以下、本発明のエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るエンジンの高圧燃料ポンプ制御装置の一実施形態を、それが適用されたエンジンと共に示すシステム構成図である。
図示例のエンジン507は、燃料を燃焼室507cに直接噴射供給する燃料噴射弁54を備えた4気筒の筒内噴射式エンジンであり、各シリンダ(気筒)507bに吸入される空気は、エアクリーナ502の入口部から取り入れられ、空気流量計(エアフロセンサ)503を通り、吸気流量を制御する電制スロットル弁505aが収容されたスロットルボディ505を通ってコレクタ506に入る。前記コレクタ506に吸入された空気は、エンジン507の各シリンダ507bに接続された吸気管501に分配された後、ピストン507a、前記シリンダ507b等によって形成される燃焼室507cに導かれる。
また、前記エアフロセンサ503からは、前記吸気流量を表す信号が本実施形態の高圧燃料ポンプ制御装置の主要構成部であるコントロールユニット515に供給される。さらに、前記スロットルボディ505には、電制スロットル弁505aの開度を検出するスロットルセンサ504が取り付けられており、その信号もコントロールユニット515に供給される。
一方、ガソリン等の燃料は、燃料タンク50から低圧燃料ポンプ51により一次加圧されて燃圧レギュレータ52により一定の圧力(例えば3kg/cm2)に調圧されるとともに、後述する高圧燃料ポンプ1でより高い圧力(例えば50kg/cm2)に2次加圧され、コモンレール53を介して各シリンダ507bに対して設けられている燃料噴射弁(以下、インジェクタと呼ぶ)54から燃焼室507cに噴射される。前記燃焼室507cに噴射された燃料は、点火コイル522で高電圧化された点火信号により点火プラグ508で着火される。
エンジン507のクランク軸507dに取り付けられたクランク角センサ(以下ポジションセンサと呼ぶ)516は、クランク軸507dの回転位置を表す信号をコントロールユニット515に出力し、また、排気弁526の開閉タイミングを可変にする機構を備えたカム軸(図示省略)に取り付けられたクランク角センサ(以下フェーズセンサと呼ぶ)511は、前記カム軸の回転位置を表す角度信号をコントロールユニット515に出力するとともに、排気弁526のカム軸の回転に伴って回転する高圧燃料ポンプ1のポンプ駆動カム100の回転位置を表す角度信号をもコントロールユニット515に出力する。
前記コントロールユニット515の内部は、図2に示すように、MPU603、EP−ROM602、RAM604及びA/D変換器を含むI/OLSI601等で構成され、ポジションセンサ516、フェーズセンサ511、水温センサ517、並びに燃圧センサ56を含む各種のセンサ類等からの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された各種の制御信号を出力し、アクチュエータである高圧ポンプソレノイド200、前記各燃料噴射弁54及び点火コイル522等に所定の制御信号を供給して、燃料吐出量制御、燃料噴射量制御及び点火時期制御等を実行するものである。
図3は、前記高圧燃料ポンプ1を備えた燃料系システムの全体構成図を示し、図4は、前記高圧燃料ポンプ1の縦断面図を示している。
前記高圧燃料ポンプ1は、燃料タンク50からの燃料を加圧してコモンレール53に高圧の燃料を圧送するものであり、燃料吸入通路10、吐出通路11、加圧室12が形成されている。加圧室12には、加圧部材であるプランジャ2が摺動可能に保持されている。吐出通路11には、下流側の高圧燃料を加圧室に逆流させないために吐出弁6が設けられている。また、吸入通路10には、燃料の吸入を制御する電磁弁8が設けられている。電磁弁8はノーマルクローズ型の電磁弁であり、非通電時に閉弁方向に力が作用し、通電時には開弁方向に力が作用する。
燃料はタンク50から低圧ポンプ51にてポンプ本体1の燃料導入口に、プレッシャレギュレータ52によって一定の圧力に調圧されて導かれる。その後、ポンプ本体1にて加圧され、燃料吐出口からコモンレール53に圧送される。コモンレール53には、導管を介して燃料噴射弁54が接続されるとともに、圧力センサ56、圧力調整弁(以下リリーフ弁と呼ぶ)55が装着されている。リリーフ弁55は、コモンレール53内の燃圧が所定値を超えた際に開弁し、高圧配管系の破損を防止する。燃料噴射弁54は、エンジンの気筒数にあわせて装着されており、コントロールユニット515から与えられる噴射駆動パルス(駆動電流)に従って燃料を噴射する。圧力センサ56は、取得した圧力データをコントロールユニット515に出力する。コントロールユニット515は各種センサから得られるエンジン状態量(例えば、クランク回転角、スロットル開度、エンジン回転数、燃圧等)に基づいて適切な噴射燃料量や燃圧等を演算し、ポンプ1や燃料噴射弁54を制御する。
