以下に、本発明の好ましい実施態様について説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
本発明の微粒子は分散剤を埋包する。ここで埋包とは、分散剤の分子の一部もしくは全部が微粒子内に取り込まれた状態をいう。例えば図1に基づいていうと、分散剤の全部が取り込まれた状態とは添加した分散剤の分子全体が微粒子10内に内包された状態であり(内在埋包分散剤2b参照)、一部取り込まれた状態とは添加した分散剤の一部分または官能基が粒子内に内包されその残部が粒子外方に延在する状態であり(外在埋包分散剤2a参照)、埋包というときにはこの両者を含む。
本発明の微粒子は、良溶媒および貧溶媒の少なくとも一方に特定の分散剤を共存させ、これとともに又は別に水不溶性化合物を良溶媒に溶解し、上記良溶媒がわの液と貧溶媒がわの液とを混合し、分散剤が粒子に埋包されたビルドアップ微粒子である。前記分散剤は、質量平均分子量が1000以上の高分子分散剤が好ましく、さらに後述するような特定の構造部位を有する高分子分散剤がより好ましい。
本発明において、粒子内部に一部又は全部取り込まれた分散剤は、従来のように粒子表面に例えば単に物理吸着しているのではなく、粒子内に固定化され不可逆的に取り込まれているため、微粒子が破壊されたり溶解されたりしないかぎり通常は分散媒体および/または組成物溶媒中で遊離や脱離がおきないという特徴を有する。そのため、分散剤が埋包された微粒子は、粒子同士の凝集が抑えられるという分散効果の持続性が高く、分散剤の使用量が少なくても、分散安定性がきわめて高い。このような本発明の分散剤を埋包した微粒子の特性は例えば、分散剤が溶解する溶媒で洗浄を繰り返しても分散剤が脱離しない、この量を測定することで確認することができる。
分散剤を粒子に効率的に埋包させる方法は特に限定されないが、例えば特定の分散剤を選択して用いるか、あるいは、流路混合法などのプロセス条件を調節するなどして行うことができる。以下に、分散剤を粒子に埋包させる好ましい実施態様について詳細に説明する。
通常の再沈法で分散剤を粒子に埋包させるためには、特定の分散剤を用いるのが好ましい。このとき、全ての分散剤分子が粒子に内包され、分散に必要な官能基までもがすべて粒子に内包されてしまうと、分散剤の分散性付与の役割を十分に果たせないことがある。そのため、上記分散に必要な官能基のすべてが粒子に内包されないようにすることが好ましい。分散剤を微粒子に適度に内包させ、分散安定性を付与するためには、下記の要件を満足する分散剤を用いることが好ましい。すなわち、
(1)分散剤を溶解しうる媒体が、組み合わせて用いられる水不溶性化合物が溶解しうる媒体と相溶性がある関係にあること、
(2)分散剤が、質量平均分子量が1000以上の高分子分散剤であること、
(3)分散剤が、貧溶媒との混合により析出するが、その析出速度は水不溶性化合物の析出より遅いものであること、
(4)分散剤が、水不溶性化合物と引き合う相互作用性を有する官能基を少なくとも1つ含有すること、
の要件を達成することにより、上記分散剤を粒子に効率的かつ適度に内包させることができる。
本発明に用いられる上記埋包させる分散剤は、水不溶性化合物を溶解させる良溶媒、これとは別に用意した良溶媒、又は、貧溶媒に溶解させて用いることが好ましい。上記分散剤の溶解及び混合の好ましい実施態様としては以下の方法が挙げられる。
(1)分散剤を水不溶性化合物とともに良溶媒に共溶解させて、貧溶媒と接触させ、析出させる方法
(2)水不溶性化合物溶解液と分散剤溶解液とを別々に作成しておき、貧溶媒と接触させ、析出させる方法
(3)水不溶性化合物溶解液と貧溶媒とにそれぞれ分散剤を溶解した液どうしを接触させ、析出させる方法、などが挙げられる。
本発明の微粒子は、これらのいずれの方法で作製してもよいが、分散剤溶解溶液が水不溶性化合物の溶解溶液と相溶性があることが好ましい。分散剤溶解液と水不溶性化合物の溶解液が相溶しないと、貧溶媒との混合により、十分に分散剤が粒子内に取り込ませることができないことがある。上記の方法の中では、上記(1)(2)の方法が特に好ましく用いられる。
本発明において、分散剤を粒子内に取り込ませるためには、分散剤の質量平均分子量が1000以上の高分子分散剤であることが好ましく、さらに好ましくは3000以上30万以下、特に好ましいのは5000以上10万以下である。分散剤の分子量が低すぎると分散剤の粒子内取り込みの割合が低下することがあり、多すぎると分散剤の凝集が大きくなり、再分散性が悪化することがある。分散剤の分散度は、狭い、すなわち、単分散性のものが好ましく用いられる。分散剤の分散度は、数平均分子量と質量平均分子量の比で表され、分散度が1.0〜5.0の範囲の分散剤が好ましく、特に好ましくは1.0〜4.0の範囲のものが用いられる。
本発明で用いられる微粒子内に埋包させる分散剤(以下、これを単なる分散剤と区別して「埋包分散剤」ということがある。)はあらかじめ溶媒に溶解し、これを貧溶媒と混合することで析出させることができる。同様に水不溶性化合物も良溶媒に溶解し、これを貧溶媒と接触することで析出させ、微粒子とすることができる。このような微粒子形成段階において、分散剤の析出速度が、水不溶性化合物の析出速度よりも早い場合、分散剤が十分に粒子に取り込まれる前に析出してしまうため、分散剤が粒子に取り込まれにくい。分散剤を粒子に十分に取り込ませるためには、水不溶性化合物の析出速度よりも、分散剤の析出速度が遅いことが好ましい。そして、必要によりこのように埋包分散剤の析出速度を調節することで、微粒子内に該分散剤を取り込ませる状態を制御することができる。上記共晶のようにして分散剤を微粒子内に取り込ませる観点から、埋包分散剤の析出速度は、水不溶性化合物よりも遅いことが好ましく、その好適な速度は、水不溶性化合物の種類、水不溶性化合物と分散剤の親和性、水不溶性化合物の析出速度、分散剤の構造、良溶媒と貧溶媒の溶媒親和性等に依存し、水不溶性化合物と分散剤との析出速度比を、各粒子形成条件に基づき定めることが好ましい。
次に、埋包分散剤を粒子に取り込ませ、さらに分散媒体や組成物媒体中で、埋包された分散剤が遊離しないための好ましい分散剤の構造及びその作用について説明する。
埋包分散剤を粒子に適度に埋包させるためには、該分散剤と水不溶性化合物とが混合工程を経て析出される段階で、両者が引き合う相互作用を示すように埋包分散剤の化学構造を設計することが好ましい。本発明では、溶媒に溶解した状態で埋包分散剤と水不溶性化合物とを混合させることが好ましいが、このとき該分散剤と水不溶性化合物との上記相互作用が小さいと、分散剤の粒子内への取り込み率が小さくなりすぎたり、埋包された分散剤が、分散媒体や組成物媒体中で遊離しやすくなったり、分散安定性が悪化したりすることがある。そのため、水不溶性化合物と強く引き合い相互作用する構造部位を有する埋包分散剤を用いることが好ましく、この相互作用を強くして同伴性を高め分散剤を粒子にしっかりと固定化することが好ましい。
本発明の微粒子においては、微粒子形成時に系内に投入された埋包分散剤の10質量%以上が埋包されていることが好ましい。すなわち、添加した埋包分散剤の質量(A)に対して、粒子に取り込まれて埋包された該分散剤の質量(B)の割合の百分率((B)/(A)×100)(以下、この率を「分散剤取込率」ということがある。)が10質量%以上であることが好ましい。さらに、上記分散剤取込率((B)/(A))は20質量%以上がより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。分散取込率の上限は特にないが計算上の上限が100質量%であり、98質量%以下であることが実際的である。本発明において、上記「分散剤取込率」の測定および算出は、特に断らない限り、以下の実施例に記載の方法に従って行うものとする。
本発明の微粒子は、上記のように従来にないほど多量の分散剤が粒子内に取込まれたため、初期の分散性のみならず経時の分散安定性が極めて高い。また、言うまでもないが、分散剤の使用量を減らすことができ製造コストを低減することができ、また溶媒切替により不要となる分散剤成分を大幅に減らすことができ環境適合性にも優れる。
上記の取り込まれた埋包分散剤の量を微粒子の該分散剤以外の成分の質量に対する比率、つまり微粒子を分散相をなす埋包分散剤と水不溶性化合物等がなす連続相とからなるとしてみたときその微粒子の連続相の質量(Y)に対して、上記分散相をなす埋包分散剤の質量(X)の比率の百分率((X)/(Y)×100)(以下、この比率を「分散剤埋包率」ということがある。)としていうと、5〜200質量%であり、8〜160質量%であることがより好ましい。この「分散剤埋包率」の測定および算出は、特に断らない限り、以下の実施例に記載の方法に従って行うものとする。
上記埋包分散剤ないしその構造部位として好ましい水不溶性化合物と引き合う相互作用とは、分子の間又はその構造部位同士の吸着性ないしは親和性における相互作用を意味し、具体的には水素結合相互作用、π−π相互作用、イオン間相互作用、双極子相互作用、ロンドン分散力(ファンデルワールス力)、電荷移動相互作用がある。そのほかに、熱力学的要因に基づく疎水相互作用などが挙げられる。上記分散剤ないしその構造部位と水不溶性化合物とが互いに引き合う相互作用として、上記のいずれの相互作用を利用してもよく限定はされないが、特に、水素結合相互作用、π−π相互作用、イオン間相互作用であることが有効である。したがって、埋包分散剤の部分構造として、上記の相互作用を強く示す部位を導入することが好ましく、これにより該分散剤が粒子内に取り込まれ適度に埋包された状態にしやすくなる。
以下に、水素結合相互作用、π−π相互作用、イオン間相互作用の実施態様を例に挙げ、これらの相互作用性を付与するための分散剤の分子構造及びその設計について述べる。
水素結合相互作用は、フッ素や酸素や窒素など電気陰性度の高い原子に水素が共有結合している分子において起こり、この場合、極性分子が生じる。このとき水素原子は1よりも小さな正電荷に帯電し、その結果、付近の別の分子に含まれる酸素など負に帯電した原子吸着しようとすると相互作用を起こすのである。この結果、2つの分子を結びつける安定した結合が生じる。例えば、水不溶性化合物と水素結合を介して上記相互作用を生じやすい官能基を有する分散剤を用いると、分散剤の微粒子内への取り込み率を高めることができる。
π−π相互作用とは、有機化合物分子の芳香環の間に働く分散力であり、スタッキング相互作用とも呼ばれる。例えば、芳香族化合物は堅固な平面構造をとり、π電子系により非局在化した電子が豊富に存在する為、とくにロンドン分散力が強く発現する。したがって、π電子が増えるほど互いに引き合う力が強くなる。例えば、水不溶性化合物とπ−π相互作用しやすい官能基を有する分散剤を用いると、分散剤の微粒子内への取り込み率を高めることができる。
イオン間相互作用とは、帯電したイオンの間で生じる相互作用である。例えば、異なる電荷は引き合うため、分散媒体中で、分散剤が、水不溶性対象物質と異なる電荷を持つように分子設計すれば、分散剤と水不溶性化合物とが引き合う相互作用が強まり、分散剤の微粒子内への取込み率を高めることができる。
本発明では、埋包分散剤と水不溶性化合物とが、上記の複数の相互作用を示すように分子設計したものを用いることが好ましい。該分散剤の好ましい分子構造は、対象とする水不溶性化合物の種類により異なるが、例えば、水不溶性化合物が有機顔料である場合、水素結合性相互作用を付与するためには、ヘテロ環状部位を有する高分子化合物を好ましく用いることができ、特に含窒素ヘテロ環状部位を有する高分子化合物が好ましい。さらには、π−π相互作用性や疎水相互作用を付与するために、芳香環を部分構造として有する分散剤が好ましい。また、同一分子骨格にヘテロ環と芳香環を同時に有するものが特に好ましい。
本発明で用いられる好ましい分散剤のヘテロ環状部分構造の具体例としては、以下に挙げる部位(I−1)から(I−29)およびフタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系などの有機色素構造が挙げられるが、本発明では特にこれらに限定されることはない。これらの部位を有するユニットは、高分子化合物を構成するユニット全体の1.0〜99.0モル%であることが好ましく、3.0〜95.0モル%であることがより好ましく、5.0〜90.0モル%の範囲で導入されることが特に好ましい。
また、本発明に用いられる分散剤には、イオン間相互作用を目的として、以下に挙げる部位(II−1)から(II−4)を有する分散剤を用いることもできるが、特にこれらに限定されることはない。これらの部位を有するユニットは、高分子化合物を構成するユニット全体の1.0〜99.0モル%であることが好ましく、3.0〜95.0モル%であることがより好ましく、5.0〜90.0モル%の範囲で導入されることが特に好ましい。
上記埋包分散剤は、上述の相互作用基を部分構造に有する高分子化合物が好ましいが、さらに有機溶剤系媒体(例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられるが、なかでも、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、またはこれらの混合物などがより好ましい。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセルソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、n−オクタン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。もしくは反応性希釈剤(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-ビニル−2−ピロリドン、N-アクリロイルモルフォリン等の重合性化合物。)などの分散媒体に親和性が高い部分構造(親和性部位)も有していることが好ましい。立体反発性の部位が分散媒体に親和性があることにより、埋包分散剤の粒子外に出ている部分(図1中 2o部位)によって、分散媒体中で分散性を付与することができる。
前記分散媒体との親和性部位としては特に限定されないが、化合物の種類(類)としていえば例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい例として挙げられる。なお、本明細書において「アクリル、メタクリル」のいずれか或いは双方を示す場合「(メタ)アクリル」と記載することがある。
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)ア(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、およびクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトン類の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド類の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
本発明で用いられる分散剤は、上述の水不溶性化合物と引き合う相互作用基、立体反発性分散基の他に、各種の官能基を導入することができる。官能基の例として、分散媒体や組成物の媒体種、もしくは、組成物の用途に応じて、疎水基、酸基、塩基性基、架橋基、光重合性基、熱重合性基、等を導入することができる。これらの官能基を有するユニットは、高分子化合物を構成するユニット全体の95モル%以下であることが好ましく、90.0モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下の範囲で導入されることが特に好ましい。なお、上記埋包分散剤は非水溶性の高分子化合物であることが好ましい。該高分子化合物が水溶性であると、水を主成分とする貧溶媒と接触させた際に、微粒子内に分散剤が取り込まれにくくなることがある。
前記酸性基をなすモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を有するモノマーと無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、(メタ)アクリル酸ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマー等を挙げることができる。また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)等が挙げられる。
塩基性基をなすモノマーとしては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられ、その(メタ)アクリルアミド類としては、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等が挙げられる。
また、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーを用いることも可能である。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、および以下の構造のモノマーを挙げることができる。
前記その他の官能基としては、これらの中でも特に炭素数4以上の炭化水素基を有するビニルモノマーの重合体、もしくは共重合体であることがより好ましく、さらに炭素数6以上24以下の炭化水素基を有するモノマーの重合体、もしくは共重合体であることが特に好ましい。上記その他の官能基の好ましいものとして、具体的には上記モノマーu−1〜u−12を重合させてなる官能基が挙げられる。
更に、イオン性官能基を含有するモノマーを利用することができる。イオン性ビニルモノマー(アニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマー)のなかで、アニオン性ビニルモノマーとして、前記酸性基を有するビニルモノマーのアルカリ金属塩や、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン)との塩などが挙げられ、カチオン性ビニルモノマーとしては、前記含窒素ビニルモノマーを、ハロゲン化アルキル(アルキル基:C1〜18、ハロゲン原子:塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子):塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸エステル(アルキル基:C1〜18);ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸アルキルエステル(アルキル基:C1〜18);硫酸ジアルキル(アルキル基:C1〜4)等で4級化させたもの、ジアルキルジアリルアンモニウム塩などが挙げられる。
本発明の微粒子は、インクジェット記録インク用の着色剤としても用いることができる。この場合、分散媒体及び/または組成物媒体の主成分は水系溶媒(例えば、水および水/水溶性有機溶媒混合液。水溶性有機溶媒の例として、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ヒアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては,多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい)である場合には、静電反発作用により微粒子間の凝集を抑制することが可能であり、前記酸性基、塩基性基、イオン性官能基を導入することにより水系媒体中で分散が可能となる。
前記相互作用基、立体反発性分散基、各種の官能基を有する埋包分散剤の重合形態としては、特に限定されないが、前記相互作用基を有するユニット、立体反発性分散基を有するユニット、各種の官能基を有するユニットの各ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体(例えば、メタクリル酸アルキルの単独重合体、スチレン類の単独重合体、メタクリル酸アルキル/スチレン類の共重合体、ポリビニルブチラールなど)、エステル系ポリマー(例えば、ポリカプロラクトンなど)、エーテル系ポリマー(例えば、ポリテトラメチレンオキシドなど)、ウレタン系ポリマー(例えば、テトラメチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリウレタンなど)、アミド系ポリマー(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66など)、シリコーン系ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンなど)、カーボネート系ポリマー(例えば、ビスフェノールAとホスゲンから合成されるポリカーボネートなど)などが挙げられる。
前記高分子化合物としては、これらの中でも特に、各ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマーおよびこれらの変性物もしくは共重合体が好ましい。溶媒への溶解性調整、コスト、合成的な容易さ等の観点から、前記高分子化合物としては、各ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体が最も好ましい。
各ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体の製造には、例えばラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でビニルモノマーの重合体もしくは共重合体を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
上記埋包分散剤として用いられる高分子分散剤は、どのような結合形態を取っているものでも、使用することができる。具体的には、ランダム(共)重合体、ブロック(共)重合体、グラフト(共)重合体のいずれの(共)重合体も用いることができるが、特に、ブロック(共)重合体、グラフト(共)重合体が好ましい。
本発明の水不溶性化合物の微粒子は、上記特定の構造部位を有する埋包分散剤を主として用い、微粒子に埋包させたものであることが好ましいが、埋包されない分散剤を併用してもよい。併用する分散剤は、例えば、分散物の粘度調製・光現像性付与、上記埋包分散剤との反応性付与、上記埋包分散剤との相互作用性付与、分散媒体との親和性付与、貧溶媒で析出した粒子の解凝集をおこなう目的、微粒子のサイズを調製する目的、良溶媒と貧溶媒の親和性を調整する目的、分散媒体との親和性付与の目的で用いることができる。界面活性剤、低分子分散剤、高分子分散剤など、通常の分散剤を併用して用いることができる。併用する分散剤の使用割合、使用数は特に限定されるものではないが、上記水不溶性化合物1質量%に対して0.01〜195質量%の範囲で用いるのが好ましく、0.05〜190質量%の範囲で用いるのがより好ましい。更に併用する分散剤数は1種以上が好ましい。
併用される分散剤として高分子化合物を用いることができ、具体的にはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、アルケニルスルホン酸、ビニルアミン、アリルアミン、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルホスホン酸、ビニルピロリドン、アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アルキレンオキサイドのいずれかになる官能基を有する単量体)から構成されるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの変性物、及びこれらの塩等が挙げられる。或いは、アルブミン、ゼラチン、ロジン、シェラック、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然高分子化合物、およびこれらの変性物も併用することができる。
上記埋包分散剤と併用して用いられ、水不溶性化合物の微粒子に埋包されない分散剤として下記A〜Dの特定の高分子化合物を用いることが好ましく、その質量平均分子量は(各高分子化合物におけるより好ましい範囲は必要により個々に述べるが)、1000〜500000であることが好ましく、2000〜300000であることがより好ましく、3000〜200000であることが特に好ましい。本発明において、分子量というとき特に断らない限り質量平均分子量を意味し、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
[高分子化合物A]
本実施態様においては、側鎖に複素環を有する高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、下記一般式(1)で表される単量体、または、マレイミド、マレイミド誘導体からなる単量体に由来する重合単位を含む重合体であることが好ましく、下記一般式(1)で表される単量体に由来する重合単位を含む重合体であることが特に好ましい。
前記一般式(1)中、R1は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R2は、単結合、又は2価の連結基を表す。Yは、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。Zは含窒素複素環構造を有する基を表す。
R1のアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
R1で表されるアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3がより好ましい。)メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
R1で表される好ましいアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
R1としては、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
一般式(1)中、R2は、単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。
R2で表されるアルキレン基は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子)を介して2以上連結したものであってもよい。
R2で表される好ましいアルキレン基として具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
R2で表される好ましいアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、等が挙げられる。
R2で表される2価の連結基としては、上記のアルキレン基の末端において、−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、及び−NHCO−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介してZと連結するものであってもよい。
一般式(1)中、Zは複素環構造を有する基を表す。複素環構造を有する基としては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、ピラジン、テトラゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、環状アミド、環状ウレア、環状イミド等の複素環構造が挙げられる。これらの複素環構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、脂肪族エステル基、芳香族エステル基、アルコキシカルボニル基、等が挙げられる。
Zは、炭素数が6以上である含窒素複素環構造を有する基であることがより好ましく、炭素数が6以上12以下である含窒素複素環構造を有する基であることが特に好ましい。炭素数が6以上である含窒素複素環構造として具体的には、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、及び環状イミド構造が好ましく、下記(2)、(3)又は(4)で表される構造であることが特に好ましい。
一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NRA−、及び−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかである。ここでRAは、水素原子又はアルキル基を表す。RAがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(2)におけるXとしては、単結合、メチレン基、−O−、又は−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
一般式(4)中、Y及びZは、各々独立に、−N=、−NH−、−N(RB)−、−S−、又は−O−を表す。RBはアルキル基を表し、RBがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(4)における、Y及びZとしては、−N=、−NH−、及び−N(RB)−が特に好ましい。Y及びZの組み合わせとしては、Y及びZのいずれか一方が−N=であり他方が−NH−である組み合わせ、イミダゾリル基が挙げられる。
一般式(2)、(3)、および(4)で、環A、環B、環C、及び環Dは、各々独立に、芳香環を表す。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられ、中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
具体的には、一般式(2)における環A及び環Bとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。一般式(3)における環Cとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。一般式(4)における環Dとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
一般式(2)、(3)および(4)で表される構造の中でも、分散性、分散液の経時安定性の点からは、ベンゼン環、ナフタレン環がより好ましく、一般式(2)又は(4)においては、ベンゼン環がさらに好ましく、一般式(3)においては、ナフタレン環がさらに好ましい。
本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物において、下記一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体の好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本実施態様に用いられる側鎖に複素環を有する高分子化合物は、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物において、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位の含有量は、特に制限はないが、本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物に含有される全構造単位を100質量%とした場合に、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位を5質量%以上含有することが好ましく、10〜50質量%含有することがより好ましい。一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体の中でも、一般式(1)で表される単量体が水不溶性化合物への吸着性が高いことから好ましい。
即ち、水不溶性化合物の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位の含有量は5質量%以上であることが好ましい。また、分散組成物を含有する光硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、一般式(1)で表される単量体に由来する共重合単位の含有量は50質量%以下であることが好ましい。
本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物は、更に、酸基を有する単量体に由来する共重合単位を含むことが好ましい。高分子化合物がさらに酸基を有する単量体に由来する共重合単位を含むことで、水不溶性化合物の分散組成物を感光性組成物に適用した場合において、未露光部の現像除去性に優れる。
酸基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその無水物類;3価以上の不飽和多価カルボン酸またはその無水物類;こはく酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、こはく酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル類;ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノメタクリレート等の両末端カルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。本実施態様の高分子化合物は、酸基を有する単量体に由来する共重合単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物において、酸基を有する単量体に由来する共重合単位の含有量は、好ましくは50〜200mgKOH/gであり、特に好ましくは80〜200mgKOH/gである。より好ましい範囲は100〜180mgKOH/gである。即ち、現像液中での析出物の生成抑制という点では、酸基を有する単量体に由来する共重合単位の含有量は50mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が200mgKOH/g以上であると酸基間の凝集が強くなり、加工顔料間の凝集が生じ、分散性が劣化し、となって好ましくない。水不溶性化合物の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、酸基を有する単量体に由来する共重合単位の含有量は上記範囲が好ましい。
本実施態様における側鎖に複素環を有する高分子化合物は、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能なビニルモノマーに由来する共重合単位を含んでいてもよい。
ここで使用可能なビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このようなビニルモノマーの具体例としては、先に埋包分散剤の説明において分散媒体との親和性部位として挙げた、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、スチレン類、又はビニルエーテル類の各化合物が挙げられる。
本実施態様に係る側鎖に複素環を有する高分子化合物の好ましい分子量は、質量平均分子量(Mw)で1,000〜100,000の範囲、数平均分子量(Mn)で400〜50,000の範囲であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000の範囲、数平均分子量(Mn)で2,000〜30,000の範囲であることがより好ましい。特に、質量平均分子量(Mw)で8,000〜30,000の範囲、数平均分子量(Mn)で4,000〜12,000の範囲であることが最も好ましい。
即ち、水不溶性化合物の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるための観点からは、本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物の質量平均分子量(Mw)は1,000以上であることが好ましい。また、水不溶性化合物の分散組成物を含有する光硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物の質量平均分子量(Mw)は100,000以下であることが好ましい。
本実施態様の水不溶性化合物の分散組成物中、複素環を有する高分子化合物の含有量としては質量比で、水不溶性化合物側鎖に複素環を有する高分子化合物=1:0.01〜1:2が好ましく、より好ましくは、1:0.05〜1:1であり、さらに好ましくは、1:0.1〜1:0.6である。
該複素環を有する高分子化合物は、例えば、一般式(1)で表される単量体と、重合性オリゴマー(マクロモノマー)と、共重合成分として他のラジカル重合性化合物と用い、通常のラジカル重合法によって製造することができる。一般的には、懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。このような重合体を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、さらに連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタン)を使用することができる。
[高分子化合物B]
本実施態様においては、下記一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む高分子化合物(以下、「特定重合体」と称する場合がある。)を含有することが好ましい。
上記一般式(I)及び(II)中、R1〜R6は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X1及びX2は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L1及びL2は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、A1及びA2は、各々独立に、1価の有機基を表し、m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
R1〜R6は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
アルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3がより好ましい。)メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
好ましいアルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
R1、R2、R4、及びR5としては、水素原子が好ましく、R3及びR6としては、水素原子又はメチル基が、水不溶性化合物の粒子表面への吸着効率の点からも最も好ましい。
X1及びX2は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。中でも、−C(=O)O−、−CONH−、フェニレン基が、水不溶性化合物の粒子への吸着性の観点で好ましく、−C(=O)O−が最も好ましい。
L1及びL2は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表す。2価の有機連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基や、該アルキレン基とヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造とからなる2価の有機連結基が好ましい。ここで、アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。また、ヘテロ原子を含む部分構造におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子があげられ、中でも、酸素原子、窒素原子が好ましい。
好ましいアルキレン基として、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
アルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
2価の有機連結基としては、上記のアルキレン基の末端に、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介して、隣接した酸素原子と連結したものが、水不溶性化合物の粒子への吸着性の点から好ましい。ここで、隣接した酸素原子とは、一般式(I)におけるL1、及び一般式(II)におけるL2に対し、側鎖末端側で結合する酸素原子を意味する。
A1及びA2は、各々独立に、1価の有機基を表す。1価の有機基としては、置換もしくは非置換のアルキル基、又は、置換もしくは非置換のアリール基が好ましい。
好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。
置換基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が、分散安定性の点から好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
A1及びA2としては、分散安定性、現像性の点から、炭素原子数1から20までの直鎖状、炭素原子数3から20までの分岐状、ならびに炭素原子数5から20までの環状のアルキル基が好ましく、炭素原子数4から15までの直鎖状、炭素原子数4から15までの分岐状、ならびに炭素原子数6から10までの環状のアルキル基がより好ましく、炭素原子数6から10までの直鎖状、炭素原子数6から12までの分岐状のアルキル基が更に好ましい。
m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表す。分散安定性、現像性の点から、4〜6が好ましく、5が最も好ましい。
p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。pの異なるもの、qの異なるものが2種以上、混合されてもよい。p及びqは、分散安定性、現像性の点から、5〜60が好ましく、5〜40がより好ましく、5〜20が更に好ましい。
本実施態様における特定重合体としては、分散安定性の点から、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
