JP2010090980A - 車両用変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両が走行抵抗を受けた場合に、加速感を向上させること。
【解決手段】エンジンの動力が無段変速機を経由して車輪に伝達される構成であり、前記無段変速機の変速比を制御することによりエンジン回転数を変化させる制御をおこなう車両用変速制御装置において、前記エンジンに対する要求パワーを増大させる要求の有無を判断する加速要求判断手段と、前記要求パワーを増大させる要求があると判断された場合に、車両の走行抵抗が相対的に大きいか否かを判断する走行抵抗判断手段と、前記走行抵抗が相対的に大きいと判断され、かつ前記要求パワーを増大させる要求が継続されている場合に、その時間の経過に比例して前記エンジン回転数を上昇させるように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段とを備えていることを特徴とする車両用変速制御装置。
【選択図】図1
【解決手段】エンジンの動力が無段変速機を経由して車輪に伝達される構成であり、前記無段変速機の変速比を制御することによりエンジン回転数を変化させる制御をおこなう車両用変速制御装置において、前記エンジンに対する要求パワーを増大させる要求の有無を判断する加速要求判断手段と、前記要求パワーを増大させる要求があると判断された場合に、車両の走行抵抗が相対的に大きいか否かを判断する走行抵抗判断手段と、前記走行抵抗が相対的に大きいと判断され、かつ前記要求パワーを増大させる要求が継続されている場合に、その時間の経過に比例して前記エンジン回転数を上昇させるように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段とを備えていることを特徴とする車両用変速制御装置。
【選択図】図1
Description
この発明は、エンジンの出力する回転数を変速させる変速制御装置に関するものである。
従来、車両の加速時において、アクセル操作量に基づいて目標車速もしくは目標エンジン回転数Neを算出することが行なわれている。その一例が下記の特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された無段変速機の制御装置は、その目標車速もしくは目標エンジン回転数Neを達成させる場合に、目標車速に対してエンジン回転数Neを直線的に上昇させるように無段変速機の変速比が制御されるように構成されている。また、同時に、エンジンの燃費効率が最適となるように構成されている。
特許文献1に記載された無段変速機の制御装置は、目標車速に達するまで直線的に変速させるので、加速中および加速終了後の変速に起因する違和感を低減できるとされている。しかしながら、車両の走行抵抗が相対的に大きい場合、エンジン回転数Neの上昇が相対的に小さくなり、運転者に違和感を与える虞がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、車両の走行抵抗が増大する場合に、エンジン回転数を上昇させることのできる車両用変速制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジンの動力が無段変速機を経由して車輪に伝達される構成であり、前記無段変速機の変速比を制御することによりエンジン回転数を変化させる制御をおこなう車両用変速制御装置において、前記エンジンに対する要求パワーを増大させる要求の有無を判断する加速要求判断手段と、車両の走行抵抗が相対的に大きいか否かを判断する走行抵抗判断手段と、前記走行抵抗判断手段によって前記車両の走行抵抗が相対的に大きいと判断され、かつ前記要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている場合に、前記要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている時間の経過にともない前記エンジン回転数を上昇させるように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記走行抵抗判断手段は、前記加速要求判断手段によって要求パワーを増大させる要求があると判断された場合に、前記車両の走行抵抗が相対的に大きいか否かを判断する手段を含み、前記変速比制御手段は、前記要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている時間の経過に比例して前記エンジン回転数を上昇させるように前記無段変速機の変速比を制御する手段を含むことを特徴とする車両用変速制御装置である。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記変速比制御手段により前記エンジン回転数を上昇させる場合に、前記エンジンに対して増大させる分の前記要求パワーに到達するまでは、前記エンジン回転数の増大とともにエンジントルクを増大させるトルク増大手段を備えていることを特徴とする車両用変速制御装置である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記変速比制御手段により前記エンジン回転数を上昇させる場合に、前記エンジンに対して増大させる分の前記要求パワーに到達するまでは、前記エンジンの燃費効率が最適となるように前記エンジン回転数およびエンジントルクを制御するエンジン出力制御手段を備えていることを特徴とする車両用変速制御装置である。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記走行抵抗判断手段は、登坂路の勾配に基づいて前記走行抵抗を判断する手段を含むことを特徴とする車両用変速制御装置である。
