この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるプロペラファンを示す側面図である。図2は、図1中の矢印IIに示す方向(吸込側)から見たプロペラファンを示す平面図である。図3は、図1中の矢印IIIに示す方向(吹出側)から見たプロペラファンを示す平面図である。図4は、図1中のプロペラファンを吸込側から見た斜視図である。図5は、図4中のV−V線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。
図1から図5を参照して、まず、本実施の形態におけるプロペラファン10の基本的な構造について説明すると、プロペラファン10は、周方向に離間して設けられ、回転に伴って送風を行なう複数の翼21A,21Bと、回転に伴って送風を行なうための翼面状の表面としての翼面36を有し、互いに隣り合う複数の翼21A,21Bの間で翼21Aおよび翼21Bの根元部同士を連接する連接部31を備える。言い換えれば、プロペラファン10は、送風を行なう複数の翼21A,21Bを回転方向に離間して結合するとともに、その結合した領域を、回転に伴って送風を行なう形状に形成している。
プロペラファン10は、翼21A,21Bの回転中心に配置され、連接部31の吸込側から突出し、翼21A,21Bの回転軸方向の直交平面に平行な端面42を有する回転軸部としてのボスハブ部41をさらに備える。プロペラファン10をその回転軸方向から見た場合に、回転軸に直角に交差する線上としての仮想線Z上における連接部31外縁の、回転軸からの最小距離L1よりも、仮想線Z上におけるボスハブ部41外縁の、回転軸からの距離L2の方が小さくなる。プロペラファン10は、さらに、連接部31の吹出側に設けられ、ボスハブ部41を翼21A,21Bの回転軸方向に投影した場合に、その投影したボスハブ部41の外形よりも大きい外形を有し、端面42に平行な平面44を有する平面部43を備える。
プロペラファン10は、仮想軸である中心軸101を中心に回転し、図1中の吸込側から吹出側に送風を行なう。図中においては、プロペラファン10を中心軸101の軸方向から見て、翼21Aおよび翼21Bを中心軸101の周方向において互いに離間させるような仮想円102を描いた場合に、仮想円102の内側に連接部31が規定され、仮想円102の外側に翼21Aおよび翼21Bが規定されている。
続いて、本実施の形態におけるプロペラファン10の構造について詳細に説明する。プロペラファン10は、たとえば、ガラス繊維入りAS(acrylonitrile-styrene)樹脂等の合成樹脂により一体成型されている。
プロペラファン10は、2枚翼のファンであり、翼21Aおよび翼21B(以下、特に区別しない場合は翼21という)を有する。
翼21Aおよび翼21Bは、プロペラファン10の回転軸、すなわち中心軸101の周方向において、等間隔に配置されている。翼21Aおよび翼21Bは、同一形状に形成されており、一方の翼を中心軸101を中心に他方の翼に向けて回転させた場合に両者の形状が一致するように形成されている。
翼21は、プロペラファン10の回転方向の側に位置する前縁21bと、回転方向の反対側に位置する後縁21cと、中心軸101に対して最も外周側に位置する外縁21aと、前縁21bおよび外縁21aを滑らかに接続する翼先端縁21dと、後縁21cおよび外縁21aを滑らかに接続する翼後端縁21eとを有する。翼先端縁21dは、鎌状の形状を有する。
翼21には、プロペラファン10の回転に伴って送風を行なう(吸込側から吹出側に風を送り出す)翼面26が形成されている。
翼面26は、吸込側および吹出側に面する側にそれぞれ形成されている。翼面26は、前縁21b、翼先端縁21d、外縁21a、翼後端縁21eおよび後縁21cに囲まれた領域に形成されている。翼面26は、前縁21b、翼先端縁21d、外縁21a、翼後端縁21eおよび後縁21cに囲まれた領域の全面に形成されている。翼21Aおよび翼21Bの翼面26は、それぞれ、前縁21bから後縁21cに向かう周方向において、吸込側から吹出側に傾斜する湾曲面により形成されている。
翼21Aおよび翼21Bは、中心軸101の軸周りに配置された連接部31によって互いに接続されている。
連接部31は、吸込側および吹出側に面する側にそれぞれ翼面36を有し、翼型に形成されている。翼面36は、翼21Aの翼面26および翼21Bの翼面26からそれぞれ連続して形成されている。翼21Aの翼面26と翼21Bの翼面26とは、翼面36を介して連続的に形成されている。本実施の形態では、翼21Aおよび翼21Bを結ぶ方向において、翼21Aの前縁21bと翼21Bの後縁21cとが対向し、翼21Bの前縁21bと翼21Aの後縁21cとが対向するため、翼21A側の翼面の傾斜方向と、翼21B側の翼面の傾斜方向とが、中心軸101を挟んでねじれた位置関係となる。翼21Aおよび翼21Bの翼面26からそれぞれ連接部31の翼面36に連なるに従って翼面の傾斜は小さくなり、翼21A側の翼面36と翼21B側の翼面36とが、やがて中心軸101を通る線上において滑らかに接続される。すなわち、翼21A,21Bおよび連接部31は、一体的かつ連続的に滑らかに(正接して)形成される、翼面26および翼面36をそれぞれ形成する。
本実施の形態におけるプロペラファン10においては、翼21Aと翼21Bとを結合する領域が、回転に伴って送風を行なう形状に形成されている。この翼21Aと翼21Bとを結合する領域は、回転に伴って送風を行なうための翼面状に形成されている。
翼21Aの前縁21bの根元部と翼21Bの後縁21cの根元部とが接続されており、翼21Bの前縁21bの根元部と翼21Aの後縁21cの根元部とが接続されている。連接部31は、翼21Aの前縁21bの根元部から翼21Bの後縁21cの根元部に向かうに従って、吸込側から吹出側に延在するように形成され、翼21Bの前縁21bの根元部から翼21Aの後縁21cの根元部に向かうに従って、吸込側から吹出側に延在するように形成されている。
連接部31は、翼21Aの前縁21bの根元部から翼21Bの後縁21cの根元部に向かうに従って、翼21の翼面26に連なって気流送出方向の吸込側から吹出側に延在し、翼21Bの前縁21bの根元部から翼21Aの後縁21cの根元部に向かうに従って、翼21の翼面26に連なって気流送出方向の吸込側から吹出側に延在するように形成されている。連接部31は、プロペラファン10の気流送出方向の吸込側から吹出側に、空気を送出する働きを有する構成をなすように形成されている。
翼21Aおよび翼21Bと連接部31とは、薄肉形状を有し、一体に成形されている。すなわち、本実施の形態におけるプロペラファン10においては、中心軸101を中心にその外周側に延出する1枚物の2枚翼が、翼21Aおよび翼21Bと連接部31とにより一体的に成形されている。プロペラファン10は、翼21Aおよび翼21Bと、翼21Aおよび翼21Bを結合する領域を含めて一体的に成型されている。