また、一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(I)−2で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
上記一般式(I)−2中、R1〜R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、A1は、1価の有機基を表し、mは、2〜8の整数を表し、pは、1〜100の整数を表す。
一般式(I)、(II)、又は、(I)−2で表される繰り返し単位は、それぞれ、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体を、重合あるいは共重合することにより、高分子化合物の繰り返し単位として導入される。
上記一般式(i)、(ii)、及び(i)−2中、R1〜R6は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X1及びX2は、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L1及びL2は、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、A1及びA2は、各々独立に、1価の有機基を表し、m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
以下に、一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体の好ましい具体例〔単量体(A−1)〜(A−23)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本実施態様における特定重合体は、一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含んでいればよく、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
また、特定重合体において、一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位の含有量は、特に制限はないが、重合体に含有される全繰り返し単位を100質量%とした場合に、一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位を5質量%以上含有することが好ましく、50質量%含有することがより好ましく、50質量%〜80質量%含有することが更に好ましい。
本実施態様における特定重合体は、水不溶性化合物の粒子への吸着を高める目的で、吸着し得る官能基を有する単量体と、前述の一般式(i)、(ii)、(i)−2で表される単量体と、を共重合した高分子化合物であることが好ましい。水不溶性化合物の粒子に吸着し得る官能基を有する単量体としては、具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマー、イオン性基を有するモノマーなどを挙げることができる。中でも、吸着力の点で、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーが好ましい。
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、前記高分子化合物Aの高で説明した記一般式(1)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体からなる群より選択される1種であることが好ましい。好ましい範囲も上記と同義である。
酸性基を有するモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーやスルホン酸基を有するビニルモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なおこれらの内では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
本実施態様における特定重合体は、上述のような酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含むことにより、本発明の分散物を着色感光性組成物に適用した場合において、未露光部の現像除去性に優れる。
本実施態様における特定重合体は、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
特定重合体において、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは50mgKOH/g以上であり、特に好ましくは50mgKOH/g〜200mgKOH/gである。即ち、現像液中での析出物の生成抑制という点では、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は50mgKOH/g以上であることが好ましい。水不溶性化合物の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は50mgKOH/g〜200mgKOH/gであることが好ましい。
塩基性窒素原子を有するモノマーとしては、先に埋包分散剤の説明においてその官能基として挙げた、塩基性基をなすモノマーにおける各例示化合物、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーにおける各例示化合物(特に例示化合物u−1〜u−12)を挙げることができる。さらに同様に先に例示したイオン性基を有するモノマーにおける各例示化合物も挙げられる。
水不溶性化合物の粒子に吸着し得る官能基を有するモノマーは、分散する水不溶性化合物の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施態様における特定重合体は、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能なビニルモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
ここで使用可能なビニルモノマーとしては、先に埋包分散剤の説明において分散媒体との親和性部位として挙げた、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、スチレン類、又はビニルエーテル類の各化合物が挙げられる。
本実施態様における特定共重合体の好ましい態様は、少なくとも一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体と、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーと、を共重合したもので、更に好ましくは、少なくとも前述の一般式(i)−2で表される単量体と、前述の一般式(11)で表される単量体と、酸基を有するモノマーと、を共重合したものである。
この態様により、水不溶性化合物の粒子への吸着に優れ、且つ、現像性に優れた分散組成物を与えることができる。
本実施態様に係る側鎖に複素環を有する高分子化合物の好ましい分子量は、質量平均分子量(Mw)で1,000〜100,000の範囲、数平均分子量(Mn)で400〜50,000の範囲であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000の範囲、数平均分子量(Mn)で2,000〜30,000の範囲であることがより好ましい。特に、質量平均分子量(Mw)で8,000〜30,000の範囲、数平均分子量(Mn)で4,000〜12,000の範囲であることが最も好ましい。
即ち、水不溶性化合物の1次粒子の凝集体である2次凝集体を効果的にほぐし、あるいは、再凝集を効果的に弱めるための観点からは、特定重合体の質量平均分子量(Mw)は1000以上であることが好ましい。また、分散組成物を含有する着色感光性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、特定重合体の質量平均分子量(Mw)は30000以下であることが好ましい。
本実施態様における特定重合体は、例えば、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体と、共重合成分として他のラジカル重合性化合物(前述のような各種モノマー)と、を用い、通常のラジカル重合法によって製造することができる。一般的には、懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。このような特定重合体を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。なお、ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタン)を使用することができる。
本実施態様の水不溶性化合物の分散組成物中、特定重合体の含有量としては質量比で、水不溶性化合物:特定重合体=1:0.1〜1:2が好ましく、より好ましくは、1:0.2〜1:1であり、更に好ましくは、1:0.4〜1:0.7である。
また、本実施態様の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上述の特定共重合体の他に、他の高分子化合物を同時に使用してもよい。他の高分子化合物としては、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等が用いられる。天然樹脂としてはロジンが代表的であり、変性天然樹脂としては、ロジン誘導体、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体およびそれらのオリゴマーが挙げられる。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
[高分子化合物C]
本実施態様の高分子化合物は、アクリル酸を主鎖に有し、アクリル酸の含有量は5〜30質量%であることが好ましく、質量平均分子量1,000〜100,000の範囲のグラフト型高分子化合物であることが好ましい。
特定グラフト重合体については、アクリル酸基を主鎖に含んでいればよい。またアクリル酸基を、さらに枝部に含んでもよい。特定グラフト重合体の合成方法は、新高分子実験学第2巻(共立出版、1995年)などにあるように、一般的な方法として(1)主鎖高分子から枝モノマーを重合させる方法、(2)主鎖高分子に枝高分子を結合させる方法(3)主鎖モノマーを枝高分子と共重合させる方法などが使用可能である。即ち、特定グラフト重合体は、アクリル酸と重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)と他の共重合可能なモノマーと共重合させて得られるものであることが好ましい。
アクリル酸の導入量は、分散性の観点から、5〜30質量%が好ましい。30質量%よりも多くなると、共重合されるマクロモノマー量が相対的に少なくなるため立体反発鎖が寄与せず十分な分散安定性を得られない。一方、5質量%以下では、高分子化合物全体として十分な柔軟性が得られず、分散安定性、現像性が良化する効果が得られにくい。さらに、アクリル酸の導入量は、マクロモノマーの種類や分子量などにも依るが、10〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が最も好ましい。
[高分子化合物D]
本実施態様の高分子化合物は、下記一般式(31)及び(32)から選択される繰り返し単位を有することが好ましく、該繰り返し単位が5〜100質量%含有されるものであることがより好ましく、質量平均分子量1,000〜100,000の高分子化合物であることが好ましい。
一般式(31)
−Q1−Q2−Z−
ここで Q1は −(C=O)− または −SO2− を、
Q2は −NH− または −CHR1− を、
Zは −(C=O)−R2− または −SO2−R2− を示す。
また R1は 水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルキル基を、
R2は アルキレン基、シクロアルキレン基、またはアリーレン基を示す。
また、R1とR2とは互いに連結基を介して連結してもよい。
一般式(32)
−Rf−OH
ここで、Rfは 少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。
一般式(31)で表される部分構造(以下酸基あるいは酸基構造と称することがある)の具体例としては、下記構造が挙げられる。
一般式(32)で表される酸基としては、例えば、−C(CF3)2OH、−C(C2F5)2OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF3)2OHが好ましい。
この高分子化合物に含まれる一般式(31)および一般式(32)の酸基の量は、分散する水不溶性化合物の種類に応じて適宜調整することができる。酸基を含む繰返し単位の量は、5〜100質量%が好ましく、10〜80質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。好ましい酸価としては、30〜300mgKOH/g、より好ましくは50〜200mgKOH/gである。酸価が30mgKOH/g未満では現像ができなかったり、現像残りが生じる。酸価が300mgKOH/gを超えると、分散性安定性が不良になったり、アルカリ現像での速度が早くなり過ぎて、適切な現像ラチチュードが得られない。
酸価は、高分子化合物1gを中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)の測定によるものである。モノマーが有する酸基の数、モノマーの分子量、モノマーの組成比などを調整し、高分子化合物が有する酸性基の数を制御することで、所望の酸価の高分子化合物を得ることができる。
高分子化合物は、具体的には下記一般式(G−I)〜(G−III)で表される単量体を重合することによって、一般式(31)および(32)を導入することができ、好ましい。
一般式(G−I)〜(G−III)で、R
3は水素原子、またはメチル基を表す。S
1は上記一般式(1−a)〜(1−f)で表される連結基を表す。Rは、置換基を有していても良いアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。Rfは、少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。W
2は、単結合または、
(Z
1、Z
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基を表し、Z
3は水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)等の原子団から選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表す。
一般式(G−I)〜(G−III)は、さらに下記一般式(G−IV)〜(G−VII)で表されることが好ましい。
(W
1はアルキレン、アルコキシ、エステルから選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表す。S
1は上記一般式(1−a)〜(1−f)で表される連結基を表す。R
1は、置換基を有していても良いアルキル基、シクロアルキル基または
アリール基を表す。R
2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、シアノ基を表す。R
3は水素原子、またはメチル基を表す。Rfは、少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。)
以下に、一般式(G−III)〜(G−VII)の具体例を示す。R
3は水素原子、またはメチル基を表す。
本実施態様の高分子化合物は、既述のようなモノマーを重合しても合成できるし、前駆体の高分子化合物と、酸基を有する低分子化合物を反応させて合成することもできる。
本実施態様の高分子化合物は、ブロック型高分子、グラフト型高分子、及び末端変性型高分子から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
本実施態様の高分子化合物は、分散工程において、水不溶性化合物の粒子表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用するものと思われる。そのため、本実施態様の高分子化合物は直鎖のランダム共重合体でも良いが、より効果が大きいブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
(直鎖型ランダム共重合体)
直鎖型ランダム共重合体は、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマーを、他の共重合可能なモノマーとラジカル重合等の任意の重合法により得ることができる。他の共重合可能なモノマーとしては、ブロック型高分子の項で詳述するが、(i)有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、(ii)酸性基を有するモノマー、(iii)塩基性窒素原子を有するモノマー、(iv)ウレア基、ウレタン基、配
位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマー、(v)イオン性官能基を含有するモノマー、(vi)(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリル などのモノマーを1種以上任意に選択できる。(i)から(iii)のモノマー群から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
直鎖型ランダム共重合体の好ましい質量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、3,000〜50,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であると、安定化効果をより効果的に得ることができ、また、質量平均分子量が100,000以下であると、より効果的に吸着して良好な分散性を発揮することができる。
(ブロック型高分子)
ブロック型高分子としては、特に限定されないが、水不溶性化合物吸着ブロック(a)と、酸基を有するブロック(b)と、水不溶性化合物粒子に吸着しないブロック(c)とからなるブロック型高分子が挙げられる。
吸着ブロック(a)を構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、水不溶性化合物の粒子に吸着し得る官能基を有するモノマーが挙げられる。具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマーなどを挙げることができる。
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等の複素環構造を有するモノマーを挙げることができる。より具体的には、特に制限されないが、以下のような構造のモノマーを挙げることができる。
酸性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基を有するビニルモノマーや、スルホン酸基あるいはリン酸基を有するビニルモノマーを含んでも良い。具体的には前記高分子化合物Bの特定重合体をなす酸性基を有するモノマーとして挙げた各化合物が挙げられる。なお、酸基は、上記した酸性基とは別に導入することができる。
塩基性窒素原子を有するモノマーとして、複素環を有するモノマーとして、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾールなどが挙げられ、この他に、塩基性窒素原子を有するモノマーとしては、先に埋包分散剤の説明においてその官能基として挙げた、塩基性基をなすモノマーにおける各例示化合物、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーにおける各例示化合物(特に例示化合物u−1〜u−12)を挙げることができる。さらに同様に先に例示したイオン性基を有するモノマーにおける各例示化合物も挙げられる。
更に、先に埋包分散剤の説明においてその官能基として挙げたイオン性官能基を含有するモノマーを利用することができる。
水不溶性化合物の粒子に吸着し得る官能基を有するモノマーは、分散する水不溶性化合物の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸基を有するブロック(b)を構成する単量体としては、既述のものが挙げられる。好ましくは、上記一般式(G−I)〜(G−III)で表される単量体から構成される。
酸基を有するモノマーは、分散する水不溶性化合物の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水不溶性化合物の粒子に吸着しないブロック(c)を構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的には、先に埋包分散剤の説明において分散媒体との親和性部位として挙げた、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、又はマレイミド類における各化合物、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルカプロラクトン等が挙げられる。
