JP2010079175A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】温度変化及び湿度変化による表示特性の長期安定性に優れた液晶表示装置の提供。
【解決手段】液晶セルと、該液晶セルの視認側に設けられた視認側偏光板と、液晶セルのバックライト側に設けられたバックライト側偏光板とを有し、前記視認側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間、及び前記バックライト側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間のいずれか一方には、遅相軸方向の光弾性係数が正の第1の位相差フィルムを有し、他方には、遅相軸方向の光弾性係数が負の第2の位相差フィルムを有し、各位相差フィルムの遅層軸が直交している液晶表示装置である。
【選択図】なし

Description

本発明は、温度変化及び湿度変化による表示特性の安定性に優れた液晶表示装置に関する。
液晶表示装置には、偏光板と共に位相板(位相差フィルム)が用いられているが、環境温度及び湿度が変化(例えば25℃で60%RHから25℃で10%RHへ変化)した際には、偏光板中の位相差フィルムのRe又はRthが変化して表示性能が変化してしまうという問題がある。
前記問題点を解決するため、例えば特許文献1には、位相差板を少なくとも2枚積層した位相差板であって、遅相軸方向の寸法変化率(X1)>進相軸方向の寸法変化率(X2)の位相差板と、遅相軸方向の寸法変化率(Y1)<進相軸方向の寸法変化率(Y2)の位相差板とを遅相軸が同方向になるように積層した位相差板が提案されている。また、液晶セルの片側に、遅相軸方向の寸法変化率(X1)>進相軸方向の寸法変化率(X2)の位相差板を、もう片側に、遅相軸方向の寸法変化率(Y1)<進相軸方向の寸法変化率(Y2)の位相差板を、遅相軸が同方向になるように配置した液晶表示装置が提案されている。
前記提案によれば、X1>X2の位相差フィルムとY1<Y2の位相差フィルムを積層したり、該2種類のフィルムを遅相軸が同一方向になるように配置することで(nx−ny)の変化、即ちRe変化を抑制することができる。しかし、この提案について、実際に耐久性試験を行うとRe変化だけでなくRth変化も起こるため、表示性能が変化してしまうという問題がある。
特開2006−392111号公報
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、環境温度及び湿度が変化した場合にも液晶セルの両側に配置する位相差フィルムの光弾性係数を適正化することにより表示性能の変化を抑えることができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らが、偏光板中の位相差フィルムのRe/Rth変化要因について鋭意検討した結果、Re/Rth変化の要因は、(1)位相差フィルムの化学結合変化等に起因すると考えられるフィルム単体の非可逆的なRe/Rth変化と、(2)位相差フィルムの収縮を抑制するための応力による可逆的なRe/Rth変化(フィルムの弾性率×フィルムの光弾性係数×フィルムの収縮率×膜厚)の総和であることを知見した。そして、前記(2)のRe/Rth変化を与える要因のうち、位相差フィルムの光弾性係数に着目し、該光弾性係数を適正化することにより、表示性能の変化を抑えることができることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 液晶セルと、該液晶セルの視認側に設けられた視認側偏光板と、該液晶セルのバックライト側に設けられたバックライト側偏光板とを有し、
前記視認側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間、及び前記バックライト側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間のいずれか一方には、遅相軸方向の光弾性係数が正の第1の位相差フィルムを有し、他方には、遅相軸方向の光弾性係数が負の第2の位相差フィルムを有し、各位相差フィルムの遅層軸が直交していることを特徴とする液晶表示装置である。
<2> 第1の位相差フィルムの遅相軸方向の光弾性係数及び進相軸方向の光弾性係数がいずれも正であり、第2の位相差フィルムの遅相軸方向の光弾性係数及び進相軸方向の光弾性係数がいずれも負である前記<1>に記載の液晶表示装置である。
<3> 第1の位相差フィルムがセルロースアシレートフィルムであり、第2の位相差フィルムがアクリルフィルムである前記<1>から<2>のいずれかに記載の液晶表示装置である。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、環境温度及び湿度が変化した場合にも液晶セルの両側に配置する位相差フィルムの光弾性係数を適正化することにより表示性能の変化を抑えることができる液晶表示装置を提供することができる。
以下、本発明の液晶表示装置について、詳細に説明する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「平行」あるいは「直交(垂直)」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計回り方向を意味するものとする。
また、「遅相軸方向」は、屈折率が最大となる方向を意味し、「進相軸方向」は、遅相軸方向に垂直な方向を意味する。屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
本実施形態の説明において、測定対象物(フィルム)の面内レターデーション値Reは、以下に示される数式(A)で定義されるものであり、KOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器株式会社製)において、波長λの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
Re=(nx−ny)×d・・・数式(A)
ただし、前記数式(A)中、nx、及びnyは、それぞれ測定対象物の面内の遅相軸方向、及び進相軸方向の屈折率を表す。また、dは、測定対象物の厚みを表す。
nx=(遅相軸方向の弾性率)×(遅相軸方向の光弾性係数)×(遅相軸方向の収縮率)
ny=(進相軸方向の弾性率)×(進相軸方向の光弾性係数)×(進相軸方向の収縮率)