プロペラファン10は、回転軸部としてのボスハブ部41を有する。ボスハブ部41は、プロペラファン10を、その駆動源である図示しないモータの出力軸に接続する部分である。ボスハブ部41は、円筒形状を有し、中心軸101と重なる位置で連接部31に接続されている。ボスハブ部41は、吸込側の翼面36から中心軸101の軸方向に延びて形成されている。本実施の形態におけるプロペラファン10においては、翼21Aおよび翼21Bを結合する領域を回転中心とし、翼21Aおよび翼21Bを回転駆動するための部材であるボスハブ部41が、プロペラファン10に一体的に設けられている。
なお、ボスハブ部41の形状は、円筒形状に限られず、モータの出力軸に対する接続構造に応じて適宜変更される。
連接部31は、ボスハブ部41の外周面からその外周側に延出するように形成されている。言い換えれば、連接部31は、プロペラファン10を中心軸101の軸方向から見た場合に、中心軸101に直角に交差する仮想線Z上における連接部31の外縁の、中心軸101からの最小距離L1よりも、その仮想線Z上におけるボスハブ部41の外縁の、中心軸101からの距離L2の方が小さくなるように形成されている(図2を参照のこと)。
プロペラファン10の好ましい形状の一例として、中心軸101と図2中の仮想線Zとを含む仮想平面にてプロペラファン10を切断した断面を略楕円形状に構成し、周方向(長軸)の長さをa、軸方向(短軸)の長さをbとしたとき、aおよびbの比率b/aを0.078とする。
なお、aおよびbの比率b/aが0.03〜0.15となるように樹脂成型すれば、成型性および送風性能を損なうことなく、かつ、強度的にも問題の無い良好なプロペラファンを得ることができる。
比率b/aが0.03よりも小さい場合、連結部31の樹脂肉厚が薄くなり過ぎ、強度的に問題が生じる。さらに好ましくは、比率b/aが0.046以上になるように設定する。
比率b/aが0.150よりも大きい場合、連結部31の樹脂肉厚が厚くなり過ぎ、ヒケ等の成型性の問題が生じるとともに、プロペラファンの質量が重くなるため、送風性能が損なわれる。さらに好ましくは、比率b/aが0.089以下になるように設定する。
図6は、図1中のプロペラファンの一例を示す平面図である。図6を参照して、図中には、中心軸101の軸方向から見た場合にφ460mmの外径を有するプロペラファン10が示されている。
図7は、図6中のプロペラファンをφ295mmの位置で切断した場合の断面形状を示す斜視図である。図8は、図6中のプロペラファンをφ130mmの位置で切断した場合の断面形状を示す斜視図である。図9は、図6中のプロペラファンをφ95mmの位置で切断した場合の断面形状を示す斜視図である。図7中には、翼21の断面が示され、図8中には、翼21と連接部31との境界部分の断面が示され、図9中には、連接部31の断面が示されている。
図7および図8を参照して、翼21は、前縁21bと後縁21cとを結ぶ、周方向の断面形状の厚みが、翼中心付近から前縁21bおよび後縁21cにそれぞれ向かうほど薄くなり、翼中心よりも前縁21b側に寄った位置に最大厚みを有する翼型形状に形成されている。図9を参照して、連接部31は、上記に説明した翼21と同様の翼型形状に形成されている。すなわち、本実施の形態におけるプロペラファン10は、翼21の外縁21aから中心軸101に向かういずれの断面位置においても翼型の断面形状を有するように形成されている。
なお、以上においては、合成樹脂により一体成型されるプロペラファン10について説明したが、本発明におけるプロペラファンは樹脂製に限られるものではない。たとえば、一枚物の板金を捻り加工することによってプロペラファン10を形成してもよいし、曲面を有して形成される一体の薄肉状物によりプロペラファン10を形成してもよい。これらの場合、別に成形したエンボス部41をプロペラファン10の回転中心に接合する構造としてもよい。
次に、保管や運送の際に複数のプロペラファン10を積み重ねるために設けられた構造について詳細に説明する。図10は、図5中の矢印Xに示す方向から見たプロペラファンの中心部を示す平面図である。
図5および図10を参照して、ボスハブ部41は、吸込側の連接部31から中心軸101の軸方向に延びる先端に、端面42を有する。端面42は、中心軸101の軸方向の直交平面に平行に延在する。本実施の形態では、プロペラファン10の吸込側を中心軸101の軸方向から見た場合に、端面42が、外形が円となる形状を有し、中心軸101を中心に外径d1を有する。
プロペラファン10は、平面44を形成する平面部43を有する。平面部43は、ボスハブ部41が設けられた吸込側とは反対側、すなわち吹出側の連接部31に設けられている。平面44は、平面部43の端面として形成されており、ボスハブ部41の端面42と平行に延在する。平面44は、連接部31の翼面36よりも中心軸101の軸方向において突出した位置に形成されている。本実施の形態では、プロペラファン10の吹出側を中心軸101の軸方向から見た場合に、平面44が、外形が円となる形状を有し、中心軸101を中心に外径d1よりも大きい外径d2を有する。平面44は、端面42に対して同心軸上に配置されるように形成されている。
なお、本実施の形態では、端面42および平面44がそれぞれ外形が円となる形状を有する場合について説明したが、これに限られず、端面42および平面44は、多角形や楕円などの円以外の外形を有してもよい。
図11は、図5中のプロペラファンを複数枚、積み重ねた状態を示す断面図である。図11を参照して、複数のプロペラファン10が、その高さ方向(中心軸101の軸方向)に積み重ねられている。この際、複数のプロペラファン10は、各プロペラファン10の吸込側および吹出側が上下方向の同じ方向を向くような姿勢で積み重ねられている。複数のプロペラファン10は、下側のプロペラファン10の端面42上に上側のプロペラファン10の平面44が載置されるように積み重ねられている。
本実施の形態におけるプロペラファン10では、翼型の連接部31を設けるため、ボスハブ部41が小型に形成されている。この小型のボスハブ部41に形成された端面42の外形よりも平面44の外形が大きくなるように平面部43を設けることにより、複数のプロペラファン10を安定して積み重ねることができる。
続いて、本実施の形態におけるプロペラファン10によって奏される作用、効果について説明する。
本実施の形態におけるプロペラファン10においては、翼21Aおよび翼21Bの間を連接する翼型の連接部31が設けられる。このような構成により、従来、ボスハブ部として十分に活用することができていなかった回転中心部においても翼型の断面形状および大きな迎え角を有する翼として有効に活用することができる。これにより、外周側に比べて周速の遅い中心部付近の送風能力を大幅に増強でき、ファン全体の送風性能を大幅に改善することができる。
