆動電源の電圧値に応じて複数のデッドタイムDTを設定することによって、駆動素子のスルーレートに起因する短絡電流の増大を防止することができる。そして、モータ回転子の回転数が低い場合にはデッドタイムDTを短くして2相励磁に近づけることでモータ回転子の回転を安定させることができる。また、モータ回転子が停止している場合には停止精度の良好な2相励磁を行うことができる。
〔連続してデッドタイムを変更する実施形態〕
また、図15に示すように、駆動電源の電圧値に応じて段階的にデッドタイムDTを増加させる代わりに、図16に示すように、駆動電源の電圧値に応じてデッドタイムDTを連続的に増加させるように構成することもできる。この場合には、図5に示した第1閾値判断手段12m及び第2閾値判断手段12nを用いずに、モータ電流制御手段16から出力される駆動電源の電圧値を直接デッドタイム生成手段12lが取得して、当該駆動電源の電圧値に応じたデッドタイムDTをデッドタイム挿入手段12kに出力することで実現することができる。
〔モータ回転子の回転数に応じてデッドタイムを設定する実施形態〕
なお、上記の実施形態では、ハイサイド駆動素子とローサイド駆動素子とが同時に切り替わる際に生ずるゲートオンの重なり部分に起因する短絡電流や、駆動素子のスルーレートに起因する短絡電流が増大する不具合を減少させるために、駆動電源の電圧値に応じてデッドタイムDTを設定する実施形態について説明した。このように、駆動電源の電圧値に応じてデッドタイムDTを設定することによって、異なる巻線仕様の複数種類のステッピングモータに対して同一のステッピングモータ駆動装置で対応することが可能となるため、ステッピングモータ駆動装置の汎用性を向上させることができる。
なお、特定のステッピングモータ専用のステッピングモータ駆動装置とするのであれば、駆動電源の電圧値に応じてデッドタイムDTを設定する代わりに、例えば指令回転数検出手段12vが出力する指令回転数、又はステッピングモータの回転数に応じてデッドタイムDTを設定するように構成することができる。
例えば、図17に示すように、ステッピングモータの種類に応じて、モータ回転子の回転数と駆動電源の電圧値との関係は異なるものとなる。図17は、ステッピングモータA、ステッピングモータB、及びステッピングモータCの各ステッピングモータにおける、モータ回転子の回転数(rpm)と、駆動電源の電圧値(V)との関係を表した図である。図17に示すように、駆動電源の電圧値に応じてデッドタイムDTを設定することによって、複数種類の巻線仕様を有するステッピングモータに対応することが可能となり、ステッピングモータ駆動装置の汎用性を向上させることができる。
図17に示すように、インダクタンスの小さいステッピングモータCの場合には、インダクタンスの大きいステッピングモータAに比べて、所定の回転数における駆動電源の電圧値は低い値となるため、短絡電流も少ない。したがって、本発明に係るステッピングモータ駆動装置を用いてインダクタンスの小さいステッピングモータCを駆動する場合には、デッドタイムDT=0とする回転数領域を広くすることができる。したがって、インダクタンスの小さいステッピングモータCを駆動する場合には、より高い回転数まで、滑らかな回転を得ることができる。更に、デッドタイムDTを含んだ2相励磁をより高回転まで行うことができるので、低振動で静穏運転が可能な回転数帯を拡大することができる。
〔デッドタイムの設定によりマイクロステップ駆動とフルステップ駆動とを切り替える実施形態〕
図18に、モータ回転子の回転数に応じてデッドタイムDTを設定することにより、マイクロステップ駆動とフルステップ駆動とを切り替える実施形態を示す。図18に示す実施形態では、モータ回転子が加速中であって、モータ回転子の回転数が1400rpm未満の場合にはデッドタイムDT=0nsとし、モータ回転子の回転数が1400rpm以上に上昇した場合にはデッドタイムDT=T=2500nsを設定する。そして、一旦1400rpm以上に上昇した回転数が1000rpm未満に下降した場合には、2500nsであったデッドタイムDTを0nsに設定する。
このデッドタイムDT=2500nsは、単位励磁周期T=2.5μsと同じ値としてある。したがって、デッドタイムDTが2500nsに設定された場合には、4相励磁によるフルステップ駆動に切り替わったことになる(図10又は図13参照。)。
