JP2010102893A - メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙 - Google Patents

メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙 Download PDF

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Abstract

【課題】高温加工時におけるガスの発生を抑制しつつ難燃性に優れ、かつ、破断強度と高温雰囲気下での寸法安定性とのバランスに優れたメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙を提供すること。
【解決手段】特定の凝固浴を用いて湿式紡糸することにより多孔質の凝固糸を得て、続いて、特定倍率で可塑延伸を実施し、さらに、飽和水蒸気中で特定の熱処理を施して得られる、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、変圧器、高電圧ケーブル絶縁などに用いられる、メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙に関する。
従来、変圧器、高電圧ケーブル絶縁などのように、耐熱性、電気絶縁性、柔軟性が要求される分野では、各種フィルムおよび各種電気絶縁紙が使用されており、柔軟性という観点から、電気絶縁紙が特に好適に用いられている。このような電気絶縁紙としては、例えば、芳香族ポリアミドフィブリッドと芳香族ポリアミド短繊維とを混抄後、熱圧カレンダー加工してなる耐熱性、電気絶縁性、柔軟性に優れた芳香族ポリアミド製電気絶縁紙が挙げられる(特許文献1〜4参照)。
しかしながら、上記電気絶縁紙は、耐熱性には優れるものの、250℃以上の高温で熱処理されると著しく収縮して、寸法変化を生じる問題点があった。
ところで、近年、社会は高度化し、上記の如き変圧器、高電圧ケーブルなどの各分野での要求性能が厳しさを増すと共に、さらに寸法安定性に優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維の出現が強く求められている。
しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その製造プロセスにアミド系有機溶媒を使用することが一般的であり、このアミド系溶媒は繊維中に残留することが知られている(特許文献5参照)。繊維中に残存する溶媒は、高温加工時において揮発あるいは分解してガスを発生するだけでなく、本来、メタ型全芳香族ポリアミドが有している難燃性の発現を阻害する。このため、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の難燃性の向上にあたっては、残留溶媒量を低減することも手段のひとつとなっている。
そこで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維に含まれる溶媒を低減する方法として、メタ型全芳香族ポリアミドと塩類を含むアミド系溶媒からなる重合体溶液を、アミド系溶媒と水からなり塩類を実質的に含まない凝固浴中に吐出して、多孔質の線状体として凝固させ、続いて、アミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴中にて延伸し、これを水洗後、熱処理する方法が提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、特許文献6に記載された方法では、凝固させた後に可塑延伸浴にて延伸し、繊維の分子配向を一旦高めるものの、続いて実施する水洗および/または温水洗浄工程により配向が緩和されやすくなる。このため、高い強度を有する繊維を得るためには、熱処理工程において再度延伸を施し、配向を高める必要があった。しかしながら、熱処理工程においては、配向と同時に急激な結晶化が進行してしまう。急激な結晶化は、結果として不十分な結晶化となるため、得られる繊維は、高温下での熱収縮率が高くなってしまう問題点が生じていた。このため、特許文献6の方法によれば、残存溶媒量が低減された繊維を得ることができる一方で、強度を高くするために、高温下での熱収縮率を犠牲にするほかなかった。
したがって、繊維中に残存する残存溶媒量が少なく、その結果、高温加工時におけるガスの発生を抑制しつつ難燃性に優れ、かつ、破断強度と高温雰囲気下での寸法安定性とのバランスに優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維はいまだ実現されておらず、その登場が望まれていた。
特公昭35−11851号公報 特公昭36−16460号公報 特公昭37−5732号公報 特開平2−236907号公報 特開2001−348726号公報 特開2005−232598号公報
本発明は、かかる従来技術を背景になされたもので、その目的とするところは、高温加工時におけるガスの発生を抑制しつつ難燃性に優れ、かつ、破断強度と高温雰囲気下での寸法安定性とのバランスに優れたメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙を提供することにある。
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、特定の凝固浴を用いて湿式紡糸することにより多孔質の凝固糸を得て、続いて、特定倍率で可塑延伸を実施し、さらに、飽和水蒸気中で特定の熱処理を施して得られる、特定のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維を用いることにより、上記課題を解決した電気絶縁紙が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプを用いた電気絶縁紙であって、該メタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙(以下「電気絶縁紙」ともいう)に関する。