送風を行なう翼の面積を増加させることにより、同一回転数において風量を増加させることができる。さらに、従来、回転中心部に存在していた大きなボスハブ部の大部分を、翼型の断面形状を有する連接部31に置き換えることによって、プロペラファンの質量を低減することができる。これにより、駆動用のモータへの負荷が軽減され、同一風量において消費電力を低減することもできる。
さらに、上記作用、効果から導出される効果として、下記の内容を挙げることができる。
(1)同一回転数時の風量を増加できるため、騒音を低減できる。(近年、たとえば、空気調和機においては、省エネルギー性を向上させるために風量を増加する傾向にある。このため、騒音が増大して住環境の快適性が損なわれるといった問題があった。これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン10によれば、騒音の増大なしに風量を増加できる。)
(2)圧力流量特性を向上できるため、ファン性能を向上できる。(近年、たとえば、空気調和機においては、省エネルギー性を向上させるために熱交換器の能力増加に伴い圧力損失が増大する傾向にある。熱交換器の圧力損失が増大すると、風量が低下する(トレードオフの関係)ため、熱交換器の能力増加の効果を十分に得ることができないという課題があった。これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン10によれば、圧力流量特性を向上できるため、圧力損失の大きい熱交換器に対しても、風量の低下を抑制でき、その結果、熱交換器の能力増加の効果を十分に得ることができる。)
(3)ファン効率を向上でき、消費電力を低減できる。(近年、たとえば、空気調和機においては、省エネルギー性を向上させるために風量を増加する傾向にある。このため、モータの消費電力が増大するといった問題があった。これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン10によれば、風量を増加してもモータの消費電力の増大を抑制できる。風量を増加しない場合には、効率が向上しているため、モータの消費電力を低減できる。)
(4)軽量化により、材料を削減できるとともに、モータの消費電力をさらに低減できる。(ファンの重量が大きいと、モータシャフトのベアリング損失等が増大し、余分な消費電力を必要とする。これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン10によれば、ファンを大幅に軽量化でき、その結果、モータシャフトのベアリング損失等を減少できるため、モータの消費電力を低減できる)。
以上の理由により、本実施の形態におけるプロペラファン10によれば、地球環境保全に対し、省エネルギー性、省資源設計の面で、大きく貢献するプロペラファンを実現することができる。
また、本実施の形態におけるプロペラファン10においては、保管や輸送の際に複数のプロペラファン10を積み重ねるための平面部43が設けられている。
大型のボスハブ部を有し、そのボスハブ部から外周側に延出するように複数の翼が設けられたプロペラファン(次に説明する図12中の比較のためのプロペラファン110)の場合、上下間においてプロペラファンのボスハブ部同士を組み合わせることによって、複数のプロペラファンを比較的容易に積み重ねることができる。しかしながら、ファンの送風能力を向上させるために、上記プロペラファンにおいてボスハブ部が設けられた部分を翼型の連接部31に置き換えた場合、回転中心に形成された連接部31の翼面36に起因し、プロペラファン10の積み重ねが困難になるという新たな課題が生じる。
これに対して、本実施の形態では、ボスハブ部41が設けられた吸込側とは反対側の吹出側に平面部43を設けることにより、ボスハブ部41および平面部43を介したプロペラファン10の積み重ねが可能となる。結果、保管や輸送の際に、複数のプロペラファン10を簡便な方法でかつ安定して積み重ねることができる。
続いて、本実施の形態におけるプロペラファン10によって奏される上記作用、効果を確認するため行なった実施例について説明する。
図12は、比較のためのプロペラファンを示す平面図である。図12を参照して、比較のためのプロペラファン110においては、回転中心にφ130の外径を有するボスハブ部141が設けられており、さらに、このボスハブ部41からその外周側に延出するように翼121(121A,121B)が設けられている。翼121の形状、大きさは、図6中の翼21とほぼ同一である。
図13は、本実施例において、プロペラファンの回転数と風量との関係を示すグラフである。図13を参照して、図6中の本実施の形態におけるプロペラファン10と、図12中の比較のためのプロペラファン110とを用いて、回転数を変化させながら各回転数における風量を測定した。図中に示すグラフから明らかなように、いずれの回転数領域においても、本実施の形態におけるプロペラファン10の方が比較のためのプロペラファン110よりも風量が大きくなった。たとえば、回転数が900rpmのとき、比較のためのプロペラファン110では風量が44.49m3/minとなり、本実施の形態におけるプロペラファン10では風量が46.79m3/min(比較例比105.2%)となった。
図14は、本実施例において、プロペラファンの風量と駆動用のモータの消費電力との関係を示すグラフである。図14を参照して、図6中の本実施の形態におけるプロペラファン10と、図12中の比較のためのプロペラファン110とを用いて、風量を変化させながら、各風量における駆動用のモータの消費電力を測定した。図中に示すグラフから明らかなように、いずれの風量領域においても、本実施の形態におけるプロペラファン10の方が比較のためのプロペラファン110よりも消費電力が小さくなった。たとえば、風量が40m3/minのとき、比較のためのプロペラファン110では消費電力が49.8Wとなり、本実施の形態におけるプロペラファン10では消費電力が46.2W(比較例比効率107.8%)となった。
以上の実施例により、本実施の形態におけるプロペラファン10によれば、同一回転数における風量を増加させつつ、同一風量における駆動用のモータの消費電力を低減できることを確認できた。
続いて、本実施の形態におけるプロペラファン10の性能向上のメカニズムについて説明する。
図15は、図6中の本実施の形態におけるプロペラファンおよび図12中の比較のためのプロペラファンにおける圧力流量特性を示す図である。図15を参照して、図中には、本実施の形態におけるプロペラファン10(外径φ460mm)と、比較のためのプロペラファン110(外径φ460mm)とを対比して、回転数700rpmにおける圧力流量特性(P:静圧−Q:風量)が示されている。
図中に示すグラフから明らかなように、本実施の形態におけるプロペラファン10は、比較のためのプロペラファン110と比較して、同一回転数におけるP−Q特性が向上している。また、同一風量時における駆動用のモータの消費電力が低減しており、モータ効率が大幅に改善される。