なお、デッドタイムDTを0nsから2500nsに変化させる際には、デッドタイム生成手段12lが、単位励磁周期Tに相当する時間まで所定の増加レート(例えば100ns/T)でデッドタイムを漸増させてゆくと良い。このようにデッドタイムを徐々に変化させてゆくことで、急激に励磁コイルの励磁状態が変化することを防止して、モータ回転子の回転数の変動を防止することができる。なお、100ns/Tの増加レートでデッドタイムを漸増させた場合には、25サイクル×組合せ励磁周期TC=1250μsの間にマイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替わることになる。
また、同様に、デッドタイムDTを2500nsから0nsに変化させる際にも、デッドタイム生成手段12lが、単位励磁周期Tに相当する時間まで所定の増加レート(例えば200ns/T)でデッドタイムを漸減させてゆくと良い。なお、200ns/Tの減少レートでデッドタイムを漸減させた場合には、13サイクル×組合せ励磁周期TC=650μsの間にフルステップ駆動からマイクロステップ駆動に切り替わることになる。
〔所定のデッドタイムレートを用いてデッドタイムを変更してゆく実施形態〕
ハイサイド指令又はローサイド指令に挿入するデッドタイムDTを、ある回転数を境にして変更する場合には、上述のように所定のデッドタイムレートでデッドタイムDTを増加させたり、減少させたりすることができる。
例えば図19に示すように、駆動電源の電圧値が16(V)未満の場合にはデッドタイムレートとして50(ns/T)の増加レートを設定する。そして、モータ回転子が加速中であって、駆動電源の電圧値が16(V)以上に上昇した場合にはデッドタイムレートとして100(ns/T)の増加レートに設定する。
また、一旦駆動電源の電圧値が16(V)以上に上昇した後に、モータ回転子が減速する際には、デッドタイムレートとして200ns/Tの減少レートを設定する。更にモータ回転子が減速して、駆動電源の電圧値が13(V)未満まで下降した場合には、200(ns/T)に設定されていたデッドタイムレートを100(ns/T)の減少レートに設定する。
次に、前述の図15に示したデッドタイムDTの設定と、図19示すデッドタイムレートの設定とを組み合わせて用いた場合について考察する。駆動電源の電圧値が13.9(V)から14.1(V)に上昇した場合には、最初の単位励磁周期Tにおいて、それまで挿入していたハイサイド指令又はローサイド指令に対して、デッドタイムDT=100nsに50nsを加算したデッドタイムDT=150nsを挿入し、次の単位励磁周期Tにおいては更にデッドタイムを50ns増加させたデッドタイムDT=200nsを挿入する。そして、単位励磁周期T毎にデッドタイムDTの値を50nsずつ増加させてゆき、8回目の単位励磁周期T以降においては、デッドタイムDTの最大値500nsを挿入する。
更にモータ回転子の回転数が上昇し、駆動電源の電圧値が15.9(V)から16.1(V)に上昇した場合には、それまで挿入していたデッドタイムDT=500nsに対して100ns増加させたデッドタイムDT=600nsをハイサイド指令又はローサイド指令に挿入し、次の単位励磁周期Tにおいては更に100ns増加させたデッドタイムDT=700nsを挿入する。このように、単位励磁周期T毎に100nsずつ順次デッドタイムDTを増加させてゆき、5回目以降の単位励磁周期Tにおいては、デッドタイムDTの最大値1000nsを挿入する。
また、一旦16(V)以上且つ20(V)未満に上昇した駆動電源の電圧値が、12.9(V)まで下降した場合には、最初の単位励磁周期Tにおいて、それまで挿入していたハイサイド指令又はローサイド指令に対して、デッドタイムDT=1000nsから200nsを減算したデッドタイムDT=800nsを挿入し、次の単位励磁周期Tにおいては更に200ns増加させたデッドタイムDT=600nsを挿入する。そして、3回目以降の単位励磁周期Tにおいては、デッドタイムDTとして500nsを挿入する。
なお、デッドタイムの増加レート及び減少レートは、上述のようにそれぞれ異なる値を設定することもできるし、同一の値に設定することもできる。また、駆動電源の電圧値に応じてデッドタイムの増加レート又は減少レートを変更させる他、モータ回転子の回転数に応じて変更することもできる。また、モータ回転子の加速度又は減速度に応じてデッドタイムの増加レート又は減少レートを変更することもできる。また、デッドタイムの増加レート又は減少レートを定める他、デッドタイムを変更する変更時間を、駆動電源の電圧値、モータ回転子の回転数、モータ回転子の加速度又は減速度に応じて定め、その変更時間に基づいてデッドタイムレートを設定することもできる。これらのデッドタイムの値や、デッドタイムレートの値、各種閾値、その他の設定事項については、ステッピングモータの種類や巻線仕様に応じて変更する必要が生ずる場合があるので、ステッピングモータ駆動装置の機能設定において変更することが可能なように構成しておくことが好ましい。