本発明の電気絶縁紙は、繊維中に残存する残存溶媒量が少ないメタ型全芳香族ポリアミド短繊維から形成されるため、公知のメタ型全芳香族ポリアミド短繊維を用いた電気絶縁紙に比べて、高温加工時におけるガスの発生を抑制しつつ、難燃性に優れたものとなる。
また、破断強度が高いと同時に高温雰囲気下における寸法安定性に優れたメタ型全芳香族ポリアミド短繊維から形成されるため、当該特性を備えた電気絶縁紙となる。
<メタ型全芳香族ポリアミド短繊維>
本発明の電気絶縁紙を形成するメタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、以下の特定の物性を備える。本発明のメタ型全芳香族ポリアミド短繊維の物性、構成、および、製造方法等について以下に説明する。
[メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の物性]
〔残存溶媒量〕
メタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、通常、ポリマーをアミド系溶媒に溶解した紡糸原液から製造されるため、必然的に該繊維に溶媒が残存する。しかしながら、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、繊維中に残存する溶媒の量が、繊維質量に対して1.0質量%以下である。1.0質量%以下であることが必須であり、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
繊維質量に対して1.0質量%を超えて溶媒が繊維中に残存している場合には、300℃を超えるような高温雰囲気下での加工や使用の際に、残存溶媒が揮発するために環境安全性に劣ったり、繊維が黄変したりするため好ましくない。また、分子構造が破壊されることにより、著しく強度が低下する。さらに、残存する溶媒は引火点以上では容易に引火、燃焼するため、例えば限界酸素指数(LOI値)を28以上とすることが困難となる。
繊維中の残存溶媒量を1.0質量%以下とするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を調節し、かつ、特定倍率で可塑延伸を実施し、さらに、飽和水蒸気中で特定の熱処理を実施する。
なお、本発明における「繊維中に残存する残存溶媒量」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(残存溶媒量の測定方法)
洗浄工程の出側にて繊維をサンプリングし、該繊維を遠心分離機(回転数5,000rpm)に10分かけ、このときの繊維質量(M1)を測定する。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出する。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2時間乾燥し、乾燥後の繊維質量(P)を測定する。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求める。
繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記式により算出する。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
〔300℃での乾熱収縮率〕
本発明の電気絶縁紙を構成するメタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、300℃乾熱収縮率が3.0%以下である。3.0%以下であることが必須であり、2.9%以下が好ましく、2.8%以下がさらに好ましい。収縮率が3.0%を超える場合には、高温雰囲気下での使用時に製品寸法が変化し、製品の破損が生じる等の問題が発生するため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の300℃での乾熱収縮率は、繊維の製造工程において、飽和水蒸気中で特定の熱処理を実施することにより制御することができる。300℃乾熱収縮率を3.0%以下とするためには、飽和水蒸気処理工程における延伸倍率を、0.7〜5.0倍の範囲とすればよい。延伸倍率が5.0倍を超える場合には、延伸時の単糸切れが増大し、毛羽や工程断糸が発生するため好ましくない。
なお、本発明における「300℃での乾熱収縮率」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(300℃での乾熱収縮率の測定方法)
約3,300dtexのトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、互いに30cm離れた箇所に印をつける。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後、印間の長さLを測定する。測定結果Lをもとに、下記式にて得られる値を300℃乾熱収縮率(%)とする。
300℃乾熱収縮率(%)=[(30−L)/30]×100
〔破断強度〕
本発明の電気絶縁紙に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド短繊維の破断強度は、3.0cN/dtex以上である。3.0cN/dtex以上であることが必須であり、3.5cN/dtex以上であることがより好ましく、4.0cN/dtex以上であることが特に好ましい。破断強度が3.0cN/dtex未満である場合には、抄紙工程などにおいて繊維が破断し好ましくない。また、加工した製品の破断強度も低くなる。
メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の「破断強度」は、繊維の製造工程において、特定倍率で可塑延伸を実施することにより制御することができる。破断強度を3.0cN/dtex以上とするためには、可塑延伸浴延伸工程における延伸倍率を1.5〜10倍とすればよい。
なお、ここでいう「破断強度」とは、JIS L1015に基づき、測定機器としてインストロン社製、型番5565を用いて、下記の測定条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
〔破断伸度〕
また、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の破断伸度は、30%以上であることが好ましい。35%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。破断伸度が30%未満である場合には、抄紙性が悪化するため好ましくない。
本発明において、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の「破断伸度」は、後記する製造方法における紡糸・凝固工程において、凝固浴条件を適正化することにより制御することができる。30%以上とするためには、凝固浴中のアミド系溶剤濃度を45〜60質量%とし、凝固浴温度を20〜70℃とすればよい。
なお、ここでいう「破断伸度」とは、JIS L1015に基づき、測定機器としてインストロン社製、型番5565を用いて、上記した「破断強度」と同一の測定条件で測定して得られる値をいう。
〔単糸繊度〕
メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の単糸繊度は、0.11〜5.5dtexであることが好ましい。0.11dtex未満では、製糸技術の面で困難な点が多く、断糸や毛羽が発生して良好な品質の繊維を安定に生産することが困難になるだけでなく、コストも高くなるため好ましくない。一方、5.5dtexを超えると、紙にしたときの空隙が大きくなり、電気絶縁性が不良となるため好ましくない。
[メタ型全芳香族ポリアミドの構成]
本発明の電気絶縁紙に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド短繊維の原料となるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロルイソフタル酸クロライド、3−メトキシイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドのみ、または、イソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
(共重合成分)
上記のメタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分以外で使用しうる共重合成分としては、例えば、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。一方、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいため、ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下とすることが好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、上記した通り、全繰返し単位の90モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好ましい。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法〕
メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
メタ型全芳香族ポリアミドの重合度としては、30℃の濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)として、1.3〜3.0の範囲が適当である。
<メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の製造方法>
本発明の電気絶縁紙に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、上記の製造方法によって得られたメタ型全芳香族ポリアミドを用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、飽和水蒸気処理工程、乾熱処理工程を経て、まずは長繊維を製造する。その後、得られた長繊維を切断工程に付すことにより、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維を得る。
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させ、多孔質繊維状物を得る。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500〜30,000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、10〜90℃の範囲が適当である。
残存溶媒量が十分に低減した繊維を得るためには、十分な程度にまで繊維の緻密化を行う必要があり、そのためには、紡糸・凝固工程の凝固段階で形成される多孔質繊維状物の構造を、できる限り均質なものとすることが極めて重要である。多孔構造と凝固浴の条件とは緊密な関係があり、凝固浴の組成と温度条件の選定は極めて重要である。