図16から図18は、本実施の形態におけるプロペラファンのメカニズムを説明するための図である。図16から図18を参照して、本実施の形態におけるプロペラファンの上記メカニズムについて詳細に説明する。
ファンの翼21が駆動して回転することにより、風はファンの翼面26上を通過する。その際、風は、まず翼21の前縁21bと出会い、それから翼面26に沿って流れ、翼21の後縁21cから流出する。
翼21が働く中で最も中心に近い位置の近傍で生ずる現象を考える。比較のためのプロペラファン(図16を参照のこと)の場合、翼21の根元部とボスハブ部141が接する位置の前縁21b(図16中のS1)から風が翼面26に流入する。その後、回転しつつ遠心力の影響を受けるため、流線は、同心円よりもやや外側に広がる形、図16中のR1を描く。このR1より内側の斜線部(面積A)は、風を送る送風機の仕事をなすことができない。
これに対して、本実施の形態におけるプロペラファンは、ボスハブ部41が極めて小さく、比較のためのプロペラファンと比べて、さらに中心に近い位置まで翼として働くため、翼21の根元部との境界をなす連接部31の前縁21b(図17中のS2)から風が翼面36に流入する。その後、流線は、同心円よりもやや外側に広がり、図17中のR2を描く。比較のためのプロペラファンと同様、このR2より内側の斜線部(面積B)は、風を送る送風機の仕事をなすことができない。図18中には、この両者の風を送る送風機の仕事をなすことができない領域の面積差(A−B)が示されている。
航空工学において、揚力は面積に比例することが周知である。この面積差(A−B)の分、本実施の形態におけるプロペラファンはファンに生じる揚力が大きくなる。なお、風は、揚力の反作用にて生ずる反力にて送風されることが知られており、揚力が大きいと、その分反力も大きくなり、送風能力が増加する。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において図5、図10および図11を参照して説明した、保管や輸送の際に複数のプロペラファンを積み重ねるための構造の変形例について説明を行なう。
図19は、複数のプロペラファンを積み重ねるための構造の第1変形例を示す断面図であり、実施の形態1における図5に対応する図である。図20は、図19中の矢印XXに示す方向から見たプロペラファンを示す平面図である。
図19および図20を参照して、本変形例におけるプロペラファン48は、図5中の構成に加えて、突起部45をさらに有する。突起部45は、平面部43が設けられた側と同じ側、すなわち吹出側の連接部31に設けられている。突起部45は、中心軸101を中心とするリング形状を有し、平面44から中心軸101の軸方向に突出するように形成されている。本実施の形態では、プロペラファン48の吹出側を中心軸101の軸方向から見た場合に、突起部45が、断面が円となるリング形状を有し、中心軸101を中心にボスハブ部41の外径d1よりも大きい内径d3を有する。
なお、突起部45が有するリング形状の断面は、ボスハブ部41の形状に即するように適宜変更されてもよい。
図21は、図19中のプロペラファンを複数枚、積み重ねた状態を示す断面図である。図21を参照して、本変形例において、図11中に示す形態と同じように、下側のプロペラファン48の端面42上に上側のプロペラファン48の平面44が載置されるように複数のプロペラファン48を積み重ねると、下側のプロペラファン48のボスハブ部41の外周上に上側のプロペラファン48のリング状の突起部45が嵌合する。
このような構成によれば、ボスハブ部41とリング状の突起部45との嵌合により、プロペラファン48の水平方向における位置ずれを防止できるため、より安定したプロペラファン48の積み重ねが可能となる。
図22は、複数のプロペラファンを積み重ねるための構造の第2変形例を示す断面図であり、実施の形態1における図5に対応する図である。図23は、図22中の矢印XXIIIに示す方向から見たプロペラファンを示す平面図である。
図22および図23を参照して、本変形例におけるプロペラファン49は、突起部46を有する。突起部46は、ボスハブ部41が設けられた側と同じ側、すなわち吸込側の連接部31から突出するように形成されている。突起部46は、ボスハブ部41の外周上に配置されるリング形状を有する。すなわち、プロペラファン49の吸込側を中心軸101の軸方向から見た場合に、突起部46は、中心軸101を中心にボスハブ部41の外径d1よりも大きい外径d4を有するリング形状に形成されている。突起部46は、中心軸101の軸方向においてボスハブ部41よりも高い位置まで突出するように形成されている。
図24は、図22中のプロペラファンを複数枚、積み重ねた状態を示す断面図である。図24を参照して、複数のプロペラファン49が、その高さ方向(中心軸101の軸方向)に積み重ねられている。この際、複数のプロペラファン49が、各プロペラファン49の吸込側および吹出側が上下方向の同じ方向を向くような姿勢で積み重ねられている。複数のプロペラファン49は、下型のプロペラファン49のリング状の突起部46上に上側のプロペラファン49の吹出側の翼面36が載置されるように積み重ねられている。
このような構成により、複数のプロペラファン49をリング状の突起部46を介して安定して積み重ねることができる。また、リング状の突起部46にバランスピースを取り付けプロペラファン49のアンバランスを解消することも可能となる。
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるプロペラファン48,49によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
(実施の形態3)
この発明の実施の形態3におけるプロペラファンは、実施の形態1におけるプロペラファン10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
図25は、この発明の実施の形態3におけるプロペラファンを示す側面図である。図26は、図25中の矢印XXVIに示す方向(吸込側)から見たプロペラファンを示す平面図である。図27は、図25中の矢印XXVIIに示す方向(吹出側)から見たプロペラファンを示す平面図である。図28は、図25中のプロペラファンを吸込側から見た斜視図である。
図25から図28を参照して、まず、本実施の形態におけるプロペラファン50の基本的な構造について説明すると、プロペラファン50は、周方向に離間して設けられ、回転に伴って送風を行なう複数の翼21(21A,21B,21C)と、回転に伴って送風を行なうための翼面状の表面としての翼面36を有し、互いに隣り合う複数の翼21の間で翼21A、翼21Bおよび翼21Cの根元部同士を連接する連接部31と、翼21A,21B,21Cの回転中心に配置され、連接部31の吸込側から突出し、翼21A,21B,21Cの回転軸方向の直交平面に平行な端面42を有する回転軸部としてのボスハブ部41とを備える。プロペラファン10をその回転軸方向から見た場合に、回転軸に直角に交差する線上としての仮想線Z上における連接部31外縁の、回転軸からの最小距離L1よりも、仮想線Z上におけるボスハブ部41外縁の、回転軸からの距離L2の方が小さくなる。プロペラファン10は、さらに、連接部31の吹出側に設けられ、ボスハブ部41を翼21A,21B,21Cの回転軸方向に投影した場合に、その投影したボスハブ部41の外形よりも大きい外形を有し、端面42に平行な平面44を有する平面部43を備える。