また、駆動電源の電圧値と、モータ回転子の回転数によるデッドタイムDTの増減を併用するようにしてもよい。例えばこの場合には、デッドタイムDTを増加させる設定を、デッドタイムDTを減少させる設定よりも優先するとよい。
例えば、モータ回転子の回転数により決定されるおけるデッドタイムDTの設定が0nsであった場合でも、励磁コイルの駆動電源の電圧値により決定されるデッドタイムDTの設定が2500μsとなる場合には、長い方のデッドタイムDT=2500nsを挿入した励磁を行うとよい。
逆に、励磁コイルの駆動電源の電圧値により決定されるデッドタイムDTの設定が1000μsであった場合でも、モータ回転子の回転数により決定されるデッドタイムDTが2500μsとなる場合には、やはり長い方のデッドタイムDT=2500μsデッドタイムを挿入した励磁を行うとよい。
〔所定の遷移時間内にマイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替える実施形態〕
上記では、デッドタイムレートを定めることにより、デッドタイムDTを漸増又は漸減してゆく実施形態について説明した。これに代えて、予めデッドタイムDTを漸増又は漸減させる際の遷移時間を予め定めておき、その遷移時間内にデッドタイムDTの漸増又は漸減が終了するように構成することもできる。
例えば、図18に示した条件で、マイクロステップ駆動とフルステップ駆動とを切り替える場合であって、加速時の遷移時間として2500μsを設定した場合には、増加レートは、増加レート=単位励磁周期T/(加速時の遷移時間/組合せ励磁周期TC)=2.5μs/(2500μs/50μs)=2.5μs/50=50ns/Tと算出される。すなわち、50ns/Tの増加レートでデッドタイムDTを漸増させてゆくことで、2500μsの遷移時間内にデッドタイムDT=0の2相励磁によるマイクロステップ駆動から、デッドタイムDT=Tの4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えることができる。
また、減速時の遷移時間として1250μsを設定した場合には、減少レートは、減少レート=単位励磁周期T/(減速時の遷移時間/組合せ励磁周期TC)=2.5μs/(1250μs/50μs)=2.5μs/25=100ns/Tと算出される。すなわち、100ns/Tの減少レートでデッドタイムDTを漸減させてゆくことで、1250μsの遷移時間内にデッドタイムDT=Tの4相励磁によるフルステップ駆動から、デッドタイムDT=0の2相励磁によるマイクロステップ駆動に切り替えることができる。
このように、所定の遷移時間内においてマイクロステップ駆動とフルステップ駆動とを徐々に切り替えてゆくことによって、急激に励磁コイルの励磁状態が変化することによるモータ回転子の回転数の変動を防止することができるとともに、マイクロステップ駆動による励磁と、デッドタイムDTが混在した励磁を短時間にて終了させることができる。したがって、滑らかにマイクロステップ駆動とフルステップ駆動との切り替えを終了させることができる。
また、マイクロステップ駆動とフルステップ駆動とを切り替える場合に限らず、駆動電源の電圧値やモータ回転子の回転数に応じてデッドタイムDTを変更する際においても、遷移時間を定めてデッドタイムDTを漸増又は漸減を行うように構成することもできる。この遷移時間は、上述のように、加速時と減速時とで異なる値を設定することもできるし、同一の値とすることもできる。また、駆動電源の電圧値やモータ回転子の回転数や、これらの変化率に応じて異なる遷移時間を設定することもできる。
〔基本ステップ同期更新1を併用する実施形態〕
次に、5相ステッピングモータ1のモータ回転子が回転している状態における、励磁切替タイミングについて図20及び図21を用いて説明する。ここで、所定の組合せ励磁周期TC毎に励磁を切り替える励磁切替方法を励磁周期同期更新と呼ぶ。これに加えて、以下に説明するように、基本ステップカウンタの更新に伴って組合せ励磁周期TCの途中から励磁を更新する励磁切替方法を基本ステップ同期更新1と称することにする。なお、図20及び図21に示す実施例は、図5に示したように、基本ステップ数=10、回数分割数m=10とした場合を示している。
