JP2010092546A - 磁気ヘッドおよびヘッドスライダ - Google Patents

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Abstract

【課題】コア幅の増大に基づき読み出し感度を向上させることができる磁気ヘッドおよびヘッドスライダを提供する。
【解決手段】磁気ヘッド27は読み出し素子41および書き込み素子47を備える。読み出し素子41は、記録トラックのダウントラック方向にコア幅を規定する磁気抵抗効果膜44を有する。書き込み素子47は、ダウントラック方向に読み出し素子41に隣接して配置される。こうした磁気ヘッド27によれば、記録トラックのダウントラック方向にコア幅が規定されることから、磁気抵抗効果膜44では従来に比べて大きなコア幅が確保される。コア幅の増大に応じて磁気抵抗効果膜44ではこれまで以上に大きな断面積が確保される。その結果、記憶媒体で従来と同様の面記録密度が確保される場合に、磁気抵抗効果膜44の磁気抵抗変化率(MR比)は従来に比べて増大する。読み出し素子41の読み出し感度はこれまで以上に向上する。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)といった記憶装置に組み込まれる磁気ヘッドに関する。
例えばヘッドスライダには電磁変換素子が組み込まれる。電磁変換素子の読み出しヘッドは例えばトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)膜を備える。トンネル接合磁気抵抗効果膜は、外部磁化の作用に拘わらず磁化方向を固定する固定磁化層と、外部磁化の作用に応じて磁化方向の変化を許容するフリー層とを備える。固定磁化層およびフリー層の間にはトンネルバリア層が挟み込まれる。固定磁化層の磁化方向とフリー層の磁化方向との相対角度に応じてトンネル接合磁気抵抗効果膜の磁気抵抗は変化する。磁気抵抗の変化に基づき磁気ディスクから情報が読み出される。
特開2005−317188号公報
媒体対向面から後方に向かって規定されるトンネル接合磁気抵抗効果膜の深さは既定値に設定される。記録密度の向上にあたってトンネル接合磁気抵抗効果膜では、記録トラックのトラック幅が狭められると、記録トラックのクロストラック方向に規定されるコア幅が狭められることが望まれる。コア幅が狭められると、面内方向に規定されるトンネル接合磁気抵抗効果膜の面積は減少する。所望の抵抗値の確保にあたって面積の減少に応じてトンネルバリア層の膜厚は減少しなければならない。しかしながら、膜厚の減少は磁気抵抗変化率(MR比)の低下を招く。読み出し感度は低下してしまう。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、コア幅の増大に基づき読み出し感度を向上させることができる磁気ヘッドおよびヘッドスライダを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、磁気ヘッドは、記録トラックのダウントラック方向にコア幅を規定する磁気抵抗効果膜を有する読み出し素子と、前記ダウントラック方向に前記読み出し素子に隣接して配置される書き込み素子とを備えることを特徴とする。
こうした磁気ヘッドは、記録トラックのダウントラック方向にコア幅を規定する。その結果、磁気抵抗効果膜では従来に比べて大きなコア幅が確保される。コア幅の増大に応じて磁気抵抗効果膜ではこれまで以上に大きな断面積が確保される。その結果、記憶媒体で従来と同様の面記録密度が確保される場合に、磁気抵抗効果膜の磁気抵抗変化率(MR比)は従来に比べて増大する。読み出し素子の読み出し感度はこれまで以上に向上する。
以上のように、磁気ヘッドはコア幅の増大に基づき読み出し感度を向上させることができる。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の駆動軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば3600rpmや4200rpm、5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。すなわち、磁気ディスク14上の記録磁性膜では磁化容易軸は磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に設定される。
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAl(アルミニウム)から成型されればよい。
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが貼り付けられる。ヘッドサスペンション21の先端でフレキシャにはジンバルが区画される。ジンバルに磁気ヘッドスライダすなわち浮上ヘッドスライダ22が搭載される。ジンバルの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対して姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22には磁気ヘッドすなわち電磁変換素子が搭載される。