本発明で使用する繊維を得るための凝固浴は、実質的にアミド系溶媒と水との2成分からなる水溶液で構成される。この凝固浴組成におけるアミド系溶媒としては、メタ型全芳香族ポリアミドを溶解し、水と良好に混和するものであれば特に限定されるものではないが、特に、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等を好適に用いることができる。
アミド系溶媒と水との最適な混合比は、重合体溶液の条件によっても若干変化するが、一般的に、アミド系溶媒の割合が水溶液全体に対して40質量%〜60質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を下回る条件では、凝固繊維中に非常に大きなボイドが生じやすくなり、その後の糸切れの原因となりやすくなる。一方で、この範囲を上回る条件では、凝固が進まず、繊維の融着が起こりやすくなる。
均質な構造の多孔質繊維状物を得るための凝固浴としては、実質的にアミド系溶媒と水だけで構成されることが好ましい。しかしながら、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の無機塩類がポリマー溶液中から抽出されてくるため、実際には、凝固液にはこれらの塩類が少量含まれる。工業的な実施における塩類の好適濃度は、凝固液全体に対して0.3質量%〜10%質量の範囲である。無機塩濃度を0.3質量%未満とするためには、凝固液の回収プロセスにおける精製のための回収コストが著しく高くなるため適切ではない。一方で、無機塩濃度が10質量%を超える場合には、凝固速度が遅くなることから、紡糸口金から吐出された直後の繊維に融着が発生しやすくなり、また、凝固時間が長時間となるため凝固設備を大型化せざるを得なくなり好ましくない。
凝固浴の温度は、凝固液組成と密接な関係があるが、一般的には、生成繊維中にフィンガーとよばれる粗大な気泡上の空孔が出来にくいため、高温にする方が好ましい。しかしながら、凝固液濃度が比較的高い場合には、あまり高温にすると繊維の融着が激しくなる。このため、凝固浴の好適な温度範囲は20〜70℃であり、より好ましくは25〜60℃である。
なお、凝固浴中での繊維状物(糸条体)の浸漬時間は、1.5〜30秒の範囲とすることが好ましい。浸漬時間が1.5秒未満の場合には、繊維状物の形成が不十分となり断糸が発生する。一方で、浸漬時間が30秒を超える場合には、生産性が低くなるため好ましくない。
[可塑延伸浴延伸工程]
可塑延伸浴延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた多孔質繊維状物(糸条体)からなる繊維束が可塑状態にあるうちに、該繊維束を可塑延伸浴中にて延伸処理する。
本発明で使用する繊維を得るための可塑延伸浴は、アミド系溶媒の水溶液からなり、塩類は実質的に含まれない。このアミド系溶媒としては、メタ型全芳香族ポリアミドを膨潤させ、かつ、水と良好に混和するものであれば、特に限定されるものではない。かかるアミド系溶媒しては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等を挙げることができる。工業的には、可塑延伸浴液とするアミド系溶媒は、上記凝固浴に用いたものと同じ種類の溶媒を用いることが特に好ましい。すなわち、重合体溶液、凝固浴および可塑延伸浴に用いるアミド系溶媒は同種であることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドのうちから選ばれる単独溶媒、または、2種以上からなる混合溶媒を用いることが好都合である。同種のアミド系溶媒を用いることによって、回収工程を統合・簡略化することができ、経済的に有益となる。
可塑延伸浴の温度と組成とはそれぞれ密接な関係にあるが、アミド系溶媒の質量濃度が20〜70質量%、かつ、温度が20〜70℃の範囲であれば、好適に用いることができる。この範囲より低い領域では、多孔質繊維状物の可塑化が十分に進まず、可塑延伸において十分な延伸倍率をとることが困難となる。一方で、これの範囲より高い領域では、多孔質繊維の表面が溶解して融着するため、良好な製糸が困難となる。
本発明に用いられる繊維を得るにあたっては、可塑延伸浴中の延伸倍率を、1.5〜10倍の範囲とする必要があり、好ましくは2.0〜6.0倍の範囲とする。延伸倍率が1.5倍未満の場合には、得られる繊維の強度、弾性率等の力学特性が低くなり、本発明の電気絶縁紙を構成する繊維に必要な破断強度を達成することが困難となる。また、多孔質繊維状物からの脱溶剤を十分に促進することが困難となり、最終的に得られる繊維の残存溶媒量を1.0質量%以下とすることが困難となる。なお、可塑延伸浴延伸工程において高倍率で延伸を施すことにより、強度、弾性率等が向上して良好な物性を示す繊維が得られるようになると同時に、多孔質繊維状物の微細孔が引きつぶされ、後の熱処理工程における緻密化が良好に進行するようになる。ただし、延伸倍率が10倍を超えるような高倍率で延伸した場合には、工程の調子が悪化して毛羽や単糸切れが多く発生するため好ましくない。
[洗浄工程]
洗浄工程においては、上記可塑延伸浴延伸工程を経た繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行なうことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば特に限定されるものではないが、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。引き続き、50〜90℃の温水で洗浄することが好ましい。
[飽和水蒸気処理工程]
