JP2010080173A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】放熱および保温などの熱の管理を適確に行い、安定した出力を維持することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【解決手段】燃料電池1は、アノード(燃料極)13、カソード(空気極)16およびこれらに挟持された電解質膜17を有する燃料電池セル10と、この燃料電池セル10のアノード(燃料極)側に配置され、アノード(燃料極)13に燃料を供給するための燃料供給機構40と、燃料電池セル10で発生した熱を潜熱として蓄熱する蓄熱層60とを備える。この蓄熱層60は、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を、相変化温度の高い順に燃料電池セル10側から積層して構成される。
【選択図】図1
【解決手段】燃料電池1は、アノード(燃料極)13、カソード(空気極)16およびこれらに挟持された電解質膜17を有する燃料電池セル10と、この燃料電池セル10のアノード(燃料極)側に配置され、アノード(燃料極)13に燃料を供給するための燃料供給機構40と、燃料電池セル10で発生した熱を潜熱として蓄熱する蓄熱層60とを備える。この蓄熱層60は、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を、相変化温度の高い順に燃料電池セル10側から積層して構成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、携帯機器の動作に有効な液体燃料を用いた燃料電池に関する。
近年、電子技術の進歩により、電子機器の小型化、高性能化、ポータブル化が進んでおり、携帯用電子機器においては、使用される電池の高エネルギ密度化の要求が強まっている。このため、軽量で小型でありながら高容量の二次電池が要求されている。
このような二次電池への要求に対して、例えば、リチウムイオン二次電池が開発されてきた。また、携帯電子機器のオペレーション時間は、さらに増加する傾向にあり、リチウムイオン二次電池では、材料の観点からも構造の観点からもエネルギ密度の向上はほぼ限界にきており、更なる要求に対応できなくなりつつある。
このような状況のもと、リチウムイオン二次電池に代わって、小型の燃料電池が注目を集めている。特に、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、水素ガスを使用する燃料電池に比べ、水素ガスの取り扱いの困難さや、有機燃料を改質して水素を作り出す装置等が必要なく、小型化に優れている。
DMFCでは、燃料極においてメタノールが酸化分解され、二酸化炭素、プロトンおよび電子が生成される。一方、空気極では、空気から得られる酸素と、電解質膜を経て燃料極から供給されるプロトン、および燃料極から外部回路を通じて供給される電子によって水が生成される。また、この外部回路を通る電子によって、電力が供給されることになる。
DMFCにおいては、このような構成で発電を進めるために、メタノールを供給するポンプや空気を送り込むブロワが補器として備えられ、システムとして複雑な形態を成したDMFCが開発されてきた。そのため、この構造のDMFCでは、小型化を図ることは難しかった。
また、一方で、メタノールをポンプで供給するのではなく、メタノール収容室と発電素子の間にメタノールの分子を通す膜を設け、メタノールを透過させる代わりに、メタノール収容室を発電素子の近傍まで近づけることで小型化が進められた。また、空気の取り入れについては、ブロワを用いず、発電素子に直接取り付けた吸気口を設置することで、小型DMFCが構築された(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このような小型DMFCは、機構が簡略化された代わりに、温度などの外部環境要因の影響を受けた場合、発電素子に一定量のメタノールを送ることが難しくなっている。このため、出力を安定して高く発現することが困難となっていた。そこで、このようなメタノールの供給量を制御するために、燃料収容室部分と負極の間に多孔体を設置し、メタノール供給量を絞る技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
WO2005/112172公報
特開2004−171844号公報
しかしながら、上記した従来のDMFCにおいては、カソード(空気極)側の発熱反応により発電中に、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)が発熱して、燃料電池全体の温度が上昇し、例えば50〜60℃以上になると、それを所持している使用者が熱く感じて不快感を得る可能性があった。このため、速やかに放熱することで温度上昇を抑制することが望ましい。一方、アノード(燃料極)での発電反応は吸熱反応であるため、保温することで外部への熱の放出を抑制することが望ましい。