プロペラファン50は、仮想軸である中心軸101を中心に回転し、図25中の吸込側から吹出側に送風を行なう。図中においては、プロペラファン50を中心軸101の軸方向から見て、翼21A、翼21Bおよび翼21Cを中心軸101の周方向において互いに離間させるような仮想円102を描いた場合に、仮想円102の内側に連接部31が規定され、仮想円102の外側に翼21A、翼21Bおよび翼21Cが規定されている。
プロペラファン50は、3枚翼のファンであり、翼21A、翼21Bおよび翼21Cを有する。翼21A、翼21Bおよび翼21Cは、中心軸101の周方向において、等間隔に配置されている。翼21A、翼21Bおよび翼21Cは、同一形状に形成されている。
翼21A、翼21Bおよび翼21Cは、中心軸101の軸周りに配置された連接部31によって互いに接続されている。本実施の形態におけるプロペラファン50においては、中心軸101を中心にその外周側に延出する1枚物の3枚翼が、翼21A、翼21Bおよび翼21Cと連接部31とにより一体的に成形されている。
プロペラファン50は、中心軸部としてのボスハブ部41を有する。連接部31は、ボスハブ部41の外周面からその外周側に延出するように形成されている。
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるプロペラファン50によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
なお、本発明におけるプロペラファンは、4枚以上の翼を有して構成されてもよい。
(実施の形態4)
この発明の実施の形態4におけるプロペラファンは、実施の形態1におけるプロペラファン10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
図29は、この発明の実施の形態4におけるプロペラファンを示す側面図である。図30は、図29中の矢印XXXに示す方向から見たプロペラファンを示す平面図である。
図29および図30を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン52においては、連接部31の翼面36が、翼21Aの翼面26から連続的に連なる第1部分としての翼面36Mと、翼21Bの翼面26から連続的に連なる第2部分としての翼面36Nとから構成されている。
連接部31は、さらに、非翼面形状の表面としての平面37を有する。平面37は、プロペラファン52の回転時に送風に寄与することのない形状を有し、本実施の形態では、平面状に形成されている。平面37は、翼面36Mと翼面36Nとの間に形成されている。平面37は、中心軸101を中心に配置され、ボスハブ部41からその外周に向けて延出するように形成されている。翼面36Mと翼面36Nとを結ぶ方向において、平面37は、ボスハブ部41よりも大きい幅を有する。
図31は、図29および図30中のプロペラファンの変形例を示す平面図である。図31は、図30に対応する図である。図31を参照して、本変形例におけるプロペラファン53においては、翼面36Mと翼面36Nとを結ぶ方向において、平面37が、ボスハブ部41よりも小さい幅を有する。
連接部31が平面37を有する場合であっても、連接部31に形成された翼面36を送風に寄与させることにより、送風性能を向上させることができる。また、図31中に示す変形例のように、平面37の幅を可能な限り小さくすることによって、翼面36Mおよび翼面36Nの面積を増大させ、送風性能をより効果的に向上させることができる。
このように構成された、この発明の実施の形態4におけるプロペラファン52,53によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
(実施の形態5)
この発明の実施の形態5におけるプロペラファンは、実施の形態1におけるプロペラファン10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
図32は、この発明の実施の形態5におけるプロペラファンを示す平面図である。図32を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン56においては、翼21Aおよび翼21Bの後縁21cにそれぞれ凹部22が形成されている。凹部22は、形成された翼21の後縁21cから翼21の回転方向とは反対方向、すなわち前縁21bに向けて凹むように形成されている。凹部22は、翼後端縁21eを鎌状に尖った形状にするように形成されている。
本実施の形態では、凹部22が、凹部22の両端を結ぶ線、または端部が明確でない場合の両端部共通接線の長さXが、翼の外径Dの0.33倍以上(0.33≦X/D)となり、凹部の両端を結ぶ線、または上記の接線から凹部の最も深い部分までの長さYが、翼の外径Dの0.068倍以下(Y/D≦0.068)となるように、形成されている。
図33は、この発明の実施の形態5において、プロペラファンの回転数と風量との関係を示すグラフである。図24を参照して、図23中の本実施の形態におけるプロペラファン56(外径D=460mm、X/D=0.37、Y/D=0.068)と、図9中の比較のためのプロペラファン110とを用いて、回転数を変化させながら各回転数における風量を測定した。
図34は、この発明の実施の形態5において、プロペラファンの風量と駆動用のモータの消費電力との関係を示すグラフである。図25を参照して、図23中の本実施の形態におけるプロペラファン56(外径D=460mm、X/D=0.37、Y/D=0.068)と、図9中の比較のためのプロペラファン110とを用いて、風量を変化させながら、各風量における駆動用のモータの消費電力を測定した。
図33および図34を参照して、凹部22を設けることによって、効率的に抗力が減少するように翼の面積が減少する。翼の面積が減少するため、同一回転数において風量は減少するが、効率的に抗力が減少するため、同一風量においては消費電力を低減することができる。
図35は、同一回転数における風量を比較する図である。図中には、X/DおよびY/Dの大きさが異なるプロペラファン(外径D=460mm)を用いた場合に、回転数900rpm時における風量の値が示されている(風量の下に示した割合は、図12中の比較のためのプロペラファン110を用いた場合の風量の値(44.49m3/min)に対する割合である)。
