JP2010084092A - 環境配慮型熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 植物由来ポリアミド樹脂(A)と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(B)と、難燃剤(C)と、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)とを含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)と(C)の合計に対して、(A)の含有量が30〜70質量%であり、(B)の含有量が5〜50質量%であり、(C)の含有量が10〜50質量%であり、(A)に対して、(D)の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
また、難燃剤やガラス繊維を配合した難燃性のポリアミド樹脂組成物は非難燃性のポリアミド樹脂組成物と比較した場合、強度や破断伸度および衝撃強度等の靭性が低下し、ポリアミド樹脂が本来有する高い靭性が損なわれ、成形体の脆さが問題になることが多い。例えば、ポリアミド樹脂にポリリン酸メラミンとマレイン酸変性したエラストマーを配合することにより、難燃性と耐衝撃性が向上するとされているが、多量のマレイン酸変性エラストマーの配合が必要となり、その改良効果は低く、また、耐熱性が低下すると考えられるが、耐熱性の記載はない。また、ガラス繊維の配合も同時に検討されており、破断歪等の靭性は低下すると考えられるが、耐熱性や破断歪の記載はない(例えば、特許文献5)。つまり、難燃性と耐衝撃性の向上はみられるが、耐熱性、靭性や剛性などの実使用を考えた場合の重要な物性が記載されていない。
一方、植物由来樹脂のポリアミド1010樹脂はポリアミド11樹脂よりも安価であり、その有意性は大きい。このポリアミド1010樹脂もポリアミド11樹脂と同様の物性を示し、優れた靭性と耐久性を具備している。ポリアミド1010樹脂は、靭性を要する部材に使用されている例もあるが、その低剛性の面から、射出成形での金型離型時に変形してしまい、射出成形体にするには難しいものであった(例えば、特許文献6など)。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)植物由来ポリアミド樹脂(A)と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(B)と、難燃剤(C)と、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)とを含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)と(C)の合計に対して、(A)の含有量が30〜70質量%であり、(B)の含有量が5〜50質量%であり、(C)の含有量が10〜50質量%であり、(A)に対して、(D)の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)植物由来ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド1010樹脂であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)難燃剤(C)がホスフィン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする(1)または(2)記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)におけるスチレン成分と無水マレイン酸成分のモル比(スチレン成分/無水マレイン酸成分)が、1/1〜3/1であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
また、バイオマス由来であるポリアミド樹脂を製品に使用をすることは、環境への負荷も小さく、産業上の利用価値はきわめて高い。
本発明の樹脂組成物は、植物由来ポリアミド樹脂(A)と、ガラス繊維(B)と、難燃剤(C)と、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)とを含有する。植物由来ポリアミド樹脂(A)としては、ポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂などを使用することができる。
ポリアミド11樹脂は、樹脂単体で曲げ強度が約60MPa、曲げ破断歪が15%以上であり、高い靭性を有している。なお、本発明における靭性とは、曲げ特性評価(ASTM D790準拠)において求められた曲げ強度と曲げ破断歪との積であり、材料に応力をかけた場合の破断に至るまでの仕事量に相当するものである。
ガラス繊維(B)は、繊維断面の長径が10〜50μmであることが好ましく、15〜40μmであることがさらに好ましく、20〜35μmであることがより好ましい。
また、このガラス繊維(B)の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は2〜120であることが好ましく、2.5〜70であることがさらに好ましく、3〜50であることがより好ましい。アスペクト比が2未満であると機械的強度の向上効果が小さく、120を超えると異方性が大きくなる他、成形体外観も悪化するようになる。なお、ガラス繊維の平均繊維径とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径をいう。
本発明においてガラス繊維(B)としては、Eガラスのような一般的なガラス繊維組成の繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであればどのような組成でも使用可能で特に限定されるものではない。
ガラス繊維(B)は、公知のガラス繊維の製造方法により製造され、マトリックス樹脂との密着性、均一分散性の向上のためシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤などのカップリング剤を少なくとも1種類、帯電防止剤、及び皮膜形成剤などを含んだ配合する樹脂に適した公知の集束剤により集束され、集束されたガラス繊維ストランドを集めて一定の長さに切断したチョップドストランドの形態で使用される。
また、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。特に難燃性、電気特性の観点からジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
メラミンとリン酸との反応生成物とは、メラミンとリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物から得られるものであり、製法には特に制約はない。通常、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミンを挙げることができる。ここで、リン酸メラミンを構成するリン酸としては、具体的にはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特に、オルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃性の点から好ましい。メラミンとリン酸との反応生成物の粒径は、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体の機械的強度、成形体外観の点で、100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いるのがよい。0.5〜20μmの粉末を用いると、高い難燃性が発現するばかりでなく成形体強度も著しく高くなるので特に好ましい。
また、シアヌル酸メラミンは、シアヌル酸とメラミンとの等モル反応物であり、たとえばシアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、70〜100℃程度の温度で撹拌しながら反応され、得られる沈澱物を濾過させることによって得ることができる。シアヌル酸メラミンの粒径は成形体の機械物性、外観の点から、100μm以下が好ましく、さらに好ましくは50μm以下であり、このような粒径に粉砕して粉末を用いるのがよい。0.5〜20μmの粉末を用いると高い難燃性が発現するばかりでなく成形体の強度も著しく高くなるので特に好ましい。