このように、一方の部位では放熱が必要であり、他方の部位では保温が望まれる燃料電池において、携帯機器に搭載するために形状が小型化され、薄くなると、燃料電池自体の温度管理が困難となる。また、放熱が必要な部位では、均一に放熱されることが望ましく、保温が望まれる部位では、均一に保温されることが望ましい。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、放熱および保温などの熱の管理を適確に行い、安定した出力を維持することができる燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給するための燃料供給機構と、前記膜電極接合体で発生した熱を潜熱として蓄熱し、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層とを具備することを特徴とする燃料電池が提供される。
本発明に係る燃料電池によれば、放熱および保温などの熱の管理を適確に行い、安定した出力を維持することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態の燃料電池1の構成を示す断面図である。図2は、本発明に係る一実施形態の燃料電池において、ポンプ90、および燃料供給部本体42の周囲に蓄熱部材80を備えた場合の燃料電池1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル10と、この燃料電池セル10のアノード(燃料極)13側およびカソード(空気極)16側にそれぞれ設けられたアノード導電層18、カソード導電層19と、このアノード導電層18に対向させて設けられた複数の開口部31を有する燃料分配層30と、この燃料分配層30の燃料電池セル10側とは異なる側に配置され、燃料分配層30に液体燃料Fを供給する燃料供給機構40と、カソード導電層19に積層された保湿層50と、この保湿層50に積層された蓄熱層60と、この蓄熱層60に積層された、複数の空気導入口71を有する表面カバー70とを備える。
燃料電池セル10は、いわゆる膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)であり、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性を有する電解質膜17とから構成される。
アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11として、例えば、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14として、例えば、Pt、Pt−Ni、Pt−Co等を用いることが好ましい。ただし、触媒は、これらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は、炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。電解質膜17は、具体的には、ナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)、アシプレックス(商品名、旭化成工業社製)等により構成される。なお、プロトン伝導性の電解質膜17は、これらに限られるものではなく、例えば、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜、あるいは脂肪族炭化水素系樹脂獏などのプロトンを輸送可能な電解質膜で構成することができる。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体も兼ねている。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電体も兼ねている。また、アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンシルク等の多孔性炭素質材、チタン、チタン合金、ステンレス、金などの金属材料からなる多孔質体またはメッシュなどで構成される。
アノードガス拡散層12の表面に積層されたアノード導電層18、およびカソードガス拡散層15の表面に積層されたカソード導電層19は、例えば、金、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えば、メッシュなど)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などで構成される。これらの中でも、アノード導電層18やカソード導電層19は、燃料電池セル10に対応して開口された複数の開口部を有する薄膜で構成されることが好ましく、この開口部を介して、燃料電池セル10に対向して設けられている燃料分配層30の開口部31からの燃料を燃料電池セル10に導く。
なお、アノード導電層18およびカソード導電層19は、それらの周縁から燃料や酸化剤が漏れないように構成されている。また、電解質膜17とアノード導電層18およびカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20が介在されており、これらによって燃料電池セル10からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。なお、ここでは、アノード導電層18およびカソード導電層19を備えた燃料電池2を示しているが、アノード導電層18およびカソード導電層19を設けずに、上記したようにアノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15を拡散層として機能させるとともに、導電層として機能させてもよい。
