JP2010084275A - セルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条の溶融紡糸巻取り方法および溶融紡糸巻取り装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化して巻取るに際し、冷却風を環状方向から糸条に向けて吹き出し、かつ冷却風の吹出し長Lqを有する冷却風吹出し部から、下記式(A)、(B)及び(C)を満足する条件で冷却風を繊維糸条に吹き付けて冷却固化する。
Tm+10≦Tt≦Tm+60 ………式(A)
Tt:冷却風吹出し部の上端部の冷却風温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃)
Td≦40 ………式(B)
Td:冷却風吹出し部の下端部の冷却風温度(℃)
100≦Lq≦500 ………式(C)
Lq:冷却風吹出し部の吹出し長(mm)
【選択図】図1
Description
例えば、単糸(単繊維)繊度が0.1〜2dtexのようなレベルの細繊度のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の製造に関し、図3に示すように、紡糸口金の吐出表面と冷却風の吹出し部の上端部の垂直距離Huを規定し、かつ紡糸口金直下の気流の乱れを抑制することにより、繊維糸条の細化変形挙動を安定させ、繊維の断面形状斑および繊度斑(以下、ウースタ斑(U%)という)を低減させ、また紡糸口金の表面温度を規定することにより、製糸安定性だけでなく強伸度の向上を図るという方法が提案されている(特許文献1)。
(1)紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化して巻取るに際して、冷却風を環状方向から前記糸条に向けて吹き出し、かつ冷却風の吹出し長Lqを有する冷却風吹出し部から、下記式(A)、(B)及び(C)を満足する条件で冷却風を前記繊維糸条に吹き付けて該糸条を冷却固化するようにしたことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
ただし、Tt:冷却風吹出し部の上端部の冷却風温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃)
Td≦40 ………式(B)
ただし、Td:冷却風吹出し部の下端部の冷却風温度(℃)
100≦Lq≦500 ………式(C)
ただし、Lq:冷却風吹出し部の吹出し長(mm)
(2)紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化して巻取るに際して、冷却風を環状方向から前記糸条に向けて吹き出し、かつ冷却風の吹出し長Lqを有する冷却風吹出し部から、下記式(D)を満足する条件で冷却風を前記繊維糸条に吹き付けて該糸条を冷却固化するようにしたことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
ただし、Ts:紡糸口金の吐出表面温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃)
また、かかる本発明のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法において、具体的に好ましくは、以下の(3)または(4)の構成からなるものである。
(3)前記紡糸口金の吐出表面温度Tsを、下記式(E)を満足する条件として前記繊維糸条を吐出させることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
ただし、Ts:紡糸口金の吐出表面温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃)
(4)前記紡糸口金の吐出表面と前記冷却風吹出し部の上端面との距離Hが10〜100mmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
(5)紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化するため、冷却風を該糸条に向けて環状方向から吹出す環状冷却装置と、糸条を引き取るための引取ローラーと、糸条を巻取るための巻取装置を有し、前記環状冷却装置は、冷却風量調節装置により流量調整された冷却風を前記紡糸口金より吐出された繊維糸条に吹き付けるための冷却風吹出し部を有し、かつ該冷却風吹出し部の上部の冷却風を高温にし、該冷却風吹出し部の下部の冷却風を低温にする冷却風温度制御手段を有することを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り装置。
(6)前記環状冷却装置の冷却風吹出し部の吹出し長Lqが、下記式(F)を満足することを特徴とする上記(5)に記載のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り装置。
ただし、Lq:冷却風吹出し部の吹出長(mm)
1.5≦(アセチル基の平均置換度)≦2.5
0.5≦(プロピオニル基またはブチル基の平均置換度)≦1.5
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルは、主としてセルロース脂肪酸混合エステルからなる樹脂組成物である。セルロース脂肪酸混合エステルの含有量は、75〜95重量%の範囲にあることが好ましい。かかる範囲とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度が低くなり、溶融紡糸法による繊維化を製糸性、品質とも安定して行うことができ、また得られるセルロース脂肪酸混合エステル繊維の強伸度、U%等といった特性も良好なものとなる。セルロース脂肪酸混合エステルの含有量の更に好ましい範囲としては78〜92重量%であり、最も好ましい範囲としては80〜90重量%である。