測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法により、厚み方向のレターデーション値Rthが算出される。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(B)、及び式(C)よりRthを算出することもできる。
Figure 2010079175
・・・式(B)
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、前記式(B)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは、測定対象物の厚みを表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・式(C)
nx=(遅相軸方向の弾性率)×(遅相軸方向の光弾性係数)×(遅相軸方向の収縮率)
ny=(進相軸方向の弾性率)×(進相軸方向の光弾性係数)×(進相軸方向の収縮率)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rthは算出される。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種位相差フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な位相差フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルの視認側に設けられた視認側偏光板と、該液晶セルのバックライト側に設けられたバックライト側偏光板とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
本発明においては、前記視認側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間、及び前記バックライト側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間のいずれか一方には、遅相軸方向の光弾性係数が正の第1の位相差フィルムを有し、他方には、遅相軸方向の光弾性係数が負の第2の位相差フィルムを有し、各位相差フィルムの遅層軸が直交している。
この場合、前記第1の位相差フィルムの遅相軸方向の光弾性係数及び進相軸方向の光弾性係数がいずれも正であり、前記第2の位相差フィルムの遅相軸方向の光弾性係数及び進相軸方向の光弾性係数がいずれも負であることが好ましい。
ここで、前記光弾性係数は、例えば25℃、60%RHの環境下でエリプソメーター(M−50、日本分光株式会社製)を用いて測定することができる。
したがって本発明の液晶表示装置においては、液晶セルの両側に配置する位相差フィルムのうち一方を光弾性係数が正のものを用い、他方を光弾性係数が負のものを用いることにより、液晶セルの両側に配置する位相差フィルムの光弾性係数を適正化できるので、環境温度及び湿度が変化した場合にも表示性能の変化を抑えることができる。
<第1及び第2の位相差フィルム>
前記第1及び第2の位相差フィルムとしては、上記光弾性係数の関係を満たすように、適宜、公知の材料を選択して製造されるが、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好適である。
前記熱可塑性樹脂フィルムにおける熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート;ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロースエステル;セルロースアシレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。
これらの中でも、遅相軸方向の光弾性係数が正の第1の位相差フィルムとしては、セルロースアシレートフィルムが特に好ましい。
また、遅相軸方向の光弾性係数が負の第2の位相差フィルムとしては、アクリルフィルムが特に好ましい。
〔セルロースアシレートフィルム〕
前記セルロースアシレートフィルムとしては、例えば特開2008−3126号公報などに記載されているものを用いることができる。
具体的には、セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位及び6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸及び触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロース及び系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解及びエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム又は亜鉛の炭酸塩、酢酸塩又は酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度及び重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水又は希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水又は希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄及び安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上)を意味する。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
前記セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。前記置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じた方法や、NMR法を挙げることができる。
前記セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、偏光板保護フィルム、光学フィルムの用途に用いる場合、アシル置換度が高い方がフィルムの透湿性や吸湿性に優れるため好ましい。このため、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることが好ましい。更には置換度が2.70〜2.96であることが好ましく、2.80〜2.94であることがより好ましい。