プランジャ2は、エンジン507における排気弁526のカム軸の回転に伴って回転するポンプ駆動カム100に圧接されたリフタ3を介して往復動し、加圧室12の容積を変化させる。プランジャ2が下降して加圧室12の容積が拡大すると、電磁弁8が開弁し、燃料吸入通路10から加圧室12に燃料が流入する。このプランジャ2が下降する行程を以下、吸入行程と記す。プランジャ2が上昇し、電磁弁8が閉弁すると、加圧室12内の燃料は昇圧され、吐出弁6を通過してコモンレール53へ圧送される。このプランジャ2が上昇する行程を以下、圧縮行程と記す。
図5は、前記高圧燃料ポンプ1の動作タイミングチャートを示している。なお、ポンプ駆動カム100で駆動するプランジャ2の実際のストローク(実位置)は、図6に示すような曲線になるが、上死点と下死点の位置を分かり易くするために、以下、プランジャ2のストロークを直線的に表すこととする。
圧縮行程中に電磁弁8が閉じれば、吸入行程中に加圧室12に吸入された燃料は加圧され、コモンレール53側へ吐出される。もし圧縮行程中に電磁弁8が開弁していれば、その間、燃料は吸入通路10側へ押し戻され、加圧室12内の燃料はコモンレール53側へは吐出されない。このように、ポンプ1の燃料吐出は電磁弁8の開閉によって操作される。電磁弁8の開閉はコントロールユニット515によって操作される。
電磁弁8は弁体5、弁体5を閉弁方向に付勢するばね92、ソレノイド200、アンカ91を構成部品として有する。ソレノイド200に電流が流れると、アンカ91に電磁力が発生して図中右側に引き寄せられ、アンカ91と一体に形成された弁体5が開弁する。ソレノイド200に電流が流れないと、弁体5を閉弁方向に付勢するばね92により、弁体5は閉じる。電磁弁8は駆動電流を流さない状態で閉弁する構造の弁であるため、ノーマルクローズ型の電磁弁と称する。
吸入行程中は、加圧室12の圧力が吸入通路10の圧力よりも低くなり、その圧力差によって弁体5が開弁し、燃料が加圧室12に吸入される。このとき、ばね92は弁体5を閉弁方向に付勢するが、圧力差による開弁力の方が大きくなるように設定されているため、弁体5は開弁する。ここで、もしソレノイド200に駆動電流が流れていれば、磁気吸引力が開弁方向へ作用して、弁体5は更に開弁しやすくなる。
一方、圧縮行程中は加圧室12の圧力の方が吸入通路10よりも高くなるため、弁体5を開弁させる差圧は発生しない。ここで、ソレノイド200に駆動電流が流れていなければ、弁体5を閉弁方向に付勢するばね力などにより、弁体5は閉弁する。一方、ソレノイド200に駆動電流が流れ十分な磁気吸引力が発生していれば、磁気吸引力により弁体5は開弁方向に付勢される。
よって、吸入行程中に電磁弁8のソレノイド200に駆動電流を与え始め、圧縮行程中も与え続けると、弁体5は開弁保持される。その間、加圧室12内の燃料は低圧通路10に逆流するため、燃料はコモンレール内へ圧送されない。一方、圧縮行程中あるタイミングで駆動電流を与えるのを止めると、弁体5は閉弁し、加圧室12内の燃料が加圧され、吐出通路11側へ吐出される。駆動電流を与えるのを止めるタイミングが早いと、加圧される燃料の容量が大きく、タイミングが遅いと、加圧される燃料の容量が小さくなる。よって、コントロールユニット515は弁体5が閉じるタイミングを制御することにより、ポンプ1の吐出流量を制御することができる。
さらに、燃圧センサ56の信号に基づき、コントロールユニット515にて適切な通電OFFタイミングを演算し、ソレノイド200をコントロールすることにより、コモンレール53の圧力を目標値にフィードバック制御させることができる。
かかる構造の高圧ポンプにおいて、まず燃料を無吐出状態に制御したい場合は、圧縮行程全域においてソレノイド200に通電し、圧縮行程全域において加圧室12内の燃料を低圧通路10に逆流させることにより実現できる。ここで、ソレノイド200への通電開始および通電終了時には、電気信号の切り替わりから、実電流値の応答、機械的な電磁弁の応答の間に時間遅れがあるため、その分を吸入行程中に確保しつつソレノイドの通電開始、終了タイミングを制御することとなる。しかし、エンジン回転数が高く、吸入、圧縮行程の時間が短い場合には、吸入行程中に実電流値の応答、機械的な電磁弁の応答の遅れ時間を確保することが不可能となる。よって、高エンジン回転中に燃料を無吐出状態に制御したい場合には、機械的に電磁弁を開状態に保持するように、吸入、圧縮行程中のソレノイド通電時間比を高い状態に制御すればよい。
しかしながら、特にエンジン高回転時に微小な燃料量を吐出したい場合、図20に示すように、実吐出期間中のみに弁体変位を閉とする必要があるため、電磁弁駆動信号をONしてからプランジャ変位が下死点となるまでに弁体変位を開とする必要があることと、電磁弁駆動信号をOFFしてから可能な限り上死点に近いタイミングで弁体変位を閉とする必要の両方がある。弁体応答遅れは主に時間因子により決まるから、特に高エンジン回転条件では、吐出可能な最小燃料量に制限が生じる。
