本発明は、送風機などに用いられるプロペラファンに関するものである。
従来より、プロペラファンは、送風機などに広く用いられている。例えば、特許文献1には、ハブと三つの翼とを備えたプロペラファンが開示されている。
一般的なプロペラファンの翼は、負圧面側へ膨らむように反った形状となっている。つまり、プロペラファンの翼は、翼断面における翼弦から反り線までの距離である反り高さが、翼の翼弦に沿って前縁から後縁に至る途中で最大となる。特許文献1の図6には、プロペラファンの各翼において、翼断面において反り高さが最大となる位置を、翼元から翼端へ向かうにつれて次第に前縁寄りにすることが記載されている。
プロペラファンの翼では、翼の正圧面側から負圧面側へ翼端を回り込んで空気が逆流することによって翼端渦が生じる。この翼端渦は、翼の正圧面側と負圧面側の圧力差が最大となる位置の近傍で発生する。このため、プロペラファンの翼において、翼端渦は、翼端において反り高さが最大となる位置の近傍において発生する。
プロペラファンの翼において発生した翼端渦は、翼の後縁へ向かって発達してゆく。従って、翼端において反り高さが最大となる位置が翼の後縁から離れるほど、翼端渦が発達して長くなる。上述したように、特許文献1のプロペラファンの翼では、翼断面において反り高さが最大となる位置が、翼元から翼端へ向かって後縁から相対的に遠ざかる。このため、特許文献1のプロペラファンでは、翼端渦が長くなり、翼端渦の生成に消費されるエネルギが嵩むため、ファン効率を充分に向上できないおそれがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロペラファンのファン効率の向上を図ることにある。
第1の発明は、円筒状のハブ(15)と、該ハブ(15)の側面から外方へ伸びる複数の翼(20)とを備えるプロペラファンを対象とする。そして、上記翼(20)のそれぞれは、翼断面における翼弦(31)から反り線(32)までの距離を反り高さとし、上記翼断面において上記反り高さが最大となる上記翼弦(31)上の位置を最大反り位置(A)とし、上記翼断面における前縁(23)から上記最大反り位置(A)までの距離(d)の翼弦長(c)に対する比を最大反り位置比(d/c)とし、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、上記翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)における上記最大反り位置比(d/c)よりも大きいものである。
ここで、プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦(90)が発生する。そして、この翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦(90)が長くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが増加する。
これに対し、第1の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(d/c)が、翼元(21)における最大反り位置比(d/c)よりも大きくなっている。つまり、各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、翼端(22)において従来よりも翼(20)の後縁(24)に近づく。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する第1基準翼断面(33)から上記翼端(22)へ向かって単調増加し、上記翼端(22)において最大となるものである。
第2の発明において、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かうにつれて、翼(20)の後縁(24)へ相対的に近づく。第1基準翼断面(33)は、翼元(21)から所定の距離だけ離れた位置の翼断面である。
なお、この明細書に記載した「単調増加」は、“広義の単調増加”である。従って、各翼(20)は、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって最大反り位置比(d/c)が増加し続けてもよいし、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ至るまでの一部の区間において最大反り位置比(d/c)が一定となっていてもよい。
第2の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かうにつれて、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。その結果、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端渦(90)の発生位置が、翼(20)の後縁(24)に近づく。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記最大反り位置比(d/c)が、上記第1基準翼断面(33)において最小となるものである。
第3の発明のプロペラファン(10)の翼(20)では、第1基準翼断面(33)において、最大反り位置比(d/c)が最小となる。このため、翼(20)における翼元(21)から第1基準翼断面(33)までの領域では、最大反り位置比(d/c)が最小値以上となる。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼元(21)から上記第1基準翼断面(33)までの距離が、上記翼端(22)から上記第1基準翼断面(33)までの距離よりも短いものである。
第4の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、プロペラファン(10)の径方向における翼(20)の中央よりも翼元(21)寄りに第1基準翼断面(33)が位置する。そして、この第1基準翼断面(33)において、最大反り位置比(d/c)が最小となる。
第5の発明は、上記第2〜第4のいずれか一つの発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼断面における上記最大反り位置比(d/c)が、0.5以上0.8以下であるものである。
第5の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、翼断面における最大反り位置比(d/c)が、0.5以上0.8以下の値に設定される。
第6の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する中間翼断面(33a)において最大となるものである。
第6の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)よりも翼元(21)寄りに位置する中間翼断面(33a)において、最大反り位置比(d/c)が最大となる。
第7の発明は、上記第6の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)において最小となり、上記翼元(21)から上記中間翼断面(33a)へ向かって単調増加するものである。
第7の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)において、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から上記中間翼断面(33a)へ向かって、最小値から最大値にまで単調増加する。
第8の発明は、上記第6又は第7の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼元(21)から上記中間翼断面(33a)までの距離が、上記翼端(22)から上記中間翼断面(33a)までの距離よりも長いものである。
第8の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)と翼端(22)の間の中央よりも翼端(22)寄りに中間翼断面(33a)が位置する。そして、この中間翼断面(33a)において、最大反り位置比(d/c)が最大となる。
第9の発明は、上記第1〜第8のいずれか一つの発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼断面における上記反り高さの最大値を最大反り高さ(f)とし、上記翼断面における上記最大反り高さ(f)の上記翼弦長(c)に対する比を反り比(f/c)としたときに、上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33,33b)において最大となり、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼元(21)へ向かって単調減少し、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼端(22)へ向かって単調減少するものである。
第10の発明は、上記第2〜第5のいずれか一つの発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼断面における上記反り高さの最大値を最大反り高さ(f)とし、上記翼断面における上記最大反り高さ(f)の上記翼弦長(c)に対する比を反り比(f/c)としたときに、上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33,33b)において最大となり、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼元(21)へ向かって単調減少し、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼端(22)へ向かって単調減少し、上記第1基準翼断面が上記第2基準翼断面を兼ねるものである。
第9,第10の各発明のプロペラファン(10)に設けられた複数の翼(20)のそれぞれでは、翼元(21)から所定の距離だけ離れた第2基準翼断面(33,33b)において反り比(f/c)が最大となる。また、各翼(20)において、反り比(f/c)は、第2基準翼断面(33,33b)から翼元(21)へ向かって単調減少し、且つ第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。
なお、この明細書に記載した「単調減少」は、“広義の単調減少”である。従って、各翼(20)は、第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって反り比(f/c)が減少し続けてもよいし、第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ至るまでの一部の区間において反り比(f/c)が一定となっていてもよい。
ここで、翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、第9,第10の各発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33,33b)から翼元(21)へ向かって単調減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33,33b)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
また、第9,第10の各発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。つまり、各翼(20)では、第2基準翼断面(33,33b)から、第2基準翼断面(33,33b)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が単調減少する。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
更に、第10の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、第1基準翼断面と第2基準翼断面が一致している。つまり、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)から所定の距離だけ離れた一つの翼断面において、最大反り位置比(d/c)が最小となり、且つ反り比(f/c)が最大となる。
第11の発明は、上記第9又は第10の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼端(22)における上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)における上記反り比(f/c)よりも小さいものである。