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
これらの中でも、合成の容易さ、コスト、置換基分布の制御のしやすさなどの観点から、アセチル基、アセチル基とプロピル基の混合エステルが好ましく、アセチル基が特に好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがより好ましく、2.3〜3.4であることが更に好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布が狭い)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
前記セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
前記セルロースアシレートフィルムには、必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)減少剤、マット剤(微粒子)、剥離促進剤、赤外吸収剤などを添加することが好ましい。
〔アクリルフィルム〕
前記アクリルフィルムは、メタクリル系フィルム及びアクリル系フィルムを表す。一方、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタクリルを表す。
−アクリル樹脂−
前記アクリルフィルムを構成するアクリル樹脂とは、主成分として、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸の誘導体を重合して得られる樹脂及びその誘導体を含有する樹脂であり、本発明の効果を損なわない限り特に限定されずに公知の(メタ)アクリル酸系熱可塑性樹脂を用いることができる。前記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステルを挙げることができる。前記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等をあげることができる。前記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。
その他の(メタ)アクリル酸の誘導体であるアクリル樹脂として、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
一般式(1)
Figure 2010079175
前記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。本発明のアクリル樹脂は、アクリル樹脂1種の単重合体であっても、アクリル樹脂2種以上の共重合体であっても、少なくとも1種のアクリル樹脂とその他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度(以下Tgともいう)を高める観点からアクリル樹脂とその他の樹脂の共重合体との共重合体であることが好ましい。
−共重合成分−
本発明のアクリル樹脂に共重合可能なアクリル樹脂以外の単量体としては、スチレン及びo−メチルスチレン,p−メチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,o−エチルスチレン,p−エチルスチレン,p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン,α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、ラクトン環単位、グルタル酸無水物単位、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、マレイン酸等の不飽和酸類、グルタルイミド単位等が挙げられる。
前記アクリル樹脂は一般的に熱分解されやすく、特にフィルム製膜時における溶融製膜過程で熱分解されやすい。そのため、従来のアクリルフィルムの製造方法ではメタアクリル酸エステルなどの低分子有機分解物が揮散し、この熱分解産物がキャストロール金属表面に付着してロール表面に薄いアクリル被膜を形成する。この、ダイから吐出されたアクリルメルトとの密着性や粘着性が強くなり、横ダンが発生し易くなる。また、アクリル樹脂を溶融製膜する際、フィルムの膜厚が薄いほど、キャストロール表面とフィルムとが密着し易なるため、横ダンの発生が顕在化する。
したがって、前記共重合成分の中でも、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−メチルマレイミドなどのN−置換マレイミド、ラクトン環単位、グルタル酸無水物単位、無水マレイン酸単位及びグルタルイミド単位などが好ましく、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位及びグルタル酸無水物単位がより好ましい。このような組成を有するアクリル樹脂を用いることで、アクリル樹脂の耐熱性が向上し、アクリルフィルム製造過程における低分子有機分解物の発生を抑制することができ、横ダンの発生も抑制されることとなる。
−ラクトン環単位−
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中は主鎖中ともいう)に形成されることにより、共重合体であるアクリル樹脂に高い耐熱性が付与され、かつ、ガラス転移温度(Tg)も高くなるため好ましい。また、耐熱性向上及びフィルム製造時の泡やシルバーストリーク抑制の観点から、ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率は十分に高いことが好ましい。
本発明においてアクリル樹脂との共重合に用いられる前記ラクトン環単位としては、特に制限はないが、特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号等の各公報に記載のものを挙げることができる。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