保湿層50は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸して、水の蒸散を抑制するとともに、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。この保湿層50は、例えば、ポリエチレン多孔質膜等からなる平板で構成される。
蓄熱層60は、燃料電池セル10で発生した熱を潜熱として蓄熱し、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を積層して構成されている。また、蓄熱層60は、カソード(空気極)16側に配置される。蓄熱層60が設置されるカソード(空気極)側とは、燃料電池セル10を構成するカソード(空気極)16よりも外側、すなわち表面カバー70側を意味する。
また、蓄熱層60を構成する複数の蓄熱部材は、相変化温度の高い順に燃料電池セル10側から積層されている。例えば、蓄熱層60が相変化温度の異なる3つの蓄熱部材で構成される場合、相変化温度が最も高い蓄熱部材が最も燃料電池セル10のカソード(空気極)側に配置され、相変化温度が最も低い蓄熱部材が最も外側に配置される。蓄熱層60を構成する各蓄熱部材は、相変化温度を境にしてゲル化と液状化を繰り返す。この潜熱蓄熱部材は、温度を均一に保つ作用があるため、温度を管理する観点からも好ましい材料である。このように蓄熱層60を設定することで、発熱反応であるカソード(空気極)16における反応は、蓄熱層60が熱を吸収することで促進される。また、カソード(空気極)16で発生した熱は、蓄熱層60に蓄熱される。
ここで、図1に示した燃料電池1において、蓄熱層60を保湿層50と表面カバー70との間に配置した一例を示しているが、この構成に限られるものではなく、カソード(空気極)側で発生した熱を蓄熱可能に配置されていればよい。例えば、蓄熱層60を表面カバー70上に積層して配置してもよい。この場合、相変化温度が最も高い蓄熱部材が表面カバー70に面するように配置される。このように蓄熱層60を表面カバー70上に積層して配置する場合として、例えば、燃料電池1が電池ケースなどの筐体に固定されるときなどが考えられる。これによって、カソード(空気極)側で発生した熱を蓄熱層60が吸収するため、カソード(空気極)側で発生した熱が筐体に直接伝わることを防止できる。さらに、蓄熱層60と接触する部分の筐体では、一様に温度が上昇する。また、燃料電池1は、外部環境における温度変化の影響を受け難くなる。なお、この場合、蓄熱層60を、表面カバー70上の全面に亘って配置しても、筐体と接触する部分に対応する表面カバー70上にのみ積層して配置してもよい。
なお、蓄熱層60が、例えば、カソード(空気極)側である保湿層50と表面カバー70との間や、表面カバー70上の全面に亘って配置される場合には、蓄熱層60は、カソード(空気極)16に供給される空気やカソード(空気極)16で生成した水(水蒸気)が通過可能な構成となっている。具体的には、例えば、表面カバー70の空気導入口71に対応する蓄熱層60の位置に貫通口を形成する。
蓄熱層60を構成する各蓄熱部材は、具体的には、例えば、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウムなどの水溶液や水和物、あるいはその混合物などからなる無機塩・水和物や水溶液で構成される。また、蓄熱層60を構成する各蓄熱部材は、有機物で構成されてもよく、具体的には、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどのノルマルパラフィンやそのエマルジョン、ポリエチレングリコールなどの高分子材料で構成される。
また、蓄熱層60を構成する各蓄熱部材は、これらの材料をマイクロカプセル化した材料やそのマイクロカプセルを樹脂などに分散させて成形した部材や粉末、これらの材料をペースト状に他の樹脂と混合した塗料などで構成されてもよい。また、マイクロカプセルが分散される樹脂としては、耐溶剤性、耐水性および弾性のような特性を有する樹脂が好ましく、具体的には、例えば、シリコーン樹脂などが挙げられる。さらに、蓄熱層60を構成する各蓄熱部材は、上記した材料を袋状のパックに充填したもので構成されてもよい。蓄熱層60として、例えば、相変化温度が25℃、39℃および58℃のものとして、サーモメモリ(三菱製紙株式会社製)、相変化温度が40℃、60℃、70℃および80℃のものとして、パッサーモ(玉井化成株式会社製)、相変化温度が32℃、40℃、47℃および52℃のものとして、潜熱蓄熱材MHS(三菱電線工業株式会社製)などが挙げられる。
また、積層して配置される各蓄熱部材における相変化温度も、燃料電池1の構成部材や部品機能によって適宜に変更可能である。例えば、蓄熱層60を相変化温度の異なる3つ の蓄熱部材を積層して構成する場合であって、例えば、カソード(空気極)側の温度が60℃程度となるときには、相変化温度が58℃、39℃、31℃の3種類の蓄熱部材を使用することができる。なお、この組み合わせに限られるものではなく、上記したように、燃料電池1の構成部材や部品機能によって適宜に変更可能であり、積層して配置される各蓄熱部材における相変化温度が異なればよい。