ここで、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)の周速度が翼元(21)の周速度よりも高い。このため、翼端(22)における反り比(f/c)が翼元(21)における反り比(f/c)と同程度であると、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が大きくなり過ぎ、その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れる空気の流量が多くなってファン効率の低下を招くおそれがある。
これに対し、第11の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が低減され、ファン効率の向上が図られる。また、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制され、この翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少するため、その点でもファン効率の向上が図られる。
本発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、翼元(21)における最大反り位置比(d/c)よりも大きくなる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、本発明によれば、プロペラファン(10)を回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができる。
上記第2の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、最大反り位置比(d/c)が、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって単調増加し、翼端(22)において最大となる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、この発明によれば、プロペラファン(10)を回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができる。
上記第9の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、反り比(f/c)が、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33,33b)において最大となり、第2基準翼断面(33,33b)から翼元(21)へ向かって単調減少し、且つ第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れを抑えることができると共に、各翼(20)の全体において翼(20)の仕事量を平均化できる。従って、この発明によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
上記第11の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量を削減できると共に、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)を抑制できる。従って、この発明によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
図1は、実施形態1のプロペラファンの斜視図である。
図2は、実施形態1のプロペラファンの平面図である。
図3は、実施形態1のプロペラファンの翼の翼断面を示す断面図である。
図4は、実施形態1のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと反り比(f/c)の関係を示すグラフである。
図5は、実施形態1のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと最大反り位置比(d/c)の関係を示すグラフである。
図6Aは、実施形態1のプロペラファンにおける翼の翼元の翼断面を示す翼の断面図である。
図6Bは、実施形態1のプロペラファンにおける翼の基準翼断面を示す翼の断面図である。
図6Cは、実施形態1のプロペラファンにおける翼の翼端の翼断面を示す翼の断面図である。
図7は、実施形態1のプロペラファンにおける気流を示すプロペラファンの斜視図である。
図8は、従来のプロペラファンにおける気流を示すプロペラファンの斜視図である。
図9は、実施形態1の変形例1の翼における回転中心軸からの距離rと反り比(f/c)の関係を示すグラフである。
図10は、実施形態1の変形例2の翼における回転中心軸からの距離rと最大反り位置比(d/c)の関係を示すグラフである。
図11は、実施形態2のプロペラファンの斜視図である。
図12は、実施形態2のプロペラファンの平面図である。
図13は、実施形態2のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと反り比(f/c)の関係を示すグラフである。
図14は、実施形態2のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと最大反り位置比(d/c)の関係を示すグラフである。
図15Aは、実施形態2のプロペラファンにおける翼の翼元の翼断面を示す翼の断面図である。
図15Bは、実施形態2のプロペラファンにおける翼の第2基準翼断面を示す翼の断面図である。
図15Cは、実施形態2のプロペラファンにおける翼の翼端の翼断面を示す翼の断面図である。
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、軸流ファンである。このプロペラファン(10)は、例えば、空気調和機の熱源ユニットに設けられ、熱源側熱交換器へ室外空気を供給するために用いられる。
−プロペラファンの構造−
図1及び図2に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とを備えている。一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とは、一体に形成されている。プロペラファン(10)の材質は、樹脂である。
ハブ(15)は、先端面(図1における上面)が閉塞した円筒状に形成されている。このハブ(15)は、ファンモータの駆動軸に取り付けられる。ハブ(15)の中心軸は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)である。
翼(20)は、ハブ(15)の外周面から外側へ突出するように配置されている。三つの翼(20)は、ハブ(15)の周方向へ互いに一定の角度間隔で配置されている。各翼(20)は、プロペラファン(10)の径方向の外側に向かって広がる形状となっている。各翼(20)の形状は、互いに同じである。
翼(20)は、プロペラファン(10)の径方向の中心側(即ち、ハブ(15)側)の端部が翼元(21)であり、プロペラファン(10)の径方向の外側の端部が翼端(22)である。翼(20)の翼元(21)は、ハブ(15)に接合されている。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から翼元(21)までの距離riは、翼元(21)の全長に亘って実質的に一定である。また、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から翼端(22)までの距離roは、翼端(22)の全長に亘って実質的に一定である。
翼(20)は、プロペラファン(10)の回転方向の前側の縁部が前縁(23)であり、プロペラファン(10)の回転方向の後側の縁部が後縁(24)である。翼(20)の前縁(23)及び後縁(24)は、翼元(21)から翼端(22)へ向かってプロペラファン(10)の外周側へ延びている。
翼(20)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と直交する平面に対して傾いている。具体的に、翼(20)は、前縁(23)がハブ(15)の先端(図1における上端)寄りに配置され、後縁(24)がハブ(15)の基端(図1における下端)寄りに配置されている。翼(20)は、プロペラファン(10)の回転方向の前側の面(図1における下向きの面)が正圧面(25)であり、プロペラファン(10)の回転方向の後側の面(図1における上向きの面)が負圧面(26)である。
−翼の詳細な形状−
翼(20)の形状について、詳細に説明する。
図3に示す翼断面は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rに位置する翼(20)の断面を平面に展開したものである。この図3に示すように、翼(20)は、負圧面(26)側に膨らむように反っている。
図3に示す翼断面において、前縁(23)と後縁(24)を結んだ線分が翼弦(31)であり、翼弦(31)が“プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と直交する平面”となす角が取付け角αである。翼弦長cは、半径がrで中心角がθの円弧の長さrθを、取付け角αに対する余弦cosαで除した値である(c=rθ/cosα)。なお、θは、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rの位置における翼(20)の中心角であり(図2を参照)、その単位はラジアンである。
図3に示す翼断面において、正圧面(25)と負圧面(26)の中点を結んだ線が反り線(32)であり、翼弦(31)から反り線(32)までの距離が反り高さである。反り高さは、翼弦(31)に沿って前縁(23)から後縁(24)に向かうにつれて次第に増加し、前縁(23)から後縁(24)に至る途中で最大値となり、最大値となった位置から後縁(24)に近づくにつれて次第に減少する。反り高さの最大値が最大反り高さfであり、反り高さが最大反り高さfとなる翼弦(31)上の位置が最大反り位置Aである。また、前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離がdである。
〈反り比〉
図4に示すように、本実施形態の翼(20)では、翼断面における最大反り高さfの翼弦長cに対する比である反り比(f/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この反り比(f/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、反り比(f/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33)において最大値(fm/cm)となる。なお、fmは、基準翼断面(33)における最大反り高さであり、cmは、基準翼断面(33)における翼弦長である(図6Bを参照)。
また、反り比(f/c)は、基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に減少し、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rmの場合は距離rが小さくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなり、rm≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなる。
ここで、基準翼断面(33)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrmの位置の翼断面である。つまり、基準翼断面(33)は、翼元(21)から距離(rm−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から基準翼断面(33)までの距離(rm−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約10%(即ち、約1/10)となっている。つまり、基準翼断面(33)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼元(21)寄りに位置している。