また、図20及び図21には、回動指令パルスCWPが入力された場合の回数分割ステップカウンタの値(2桁の数値で表記してある。)の変化と、当該回数分割ステップカウンタの上位の桁に該当する基本ステップカウンタの値(2桁の数値で表記してある。)の変化と、組合せ励磁周期TC毎に出力される組合せ励磁切替指令と、励磁回数割合記憶手段12iに記憶されたステップ位置(4桁の数値で表記してある。)とを、横軸を時間に取って表してある。なお、励磁回数割合記憶手段12iが記憶するのは、第1励磁組及び第2励磁組とその励磁回数割合であるが、ここでは説明の都合上、回数分割ステップカウンタの値と、基本ステップカウンタの値とを表記している。
これらの各図のうち、図20は、回動指令パルス間隔が組合せ励磁周期TCの約1/7.5の場合におけるステップ位置の変化を表している。また、図21は、基本ステップカウンタの更新間隔が組合せ励磁周期TCよりも短くなった場合におけるステップ位置の変化を表している。
最初に、図20を用いて、回動指令パルス間隔が組合せ励磁周期TCの約1/7.5の場合における基本ステップ同期更新1を用いた励磁切替タイミングについて説明する。例えば機械角7.2°の5相ステッピングモータ1を用い、基本ステップ数=10、回数分割数m=10、組合せ励磁周期TC=50μsに定めた場合には、図20に示す状態は、モータ回転子が約30rps(1800rpm)で回転している状態である。
図20に示すように、回動指令パルスCWPが入力されると、その立ち上がりで回数分割ステップカウンタの値が更新される(例えば、L08からL09に更新される。)。このように、回動指令パルスCWPが入力される毎に、回数分割ステップカウンタの値が更新されてゆき、回数分割ステップカウンタの値がL09からL00に切り替わる際には、基本ステップカウンタの値が更新される(例えば、H00からH01に更新される。)。
なお、図20に示す組合せ励磁切替指令は、回動指令パルスとは無関係なタイミングで生成されるものである。この組合せ励磁切替指令は、組合せ励磁周期出力手段12cにより組合せ励磁周期TC毎に生成される。
図20に示す励磁周期同期更新による励磁切替方法においては、この組合せ励磁切替指令に基づいてのみ、励磁回数割合記憶手段12iに記憶する第1励磁組及び第2励磁組とその励磁回数割合(ステップ位置に相当する。)とを更新する。これに対し、基本ステップ同期更新1の励磁切替方法では、前記組合せ励磁切替指令に加えて、基本ステップカウンタの更新に伴って、励磁回数割合記憶手段12iに記憶する第1励磁組及び第2励磁組とその励磁回数割合とを更新するようにしている。
図20に示すように、励磁周期同期更新による励磁切替方法では、所定の組合せ励磁周期TC毎に生成される組合せ励磁周期TC毎に、励磁回数割合記憶手段12iに記憶するステップ位置の更新を行っているため、5乃至6のマイクロステップ位置が間引かれることになる。
例えば、励磁周期同期更新の励磁切替方法のみを用いた場合において、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替えると、ステップ位置0100の励磁更新周期が2×TCとなり、ステップ位置0200の励磁更新周期がTCとなって等速回転性が若干悪化し、モータ回転子に振動が発生することになる。
他方、基本ステップ同期更新1の励磁切替方法を用いてマイクロステップ駆動を行う場合には、基本ステップカウンタが更新される付近において励磁の更新頻度が増して、回数分割ステップの補完が行われる。これにより、駆動がいくぶん安定することとなる。また、基本ステップの更新周期と組合せ励磁周期TCとは干渉しないので、可聴音は発生しない。したがって、基本ステップカウンタの更新に同期してステップ位置を更新しても、悪影響は生じないことになる。
更に、この図20に示す回動指令パルス間隔において、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替えた場合には、ステップ位置0100の励磁更新周期、ステップ位置0200の励磁更新周期、ステップ0300の励磁更新周期等が共にTRとなるので、基本ステップ同期更新1の励磁切替方法を用いることにより、フルステップ駆動時における等速回転性が維持されることになる。
図20に示す実施例では、励磁回数割合記憶手段12iに記憶するステップ位置として回数分割ステップを含めており、間引きを加えたマイクロステップ駆動を行っている状態を示している。実験結果によれば、加速時においては5rps(300rpm)でマイクロステップ駆動の励磁からフルステップ駆動の励磁に切り替え、減速時においては4.6rps(276rpm)でフルステップ駆動の励磁からマイクロステップ駆動の励磁に切り替えるように構成しても、実用上問題となる振動は発生しなかった。したがって、図20に示す回転数よりもはるかに低い回転数において、既にフルステップ駆動に切り替えることが可能となる。