かかる現象を、高圧ポンプと電磁弁の特性の一例である図8を用いて説明する。図は吸入、圧縮行程のポンプ駆動周波数を横軸に、縦軸に1吐出あたりの高圧ポンプの燃料吐出量を示す。前述の高圧ポンプ駆動方法においては、ポンプ駆動周波数は、カム軸の回転速度により定まり、したがってエンジン回転数によって定まるものである。また、1吐出あたりの燃料吐出量の最大値は、基本量はプランジャのストロークにより定まるが、プランジャの燃料シール性が、プランジャの速度により変化するため、図に示すように高周波数、低周波数領域で基本量に対し低下する特性を持つ。
一方、1吐出あたりの燃料吐出量の最小値は、前述のように電磁弁の応答遅れにより、ポンプ駆動周波数が高くなるにつれ大きい値となる。
これに対しエンジンが必要とする燃料量は各種運転条件により異なり、かつ高圧ポンプの燃料供給能力とは無関係に定まる。よって、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない燃料量がエンジンの要求燃料量となる場合があり得る。
かかる場合に高圧ポンプを最小吐出量で駆動、要求燃料量を燃料噴射弁から噴射すると、コモンレール内の燃料の出入り収支が供給過剰になり、そのため燃料の弾性により増加燃料量分コモンレール内の燃圧が上昇し、ひいては燃料噴射弁上下流圧力差上昇による少量の燃料噴射不能、燃料噴射弁の開弁動作不能、耐燃圧以上となることによる燃料漏れを発生させる可能性がある。
図9に燃料噴射弁の噴射流量特性の一例を示す。横軸は、コントロールユニットから出力され燃料噴射弁を駆動させる噴射パルスのON時間幅であり、縦軸は、1噴射での燃料噴射量である。図中のA、B、Cは燃料噴射弁上下流の燃圧差のバリエーションを示しており、A、B、Cの順に高圧である。燃料噴射弁は、燃料流量軽量部を介して所定速度で燃料を噴射するものであるから、上下流燃圧差が大きいほど、同一噴射パルス幅での燃料噴射量は多くなる。また、燃料噴射弁は、駆動信号に応じた弁体の開閉動作の応答限界から、略噴射パルス幅に対応した最小の噴射可能燃料量が存在し、その際の燃料噴射量は、前述の原理に従って、上下流の燃圧差が大きいほど大きくなる。したがって、燃料噴射弁上下流圧力差が上昇すると少量の燃料噴射不能となり、また、燃料噴射弁上下流圧力差に逆らって開弁駆動する方式が主流であるため、燃料噴射弁上下流圧力差が所定値以上となると、開弁動作が不能となる。
かかる事態を回避するためには、まず高圧ポンプの電磁弁応答性を向上させることであるが、機械的性能には種々の制約から限界がある。また、要求燃料量以上に燃料を供給することは、エンジンの供給空燃比が目標値からリッチでずれることとなり、各種エンジン性能上好ましくない。さらには、高圧ポンプを無吐出状態とすると、コモンレール内の燃料収支が放出過剰になり、燃圧が低下し、ひいては燃料噴射弁からの噴射燃料の微粒化不全、燃料供給不能を招く。さらに燃料噴射も停止することは、要求燃料量を無視することであり、エンジンを所望の運転状態に維持できなくなる。
よって本実施形態では、ポンプ1が吐出可能な最小燃料量と燃料供給量(燃料噴射量)とを比較し、ポンプ1が吐出可能な最小燃料量が燃料供給量に対しほぼ等しいかそれを上回っているとき、燃料リリーフ弁55を開弁(開度を大きく)するようにしている。かかる制御を行い、電制リリーフ弁55からリリーフさせる燃料量がコモンレール53内の燃料の出入り収支の供給過剰量より大であるように電制リリーフ弁55の容量を十分大きくしておけば、コモンレール53内の燃料の出入り収支が供給過剰になり、そのため燃料の弾性により増加燃料量分コモンレール53内の燃圧が上昇し、ひいては燃料噴射弁54上下流圧力差上昇による少量の燃料噴射不能、燃料噴射弁54の開弁動作不能、耐燃圧以上となることによる燃料漏れを発生させることは防止できる。
その制御の一実施例を図7に示す。本制御例の処理は、所定時間間隔毎に実行され、その機能を達成する。まず、ブロック701において、図8で説明した特性によりポンプ駆動周波数に基づいて高圧ポンプの最小燃料吐出量をテーブル検索により求める。該特性は、高圧ポンプおよび電磁弁の機械的特性により予め求めた性能を、検索テーブルとして制御定数に予め格納しておくものである。また、高圧ポンプ1の最小燃料吐出量は、個体の性能差や温度、電源状態などの環境によりばらつきを持つことが考えられるが、かかる場合には、ばらつきの上限値を設定しておき、電制リリーフ弁55を開弁できるように設定しておくのがよい。また、高圧ポンプ運転中の状態により、直接、間接的に推定することが可能であれば、該推定した特性により求めてもよい。また、ポンプ駆動周波数は、高圧ポンプの駆動形態により適宜求めればよく、前述のカム軸による駆動形態であれば、エンジン回転数を代替して用いればよいことは言うまでもない。他には、電動モータにより高圧ポンプを駆動する形態であれば、電動モータの回転数を用いればよい。