主鎖中のラクトン環単位の構造は、4〜8員環であることが好ましく、構造の安定性から5〜6員環であることがより好ましく、6員環であることが特に好ましい。主鎖中のラクトン環単位の構造が6員環である場合、下記一般式(2)で表される構造や特開2004−168882号公報で表される構造などが挙げられるが、主鎖にラクトン環単位の構造を導入する前の重合体を合成する上において重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を高い重合収率で得易い点や、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性がよい点で、下記一般式(2)で表される構造であることが特に好ましい。
一般式(2)
Figure 2010079175
前記一般式(2)中、R11〜R13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
前記有機残基は、炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基などが挙げられる。また、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
前記R11〜R13の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
ラクトン環単位含有アクリル樹脂の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、得られた重合体を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによってラクトン環含有重合体を得ることができる。
−無水マレイン酸単位−
無水マレイン酸構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、共重合体であるアクリル樹脂に高い耐熱性が付与され、かつ、ガラス転移温度(Tg)も高くなるため好ましい。
前記アクリル樹脂との共重合に用いられる前記無水マレイン酸単位としては、特に制限はないが、特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号の各公報に記載のものや、マレイン酸変性樹脂を挙げることができる。なお、これらは本発明を限定するものではない。この中でも、特開2007−113109号公報に記載の樹脂及びマレイン酸変性MAS樹脂(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体、例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)を好ましく使用することができる。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂を製造する方法は特に制限がなく公知の方法を用いることができる。
前記マレイン酸変性樹脂としては、得られるポリマー中に無水マレイン酸単位が含まれるものであれば制限はなく、例えば、(無水)マレイン酸変性MS樹脂、(無水)マレイン酸変性MAS樹脂(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体)、(無水)マレイン酸変性MBS樹脂、(無水)マレイン酸変性AS樹脂、(無水)マレイン酸変性AA樹脂、(無水)マレイン酸変性ABS樹脂、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンなどが挙げられる。
前記無水マレイン酸単位は、下記一般式(3)で表される構造である。
一般式(3)
Figure 2010079175
前記一般式(3)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
前記有機残基は、炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基などが挙げられるまた、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
前記R21及びR22の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
前記R21及びR22がそれぞれ水素原子を表す場合は、固有複屈折の調整の観点から、更にその他の共重合成分を含むことも好ましい。このような3元系以上の耐熱性アクリル樹脂として、例えば、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を好ましく用いることができる。
−グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂−
グルタル酸無水物構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、共重合体であるアクリル樹脂に高い耐熱性が付与され、かつ、ガラス転移温度(Tg)も高くなるため好ましい。
本発明においてアクリル樹脂との共重合に用いられる前記無水マレイン酸単位としては、特に制限はないが、特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918号等の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記グルタル酸無水物単位は、下記一般式(4)で表される構造である。
一般式(4)
Figure 2010079175
前記一般式(4)中、R31及びR32は、同一又は相異なる水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
前記R31及びR32の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
このようなグルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂は、グルタル酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体とを共重合体とした後、該共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコール及び/又は脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。
−その他の共重合成分−