飽和水蒸気処理工程においては、洗浄工程において洗浄された繊維を、飽和水蒸気中で熱処理する。飽和水蒸気処理をおこなうことにより、繊維の結晶化を抑制しつつ配向を高めることが可能となる。飽和水蒸気雰囲気での熱処理は、乾熱処理と比較して繊維束内部まで均一に熱処理することが可能となり、均質な繊維を得ることができる。
さらに驚くべきことに、飽和水蒸気雰囲気で熱処理を行うと、繊維表面が結晶化せず、スキン層が形成されない。このため、繊維束の各単繊維中に残存する溶媒を、急速に拡散することができ、繊維内部からほぼ完全に除去することが可能となる。したがって、飽和水蒸気熱処理を実施することにより、最終的に得られる繊維中の残存溶媒量を、1.0質量%以下にまで低減することが可能となる。
飽和水蒸気処理工程における飽和水蒸気圧は、0.02〜0.50MPaの範囲とする。好ましくは0.03〜0.30MPaの範囲、さらに好ましくは0.04〜0.20MPaの範囲である。飽和水蒸気圧が0.02MPa未満の場合には、十分な蒸気処理効果が得られず、残存溶媒量を低減させる効果が小さくなるため好ましくない。一方で、飽和水蒸気圧が0.50MPaを超える場合には、繊維の結晶化が促進されすぎて繊維表面にスキン層が形成されるため、残存溶媒量を十分に低減することが困難となる。
飽和水蒸気処理工程における延伸倍率は、繊維の強度の発現にも密接な関係を持っている。延伸倍率は、製品に求められる物性を考慮して必要な倍率を任意に選択すればよいが、本発明においては0.7〜5.0倍の範囲であり、好ましくは1.1〜2.0倍の範囲とすることが好ましい。延伸倍率が0.7倍未満の場合には、飽和水蒸気雰囲気中での繊維束(糸条)の収束性が低下するので好ましくない。一方で、延伸倍率が5倍を超える場合には、延伸時の単糸切れが増大し、毛羽や工程断糸が発生するため好ましくない。また、飽和水蒸気処理工程における延伸倍率を0.7〜5.0倍の範囲とすれば、発明の電気絶縁紙を構成する繊維に必要な300℃での乾熱収縮率を3.0%以下とすることができる。
なお、ここでいう延伸倍率とは、処理前の繊維長に対する処理後の繊維長の比で表される。例えば、延伸倍率0.7倍とは、飽和水蒸気処理工程により繊維が原長の70%に制限収縮処理されることを意味し、1.1倍とは10%伸長するよう処理されることを意味する。
なお、飽和水蒸気処理の時間は、0.5〜5.0秒の範囲とすることが好ましい。走行する繊維束を連続的に処理する場合には、水蒸気処理槽中の繊維束の走行距離と走行速度とによって処理時間が決まるため、これらを適宜調整して最も効果のある処理時間を選択すればよい。
[乾熱処理工程]
乾熱処理工程においては、飽和水蒸気処理工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、熱板、熱ローラ等を用いる方法を挙げることができる。乾熱処理を経ることにより、最終的に、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
乾熱処理工程における熱処理温度は、250〜400℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは300〜380℃の範囲である。乾熱処理温度が250℃未満である場合には、多孔質の繊維を十分に緻密化させることが出来ないため、得られる繊維の力学特性が不十分となる。一方で、乾熱処理温度が400℃を超える高温では、繊維の表面が熱劣化し、品位が低下するため好ましくない。
乾熱処理工程における延伸倍率は、得られる繊維の強度の発現に密接な関係を持っている。延伸倍率は、繊維に要求される強度等に応じて任意の倍率を選ぶことができるが、0.7〜4倍の範囲とすることが好ましく、1.5〜3倍の範囲とすることがさらに好ましい。延伸倍率が0.7倍未満の場合には、工程張力が低くなるために繊維の力学特性が低下し、一方で、延伸倍率が4倍を超える場合には、延伸時の単糸切れが増大し、毛羽や工程断糸が発生する。なお、ここでいう延伸倍率とは、上記飽和水蒸気処理工程で説明したのと同様に、延伸処理前の繊維長に対する処理後の繊維長の比で表される。例えば、延伸倍率0.7倍とは、乾熱処理工程により繊維が原長の70%に制限収縮処理されることを意味し、延伸倍率1.0倍とは定長熱処理を意味する。
乾熱処理工程における処理時間は、1.0〜45秒の範囲とすることが好ましい。処理時間は、繊維束の走行速度と熱板、熱ローラ等との接触長とによって調整することができる。
[捲縮工程および切断工程]
乾熱処理が施されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維には、必要に応じて、さらに捲縮加工を施してもよい。必要に応じて捲縮加工がなされた長繊維を、適当な繊維長、例えば31〜76mmに切断することにより、本発明の電気絶縁紙を構成するメタ型全芳香族ポリアミド短繊維を得る。
なお、本発明の効果を損なわない範囲において、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の表面は、分散剤、耐光剤、平滑剤、接着剤、およびそれらを複合させた剤などの表面処理剤で処理されていてもよい。
<メタ型全芳香族ポリアミドパルプ>
本発明の電気絶縁紙に用いられる「メタ型全芳香族ポリアミドパルプ」とは、メタ型全芳香族ポリアミドからなる微小のフィブリルを有する薄葉状、鱗片状の小片、またはランダムにフィブリル化した微小短繊維の総称である。このようなメタ型全芳香族ポリアミドパルプは、例えば、特公昭35−11851号公報、特公昭37−5732号公報に記載された方法により、メタ型全芳香族ポリアミドの重合体溶液を、該メタ型全芳香族ポリアミド溶液の沈殿剤とせん断力の存在する系において混合することにより製造することができる。本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミドパルプの形態としては、単糸繊度22dtex以下、かつ、繊維長20mm以下であるものが望ましい。
<メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙>
[メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙の構成]
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙は、上記のメタ型全芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプから形成される。
上記メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の含有量は、メタ型芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプの合計質量に対して、20〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは25〜75質量%であり、さらに好ましくは30〜70質量%である。メタ型全芳香族ポリアミド短繊維の含有量が20質量%未満の場合は、加熱下での収縮が大きくなり、一方で、80質量%を超える場合には、電気絶縁性が不良となり好ましくない。
また、上記メタ型全芳香族ポリアミドパルプの含有量は、メタ型芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプの合計質量に対して、20〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは25〜75質量%であり、さらに好ましくは30〜70質量%である。メタ型全芳香族ポリアミドパルプの配合は、目付、厚さ、嵩密度など、目的とする電絶紙の要求特性を見極めながら適宜決定することができる。何れにせよ、メタ型全芳香族ポリアミドパルプの混合比率が80質量%を超える場合には、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維によりパルプの収縮を抑えきることができず、その結果、高温下での紙の収縮率が高くなるため好ましくない。
なお、本発明の電気電絶紙の効果を損なわない範囲で、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプ以外の他の繊維を、10質量%以下程度、混合してもよい。混合する他の繊維としては、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維やポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールなどのヘテロ環含有芳香族繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリサルホン繊維などの有機耐熱性繊維、あるいはガラス繊維、玄武岩繊維などの無機繊維を例示することができる。
[メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙の製造方法]
本発明の電気絶縁紙は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、メタ型全芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプを、所定の比率になるようにそれぞれ秤量し、該繊維およびパルプの合計濃度が約0.15〜0.40質量%の範囲となるように水中に投入して均一分散させ、調製した水性スラリー中に、必要に応じて、分散剤や粘度調整剤を加えた後、長網式や丸網式などの抄紙機による湿式抄造法で湿紙を形成し、乾燥して得た乾燥紙を所定の嵩密度の範囲となるように加熱加圧加工することにより、電気電絶紙を得る。
加熱加圧加工の条件は、特に限定されるものではなく、例えば、カレンダー機を用いて加熱加圧する場合には、直径約15〜80cmからなる1ケの硬質表面ロールと、直径約30〜100cmの表面変形可能な弾性ロールとの間で、好ましくは、直径約20〜80cmからなる2ケの硬質表面ロール同士の間で行えばよい。また、加熱加圧条件については、本発明者らの検討によれば、温度:180〜400℃、線圧:980〜3,920N/cmの範囲でカレンダー加工するのが最適であり、この条件で作成された電絶紙は、耐熱寸法安定性に優れ、また、引張強力も優れたものが得られる。なお、加熱加圧条件が180℃、980N/cm未満では、表面に毛羽が残存し、また嵩密度を高くすることができないため好ましくない。一方で、400℃、3,920N/cmを超えると、カレンダー加工中に紙切れが生じてしまうため好ましくない。
このような加熱加圧加工により、本発明の電気電絶紙の嵩密度は、0.55〜1.1g/cmの範囲内に入るように製紙工程で調整、コントロールすることが可能である。嵩密度が0.55g/cm未満であると、特に薄葉紙とした時に紙の強力が不足し、また、毛羽立ちが増加する傾向にあるので好ましくない。一方、嵩密度が1.1g/cmを超えると、電気絶縁紙中の空隙が極度に減少し、紙としての引裂き性や折り曲げ性に劣るので好ましくない。
なお、本発明の電気絶縁紙は、熱圧カレンダー加工処理により透明性が向上する。これは、短繊維が熱圧により変形し扁平化することに起因するものである。したがって、透明性を要する耐熱用途、電気絶縁用途に対しては、熱圧カレンダー加工処理を施した電気絶縁紙を適用することができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各物性値は下記の方法で測定した。また、実施例中における部および%は、特に断らない限り、質量基準である。
[固有粘度(I.V.)]