ここで、蓄熱部材の相変化温度を検討する際、蓄熱部材の温度の測定は、次のように行うことができる。
例えば、測定対象の潜熱蓄熱部材を常温の恒温槽内に配置し、この潜熱蓄熱部材の温度を測定できるようにした状態で恒温槽を高温側(例えば75℃)に設定する。恒温槽内の温度が上昇するとともに潜熱蓄熱部材の温度も上昇するが、相変化温度の温度(例えば50℃)で潜熱蓄熱部材の温度が一定となり、恒温槽内の温度は更に上昇して高温側の設定温度(例えば75℃)で一定となる。潜熱蓄熱部材の相変化が終了するまで潜熱蓄熱部材の温度は一定(例えば50℃)に保たれることから、この一定に保たれる温度が潜熱蓄熱部材の相変化温度として確認できる。また、シート状の潜熱蓄熱部材では、加熱ヒータの周囲に巻き、ヒータ温度を上げながら潜熱蓄熱部材表面(加熱ヒータと逆側)の温度を測定することで測定可能である。相変化温度が50℃であれば、潜熱蓄熱部材の温度は50℃で一定となり、加熱ヒータの温度だけが上昇する。潜熱蓄熱部材の相変化が終了すると潜熱蓄熱部材表面の温度も50℃を超えて上昇を始める。この一定に保たれる温度が潜熱蓄熱部材の相変化温度として確認できる。
また、図2に示すように、燃料電池1は、燃料供給機構40を構成する燃料供給部本体42の周囲を覆うように蓄熱部材80を備えてもよい。例えば、図2に示した燃料電池1のように、カソード(空気極)側である保湿層50と表面カバー70との間、およびアノード(燃料極)側である燃料供給部本体42の周囲に、それぞれ蓄熱層60および蓄熱部材80を備える場合、蓄熱層60と蓄熱部材80とにおける相変化温度を異なるものとし、冷却部分と保温部分を別個に温度管理してもよい。例えば、蓄熱層60における相変化温度が、蓄熱部材80における相変化温度よりも低くなるように、それぞれの潜熱蓄熱部材を設定してもよい。このように設定することで、発熱反応であるカソード(空気極)16における反応は、蓄熱層60が熱を吸収することで促進され、吸熱反応であるアノード(燃料極)13における反応は、蓄熱部材80が保温した熱で促進される。また、カソード(空気極)16で発生した熱は、蓄熱層60に蓄熱されるとともに、燃料電池セル10、電池ケース、燃料電池を積層した状態に固定するための固定部材などを介してアノード(燃料極)13の蓄熱部材80に伝わる。
なお、蓄熱部材80を設ける位置は、図2に示したように、燃料供給部本体42の周囲に限られるものはなく、燃料電池1の構成部材や部品機能によって適宜に変更可能である。例えば、蓄熱部材80を、アノード導電層18と燃料分配層30との間または燃料分配層30と燃料供給部本体42との間等に設けてもよい。
表面カバー70は、空気の取入れ量を調整するものであり、その調整は、空気導入口71の個数や大きさ等を変更することで行われる。表面カバー70は、例えば、SUS304のような金属で構成することができるが、これに限定されるものではない。
燃料供給機構40は、燃料収容部41と、燃料供給部本体42と、流路44とを主に備える。
燃料収容部41には、燃料電池セル10に対応した液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fとして、例えば、エタノール水溶液、純エタノール、プロパノール水溶液、ギ酸水溶液、ギ酸ナトリウム水溶液、酢酸水溶液、エチレングリコール水溶液、ジメチルエーテルなどの水素を含む有機系の水溶液、水素化ホウ素ナトリウム水溶液、水素化ホウ素カリウム水溶液、水素化リチウム水溶液などを用いてもよい。これらの液体燃料の中でも、メタノール水溶液は、炭素数が1で反応の際に発生するのが二酸化炭素であり、低温での発電反応が可能であり、産業廃棄物から比較的容易に製造することができる。そのため、液体燃料としてメタノール水溶液を使用するのが好ましい。いずれにしても、燃料収容部41には、燃料電池セル10に応じた液体燃料が収容される。
液体燃料Fは、燃料濃度が100重量%から数重量%までの範囲で種々の濃度のものを用いることができるが、特にメタノール水溶液の場合は、燃料濃度が60重量%以上のものを使用することが望ましい。その理由は、より少ない体積の燃料で発電することができるからである。
燃料供給部本体42は、供給された液体燃料Fを燃料分配層30に対して均一に供給するために、液体燃料Fを平坦に分散させるための凹部からなる燃料供給部43を備えている。この燃料供給部43は、配管等で構成される液体燃料Fの流路44を介して燃料収容部41と接続されている。燃料供給部43には、燃料収容部41から流路44を介して液体燃料Fが導入され、導入された液体燃料Fおよび/またはこの液体燃料Fが気化した気化成分は、燃料分配層30およびアノード導電層18を介して燃料電池セル10に供給される。流路44は、燃料供給部43や燃料収容部41と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料供給部43や燃料収容部41を積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料Fの流路であってもよい。すなわち、燃料供給部43は、流路等を介して燃料収容部41と連通されていればよい。