ブロック型高分子を得る方法としては、従来公知の方法が利用して得ることができる。例えば、リビング重合、イニファータ法等が知られており、更に他の方法として、吸着基を有する単量体又は吸着基を有しない単量体をラジカル重合する際に、チオールカルボン酸又は2−アセチルチオエチルエーテル、10−アセチルチオデカンチオール等の分子内にチオエステルとチオール基とを含有する化合物を共存させて重合して得られた重合体を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリで処理して、片末端にチオール基を有する重合体とし、得られた片末端にチオール基を有する重合体の存在下でもう一方のブロックの単量体成分をラジカル重合する方法も知られている。これらの中でも、リビング重合が好適である。
ブロック型高分子の質量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であると、安定化効果をより効果的に得ることができ、また、質量平均分子量が100,000以下であると、より効果的に吸着して良好な分散性を発揮することができる。
(グラフト型高分子)
グラフト型高分子については、上記の酸基を主鎖あるいは枝部、または両方のいずれかに含んでいれば良い。グラフト型高分子の合成方法は、新高分子実験学第2巻(共立出版、1995年)などにあるように、一般的な方法として、主鎖高分子から枝モノマーを重合させる方法、主鎖高分子に枝高分子を結合させる方法、および主鎖モノマーを枝高分子と共重合させる方法などが使用可能である。
即ち、本実施態様で使用できるグラフト型高分子は、主鎖あるいは枝部のいずれかに、または両方に、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマー1種以上を、他の共重合可能なモノマーと共重合させて得られるものである。
他の共重合可能なモノマーとしては、前述の(i)有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、(ii)酸性基を有するモノマー、(iii)塩基性窒素原子を有する
モノマー、(iv)ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマー、(v)イオン性官能基を含有するモノマー、(vi)(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリル などのモノマーを1種以上任意に選択できる。
本実施態様のグラフト型高分子において好ましい形態として、下記形態が挙げられる。
・前述の(i)〜(iv)で表されるモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマー、重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子。
・前述の(i)〜(iv)で表されるモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含む重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子。
・前述の(i)〜(iv)で表されるモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含む重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子。
上記グラフト型高分子の質量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であると、安定化効果をより効果的に得ることができ、また、質量平均分子量が100,000以下であると、より効果的に吸着して良好な分散性を発揮することができる。
特に枝部の質量平均分子量は、300〜30,000が好ましい。より好ましくは1,000〜20,000である。上記範囲に枝部の分子量があると、現像性が特に良好であり、現像ラチチュードが広い。
(末端変性型高分子)
末端変性型高分子としては、主鎖に本実施態様の酸基を有する繰返し単位を含み、末端に水不溶性化合物と親和性の高い官能基がある高分子である。即ち、主鎖は、前述の直鎖型ランダム共重合体をそのまま使用することができる。共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、ラジカル重合性モノマーとしては、前記「酸基を有する単量体(b)」および「水不溶性化合物の粒子に吸着しないブロックを構成する単量体(c)」を用いることができる。本実施態様で使用可能な末端変性型高分子は、この直鎖型ランダム共重合体の末端に、下記に記載する変性を施して得られた高分子である。
ポリマーの末端に官能基を有する高分子を合成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法およびこれらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
1.官能基含有の重合開始剤を用いて重合(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など)で合成する方法
2.官能基含有の連鎖移動剤を用いてラジカル重合で合成する方法
ここで導入する官能基は、有機色素構造、複素環構造、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基およびイオン性官能基から選択される基などが挙げられる。
ポリマー末端に官能基を導入できる連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メカルプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メカルプルイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、メルカプトアセトフェノン、ナフタレンチオール、ナフタレンメタンチオール等)またはこれらメルカプト化合物の酸化体であるジスルフィド化合物、およびハロゲン化合物(例えば、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸など)が挙げられる。
また、ポリマー末端に官能基を導入できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2−シアノペンタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等又はこれらの誘導体等が挙げられる。
上記の末端変性型高分子の分子量としては、質量平均分子量1,000〜50,000であることが好ましい。上記数平均分子量が1,000以上であると、水不溶性化合物の分散剤としての立体反発効果をより効果的に得ることができ、50,000以下であると、より効果的に立体効果を抑制し、水不溶性化合物の粒子への吸着の時間をより短縮できる。
本発明において用いられる水不溶性化合物は特に限定されないが、具体的に例えば、有機顔料、有機色素、フラーレン、ポリジアセチレン、ポリイミドなどの高分子有機材料、芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素(例えば、配向性を有する芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素、または昇華性を有する芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素)などからなる粒子が挙げられ、有機顔料、有機色素、または高分子有機材料が好ましく、有機顔料が特に好ましい。また、有機粒子は、単独で用いても、複数であっても、これらを組み合わせたものであっても良いし、複数の水不溶性化合物を用いて、多層粒子構造にすることも可能である。
有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン化合物顔料、またはそれらの混合物などが挙げられる。
更に詳しくは、たとえば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン化合物顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントイエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン化合物顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、C.I.ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、C.I.ピグメントブルー79(C.I.番号761300)、C.I.ピグメントブルー15:6(C.I.番号74160)、もしくはC.I.ピグメントブルー15:3(C.I.番号74160)等のフタロシアニン化合物顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)、ピグメントブルー80等のジオキサジン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール化合物顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、C.I.ピグメントイエロー185(C.I.番号56290)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン化合物顔料が挙げられる。なかでも、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料(亜鉛フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン等)がより好ましい。
本発明の微粒子ないしその分散物においては、2種類以上の水不溶性化合物またはその固溶体を組み合わせて用いることもでき、また通常の染料と組み合わせて用いることもできる。本発明の微粒子を含む分散物において水不溶性化合物の含有率は、1〜60質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましい。
本発明で得られる微粒子は、水に不溶な化合物で、分散媒体中にて安定に分散できるものが望ましい。微粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。本発明の微粒子(一次粒子)の平均粒径は100nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。本発明の微粒子は、その大きさの単結晶または多結晶、会合体でありであり、微粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
本発明の微粒子は、模式化していえば図1に示したような水不溶性化合物1を連続相として分散相となる特定の分散剤2を埋包するものとして説明することができるが、その他の成分を取り込んでまたは付着するなどして有していてもよい。このとき、埋包された分散剤2として、その分子全体が内包された内在埋包分散剤2bとその一部が外方に延在する外在埋包分散剤2aとが示されている。この外在埋包分散剤2aの外方延在部2oは内在部2iと連続しており、該外方延在部2oに立体反発性の部位を有し、他方、内在部2iに水不溶性化合物と引き合う相互作用を示す部位を有することが好ましい。そのような分子構造及びその設計の実施態様は先に述べたとおりである。
本発明の微粒子においては、先に述べたとおり、粒子表面から粒子半径の50%(r2/R)にある外方領域Ao(つまり図1に示したものでいうと、中心点cから区分線kまでの半径内側距離r1と該区分線kから表面所定点hまでの半径外側距離r2とが等しくなる区分線kの外方の領域(好ましくはr2/Rが40%、より好ましくはr2/Rが30%の領域))に埋包されている分散剤2の80%以上が存在する。換言すれば、内方領域Aiにある埋包分散剤2が20%未満である。本発明において、上記埋包分散剤が外方領域に偏在する表面偏在性の測定及び評価は、特に断らない限り、以下の実施例に記載の方法に従って行うものとする。
粒子の均一性(単分散性)を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。本発明の有機ナノ粒子(一次粒子)の単分散性(本発明において、単分散性とは粒径が揃っている度合いをいう。)、つまりMv/Mnは1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
有機粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズ(いずれも商品名)などが挙げられる。
本発明の水不溶性化合物の微粒子は、良溶媒に前記水不溶性化合物を溶解した溶液と貧溶媒とを混合するにつき、(i)良溶媒側及び/又は貧溶媒側に前記分散剤を含有させて混合して、又は(ii)これらとは別に良溶媒に前記分散剤を溶解した溶液を準備し前記両液とともに混合して、生成させた前記分散剤を埋包するビルドアップ微粒子であることが好ましい。
上記埋包分散剤の使用量は特に限定されないが、水不溶性化合物の微粒子を析出させるに際し、系内に添加する量として、水不溶性化合物100質量部に対して10〜300質量部の範囲であることが好ましく、10〜120質量部の範囲であることがより好ましく、20〜100質量部の範囲であることが特に好ましい。本発明の微粒子においては、上述のように、上記再沈法に投入される埋包分散剤の10質量%以上が埋包されることが好ましい。前記埋包分散剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。本発明の分散物において埋包分散剤の含有量は特に限定されないが、その上限値が上記系ないに添加した量であり、下限値が微粒子に埋包された量であることが実際的であり、具体的には1〜294質量%であることが好ましく、2〜99質量%であることがより好ましい。
良溶媒は、前記の水不溶性化合物及び又は埋包分散剤を溶解することが可能で、貧溶媒と相溶する(均一に混ざる)ものであれば特に限定されない。良溶媒に対する水不溶性化合物の溶解度は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この溶解度に特に上限はないが、通常用いられる水不溶性化合物を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。また良溶媒に対する埋包分散剤の溶解度は4.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。この溶解度に特に上限はないが、通常用いられる高分子化合物を考慮すると70質量%以下であることが実際的である。
良溶媒と貧溶媒との相溶性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。なお、水不溶性化合物の溶液と埋包分散剤の溶液とを別々に準備するときには、両者の溶解に用いる溶液を上記良溶媒(第1溶媒)の範囲に属する水から選択することが好ましく、両溶媒を同一種の溶媒とすることが好ましい。
良溶媒としては、特に限定されないが、有機酸(例えば、ギ酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸等)、有機塩基(例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、ナトリウムメトキシド等)、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶
媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
これらの中でも、有機酸、有機塩基、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、有機酸、有機塩基、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。
具体的には、特開2009−79158号公報の段落[0076]〜[0087]記載の化合物等が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
水不溶性化合物溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
水不溶性化合物を、良溶媒中に均一に溶解するとき、一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられることが好ましい。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料、ハロゲン化フタロシアニン化合物は、アルカリ性で、フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解することができる。
アルカリ性で溶解するときに用いられる塩基として、前記有機塩基以外に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基を用いることも可能である。使用する塩基の量は特に限定されないが、無機塩基の場合、水不溶性化合物に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、水不溶性化合物に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であることがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
酸性で溶解するときに用いられる酸として、前記有機酸以外に、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸を用いることも可能である。使用する酸の量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多く、水不溶性化合物に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
無機塩基または無機酸を有機溶媒と混合して、水不溶性化合物の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、水不溶性化合物溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
水不溶性化合物溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
水不溶性化合物溶液は、良溶媒に水不溶性化合物と必要により高分子化合物とを溶解したものであれば特に限定されず、他の成分を含んでいても構わない。
他の成分としては、特に限定されないが、酸性基を有する有機化合物、塩基性を有する有機化合物などが好適に挙げられる。これらの成分は、前記水不溶性化合物溶液と前記貧溶媒とを混合することにより顔料を析出させた際に、析出させた顔料に素早く吸着し、顔料表面を酸性あるいは塩基性に処理する作用を有するものである。上記他の成分の前記貧溶媒への溶解性は特に制限されない。
本発明に用いうる酸性基を有する有機化合物の酸性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、ホスホン酸基、水酸基、スルフィド基、などがあげられるがこれらに限定されるものではない。また、分子中に1種単独でも、2種以上の同一、または異なる官能基を含んでいてもよい。またこれら酸性基を有する有機化合物は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するものが好ましい。
具体的には、特開2009−79158号公報の段落[0063]〜[0067]記載の化合物等が挙げられる。
本発明において、酸性基を有する有機化合物の添加量として、水不溶性化合物に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
塩基性基を有する有機化合物としては、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルアミン、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体などが挙げられ、好ましくはアルキルアミン、アリールアミン、イミダゾール誘導体が挙げられる。
前記塩基性基を有する有機化合物の炭素数としては、6以上が好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。
前記塩基性基を有する有機化合物としては、具体的には特開2009−79158号公報の段落[0054]〜[0056]記載の化合物が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