A.セルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度
セルロースにアセチル基とプロピオニル基が結合したセルロース脂肪酸混合エステルの平度の算出方法については下記の通りである。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[[1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA]+[1−(Mwpro−(16.00+1.01))×TA]×(Pro/Ace)]
DSpro=DSace×(Pro/Ace)
DSOH=3−DSace−DSpro
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSpro:プロピオニル基の平均置換度
DSOH :水酸基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwpro:プロピオン酸の分子量
Pro/Ace:酢酸(Ace)とプロピオン酸(Pro)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
B.セルロース脂肪酸混合エステルの融点Tm(℃)
水分率が500ppmのセルロース脂肪酸混合エステルチップについて、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定し、得られた溶融ピークのピーク温度を融点Tm(℃)とした。
C.冷却風温度
熱電対を冷却風吹出部6の直近に設け、該冷却風吹出し部の上端部と下端部の位置にて冷却風温度を測定し、各々の温度を上端部の冷却風温度Tt(℃)、下端部の冷却風温度Td(℃)とした。
D.紡糸口金の吐出表面温度
紡糸口金の吐出表面の最外周に配された吐出孔に隣接する吐出表面温度であり、熱電対を該吐出表面に接触させて測定した。
E.強伸度(タフネス)
JIS L1013(1999)の8.5項に準じて引張強さ(強度)及び伸び率(伸度)を測定した。尚、測定条件としては、定速緊張形試験機(オリエンテック(株)社製テンシロン)を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minとした。
タフネス=強度(cN/dtex)×(伸度(%))1/2
F.U%
zellweger uster社製のUSTER TESTER IIIを用いて試料長300m、測定糸速度100m/分で、設定を12.5%HIとして8個の試料について測定した。なお、U%の数値は1/2inertの数値であり、1.0未満が望ましい。
G.製糸性
繊維を2トン採取した段階での紡糸糸切れ回数を(回/トン)で算出した。糸切れ回数については、少なければ少ないほど望ましいのは言うまでもない。
H.セルロース脂肪酸混合エステルチップの製造
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越えるときは、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。その結果、得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9、0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
実施例1〜5
H項で得られたセルロース脂肪酸混合エステルチップを、水分率が500ppm重量%以下になるまで乾燥した後、260℃にて溶融し、図1に示す構成を有する装置を用い、冷却風0.3m/秒、紡糸口金から吐出された繊維糸条の最外周と冷却風吹き出し部の上端部との水平距離(C)を20mm、紡糸口金の吐出表面と環状冷却装置での冷却風の吹き出し部の上端部との垂直距離Hqを30mmの条件下にて、それぞれ冷却装置、冷却長Lq、上部および下部の冷却風の温度Tt、Tdを異ならせて、紡糸速度2500m/分で引き取り、100dtex、72フィラメントの断面形状が丸断面のセルロース脂肪酸混合エステル繊維を得た。得られた繊維のタフネス、U%、製糸性について評価した。その結果を表1に示す。
比較例1
クロスフロー冷却装置を用いて、該冷却装置と溶融紡糸装置の直下間に加熱ヒータ13を設けて(図3の点線枠部位)、紡糸口金の吐出表面と環状冷却装置での冷却風の吹出し部の上端部との垂直距離Huを60mm、冷却長Luを1000mm、上部および下部の冷却風の温度Tt、Tdを各々38℃、20℃、口金面温度を253℃とし、紡糸速度2000m/分で引き取り、100dtex、72フィラメントのセルロース脂肪酸混合エステル繊維を得た。得られた繊維のタフネス、U%、製糸性について評価した。その結果を表1に示す。
比較例2
環状冷却装置を用いて、冷却長Lqを90mm、上部温度Ttを120℃、下部温度Tdを50℃、口金面温度Tsを220℃とした以外は、上記実施例と同条件で紡糸速度2500m/分で引き取り、100dtex、72フィラメントのセルロース脂肪酸混合エステル繊維を得た。得られた繊維のタフネス、U%、製糸性について評価した。その結果を表1に示す。
実施例6〜9
