JP2010083839A - ミルクカルシウムの分散安定化方法並びにその製剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】分散安定性に優れた、従来品よりも高濃度のミルクカルシウム製剤を提供する。
【解決手段】製剤を構成する成分として、グリセリン、クエン酸ナトリウム及びガム質を添加し、ミルクカルシウム製剤を調製する。
【選択図】なし
【解決手段】製剤を構成する成分として、グリセリン、クエン酸ナトリウム及びガム質を添加し、ミルクカルシウム製剤を調製する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ミルクカルシウムの凝固防止及び分散安定化方法並びにミルクカルシウムの凝固が抑制され、及び安定に分散されたミルクカルシウム製剤に関する。詳しくは、飲食品に添加してカルシウム分を強化する目的で使用される、高濃度であっても凝固せず、分散安定性に優れた溶液状態のミルクカルシウム製剤を提供する方法に関する。
カルシウムは、人体にとって重要な栄養素の一つであるが、日本でのカルシウム摂取率は低下の傾向にあり、将来的なカルシウム不足により生じる健康被害(例えば骨粗鬆症など)が懸念されている。
そこで消費者が、不足しているカルシウムを簡便に摂取できるように、様々な飲食品が提供されている。また、一般にカルシウム含量が多いと言われている牛乳に、さらにカルシウムを添加しカルシウム強化牛乳として提供されている。
しかしながら、無機・有機酸と結合した水溶性のカルシウム塩は、牛乳に含まれている蛋白質と反応し凝固するか沈殿を生じるため、あまり多くのカルシウムを添加することが困難であった。
また、水に不溶性のカルシウム塩を添加した場合は、蛋白質との反応は生じないものの、不溶性であるために短時間で沈降するため、食品中に均一に添加することが困難であったり、また飲料等においては外観上好ましくなかった。
これらの食品への添加時に生じるカルシウムの不都合を解消し、高濃度のカルシウムを含有する食品を調製するために、多くの提案がなされている。
具体的には、天然乳清カルシウムを粉砕機で超微粒子に粉砕した後、表面コーティングによって加温しなくても冷水に直ちに溶け且つ沈殿が起こらない高分散性の天然乳清カルシウム組成物(特許文献1)、特定のカルシウム化合物、マグネシウム化合物から選ばれた少なくとも1種の水難溶性無機化合物に対し、アラビアガム及びキレート剤を含有してなる食品添加剤組成物(特許文献2)、カルボキシメチルセルロース塩と増粘多糖類を特定量配合してなるミネラル分散剤(特許文献3)、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及びドロマイトから選ばれた少なくとも1種に対し、カードラン、ガティガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、及びトラガントガムよりなる群から選ばれた少なくとも1種を配合してなることを特徴とする食品店化剤組成物(特許文献4)、特定の炭酸カルシウム及び乳化安定剤の特定割合を含有させた牛乳等に有用な食品添加剤スラリー組成物(特許文献5)、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及びピロリン酸第二鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種に対し、アラビアガムを含有させてなる牛乳等への食品への添加剤として好適な食品添加剤スラリー組成物(特許文献6)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸第二鉄から選ばれた少なくとも1種に、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グリセリン脂肪酸エステル、加工デンプン、クエン酸塩より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有してなる食品添加剤組成物(特許文献7)等の技術が開示されている。
また、上記技術以外にも、単に加工食品中にカルシウムを添加する技術として、炭酸ナトリウム、クエン酸、タンパク質、単糖類もしくは少糖類、並びにカルシウム塩を含有することを特徴とする食肉加工品の品質改良剤(特許文献8)、マンガン、銅又はモリブデンをミネラル成分とするミネラル酵母を含有し、さらにカルシウムを含有する食品組成物(特許文献9)等が開示されているが、カルシウムの凝固防止や分散安定については一切開示されていない。
特開2005−73695号公報
特開2004−57146号公報
特開2003−339354号公報
特開2002−186458号公報
特開2001−186863号公報
国際公開WO1998/042210
国際公開WO2004/039178
特開2006−238715号公報
特開2003−61618号公報
さらに、上記文献で利用されているカルシウム塩は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(特許文献2、4、5、6、7)が主であり、他のカルシウム塩は例示的に開示されているに過ぎない。
本願発明者は、使用するカルシウム塩を多角的栄養効果が期待でき(特開平8−23880号公報)、自然で効果的なカルシウム強化が図れるミルクカルシウムの利用を検討した。ミルクカルシウムは、他のカルシウム源よりも生体への吸収率が高く、牛乳由来というイメージも良いため、健康補助食品や栄養補助食品等へ広く用いられている。しかしながら、ミルクカルシウムは凝固しやすく、また分散性が極めて悪く沈殿を形性するため、食品類へ添加するとその凝固物や沈殿のため食品類の品質の低下を生じ、飲食者に不快感を与えるという欠点があった。
本願発明者らは、カルシウム強化食品を簡便に調製できるよう、凝固物の発生を抑え、または沈殿を生じない分散安定性に優れたミルクカルシウム製剤を提供することを目的として鋭意研究を行った。