請求項1の発明によれば、走行抵抗が相対的に大きく、かつエンジンに対する要求パワーを増大させる要求が継続されている場合に、要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている時間の経過にともないエンジン回転数が上昇される。すなわち、エンジンに対する要求パワーを増大させる要求が継続されている時間の経過が長い場合は、その時間の経過が短い場合に比較して、エンジン回転数が高く上昇される。そしてエンジンは燃焼(爆発)によって動力を出力する構成であるため、エンジン回転数の上昇が継続されると、エンジン音および振動が高まり、これにより擬似的な加速感を得ることができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、走行抵抗が相対的に大きく、かつエンジンに対する要求パワーを増大させる要求が継続されている場合に、その時間の経過に比例してエンジン回転数が上昇される。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、エンジン回転数を上昇させる場合に、エンジンに対して増大させる分の要求パワーに到達するまでは、エンジン回転数の増大とともにエンジントルクを増大させることができるので、要求パワーに到達するまでのパワー不足を補うことができる。
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明による効果と同様の効果に加えて、エンジン回転数を上昇させる場合に、エンジンに対して増大させる分の要求パワーに到達するまでは、エンジンの燃費効率が最適となるように、エンジン回転数およびエンジントルクが制御されるので、燃料消費量を最小限に抑えることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明による効果と同様の効果に加えて、走行抵抗には登坂路の勾配に起因する走行抵抗が含まれるので、登坂路において走行抵抗が増大した場合に、エンジンに対する要求パワーを増大させる要求が継続されている時間の経過に比例してエンジン回転数を上昇させることができる。
つぎに、この発明を図に示す具体例に基づいて説明する。まず、この発明に係る車両用変速制御装置について説明する。この発明は、エンジンの出力する動力が無段階に変速可能な無段変速機を経由して車輪に伝達される車両に適用することができる。その車両の構成の一例を図8に模式的に示してある。図8に示す車両Veにおいては、エンジン1と車輪2との間の動力伝達経路に、トルクコンバータや前後進切換機構などの伝動機構3、ベルト式無段変速機4などが設けられている。
このエンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を主体とするものであって、アクセル操作などの出力操作に基づいて出力トルクが制御されるように構成されている。また、この発明は、エンジン1と電動機とを備えたハイブリッド車両にも適用することができる。下記に記す実施例では、主としてエンジン1が用いられている場合について説明する。
なお、例えば、駆動力源として電動機を用いることもできる。電動機としては、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有するモータ・ジェネレータを用いることが可能である。
また、無段変速機4として、ベルト式無段変速機4以外にトロイダル型無段変速機や遊星歯車機構を用いた無段変速機4を用いてもよい。遊星歯車機構を用いた無段変速機4の一例としては、入力要素にエンジン1が連結され、出力要素に車輪が連結され、反力要素に電動機が連結されて構成される。このような無段変速機4では、電動機の回転数を制御することにより、入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御することができる。
また、トルクコンバータや前後進切替機構などの伝動機構3は、エンジン1とベルト式無段変速機4との間の動力伝達経路に設けられている。トルクコンバータは、流体の運動エネルギにより動力を伝達する装置である。前後進切替機構は、エンジン1の出力軸5の回転方向と、プライマリシャフト6の回転方向との対応関係を切り換える機能を有している。また、前後進切換機構は出力軸5とプライマリシャフト6とを、動力の伝達可能な状態、または動力伝達不可能な状態に切り換える機能を有している。