また、前記アクリル系樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分を共重合した単位を有していてもよい。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリン、アクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類、グルタルイミド単位等が挙げられる。
前記アクリル樹脂は、前記ラクトン環単位を含むアクリル樹脂、前記無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂及び前記グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂が好ましく、前記ラクトン環単位を含むアクリル樹脂及び前記無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂がより好ましい。
一般にアクリル樹脂は熱分解しやすいことが知られており、ラクトン環単位を含むアクリル系樹脂、無水マレイン酸単位を含むアクリル系樹脂及びグルタル酸無水物単位を含むアクリル系樹脂は一般的なアクリル樹脂よりも更に熱分解しやすい。一方、ラクトン環単位を含むアクリル系樹脂、無水マレイン酸単位を含むアクリル系樹脂及びグルタル酸無水物単位を含むアクリル系樹脂は一般的なアクリル樹脂はガラス転移温度(Tg)が高く、かつ光線透過率も高いという物性を有しているため、液晶表示装置用の材料として好ましい。
このような熱分解し易いアクリル系樹脂、中でも更に熱分解し易いラクトン環単位を含むアクリル系樹脂、無水マレイン酸単位を含むアクリル系樹脂及びグルタル酸無水物単位を含むアクリル系樹脂に対し、前記アクリルフィルムの製造方法によれば、好ましい範囲のRe及びRthのアクリルフィルムを得ることができる。また、前記アクリルフィルムの製造方法によれば、熱分解に由来する異物の発生を顕著に抑制することができ、フィルム表面の欠陥をより改善したアクリルフィルムを得ることができる。即ち、熱分解しやすい樹脂を用いてフィルムを製膜する場合は溶融温度を上げられないために高粘度の状態で製膜する必要があり、高粘度のメルトを用いて製膜するとダイ出口で大きな力で延伸されたり、タッチ・チルロール間で大きな力でズリが加えられやすい。その結果、従来のアクリルフィルムの製造方法では、好ましいRe及びRthの範囲を超えてしまう。これに対し前記アクリルフィルムの製造方法を用いることで、高粘度のアクリル樹脂から好適なRe及びRthの範囲に制御された本発明のアクリルフィルムを得ることができる。
前記アクリル樹脂は、該アクリル樹脂を構成する全モノマー中にMMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、40モル%〜80モル%含むものがより好ましい。また、MMA以外にラクトン環単位、無水マレイン酸単位又はグルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましい。前記ラクトン環単位、無水マレイン酸単位及びグルタル酸無水物単位は、アクリル樹脂を構成する全モノマー中に5モル%以上60モル%以下含まれることが好ましく、10モル%以上50モル%以下含まれることがより好ましい。
前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は105℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、更に好ましくは115℃〜150℃である。これらの溶融粘度は230℃において1%の歪を1Hzで与えた際に500Pa・s〜10000Pa・sが好ましく、より好ましくは800Pa・s〜7000Pa・s、更に好ましくは1000Pa・s〜5000Pa・sである。
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上2,000,000以下の範囲内、より好ましくは5,000以上1,000,000以下の範囲内、更に好ましくは10,000以上500,000以下の範囲内、特に好ましくは50,000以上500,000以下の範囲内である。
前記アクリルフィルムは、更に必要に応じて安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、マット剤、酸捕捉剤、光安定剤、赤外線吸収剤、レターデーション調整剤等の添加剤を配合することができる。
〔偏光板〕
前記偏光板は、少なくとも、位相差フィルムと、偏光子とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
−偏光子−
前記偏光子は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光子、又はバインダーとヨウ素、もしくは二色性色素とからなる偏光子が好ましい。
前記ヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
また、市販の偏光子は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
したがって、上記のように、バインダーの厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下が更に好ましい。前記厚みが20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
偏光子のバインダーは架橋していてもよい。偏光子のバインダーとして、それ自体架橋可能なポリマーを用いてもよい。官能基を有するポリマー、又はポリマーに官能基を導入して得られたポリマーに、光、熱あるいはpH変化を与えて、官能基を反応させてポリマー間を架橋させ、偏光子を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、架橋可能なポリマー、又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体上に塗布した後、加熱することにより実施できる。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行ってもよい。
上述したように、前記偏光子のバインダーとしては、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー(例えば、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いてもよい。