かく求めた最小燃料吐出量が、判定手段702において要求燃料噴射量に対し上回っているか、を判定する。上回っている場合は、高圧ポンプ1を最小吐出量となるように駆動しても、コモンレール53内の燃料収支が供給過剰となる状態を表している。
ここで、高圧ポンプ1の吸入、圧縮行程の周期と、燃料噴射の周期は必ずしも一致するものではない。例えば、高圧ポンプがカム軸で駆動される場合、エンジンのクランク軸2回転でポンプ駆動カムの葉数だけ、吸入、圧縮を繰り返すが、燃料噴射は通常、エンジンのクランク軸2回転で気筒数回、噴射を行う。よって、比較する最小燃料吐出量と要求燃料噴射量は、その次元を一致させるのがよい。例えば、両者ともクランク軸2回転あたりの量、1気筒の1燃焼サイクルでの量、などである。最適な次元は、本発明を適用するエンジンコントロールシステムに都合のよいものを適宜選定すればよい。
かく求めた判定は、すなわち電制リリーフ弁55の作動要求であり、ブロック703においてその他のリリーフ弁作動要求と総合して、電制リリーフ弁55の作動指令を出力する。エンジン制御系が正常である場合は、その他の作動要求または判定手段702の作動要求がある場合に作動を指令する。電制リリーフ弁55に、作動を指令すると不都合な故障が生じていることを検知しているような場合、例えば電制リリーフ弁の信号端子がバッテリ電圧に短絡しており、電制リリーフ弁に開指令を出した場合、コントロールユニットの出力回路が過電流により焼損するような場合には、前述の作動要求のいかんに関わらず、開指令を出力しないようにするのがよい。
ブロック704では、電制リリーフ弁の作動指令により、具体的に電制リリーフ弁を駆動する信号を生成する。例えば、電制リリーフ弁が、ONOFF信号により開閉動作する弁の場合はONOFF信号を出力し、アナログ的に開度を電圧信号などで指示する場合には、所望の開度となる電圧信号を出力するようにする。
以上説明した処理により、エンジンの要求燃料量(燃料噴射量)が高圧ポンプ1の吐出可能な最小燃料量より小さくて、コモンレール53の燃料収支が供給過剰となるおそれがある場合には、リリーフ弁55からリリーフさせる燃料量を、その供給過剰となる燃料量より大とすることが可能となるので、コモンレール55内の燃圧を上昇させず、所望の圧力範囲内で維持することができ、これにより、燃料噴射弁上下流圧力差上昇による少量の燃料噴射不能、燃料噴射弁の開弁動作不能、耐燃料圧力以上となることによる燃料漏れ等の発生を効果的に防止することができる。
ここで、コモンレール53内の燃圧は、前述の所定の圧力未満としたい要求のほかに、所定の圧力以上としたい要求も存在する。例えば、燃圧が低くなると、燃料噴射弁54からの噴射燃料の粒径が大きくなり、燃焼の不良を招く、所望の燃料量を供給するための燃料噴射パルス幅が長くなり、所望の燃料噴射期間中に燃料噴射を完結できない、といったことを回避するための燃圧要求である。
かかる要求から、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない燃料量がエンジンの要求燃料量となる場合においても燃圧を所望の範囲内としたい場合がある。その場合の対応の考え方を図14を用いて説明する。
図14は、コモンレールに対する燃料の供給量と消費量を縦軸にとり表したもので、状態Aが高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない燃料量が燃料噴射量となる場合である。この場合は、前述のとおり、燃料供給量が過剰であるため、燃圧が上昇してゆく。
状態Bは、燃料消費量において、要求通りの燃料量を燃料噴射するとともに、電制リリーフ弁を開としている。一方、燃料供給量は、燃料消費量と同量を高圧ポンプから吐出し供給している状態である。かかる状態では、コモンレール内の燃料収支がつりあっており、燃圧は上昇も下降もせず、平均的に所定値となっている。よって初期の燃圧が所望の範囲内であれば、かかる状態を維持し続けることで所望の燃圧を実現し続けることができ、所望の燃圧でないときは、所望の圧力範囲となるまで高圧ポンプからの燃料吐出量を調整することで、所望の燃圧範囲に導くことができる。
状態Cは、燃料供給量において、高圧ポンプの吐出可能最小量を供給するとともに、燃料消費量では、要求通りの燃料量を噴射するとともに、電制リリーフ弁を適宜動作させることにより、その平均流量を操作して、燃料供給量と燃料消費量を等しい状態としている。よって状態Bと同様の原理によって、電制リリーフ弁の平均流量を調整することで、所望の燃圧範囲に導くことができる。
状態Bを実現させる制御の制御例を図10に示す。本制御は、高圧ポンプのソレノイド閉タイミングの制御角を演算するものであって、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない燃料量を燃料噴射し、かつ電制リリーフ弁に開指令を与え、電制リリーフ弁から弁の上下流差圧に応じた燃料量が連続してリリーフされている状態において起動するものである。