次に、図21を用いて、基本ステップカウンタの更新間隔が組合せ励磁周期TCの間隔よりも短くなった場合における基本ステップ同期更新1を用いた励磁切替タイミングについて説明する。例えば機械角7.2°の5相ステッピングモータ1を用い、基本ステップ数=10、回数分割数m=10、組合せ励磁周期TC=50μsに定めた場合には、図21に示す状態は、モータ回転子が約60rps(3600rpm)で回転している状態である。なお、図20にて説明した事項と同一の事項については、その説明を省略するものとする。
図21に示す実施形態では、基本ステップカウンタの更新間隔が組合せ励磁周期TCの間隔よりも短いために、基本角ステップを含めた多くのマイクロステップ位置が間引かれる。なお、この図21に示す回動指令パルス間隔においては、もはやマイクロステップ駆動を行う意味は無いので、フルステップ駆動に切り替えて駆動することが好ましい。
励磁周期同期更新による励磁切替方法を用いてフルステップ駆動を行った場合には、各励磁更新周期TCにおけるステップ位置が、0100、0200、0400、0600…となるために等間隔にならず、モータ回転子の等速回転性が若干悪化し、モータ回転子に振動が発生することになる。
他方、基本ステップ同期更新1の励磁切替方法によるマイクロステップ駆動を用いた場合には、基本ステップカウンタが更新される付近において励磁の更新頻度が増して、回数分割ステップの補完が行われる。これにより、駆動がいくぶん安定することとなり、基本ステップカウンタの更新に同期してステップ位置を更新しても、悪影響は生じない。
また、基本ステップ同期更新1の励磁切替方法を用いてフルステップ駆動を行う場合には、各励磁更新周期TRにおけるステップ位置は基本ステップの歩進数となるので、フルステップ駆動時における等速回転性と静穏性が確保されることになる。
したがって、励磁周期同期更新による励磁切替方法に加えて、基本ステップ同期更新1による励磁切替方法を用いることにより、モータ回転子の回転数が高い場合における振動を低減することができる。更に、マイクロステップ駆動を行う速度域で2相励磁を合成した4相励磁を用い、ステッピングモータの全てのコイル端子を正極又は負極の何れかに接続しておく状態を設けることで、停止時の停止精度を向上させるとともに、超低回転域から低回転域における回転の滑らかさを確保することができる。また、モータ回転子の回転数が上昇するにつれて自然に組合せ励磁周期TC毎の歩進数を増加させてゆくことができる。このように、モータ回転子の振動を増加させることなく、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替える回転数を、広い回転域から選択することができる。
なお、フルステップ駆動を行う場合には、回数分割ステップに関する励磁の組合せが不用となるので、励磁更新周期TRが2×Tに至るまで、低振動で静穏運転が可能な2相励磁によるフルステップ駆動を行うことができる。また、4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えた場合には、励磁更新周期TRが更に短くなった場合であっても、通常の高速回転を行うことができる。
次に、基本ステップ同期更新1による励磁切替方法を実現する際において、上記の組合せ励磁周期TCの途中で励磁を切り替える方法について、図22及び図23を用いて説明する。
図22及び図23は、マイクロステップ駆動を実現するために、回数分割ステップ毎の励磁回数割合と、単位励磁周期T及び組合せ励磁周期TCとの関係を表した図である。このうち、図22は、組合せ励磁周期TCにおいて、所定の励磁回数割合に応じた励磁が完結している状態を表した図である。図22に示す励磁割合は、先の図6に示した励磁回数割合決定手段12dが、それぞれの回数分割ステップの歩進数に応じて決定する励磁割合を表している。
他方、図23は、組合せ励磁周期TC内において基本ステップカウンタの値がH00からH01に切り替わったことにより、組合せ励磁周期TCの途中からH01に相当する電気角位置(ステップ1*N)の励磁組合せに切り替えている状態を表した図である。
図23に示すように、時刻tc1においては、基本ステップカウンタの値がH00であり、回数分割ステップカウンタの値がL08であるので、その時刻tc1における電気角位置=ステップ0*N+(N/10)*8に対応した励磁割合を、励磁回数割合記憶手段12iが励磁回数割合決定手段12dから取得して記憶する。そして、この励磁割合で励磁の出力を行う。