前記塩基性基を有する有機化合物としては、水不溶性化合物に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
また塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物を添加することも好ましい。
このような有機化合物としては、例えば特開2009−79158号公報の段落[0060]〜[0087]記載の化合物が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
前記塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物の添加量としては、水不溶性化合物に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
上記に挙げた以外にも特開2007−9096号公報や特開平7−331182号公報等に記載の顔料誘導体を挙げることができる。ここで言う顔料誘導体とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型の化合物、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型の化合物を指す。市販品としては、例えば、EFKA社製「EFKA6745(フタロシアニン誘導体))」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)」等を挙げることができる(いずれも商品名)。顔料誘導体を用いる場合、その使用量としては、顔料に対し0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
貧溶媒は特に限定されないが、貧溶媒に対する水不溶性化合物の溶解度は、0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。水不溶性化合物の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる水不溶性化合物を考慮すると0.0001質量%以上が実際的である。また貧溶媒に対する上記自己分散化高分子化合物の溶解度は、2.0質量%以下(不溶性)であり、1.0質量%以下であることが好ましい。水不溶性化合物の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる高分子化合物を考慮すると0.001質量%以上が実際的である。
貧溶媒としては、特に限定されないが、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3
−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
これらの中でも、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、水性媒体、アルコール系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。
水性媒体とは、水単独または水と水に可溶な有機溶媒や無機塩の溶解液をいう、例えば、水、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。
良溶媒の具体例として列挙したものと貧溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒として同じものを組み合わせることはなく、採用する各水不溶性化合物および高分子化合物との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、水不溶性化合物に関しては、例えば、その溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる水不溶性化合物を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。高分子化合物に関しては、例えば、その溶解度差が2.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる高分子化合物を考慮すると70質量%以下であることが実際的である。
貧溶媒の状態は特に限定されず、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。水不溶性化合物溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
水不溶性化合物溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、水不溶性化合物溶液を貧溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
水不溶性化合物溶液と貧溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる顔料ナノ粒子の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは水不溶性化合物溶液の密度[kg/m3]を表し、Uは水不溶性化合物溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは水不溶性化合物溶液と貧溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径[m]を表し、μは水不溶性化合物溶液の粘性係数[Pa・s]を表す。
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)または流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
配管を通じて水不溶性化合物溶液を貧溶媒中に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
水不溶性化合物溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している貧溶媒中に水不溶性化合物溶液を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
水不溶性化合物溶液の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、例えば、0.8〜2.0kg/m3であることが実際的である。また、水不溶性化合物溶液の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した水不溶性化合物溶液の好ましい粘度と同義である。
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節して顔料ナノ粒子の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好な顔料ナノ粒子を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られるナノ粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さな顔料ナノ粒子を制御して得ることができる。
水不溶性化合物溶液と貧溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。有機微粒子を析出させた場合の液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して有機粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。また、微粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
水不溶性化合物微粒子を析出させ分散液を調製するに当り、水不溶性化合物溶液及び貧溶媒の少なくとも一方に、少なくとも貧溶媒が良溶媒(貧溶媒に対する溶解度が4.0質量%以上)となるような化合物(以下、粒径調整剤と称することがある)を含有させてもよい。
高分子粒径調整剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO2共重合体、ジアリルアミン塩酸塩/マレイン酸共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO2共重合体などが好ましい。これら粒径調整剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが特に好ましい。
アニオン粒径調整剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性の粒径調整剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンのカチオン性物質の塩が挙げられる。これらカチオン性粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
両イオン性の粒径調整剤は、前記アニオン性の粒径調整剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性の粒径調整剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する粒径調整剤である。
ノニオン性の粒径調整剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
粒径調整剤の含有量は、水不溶性化合物微粒子の粒径制御をより一層向上させるために、顔料に対して0.1〜100質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。また粒径調整剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
上記良溶媒(第1溶媒)および貧溶媒(第2溶媒)から切り替えて用いられる第3溶媒の種類は特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましく、例えば、エステル化合物溶媒、アルコール化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましく、エステル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒または脂肪族化合物溶媒がより好ましく、エステル化合物溶媒が特に好ましい。また、該第3溶媒は上記溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
なお、本発明においては、上記の第3溶媒に限らず後述する第4溶媒を含め、分散組成物の媒体とされる、前記良溶媒及び前記貧溶媒のいずれとも異なる溶媒を総称して「第3の溶媒」という。
エステル化合物溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
なかでも、乳酸エチル、酢酸エチル、エタノール、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートが好ましく、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。なお第3溶媒が良溶媒もしくは貧溶媒と同じものであることはない。
第3溶媒の添加の時機は水不溶性化合物微粒子の析出後であれば特に限定されないが、微粒子を析出させた混合液に添加しても良いし、混合液の溶媒分の一部、を除去してから加えても良いし、あるいは全部を予め除去(濃縮)してから添加してもよい。
すなわち、第3溶媒を置換用溶媒として用い、微粒子を析出させた分散液中の良溶媒及び貧溶媒からなる溶媒分を第3溶媒で置換することができる。
あるいは、良溶媒および貧溶媒を完全に除去(濃縮)し、顔料粒子粉末として取り出してから、第3溶媒を加えることもできる。
また、後述する顔料分散組成物とするときに、1度目の溶媒分の除去工程(第1除去)を経た後、第3溶媒を添加して溶媒置換し、2度目の溶媒分の除去工程(第2除去)により溶媒分を除去し粉末化してもよい。そして、その後顔料分散剤及び/又は溶媒を添加して所望の顔料分散組成物とすることができる。
あるいは良溶媒および貧溶媒を完全に除去(濃縮)し、顔料粒子粉末として取り出してから、第3溶媒及び/又は顔料分散剤を添加して、所望の顔料分散組成物とすることができる。
第3溶媒の添加量は特に限定されないが、水不溶性化合物の微粒子100質量部に対して、100〜300000質量部であることが好ましく、500〜10000質量部であることがより好ましい。
水不溶性化合物微粒子析出後の混合液からの溶媒分の除去工程としては、特に限定されないが、例えば、フィルタなどによりろ過する方法、遠心分離によって水不溶性化合物微粒子を沈降させて濃縮する方法などが挙げられる。
フィルタろ過の装置は、例えば、減圧あるいは加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどを挙げることができる。
遠心分離機は水不溶性化合物微粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
また、溶媒分の除去工程として、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法、それらを組合せた方法などを用いることもできる。
水不溶性化合物の微粒子は例えばビヒクル中で分散させた状態で用いることができる。前記ビヒクルとは、塗料でいえば、液体状態にあるときに水不溶性化合物を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記水不溶性化合物と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。なお本発明においては、微粒子形成時に用いる高分子化合物および/または再分散化に用いる水不溶性化合物分散剤とを総称してバインダーと称する。
再分散化後の微粒子の分散組成物の微粒子濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは分散組成物全量に対して微粒子が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記のようなビヒクル中に分散させる場合に、バインダーおよび溶解希釈成分の量は水不溶性化合物の種類などにより適宜定められるが、分散組成物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。溶解希釈成分は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
本発明の水不溶性化合物の微粒子を第3の溶媒に再分散させるとき、別の分散剤等を添加しなくても、第3の溶媒中で水不溶性化合物微粒子の凝集状態が自発的に解かれ媒体中に分散する性質を有することが好ましく、この性質があることを「自己分散しうる」ないし「自己分散性を有する」という。ただし、本発明において再分散性を一層向上させるために、微粒子の再分散時に顔料分散剤等を添加してもよい。
このような凝集状態にある微粒子を再分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて顔料ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
顔料分散組成物には、顔料の分散性をより向上させる目的で、従来から公知の顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤などを本発明の効果を損なわない限りにおいて加えることもできる。
顔料分散剤としては、高分子分散剤(例えば、直鎖状高分子、ブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等)、顔料誘導体等を挙げることができる。分散剤は、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
高分子化合物の例として、ブロック型高分子としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−2000、2001」、EFKA社製「EFKA4330、4340」等を挙げることができる。グラフト型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース24000、28000、32000、38500、39000、55000」、BYK Chemie社製「Disperbyk−161、171、174」等が挙げられる。末端変性型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース3000、17000、27000」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
本発明において顔料誘導体(以下、「顔料誘導体型分散剤」ともいう)とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。一般に、シナジスト型分散剤ともいわれている。
特に限定されないが、例えば、特開2007−9096号公報や、特開平7−331182号公報等に記載の酸性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有する顔料誘導体、フタルイミドメチル基などの官能基を導入した顔料誘導体などが好適に用いられる。
市販品としては、EFKA社製「EFKA6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
線状高分子としては、後述するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができ、上記顔料誘導体と併用することも好ましい。
顔料分散剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
光硬化性組成物は、前記水不溶性化合物の微粒子の分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤(以下、光重合開始剤系と称する場合もある)とを含み、好ましくは、更に、アルカリ可溶性樹脂を含む。以下、光硬化性組成物の各成分について説明する。
水不溶性化合物微粒子および、その分散組成物を作製する方法については既に詳細に述べた。光硬化性組成物中の微粒子の含有量は、全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
光重合性化合物(以下、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーと称する場合がある)としては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合する多官能モノマーであることが好ましい。そのような光重合性化合物としては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。また、特開平10−62986号公報に一般式(1)および(2)に記載のように、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化した化合物も好適なものとして挙げられる。
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
光重合性化合物は、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、光硬化性組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。光硬化性組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。
アルカリ可溶性樹脂としては、光硬化性組成物ないし、カラーフィルタ用インクジェットインクの調製時に添加することもできるが、前記微粒子の分散組成物を製造する際、または微粒子形成時に添加することも好ましい。水不溶性化合物の溶液および水不溶性化合物の溶液を添加して水不溶性化合物の微粒子を生成させるための貧溶媒の両方もしくは一方にアルカリ可溶性樹脂を添加することもできる。またはアルカリ可溶性樹脂溶液を別系統で水不溶性化合物の微粒子形成時に添加することも好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、酸性基を有するバインダーが好ましく、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するアルカリ可溶性のポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩などを有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4,139,391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