図5で説明したように、高圧ポンプの燃料吐出量はソレノイド閉制御角により定まり、閉制御角が早いと吐出量大、遅いと吐出量小となる関係がある。まずブロック1004には、図8に示したような、適用する高圧ポンプの性能特性である、ポンプの駆動周波数、要求吐出量とソレノイド閉作動角の関係をマップ上に予め設定してある。
ここで、前述の状態において、燃圧を維持させるために高圧ポンプが吐出すべき要求吐出量は、要求燃料噴射量とリリーフ燃料量であるから、ブロック1003においてその値を求め、ブロック1004に供給するようにしている。
ここでリリーフ燃料量は、リリーフ弁55が開駆動されている間、上下流差圧に応じた燃料量をリリーフするが、その特性は図12に示すように、流体オリフィスの一般特性である。よってリリーフ量は上下流差圧を実測または推定により適宜求め、図12に特性によりリリーフ燃料量を求めるようにするのがよい。
よってブロック1004でマップ検索により求めたソレノイド閉制御角は、所定の理想状態において、コモンレールの燃料収支が釣り合う値を算出する。
さらに、前述のように燃圧を所望の範囲内としたい場合のため、ソレノイド閉制御角を補正調整する機能を、ブロック1001とブロック1002で設定している。ブロック1001は、目標の燃圧と、実際にコモンレール内の燃圧を検出する燃圧センサ56の検出値との差を演算し、ブロック1002では、該差に基づいて、PI形態のフィードバック制御を行い、ソレノイド閉制御角の補正値を算出するようにしている。
ブロック1002とブロック1003で各々かく求めたソレノイド閉制御角をブロック1005で合計する。
さらに、図5および図20で説明したように、ソレノイドの閉応答には主に時間依存の応答遅れがあり、一方本制御は制御角次元で制御値を演算しているから、制御角次元でのソレノイド応答遅れを制御値に加える必要がある。よってブロック1006で制御角次元でのソレノイド応答遅れ補正値を求め、ブロック1007で制御値に加算することで、最終のソレノイド閉制御角を求めるようにしている。
かかる処理により、コモンレール内の燃料収支が釣り合っているが、燃圧が所望の範囲内にない状態においても、燃圧によるフィードバック機能により所望の燃圧範囲内となるまでポンプ吐出燃料量を加減調整できる。かつ、ブロック1003内に設定する、所定の理想状態と実環境における高圧ポンプ特性ずれが生じていても、フィードバック機能によりコモンレール内の燃料収支が釣り合うソレノイド閉制御角を提供できる。
よって、高圧ポンプ1の吐出可能な最小燃料量より少ない燃料量を噴射供給している状態において、コモンレール53内の燃圧を所望の範囲内に維持することができる。
全体構成から理解されるように、本実施例は、図6に示すようにソレノイド閉制御角と燃料吐出量は線形であるという近似のもとに構成されている。この近似を廃し、ポンプ駆動カムの非線形特性を吸収できる制御の一例を図11に示す。
該制御例は、図10で説明した制御と、燃圧によるフィードバック機能と、それに対応するフィードフォワード機能を有する点において同等であるが、ブロック1105において、フィードバック制御要求量とフィードフォワード制御要求量を燃料量次元で求めている点が主に異なる。
まず、ブロック1001と同様にブロック1101で目標燃圧と実燃圧の差を求めた後、処理1102で燃料量差に変換する。燃圧差は、コモンレール53内の燃料量の過不足により生じるものであり、両者の関係は、燃料の弾性係数とコモンレール53内の燃料体積によって定量的に関連付けられるから、燃圧差に所定ゲインを乗じることで燃料の過不足量を求めることができる。さらに、燃料の性状により弾性係数が異なる場合は、別途燃料性状を検出し、燃料性状に応じた弾性係数に対応する所定ゲインを乗じることで対応できる。かくして燃料量次元においてフィードバック制御要求量を求めることができる。
一方、ブロック1104では、ブロック1003と同様に、フィードフォワード制御要求量としての燃料吐出要求量を演算することができる。
よって、前述のとおり、ブロック1105において、フィードバック制御要求量とフィードフォワード制御要求量を燃料量次元で合計し、要求燃料吐出量総計を求めることができる。
ブロック1106では、要求燃料吐出量とポンプ駆動周波数から、ブロック1004と同様の高圧ポンプ特性から、要求燃料吐出量総計に応じたソレノイド閉制御角を求めることができる。
ブロック1107とブロック1108は、ブロック1006とブロック1007と同様の機能を有しており、結果、最終のソレノイド閉制御角を求めるようにしている。
かかる処理により、図10で説明した機能を実現できるとともに、さらにポンプ駆動カムの非線形特性を吸収でき、さらに精度よい燃圧の制御が可能となる。