なお、翼元(21)から基準翼断面(33)までの距離(rm−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の5〜30%であるのが望ましく、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の5〜20%であるのが更に望ましく、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の5〜10%であるのが更に望ましい。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)よりも小さくなっている。具体的に、翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の実質的に半分である。翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の半分以下で、且つゼロよりも大きな値に設定されるのが望ましい。なお、fiは、翼元(21)における最大反り高さであり、ciは、翼元(21)における翼弦長である(図6Aを参照)。また、foは、翼端(22)における最大反り高さであり、coは、翼端(22)における翼弦長である(図6Cを参照)。
〈最大反り位置比〉
図5に示すように、本実施形態の翼(20)では、前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離dの翼弦長cに対する比である最大反り位置比(d/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極小となり且つ一度も極大とならないように変化する。
具体的に、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33)において最小値(dm/cm)となる。なお、dmは、基準翼断面(33)における前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離である(図6Bを参照)。
また、最大反り位置比(d/c)は、基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に増加し、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に増加する。つまり、ri≦r≦rmの場合は距離rが小さくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなり、rm≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなる。最大反り位置比(d/c)が大きくなるほど、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)から遠ざかり、最大反り位置Aが相対的に後縁(24)に近づく。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から任意の距離に位置する翼断面における最大反り位置Aを結んだ最大反り位置線(35)を、図2に二点鎖線で示す。
本実施形態では、基準翼断面(33)において、最大反り位置比(d/c)が最小値となり、且つ反り比(f/c)が最大値となる。つまり、本実施形態では、最大反り位置比(d/c)が最小値となる第1基準翼断面が、反り比(f/c)が最大値となる第2基準翼断面と一致している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)において最大反り位置比(d/c)が最大値(do/co)となる、つまり、本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きくなっている。なお、diは、翼元(21)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離であり(図6Aを参照)、doは、翼端(22)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離である(図6Cを参照)。
また、本実施形態の翼(20)では、全ての翼断面において、最大反り位置比(d/c)が、0.6以上0.7以下の値に設定されている。この最大反り位置比(d/c)は、0.5以上0.8以下の値に設定されるのが望ましい。
〈取付け角〉
図6A〜図6Cに示すように、本実施形態の翼(20)では、取付け角αが翼元(21)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなっている。つまり、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から離れた翼断面ほど、取付け角αが小さくなっている。従って、本実施形態の翼(20)では、翼元(21)における取付け角αiが最大値であり、翼端(22)における取付け角αoが最小値である。
−プロペラファンの送風作用−
本実施形態のプロペラファン(10)は、ハブ(15)に連結されたファンモータによって駆動され、図2における時計方向へ回転する。プロペラファン(10)が回転すると、空気が翼(20)によってプロペラファン(10)の回転中心軸(11)方向へ押し出される。
プロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。このため、プロペラファン(10)の各翼(20)には、翼(20)を正圧面(25)から負圧面(26)へ向かって押す方向の揚力が作用する。この揚力は、プロペラファン(10)の各翼(20)が空気を押し出す力の反力である。従って、翼(20)に作用する揚力が大きいほど、空気を押し出す翼(20)の仕事量が大きくなる。
〈反り比と気流の関係〉
プロペラファン(10)における翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が基準翼断面(33)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、各翼(20)では、基準翼断面(33)から、基準翼断面(33)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が次第に小さくなる。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
ここで、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)の周速度が翼元(21)の周速度よりも高い。このため、翼端(22)における反り比(fo/co)が翼元(21)における反り比(fi/ci)と同程度であると、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が大きくなり過ぎ、その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れる空気の流量が多くなってファン効率の低下を招くおそれがある。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約1/2となっている。このため、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が低減され、ファン効率の向上が図られる。また、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制され、この翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少するため、その点でもファン効率の向上が図られる。
〈最大反り位置比と気流の関係〉
プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦(90)が発生する。そして、図8に示すように、翼端渦(90)の発生位置が翼(80)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦(90)が長くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが増加する。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって最大反り位置比(d/c)が次第に大きくなる。つまり、各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置Aが、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かうにつれて、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。そして、図7に示すように、本実施形態の翼(20)では、図8に示す従来の翼(80)に比べて、翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の後縁(24)に近くなる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
ここで、翼(20)の負圧面(26)に沿って前縁(23)から後縁(24)に向かう気流は、最大反り位置Aを過ぎた付近で翼(20)の負圧面(26)から剥離することがある。このため、最大反り位置Aを前縁(23)に近づけ過ぎると、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離する領域が拡大し、送風音の増大や、ファン効率の低下を招くおそれがある。この問題を回避するには、最大反り位置比(d/c)を0.5以上の値に設定するのが望ましい。そこで、本実施形態の翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.6以上にしている。
また、最大反り位置Aを後縁(24)に近づけ過ぎると、翼断面の形状が、後縁(24)寄りの位置で急激に折れ曲がるような形状となる。このため、最大反り位置Aが後縁(24)に近すぎると、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が負圧面(26)から剥離しやすくなる。そして、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離すると、送風音の増大や、ファン効率の低下を招くおそれがある。この問題を回避するには、最大反り位置比(d/c)を0.8以下の値に設定するのが望ましい。そこで、本実施形態の翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.7以下にしている。
上述したように、本実施形態の翼(20)は、取付け角αが翼元(21)に近い翼断面ほど大きくなっている。取付け角αが大きいほど、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が、負圧面(26)から剥離しやすくなる。一方、最大反り位置比(d/c)が概ね0.5以上の範囲では、最大反り位置比(d/c)が小さいほど(即ち、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)に近づくほど)、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が負圧面(26)から剥離しにくくなる。そこで、本実施形態の翼(20)では、翼端(22)と基準翼断面(33)の間の領域において、翼元(21)に近づくにつれて(即ち、取付け角αが大きくなるにつれて)最大反り位置比(d/c)を次第に小さくし、翼(20)の負圧面(26)からの気流の剥離を生じにくくしている。
−実施形態1の効果−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)が、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に増加し、翼端(22)において最大となる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができ、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力を削減できる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)が0.5以上0.8以下に設定されている。このため、翼(20)の負圧面(26)から気流が剥離しにくくなり、気流の剥離に起因する送風音の増加やファン効率の低下を抑えることができる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、反り比(f/c)が、基準翼断面(33)において最大となり、基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に減少し、且つ基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れを抑えることができると共に、各翼(20)の全体において翼(20)の仕事量を平均化できる。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量を削減できると共に、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)を抑制できる。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