図36は、同一風量における駆動用のモータの消費電力を比較する図である。図中には、X/DおよびY/Dの大きさが異なるプロペラファン(外径D=460mm)を用いた場合に、風量40m3/minにおける駆動用のモータの消費電力の値が示されている(消費電力の下に示した割合は、図12中の比較のためのプロペラファン110を用いた場合の消費電力の値(49.8W)に対する比効率である)。
図35および図36を参照して、X/Dをほぼ一定にしてY/Dを変化させると、Y/Dを小さくするほど、同一回転数における風量は増大し、その一方で、同一風量における消費電力はほぼ同等となる。この際、凹部22をY/D≦0.068の関係を満たすように形成することにより、図12中の比較のためのプロペラファン110を用いた場合の風量に対する風量減少比をより効果的に小さく抑えることができる。
また、Y/Dをほぼ一定にして、X/Dを変化させると、X/Dを大きくするほど、同一風量における消費電力は低減する。この際、凹部22を0.33≦X/Dの関係を満たすように形成することにより、図12中の比較のためのプロペラファン110を用いた場合の消費電力に対する比効率を、より効果的に増大させることができる。
図37は、Y/Dを一定(Y/D=0.068)にした場合に、X/Dを変化させたときの同一風量における駆動用のモータの消費電力を比較するグラフである。図中の縦軸に示された比効率は、風量40m3/minにおける、図12中の比較のためのプロペラファン110を用いた場合の消費電力の値に対する、図32中のプロペラファン56を用いた場合の比効率を示す。
図38は、X/Dを一定(X/D=0.33)にした場合に、Y/Dを変化させたときの同一回転数における風量を比較するグラフである。図中の縦軸に示された風量比は、回転数900rpm時における、図12中の比較のためのプロペラファン110を用いた場合の風量の値に対する、図32中のプロペラファン56を用いた場合の風量の割合を示す。
図32中に示すプロペラファン56において、凹部22は、翼21の後縁21cに形成されるため、X/Dの値が0.5を超えることはない。図37を参照して、より好ましくは、凹部22は、0.37≦X/D<0.5の関係を満たすように形成される。また、Y/Dの値が0の場合、実施の形態1のプロペラファン10に相当する。図38を参照して、より好ましくは、凹部22は、0<Y/D≦0.043の関係を満たすように形成される。
続いて、凹部22によって奏される作用、効果のメカニズムについて説明する。
プロペラファンは、送風経路内にたとえば熱交換器といった圧力損失の大きい抵抗物が存在する場合、ファンのうち周速が遅い中央部から流れが翼面から剥離する現象が生じやすい。
圧力損失がファンにとってその能力を大きく超えるような極めて大きな場合、ファンの翼面のほぼ全域で剥離が生ずる。一方、圧力損失がファンにとってその能力内の場合には、ファンの翼面の一部(中心に近い領域)で剥離が生ずる。
図18中の斜線部(本実施の形態におけるプロペラファンが比較のためのプロペラファンに対して有利な領域)で完全に剥離してしまうと、本実施の形態におけるプロペラファンにおいても、比較のためのプロペラファンと同様に性能が低下する。この剥離を効果的に抑制する方法があれば、本発明における効果を最大限に発揮させることができる。
通常、送風経路には圧損があり、翼の中心部近傍は剥離しやすい状況となっている。本実施の形態におけるプロペアファンにおいても、上記の図18中の斜線部の領域で一部剥離が生じている場合も想定される。この斜線部の剥離を完全に防止して、本発明の効果を効率的に引き出すため、以下の構造が採用される。
すなわち、翼先端縁21dから生ずる渦(翼先端渦)をこの斜線部に導き、運動エネルギーを補充する。後縁21cに凹部22を設けることにより、先端渦をこの位置に固定することができるため、常に図18中の斜線部の領域に運動エネルギーを補充できる。結果、図18中の斜線部の領域における剥離を抑制し、本発明の効果を効率的に引き出すことができる。
このように構成された、この発明の実施の形態5におけるプロペラファン56によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
なお、以上に説明した実施の形態1から5におけるプロペラファンの構造を適宜組み合わせて新たなプロペラファンを構成してもよい。
(実施の形態6)
この発明の実施の形態6におけるプロペラファンは、実施の形態1におけるプロペラファン10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
図39は、この発明の実施の形態6におけるプロペラファンを示す平面図である。図39を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン57においては、翼21Aおよび翼21Bの前縁21bに、第1凸部として凸部58が形成されている。凸部58は、翼面21の負圧面側(吸込側)に向かって膨らむように形成されている。負圧面側から見て、凸部58は、翼面26の表面から盛り上がる湾曲面により形成されている。凸部58は、連接部31の周縁の近傍に形成されている。
このような構成によれば、翼21の回転に伴って凸部58により渦104が形成され、形成された渦104が翼面26,36上を這う。この渦104が、翼面26,36上の領域103または図18中の斜線部の領域に生じる空気流れの剥離を防止する。結果、ファンの性能および効率が向上するとともに、剥離による騒音を低減することができる。また、翼面26,36上の剥離を抑制する効果により、圧力流量特性が向上し、このため、より高い圧損に対応して送風を行なうことができる。
また、本実施の形態では、翼21Aおよび翼21Bの後縁21cと、連接部31との連結部に、翼21の回転方向と逆方向に向かって膨らむ第2凸部としての凸部59が形成されている。翼21Aの後縁21cに形成された凸部59は、翼21Bの前縁21bに近接する方向に突出するように形成され、翼21Bの後縁21cに形成された凸部59は、翼21Aの前縁21bに近接する方向に突出するように形成されている。
また、本実施の形態では、翼21Aおよび翼21Bの後縁21cと翼21の外周部(外縁21a)との連結部、すなわち翼後端縁21eに、翼21の回転方向と逆方向に向かって突出する第3凸部としての凸部60が形成されている。翼21Aの翼後端縁21eに形成された凸部60は、翼21Bの翼先端縁21dに近接する方向に突出し、翼21Bの翼後端縁21eに形成された凸部60は、翼21Aの翼先端縁21dに近接する方向に突出するように形成されている。
このような構成によれば、凸部59もしくは凸部60が形成された部分における翼弦長を延長し、より強い力で送風を行なうことができる。本来、回転半径が小さい位置では送風能力が小さくなるが、凸部59を設けることによる翼弦長の延長効果により、回転半径が小さいにもかかわらず、より大きい送風能力を得ることができる。一方、ファンは、回転半径が大きい位置で送風能力が最も高くなる。この送風能力が最も高い領域の翼弦長を延長することにより、ファンの同一回転数比風量を増大させ、より大きい送風能力を得ることができる。