また、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
前記ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70%〜100%が好ましく、80%〜100%がより好ましく、95%〜100%が更に好ましい。
前記ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5,000が好ましい。
前記変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、COONa、Si(OH)、N(CH・Cl、C19COO、SONa、C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、COONa、SH、SC1225を導入することができる。
変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3,000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号公報、特開平9−152509号公報、及び特開平9−316127号公報に記載がある。
また、鹸化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコール、及びアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
更に、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
前記架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載があり、本発明に用いることができる。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光子の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。前記架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%が更に好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
バインダー中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。即ち、架橋剤の残留量が多い偏光子を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
前記二色性色素としては、例えばアゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
前記二色性色素としては、例えばC.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリ−ン59、C.I.アシッド・レッド37などが挙げられる。
前記二色性色素については、特開平1−161202号公報、特開平1−172906号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−183602号公報、特開平1−248105号公報、特開平1−265205号公報、特開平7−261024号公報に記載がある。
前記二色性色素は、遊離酸、又はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、もしくはアミン塩等の塩として用いられる。二種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光子、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光子又は偏光板が、単板透過率及び偏光率とも優れており、好ましい。
前記偏光子は、バインダーからなるフィルムを偏光子の長手方向(MD方向)に延伸した後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は、2.5倍〜30.0倍が好ましく、3.0倍〜10.0倍がより好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。
また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5倍〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0倍〜10.0倍が好ましい。
延伸工程は、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。
前記偏光板を液晶表示装置に用いる場合には、視認側偏光板の偏光子と液晶セルとの間、及びバックライト側偏光板の偏光子と液晶セルとの間のいずれか一方には、第1の位相差フィルムを有し、他方には、第2の位相差フィルムを有し、各位相差フィルムの遅層軸が直交するように配置される。
前記偏光子と前記位相差フィルムとの貼り合せには接着剤を用いてもよく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を接着剤として用いることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
前記接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。
前記偏光板を液晶表示装置に用いる場合、視認側表面に反射防止層を設置するのが好ましく、該反射防止層を偏光子の視認側の保護層と兼用してもよい。
液晶表示装置の視角による色味変化抑制の観点から、反射防止層の内部ヘイズを50%以上にすることが好ましい。これら好ましい具体例としては、特開2001−33783号公報、特開2001−343646号公報、及び特開2002−328228号公報に記載がある。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光子の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。