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このボイスコイルモータ23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジアーム19が支軸18回りで揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成される基材すなわちスライダ本体25を備える。スライダ本体25の側面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜26が積層される。この素子内蔵膜26に電磁変換素子27が組み込まれる。電磁変換素子27の詳細は後述される。
スライダ本体25は例えばAl−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成される。素子内蔵膜26は例えばAl(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成される。スライダ本体25は媒体対向面28で磁気ディスク14に向き合う。媒体対向面28には平坦なベース面29すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体25の前端から後端に向かって媒体対向面28には気流31が作用する。
媒体対向面28には、前述の気流31の上流側すなわち空気流入側でベース面29から立ち上がる1筋のフロントレール32が形成される。フロントレール32はベース面29の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、媒体対向面28には、気流の下流側すなわち空気流出側でベース面29から立ち上がる左右1対のリアサイドレール33、33が形成される。一方のリアサイドレール33は素子内蔵膜26に至る。
フロントレール32、リアサイドレール33、33の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)34、35、35が規定される。空気軸受け面34、35の空気流入端は段差でフロントレール32およびリアサイドレール33の頂上面にそれぞれ接続される。気流31が媒体対向面28に受け止められると、段差の働きで空気軸受け面34、35には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール32の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
空気軸受け面35の空気流出側で一方のリアサイドレール33には電磁変換素子27が埋め込まれる。電磁変換素子27は例えば読み出し素子と書き込み素子とを備える。読み出し素子にはトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。トンネル接合磁気抵抗効果素子では磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。書き込み素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。電磁変換素子27は素子内蔵膜26の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。
ただし、空気軸受け面35で素子内蔵膜26の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜26の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が用いられればよい。
図3に示されるように、読み出し素子41では、左右1対の導電層すなわち電極層4243にトンネル接合磁気抵抗効果膜44が挟み込まれる。電極層42、43は浮上ヘッドスライダ22の前後方向に延びる。電極層42、43は例えばFeN(窒化鉄)やNiFe(ニッケル鉄)といった高透磁率材料から形成されればよい。各電極層42、43の膜厚は例えば2.0μm〜3.0μmに設定される。こうして電極層42、43はシールド層として機能することができる。その結果、電極層42、43の間隔は磁気ディスク14上で記録トラックのトラック幅方向すなわちクロストラック方向に磁気記録の分解能を決定する。後述されるように、トンネル接合磁気抵抗効果膜44は浮上ヘッドスライダ22の前後方向すなわち磁気ディスク14の記録トラックのダウントラック方向にコア幅を規定する。