なお、本実施の形態では、凸部58〜60が形成されたプロペラファン57について説明したが、凸部58〜60のいずれか1つもしくは適当な組み合わせで凸部が形成されてもよい。
このように構成された、この発明の実施の形態6におけるプロペラファン57によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
以上、実施の形態1〜6において、各種プロペラファンの構造について説明したが、これらに限られず、実施の形態1〜6に説明したプロペラファンの構造を適宜組み合わせて、新たなプロペラファンを構成してもよい。
(実施の形態7)
本実施の形態では、まず、実施の形態1におけるプロペラファン10を樹脂を用いて成型するための成型金型の構造について説明する。
図40は、図1中のプロペラファンの製造に用いられる成型金型を示す断面図である。図40を参照して、成型金型61は、固定側金型62および可動側金型63を有する。固定側金型62および可動側金型63により、プロペラファン10と略同一形状であって、流動性の樹脂が注入されるキャビティが規定されている。
成型金型61には、キャビティに注入された樹脂の流動性を高めるための図示しないヒータが設けられてもよい。このようなヒータの設置は、たとえば、ガラス繊維入りAS樹脂のような強度を増加させた合成樹脂を用いる場合に特に有効である。
なお、図40中に示す成型金型61においては、プロペラファン10における正圧面側表面を固定側金型62によって形成し、負圧面側表面を可動側金型63によって形成することを想定しているが、プロペラファン10の負圧面側表面を固定側金型62によって形成し、プロペラファン10の正圧面側表面を可動側金型63によって形成してもよい。
プロペラファンとして、材料に金属を用い、プレス加工による絞り成型により一体に形成するものがある。これらの成型は、厚い金属板では絞りが困難であり、質量も重くなるため、一般的には薄い金属板が用いられる。この場合、大きなプロペラファンでは、強度(剛性)を保つことが困難である。これに対して、翼部分より厚い金属板で形成したスパイダーと呼ばれる部品を用い、翼部分を回転軸に固定するものがあるが、質量が重くなり、ファンバランスも悪くなるという問題がある。また、一般的には、薄く、一定の厚みを有する金属板が用いられるため、翼部分の断面形状を翼型にすることができないという問題がある。
これに対して、プロペラファン10を樹脂を用いて形成することにより、これらの問題を一括して解決することができる。
図41は、本実施の形態における2枚翼のプロペラファンを製造する成型金型において、ゲート部を設ける位置の例を示す平面図である。図42は、本実施の形態における3枚翼のプロペラファンを製造する成型金型において、ゲート部を設ける位置の例を示す平面図である。
図41および図42を参照して、成型金型61は、図40中の固定側金型62および可動側金型63により規定されたキャビティ内に樹脂を注入するためのゲート部66を有する。好ましくは、ゲート部66は、連接部31にあって、互いに隣り合う翼21の前縁21bと後縁21cとの境界(2枚翼の場合、翼21Aの前縁21bと翼21Bの後縁21cとの境界、および翼21Bの前縁21bと翼21Aの後縁21cとの境界。3枚翼の場合、翼21Aの前縁21bと翼21Cの後縁21cとの境界、翼21Cの前縁21bと翼21Bの後縁21cとの境界、および翼21Bの前縁21bと翼21Aの後縁21cとの境界。)に対応する位置に設けられる。
図43および図44は、それぞれ、図41および図42中に示す位置以外にゲート部が設けられた場合のプロペラファンを示す比較例である。
図43および図44を参照して、上記位置から外れたたとえば図中の位置にゲート部66が設けられた場合、互いに隣り合う翼21の前縁21bと後縁21cとの境界にウェルドライン67(流動性を有する樹脂が金型内部において合流する箇所であり、ウェルドラインは強度的に弱く割れやすい)が生じる場合がある。本実施の形態におけるプロペラファンにおいては、互いに隣り合う翼21の前縁21bと後縁21cとの境界に応力集中が発生するため、ウェルドライン67に沿って割れが生じやすくなり、ファンの破壊強度が著しく低下する。
図41および図42を参照して、これに対して、連接部31にあって、互いに隣り合う翼21の前縁21bと後縁21cとの境界に対応する位置にゲート部66を設けることにより、ファンの破壊強度の大きな低下には繋がらない図中の位置にウェルドライン67を生じさせることができる。結果、ファンの破壊強度の低下を未然に防止できる。
図45は、本実施の形態における2枚翼のプロペラファンを製造する成型金型において、ゲート部を設ける位置の別の例を示す平面図である。図46は、本実施の形態における3枚翼のプロペラファンを製造する成型金型において、ゲート部を設ける位置の別の例を示す平面図である。
図45および図46を参照して、好ましくは、ゲート部66は、翼21の根元部が連なる連接部31の箇所であって、前縁21bの近傍(周方向において各翼21の後縁21cよりも前縁21bに近い位置)に対応する位置に設けられる。
図47および図48は、それぞれ、図45および図46中に示す位置以外にゲート部が設けられた場合のプロペラファンを示す比較例である。
図47および図48を参照して、上記位置から外れたたとえば図中の位置にゲート部66が設けられた場合、翼21の根元部が連なる連接部31の箇所であって、前縁21bの近傍にウェルドライン67が生じる場合がある。本実施の形態におけるプロペラファンにおいては、翼21の根元部が連なる連接部31の箇所であって、前縁21bの近傍に応力集中が発生するため、ウェルドライン67に沿って割れが生じやすくなり、ファンの破壊強度が著しく低下する。
図45および図46を参照して、これに対して、翼21の根元部が連なる連接部31の箇所であって、前縁21bの近傍に対応する位置にゲート部66を設けることにより、ファンの破壊強度の大きな低下には繋がらない図中の位置にウェルドライン67を生じさせることができる。結果、ファンの破壊強度の低下を未然に防止できる。
続いて、実施の形態1におけるプロペラファン10を有する流体送り装置の一例として空気調和機の室外機について説明する。
図49は、図1中のプロペラファンを用いた空気調和機の室外機を示す図である。図49を参照して、空気調和機の室外機75は、実施の形態1におけるプロペラファン10と、駆動用モータ72とを有する送風機73を備える。この送風機73によって流体が送出される。また、室外機75内には室外熱交換器74が設けられ、送風機73によって効率的に熱交換が行なわれる。なお、送風機73は、モータアングル76によって室外機75に設置されている。