本発明の偏光子の透過率は、波長550nmの光において、30%〜50%の範囲にあることが好ましく、35%〜50%の範囲にあることが更に好ましく、40%〜50%の範囲にあることが特に好ましい。
偏光度は、波長550nmの光において、90%〜100%の範囲にあることが好ましく、95%〜100%の範囲にあることが更に好ましく、99%〜100%の範囲にあることが特に好ましい。
〔液晶表示装置〕
本発明の液晶表示装置は、少なくとも、前記偏光板と、液晶セルとを備え、更に必要に応じてその他の部材を備えてなる。
前記液晶セルとしては、例えばTN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)などの様々な表示モードの液晶セルを用いることができるが、これらの中でも、IPSモードが特に好ましい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(製造例1)
<位相差フィルム(1)の作製>
−セルロースアシレートフィルム試料の作製−
下記表1に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。なお、溶液の溶媒組成は次の通りであり、綿の濃度が20質量%となるよう濃度を調整して調液した。
・メチレンクロライド(第1溶媒)・・・100質量部
・メタノール(第2溶媒)・・・19質量部
・1−ブタノール・・・1質量部
Figure 2010079175
表1中、AAはアジピン酸、EGはエチレングリコールを示す。
更に、下記のマット剤分散液を1.3質量部加え、セルロースアシレートフィルムを、小幅の試験製膜機によって製膜した。
−マット剤分散液の調製−
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤分散液を調製した。
マット剤分散液の組成
・シリカ粒子分散液(AEROSIL R972、日本アエロジル株式会社製、平均粒径16nm)・・・10.0質量部
・メチレンクロライド・・・72.8質量部
・メタノール・・・3.9質量部
・ブタノール・・・0.5質量部
・前記セルロースアシレート溶液・・・10.3質量部
セルロースアシレート溶液を充分に攪拌,密閉容器にて加熱溶解して、ドープを調製した。ドープを流延口から−5℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が約3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、膜厚60μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
<ΔRe及びΔRthの測定>
作製したセルロースアシレートフィルム(位相差フィルム(1))について、温度25℃、湿度60%RH環境下で14日間放置し、波長590nmにおけるReレターデーション値及びRthレターデーション値をKOBRA WR(王子計測機器株式会社製)で測定した結果、それぞれRe=1.8nm、Rth=−6.9nmであった。前記位相差フィルムにおいては平均屈折率を1.48としてRth(λ)を算出した。その後温度25℃、湿度10%RH環境下で14日間放置し、再度フィルムのRe、Rthを測定した。その結果、Re=5.7nm、Rth=1.5nmであった(ΔRe=3.9nm、ΔRth=5.4nm)。
<光弾性係数の測定>
作製したセルロースアシレートフィルム(位相差フィルム(1))について、25℃、60%RHの環境下でエリプソメーター(M−50、日本分光株式会社製)を用いて測定したところ、遅相軸方向の光弾性係数は10.1×10−12Pa−1、進相軸方向の光弾性係数は10.5×10−12Pa−1であった。
(製造例2)
<位相差フィルム(2)の作製>
−アクリル樹脂の調製−
ラクトン環単位を含む下記アクリル樹脂の調製を行った。
特開2008−9378号公報の[0222]〜[0224]の製造例1に従い、メタクリル酸メチル7500g、及び2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから、ラクトン化率98%、ガラス転移温度(Tg)134℃のアクリル樹脂を得た。
−アクリルフィルムの製膜−
調製した前記アクリル樹脂を90℃の真空乾燥機で乾燥して含水率を0.03%以下とした後、安定剤イルガノックス1010(チバガイギー株式会社製、240℃加熱1時間前後の揮散量が1.0%))1.0質量%を添加し、230℃において窒素気流中下、ベント付2軸混練押出し機を用い、水中に押出しストランド状にした後、裁断し直径3mm長さ5mmのペレットを得た。
このペレットを90℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.03%以下とした。一方、前記アクリル樹脂をターボ工業株式会社製(ターボミルT−400型)の粉砕機によって粉砕し、安定剤(イルガノックス1010)を0.1質量%添加し、ふるいにかけることにより直径100μmのアクリル樹脂粉体を得た。前記ペレットに加え、前記アクリル樹脂粉体0.01質量%を、1軸混練押出し機のホッパー(供給部)内に投入し、供給部220℃、圧縮部230℃、計量部240℃で混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間に300メッシュのスクリーンフィルター、ギアポンプ、濾過精度7μmのリーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。更にスタチックミキサーはダイ直前のメルト配管内に設置した。これをハンガーコートダイから押出した。
その後、3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側のキャストロール(チルロール)にタッチロールを接触させた。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの、ただし薄肉金属外筒厚みは2mmとした)を用い、タッチ圧3MPa、キャストロールとタッチロールの温度差3℃で使用した。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また、製膜幅は2.0mとし、40m/分で3000m巻き取った。製膜後の未延伸フィルムの膜厚が60μmの製造例2のアクリルフィルムを得た。
<ΔRe及びΔRthの測定>