−実施形態1の変形例1−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)から基準翼断面(33)までの領域と、基準翼断面(33)から翼端(22)までの領域の一方または両方において、反り比(f/c)が一定となる区間があってもよい。例えば、図9に示すように、翼(20)のうち翼端(22)近傍の位置から翼端(22)に亘る領域において、反り比(f/c)が一定となっていてもよい。
−実施形態1の変形例2−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)から基準翼断面(33)までの領域と、基準翼断面(33)から翼端(22)までの領域の一方または両方において、最大反り位置比(d/c)が一定となる区間があってもよい。また、図10に示すように、翼(20)のうち翼元(21)から基準翼断面(33)に亘る領域において、最大反り位置比(d/c)が一定となっていてもよい。この場合、最大反り位置比(d/c)は、翼(20)のうち翼元(21)から基準翼断面(33)に亘る領域において最小値となる。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、実施形態1のプロペラファン(10)において、翼(20)の形状を変更したものである。ここでは、本実施形態のプロペラファン(10)について、主に実施形態1のプロペラファン(10)と異なる点を説明する。
図11及び図12に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とを備えている。
−翼の詳細な形状−
翼(20)の形状について、詳細に説明する。本実施形態の翼(20)は、負圧面(26)側に膨らむように反った形状となっている。この点は、実施形態1の翼(20)と同様である。
〈反り比〉
図13に示すように、本実施形態の翼(20)では、翼断面における最大反り高さfの翼弦長cに対する比である反り比(f/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この反り比(f/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、反り比(f/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33b)において最大値(fm2/cm2)となる。なお、fm2は、第2基準翼断面(33b)における最大反り高さであり、cm2は、第2基準翼断面(33b)における翼弦長である(図15Bを参照)。
また、反り比(f/c)は、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)へ向かって次第に増加し、第2基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rm2の場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が大きくなり、rm2≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなる。
ここで、第2基準翼断面(33b)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrm2の位置の翼断面である。つまり、第2基準翼断面(33b)は、翼元(21)から距離(rm2−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)までの距離(rm2−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約15%となっている。つまり、第2基準翼断面(33b)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼元(21)寄りに位置している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)よりも小さくなっている。具体的に、翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約55%である。なお、fiは、翼元(21)における最大反り高さであり、ciは、翼元(21)における翼弦長である(図15Aを参照)。また、foは、翼端(22)における最大反り高さであり、coは、翼端(22)における翼弦長である(図15Cを参照)。
〈最大反り位置比〉
図14に示すように、本実施形態の翼(20)では、前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離dの翼弦長cに対する比である最大反り位置比(d/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する中間翼断面(33a)において最大値(dm1/cm1)となる。なお、dm1は、中間翼断面(33a)における前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離である。
また、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から中間翼断面(33a)へ向かって次第に増加し、中間翼断面(33a)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rm1の場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなり、rm1≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が小さくなる。最大反り位置比(d/c)が大きくなるほど、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)から遠ざかり、最大反り位置Aが相対的に後縁(24)に近づく。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から任意の距離に位置する翼断面における最大反り位置Aを結んだ最大反り位置線(35)を、図12に二点鎖線で示す。
ここで、中間翼断面(33a)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrm1の位置の翼断面である。つまり、中間翼断面(33a)は、翼元(21)から距離(rm1−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から中間翼断面(33a)までの距離(rm1−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約90%となっている。つまり、中間翼断面(33a)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼端(22)寄りに位置している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きくなっている。なお、diは、翼元(21)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離であり(図15Aを参照)、doは、翼端(22)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離である(図15Cを参照)。
また、本実施形態の翼(20)では、全ての翼断面において、最大反り位置比(d/c)が、0.55以上0.65以下の値に設定されている。本実施形態の翼(20)では、実施形態1の翼(20)と同様に、この最大反り位置比(d/c)を0.5以上0.8以下の値に設定するのが望ましい。
〈取付け角〉
図15A〜図15Cに示すように、本実施形態の翼(20)では、実施形態1の翼(20)と同様に、取付け角αが翼元(21)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなっている。つまり、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から離れた翼断面ほど、取付け角αが小さくなっている。従って、本実施形態の翼(20)では、翼元(21)における取付け角αiが最大値であり、翼端(22)における取付け角αoが最小値である。
−プロペラファンの送風作用−
本実施形態のプロペラファン(10)は、ハブ(15)に連結されたファンモータによって駆動され、図12における時計方向へ回転する。プロペラファン(10)が回転すると、空気が翼(20)によってプロペラファン(10)の回転中心軸(11)方向へ押し出される。また、プロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。
〈反り比と気流の関係〉
本実施形態のプロペラファン(10)では、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)に比べて小さくなる。このため、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、第2基準翼断面(33b)から、第2基準翼断面(33b)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が次第に小さくなる。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約56%程度となっている。このため、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差を過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が減少し、更には翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制されるため、ファン効率の向上が図られる。
〈最大反り位置比と気流の関係〉
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きい。つまり、各翼(20)の翼端(22)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置Aが、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。そして、本実施形態の翼(20)では、実施形態1の翼(20)と同様に、翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の後縁(24)に近くなる。このため、翼端渦(90)が短くなって翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、実施形態1について記載した通り、プロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.5以上0.8以下の値に設定するのが望ましい。そして、本実施形態のプロペラファン(10)では、各翼(20)の最大反り位置比(d/c)が0.55以上0.65以下の値に設定されている。このため、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離する領域が縮小し、送風音の低減やファン効率の向上が図られる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、中間翼断面(33a)から翼元(21)の間の領域において、翼元(21)に近づくにつれて(即ち、取付け角αが大きくなるにつれて)最大反り位置比(d/c)が次第に小さくなっている。このため、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、翼(20)の負圧面(26)からの気流の剥離が生じにくくなる。