燃料収容部41に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路44を介して燃料供給部43まで落下させて送液することができる。また、流路44に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで送液してもよい。さらに、図2に示すように、流路44の一部に、ポンプ90を介在させて、燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで強制的に送液してもよい。
このポンプ90は、燃料収容部41から燃料供給部43に液体燃料Fを単に送液する供給ポンプとして機能するものであり、燃料電池セル10に供給された過剰な液体燃料Fを循環する循環ポンプとしての機能を備えるものではない。このポンプ90を備えた燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは構成が異なり、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも構成が異なる、いわゆるセミパッシブ型と呼ばれる方式に該当する。なお、燃料供給手段として機能するポンプ90の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリベーンポンプは、モータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは、電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは、電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは、柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。上記したようにポンプ90を設ける場合、ポンプ90は、制御手段(図示しない)と電気的に接続され、この制御手段によって、燃料供給部43に供給される液体燃料Fの供給量が制御される。
ここで、ポンプ90の送液量は、燃料電池1の主たる対象物が小型電子機器であることから、10μL/分〜1mL/分の範囲とすることが好ましい。送液量が1mL/分を超えると一度に送液される液体燃料Fの量が多くなりすぎて、全運転期間に占めるポンプ90の停止時間が長くなる。このため、燃料電池セル10への燃料の供給量の変動が大きくなり、その結果として出力の変動が大きくなる。これを防止するためのリザーバをポンプ90の下流側に設けてもよいが、そのような構成を適用しても燃料供給量の変動を十分に抑制することはできず、さらに装置サイズの大型化等を招いてしまう。
一方、ポンプ90の送液量が10μL/分未満であると、装置立ち上げ時のように燃料の消費量が増える際に供給能力不足を招くおそれがある。これによって、燃料電池1の起動特性等が低下する。このような点から、10μL/分〜1mL/分の範囲の送液能力を有するポンプ90を使用することが好ましい。ポンプ90の送液量は10〜200μL/分の範囲とすることがより好ましい。このような送液量を安定して実現する上でも、ポンプ90には電気浸透流ポンプやダイアフラムポンプを適用することが好ましい。
燃料分配層30は、例えば、複数の開口部31が形成された平板で構成され、アノードガス拡散層12と燃料供給部43との間に挟持される。この燃料分配層30は、液体燃料Fの気化成分や液体燃料Fを透過させない材料で構成され、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリイミド系樹脂等で構成される。また、燃料分配層30は、例えば、液体燃料Fの気化成分と液体燃料Fとを分離し、その気化成分を燃料電池セル10側へ透過させる気液分離膜で構成されてもよい。気液分離膜には、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが用いられる。ここで、燃料電池1において、燃料供給部43に導入された液体燃料は、燃料分配層30の複数の開口部31からアノード(燃料極)13の全面に対して供給される。このように、燃料分配層30によって、アノード(燃料極)13に供給される燃料供給量を均一化することが可能となる。
次に、上記した燃料電池1における作用について説明する。
燃料収容部41から流路44を介して燃料供給部43に供給された液体燃料Fは、液体燃料のまま、もしくは液体燃料と液体燃料が気化した気化燃料が混在する状態で、燃料分配層30およびアノード導電層18を介して燃料電池セル10のアノードガス拡散層12に供給される。アノードガス拡散層12に供給された燃料は、アノードガス拡散層12で拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で次の式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …式(1)
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …式(1)
なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、メタノールは、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水と上記した式(1)の内部改質反応によって改質されるか、または水を必要としない他の反応機構により改質される。また、蓄熱部材80に蓄熱された熱を利用することによって、式(1)のメタノールの内部改質反応が促進される。
この反応で生成した電子(e-)は、集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード(空気極)16に導かれる。また、式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード(空気極)16に導かれる。カソード(空気極)16には酸化剤として空気が供給される。カソード(空気極)16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と次の式(2)に示す反応を生じ、この発電反応に伴って水が生成する。
(3/2)O2+6e-+6H+ → 3H2O …式(2)
(3/2)O2+6e-+6H+ → 3H2O …式(2)
なお、この式(2)に示す反応によって発生した熱の一部は、複数の蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層60に蓄熱される。この蓄熱層60における熱の移動は、積層された複数の蓄熱部材により段階的に行われる。これによって、燃料電池1の温度の大きな変動や、燃料電池1の急激な温度上昇、特に、カソード(空気極)側における急激な温度上昇を抑制することができる。また、燃料電池1の出力密度の大きな変動を抑制することができる。
このように燃料電池1では、上記した内部改質反応が円滑に行なわれ、高出力で安定した出力が得られる。
上記した本発明に係る一実施の形態の燃料電池1によれば、カソード(空気極)側に、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を、相変化温度の高い順に燃料電池セル10側から積層して構成される蓄熱層60を設けて、カソード(空気極)16における反応によって発生した熱を蓄熱層60で吸収して反応を促進することができる。また、複数の蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層60における熱の移動は、積層された複数の蓄熱部材により段階的に行われる。これによって、燃料電池1の温度の大きな変動や、燃料電池1の急激な温度上昇、特に、カソード(空気極)側における急激な温度上昇を抑制することができる。また、燃料電池1の出力密度の大きな変動を抑制することができ、安定した発電反応を維持することが可能となる。
さらに、熱の管理を適確に行って燃料電池1の急激な温度上昇を抑制することで、使用時における安全性を向上させることができる。また、蓄熱部材80を設けることで、吸熱反応であるアノード(燃料極)13における反応を、蓄熱部材80が保温した熱で促進することができる。これによっても、安定した発電反応を維持することが可能となる。
例えば、携帯機器に内蔵されることを想定した小型の燃料電池においては、冷却にフィンやファンを取り付けることが難しく、一方で、熱源としてのヒータを取り付ける場合には、ヒータに電力を供給することによる出力の低下が問題となる。しかしながら、本発明に係る燃料電池1では、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材からなる蓄熱層60を備えることで、上記したフィンやヒータ等を設けずに、熱の管理を適確に行うことができるとともに、安定した出力を維持することができる。
次に、本発明に係る燃料電池が優れた出力特性および温度特性を有することを実施例1〜実施例2および比較例1に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1で使用した燃料電池は、図2に示した燃料電池1において、蓄熱部材80を設けずに、蓄熱層60のみを設けた構成としたものであるので、図2を参照して説明する。
実施例1で使用した燃料電池は、図2に示した燃料電池1において、蓄熱部材80を設けずに、蓄熱層60のみを設けた構成としたものであるので、図2を参照して説明する。
まず、燃料電池セル10の作製方法について説明する。
アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層12としての多孔質カーボンペーパ(40mm×30mmの長方形)に塗布することにより、厚さが100μmのアノード触媒層11を得た。
カソード用触媒粒子(Pt)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層15としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより、厚さが100μmのカソード触媒層14を得た。なお、アノードガス拡散層12と、カソードガス拡散層15とは、同形同大であり、これらのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層11およびカソード触媒層14も同形同大である。