作製したアクリルフィルム(位相差フィルム(2))について、温度25℃、湿度60%RH環境下で14日間放置し、波長590nmにおけるReレターデーション値及びRthレターデーション値をKOBRA WR(王子計測機器株式会社製)で測定した結果、それぞれRe=0.1nm、Rth=−3.9nmであった。前記位相差フィルムにおいては平均屈折率を1.48としてRth(λ)を算出した。その後温度25℃、湿度10%RH環境下で14日間放置し、再度フィルムのRe、Rthを測定した。その結果、Re=−1.6nm、Rth=−8.0nmであった(ΔRe=−1.7nm、ΔRth=−4.1nm)。
<光弾性係数の測定>
作製したアクリルフィルム(位相差フィルム(2))について、25℃、60%RHの環境下でエリプソメーター(M−50、日本分光株式会社製)を用いて測定したところ、遅相軸方向の光弾性係数は−6.5×10−12Pa−1、進相軸方向の光弾性係数は−6.4×10−12Pa−1であった。
(製造例3)
−偏光板(1)〜(2)の作製−
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色した。次いで、ホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
作製した各位相差フィルム、及び市販のセルロースアシレートフィルムを、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行った作製した各位相差フィルム、及び市販のセルロースアシレートフィルムで偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ、偏光板(1)〜(2)を作製した。
ここで、前記市販のセルロースアシレートフィルムとしては、フジタックTD80UL(富士フイルム株式会社製)を用いた。
(実施例1)
リア側に偏光板(1)、フロント側に偏光板(2)を、東芝社製液晶TV 26C3500に吸収軸がクロスニコルになるようにそれぞれ液晶セルの視認側、バックライト側に粘着剤(綜研化学株式会社製、SK2057)を介して貼合せて液晶表示装置を作製した。
得られた液晶表示装置について、以下のようにして、黒輝度の視野角特性、及び黒色味の視野角特性について評価した。結果を表2に示す。
<表示性能変化の評価>
25℃、60%RHの環境下でコントラスト測定器(ELDIM社製、EZContrast)を用いて、黒輝度の視野角特性、及び黒色味の視野角特性を計測した。その後、該液晶表示装置を25℃、10%RHの環境下に14日間入れた後、25℃、10%RHの環境下でコントラスト測定器(ELDIM社製、EZContrast)を用いて黒輝度の視野角特性及び黒色味の視野角特性を計測し、下記基準で評価した。
〔黒輝度の視野角特性の評価基準〕
○:極角60度、方位角45度の黒輝度変化が30%未満
△:極角60度、方位角45度の黒輝度変化が30%以上50%未満
×:極角60度、方位角45度の黒輝度変化が50%以上
〔黒色味の視野角特性の評価基準〕
○:極角60度、方位角45度の色味変化(Δu’v’)が0.03未満
△:極角60度、方位角45度の色味変化(Δu’v’)が0.03以上0.05未満
×:極角60度、方位角45度の色味変化(Δu’v’)が0.05以上
(実施例2)
リア側に偏光板(2)を、フロント側に偏光板(1)を、東芝社製液晶TV 26C3500に吸収軸がクロスニコルになるようにそれぞれ液晶セルの視認側、バックライト側に粘着剤(綜研化学株式会社製、SK2057)を介して貼合せて液晶表示装置を作製した。
次に、得られた液晶表示装置について、実施例1と同様にして、黒輝度の視野角特性、及び黒色味の視野角特性について評価した。結果を表2に示す。
(比較例1)
リア側に偏光板(1)を、フロント側に偏光板(1)を、東芝社製液晶TV 26C3500に吸収軸がクロスニコルになるようにそれぞれ液晶セルの視認側、バックライト側に粘着剤(綜研化学株式会社製、SK2057)を介して貼合せて液晶表示装置を作製した。
次に、得られた液晶表示装置について、実施例1と同様にして、黒輝度の視野角特性、及び黒色味の視野角特性について評価した。結果を表2に示す。
(比較例2)
リア側に偏光板(2)を、フロント側に偏光板(2)を、東芝社製液晶TV 26C3500に吸収軸がクロスニコルになるようにそれぞれ液晶セルの視認側、バックライト側に粘着剤(綜研化学株式会社製、SK2057)を介して貼合せて液晶表示装置を作製した。
次に、得られた液晶表示装置について、実施例1と同様にして、黒輝度の視野角特性、及び黒色味の視野角特性について評価した。結果を表2に示す。
Figure 2010079175
Figure 2010079175
本発明の液晶表示装置は、環境温度及び湿度が変化した場合にも液晶セルの両側に配置する位相差フィルムの光弾性係数を適正化することにより表示性能の変化を抑えることができるので、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、VA、HANなどの様々な表示モードの液晶表示装置に好適であり、特にIPSモードに好適である。

Claims (3)

  1. 液晶セルと、該液晶セルの視認側に設けられた視認側偏光板と、該液晶セルのバックライト側に設けられたバックライト側偏光板とを有し、
    前記視認側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間、及び前記バックライト側偏光板の偏光子と前記液晶セルとの間のいずれか一方には、遅相軸方向の光弾性係数が正の第1の位相差フィルムを有し、他方には、遅相軸方向の光弾性係数が負の第2の位相差フィルムを有し、各位相差フィルムの遅層軸が直交していることを特徴とする液晶表示装置。
  2. 第1の位相差フィルムの遅相軸方向の光弾性係数及び進相軸方向の光弾性係数がいずれも正であり、第2の位相差フィルムの遅相軸方向の光弾性係数及び進相軸方向の光弾性係数がいずれも負である請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 第1の位相差フィルムがセルロースアシレートフィルムであり、第2の位相差フィルムがアクリルフィルムである請求項1から2のいずれかに記載の液晶表示装置。
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