本願発明者は、上記課題を解決するために、ミルクカルシウムの分散製剤を調製する際に、グリセリンとクエン酸ナトリウム、ガム質としてガティガム又はアラビアガムを併用し、粒子を微細化することにより、ミルクカルシウムの凝固物の発生や沈殿を抑制し、食品製造に適した製剤を調製できるとの知見を得て本発明を完成した。
即ち、本願発明は、ミルクカルシウムとグリセリン、クエン酸ナトリウム、ガム質としてガティガム又はアラビアガムを併用することを特徴とする、凝固物の発生を抑制し沈殿を生じない分散安定性に優れたミルクカルシウム製剤を提供するものである。
本発明によれば、凝固物や沈殿を生じ食品製造への利用が困難であったミルクカルシウムを、凝固物を生じず沈殿を生じない分散安定性に優れた製剤とすることが可能となる。
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
本発明で使用するミルクカルシウムは、牛乳中に存在するカルシウムを非焼成方式で製造するものであり、協和発酵社製のミルクカルシウム、森永乳業社製のミルクCA−28等、一般に市販されているものを制限無く利用することができる。
本願発明にかかる製剤中のミルクカルシウムの添加量は5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%とする。ミルクカルシウムの添加量が少ないと製剤としての有効性が低下し、多いと凝固・凝集が生じるため好ましくない。尚、従来技術によるミルクカルシウム製剤におけるミルクカルシウム含量は、凝固もしくは沈殿が生じるため5質量%程度までしか添加することはできなかったが、本願発明によってはじめて、従来品よりも高濃度のミルクカルシウムを含有する製剤を提供できるようになった。
上述のように、従来よりも高濃度のミルクカルシウムを含有することが可能となった、本発明のミルクカルシウム製剤を構成する必須成分として、グリセリン、クエン酸ナトリウム及びガム質としてガティガム又はアラビアガムが挙げられる。
グリセリンは脂肪族のアルコールであり、一般に入手可能なものを利用できる。また、本発明の効果を妨げない範囲において、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等との併用も可能である。
製剤へのグリセリンの添加量は、ミルクカルシウム製剤100質量%に対し40〜65質量%、好ましくは50〜60質量%の範囲が例示できる。グリセリンの添加量が少ないと、ミルクカルシウムの凝固・沈殿の発生を効果的に抑制できないため好ましくない。一方、65質量%以上にすることも可能であるが、ミルクカルシウムの分散安定化効果の向上は見込めず、粘度上昇等によりハンドリングも悪くなることから好ましくない。
本発明に係るミルクカルシウム製剤には、必要に応じて水、アルコール及びこれらの混合物を添加してもよく、グリセリンの添加量はこれらに影響されることはない。
クエン酸ナトリウムは、本発明においてキレート剤として機能していると考えられる。従って、クエン酸ナトリウム以外にも、金属イオンを細くするキレート能を有するものであれば制限無く併用することができる。具体的には、クエン酸塩(ナトリウム塩を除く)、リン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、グルコン酸塩、エデト酸塩が例示できる。塩としては、ナトリウム、カリウムといった金属塩の他、アンモニウム塩等が例示できる。
製剤へのクエン酸ナトリウムの添加量は、ミルクカルシウム製剤100質量%に対し1.5〜6質量%、好ましくは3〜4.5質量%の範囲が例示できる。さらに他のキレート効果を有する塩を併用する場合は、適宜クエン酸ナトリウムの添加量を調節することができるが、上記添加量よりも少なくなると、本発明の十分な効果を得られず、添加量が多くなるとクエン酸ナトリウムの風味が影響を及ぼすため好ましくない。
本発明で使用するガム質として、アラビアガム、アルギン酸及びアルギン酸塩、ガティガム、カラギナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)類、グァーガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、セルロース類等、食品製造に使用できるガム質を使用することができるが、好ましくはガティガムとアラビアガムである。ガティガム及びアラビアガムは、食品や医薬品をはじめ様々な分野で利用されている多糖類であり、本発明においては一般に入手可能なものを制限無く利用することができる。市販品の例としては、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガティガムRD、ガムアラビックSD等が挙げられる。
これらガム質の製剤への添加量として0.5〜4質量%、好ましくは1〜3質量%の範囲が例示できる。ガム質の添加量が少ないとミルクカルシウムの凝固を十分に抑制することができず、添加量が多くなると製剤に粘度が付与され、製造上不都合が生じる場合があるため好ましくない。
これらの成分を用いて調製することで、ミルクカルシウムの凝固・沈殿が効果的に抑制されたミルクカルシウム製剤を調製することが可能となる。また、各成分の添加量は、上述の範囲内で適宜調節することが可能である。本発明に係る製剤は、常法に従い調製することができるため、新規の製造設備を要しない点でも優れている。
また、調製するミルクカルシウム製剤の平均粒子径は、粒子の沈降を抑制するために出来る限り微粒子化することが好ましく、平均粒子径が1μm以下、好ましくは0.6μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。微粒子化する方法としては、物理的破砕法が好ましい。物理的破砕法としては、ダイノミル、サンドミル、コボールミル等の湿式粉砕機、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモゲナイザー等の乳化・分散装置、超音波分散機が使用できる。微粒子化することで水中においても極めて安定なミルクカルシウム製剤を製造することが出来る。