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
[繊度]
JIS L1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
[繊維の密度]
繊維の密度は、テトラクロロエタンとシクロヘキサンを溶媒に用いる浮沈法によって測定した。
[破断強度、破断伸度]
JIS L1015に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
[300℃乾熱収縮率]
約3,300dtexのトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、互いに30cm離れた箇所に印をつけた。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後、印間の長さLを測定した。測定結果Lをもとに、下記式にて得られる値を300℃乾熱収縮率(%)とした。
300℃乾熱収縮率(%)=[(30−L)/30]×100
[残留溶媒量]
洗浄工程の出側にて繊維をサンプリングし、該繊維を遠心分離機(回転数5,000rpm)に10分かけ、このときの繊維質量(M1)を測定した。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出した。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2乾燥し、乾燥後の繊維質量(P)を測定した。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求めた。
繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記式により算出した。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
[紙の熱寸法変化率]
高精度二次元座標測定機(ムトウ工業株式会社製)を用い、長さ250mm、幅50mmの試料について、熱処理前と温度280℃で5分間熱処理した後の長さをそれぞれ測定し、下記式により熱寸法変化率を算出した。なお、測定用の試料は、連続紙の長さと幅方向から採取して測定し、その平均値で比較判定した。
熱寸法変化率(%)={(熱処理前の長さ−熱処理後の長さ)/熱処理前の長さ}×100
<実施例1>
[紡糸液調製工程]
温度計、攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、モレキュラーシーブスで脱水したN−メチル-2−ピロリドン(以下「NMP」と略称)815部を入れ、このNMP中にメタフェニレンジアミン108部を溶解した後、0℃に冷却した。この冷却したジアミン溶液に、蒸留精製し窒素雰囲気中で粉砕したイソフタル酸クロライド203部を、攪拌下に添加して反応させた。反応温度は約50℃に上昇し、この温度で60分間攪拌を継続し、さらに60℃に加温して60分間反応させた。
反応終了後、水酸化カルシウム70部を微粉末状で添加して、60分かけて中和溶解した(1次中和)。残りの水酸化カルシウム4部をNMP83部に分散させたスラリー液を調製し、調製したスラリー液(中和剤)を、上記の1次中和した重合溶液に攪拌しながら添加した(2次中和)。2次中和は、40〜60℃で約60分間攪拌して実施し、水酸化カルシウムを完全に溶解させた重合体溶液(紡糸液)を調製した。
重合体溶液(紡糸液)の重合体濃度(PN濃度、すなわち重合体とNMPの合計100部に対する重合体の部)は14であり、生成したポリメタフェニレンイソフタルアミド重合体の固有粘度(I.V.)は2.37であった。また、この重合体溶液(紡糸液)の塩化カルシウム濃度および水の濃度は、重合体100部に対し、塩化カルシウム46.6部、水15.1部であった。
[紡糸・凝固工程]
上記紡糸液調製工程で調製した紡糸液を、孔径0.07mm、孔数500の口金から、浴温度40℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/NMP/塩化カルシウム=48/48/4(質量比)であり、凝固浴中に浸漬長(有効凝固浴長)70cmにて、糸速5m/分で通過させた。凝固浴上がりの多孔質繊維状物の密度は、0.71g/cmであった。
[可塑延伸浴延伸工程]
引き続き、可塑延伸浴中にて3.0倍の延伸倍率で延伸を行った。このときの可塑延伸浴の組成は、水/NMP/塩化カルシウム=44/54/2(質量比)であり、温度は40℃であった。
[洗浄工程]