同時に、電極層42、43の間には1対の磁区制御膜45が配置される。トンネル接合磁気抵抗効果膜44は媒体対向面28に沿って磁区制御膜45同士の間に配置される。磁区制御膜45は例えばCoCrPt(コバルトクロム白金)といった硬磁性材料から形成される。磁区制御膜45は媒体対向面28に沿って一方向に磁化を確立する。磁区制御膜45と電極層42との間、および、磁区制御膜45とトンネル接合磁気抵抗効果膜44との間には絶縁膜46が挟み込まれる。絶縁膜46は例えばAlから形成される。絶縁膜46の膜厚は例えば3.0nm〜10.0nmの範囲で設定されればよい。磁区制御膜45は電極層42およびトンネル接合磁気抵抗効果膜44から絶縁される。したがって、たとえ磁区制御膜45が導電性を有していても、電極層42、43同士の間ではトンネル接合磁気抵抗効果膜44のみで導通が確立される。
書き込み素子47すなわち単磁極ヘッドは、リアサイドレール33の表面で露出する主磁極48および補助磁極49を備える。主磁極48および補助磁極49は、読み出し素子41の電極層42、43同士の間に配置される。こうして電極層42、43は主磁極48に隣接するサイドシールドとして機能する。主磁極48および補助磁極49は例えばFeN(窒化鉄)やNiFe(ニッケル鉄)といった磁性材料から形成されればよい。図4を併せて参照し、補助磁極49の後端は主磁極48に磁性連結片51で接続される。主磁極48周りで磁気コイルすなわち薄膜コイルパターン52が形成される。こうして主磁極48、補助磁極49および磁性連結片51は、薄膜コイルパターン52の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。
図5はトンネル接合磁気抵抗効果膜44の構造を概略的に示す。このトンネル接合磁気抵抗効果膜44は、電極層42上に広がる膜厚3.0nmの下地層55を備える。下地層55は、電極層42上に順番に積層される膜厚1.0nmのTa(タンタル)層および膜厚2.0nmのRu(ルテニウム)層を備える。Ta層ではアモルファス構造が確立される。下地層55の表面には膜厚5.0nmのピニング層56が重ね合わせられる。ピニング層56は反強磁性層から形成される。ピニング層56は例えばIrMn(イリジウムマンガン)層から形成される。
ピニング層56の表面には磁化固定層すなわちピンド層57が重ね合わせられる。ピンド層57は、膜厚1.5nmのCoFe(コバルト鉄)層から形成される。ピンド層57の表面には膜厚0.5nmの非磁性中間層58が重ね合わせられる。非磁性中間層58はRuRh(ルテニウムロジウム)層から形成される。ピンド層57およびピニング層56の間には交換結合が確立される。この交換結合の働きでピンド層57の磁化は所定の方向に固定される。
非磁性層中間層58の表面には膜厚1.6nmのリファレンス層59が重ね合わせられる。リファレンス層59はCoFeB(コバルト鉄ボロン)層から形成される。リファレンス層59はピンド層57および非磁性中間層58と協働で積層フェリ構造を確立する。したがって、ピンド層57とリファレンス層59との間には交換結合が確立される。この交換結合の働きでリファレンス層59の磁化方向とピンド層57の磁化方向との間には反平行の関係が確立される。
リファレンス層59の表面には膜厚1.0nmのトンネルバリア層61が重ね合わせられる。トンネルバリア層61はMgO(酸化マグネシウム)層から形成される。トンネルバリア層61の表面には膜厚1.8nmの自由磁化層すなわちフリー層62が重ね合わせられる。フリー層62はCoFeB層といった強磁性層から形成される。フリー層61は、外部磁化の作用に応じて磁化方向の変化を許容する。フリー層62の表面には膜厚13.0nmのキャップ層63が重ね合わせられる。キャップ層63は、フリー層62上に順番に積層されるTa層およびRu層を備える。
キャップ層63には前述の電極層43が重ね合わせられる。電極層42および電極層43の間には前述の磁区制御膜45が配置される。磁区制御膜45は媒体対向面28に沿ってトンネル接合磁気抵抗効果膜44を挟み込む。磁区制御膜45は例えば硬磁性材料から形成される。ここでは、磁区制御膜45は例えばCoCrPt(コバルトクロム白金)合金から形成される。磁区制御膜45には所定の方向に磁化が確立される。磁化の働きで媒体対向面28に沿ってフリー層62を横切る磁界は確立される。フリー層62では磁化の向きは揃えられる。
図6は磁気ディスク14の表面を示す。磁気ディスク14はディスクリートトラック媒体を構成する。この磁気ディスク14の表裏面には磁気ディスク14の周方向すなわちダウントラック方向に沿って複数筋の記録トラック65、65…が延びる。記録トラック65は同心円状に形成される。各記録トラック65では等間隔でダウントラック方向に複数の磁性ドット66が配列される。各磁性ドット66では、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に上向き(垂直方向に外向き)の磁化または下向き(垂直方向に内向き)の磁化が確立される。こうして各磁性ドット66に磁気情報が記録される。各記録トラック65同士は分離トラック67で隔てられる。分離トラック67は非磁性体から形成される。分離トラック67は、記録トラック65と同様に、ダウントラック方向に沿って同心円状に延びる。