無段変速機4は車輪2と伝動機構3との間の動力伝達経路に設けられている。ここに示す例は、駆動プーリ7と従動プーリ8とにベルト9を巻掛け、各プーリ7,8に対するベルト9の巻掛け半径(実効半径)を変化させることにより、変速比を連続的に変化させるように構成されたベルト式無段変速機4である。
その駆動プーリ7は、互いに対向する面をテーパ面とした固定シーブ7aとその固定シーブ7aに対して接近・離隔するように軸線方向に前後動する可動シーブ7bとを備え、それらのテーパ面によって、ベルト9を巻掛けるためのV字状の巻掛け溝が形成されている。また、可動シープ7bをその軸線方向に移動させるための油圧アクチュエータ7cが設けられている。この油圧アクチュエータ7cは、可動シーブ7bをピストンとした油圧シリンダタイプのものであり、圧油が供給されることにより可動シーブ7bが固定シーブ7a側に移動し、溝幅が狭くなるように、すなわちベルト9の巻掛け半径が増大するように構成されている。
一方、従動プーリ8は、上記の駆動プーリ7と同様に、互いに対向する面をテーパ面とした固定シーブ8aとその固定シーブ8aに対して接近・離隔するように軸線方向に前後動する可動シーブ8bとを備え、それらのテーパ面によって、ベルト9を巻掛けるためのV字状の巻掛け溝が形成されている。また、可動シープ8bをその軸線方向に押圧するための油圧アクチュエータ8cが設けられている。この油圧アクチュエータ8cは、可動シーブ8bをピストンとした油圧シリンダタイプのものであり、油圧が供給されることにより可動シーブ8bが固定シーブ8a側に押されるように、すなわちベルト9を挟み付ける挟圧力が増大するように構成されている。
ベルト式無段変速機4の油圧アクチュエータ7c、8cおよび伝動機構3を制御する油圧制御装置10が設けられている。さらに、エンジン1、伝動機構3、ベルト式無段変速機4、油圧制御装置10を制御するコントローラとしての電子制御装置11が設けられている。電子制御装置11は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータから構成されている。
この電子制御装置11には、例えばエンジン回転数センサ、アクセル開度センサ12、ブレーキセンサ、スロットルポジションセンサ、シフトポジションセンサ、プライマリシャフト6の回転数センサ、路面勾配センサ13、加速度センサ、車速センサ14などの各種センサ(図示せず)からの信号が入力される。
また、電子制御装置11には各種のデータが記憶されている。記憶されているデータとしては、例えばエンジン制御マップなどが挙げられる。このエンジン制御マップには、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeをパラメータとして、最適燃費線が設定されている。また、変速比制御マップは、車速、アクセル開度などに基づいて、ベルト式無段変速機4の変速比を設定するマップである。
駆動力源としてエンジン1が用いられている場合は、車速およびアクセル開度に基づいて要求駆動力および要求パワーが算出される。また、要求パワーの算出結果に基づいてエンジン1の運転状態を決定する場合に、ベルト式無段変速機4の変速比を制御することにより、エンジン1の運転状態を最適燃費線に近づける制御を実行することが可能である。
電子制御装置11に入力された各種の信号は、電子制御装置11に記憶されている各種のデータに基づいて演算処理される。その演算結果は、例えばエンジン1を制御する信号、ベルト式無段変速機4を制御する信号、トルクコンバータや前後進切換機構などの伝動機構3を制御する信号、油圧制御装置10を制御する信号などとして出力される。
つぎに、前述した構成を対象としたこの発明に係る車両用変速制御装置による変速制御の一例を図1にフローチャートを用いて示してある。図1に示す制御は、例えば車両Veに対する走行抵抗が平坦路に比して相対的に大きい登坂路であることを判定した場合に、加速要求がされている間は車速に関係なくエンジン回転数Neを加速要求が継続されている時間が経過することともなって、あるいはその時間の経過に比例して上昇させるように制御される。ここで、走行抵抗が相対的に大きいとは、例えば平坦路に比して路面勾配が大きい登坂路である場合、あるいは予め定めた路面勾配に比して路面勾配が大きい場合をいう。また、下記に記す実施例では、加速要求が継続されている時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させる場合について説明する。