アルカリ可溶性樹脂は、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、水不溶性化合物の微粒子100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
その他、架橋効率を向上させるために、アルカリ可溶性樹脂の側鎖に重合性基を有していてもよく、UV硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等も有用である。更に、アルカリ可溶性樹脂として、側鎖の一部に水溶性の原子団を有する樹脂を用いることもできる。
光硬化性組成物においては、上記成分の他に、更に光硬化性組成物調製用の有機溶媒(第4溶媒)を用いてもよい。第4溶媒の例としては、特に限定されないが、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられるが、なかでも、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、またはこれらの混合物などがより好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセルソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、n−オクタン等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。有機溶媒の含有量は、光硬化性組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
また、光硬化性組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
光硬化性組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して1質量%以下が好ましい。
光硬化性組成物には、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、着色剤(染料、顔料)を添加することができる。着色剤のうち顔料を用いる場合には、光硬化性組成物中に均一に分散されていることが望ましい。染料ないし顔料としては、具体的には、前記顔料として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。補助的に使用する染料もしくは顔料の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
光硬化性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
また、光硬化性組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
光硬化性組成物はその組成を適宜に調節して、インクジェットインクとすることができる。インクジェットインクとしてはカラーフィルタ用以外にも、印字用等、通常のインクジェットインクとしてもよいが、なかでもカラーフィルタ用インクジェットインクとすることが好ましい。
インクジェットインクは前記の水不溶性化合物微粒子を含むものであればよく、重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含む媒体に、前記の水不溶性化合物微粒子を含有させたものであることが好ましい。ここで重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーとしては、先に光硬化性組成物において説明したものを用いることができる。
このとき、粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sであることが好ましく、8〜22mPa・sであることがより好ましく、10〜20mPa・sであることが特に好ましい(本発明において粘度は、特に断らない限り25℃のときの値である。)。前記射出温度の設定以外に、インクに含有させる成分の種類と添加量を調節することで、粘度の調整をすることができる。前記粘度は、例えば、円錐平板型回転粘度計やE型粘度計などの通常の装置により測定することができる。
また、射出時のインクの表面張力は15〜40mN/mであることが、画素の平坦性向上の観点から好ましい(本発明において表面張力は、特に断らない限り23℃のときの値である。)。より好ましくは、20〜35mN/m、最も好ましくは、25〜30mN/mである。表面張力は、界面活性剤の添加や、溶剤の種類により調整することができる。前記表面張力は、例えば、表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z)や、全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和科学社製)などの測定器を用いて白金プレート方法により測定することができる。
カラーフィルタ用インクジェットインクの吹き付けとしては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
また、各画素形成のために用いるインクジェット法に関しては、インクを熱硬化させる方法、光硬化させる方法、あらかじめ基板上に透明な受像層を形成しておいてから打滴する方法など、通常の方法を用いることができる。
インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう。)には、通常のものを適用でき、コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドはインクの温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sとなるよう射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。
また、各画素を形成した後、加熱処理(いわゆるベーク処理)する加熱工程を設けることができる。即ち、光照射により光重合した層を有する基板を電気炉、乾燥器等の中で加熱する、あるいは赤外線ランプを照射する。加熱の温度及び時間は、感光性濃色組成物の組成や形成された層の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、及び紫外線吸光度を獲得する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
このようにして形成されたカラーフィルタのパターン形状は特に限定されるものではなく、一般的なブラックマトリックス形状であるストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
既述のカラーフィルタ用インクジェットインクを用いた画素形成工程の前に、予め隔壁を作成し、該隔壁に囲まれた部分にインクを付与する作製方法が好ましい。この隔壁はどのようなものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁(以下、単に「隔壁」とも言う。)であることが好ましい。該隔壁は通常のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材、方法により作製することができる。例えば、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクスや、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020]や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。
光硬化性組成物を用いた塗布膜における含有成分については、既に記載したものと同様である。また、光硬化性組成物を用いた塗布膜の厚さは、その用途により適宜定めることができるが、0.5〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることがより好ましい。この光硬化性組成物を用いた塗布膜においては、前述のモノマーもしくはオリゴマーを重合させて光硬化性組成物の重合膜とし、それを有するカラーフィルタを作製することができる(カラーフィルタの作製については後述する。)。光重合性化合物の重合は、光照射により光重合開始剤又は光重合開始剤系を作用させて行うことができる。
尚、上記塗布膜は、光硬化性組成物を、通常の塗布方法により塗布し乾燥することによって形成することができるが、本発明においては、液が吐出する部分にスリット状の穴を有するスリット状ノズルによって塗布することが好ましい。具体的には、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリット状ノズル、及びスリットコータが好適に用いられる。
光硬化性組成物の基板への塗布方法は、1〜3μmの薄膜を均一に高精度に塗布できるという点からスピン塗布が優れており、カラーフィルタの作製に広く一般的に用いることができる。しかし、近年においては、液晶表示装置の大型化および量産化に伴って、製造効率および製造コストをより高めるために、スピン塗布よりも広幅で大面積な基板の塗布に適したスリット塗布がカラーフィルタの作製に採用されるようになってきている。尚、省液性という観点からもスリット塗布はスピン塗布よりも優れており、より少ない塗布液量で均一な塗膜を得ることができる。
スリット塗布は、先端に幅数十ミクロンのスリット(間隙)を有し且つ矩形基板の塗布幅に対応する長さの塗布ヘッドを、基板とのクリアランス(間隙)を数10〜数100ミクロンに保持しながら、基板と塗布ヘッドとに一定の相対速度を持たせて、所定の吐出量でスリットから供給される塗布液を基板に塗布する塗布方式である。このスリット塗布は、(1)スピン塗布に比して液ロスが少ない、(2)塗布液の飛びちりがないため洗浄処理が軽減される、(3)飛び散った液成分の塗布膜への再混入がない、(4)回転の立ち上げ停止時間がないのでタクトタイムが短縮化できる、(5)大型の基板への塗布が容易である、等の利点を有する。これらの利点から、スリット塗布は大型画面液晶表示装置用のカラーフィルタの作製に好適であり、塗布液量の削減にとっても有利な塗布方式として期待されている。
尚、上記作製方法における塗布は、通常の塗布装置等によって行うことができるが、本発明においては、既に説明した、スリット状ノズルを用いた塗布装置(スリットコータ)によって行うことが好ましい。スリットコータの好ましい具体例等は、前記と同様である。
本発明の微粒子ないしその分散物を用いたカラーフィルタは、コントラストに優れることが好ましい。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
以下、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。なお、以下の実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。
<顔料分散液の調製>
[合成例]
(モノマーMM−1の合成)
2−チオバルビツール酸45.28部、水酸化ナトリウム13.82部をジメチルスルホキシド200部に溶解させ、25℃に加熱する。これにクロロメチルスチレン57.53部を滴下し、55℃でさらに5時間加熱攪拌を行う。加熱攪拌後、この反応液にメタノール150部、蒸留水150部を加えて1時間攪拌し、続いてこの溶液を蒸留水2000部に攪拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、モノマーMM−1を80.1部得た。
(重合体P−1の合成)
下記のモノマー溶液を窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温し30分攪拌する。続いて、下記の開始剤溶液を上記の液に添加し、2時間78℃で加熱攪拌する。加熱攪拌後、さらに下記開始剤溶液を添加し、78℃にて2時間加熱攪拌する操作を計2度繰り返す。最後の2時間攪拌後、引き続いて90度で2時間加熱攪拌する。得られた反応液をイソプロパノール1500部に攪拌しながら注ぎ、生じた沈殿を濾取して、加熱乾燥させることでグラフト重合体P−1を得た。
(モノマー溶液)
・モノマーMM−1 4.0部
・スチレン 15.0部
・メタクリル酸 2.0部
・1−メチル−2−ピロリドン 46.67部
(開始剤溶液)
・2.2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル
(和光純薬(株)製V−601) 0.8部
・1−メチル−2−ピロリドン 2部
合成例1で示したモノマー組成及び開始剤組成を表1に変更した以外は合成例1と同様にして、重合体P−2〜P−9、P−c1、P−c2を得た。
(高分子化合物BのP−10の合成)
500mL三口フラスコに、ε−カプロラクトン160.0g、2−エチル−1−ヘキサノール18.3gを導入し、窒素を吹き込みながら、攪拌溶解した。モノブチル錫オキシド0.1gを加え、100℃に加熱した。8時間後、ガスクロマトグラフィーにて、原料が消失したのを確認後、80℃まで冷却した。2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール0.1gを添加した後、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート22.2gを添加した。5時間後、H NMRにて原料が消失したのを確認後、室温まで冷却し、固体状の単量体(A−5)を200g得た。単量体(A−5)であることは、H NMR、IR、質量分析により確認した。
得られた単量体(A−5)は、前述の一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体の好ましい具体例として挙げられたものである。
単量体(A−5)37.5g、単量体M−11 5.0g、メタクリル酸7.5g、ドデシルメルカプタン1.3、及び1−メトキシ−2−プロパノール116.7gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温した。これに、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製の「V−65」)を0.3g加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行った。2時間後、更にV−65を0.3g加え、3時加熱攪拌の後、高分子化合物の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物の質量平均分子量をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、1.8万であった。下記表には、高分子化合物を合成する際に用いられる単量体とその仕込み量、合成された重合体の質量平均分子量、及び酸価について示す。
(高分子化合物CのP−11の合成)
M−11 14.0g、上記A−5と同様の方法で合成したA−3 105.0g、アクリル酸 21.0g、n−ドデシルメルカプタン3.1gおよびメトキシプロピレングリコール327gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(和光純薬(株)製、V−601)を1.2g加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行った。その後、さらにV−601を1.2g加えて2時間過熱攪拌した後、90℃に昇温して2時加熱攪拌した後、重合体2の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、2.3万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、117mgKOH/g、1H−NMRから求めた繰り返し単位組成比(質量比)は、20/65/15であった。
[表P] ()内は質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
No. 構成単位の組成 質量平均分子量 酸価(mgKOH/g)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
P−10 A-5(75) M-11(10) MAA(15) 21,000 98
P−11 M-11(10) A-3(75) AA(15) 23,000 117
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
AA :アクリル酸
MAA:メタクリル酸
(P−12)
特開2007−262378の実施例2−5で用いられた高分子分散剤C−18(下記化学式参照)を合成しP−12として用いた。
(実施例I、比較例I)
[実施例1]
N−メチルピロリドン(和光純薬社製)1000gに、顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50gを分散させ、ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%メタノール溶液52.3gを滴下して顔料溶液を調整した。N−メチルピロリドン(和光純薬社製)90gに、グラフト重合体P−1を30.0g溶解させ、ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%メタノール溶液17.8gを滴下してポリマー溶液01を調整した。上記顔料溶液とポリマー溶液01を混合し、顔料・ポリマー溶液01を作製した。この顔料・ポリマー溶液01を、ビスコメイトVM−10A−L(商品名、CBCマテリアルズ社製)を用いて粘土を測定した結果、顔料ポリマー溶液01の液温が24.5℃の時の粘度が14.3mPa・sであった。これとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸(和光純薬社製)19gを含有したイオン交換水1000mlを用意した。
ここで、5℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した貧溶媒の塩酸含有イオン交換水1000mlに、顔料・ポリマー溶液01をNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて、流路径1.1mmの送液配管から流速400ml/minで100ml注入することにより、有機顔料粒子を形成し、顔料ナノ粒子分散液01を調製した。
上記の手順で調製した、顔料ナノ粒子分散液01を(株)コクサン社製H−112型遠心濾過機および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布を用いて5000rpmで90分濃縮し、得られた顔料ナノ粒子濃縮ペースト01を回収した。
上記顔料ナノ粒子濃縮ペースト01をオーブンにより100℃で8時間乾燥することにより有機顔料粉末01(固形分濃度96質量%)(有機顔料含有率59質量%)を得た。
前記有機顔料粉末01を用い、下記組成の顔料分散組成物を調製した。
前記有機顔料粉末01 14.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 46.3g
上記組成の顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散し、顔料分散組成物01を得た。
[実施例2〜9]
実施例1の顔料分散組成物において、グラフト重合体をP−2〜P−9にする以外は実施例1と同様にして顔料分散組成物02〜09を調製した。
[実施例10〜12]
実施例1の顔料分散組成物において、グラフト重合体P−1の添加量を30.0gから10.0gに減らし、前記有機顔料粉末をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に再分散させる際に重合体P−10〜12を20.0g添加する以外は実施例1と同様にして、顔料分散組成物10〜12をそれぞれ調製した。
[比較例1]
1,3ブチレングリコールジアセテート液中に塩化ナトリウム、顔料C.I.ピグメントレッド254(商品名Irgaphor Red BT−CF チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)の紛体10g、グラフト重合体P−1を6.0gを双腕型ニーダーに仕込み、80℃で15時間混練した。混練後80℃の1%塩酸水溶液700質量部に取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕した後、粉砕物1gに対しプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.4gを添加混合した。上記顔料組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散し、顔料分散組成物c1を得た。
[比較例2]
実施例1の顔料分散組成物において、グラフト重合体をP−c1にする以外は実施例1と同様にして顔料分散組成物c2を調整した。
[比較例3]
N−メチルピロリドン(和光純薬社製)1000gに、顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50g、およびP−c2を30.0gを分散させ、ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%メタノール溶液52.3gを滴下して顔料溶液を調整した。これとは別に貧溶媒として、イオン交換水1000mlを用意した。