このような構成によれば、室外機75は、実施の形態1において説明したプロペラファン10を有するため、騒音の発生が抑制されて運転音が静かになる。
さらに、プロペラファン10により送風の効率が向上するので、本室外機75では消費エネルギーも低減することができる。なお、実施の形態2〜5においてそれぞれ説明したプロペラファンを用いた場合も、同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態では、流体送り装置の一例として、空気調和機の室外機を例に挙げて説明したが、この他に、たとえば、空気清浄機、加湿機、扇風機、ファンヒータ、冷却装置、換気装置などの流体を送出す装置についても本プロペラファンを適用することによって、同様の効果を得ることができる。
以下に、本発明におけるプロペラファンの技術的思想についてまとめて示す。
本発明は、回転して送風を行う複数の翼を有し、複数の翼の根元部どうしが連続的に連結される連結部を有するプロペラファンであって、翼の回転中心に位置する回転軸部を含む吸込側、および/または、吹出側に突出した凸部を有し、翼の根元部の周方向の幅よりも凸部の周方向の幅が小さいプロペラファンにおいて、吹出側の回転中心部に、吸込側の凸部の周方向の幅以上の平面部を設けたことを特徴とするプロペラファンである。
この構成によると、プロペラファンの送風性能を向上させるとともに、非常に簡便な方法で保管や輸送の際にプロペラファンを軸方向(高さ方向)に重ね合わせることができる。
また本発明は、回転して送風を行う複数の翼を有し、複数の翼の根元部どうしが連続的に連結される連結部を有するプロペラファンであって、翼の回転中心に位置する回転軸部を含む吸込側、および/または、吹出側に突出した凸部を有し、翼の根元部の周方向の幅よりも凸部の周方向の幅が小さいプロペラファンにおいて、吹出側の回転中心部にリング状の突起が設けられ、リング状の突起の内側における周方向の幅が吸込側の凸部の外側における周方向の幅以上であることを特徴とするプロペラファンである。
この構成によると、プロペラファンの送風性能を向上させるとともに、水平方向へのずれを防止することができるため、保管や輸送の際にプロペラファンを軸方向(高さ方向)にさらに安定して重ね合わせることができる。または、リング状の突起にバランスピースを取り付けプロペラファンのアンバランスを解消することができる。
また本発明は、回転して送風を行う複数の翼を有し、複数の翼の根元部どうしが連続的に連結される連結部を有するプロペラファンであって、翼の回転中心に位置する回転軸部を含む吸込側、および/または、吹出側に突出した凸部を有し、翼の根元部の周方向の幅よりも凸部の周方向の幅が小さいプロペラファンにおいて、吸込側の凸部の外周側にリング状の突起が設けられることを特徴とするプロペラファンである。
この構成によると、吸込側のリング状の突起の軸方向の高さが凸部の高さよりも大きい場合、プロペラファンの送風性能を向上させるとともに、保管や輸送の際にプロペラファンを軸方向(高さ方向)に重ね合わせることができる。吸込側のリング状の突起の軸方向の高さが凸部の高さよりも小さい場合、リング状の突起にバランスピースを取り付けプロペラファンのアンバランスを解消することができる。
また本発明は、樹脂により成型することを特徴とする、上記のプロペラファンである。この構成によると、材料が金属の場合に比べて、翼部分の断面形状を翼型にすることができ、また、大きなプロペラファンの場合には質量を軽くすることができる。したがって、材料が金属の場合に比べて、翼部分の断面形状を翼型にすることができるため、送風性能を向上させることができ、また、大きなプロペラファンの場合には質量を軽くすることができるため、モータへの負荷が軽減され消費電力を低減することができる。
また本発明は、上記に記載のプロペラファンを備えた、流体送り装置である。
また本発明は、上記に記載のプロペラファンを、樹脂により成型するための成型金型である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10,48,49,50,52,53,56,57 プロペラファン、21,21A,21B,21C 翼、21b 前縁、21c 後縁、22 凹部、26,36,36M,36N 翼面、31 連接部、37 平面、41 ボスハブ部、42 端面、43 平面、44 平面部、45,46 突起部、61 成型金型、66 ゲート部、75 室外機、101 中心軸。
この発明の1つの局面に従ったプロペラファンは、周方向に離間して設けられ、回転に伴って送風を行なう複数の翼と、互いに隣り合う複数の翼の間で翼の根元部同士を連接する連接部と、翼の回転中心に配置され、連接部の吸込側から突出し、翼の回転軸方向の直交平面に平行な端面を有する回転軸部とを備える。プロペラファンを翼の回転軸方向から見て、複数の翼を周方向に離間させるような仮想円を描いた場合に、連接部は、仮想円の内側に規定されるとともに、複数の翼は、仮想円の外側に規定される。連接部は、翼の回転軸を中心として、複数の翼のうちの一の翼と、一の翼に隣接する他の翼との間で延在し、一の翼の根元部および他の翼の根元部を接続する領域に、翼の回転軸からその外周側に向かって延出するように形成されるとともに、回転に伴って送風を行なうための翼面状の表面を有する。プロペラファンを翼の回転軸方向から見た場合に、回転軸に直角に交差する線上における連接部外縁の、回転軸からの最小距離よりも、その線上における回転軸部外縁の、回転軸からの距離の方が小さくなる。プロペラファンは、さらに、連接部の吹出側に設けられ、回転軸部を翼の回転軸方向に投影した場合に、その投影した回転軸部の外径よりも大きい外径を有し、端面に平行な平面を有する平面部を備える。
この発明の別の局面に従ったプロペラファンは、周方向に離間して設けられ、回転に伴って送風を行なう複数の翼と、互いに隣り合う複数の翼の間で翼の根元部同士を連接する連接部と、翼の回転中心に配置され、連接部の吸込側から突出する回転軸部とを備える。プロペラファンを翼の回転軸方向から見て、複数の翼を周方向に離間させるような仮想円を描いた場合に、連接部は、仮想円の内側に規定されるとともに、複数の翼は、仮想円の外側に規定される。連接部は、翼の回転軸を中心として、複数の翼のうちの一の翼と、一の翼に隣接する他の翼との間で延在し、一の翼の根元部および他の翼の根元部を接続する領域に、翼の回転軸からその外周側に向かって延出するように形成されるとともに、回転に伴って送風を行なうための翼面状の表面を有する。プロペラファンを翼の回転軸方向から見た場合に、回転軸に直角に交差する線上における連接部外縁の、回転軸からの最小距離よりも、その線上における回転軸部外縁の、回転軸からの距離の方が小さくなる。プロペラファンは、さらに、連接部の吸込側に設けられ、回転軸部の外周側に配置されるとともに、翼の回転軸方向において回転軸部よりも高い位置まで突出するリング状の突起部を備える。