以上、図10または図11で説明した制御の動作を、図15を用いて説明する。図15は、時間経過によってアクセル戻しなど運転状態の変化から要求燃料噴射量が逐次減少し、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない要求燃料噴射量となる状態を時点1503から時点1506まで所定時間保持した後、再び運転状態変化によって要求燃料噴射量が逐次増加するような運転状態において、燃料噴射量、燃料吐出量、電制リリーフ弁開度、コモンレール内圧力(燃圧)を示したものである。燃料噴射量の挙動を実線で、燃料吐出量の挙動を破線で示しており、時点1503以前および時点1506の後小時間経過後は、実線と破線は一致する挙動を取っていることを示している。
まず、時点1503において、燃料噴射量が所定値Uaを下回る。所定値Uaは、図7のブロック701で説明した、制御として高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない要求燃料噴射量となったかを判定する閾値である。なお、時点1506では、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より多い要求燃料噴射量となったことを判定しているが、ここで閾値1501に所定のヒステリシスを与えており、要求燃料噴射量の微小変動による該判定の頻繁な切り替わりを防止するようにしている。
時点1503以降では、該判定を受けて、図7で説明した処理により電制リリーフ弁55を開駆動している。同時に図10または図11で説明した処理により、燃料吐出量をステップ的に増加させ、電制リリーフ弁からのリリーフ燃料量に見合う燃料収支となるようにしている。図に示したケースは燃料吐出量のステップ的増加が電制リリーフ弁のリリーフ燃料量に対し不足であった場合を示しており、よって時点1503直後にコモンレール内圧力が低下する挙動が現れている。該圧力低下により、図10または図11で説明した処理の中のフィードバック機能が作用し、燃料吐出量を目標燃圧と実燃圧の差に応じて増加させることで、所定所要時間後に目標の燃圧までコモンレール内圧力が上昇する挙動を示している。
次に、時点1504から時点1505の間、図示しないが所定の要求から目標の燃圧が所定値低下するケースを示している。よって、時点1504から所定時間、同様にフィードバック機能が作用し、燃料吐出量を低下させることによりコモンレール内圧力を目標値まで低下させるように動作している。さらに前記所定時間経過後は、燃料の収支がバランスする状態を保持することにより、目標の燃圧を維持させている。次に、時点1505では、前述と同様に目標の燃圧が所定値上昇し、同じく同様に、時点1505から所定所要時間、フィードバック機能が作用し、燃料吐出量を増加させることによりコモンレール内圧力を目標値まで上昇させるように動作している。さらに所定所要時間経過後は、燃料の収支がバランスする状態を保持することにより、目標の燃圧を維持させている。
次に、時点1506の直前で、再び運転状態変化によって要求燃料噴射量が逐次増加し、それに伴い増加分に見合う燃料吐出量を減少させるようにフィードフォワード機能とフィードバック機能が作用する。時点1506で高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より多い要求燃料噴射量となり、図7の判定702が不成立となることでリリーフ弁開度を閉とすると同時に、図10または図11で説明した処理により、燃料吐出量をステップ的に減少させ、電制リリーフ弁55からのリリーフ燃料量解消に見合う燃料収支となるようにしている。図に示したケースは燃料吐出量のステップ的減少が電制リリーフ弁のリリーフ燃料量解消に対し不足であった場合を示しており、よって時点1506直後にコモンレール内圧力が上昇する挙動が現れている。該圧力上昇により、図10または図11で説明した処理の中のフィードバック機能が電制リリーフ弁閉状態においても作用し、燃料噴射量増加に応じた燃料吐出量増加をフィードフォワード機能で実現するとともに、燃料吐出量を目標燃圧と実燃圧の差に応じて減少させることで、所定所要時間後に目標の燃圧までコモンレール内圧力が低下する挙動を示している。
以上、図14の状態Bを実現する制御内容と動作について説明したが、次に図14の状態Cを実現する制御内容について説明する。
まず、図17でポンプ吐出量を吐出可能最小量とする制御方法について一制御例を説明する。ブロック1705は図10または図11で説明したような、フィードバック機能、フィードフォワード機能により演算するソレノイド閉制御角を演算する。ここで、判定手段1703において、判定手段1702から出力される結果が1である場合は、ブロック1705の演算結果を採用せず、ブロック1704の演算結果を採用して、最終的なソレノイド閉制御角を出力するようにしている。ここでブロック1704は、ポンプ駆動周波数からポンプ吐出量が吐出可能最小量となるソレノイド閉制御角をテーブル検索により演算するようにしている。