時刻tc1の後に、回動指令パルスCWPを入力して回数分割ステップカウンタの値がL08からL09に遷移し、更に、時刻tc2において回動指令パルスCWPを入力すると、回数分割ステップカウンタの値がL09からL00に遷移し、基本ステップカウンタの値がH00からH01に遷移する。すると、励磁回数割合記憶手段12iは、時刻tc2における電気角位置(ステップ1*N)に対応した励磁割合を、新たに励磁回数割合決定手段12dから取得して記憶する。そして、図23に示すように、時刻tc2から時刻tc3まで、新たに記憶した励磁の出力を行う。
こうすることによって、励磁周期同期更新による励磁切替方法に加えて、基本ステップ同期更新1による励磁切替方法を実現することができる。
〔基本ステップ同期更新2を併用する実施形態〕
次に、5相ステッピングモータ1のモータ回転子が回転している状態における、励磁切替タイミングの他の実施形態について説明する。上述の基本ステップ同期更新1を併用する実施形態では、励磁周期同期更新による励磁切替方法に加えて、基本ステップカウンタの更新に伴って組合せ励磁周期TCの途中から励磁を更新する励磁切替方法を用いていた。これに対して、下記に示す実施形態では、基本ステップカウンタの値が更新される毎に、組合せ励磁周期出力手段12cが組合せ励磁切替指令を出力するとともに、新たに組合せ励磁周期TCの計数を開始するように構成してある。したがって励磁回数割合記憶手段12iは、組合せ励磁周期出力手段12cが出力する組合せ励磁切替指令に基づいて励磁を切り替えることで、基本ステップに同期して励磁を更新することができる。この励磁切替タイミングを用いた励磁切替方法を、基本ステップ同期更新2と称することにする。
なお、この基本ステップ同期更新2を用いた励磁切替方法に加えて、基本ステップカウンタの値が更新される毎に、単位励磁周期出力手段12hが単位励磁切替指令を出力するとともに、新たに単位励磁周期Tの計数を開始するように構成することもできる。
この基本ステップ同期更新2を併用する場合の励磁切替タイミングについて、図24及び図25を用いて説明する。図24及び図25に示す実施例は、図5に示した実施例と同様に、基本ステップ数=10、回数分割数m=10とした場合を示している。なお、図20及び図21に示した事項と同一の事項については同一の名称を付して、その説明を省略する。
図24及び図25には、回動指令パルスCWPが入力された場合の回数分割ステップカウンタの値(2桁の数値で表記してある。)の変化と、当該回数分割ステップカウンタの上位の桁に該当する基本ステップカウンタの値(2桁の数値で表記してある。)の変化と、組合せ励磁周期TC毎に出力される組合せ励磁切替指令と、励磁回数割合記憶手段12iに記憶されたステップ位置(4桁の数値で表記してある。)とを、横軸を時間に取って表してある。なお、励磁回数割合記憶手段12iが記憶するのは、第1励磁組及び第2励磁組とその励磁回数割合であるが、ここでは説明の都合上、回数分割ステップカウンタの値と、基本ステップカウンタの値とを表記している。
これらの各図のうち、図24は、回動指令パルス間隔が組合せ励磁周期TCの約1/7.5の場合におけるステップ位置の変化を表している。また、図25は、基本ステップカウンタの更新間隔が、組合せ励磁周期TCよりも短くなった場合におけるステップ位置の変化を表している。
最初に、図24を用いて、回動指令パルス間隔が組合せ励磁周期TCの約1/7.5の場合における基本ステップ同期更新2を用いた励磁切替タイミングについて説明する。例えば機械角7.2°の5相ステッピングモータ1を用い、基本ステップ数=10、回数分割数m=10、組合せ励磁周期TC=50μsに定めた場合には、図24に示す状態は、モータ回転子が約30rps(1800rpm)で回転している状態である。なお、図13にて説明した事項と同一の事項については、その説明を省略するものとする。
図24に示すように、回動指令パルスCWPが入力されると、その立ち上がりで回数分割ステップカウンタの値が更新される(例えば、L08からL09に更新される。)。このように、回動指令パルスCWPが入力される毎に、回数分割ステップカウンタの値が更新され、回数分割ステップカウンタの値がL09からL00に切り替わる際に、基本ステップカウンタの値が更新される(例えば、H00からH01に更新される。)。
なお、励磁周期同期更新による励磁切替方法では、組合せ励磁切替指令を、回動指令パルスとは無関係に組合せ励磁周期出力手段12cにより組合せ励磁周期TC毎に生成しているが、基本ステップ同期更新2による組合せ励磁切替指令は、この組合せ励磁周期TC毎に生成する条件に加えて、基本ステップカウンタの値が更新される毎に出力するように構成してある。更に、基本ステップカウンタの値が更新される毎に、新たに組合せ励磁周期TCの計数が開始される。