また、難燃助剤(C′)を使用する際は、難燃剤(C)と難燃助剤(C′)の質量比(C/C′)は、4〜25であることが好ましく、5〜20であることがさらに好ましい。この質量比が4未満であると、機械的強度や靭性が低下し、質量比が25を超えると難燃性が達成できないため好ましくない。
スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)は、スチレン成分と無水マレイン酸成分のモル比(スチレン成分/無水マレイン酸成分)が、1/1〜3/1であることが好ましい。スチレン成分と無水マレイン酸成分の比が3/1を超えると、得られる樹脂組成物は、曲げ破断歪が低下し、靭性も劣ることになり、比が1/1未満であると、混練操業性が低下し樹脂組成物を得ることができなくなる。
スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)の酸価は、200〜600mgKOH/g、好ましくは300〜550mgKOH/g、さらに好ましくは、400〜500mgKOH/gである。酸価が200mgKOH/g未満であると、本発明の効果である破断歪等の靭性が向上しなくなり、600mgKOH/gを超えると難燃性や耐熱性が低下するなど、本発明で規定する配合外では本発明の効果を十分に発揮できない。
スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)の含有量は、植物由来ポリアミド樹脂(A)の質量に対して、0.1〜5質量%であることが必要である。スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)の含有量が0.1質量%未満では、本発明の効果が発揮されず、5質量%を超えると難燃性が低下するだけでなく、混練操業性が安定せず樹脂組成物を得ることができなくなる場合がある。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。
無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
無機結晶核材としては、タルク、カオリン等が挙げられ、有機結晶核材としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物の他に、アミド化合物としてエチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9、10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N、N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等が挙げられる。
なお、本発明の樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
(1)使用材料
・植物由来ポリアミド樹脂(A)
A1:ポリアミド11樹脂、アルケマ社製 リルサンBECN O TL
A2:ポリアミド11樹脂、アルケマ社製 リルサンKNO
A3:ポリアミド1010樹脂、デュポン製 Zytel FE110004 NC010
・ガラス繊維(B)
B1:日東紡績製CSG3PA820S (長径28μm、短径7μm、繊維断面の長径/短径が4.0である偏平断面を有する偏平ガラス繊維)
B2:日東紡績製CS3J−451 (直径10μm、長さ3mm、円形断面を有するガラス繊維)
・難燃剤(C)
C1:ホスフィン酸塩、クラリアント社製 エクソリットOP1312
C2:芳香族縮合リン酸エステル、大八化学製 PX−200
・スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)
D1:サートマージャパン社製 SMA1000(スチレン/無水マレイン酸=1/1)
D2:サートマージャパン社製 SMA3000(スチレン/無水マレイン酸=2/1)
D3:サートマージャパン社製 SMAEF60(スチレン/無水マレイン酸=6/1)
(A)曲げ特性:ASTM D790に準拠して、127mm×12.7mm×3.2mmの試験片を作製し、測定した。
(B)アイゾット衝撃強度:ASTM−D−256に準じて64mm×12.7mm×3.2mmの試験片を作製し、ノッチをつけて測定した。
(C)荷重たわみ温度:ASTM D648に準拠し、荷重1.82MPaで熱変形温度を測定した。
(D)難燃性:UL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。なお試験片の厚みは1/16インチ(約1.6mm)とした。難燃性はV−1あるいはV−0であることが好ましい。
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリアミド樹脂、難燃剤、スチレン/無水マレイン酸コポリマーを、表1に示した質量部でドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、さらにガラス繊維を押出機のサイド供給口から表1に示した質量部で供給して、バレル温度230℃、スクリュー回転数250rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。ただし、比較例3については、二軸押出機から吐出されたストランドを安定して曳けなかったためペレット状に加工することができず、樹脂組成物を得ることができなかった。
得られたペレットを90℃×24時間真空乾燥したのち、FANUC社製ロボショットS2000i型射出成形機を用いて、一般物性測定用試験片(ASTM型)を作製し、各種測定に供した。
比較例1においては、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)が配合されていないため、また、比較例2ではスチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)の配合量が規定量に達していないため、曲げ破断歪や耐衝撃性が低下し、靭性も劣る結果となった。
比較例3では、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)の配合量が(A)に対して5.7質量%であり、規定量を超えたため、樹脂組成物を得ることができなかった。
比較例4では、本発明で規定するガラス繊維(B)を使用していないため、剛性、耐衝撃性や耐熱性に劣る結果となった。
Claims (5)
- 植物由来ポリアミド樹脂(A)と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(B)と、難燃剤(C)と、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)とを含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)と(C)の合計に対して、(A)の含有量が30〜70質量%であり、(B)の含有量が5〜50質量%であり、(C)の含有量が10〜50質量%であり、(A)に対して、(D)の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
- 植物由来ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド1010樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 難燃剤(C)がホスフィン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- スチレン/無水マレイン酸コポリマー(D)におけるスチレン成分と無水マレイン酸成分のモル比(スチレン成分/無水マレイン酸成分)が、1/1〜3/1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
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