まず、車速およびアクセル開度に基づいて車両Veにおける要求駆動力を求め、その要求駆動力から、エンジン1に対する要求パワーP1が算出される(ステップS1)。この処理をおこなうために、車速およびアクセル開度に基づいて車両Veの要求駆動力を求めるマップ(図示せず)が、電子制御装置11に記憶されている。この要求駆動力を求めるマップは、同じ車速であればアクセル開度が増大するほど、相対的に高い要求駆動力が求められる特性を有している。また、このこの要求駆動力からエンジン1の要求パワーを求めるマップ(図示せず)が、電子制御装置11に記憶されている。このエンジン1の要求パワーの算出に用いるマップは、車両Veに対する要求駆動力が高いほど、相対的に高い要求パワーが求められる特性を有している。このようにして求めた要求パワーを用いてエンジン出力を制御するマップが電子制御装置11に記憶されている。そのマップの一例を後述する図2に示してある。
ついで、加速要求があるか否かが判断される(ステップS2)。すなわち、アクセル開度が所定値以上に増大し、現在の要求パワーP1からより高い要求パワーP2に増大させる要求があるか否かにより判断される。このステップS2は、この発明における加速要求判断手段に相当する。なお、加速要求の有無の判断には、足で操作されるアクセルペダルの操作量の他に、手で操作されるレバー、ノブなどの操作量に基づいて加速要求を判断することもできる。
アクセル開度が所定値以上に増大しており、ステップS2において肯定的に判断された場合には、勾配センサ13の出力信号が処理されて路面勾配が算出される(ステップS3)。なお、路面の勾配は、車両Veに対する加速要求から算出される目標加速度と、加速度センサから得られる実加速度との差から求めてもよい。また、車両Veにナビゲーションシステムが搭載されている場合には、そのナビゲーションシステムに記憶されている地図情報から路面の勾配を参照してもよい。
ステップS3において算出された路面勾配に基づいて、車両Veの走行する路面が登坂路であるか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4は、この発明における走行抵抗判断手段に相当する。ここで、車両Veの走行に抵抗を与える走行抵抗の一例として路面勾配をパラメータとして使用しているが、例えば、車両Veの走行に対向する向かい風や悪路などによる減速を走行抵抗として用いることもできる。
車両Veの走行する路面が登坂路であることにより肯定的に判断された場合には、増大されたアクセル開度が一定に保たれている時間に比例して、エンジン回転数Neを上昇させるようにベルト式無段変速機4の変速比がダウンシフトされる(ステップS5)。また、同時に要求パワーP1から高い要求パワーP2に達するまでは、エンジン回転数Neの上昇とともにエンジントルクTeを増大させるように電子スロットルバルブの開度が制御される。このステップS5は、この発明における変速比制御手段に相当する。このエンジントルクTeを増大させる電子スロットルバルブの開度の制御が、この発明におけるトルク増大手段に相当する。
ついで、加速要求が終了されたか否かが判断される(ステップS6)。アクセル開度が減少し、ステップS6において肯定的に判断された場合には、このルーチンを終了する。また、ステップS6において、アクセル開度が一定に保たれていることにより否定的に判断された場合には、ステップS5に戻り、要求パワーP1を増大させる要求が継続されている時間に比例して、エンジン回転数Neを上昇させる。
なお、ステップS2およびステップS4において、否定的に判断された場合には、通常変速制御に移行(ステップS7)し、このルーチンを終了する。また、ステップS6において、肯定的に判断された場合に、ステップS7に進むルーチンを採用してもよい。
ステップS2において否定的に判断された場合におこなわれる通常制御では、エンジントルクTeおよびエンジン回転数Neは変更されない。すなわち、無段変速機4の変速比は変更されない。これに対して、ステップS4において否定的に判断された場合におこなわれる通常制御では、エンジン1の運転点を要求パワーP1から要求パワーP2に変更するので、エンジン1の運転点が図2に示す最適燃費線2bに沿って変化するように、制御される。また、エンジン1の運転点が要求パワーP2上に到達した後は、エンジン1の運転点は最適燃費線2b上に維持されるように制御される。
前述した要求パワーP1を増大させる要求が継続されている時間に比例して、エンジン回転数Neを上昇させ、また要求パワーP2に到達するまでの間にエンジントルクTeを増大させた場合のエンジン1の運転状態をマップを用いて模式的に図2に示してある。
この図2には、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeをパラメータとして、最適燃費線2bおよび等燃費線2aが線示されている。最適燃費線2bは、エンジン出力、すなわちエンジン回転数NeおよびエンジントルクTeをこの線と一致させると、エンジン1の燃費効率が最適となるものとして予め実験的に求めた値である。また、複数の等燃費線2aは、それぞれ楕円形状に示されており、相対的に内側に示された等燃費線2aであるほど、エンジン1の燃費効率が相対的に高いことを意味する。また、図2に示すマップ上には、エンジン1の要求パワーが大きさの異なる要求パワー毎に、便宜上線分で示されている。図2では、要求パワー線が相対的に右上方に移行するほど、要求パワーが相対的に高いことを意味する。各要求パワーを示す線分は、同じ線分上であればエンジン回転数NeおよびエンジントルクTeが異なっていても、等パワーとなる特性を有している。そして、エンジン1の実パワーを要求パワーに近づけるように、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeを制御する場合に、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeを最適燃費線2bに沿って制御することができる。