可塑延伸した繊維束を、30℃の冷水で十分に水洗を行った後、さらに60℃の温水で十分に洗浄した。
[飽和水蒸気処理工程]
引き続き、飽和水蒸気圧力0.05MPaに保たれた容器中にて、延伸倍率1.1倍で、飽和水蒸気による熱処理を行った。熱処理は、繊維束が飽和水蒸気により約1.0秒間処理されるよう諸条件を調整した。
[乾熱処理工程]
続いて、表面温度360℃の熱板上で、延伸倍率1.0倍(定長)にて乾熱処理を行った後に、得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を巻き取った。
[長繊維の物性]
得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド延伸繊維は、十分に緻密化しており、繊度2.2dtex、密度1.33g/cm、引張強度3.68cN/dtex、伸度42%であり、良好な力学特性を示し、品質もバラツキが無く、異常糸の発生は全く見られなかった。また、繊維中の残存溶媒量は0.71%と極微量であり、300℃乾熱収縮率は1.2%と、きわめて小さな値を示した。結果を表1に示す。
[切断工程]
上記で得られた長繊維を、長さ6mmに切断し、単糸繊度2.2dtex、繊維長6mmの抄紙用短繊維を得た。
[混抄用パルプの作製工程]
NMPに水を加えて水溶液(濃度30%)を作製し、沈殿剤とした。特開昭52−15621号公報の記載に従い、溶液重合紡糸原液注入口、沈殿剤注入口、およびスラリー排出口を有する室と、該室内に取り付けられたローターと、該室の内壁に固定されたステーターとからなる沈殿装置を用いて、上記で得られた重合体溶液(紡糸液)および沈殿剤を、各注入口から注入し、上記ローターを高速回転してパルプ化を行なった。
[抄紙工程]
得られたパルプを用いて、パルパー、高速離解機、ディスクリファイナーを使用して、スラリー濃度0.3%でカナディアン標準濾水度110mLの水性スラリーを作製した。
ここで、上記で得られたメタ型全芳香族ポリアミド短繊維とパルプスラリーとを、メタ型全芳香族ポリアミド質量として40(%)/60(%)の混率で混合し、25cm×25cm型角シートマシンにて手抄きした。その後、温度230℃、圧力200kg/cm(20N/cm)の条件でカレンダー加工を実施することにより、メタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙を得た。得られた紙の熱寸法変化率を表1に示す。
<実施例2>
紡糸液調製工程における重合溶媒(アミド系溶媒)として、N−メチル-2−ピロリドン(NMP)に替えてジメチルアセトアミド(以下「DMAc」と略称)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた長繊維の物性等を表1に示す。
また、実施例1と同様に、得られた長繊維からメタ型全芳香族ポリアミド短繊維を得て、これを用いて、全芳香族ポリアミド電気絶縁紙を得た。得られた紙の物性を、表1に示す。
<比較例1〜2>
実施例1で得られた重合体溶液(紡糸液)を用いて、飽和水蒸気処理工程を省き、乾熱処理工程における延伸倍率を表1記載のように変更した以外は、全て実施例1と同様の方法によりポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造し、実施例1と同様に電気絶縁紙を作製した。得られた長繊維および電気絶縁紙の物性を、表1に示す。
Figure 2010102893
本発明の電気絶縁紙は、特に耐熱寸法安定性に優れているので、高電圧、超高電圧送電用トランスなどの電気絶縁紙の用途に有用である。

Claims (3)

  1. メタ型全芳香族ポリアミド短繊維およびメタ型全芳香族ポリアミドパルプを用いた電気絶縁紙であって、上記メタ型全芳香族ポリアミド短繊維は、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙。
  2. 上記メタ型芳香族ポリアミド短繊維および上記メタ型全芳香族ポリアミドパルプの合計質量に対して、上記メタ型全芳香族ポリアミド短繊維が20〜80質量%、上記メタ型全芳香族ポリアミドパルプが80〜20質量%である請求項1記載のメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙。
  3. メタ型全芳香族ポリアミドが、ポリメタフェニレンイソフタルアミドである請求項1または2記載のメタ型全芳香族ポリアミド電気絶縁紙。
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