−実施形態2の効果−
本実施形態のプロペラファン(10)によれば、実施形態1のプロペラファン(10)によって得られる効果と同様の効果が得られる。
以上説明したように、本発明は、送風機などに用いられるプロペラファンについて有用である。
10 プロペラファン
15 ハブ
20 翼
21 翼元
22 翼端
31 翼弦
32 反り線
33 基準翼断面(第1基準翼断面、第2基準翼断面)
33a 中間翼断面
33b 第2基準翼断面
本発明は、送風機などに用いられるプロペラファンに関するものである。
従来より、プロペラファンは、送風機などに広く用いられている。例えば、特許文献1には、ハブと三つの翼とを備えたプロペラファンが開示されている。
一般的なプロペラファンの翼は、負圧面側へ膨らむように反った形状となっている。つまり、プロペラファンの翼は、翼断面における翼弦から反り線までの距離である反り高さが、翼の翼弦に沿って前縁から後縁に至る途中で最大となる。特許文献1の図6には、プロペラファンの各翼において、翼断面において反り高さが最大となる位置を、翼元から翼端へ向かうにつれて次第に前縁寄りにすることが記載されている。
プロペラファンの翼では、翼の正圧面側から負圧面側へ翼端を回り込んで空気が逆流することによって翼端渦が生じる。この翼端渦は、翼の正圧面側と負圧面側の圧力差が最大となる位置の近傍で発生する。このため、プロペラファンの翼において、翼端渦は、翼端において反り高さが最大となる位置の近傍において発生する。
プロペラファンの翼において発生した翼端渦は、翼の後縁へ向かって発達してゆく。従って、翼端において反り高さが最大となる位置が翼の後縁から離れるほど、翼端渦が発達して長くなる。上述したように、特許文献1のプロペラファンの翼では、翼断面において反り高さが最大となる位置が、翼元から翼端へ向かって後縁から相対的に遠ざかる。このため、特許文献1のプロペラファンでは、翼端渦が長くなり、翼端渦の生成に消費されるエネルギが嵩むため、ファン効率を充分に向上できないおそれがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロペラファンのファン効率の向上を図ることにある。
第1の発明は、円筒状のハブ(15)と、該ハブ(15)の側面から外方へ伸びる複数の翼(20)とを備えるプロペラファンを対象とする。そして、上記翼(20)のそれぞれは、翼断面における翼弦(31)から反り線(32)までの距離を反り高さとし、上記翼断面において上記反り高さが最大となる上記翼弦(31)上の位置を最大反り位置(A)とし、上記翼断面における前縁(23)から上記最大反り位置(A)までの距離(d)の翼弦長(c)に対する比を最大反り位置比(d/c)としたときに、上記翼断面における上記最大反り位置比(d/c)が、0.5以上0.8以下であるものである。
第1の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、翼断面における最大反り位置比(d/c)が、0.5以上0.8以下の値に設定される。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、上記翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)における上記最大反り位置比(d/c)よりも大きいものである。
ここで、プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦(90)が発生する。そして、この翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦(90)が長くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが増加する。
これに対し、第2の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(d/c)が、翼元(21)における最大反り位置比(d/c)よりも大きくなっている。つまり、各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、翼端(22)において従来よりも翼(20)の後縁(24)に近づく。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
第3の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する中間翼断面(33a)において最大となるものである。
第3の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)よりも翼元(21)寄りに位置する中間翼断面(33a)において、最大反り位置比(d/c)が最大となる。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)において最小となり、上記翼元(21)から上記中間翼断面(33a)へ向かって単調増加するものである。
第4の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)において、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から上記中間翼断面(33a)へ向かって、最小値から最大値にまで単調増加する。
第5の発明は、上記第3又は第4の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼元(21)から上記中間翼断面(33a)までの距離が、上記翼端(22)から上記中間翼断面(33a)までの距離よりも長いものである。
第5の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)と翼端(22)の間の中央よりも翼端(22)寄りに中間翼断面(33a)が位置する。そして、この中間翼断面(33a)において、最大反り位置比(d/c)が最大となる。
第6の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼断面における上記反り高さの最大値を最大反り高さ(f)とし、上記翼断面における上記最大反り高さ(f)の上記翼弦長(c)に対する比を反り比(f/c)とし、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33,33b)において最大となり、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼元(21)へ向かって単調減少し、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼端(22)へ向かって単調減少するものである。
第7の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)とし、上記翼断面における上記反り高さの最大値を最大反り高さ(f)とし、上記翼断面における上記最大反り高さ(f)の上記翼弦長(c)に対する比を反り比(f/c)としたときに、上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する第1基準翼断面(33)から上記翼端(22)へ向かって単調増加し、上記翼端(22)において最大となり、上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33,33b)において最大となり、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼元(21)へ向かって単調減少し、上記第2基準翼断面(33,33b)から上記翼端(22)へ向かって単調減少し、上記第1基準翼断面が上記第2基準翼断面を兼ねるものである。
第6,第7の各発明のプロペラファン(10)に設けられた複数の翼(20)のそれぞれでは、翼元(21)から所定の距離だけ離れた第2基準翼断面(33,33b)において反り比(f/c)が最大となる。また、各翼(20)において、反り比(f/c)は、第2基準翼断面(33,33b)から翼元(21)へ向かって単調減少し、且つ第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。
なお、この明細書に記載した「単調減少」は、“広義の単調減少”である。従って、各翼(20)は、第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって反り比(f/c)が減少し続けてもよいし、第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ至るまでの一部の区間において反り比(f/c)が一定となっていてもよい。
ここで、翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、第6,第7の各発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33,33b)から翼元(21)へ向かって単調減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33,33b)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
また、第6,第7の各発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。つまり、各翼(20)では、第2基準翼断面(33,33b)から、第2基準翼断面(33,33b)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が単調減少する。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
また、第7の発明において、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かうにつれて、翼(20)の後縁(24)へ相対的に近づく。第1基準翼断面(33)は、翼元(21)から所定の距離だけ離れた位置の翼断面である。
なお、この明細書に記載した「単調増加」は、“広義の単調増加”である。従って、各翼(20)は、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって最大反り位置比(d/c)が増加し続けてもよいし、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ至るまでの一部の区間において最大反り位置比(d/c)が一定となっていてもよい。
第7の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かうにつれて、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。その結果、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端渦(90)の発生位置が、翼(20)の後縁(24)に近づく。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
更に、第7の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、第1基準翼断面と第2基準翼断面が一致している。つまり、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)から所定の距離だけ離れた一つの翼断面において、最大反り位置比(d/c)が最小となり、且つ反り比(f/c)が最大となる。
第8の発明は、上記第6又は第7の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記翼端(22)における上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)における上記反り比(f/c)よりも小さいものである。
ここで、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)の周速度が翼元(21)の周速度よりも高い。このため、翼端(22)における反り比(f/c)が翼元(21)における反り比(f/c)と同程度であると、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が大きくなり過ぎ、その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れる空気の流量が多くなってファン効率の低下を招くおそれがある。