本発明におけるミルクカルシウムの結晶の平均粒子径の測定方法としては、特に限定するものではないが、レーザー回折・散乱法、沈降法、動的光散乱法が好ましい。尚、本願発明におけるミルクカルシウムの結晶の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラック MT−3000II(Microtrac Inc.製)を用いて測定されたものである。
さらに本発明に係るミルクカルシウム製剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、食品製造に利用されうる他の成分を添加することができる。具体的には、香料、着色料、甘味料、酸味料、調味料、苦味料、香辛料、脂質、脂肪酸、アミノ酸類、酵素、ビタミン類、動・植物抽出物、生理活性物質などを挙げることができる。さらに分散剤、酸化防止剤、防腐剤、矯味剤、乳化剤や強化剤などを配合することもできる。
また、本発明に係るミルクカルシウム製剤を利用できる食品としては、豆乳、ビタミン・ミネラル飲料、牛乳、加工乳、乳飲料、乳酸菌飲料、乳製品、発酵乳、酸性飲料、中性飲料、コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料、紅茶、紅茶飲料、紅茶入り清涼飲料、ウーロン茶、緑茶、乳清飲料、炭酸飲料、果実飲料、果汁飲料、果汁入り飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、ビールやカクテルやチューハイなどのアルコール飲料、栄養ドリンクなどの健康飲料、ニアウォーター、スポーツドリンク、ドリンクヨーグルト、シェーク飲料などが例示できる。
さらには、飲料以外でも、例えばパン、ビスケット、キャンディー等のパン・菓子類;ゼリー、プリンやヨーグルト等のデザート類;ソース、ドレッシング、たれ等の調味料;ハムなどの加工食品;マーガリン、スプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品;シチュー、スープ、カレーなどの食品への添加も可能である。
また、本発明を利用して医薬品組成物、例えば液剤、注射剤、点滴剤、シロップ剤、クリーム、軟膏、ローション等を製造することもでき、医薬部外品や化粧品等にも使用することができる。
上記食品、医薬品、医薬部外品、化粧品または飼料などの製造において、本発明に係るミルクカルシウム製剤を添加する時期は、特に限定されるものではなく、製造工程の任意の時期でよいため、製造にとっても利便性がある。
以下に、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、下記処方中の単位は特に言及しない限り「%」は「質量部」であることを意味する。
表1に記載の各成分を混合し水にて全量を100として分散させ、本分散液を湿式摩砕機ダイノミルによって湿式粉砕を行い、粒子径の大きさを0.2μmに微細化し、ミルクカルシウム製剤を得た。調製したミルクカルシウム製剤を、100mlサンプル瓶に充填し、常温2週間保存後の状態を評価した。なお、グリセリンを加えていないものもしくはクエン酸ナトリウムを加えていないものについては、湿式粉砕を行った際に分散液が固化したため製剤の調製ができなかった。
表1に記載の通り、各成分の好ましい配合割合による製剤を調製することにより、ミルクカルシウムの沈殿や凝固を生じない、分散安定性に優れた流動性のあるミルクカルシウム製剤を得ることができた。また、アラビアガム、ガティガムのいずれを用いても、有効な効果を得ることができた。
実施例11と同じ配合で各成分を混合し、湿式粉砕を行い、表2記載の通り異なる粒子径の製剤を得た。調整したミルクカルシウム製剤を、100mlサンプル瓶に充填し、常温2週間保存後の状態を評価した。
上記結果より、平均粒子径を1μm以下とすることにより、凝集や沈殿の生じないミルクカルシウム製剤を得ることができた。
Claims (6)
- グリセリン、クエン酸ナトリウム及びガム質を含有することを特徴とするミルクカルシウムの分散安定化方法。
- ミルクカルシウム、グリセリン、クエン酸ナトリウム及びガム質の各々の添加量が、ミルクカルシウム製剤100質量%に対し次の範囲である、ミルクカルシウムの分散安定化方法。
ミルクカルシウム 5〜30質量%
グリセリン 40〜65質量%
クエン酸ナトリウム 1.5〜6質量%
ガム質 0.5〜4質量% - ガム質が、ガティガム又はアラビアガムである請求項1又は2に記載のミルクカルシウムの分散安定化方法。
- ミルクカルシウム5〜30質量%、グリセリン40〜65質量%、クエン酸ナトリウム1.5〜6質量%及びガム質0.5〜4質量%を含有することを特徴とする、ミルクカルシウムの分散安定性に優れたミルクカルシウム製剤。
- ガム質が、ガティガム又はアラビアガムである請求項4に記載のミルクカルシウム製剤。
- 平均粒子径が1μm以下である請求項4又は5に記載のミルクカルシウム製剤。
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JP2008257109A JP2010083839A (ja) | 2008-10-02 | 2008-10-02 | ミルクカルシウムの分散安定化方法並びにその製剤 |
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JP2017505814A (ja) * | 2014-02-03 | 2017-02-23 | アプラノ ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー | 天然材料のナノ懸濁液およびその調製方法 |
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2008
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