したがって、基本ステップ同期更新2の励磁切替方法では、組合せ励磁周期TC毎に出力される組合せ励磁切替指令に加えて、基本ステップカウンタの更新に同期して組合せ励磁切替指令を出力して、励磁回数割合記憶手段12iに記憶する第1励磁組及び第2励磁組とその励磁回数割合とを更新する。
例えば、図24に示す実施形態では、回動指令パルス間隔が組合せ励磁周期TCよりもかなり短いために、5乃至6のマイクロステップ位置が間引かれることになる。励磁周期同期更新の励磁切替方法のみを用いた場合において、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替えた場合には、ステップ位置0100の励磁更新周期が2×TCとなり、ステップ位置0200の励磁更新周期がTCとなって等速回転性が若干悪化し、モータ回転子に振動が発生することになる。
他方、基本ステップ同期更新2の励磁切替方法を用いてマイクロステップ駆動を行う場合には、基本ステップカウンタが更新される付近において励磁の更新頻度が増して、回数分割ステップの補完が行われる。これにより、駆動がいくぶん安定することとなる。したがって、基本ステップカウンタの更新に同期してステップ位置を更新しても、悪影響は生じないことになる。
更に、この図24に示す回動指令パルス間隔において、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替えた場合には、ステップ位置0100の励磁更新周期、ステップ位置0200の励磁更新周期、ステップ0300の励磁更新周期等が共にTRとなるので、基本ステップ同期更新2の励磁切替方法を用いることにより、フルステップ駆動時における等速回転性が維持されることになる。
図24に示す実施例では、励磁回数割合記憶手段12iに記憶するステップ位置として回数分割ステップを含めており、間引きを加えたマイクロステップ駆動を行っている状態を示している。実験結果によれば、加速時においては5rps(300rpm)でマイクロステップ駆動の励磁からフルステップ駆動の励磁に切り替え、減速時においては4.6rps(276rpm)でフルステップ駆動の励磁からマイクロステップ駆動の励磁に切り替えるように構成しても、実用上問題となる振動は発生しなかった。したがって、図24に示す回転数よりもはるかに低い回転数において、既にフルステップ駆動に切り替えることが可能となる。
次に、図25を用いて、基本ステップカウンタの更新間隔が組合せ励磁周期TCの間隔よりも短くなった場合における基本ステップ同期更新2を用いた励磁切替タイミングについて説明する。例えば機械角7.2°の5相ステッピングモータ1を用い、基本ステップ数=10、回数分割数m=10、組合せ励磁周期TC=50μsに定めた場合には、図25に示す状態は、モータ回転子が約60rps(3600rpm)で回転している状態である。なお、図13にて説明した事項と同一の事項については、その説明を省略するものとする。
図25に示す実施形態では、基本ステップカウンタの更新間隔が組合せ励磁周期TCの間隔よりも短いために、基本角ステップを含めた多くのマイクロステップ位置が間引かれる。なお、この図25に示す回動指令パルス間隔においては、もはやマイクロステップ駆動を行う意味は無いので、フルステップ駆動に切り替えて駆動することが好ましい。
励磁周期同期更新による励磁切替方法を用いてフルステップ駆動を行った場合には、各励磁更新周期TCにおけるステップ位置が、0100、0200、0400、0600…となるため等間隔にならず、モータ回転子の等速回転性が若干悪化し、モータ回転子に振動が発生することになる。
他方、基本ステップ同期更新2の励磁切替方法によるフルステップ駆動を用いた場合には、基本ステップカウンタが更新される毎に毎回励磁を切り替えるので、各励磁更新周期TRにおけるステップ位置は、基本ステップの歩進数となって、フルステップ駆動時における等速回転性が確保されることになる。
したがって、基本ステップカウンタの値が更新される毎に組合せ励磁切替指令を出力するとともに、新たに組合せ励磁周期TCの計数を開始することとなる基本ステップ同期更新2の励磁切替方法を用いることにより、モータ回転子の回転数が高い場合における振動を低減することができる。更に、マイクロステップ駆動を行う速度域で2相励磁を合成した4相励磁を用い、ステッピングモータの全てのコイル端子を正極又は負極の何れかに接続しておく状態を設けることで、停止時の停止精度を向上させるとともに、超低回転域から低回転域における回転の滑らかさを確保することができる。また、モータ回転子の回転数が上昇するにつれて自然に歩進数を増加させてゆくことができる。このように、モータ回転子の振動を増加させることなく、マイクロステップ駆動からフルステップ駆動に切り替える回転数を、より広い回転域から選択することができる。