図2における矢印f1は、T1時点における車両Veの要求パワーP1を増大させる要求、すなわち加速要求があった場合に、車両Veに対する要求パワーがP2に到達するまでのエンジン1の運転経路を示している。要求パワーP2に到達するまでの間は、エンジン回転数Neの上昇とともにエンジントルクTeが増大し、T2時点において要求パワーP2に到達した後は、要求パワーP2を維持しながら、加速要求が継続される時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させるように変速比が制御される。
この図2を参照して、前述したステップS5について説明すると、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeを示す運転点が、最適燃費線と要求パワーとの交点A1にある状態から、要求パワーP2へと運転点を変更する。交点A1からエンジン回転数Neを上昇させてエンジン1の運転点を要求パワーP2に変更する過程では、エンジントルクTeが最適燃費線に相当するエンジントルクTeよりも高い値で変化するようにエンジントルクTeを制御する。すなわち、エンジン回転数Neの上昇量に対するエンジントルクTeの上昇量は、エンジン1の運転点を最適燃費線上に一致させて変更する場合に比べて、このステップS5においておこなうエンジン1の運転点の制御の方が大きい。
そして、エンジン1の運転点が要求パワーP2に到達した後は、エンジン1の運転点を要求パワーP2を示す線分上において変化させることにより、エンジン回転数Neを上昇させる制御を、ステップS6において肯定的に判断されるまで継続する。このため、加速要求がある時間継続されると、エンジン回転数Neが最適燃費線におけるエンジン回転数Neよりも低下することもある。ステップS5の制御において、エンジン回転数Neの制御は、無段変速機4の変速比をダウンシフトすることにより達成される。
なお、図2において、横軸はエンジン回転数Neを示し、縦軸はエンジントルクTeを示している。またP1およびP2は、エンジン1の等パワー線を示し、2aはエンジン1の等燃費線を示し、2bはエンジン1の最適燃費線を示している。
前述したベルト式無段変速機の制御をおこなった場合のタイムチャートを図3に模式的に示してある。すなわち、登坂路などにおいて、アクセル開度が増大して要求パワーP1を増大させる要求があったT1時点よりも後に、増大したアクセル開度が一定に保たれている時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させる。また、T1時点以降は、エンジントルクTeも増大する。なお、T2時点以降は、エンジン1は等パワー線に沿って運転され、また、エンジン回転数Neは時間に比例して増大されるので、エンジントルクTeは低下する。
なお、通常制御の例を図3に破断線を用いて示してある。通常制御では、アクセル開度が増大すると、エンジン回転数Neがステップ的に変化し、それ以後は一定である。
ここで、ベルト式無段変速機4の変速比を制御することによってエンジン回転数Neを制御する概念について説明すると、エンジン1の運転状態と、ベルト式無段変速機4の変速比とを協調制御するものである。そのエンジン1とベルト式無段変速機4との協調制御の一例をブロック図を用いて模式的に図4に示してある。
図4において、例えば、前述したアクセル開度センサ12や車速センサ14などの出力信号が電子制御装置11によって演算処理され、車両Veにおける要求駆動力が求められる。その要求駆動力からエンジン1の要求パワーが算出され、その要求パワーを最小の燃費で出力する目標エンジン回転数Neが、図2に示すマップを使用して求められる。そして、実エンジン回転数Neを燃費の良好な目標エンジン回転数Neに近づけるように、ベルト式無段変速機4の変速比が制御される。この制御と並行して、実エンジントルクTeを目標エンジントルクTeに近づけるように、エンジン1の電子スロットルバルブの開度などが制御される。このように、ベルト式無段変速機4の変速比を制御することにより、エンジン1の運転状態を制御することができる。