磁気情報の書き込みや読み出しにあたって電磁変換素子27は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。読み出し素子41のトンネル接合磁気抵抗効果膜44のコア幅はダウントラック方向に規定される。コア幅は、媒体対向面28でトンネル接合磁気抵抗効果膜44の積層方向に直交する方向に規定される幅で特定される。ここでは、トンネル接合磁気抵抗効果膜44のコア幅は、ダウントラック方向に規定される各磁性ドット66の長さの1.8倍程度に設定される。積層方向に規定されるトンネル接合磁気抵抗効果素子44の長さすなわちギャップ長は、記録トラック65のトラック幅の0.8倍程度に設定される。媒体対向面28からトンネル接合磁気抵抗効果素子44の奥行きはコア幅の1.2倍程度に設定される。
いま、書き込み素子47すなわち単磁極ヘッドが磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、主磁極48から漏れ出る磁界は磁性ドット66に作用する。磁性ドット66には、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に磁界が誘導される。磁界は磁気ディスク14の裏打ち層から補助磁極49に循環する。1個の磁性ドット66ごとに上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして情報が記録される。その一方で、読み出し素子41が磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、磁性ドット66から漏れ出る磁界はトンネル接合磁気抵抗効果膜44に作用する。トンネル接合磁気抵抗効果膜44では磁界の向きに応じて抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
以上のようなHDD11では、読み出し素子41のトンネル接合磁気抵抗効果膜44は記録トラック65のダウントラック方向にコア幅を規定する。その結果、トンネル接合磁気抵抗効果膜44では従来に比べて大きなコア幅が確保されることができる。コア幅の増大に応じてこれまで以上に大きな面積のトンネルバリア層61が形成される。その結果、磁気ディスク14で従来と同様の面記録密度が確保される場合に、本発明に係るトンネル接合磁気抵抗硬膜44の磁気抵抗変化率(MR比)は従来に比べて増大する。読み出し素子41の読み出し感度はこれまで以上に向上する。
いま、磁気ディスクで例えば700[Gbit/in]の面記録密度が実現される場面を想定する。この面記録密度の実現にあたって、磁気ディスクの表面で規定される1個の磁性ドットの表面積は920[nm]に設定される必要がある。本実施形態に係る具体例のHDD11では、図7の表に示されるように、記録トラックのダウントラック方向に規定される1個の磁性ドットの長さは例えば30.7[nm]に設定される。同時に、記録トラックすなわち磁性ドットのトラック幅は例えば30.0[nm]に設定される。こうしてダウントラック方向に規定される磁性ドットの長さとトラック幅との比は1対1程度に設定される。その結果、826.8[kbit/in]の線記録密度および846.3[ktrack/in]の記録トラック密度が実現される。
このとき、トンネル接合磁気抵抗効果膜のギャップ長はトラック幅の0.8倍程度すなわち25[nm]程度に設定される。本実施形態では、記録トラックのトラック幅方向にトンネル接合磁気抵抗効果膜のギャップ長が規定される。トンネル接合磁気抵抗効果膜はトラック幅方向に電極層すなわちシールド層に挟み込まれる。こうしたシールド層の働きでトラック幅方向に隣接する記録トラックからの影響は回避される。その結果、ギャップ長はトラック幅の0.8倍といった具合にトラック幅に対して比較的に大きな比率で規定されることができる。その一方で、コア幅は磁性ドットの長さの1.8倍程度すなわち55.3[nm]程度に設定される。媒体対向面からトンネル接合磁気抵抗効果膜の奥行きはコア幅の1.2倍程度すなわち65[nm]程度に設定される。したがって、トンネル接合磁気抵抗効果膜では、トンネルバリア層では3500[nm]程度の面積が確保される。
その一方で、従来技術に係る比較例のHDDでは、一般に、ダウントラック方向に規定される磁性ドットの長さと記録トラックのトラック幅との比は1対5程度に設定される。したがって、前述の面記録密度の実現にあたって、図7の表に示されるように、記録トラックのダウントラック方向に規定される1個の磁性ドットの長さは13.6[nm]に設定される。このとき、記録トラックすなわち磁性ドットのトラック幅は67.9[nm]に設定される。こうして1871[kbit/in]の線記録密度および374[ktrack/in]の記録トラック密度が実現される。