これに対し、第8の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が低減され、ファン効率の向上が図られる。また、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制され、この翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少するため、その点でもファン効率の向上が図られる。
本発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、翼断面における最大反り位置比(d/c)が、0.5以上0.8以下の値に設定される。このため、ファン効率の向上と、送風音の低減とを図ることができる。
上記第2の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、翼元(21)における最大反り位置比(d/c)よりも大きくなる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、本発明によれば、プロペラファン(10)を回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができる。
上記第7の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、最大反り位置比(d/c)が、第1基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって単調増加し、翼端(22)において最大となる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、この発明によれば、プロペラファン(10)を回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができる。
上記第6,第7の各発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、反り比(f/c)が、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33,33b)において最大となり、第2基準翼断面(33,33b)から翼元(21)へ向かって単調減少し、且つ第2基準翼断面(33,33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れを抑えることができると共に、各翼(20)の全体において翼(20)の仕事量を平均化できる。従って、これらの発明によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
上記第8の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量を削減できると共に、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)を抑制できる。従って、この発明によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
図1は、実施形態1のプロペラファンの斜視図である。
図2は、実施形態1のプロペラファンの平面図である。
図3は、実施形態1のプロペラファンの翼の翼断面を示す断面図である。
図4は、実施形態1のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと反り比(f/c)の関係を示すグラフである。
図5は、実施形態1のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと最大反り位置比(d/c)の関係を示すグラフである。
図6Aは、実施形態1のプロペラファンにおける翼の翼元の翼断面を示す翼の断面図である。
図6Bは、実施形態1のプロペラファンにおける翼の基準翼断面を示す翼の断面図である。
図6Cは、実施形態1のプロペラファンにおける翼の翼端の翼断面を示す翼の断面図である。
図7は、実施形態1のプロペラファンにおける気流を示すプロペラファンの斜視図である。
図8は、従来のプロペラファンにおける気流を示すプロペラファンの斜視図である。
図9は、実施形態1の変形例1の翼における回転中心軸からの距離rと反り比(f/c)の関係を示すグラフである。
図10は、実施形態1の変形例2の翼における回転中心軸からの距離rと最大反り位置比(d/c)の関係を示すグラフである。
図11は、実施形態2のプロペラファンの斜視図である。
図12は、実施形態2のプロペラファンの平面図である。
図13は、実施形態2のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと反り比(f/c)の関係を示すグラフである。
図14は、実施形態2のプロペラファンの翼における回転中心軸からの距離rと最大反り位置比(d/c)の関係を示すグラフである。
図15Aは、実施形態2のプロペラファンにおける翼の翼元の翼断面を示す翼の断面図である。
図15Bは、実施形態2のプロペラファンにおける翼の第2基準翼断面を示す翼の断面図である。
図15Cは、実施形態2のプロペラファンにおける翼の翼端の翼断面を示す翼の断面図である。
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、軸流ファンである。このプロペラファン(10)は、例えば、空気調和機の熱源ユニットに設けられ、熱源側熱交換器へ室外空気を供給するために用いられる。
−プロペラファンの構造−
図1及び図2に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とを備えている。一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とは、一体に形成されている。プロペラファン(10)の材質は、樹脂である。
ハブ(15)は、先端面(図1における上面)が閉塞した円筒状に形成されている。このハブ(15)は、ファンモータの駆動軸に取り付けられる。ハブ(15)の中心軸は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)である。
翼(20)は、ハブ(15)の外周面から外側へ突出するように配置されている。三つの翼(20)は、ハブ(15)の周方向へ互いに一定の角度間隔で配置されている。各翼(20)は、プロペラファン(10)の径方向の外側に向かって広がる形状となっている。各翼(20)の形状は、互いに同じである。
翼(20)は、プロペラファン(10)の径方向の中心側(即ち、ハブ(15)側)の端部が翼元(21)であり、プロペラファン(10)の径方向の外側の端部が翼端(22)である。翼(20)の翼元(21)は、ハブ(15)に接合されている。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から翼元(21)までの距離riは、翼元(21)の全長に亘って実質的に一定である。また、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から翼端(22)までの距離roは、翼端(22)の全長に亘って実質的に一定である。
翼(20)は、プロペラファン(10)の回転方向の前側の縁部が前縁(23)であり、プロペラファン(10)の回転方向の後側の縁部が後縁(24)である。翼(20)の前縁(23)及び後縁(24)は、翼元(21)から翼端(22)へ向かってプロペラファン(10)の外周側へ延びている。
翼(20)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と直交する平面に対して傾いている。具体的に、翼(20)は、前縁(23)がハブ(15)の先端(図1における上端)寄りに配置され、後縁(24)がハブ(15)の基端(図1における下端)寄りに配置されている。翼(20)は、プロペラファン(10)の回転方向の前側の面(図1における下向きの面)が正圧面(25)であり、プロペラファン(10)の回転方向の後側の面(図1における上向きの面)が負圧面(26)である。
−翼の詳細な形状−
翼(20)の形状について、詳細に説明する。
図3に示す翼断面は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rに位置する翼(20)の断面を平面に展開したものである。この図3に示すように、翼(20)は、負圧面(26)側に膨らむように反っている。
図3に示す翼断面において、前縁(23)と後縁(24)を結んだ線分が翼弦(31)であり、翼弦(31)が“プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と直交する平面”となす角が取付け角αである。翼弦長cは、半径がrで中心角がθの円弧の長さrθを、取付け角αに対する余弦cosαで除した値である(c=rθ/cosα)。なお、θは、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rの位置における翼(20)の中心角であり(図2を参照)、その単位はラジアンである。
図3に示す翼断面において、正圧面(25)と負圧面(26)の中点を結んだ線が反り線(32)であり、翼弦(31)から反り線(32)までの距離が反り高さである。反り高さは、翼弦(31)に沿って前縁(23)から後縁(24)に向かうにつれて次第に増加し、前縁(23)から後縁(24)に至る途中で最大値となり、最大値となった位置から後縁(24)に近づくにつれて次第に減少する。反り高さの最大値が最大反り高さfであり、反り高さが最大反り高さfとなる翼弦(31)上の位置が最大反り位置Aである。また、前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離がdである。
〈反り比〉
図4に示すように、本実施形態の翼(20)では、翼断面における最大反り高さfの翼弦長cに対する比である反り比(f/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この反り比(f/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、反り比(f/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33)において最大値(fm/cm)となる。なお、fmは、基準翼断面(33)における最大反り高さであり、cmは、基準翼断面(33)における翼弦長である(図6Bを参照)。
また、反り比(f/c)は、基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に減少し、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rmの場合は距離rが小さくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなり、rm≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなる。
ここで、基準翼断面(33)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrmの位置の翼断面である。つまり、基準翼断面(33)は、翼元(21)から距離(rm−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から基準翼断面(33)までの距離(rm−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約10%(即ち、約1/10)となっている。つまり、基準翼断面(33)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼元(21)寄りに位置している。
なお、翼元(21)から基準翼断面(33)までの距離(rm−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の5〜30%であるのが望ましく、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の5〜20%であるのが更に望ましく、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の5〜10%であるのが更に望ましい。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)よりも小さくなっている。具体的に、翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の実質的に半分である。翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の半分以下で、且つゼロよりも大きな値に設定されるのが望ましい。なお、fiは、翼元(21)における最大反り高さであり、ciは、翼元(21)における翼弦長である(図6Aを参照)。また、foは、翼端(22)における最大反り高さであり、coは、翼端(22)における翼弦長である(図6Cを参照)。