ここで、5℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した貧溶媒の塩酸含有イオン交換水1000mlに、上記顔料溶液をNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて、流路径1.1mmの送液配管から流速400ml/minで100ml注入することにより、有機顔料粒子を形成し、顔料ナノ粒子分散液c3を調製した。次いで顔料ナノ粒子分散液c3に5%硫酸水溶液を滴下してpHを4.0に調節して顔料ナノ粒子凝集液を調整した。
上記の手順で調製した、顔料ナノ粒子凝集液を(株)コクサン社製H−112型遠心濾過機および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布を用いて5000rpmで90分濃縮し、得られた顔料ナノ粒子濃縮ペーストを回収した。
上記顔料ナノ粒子濃縮ペーストをオーブンにより100℃で8時間乾燥することにより有機顔料粉末c3(固形分濃度94質量%)(有機顔料含有率58質量%)を得た。
前記有機顔料粉末c3を用い、下記組成の顔料分散組成物c3を調製した。
前記有機顔料粉末c3 14.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 46.3g
上記組成の顔料分散組成物c3をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散し、顔料分散組成物c3を得た。
[比較例4]
実施例1の顔料分散組成物において、グラフト重合体をポリスチレンにする以外は実施例1と同様にして顔料分散組成物c4を調整した。
[比較例5]
実施例1の顔料分散組成物において、グラフト重合体をポリビニルピロリドン(K−30、商品名、和光純薬社製)にする以外は実施例1と同様にして顔料分散組成物c5を調整した。
(埋包評価)
分散剤が粒子内に埋包されているかの確認は、固体13C CP/MAS NMR測定(ブルカー・バイオスピン社製AVANCE DSX−300分光器と4 mmΦ HFX CP/MAS probe)を用いて行った。固体13C CP/MAS NMR測定は以下の通りに行った。
前記顔料分散組成物を、それぞれメンブレンフィルター(MILLIPORE製 カットサイズ:0.05μm)を用いて吸引ろ過し、濃縮ペーストを作製する。前記濃縮ペーストを固体13C CP/MAS NMRの試料台にセットし、Goldman−shenパルス系列に基づき、1H90°パルス幅4.5μs、初期の溶媒選択のための待ち時間200μs、CPコンタクトタイム1msとし、スピン拡散時間を0.5〜200msまで変化させて測定を行った。積算回数は4096回、繰り返し時間は試料の1Hスピン−格子緩和時間の5倍を目安に3〜10秒とした。マジックアングルスピニングの回転数は、試料により8000〜10000Hzとした。
各々のスピン拡散時間におけるスペクトルをピーク分離によって顔料及び分散剤のピーク面積を算出し、一次元拡散モデルを仮定した拡散距離Lは、スピン拡散時間tmに対して、
の関係にあることを用いて、溶媒分子からの距離に対するピーク面積のプロットから粒子構造を判断した。この評価により分散剤の埋包が認められたときには「○」、認められないときは「×」とし、結果を表2に示した。
(分散剤取込率評価)
前記顔料分散組成物を、メンブレンフィルター(MILLIPORE製 カットサイズ:0.05μm)で吸引ろ過し、得られたろ過後粉末1を再度以下条件で分散し、前記同様の方法で吸引ろ過して得られたろ過後粉末2のポリマー量と添加ポリマー量から分散剤取込率を下式により見積もった
(分散剤取込率)=(ろ過後粉末含有ポリマー量)/(添加ポリマー量)×100
その結果を表2に示す(表中の単位は質量%である。)。
(分散剤埋包率評価)
前記ろ過後粉末2のポリマー量と添加顔料量(添加した顔料が全量析出して微粒子化したとみなした。)から分散剤埋包率を下式により見積もった
(分散剤埋包率)=(ろ過後粉末2含有ポリマー量)/(添加顔料量)×100
その結果を表2に示す(表中の単位は質量%である。)。
(CR・経時CR評価)
前記顔料分散組成物を、それぞれガラス基板上に100℃で3分間乾燥させた後の塗布膜の厚みが1.4μmになるように塗布し、サンプルを作製した。さらに上記顔料分散組成物を分散30日後に再度上記と同様の方法で塗布し、下記のようにしてコントラストを測定した。この経時コントラストと分散直後に塗布・測定したコントラストから経時コントラスト変化率を下式により算出した
(経時変化率)=(初期コントラスト)/(経時コントラスト)
その結果を表2に示す。
[コントラスト測定]
得られた顔料分散組成物試料を、それぞれガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518)の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/m2になるように設定した。
[平均粒径および単分散度(粒子サイズ分布)の測定]
得られた分散液ないし組成物中の顔料微粒子の粒径(粒子サイズ)として体積平均粒径(Mv)を、5質量%に希釈した分散液試料を用い、日機装社製ナノトラックUPA−EX150(商品名)により測定した。また同様にして測定した数平均粒(Mn)から、粒子サイズ分布を表す単分散度(Mv/Mn)を算出した。
本発明の顔料微粒子を含有する分散組成物01〜12は、比較試料c1〜c5に比べて高い分散剤埋包率及び分散剤取込率を示しており、顔料に対して少ない分散剤の使用量において高いコントラストと、経時による分散剤の脱離を抑えて安定な分散状態を維持し、低い経時によるコントラスト変化率を達成している。
(実施例II、比較例II)
<液晶表示装置の作製>
1.インクジェット法によるCF作製とそれを用いた液晶表示装置
〔感光性転写材料の作製〕
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記処方P1から成る中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、下記表3に記載の組成よりなる遮光性を有する樹脂組成物K1を塗布、乾燥させ、該仮支持体の上に乾燥膜厚が15μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.4μmの遮光性を有する樹脂層を設け、保護フイルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。
こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)と遮光性を有する樹脂層とが一体となった感光性樹脂転写材料を作製し、サンプル名を感光性樹脂転写材料K1とした。
*熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1
・メタノール 11.1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.4質量部
・メチルエチルケトン 52.4質量部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジル
メタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)
=55/11.7/4.5/28.8、分子量=10万、Tg≒70℃)
5.83質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)
=63/37、分子量=1万、Tg≒100℃) 3.6質量部
・2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]
プロパン(新中村化学工業(株)社製) 9.1質量部
・界面活性剤1 0.54質量部
<界面活性剤1>(メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製))・C6F13CH2CH2OCOCH=CH2:40質量部と
H(OCH(CH3)CH2)7OCOCH=CH2:55質量部と
H(OCH2CH2)7OCOCH=CH2:5質量部と
共重合体(分子量3万) 30質量部
・メチルエチルケトン 70質量部
<中間層(酸素遮断層)用塗布液処方:P1>
・ポリビニルアルコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32.2質量部
(PVA205(鹸化率=88%);(株)クラレ社製)
・ポリビニルピロリドン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14.9質量部
(PVP、K−30;アイエスピー・ジャパン株式会社製)
・メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・429質量部
・蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・524質量部
[表3]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散物1 25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.0質量部
メチルエチルケトン 53質量部
バインダー1 9.1質量部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002質量部
DPHA液 4.2質量部
重合開始剤A 0.16質量部
界面活性剤1 0.044質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
遮光性を有する樹脂組成物K1は、まずK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、バインダー1、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、重合開始剤A(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン)、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌することによって得られた。
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック
(デグッサ社製、商品名Special Black250) 13.1質量部
・前記顔料分散剤A 0.65質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53質量部
<バインダー1>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量4万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、
日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 76質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24質量部
〔遮光性を有する隔壁の形成〕
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記感光性樹脂転写材料K1の保護フイルムを剥離後、ラミネータ(株式会社日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量100mJ/cm2でパターン露光した。マスク形状は格子状で、画素と遮光性を有する隔壁との境界線に該当する部分における、遮光性を有する隔壁側に凸な角の曲率半径は0.6μmとした。
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン性界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD1、富士写真フイルム株式会社製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断層)を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(0.06モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム株式会社製)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し遮光性を有する樹脂層を現像しパターニング離画壁(遮光性を有する隔壁パターン)を得た。
引き続き洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン性界面活性剤・消泡剤・安定剤含有、商品名「T−SD1(富士写真フイルム株式会社製)」)を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、遮光性を有する隔壁を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cm2の光でポスト露光後、240℃、50分熱処理した。
〔プラズマ撥水化処理〕
その後、下記方法によりプラズマ撥水化処理を行った。
遮光性を有する隔壁を形成した前記基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にてプラズマ撥水化処理を行った。
使用ガス :CF4
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー :50W
処理時間 :30sec
〔カラーフィルタ用インクジェットインクの調製〕
特開2002−201387号公報の実施例1を参考に以下の処方でカラーフィルタ用インクジェットインクを調製した。
<Rインク1>
顔料分散組成物 01 51質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 2.0質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 4.5質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]
−2−モンフォリノプロペン−1−オン 2.0質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
29.9dyn/cm 44質量部
<Rインク2〜12、Rインクc1〜c5>
Rインク1の顔料分散組成物01に代え02〜12、c1〜c5をそれぞれ用いた以外同様にして、Rインク2〜12、Rインクc1〜c5を調製した。
<Gインク1>
G顔料(C.I.P.B.36) 6.0質量部
高分子分散剤(AVECIA社製 ソルスパース24000) 2.0質量部
バインダー(ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体) 4.6質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 2.0質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5.0質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−
モンフォリノプロペン−1−オン 2.0質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
29.9dyn/cm 80質量部
<Bインク1>
G顔料(C.I.P.B.15.6) 6.0質量部
高分子分散剤(AVECIA社製 ソルスパース24000) 2.0質量部
バインダー(ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体) 4.6質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 2.0質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5.0質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−
モンフォリノプロペン−1−オン 2.0質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
29.9dyn/cm 80質量部
上記表3の各成分の混合については、先ず、顔料及び高分子分散剤を溶剤の一部に投入、混合し、3本ロールとビーズミルを用いて攪拌して顔料分散液を得た。一方、他の配合成分を溶剤の残部に投入、攪拌して溶解分散し、バインダー溶液を得た。そして、顔料分散液または顔料分散組成物を少量ずつバインダー溶液中に添加しながらディソルバーで十分に攪拌し、カラーフィルタ用インクジェットインクを調製した。
上記で得られたRインクを、それぞれガラス基板上に100℃で10分間乾燥させた後の塗布膜の厚みが2.0μmになるように塗布し、サンプルを作製した。作製したサンプルのコントラストを実施例1と同様に測定した。さらに、上記Rインクを分散30日後に再度上記と同様の方法で塗布し、コントラストを測定した。この経時コントラストと作製直後に塗布・測定したコントラストから経時変化率を算出した。その時の結果を表4に示す。
本発明のインクジェットインク(Rインク1〜12)は、比較試料Rインクc1〜c5に比べて高い初期コントラストと経時での低いコントラスト変化率を両立していることが分かる。
(実施例III、比較例III)
〔画素形成〕
上記で得られたRインク1、Gインク1、Bインク1をピエゾ方式のヘッドを用いて、まず以下のようにして遮光性隔壁に囲まれた凹部にインクを打滴した。そして下記のようにして、本発明のカラーフィルタを得た。
ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、基板上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
ヘッドおよびインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。
ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、一滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例ではヘッドの下1mmの位置でガラス基板が搬送されながらヘッドより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。
R、G、Bそれぞれ、顔料の塗設量が、1.1g/m2、1.8g/m2、0.75g/m2となるように、搬送速度、駆動周波数を制御し、所望するR、G、Bに対応する凹部にR、G、Bのインクを打滴した。
打滴されたインクは、露光部に搬送され、紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光される。UV−LEDは日亜化学社製NCCU033(商品名)を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。着弾後、100度で10分間乾燥させ、その後露光した。
距離および搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。搬送速度により露光エネルギーを調整した。
これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40D(商品名)を用い、波長220nmから400nmの間を積分した値を用いた。
打滴後のガラス基板を230℃オーブン中で30分ベークすることで、遮光性隔壁、各画素共に完全に硬化させた。
[液晶表示装置の作製]
上記作製したカラーフィルタ(カラーフィルタIII01とする)を用いて液晶表示装置を作製し表示特性の評価を行った。
(ITO電極の形成)
カラーフィルタが形成されたガラス基板をスパッタ装置に入れて、100℃で1300Å厚さのITO(インヂウム錫酸化物)を全面真空蒸着した後、240℃で90分間アニールしてITOを結晶化し、ITO透明電極を形成した。
(スペーサの形成)
特開2004−240335号公報の[実施例1]に記載のスペーサ形成方法と同様の方法で、上記で作製したITO透明電極上にスペーサを形成した。
(液晶配向制御用突起の形成)
下記のポジ型感光性樹脂層用塗布液を用いて、前記スペーサを形成したITO透明電極上に液晶配向制御用突起を形成した。
但し、露光、現像、及び、ベーク工程は、以下の方法を用いた。
所定のフォトマスクが感光性樹脂層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティ露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cm2でプロキシミティ露光した。