このとき、トンネル接合磁気抵抗効果膜のギャップ長は25[nm]に設定される。一般に、従来技術では、トンネル接合磁気抵抗効果膜のコア幅はトラック幅方向に規定される。したがって、隣接する記録トラックからの影響に基づきトンネル接合磁気抵抗効果膜のコア幅方向に外部磁場耐性が低下する。その結果、コア幅はトラック幅の0.65倍すなわち44[nm]程度に設定される。すなわち、従来技術では本実施形態よりも小さいコア幅が規定される。その一方で、媒体対向面からトンネル接合磁気抵抗効果膜の奥行きはコア幅の1.2倍程度すなわち53[nm]に設定される。したがって、従来技術に係るトンネル接合磁気抵抗効果膜では、トンネルバリア層の面積は2300[nm]程度に設定される。
以上のことから、本実施形態に係る電磁変換素子では、従来技術に係る電磁変換素子に比べてトンネルバリア層の面積は飛躍的に増大する。図7の表に示されるように、トンネル接合磁気抵抗効果膜の電気抵抗率(RA)の最小値は増大する。その結果、トンネル接合磁気抵抗効果膜では膜厚の大きいトンネルバリア層が用いられることができる。例えば図8に示されるように、電気抵抗率(RA)の最小値の増大に応じてトンネル接合磁気抵抗効果膜では磁気抵抗変化率(MR比)は増大する。読み出し素子の読み出し感度は向上する。こうした読み出し素子は記録密度の向上に大いに貢献することができる。なお、図7の表に示されるように、500[Gbit/in]の面記録密度が実現される場合にも同様の結果が得られる。
こうした電気抵抗率(RA)の最小値の増大に応じて、例えば図9に示されるように、トンネル接合磁気抵抗効果膜では耐電圧が増大する。ここでは、従来技術に比べて50%程度の増大が観察される。その結果、トンネル接合磁気抵抗効果膜の静電破壊耐性が向上する。同時に、電気抵抗率(RA)の最小値の増大に応じて、例えば図10に示されるように、トンネル接合磁気抵抗効果膜ではフリー層とリファレンス層との相互作用は低減される。ここでは、従来技術に比べて40%程度の低減が観察される。その結果、トンネル接合磁気抵抗効果膜では磁気ディスクから作用する外部磁化に対する応答が向上する。こうして読み出し感度は向上する。
次に電磁変換素子27の製造方法を説明する。まず、Al−TiC基板は用意される。Al−TiC基板の表面には第1Al膜が形成される。第1Al膜上では個々の浮上ヘッドスライダ22ごとに読み出し素子41や書き込み素子47が形成される。読み出し素子41や書き込み素子47の形成後、Al−TiC基板の表面には第2Al膜が形成される。第1Al膜や第2Al膜は素子内臓膜26を形成する。その後、Al−TiC基板から個々の浮上ヘッドスライダ22は切り出される。
読み出し素子41および書き込み素子47の形成にあたって、図11に示されるように、第1Al膜71上には規定の位置で第1電極層72が形成される。形成にあたって例えばスパッタリングが用いられる。第1電極層72は所定の形状に象られる。その後、第1Al膜71上には非磁性の絶縁膜73が形成される。絶縁膜73の表面には化学機械研磨(CMP)に基づき平坦化処理が施される。図12に示されるように、第1電極層72の書き込み素子47側には切り欠きが形成される。図13に示されるように、絶縁膜73上には所定のパターンでレジスト74が形成される。
図14に示されるように、スパッタリングに基づき配線層75および第2電極層76が形成される。形成後、絶縁膜73上からレジスト74が除去される。図15に示されるように、絶縁膜73上には非磁性の絶縁膜77が形成される。絶縁膜77の表面には化学機械研磨(CMP)に基づき平坦化処理が施される。その後、図16に示されるように、レジストの形成、スパッタリングおよび平坦化処理に基づき配線層78、第3電極層79および絶縁膜81の形成が繰り返される。このとき、書き込み素子47側で第2電極層76上には絶縁膜81が覆い被さる。
その後、読み出し素子41側では、第3電極層79上に下地層55、ピニング層56、ピンド層57、非磁性中間層58、リファレンス層59、トンネルバリア層61、フリー層62およびキャップ層63の素材膜の積層体が形成される。積層体には例えば270℃の温度で4時間にわたって加熱処理が施される。このとき、積層体には磁界が作用する。その後、フォトリソグラフィ技術に基づき積層体からトンネル接合磁気抵抗効果膜44は削り出される。その後、絶縁膜46および磁区制御膜45が形成される。こうして、図17に示されるように、トンネル接合磁気抵抗効果膜44が形成される。トンネル接合磁気抵抗効果膜44には絶縁膜82が覆い被さる。