また、ブロック1701とブロック1702は、図7のブロック701、ブロック702と同機能であり、高圧ポンプの吐出可能な最小燃料量より少ない燃料量がエンジンの要求燃料量となる場合を表している。
よって、図17に示す制御は、高圧ポンプの吐出可能な最小燃料量より少ない燃料量がエンジンの要求燃料量となる場合には、高圧ポンプのソレノイド閉制御角を、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量となる値に固定することができる。
次に、電制リリーフ弁の平均流量が、燃料供給量と燃料消費量が等しくなるように制御する方法について、一制御例を図16により説明する。本制御例は、電制リリーフ弁をON/OFF指令して開閉駆動を繰り返し駆動する方法について適用するものである。かかる場合、電制リリーフ弁の燃料流量特性は、燃料噴射弁と類似して図9に示すような特性を示し、1回の開駆動での燃料リリーフ量は開駆動パルス時間により実現できるものである。
まず、ブロック1601とブロック1602では、図11のブロック1101とブロック1102と同様に、目標燃圧と実燃圧の差を求めた後、該差を燃料量差に変換する。原理は前述と同様で、燃圧を目標の圧力とするために、コモンレールから排除すべき燃料量を求めるものである。
本制御は燃圧減少方向にしか操作方向を持たないものの、燃圧に対するフィードバック制御であるから、次にブロック1603において、PI制御の制御ゲインと同様の制御ゲインを乗じ、フィードバック系の収束性、安定性を調整するようにしている。かく求めた制御量は燃料量次元であり、処理1604において電制リリーフ弁の標準上下流圧差状態における流量係数を乗じる。流量係数は、単位燃料量あたりの電制リリーフ弁の駆動パルス時間であり、これにより、制御量を燃料量から駆動パルス時間に変換する。さらに、電制リリーフ弁の上下流圧力差は運転状態により様々な値を取るので、処理1605において上下流圧力差に応じた燃圧補正係数を乗じる。
一方、電制リリーフ弁55は、一般の燃料噴射弁の燃料噴射量特性で知られるように、開弁時、閉弁時における弁体の応答遅れにより、燃料の通過に寄与しない駆動パルスON時間がある。該時間は図9における、特性の直線部分を延長したときのX軸切片を意味し、無効パルス幅と呼ばれているものである。ブロック1606ではかかる補正値を求めており、処理1607で合計することにより、最終的に所望の燃料量をリリーフするに必要な駆動パルス幅を求めることができる。
以上説明した制御の動作を、図18により説明する。図18は、目標の燃圧が低下した際に、電制リリーフ弁のみで目標の燃圧を実現するケースを示しており、例えば燃料カット中に目標燃圧を低下させる際にも適用できるものである。図中の破線で示す時点1801〜1804において、図17で説明した処理を所定時間間隔で実行している。
まず、時点1801においては、目標の燃圧と、実燃圧がほぼ一致しているため、電制リリーフ弁55の駆動パルス幅は0が演算され、電制リリーフ弁55の駆動パルス信号は時点1801から時点1802の間OFFのままである。
次に、時点1802と時点1802の間に、図示しないが所定の要求から目標の燃圧が所定値低下する。すると、時点1802では、実燃圧を目標燃圧に近づけるように、図17で説明した制御が電制リリーフ弁駆動パルス幅T1を計算し、時点1802からT1間、駆動パルス信号をONしている。これに従い、実燃圧は、時点1802から所定の遅れ時間を伴って、燃料のリリーフ流量に対応した速度で、電制リリーフ弁の機械的閉まで低下する。
時点1803では、T1での駆動パルスにでは目標燃圧に実燃圧が到達していないため、時点1802と同様に電制リリーフ弁駆動パルス幅T2を計算し、時点1803からT3間、駆動パルス信号をONしている。よって実燃圧は、前述と同様の挙動を示す。
時点1804でも、時点1802と時点1803と同様の処理がなされ、結果として実燃圧が、所定の燃圧制御不感帯をもって目標燃圧に接近している。よって時点1804以降の処理では、時点1801と同様の処理がなされ、以後目標燃圧と実圧力の乖離が生じないかぎり、電制リリーフ弁を駆動することはない。
以上説明した動作により、図17で説明した制御によって電制リリーフ弁55からの燃料リリーフ量を制御することで、実燃圧を目標燃圧まで低下させることができる。ここで、前述の方法は、ON/OFF間欠駆動して用いる電制リリーフ弁について説明したが、アナログ的に無段階で開口面積を制御できる電制リリーフ弁、前述した応答特性とは異なる燃料系などにおける本発明の適用形態は、本実施例の形態とは異なるものとなることは言うまでもない。
以上説明した電制リリーフ弁の制御方法の、図15で説明したのと同様の運転状態における動作を、図19により説明する。図19では、電制リリーフ弁の動作状態として、弁の開度平均値を示している。