〈最大反り位置比〉
図5に示すように、本実施形態の翼(20)では、前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離dの翼弦長cに対する比である最大反り位置比(d/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極小となり且つ一度も極大とならないように変化する。
具体的に、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33)において最小値(dm/cm)となる。なお、dmは、基準翼断面(33)における前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離である(図6Bを参照)。
また、最大反り位置比(d/c)は、基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に増加し、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に増加する。つまり、ri≦r≦rmの場合は距離rが小さくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなり、rm≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなる。最大反り位置比(d/c)が大きくなるほど、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)から遠ざかり、最大反り位置Aが相対的に後縁(24)に近づく。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から任意の距離に位置する翼断面における最大反り位置Aを結んだ最大反り位置線(35)を、図2に二点鎖線で示す。
本実施形態では、基準翼断面(33)において、最大反り位置比(d/c)が最小値となり、且つ反り比(f/c)が最大値となる。つまり、本実施形態では、最大反り位置比(d/c)が最小値となる第1基準翼断面が、反り比(f/c)が最大値となる第2基準翼断面と一致している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)において最大反り位置比(d/c)が最大値(do/co)となる、つまり、本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きくなっている。なお、diは、翼元(21)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離であり(図6Aを参照)、doは、翼端(22)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離である(図6Cを参照)。
また、本実施形態の翼(20)では、全ての翼断面において、最大反り位置比(d/c)が、0.6以上0.7以下の値に設定されている。この最大反り位置比(d/c)は、0.5以上0.8以下の値に設定されるのが望ましい。
〈取付け角〉
図6A〜図6Cに示すように、本実施形態の翼(20)では、取付け角αが翼元(21)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなっている。つまり、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から離れた翼断面ほど、取付け角αが小さくなっている。従って、本実施形態の翼(20)では、翼元(21)における取付け角αiが最大値であり、翼端(22)における取付け角αoが最小値である。
−プロペラファンの送風作用−
本実施形態のプロペラファン(10)は、ハブ(15)に連結されたファンモータによって駆動され、図2における時計方向へ回転する。プロペラファン(10)が回転すると、空気が翼(20)によってプロペラファン(10)の回転中心軸(11)方向へ押し出される。
プロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。このため、プロペラファン(10)の各翼(20)には、翼(20)を正圧面(25)から負圧面(26)へ向かって押す方向の揚力が作用する。この揚力は、プロペラファン(10)の各翼(20)が空気を押し出す力の反力である。従って、翼(20)に作用する揚力が大きいほど、空気を押し出す翼(20)の仕事量が大きくなる。
〈反り比と気流の関係〉
プロペラファン(10)における翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が基準翼断面(33)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、各翼(20)では、基準翼断面(33)から、基準翼断面(33)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が次第に小さくなる。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
ここで、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)の周速度が翼元(21)の周速度よりも高い。このため、翼端(22)における反り比(fo/co)が翼元(21)における反り比(fi/ci)と同程度であると、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が大きくなり過ぎ、その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れる空気の流量が多くなってファン効率の低下を招くおそれがある。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約1/2となっている。このため、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が低減され、ファン効率の向上が図られる。また、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制され、この翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少するため、その点でもファン効率の向上が図られる。
〈最大反り位置比と気流の関係〉
プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦(90)が発生する。そして、図8に示すように、翼端渦(90)の発生位置が翼(80)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦(90)が長くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが増加する。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって最大反り位置比(d/c)が次第に大きくなる。つまり、各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置Aが、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かうにつれて、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。そして、図7に示すように、本実施形態の翼(20)では、図8に示す従来の翼(80)に比べて、翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の後縁(24)に近くなる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
ここで、翼(20)の負圧面(26)に沿って前縁(23)から後縁(24)に向かう気流は、最大反り位置Aを過ぎた付近で翼(20)の負圧面(26)から剥離することがある。このため、最大反り位置Aを前縁(23)に近づけ過ぎると、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離する領域が拡大し、送風音の増大や、ファン効率の低下を招くおそれがある。この問題を回避するには、最大反り位置比(d/c)を0.5以上の値に設定するのが望ましい。そこで、本実施形態の翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.6以上にしている。
また、最大反り位置Aを後縁(24)に近づけ過ぎると、翼断面の形状が、後縁(24)寄りの位置で急激に折れ曲がるような形状となる。このため、最大反り位置Aが後縁(24)に近すぎると、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が負圧面(26)から剥離しやすくなる。そして、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離すると、送風音の増大や、ファン効率の低下を招くおそれがある。この問題を回避するには、最大反り位置比(d/c)を0.8以下の値に設定するのが望ましい。そこで、本実施形態の翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.7以下にしている。
上述したように、本実施形態の翼(20)は、取付け角αが翼元(21)に近い翼断面ほど大きくなっている。取付け角αが大きいほど、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が、負圧面(26)から剥離しやすくなる。一方、最大反り位置比(d/c)が概ね0.5以上の範囲では、最大反り位置比(d/c)が小さいほど(即ち、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)に近づくほど)、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が負圧面(26)から剥離しにくくなる。そこで、本実施形態の翼(20)では、翼端(22)と基準翼断面(33)の間の領域において、翼元(21)に近づくにつれて(即ち、取付け角αが大きくなるにつれて)最大反り位置比(d/c)を次第に小さくし、翼(20)の負圧面(26)からの気流の剥離を生じにくくしている。
−実施形態1の効果−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)が、基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に増加し、翼端(22)において最大となる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができ、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力を削減できる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)が0.5以上0.8以下に設定されている。このため、翼(20)の負圧面(26)から気流が剥離しにくくなり、気流の剥離に起因する送風音の増加やファン効率の低下を抑えることができる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、反り比(f/c)が、基準翼断面(33)において最大となり、基準翼断面(33)から翼元(21)へ向かって次第に減少し、且つ基準翼断面(33)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れを抑えることができると共に、各翼(20)の全体において翼(20)の仕事量を平均化できる。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量を削減できると共に、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)を抑制できる。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