図18に示されるように、絶縁膜82上には所定のパターンでレジスト83が形成される。レジスト83の空隙は書き込み素子47の主磁極48の輪郭を象る。レジスト83に基づき絶縁膜82にエッチングが実施される。こうして絶縁膜82には主磁極48の輪郭を象る溝84が形成される。例えばスパッタリングに基づき溝84内に磁性体が埋め込まれる。こうして主磁極48が形成される。同様に、レジストの形成、エッチング、磁性体の埋め込みおよびレジストの除去が繰り返される。その結果、補助磁極49および磁性連結片51が形成される。
その後、主磁極48および補助磁極49上は絶縁膜85が形成される。絶縁膜85には化学機械研磨(CMP)に基づき平坦化処理が施される。その結果、図19に示されるように、主磁極48および補助磁極49が形成される。トンネル接合磁気抵抗効果膜44は露出する。図20に示されるように、絶縁膜82上には電極層43および配線層86が形成される。形成にあたって前述と同様の形成方法が実施されればよい。配線層86の形成に基づき書き込み素子47側では薄膜コイルパターン52が形成される。その結果、図21に示されるように、読み出し素子41および書き込み素子47が形成される。
本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。 本発明の一具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。 媒体対向面から観察される電磁変換素子を概略的に示す電磁変換素子の正面図である。 図3の4−4線に沿った断面図である。 トンネル接合磁気抵抗効果膜の構造を概略的に示す拡大正面図である。 磁気ディスクの構造を概略的に示す部分拡大平面図である。 磁気ディスクおよび電磁変換素子の数値を示す表である。 磁気抵抗変化率(MR比)と電気抵抗(RA)との関係を示すグラフである。 耐電圧と電気抵抗率(RA)との関係を示すグラフである。 フリー層およびリファレンス層の間の相互作用と電気抵抗(RA)との関係を示すグラフである。 第1Al膜上に第1電極層を形成する工程を概略的に示す断面図である。 第1Al膜上に第1電極層を形成する工程を概略的に示す平面図である。 絶縁膜上にレジストを形成する工程を概略的に示す平面図である。 配線層および第2電極層を形成する工程を概略的に示す断面図である。 配線層および第2電極層を形成する工程を概略的に示す断面図である。 配線層および第3電極層を形成する工程を概略的に示す平面図である。 トンネル接合磁気抵抗効果膜を形成する工程を概略的に示す断面図である。 主磁極を形成する工程を概略的に示す断面図である。 補助磁極を形成する工程を概略的に示す断面図である。 配線層および電極層を形成する工程を概略的に示す平面図である。 配線層および電極層を形成する工程を概略的に示す平面図である。
符号の説明
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、25 スライダ本体、26 非磁性層(素子内蔵膜)、27 磁気ヘッド(電磁変換素子)、41 読み出し素子、42 シールド層、43 シールド層、44 磁気抵抗効果膜(トンネル接合磁気抵抗効果膜)、47 書き込み素子、48 主磁極、65 記録トラック。

Claims (5)

  1. 記録トラックのダウントラック方向にコア幅を規定する磁気抵抗効果膜を有する読み出し素子と、
    前記ダウントラック方向に前記読み出し素子に隣接して配置される書き込み素子とを備えることを特徴とする磁気ヘッド。
  2. 請求項1に記載の磁気ヘッドにおいて、ダウントラック方向に延びて前記磁気抵抗効果膜の両端に接続され、前記記録トラックのクロストラック方向に前記書き込み素子の主磁極を挟み込む1対のシールド層を備えることを特徴とする磁気ヘッド。
  3. 記録トラックを規定する記憶媒体と、
    前記記憶媒体の表面に向き合わせられる磁気ヘッドとを備え、
    前記磁気ヘッドは、前記記録トラックのダウントラック方向にコア幅を規定する磁気抵抗効果膜を有する読み出し素子と、前記ダウントラック方向に前記読み出し素子に隣接して配置される書き込み素子とを備えることを特徴とする記憶装置。
  4. スライダ本体と、
    前記スライダ本体の側面に積層されて前記スライダ本体の前後方向に延びる非磁性層と、
    前記非磁性層に埋め込まれて、前記スライダ本体の前後方向にコア幅を規定する磁気抵抗効果膜を有する読み出し素子と、
    前記スライダ本体の前後方向に前記読み出し素子に隣接して配置される書き込み素子とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
  5. 請求項4に記載のヘッドスライダにおいて、前記スライダ本体の前後方向に延びて前記磁気抵抗効果膜の両端に接続されると同時に、前記スライダ本体の前後方向に前記書き込み素子の主磁極を挟み込む1対のシールド層を備えることを特徴とするヘッドスライダ。
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