上記したように作製したアノード触媒層11とカソード触媒層14との間に、電解質膜17として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)を配置し、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向するように位置を合わせた状態でホットプレスを施すことにより、燃料電池セル10を得た。
続いて、この燃料電池セル10を、複数の開孔を有する金箔で挟み、アノード導電層18およびカソード導電層19を形成した。なお、電解質膜17とアノード導電層18との間、電解質膜17とカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20を挟持してシールを施した。
また、保湿層50として、厚さが500μmで、透気度が2秒/100cm3(JIS P−8117に規定の測定方法による)で、透湿度が4000g/(m2・24h)(JIS L−1099 A−1に規定の測定方法による)のポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
この保湿層50の上に、蓄熱層60として、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が58℃で厚さが1mmの蓄熱シート(サーモメモリ(三菱製紙株式会社製))を設置した。さらにその上に、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が39℃で厚さが1mmの蓄熱シート(サーモメモリ(三菱製紙株式会社製))を積層して設置した。なお、これらの蓄熱シートには、空気取り入れのための空気導入口(直径3.6mmの円形、口数35個)が形成されている。
この蓄熱層60の上に、空気取り入れのための空気導入口71(直径3.6mmの円形、口数35個)が形成された厚さが1mmのステンレス板(SUS304)を配置して表面カバー70とした。
上記したように作製された燃料電池セル10を用いて、燃料電池1を作製した。液体燃料Fとして、純度99.9重量%の純メタノールを使用し、ポンプ90によって純メタノールを燃料供給部43に供給した。保湿層50のカソード(空気極)側の直下で、カソード導電層19を構成する金箔の表面温度が45℃より高温となったときにはポンプ90を停止し、45℃以下ではポンプ90を作動した。
そして、温度が25℃、相対湿度が50%の環境の下、燃料電池1の出力電圧が0.3Vで一定になるように燃料電池1を作動させた。
上記した条件の下、保湿層50のカソード(空気極)側の直下で、カソード導電層19を構成する金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置の温度の時間的変化を計測した。なお、温度は、カソード導電層19を構成する金箔の表面に熱電対を直接貼り付けることによって計測された。
さらに、燃料電池1の出力密度(mW/cm2)の時間的変化を計測した。ここで、燃料電池1の出力密度(mW/cm2)とは、燃料電池1に流れる電流密度(発電部の面積1cm2当りの電流値(mA/cm2))に燃料電池1の出力電圧を乗じたものである。また、発電部の面積とは、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向している部分の面積である。本実施例では、アノード触媒層11とカソード触媒層14の面積が等しく、かつ完全に対向しているので、発電部の面積はこれらの触媒層の面積に等しい。
図3は、実施例1における、上記した温度および出力密度の時間的変化の計測結果を示す図である。
(実施例2)
実施例2では、蓄熱層60の構成が異なる以外は、実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成とした。
実施例2では、蓄熱層60の構成が異なる以外は、実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成とした。
実施例2では、保湿層50の上に、蓄熱層60として、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が58℃で厚さが1mmの蓄熱シート(サーモモメモリ(三菱製紙株式会社製))を設置した。さらに、相変化温度が58℃の蓄熱シート上に、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が39℃で厚さが1mmの蓄熱シート(サーモメモリ(三菱製紙株式会社製))を積層して設置した。また、さらに、相変化温度が39℃の蓄熱シート上に、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が31℃で厚さが1mmの蓄熱シート(サーモメモリ(三菱製紙株式会社製))を積層して設置した。なお、これらの蓄熱シートには、空気取り入れのための空気導入口(直径3.6mmの円形、口数35個)が形成されている。
この構成を備える燃料電池1を用いて、実施例1における、温度および出力密度の時間的変化の計測条件および計測方法と同じ計測条件および計測方法で、温度および出力密度の時間的変化を計測した。
図4は、実施例2における、上記した温度および出力密度の時間的変化の計測結果を示す図である。
(比較例1)
比較例1では、蓄熱層60の構成が異なる以外は、実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成とした。