H項で得られたセルロース脂肪酸混合エステルチップを、水分率が500ppm重量%以下になるまで乾燥した後、260℃にて溶融し、環状冷却装置にて冷却長Lqを300mm、上部冷却風温度Ttを250℃、下部冷却風温度Tdを30℃、冷却風0.8m/秒、紡糸口金から吐出された繊維糸条の最外周と冷却風吹き出し部の上端部との水平距離(C)を12.5mm、紡糸口金の吐出表面と環状冷却装置での冷却風の吹き出し部の上端部との垂直距離Hqを80mmの条件下にて、紡糸速度1500m/分で引き取り、単糸繊度および断面形状を異ならせた100dtexのセルロース脂肪酸混合エステル繊維を得た。得られた繊維のタフネス、U%、製糸性について評価した。その結果を表2に示す。
実施例10〜14
H項で得られたセルロース脂肪酸混合エステルチップを、水分率が500ppm重量%以下になるまで乾燥した後、260℃にて溶融し、環状冷却装置にて冷却長Lqを300mm、上部冷却風温度Ttを250℃、下部冷却風温度Tdを30℃、冷却風0.1m/s、紡糸口金から吐出された繊維糸条の最外周と冷却風吹き出し部の上端部との水平距離(C)を5mm、紡糸口金の吐出表面と環状冷却装置での冷却風の吹き出し部の上端部との垂直距離Hqを20mmの条件下にて、紡糸速度を変更させて、100dtex36フィラメントの断面形状がY型のセルロース脂肪酸混合エステル繊維を得た。得られた繊維のタフネス、U%、製糸性について評価した。その結果を表3に示す。
2:紡糸口金
3a:環状冷却装置
3b:クロスフロー冷却装置
4:冷却風調整装置
5:冷却風吹き出し部
6:加熱装置
7:給油ガイド
8:インターレースノズル
9、10:引取ローラー
11:巻取装置
12:溶融紡糸装置
13:加熱ヒータ
Y:糸条
H:紡糸口金の吐出表面と環状冷却装置での冷却風の吹出し部の上端部との垂直距離
Lq:環状冷却装置の冷却風吹き出し部の吹出し長
Hu:紡糸口金の吐出表面とクロスフロー冷却装置での冷却風の吹出し部の上端部との垂直距離
Lu:クロスフロー冷却装置の冷却風吹出し部の吹出し長
C:紡糸口金から吐出された繊維糸条の最外周と、冷却風吹出し部の上端部との水平距離
Claims (6)
- 紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化して巻取るに際して、冷却風を環状方向から前記糸条に向けて吹き出し、かつ冷却風の吹出し長Lqを有する冷却風吹出し部から、下記式(A)、(B)及び(C)を満足する条件で冷却風を前記繊維糸条に吹き付けて該糸条を冷却固化するようにしたことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
Tm+10≦Tt≦Tm+60 ………式(A)
ただし、Tt:冷却風吹出し部の上端部の冷却風温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃)
Td≦40 ………式(B)
ただし、Td:冷却風吹出し部の下端部の冷却風温度(℃)
100≦Lq≦500 ………式(C)
ただし、Lq:冷却風吹出し部の吹出し長(mm) - 紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化して巻取るに際して、冷却風を環状方向から前記糸条に向けて吹き出し、かつ冷却風の吹出し長Lqを有する冷却風吹出し部から、下記式(D)を満足する条件で冷却風を前記繊維糸条に吹き付けて該糸条を冷却固化するようにしたことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
Tm+25≦Ts≦Tm+50 ………式(D)
ただし、Ts:紡糸口金の吐出表面温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃) - 前記紡糸口金の吐出表面温度Tsを、下記式(E)を満足する条件として前記繊維糸条を吐出させることを特徴とする請求項1に記載のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
Tm+25≦Ts≦Tm+50 ………式(E)
ただし、Ts:紡糸口金の吐出表面温度(℃)
Tm:セルロース脂肪酸混合エステルの融点(℃) - 前記紡糸口金の吐出表面と前記冷却風吹出し部の上端面との距離Hが10〜100mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り方法。
- 紡糸口金より吐出されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維糸条を冷却固化するため、冷却風を該糸条に向けて環状方向から吹出す環状冷却装置と、糸条を引き取るための引取ローラーと、糸条を巻取るための巻取装置を有し、前記環状冷却装置は、冷却風量調節装置により流量調整された冷却風を前記紡糸口金より吐出された繊維糸条に吹き付けるための冷却風吹出し部を有し、かつ該冷却風吹出し部の上部の冷却風を高温にし、該冷却風吹出し部の下部の冷却風を低温にする冷却風温度制御手段を有することを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り装置。
- 前記環状冷却装置の冷却風吹出し部の吹出し長Lqが、下記式(F)を満足することを特徴とする請求項5に記載のセルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸巻取り装置。
100≦Lq≦500 ………式(F)
ただし、Lq:冷却風吹出し部の吹出長(mm)
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