続いて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間基板に噴霧しながら現像した。こうして、感光性樹脂層の不要部(露光部)を現像除去することにより、カラーフィルタ側基板上に、所望の形状にパターニングされた感光性樹脂層よりなる液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を得た。
次いで、該液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を230℃下で30分ベークすることにより、液晶表示装置用基板上に硬化された液晶配向制御用突起を形成した。
<ポジ型感光性樹脂層用塗布液処方>
・ポジ型レジスト液(富士フイルムエレクトロニクス
マテリアルズ(株)社製FH−2413F) : 53.3質量部
・メチルエチルケトン : 46.7質量部
・メガファックF−780F(大日本インキ化学工業(株)社製):0.04質量部
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた液晶表示装置用基板上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置にエポキシ樹脂のシール剤を印刷すると共に、MVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板を熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ社製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置III01とした。
カラーフィルタIII01から液晶表示装置III01を作製する際に用いたRインク1を、それぞれRインク2〜12、c1〜c5に変更する以外は上記カラーフィルタおよび上記液晶表示装置と全く同様にカラーフィルタIII02〜III12、IIIc1〜IIIc5および液晶表示装置III0〜III12、IIIc1〜IIIc5を作製し、同様に評価した。
<インクおよび液晶表示装置の評価>
〔表示特性の評価〕
液晶表示装置から液晶表示装置用基板上を取り出し、実施例1と同様にコントラストを測定し、液晶表示装置の表示特性を評価した。
本発明のカラーフィルタ用インクジェットインクを用いて作製したカラーフィルタ及び液晶表示装置は、高いコントラストを示した。さらに、本発明の液晶表示装置は黒表示時に漏れ光が少ないしまった黒色を表現でき、その結果高い描写力を示した。
2.着色感光性樹脂組成物によるCF作製とそれを用いた液晶表示装置
(実施例IV、比較例IV)
顔料分散組成物01を下記表5の組成となるよう他の成分と混合して、カラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物01を調製した。
[表5]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料分散組成物01 44.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.6質量部
メチルエチルケトン 37質量部
バインダー2 0.7質量部
DPHA液 3.8質量部
2−トリクロロメチル−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤2 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=38/25/37モル比のランダム共重合物、分子量4万) 27質量部・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
<界面活性剤2>
・下記構造物1 30質量部・メチルエチルケトン 70質量部
顔料分散組成物01に代え、顔料分散組成物02〜12,c1〜c5をそれぞれ用いた以外、上記と同様にして、カラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物02〜12,c1〜c5をそれぞれ調製した。
ガラス基板上に前記カラーフィルタ作製用の着色感光性組成物を、スピンコーターを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥させて、約2μmの厚みの膜を形成した。作製したサンプルのコントラストを実施例1と同様に測定した。さらに、上記着色感光性組成物を分散30日後に再度上記と同様の方法で塗布し、コントラストを測定した。この経時コントラストと作製直後に塗布・測定したコントラストから経時変化率を算出した。その時の結果を表6に示す。結果を、下記表6に示した。
表6に示すように、本発明のカラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物01〜12は、比較試料c1〜c5に比べて高いコントラストと低いコントラスト変化率とを両立して達成している。
(実施例V、比較例V)
[カラーフィルタの作製(スリット状ノズルを用いた塗布による作製)]
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、下記表7に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物K2を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.4μmの感光性樹脂層K2を得た。なお、着色感光性樹脂組成物K2の調製手順は、先の樹脂組成物K1の手順と同様である。
[表7]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散物2 25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.0質量部
メチルエチルケトン 53質量部
バインダー3 9.1質量部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002質量部
DPHA液 4.2質量部
重合開始剤A 0.16質量部
界面活性剤1 0.044質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
超高圧水銀灯を有すプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量300mJ/cm2でパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)にて23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、ブラック(K)の画像Kを得た。引き続き、220℃で30分間熱処理した。
<K顔料分散物2>
・カーボンブラック(商品名:Nipex 35、デグサ ジャパン(株)社製)
13.1質量部
・分散剤(下記化合物2J) 0.65質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53質量部
<バインダー3>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
〔レッド(R)画素の形成〕
前記画像Kを形成した基板に、下記表8に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物R1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Rを形成した。該感光性樹脂層R1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K2のときと同様である。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m2) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m2) 0.80
C.I.P.R.177塗布量(g/m2) 0.20
[表8]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料分散組成物01 40質量部
R顔料分散物2(CIPR177) 4.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.6質量部
メチルエチルケトン 37質量部
バインダー2 0.7質量部
DPHA液 3.8質量部
2−トリクロロメチル−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤2 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<R顔料分散組成物01>
・実施例1の顔料分散組成物01(C.I.P.R.254) 11質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 68.2質量部
<R顔料分散物2>
・C.I.P.R.177(商品名:Cromophtal Red A2B、
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 18質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 12質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70質量部
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記画像Kと画素Rを形成した基板に、下記表9に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物G1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Gを形成した。該感光性樹脂層G1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K2のときと同様である。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m2) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m2) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m2) 0.58
[表9]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散物1(CIPG36) 28質量部
Y顔料分散物1(CIPY150) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29質量部
メチルエチルケトン 26質量部
シクロヘキサノン 1.3質量部
バインダー3 2.5質量部
DPHA液 3.5質量部
2−トリクロロメチル−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤2 0.07質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散物1は、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)社製の「商品名:GT−2」を用いた。Y顔料分散物1は、御国色素(株)社製の「商品名:CFイエローEX3393」を用いた。
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記画像K、画素R及び画素Gを形成した基板に、下記表10に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物B1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Bを形成し、目的のカラーフィルタAを得た。該感光性樹脂層B1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。該感光性樹脂層R1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K2のときと同様である。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m2) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m2) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m2) 0.045
[表10]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散物1(CIPB15:6) 8.6質量部
B顔料分散物2(CIPB15:6+CIPV23) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 28質量部
メチルエチルケトン 26質量部
バインダー4 17質量部
DPHA液 4.0質量部
2−トリクロロメチル−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール 0.17質量部
フェノチアジン 0.02質量部
界面活性剤2 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散物1は、御国色素(株)社製の「商品名:CFブル−EX3357」を用いた。B顔料分散物2は、御国色素(株)社製の「商品名:CFブル−EX3383」を用いた。
<バインダー4>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=36/22/42モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
R顔料分散物01に用いた顔料組成物01に代えて、それぞれ、顔料組成物02〜12,c1〜c5を用いてR顔料分散物02〜12,c1〜c5を調製した。そして上記のカラーフィルタV01の作製方法に対し、R顔料分散物01に代えてR顔料分散物V02〜V12,Vc1〜Vc5をそれぞれ用いた以外同様にして、カラーフィルタV02〜V12,Vc1〜Vc5を作製した。
[液晶表示装置の作製及び評価]
上記の各カラーフィルタを用いて液晶表示装置を作製し表示特性の評価を行った。
(ITO電極の形成)
カラーフィルタをスパッタ装置に入れて、100℃で1300Å厚さのITO(インヂウム錫酸化物)を全面真空蒸着した後、240℃で90分間アニールしてITOを結晶化し、ITO透明電極を形成した。
(スペーサの形成)
特開2004−240335号公報の[実施例1]に記載のスペーサ形成方法と同様の方法で、上記で作製したITO透明電極上にスペーサを形成した。
(液晶配向制御用突起の形成)
下記のポジ型感光性樹脂層用塗布液を用いて、前記スペーサを形成したITO透明電極上に液晶配向制御用突起を形成した。
但し、露光、現像、及び、ベーク工程は、以下の方法を用いた。
所定のフォトマスクが感光性樹脂層の表面から100μmの距離となるようにプロキシミティ露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)を配置し、該フォトマスクを介して超高圧水銀灯により照射エネルギー150mJ/cm2でプロキシミティ露光した。
続いて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、シャワー式現像装置にて33℃で30秒間基板に噴霧しながら現像した。こうして、感光性樹脂層の不要部(露光部)を現像除去することにより、カラーフィルタ側基板上に、所望の形状にパターニングされた感光性樹脂層よりなる液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を得た。
次いで、該液晶配向制御用突起が形成された液晶表示装置用基板を230℃下で30分ベークすることにより、液晶表示装置用基板上に硬化された液晶配向制御用突起を形成した。
<ポジ型感光性樹脂層用塗布液処方>
・ポジ型レジスト液(富士フイルムエレクトロニクス
マテリアルズ(株)社製FH−2413F) : 53.3質量部
・メチルエチルケトン : 46.7質量部
・メガファックF−780F(大日本インキ化学工業(株)社製):0.04質量部
(液晶表示装置の作成)
上記で得られた液晶表示装置用基板上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置にエポキシ樹脂のシール剤を印刷すると共に、MVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板を熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ社製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置V01とした。
[液晶表示装置の作製及び評価]
液晶表示装置V01から液晶表示装置用基板上を取り出し、実施例1と同様にコントラストを測定した。
カラーフィルタV01を、それぞれカラーフィルタV02〜V12,Vc1〜c5に変更する以外は全く同様に液晶表示装置V02〜V12,Vc1〜c5を作製し、同様に評価した。
本発明のカラーフィルタ用インクジェットインクを用いて作製したカラーフィルタ及び液晶表示装置は、高いコントラストを示した。さらに、黒表示時に漏れ光が少ないしまった黒色を表現でき、その結果高い描写力を示した。
(実施例VI、比較例VI)
(実施例10)
実施例1における顔料分散組成物01の調製におけるピグメントレッド254に替えてピグメントグリーン36、ピグメントグリーン58、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー79、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー185をそれぞれ用いることにより、顔料分散組成物O、P、Q、R、S、Tを調製した。
前記顔料分散組成物O、P、Q、R、S、Tについて実施例1と同様に分散剤埋包率及び分散剤取込率を算定した結果、いずれの顔料分散組成物も5%以上の分散剤埋包率と10%以上の分散剤取込率を示した。また実施例1と同様にしてコントラスト、経時コントラスト変化を測定したところ、いずれの分散組成物も高いコントラスと低い経時コントラスト変化率とを示した。
一方、顔料分散組成物O、P、Q、R、S、Tに用いた顔料種を用い、比較例Iと同様にして比較のための顔料組成物を作製したが、上記実施例のものに比べて低いコントラストであり、しかも経時においてそのコントラストが大幅に低下した。
(実施例11)
<顔料分散組成物Uの調製>
[顔料分散液の調製]
メタンスルホン酸(和光純薬社製)1000mlに、C.I.ピグメントバイオレット23(Hostaperm Violet RL−NF クラリアント社製)50g及びグラフト重合体P−1を30.0gを添加して、顔料溶液Uを調製した。この顔料溶液Tを、ビスコメイトVM−10A−L(商品名、CBCマテリアルズ社製)を用いて粘度を測定した結果、顔料溶液Tの液温が45.0℃の時の粘度が86.2mPa・sであった。これとは別に貧溶媒として、水1600mlを用意した。
ここで、25℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した貧溶媒の水1600mlに、顔料溶液MをNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて、流路径0.25mmの送液配管から流速70ml/minで100ml注入することにより、有機顔料粒子を形成し、顔料分散液Uを調製した。なお、この条件のレイノルズ数は92である。
上記方法で調製した、顔料ナノ粒子分散液を(株)コクサン社製H−122型遠心濾過機および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布を用いて3000rpmで90分濃縮し、得られた顔料ナノ粒子濃縮ペーストを回収した。
前記顔料ナノ粒子濃縮ペーストをホットプレート上で100℃で溶媒除去することにより有機顔料粉末U(固形分濃度96質量%)を得た。
前記顔料粉末を用い、下記組成の顔料分散組成物Uを調製した。
有機顔料粉末U 8.8g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 36.7g
上記組成の顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで1時間分散した。
前記顔料分散組成物Uについて実施例1と同様に分散剤埋包率及び分散剤取込率を算定した結果、いずれの顔料分散組成物も5%以上の分散剤埋包率と10%以上の分散剤取込率を示した。また実施例1と同様にしてコントラスト、経時コントラスト変化を測定したところ、いずれの分散組成物も高いコントラスと低い経時コントラスト変化率とを示した。
一方、顔料分散組成物Uに用いた顔料種を用い、比較例Iと同様にして比較のための顔料組成物を作製したが、上記実施例のものに比べて低いコントラストであり、しかも経時においてそのコントラストが大幅に低下した。