比較例1では、蓄熱層60の構成が異なる以外は、実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成とした。
比較例1では、保湿層50の上に、蓄熱層60として、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が58℃で厚さが1mmの蓄熱シート(サーモメモリ(三菱製紙株式会社製))を設置した。なお、この蓄熱シートには、空気取り入れのための空気導入口(直径3.6mmの円形、口数35個)が形成されている。
この構成を備える燃料電池を用いて、実施例1における、温度および出力密度の時間的変化の計測条件および計測方法と同じ計測条件および計測方法で、温度および出力密度の時間的変化を計測した。
図5は、比較例1における、上記した温度および出力密度の時間的変化の計測結果を示す図である。
(実施例1〜実施例2および比較例1のまとめ)
図3〜図5に示すように、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を、相変化温度の高い順に燃料電池セル10側から積層して構成される蓄熱層60を備える、実施例1および実施例2における燃料電池の温度および出力密度の時間的な変動は、単層の蓄熱部材で構成される蓄熱層60を備える、比較例1における燃料電池の温度および出力密度の時間的な変動よりも小さいことがわかった。特に、相変化温度の異なる3つの蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層60を備える、実施例2における燃料電池の温度および出力密度の時間的な変動は、小さかった。
図3〜図5に示すように、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を、相変化温度の高い順に燃料電池セル10側から積層して構成される蓄熱層60を備える、実施例1および実施例2における燃料電池の温度および出力密度の時間的な変動は、単層の蓄熱部材で構成される蓄熱層60を備える、比較例1における燃料電池の温度および出力密度の時間的な変動よりも小さいことがわかった。特に、相変化温度の異なる3つの蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層60を備える、実施例2における燃料電池の温度および出力密度の時間的な変動は、小さかった。
この結果から、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層60を備えることで、燃料電池における温度変動や発電状態が安定し、一定の出力密度が得られることがわかった。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、燃料電池セルに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、すべてが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…燃料電池、10…燃料電池セル、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…アノード(燃料極)、14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…カソード(空気極)、17…電解質膜、18…アノード導電層、19…カソード導電層、20…Oリング、30…燃料分配層、31…開口部、40…燃料供給機構、41…燃料収容部、42…燃料供給部本体、43…燃料供給部、44…流路、50…保湿層、60…蓄熱層、70…表面カバー、71…空気導入口。
Claims (5)
- 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給するための燃料供給機構と、
前記膜電極接合体で発生した熱を潜熱として蓄熱し、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を積層して構成された蓄熱層と
を具備することを特徴とする燃料電池。 - 前記蓄熱層を構成する複数の蓄熱部材が、相変化温度の高い順に前記膜電極接合体側から積層されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記蓄熱層が、空気極側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池。
- 前記燃料供給機構の少なくとも一部に、前記膜電極接合体で発生した熱を潜熱として蓄熱する蓄熱部材を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃料電池。
- 前記燃料における燃料濃度が60重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の燃料電池。
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2008
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