まず、時点1903において、燃料噴射量が所定値Ucを下回る。所定値Ucは、図17のブロック1701で説明した、制御として高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より少ない要求燃料噴射量となったかを判定する閾値である。
時点1903以降では、該判定を受けて、図17で説明した処理により高圧ポンプを最小吐出量となるように制御している。かつ、同時に、図16で説明した制御を駆動させる。コモンレール内燃料収支が供給過剰になるので、燃圧は徐徐に上昇を始めるが、図16で説明した制御の作用により、リリーフ弁平均開度は燃圧を低下させるように増加し、やがて所定の平均開度でバランスする。
この状態では、高圧ポンプの吐出量の燃料噴射量に対する余剰分が、電制リリーフ弁55からリリーフされる燃料量に等しい状態であり、コモンレール53内の燃料収支が釣り合っていることから、燃圧が所定値を維持している状態である。また、該所定値は、図16で説明した制御により、目標の燃圧所定範囲内であることが理解される。
次に、時点1904から時点1905の間、図15と同様に所定の要求から目標の燃圧が所定値低下するケースを示している。よって、時点1904から所定時間、同様にフィードバック機能が作用し、燃料リリーフ量を増加させることによりコモンレール内圧力を目標値まで低下させるように動作している。さらに所定時間経過後は、燃料の収支がバランスする状態を保持することにより、目標の燃圧を維持させている。次に、時点1905では、前述と同様に目標の燃圧が所定値上昇する。これにより目標燃圧が実燃圧を上回るため、時点1905直後から目標燃圧と実燃圧が等しくなるまで、フィードバック機能が作用し、電制リリーフ弁55は閉状態を保持する。その直後実燃圧が目標燃圧を上回るので、フィードバック機能が作用し、燃料リリーフ量を増加させることによりコモンレール内圧力を目標値まで低下させるように動作している。実燃圧が目標燃圧と略等しくなった後は、前述と同様に燃料の収支がバランスする状態を保持することにより、目標の燃圧を維持させている。
次に、時点1906の直前で、再び運転状態変化によって要求燃料噴射量が逐次増加し、それに伴い低下しようとする実燃圧を維持させるようにフィードバック機能が作用する。時点1906で、高圧ポンプの供給可能な最小燃料量より多い要求燃料噴射量となり、図17の判定1702が不成立となることで、目標燃圧と実燃圧が一致するように高圧ポンプソレノイド閉制御角を演算するように切り替わると同時に、図16に示した電制リリーフ弁制御を停止し、電制リリーフ弁55を閉とする。図に示したケースは最小燃料吐出量判定閾値が実際値より小さかった場合を示しており、よって、時点1906直後にコモンレール内圧力が上昇する挙動が現れている。該圧力上昇により、図10または図11で説明した処理の中のフィードバック機能が電制リリーフ弁閉状態においても作用し、燃料噴射量増加に応じた燃料吐出量増加をフィードフォワード機能で実現するとともに、燃料吐出量を目標燃圧と実燃圧の差に応じて減少させることで、所定所要時間後に目標の燃圧までコモンレール内圧力が低下する挙動を示している。
以上の説明から、本実施形態によれば、高圧ポンプ1の吐出可能な最小燃料量より少ない燃料量を燃料噴射している状態において、コモンレール53内の燃圧を所望の範囲内に維持できることが理解できよう。
以上の説明では、ポンプ駆動カムの圧縮行程後半でソレノイド駆動信号をOFFし、もって弁体を閉とすることにより高圧ポンプからの燃料吐出を可能とする構造の高圧ポンプを前提としていた。しかし、この他にも、ソレノイド駆動信号のON、OFFと弁体の開閉の関係が前述と逆で、ポンプ駆動カムの圧縮行程後半でソレノイド駆動信号をONし、もって弁体を閉とすることにより高圧ポンプからの燃料吐出を可能とする構造の高圧ポンプも存在する。
また、図13に示すように、ポンプ駆動カムの吸入行程中の所定エンジンソレノイド駆動信号をONし、もって弁体を開とすることにより高圧ポンプ内への燃料吸入を可能し、圧縮行程で吸入した燃料を吐出させる構造の高圧ポンプも存在する。
また、本実施形態では、高圧ポンプの駆動をカム軸にて行うものにおいて説明したが、その他の動力源、例えば電動モータにより駆動することも可能である。
いずれの構造の高圧ポンプも、弁体の開閉動作をソレノイドの電気的駆動により、ポンプのプランジャの上下動作と同調して吐出燃料量を制御することでは同一である。よって、駆動信号状態と弁体の機械的開閉動作の間に遅れが生じる現象は不可避であり、したがって、吐出可能な最小燃料量が存在する。
よって、本発明はかかる特徴を持つ高圧ポンプ全てに適用できる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱することなく設計において種々の変更ができるものである。