−実施形態1の変形例1−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)から基準翼断面(33)までの領域と、基準翼断面(33)から翼端(22)までの領域の一方または両方において、反り比(f/c)が一定となる区間があってもよい。例えば、図9に示すように、翼(20)のうち翼端(22)近傍の位置から翼端(22)に亘る領域において、反り比(f/c)が一定となっていてもよい。
−実施形態1の変形例2−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼元(21)から基準翼断面(33)までの領域と、基準翼断面(33)から翼端(22)までの領域の一方または両方において、最大反り位置比(d/c)が一定となる区間があってもよい。また、図10に示すように、翼(20)のうち翼元(21)から基準翼断面(33)に亘る領域において、最大反り位置比(d/c)が一定となっていてもよい。この場合、最大反り位置比(d/c)は、翼(20)のうち翼元(21)から基準翼断面(33)に亘る領域において最小値となる。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、実施形態1のプロペラファン(10)において、翼(20)の形状を変更したものである。ここでは、本実施形態のプロペラファン(10)について、主に実施形態1のプロペラファン(10)と異なる点を説明する。
図11及び図12に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とを備えている。
−翼の詳細な形状−
翼(20)の形状について、詳細に説明する。本実施形態の翼(20)は、負圧面(26)側に膨らむように反った形状となっている。この点は、実施形態1の翼(20)と同様である。
〈反り比〉
図13に示すように、本実施形態の翼(20)では、翼断面における最大反り高さfの翼弦長cに対する比である反り比(f/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この反り比(f/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、反り比(f/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33b)において最大値(fm2/cm2)となる。なお、fm2は、第2基準翼断面(33b)における最大反り高さであり、cm2は、第2基準翼断面(33b)における翼弦長である(図15Bを参照)。
また、反り比(f/c)は、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)へ向かって次第に増加し、第2基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rm2の場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が大きくなり、rm2≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなる。
ここで、第2基準翼断面(33b)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrm2の位置の翼断面である。つまり、第2基準翼断面(33b)は、翼元(21)から距離(rm2−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)までの距離(rm2−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約15%となっている。つまり、第2基準翼断面(33b)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼元(21)寄りに位置している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)よりも小さくなっている。具体的に、翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約55%である。なお、fiは、翼元(21)における最大反り高さであり、ciは、翼元(21)における翼弦長である(図15Aを参照)。また、foは、翼端(22)における最大反り高さであり、coは、翼端(22)における翼弦長である(図15Cを参照)。
〈最大反り位置比〉
図14に示すように、本実施形態の翼(20)では、前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離dの翼弦長cに対する比である最大反り位置比(d/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する中間翼断面(33a)において最大値(dm1/cm1)となる。なお、dm1は、中間翼断面(33a)における前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離である。
また、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から中間翼断面(33a)へ向かって次第に増加し、中間翼断面(33a)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rm1の場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなり、rm1≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が小さくなる。最大反り位置比(d/c)が大きくなるほど、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)から遠ざかり、最大反り位置Aが相対的に後縁(24)に近づく。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から任意の距離に位置する翼断面における最大反り位置Aを結んだ最大反り位置線(35)を、図12に二点鎖線で示す。
ここで、中間翼断面(33a)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrm1の位置の翼断面である。つまり、中間翼断面(33a)は、翼元(21)から距離(rm1−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から中間翼断面(33a)までの距離(rm1−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約90%となっている。つまり、中間翼断面(33a)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼端(22)寄りに位置している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きくなっている。なお、diは、翼元(21)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離であり(図15Aを参照)、doは、翼端(22)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離である(図15Cを参照)。
また、本実施形態の翼(20)では、全ての翼断面において、最大反り位置比(d/c)が、0.55以上0.65以下の値に設定されている。本実施形態の翼(20)では、実施形態1の翼(20)と同様に、この最大反り位置比(d/c)を0.5以上0.8以下の値に設定するのが望ましい。
〈取付け角〉
図15A〜図15Cに示すように、本実施形態の翼(20)では、実施形態1の翼(20)と同様に、取付け角αが翼元(21)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなっている。つまり、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から離れた翼断面ほど、取付け角αが小さくなっている。従って、本実施形態の翼(20)では、翼元(21)における取付け角αiが最大値であり、翼端(22)における取付け角αoが最小値である。
−プロペラファンの送風作用−
本実施形態のプロペラファン(10)は、ハブ(15)に連結されたファンモータによって駆動され、図12における時計方向へ回転する。プロペラファン(10)が回転すると、空気が翼(20)によってプロペラファン(10)の回転中心軸(11)方向へ押し出される。また、プロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。
〈反り比と気流の関係〉
本実施形態のプロペラファン(10)では、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)に比べて小さくなる。このため、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、第2基準翼断面(33b)から、第2基準翼断面(33b)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が次第に小さくなる。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約56%程度となっている。このため、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差を過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が減少し、更には翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制されるため、ファン効率の向上が図られる。
〈最大反り位置比と気流の関係〉
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きい。つまり、各翼(20)の翼端(22)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置Aが、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。そして、本実施形態の翼(20)では、実施形態1の翼(20)と同様に、翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の後縁(24)に近くなる。このため、翼端渦(90)が短くなって翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、実施形態1について記載した通り、プロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.5以上0.8以下の値に設定するのが望ましい。そして、本実施形態のプロペラファン(10)では、各翼(20)の最大反り位置比(d/c)が0.55以上0.65以下の値に設定されている。このため、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離する領域が縮小し、送風音の低減やファン効率の向上が図られる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、中間翼断面(33a)から翼元(21)の間の領域において、翼元(21)に近づくにつれて(即ち、取付け角αが大きくなるにつれて)最大反り位置比(d/c)が次第に小さくなっている。このため、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、翼(20)の負圧面(26)からの気流の剥離が生じにくくなる。
−実施形態2の効果−
本実施形態のプロペラファン(10)によれば、実施形態1のプロペラファン(10)によって得られる効果と同様の効果が得られる。
以上説明したように、本発明は、送風機などに用いられるプロペラファンについて有用である。
10 プロペラファン
15 ハブ
20 翼
21 翼元
22 翼端
31 翼弦
32 反り線
33 基準翼断面(第1基準翼断面、第2基準翼断面)
33a 中間翼断面
33b 第2基準翼断面