この発明に係る車両用変速制御装置の変速制御によれば、目標エンジン回転数Neと目標エンジントルクTeとを求めるパラメータに、路面の勾配情報を追加することによって、登坂路などの走行抵抗が増大した場合に、加速要求が継続されている時間に比例して、エンジン回転数Neを上昇させるように構成されている。また、要求パワーP2に到達した後は、車速に関係なくその加速要求が継続される時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させるので、走行抵抗が大きく車速の増大が小さい場合であっても、エンジン音や振動により擬似的な加速感を得ることができる。また、エンジン1の運転点が要求パワーP1から要求パワーP2に到達するまでの間は、エンジン回転数Neの上昇とともにエンジントルクTeが増大し、要求パワーP2に到達した後は、要求パワーP2を維持しながら、加速要求が継続される時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させるように構成されている。そのため、加速要求によって要求パワーP2に到達するまでは、エンジントルクTeの増大によって、パワー不足を補うことができる。
この発明に係る車両用変速制御装置による変速制御の他の例を図5にフローチャートを用いて示してある。図5において、図1と同じ処理をおこなうステップについては、図1と同じステップ番号を付してその説明を省略する。
ステップS4において、肯定的に判断された場合には、要求パワーP1を増大させる要求が継続されている時間に比例して、エンジン回転数Neを上昇させるようにベルト式無段変速機4の変速比が制御される(ステップS8)。また、同時に要求パワーP1から要求パワーP2に達するまでは、エンジン回転数Neの上昇にともなうエンジン1の燃費効率が最適となるようにベルト式無段変速機4の変速比が制御される。このステップS8は、この発明における変速比制御手段に相当する。このエンジン1の燃費効率を最適化する制御が、この発明におけるエンジン出力制御手段に相当する。
ついで、要求パワーP1を増大させる要求が終了されたか否かが判断される(ステップS6)。要求パワーP1を増大させる要求が終了されることにより肯定的に判断された場合には、加速要求が解消されたものとして、このルーチンを一旦終了する。また、ステップS6において、要求パワーP1を増大させる要求が継続されていることにより否定的に判断された場合には、ステップS8に戻る。
前述した要求パワーP1を増大させる要求が継続されている時間に比例して、エンジン回転数Neを上昇させ、また要求パワーP2に到達するまでエンジン1の燃費効率が最適となるように無段変速機の変速比を制御した場合のエンジン1の運転状態をマップを用いて模式的に図6に示してある。図6における矢印f2は、T1時点における車両Veの要求パワーP1を増大させる要求、すなわち加速要求があった場合に、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeを示す運転点が、最適燃費線6bと要求パワーとの交点A1にある状態から、要求パワーP2へと変化する軌跡を示している。交点A1からエンジン回転数Neを上昇させてエンジン1の運転点を要求パワーP2に変更する過程では、エンジン回転数Neの上昇はエンジン1の燃費効率が最適となる最適燃費線6b上を沿うように変化する。エンジン出力が要求パワーP2に到達した後は、要求パワーP2を維持しながら、加速要求が継続される時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させるように無段変速機4の変速比が制御される。
なお、図6において、横軸はエンジン回転数Neを示し、縦軸はエンジントルクTeを示している。またP1およびP2は、エンジン1の等パワー線を示し、6aはエンジン1の等燃費線を示し、6bはエンジン1の最適燃費線を示している。
前述した無段変速機の制御をおこなった場合のタイムチャートを図7に模式的に示してある。すなわち、登坂路などにおいて、車両Veに走行抵抗が生じ、また、要求パワーP1を増大させる要求あった場合に、その要求パワーP1を増大させる要求が継続されている時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させるように構成されている。また、同時に、要求パワーP2に到達するまではエンジン1の燃費効率が最適となるように構成されている。要求パワーがP2に到達した後は、図6に示す等パワー線6aに沿って変化する。すなわち、要求パワーP2を維持しつつ、経過時間に比例してエンジン回転数Neが増大するように構成されている。なお、従来の変速制御によるエンジン回転数Neの増大は破断線を用いて示してある。
この発明に係る車両用変速制御装置の他の例によれば、要求パワーP2に到達するまでの間は、エンジン回転数Neの上昇させると同時にエンジン1の燃費効率が最適化される。そのため、加速要求によって要求パワーP2に到達するまでの燃料消費を最小限に抑えることができ、燃費を向上させることができる。また、要求パワーP2に到達した後は、車速に関係なくその加速要求が継続される時間に比例してエンジン回転数Neが上昇されるので、走行抵抗が大きく車速の増大が小さい場合であっても、エンジン音や振動により擬似的な加速感を得ることができる。