なお、フルステップ駆動を行う場合には、回数分割ステップに関する励磁の組合せが不用となるので、励磁更新周期TRが2×Tに至るまで、低振動で静穏運転が可能な2相励磁によるフルステップ駆動を行うことができる。また、4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えた場合には、励磁更新周期TRが更に短くなった場合であっても、通常の高速回転を行うことができる。
次に、本発明に係るステッピングモータ駆動装置の特徴について図26を用いて説明する。図26(a)は、特許文献1又は3を用いた場合に振動低減効果が得られる回転数の範囲を模式的に表した図である。図26(b)は、本発明に係るステッピングモータ駆動装置を用いた場合に振動低減効果が得られる回転数の範囲を模式的に表した図である。
図26(a)に示すように、背景技術として挙げた特許文献1又は3を用いた場合の振動低減効果は、マイクロステップ駆動とフルステップ駆動との境界部分において発生する振動のみを低減することを目的とするものである。したがって、できるだけ高い回転数までモータ回転子の回転を滑らかにしたり、駆動素子の短絡電流を減少させたり、マイクロステップの分解能を向上させたり、より多くの種類のステッピングモータの巻線仕様に対応したステッピングモータ駆動装置を提供するといった対応は困難である。
これに対し、本発明に係るステッピングモータ駆動装置では、デッドタイムなしのマイクロステップ駆動領域では、励磁コイル端子がハイインピーダンス状態にならないようにした2相励磁の組み合わせにより、停止精度の向上とモータ回転子の回転を安定させた滑らかな駆動を可能にしている。
また、デッドタイムを含んだマイクロステップ駆動領域では、モータ回転子の回転数の上昇に伴って上昇した駆動電源の電圧値により、ハイサイド駆動素子及びローサイド駆動素子が同時に導通状態となる短絡電流を減少させるために、ハイサイド指令又はローサイド指令にデッドタイムを挿入する。これにより、できる限り2相励磁の組合せによる励磁を継続することでモータ回転子の回転を安定させつつ、短絡電流を減少させることができる。
例えばこの2相励磁は、モータ電流制御手段16が実行する定電流コントロールの電圧飽和直前まで続けることができる。特に、インダクタンスが低い励磁コイルを有するステッピングモータに対しては、より高回転まで回転安定性の優れた2相励磁を用いることができる。
また、デッドタイムを含んだ2相励磁のフルステップ駆動を行うことにより、基本ステップの更新周期が2×T(T=単位励磁周期)に至る回転数まで2相励磁によるフルステップ駆動を行って、モータ回転子を滑らかに回転させることができる。なお、駆動電源の電圧値が飽和したことにより励磁コイルの定電流制御が効かなくなる領域では、マイクロステップ駆動のためのスイッチングを、デッドタイムDTを挿入することによってマスクすることができる。これにより、定電流制御が効かなくなる領域においてスイッチングがもたらす駆動電源の電圧値のリップルを低減して、モータ回転子の振動を減少させることができる。
なお、更にモータ回転子の回転数が上昇した場合には、デッドタイムDTを単位励磁周期Tまで拡大した4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えて、更に高回転まで対応することが可能となる。なお、モータ電流制御手段16が制御する定電流コントロールの電圧が飽和電圧値達した場合には、当該4相励磁によるフルステップ駆動に切り替えることができる。
本発明に係るステッピングモータ駆動装置及びマイクロステップ方法は、精密な位置決め又は低振動の低回転域駆動に加え、静粛性が要求される用途に好適である。例えば、光計測装置、光電子デバイス作製装置、有機EL作製装置、デバイスプロセス装置、若しくは有機半導体素子作製装置等に適用することができる。
なお、前記光計測装置の用途として、並列光演算技術、レーザ安定化技術、超高回転域分光技術、超高回転域光制御技術、若しくは光パルスタイミング同期技術等の光制御の技術分野や、単一光子検出技術、超高回転域光計測技術、ホログラム計測技術、各種表面分光技術、電界発光計測技術、移動度計測技術、又は干渉計測技術等の技術分野を挙げることができる。
また、上記の実施例では、本発明のマイクロステップ方法を回転型のステッピングモータの駆動に用いた実施例を示したが、直動型のステッピングモータに応用することも可能である。