なお、加速要求判断手段と走行抵抗判断手段とは同時におこなってもよいし、いずれか一方の処理を先におこなってもよい。また、上記の実施例では、要求駆動力が継続される時間に比例してエンジン回転数Neを上昇させる場合について説明したが、要求駆動力が継続される時間が経過することにともなってエンジン回転数Neを上昇させてもよい。
1…エンジン、 4…ベルト式無段変速機、 11…電子制御装置、 12…アクセル開度センサ、13…路面勾配センサ、 14…車速センサ。
Claims (5)
- エンジンの動力が無段変速機を経由して車輪に伝達される構成であり、前記無段変速機の変速比を制御することによりエンジン回転数を変化させる制御をおこなう車両用変速制御装置において、
前記エンジンに対する要求パワーを増大させる要求の有無を判断する加速要求判断手段と、
車両の走行抵抗が相対的に大きいか否かを判断する走行抵抗判断手段と、
前記走行抵抗判断手段によって前記車両の走行抵抗が相対的に大きいと判断され、かつ前記要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている場合に、前記要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている時間の経過にともない前記エンジン回転数を上昇させるように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段と
を備えていることを特徴とする車両用変速制御装置。 - 前記走行抵抗判断手段は、前記加速要求判断手段によって要求パワーを増大させる要求があると判断された場合に、前記車両の走行抵抗が相対的に大きいか否かを判断する手段を含み、前記変速比制御手段は、前記要求パワーを増大させる要求が一定の状態に継続されている時間の経過に比例して前記エンジン回転数を上昇させるように前記無段変速機の変速比を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速制御装置。
- 前記変速比制御手段により前記エンジン回転数を上昇させる場合に、前記エンジンに対して増大させる分の前記要求パワーに到達するまでは、前記エンジン回転数の増大とともにエンジントルクを増大させるトルク増大手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用変速制御装置。
- 前記変速比制御手段により前記エンジン回転数を上昇させる場合に、前記エンジンに対して増大させる分の前記要求パワーに到達するまでは、前記エンジンの燃費効率が最適となるように前記エンジン回転数およびエンジントルクを制御するエンジン出力制御手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用変速制御装置。
- 前記走行抵抗判断手段は、登坂路の勾配に基づいて前記走行抵抗を判断する手段を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用変速制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008261063A JP2010090980A (ja) | 2008-10-07 | 2008-10-07 | 車両用変速制御装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008261063A JP2010090980A (ja) | 2008-10-07 | 2008-10-07 | 車両用変速制御装置 |
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ID=42253909
Family Applications (1)
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JP (1) | JP2010090980A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10239536B2 (en) | 2016-11-25 | 2019-03-26 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Vehicle control device |
-
2008
- 2008-10-07 JP JP2008261063A patent/JP2010090980A/ja active Pending
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US10239536B2 (en) | 2016-11-25 | 2019-03-26 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Vehicle control device |
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