以下、本発明の産業車両の油圧回路装置を各実施形態に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図5は、本発明を適用した産業車両の油圧回路装置の第1実施形態を示し、図1は産業車両の油圧回路装置をフォークリフトの油圧源に適用した油圧回路図である。
図1において、産業車両の油圧回路装置は、エンジン1により常時駆動されてタンク2の作動油を夫々吸込み吐出する第1,2油圧ポンプ3,4と、プライオリティ流量制御弁5と、操舵装置6と、荷役装置7を制御する荷役操作弁8と、を備える。前記プライオリティ流量制御弁5は第1油圧ポンプ3から吐出された作動油が通路11を介して供給され、供給された作動油を優先的に操舵装置6への通路12に供給すると共に余剰となる作動油を荷役装置7への通路13に分流させる。前記プライオリティ流量制御弁5よりの余剰油を導く通路13は、前記第2油圧ポンプ4より吐出された作動油を導く通路14と合流させて荷役操作弁8へ作動油を供給するよう構成している。以上の構成は、従来からフォークリフトの油圧回路装置として一般的に使用されているものと同様であり、本発明の前提とする構成である。
前記荷役装置7は、図3に示すように、荷役操作弁8と、荷役操作弁8よりの作動油により作動するリフトシリンダ9や図示しないチルトシリンダと、を備える。前記荷役操作弁8は、産業車両としてのフォークリフトに適用する一例として、図3に示すように、リフトシリンダ9を制御するリフト制御弁8Aと、図示しないチルトシリンダを制御するチルト制御弁8Bとを備え、いずれも操作レバー10A、10Bにより切換操作される。チルト制御弁8Bとリフト制御弁8Aとは、いずれが上流に配列されてもよいが、ここでは、リフト制御弁8Aが上流に配列されている。
前記リフト制御弁8Aは、中立位置LNと、上昇位置LUと、下降位置LDとを備える。前記中立位置LNでは、ブリードオフ通路を介して下流のタンク2への作動油の流れを許容し且つリフトシリンダ9への作動油の給排を遮断してリフトシリンダ9をロックする。前記上昇位置LUでは、ブリードオフ通路を遮断して下流への作動油の流れを遮断し且つリフトシリンダ9へ作動油を供給する。前記下降位置LDでは、ブリードオフ通路を介して下流のタンク2への作動油の流れを作り且つリフトシリンダ9から作動油を排出する。そして、これらの位置をリフト操作レバー10Aにより切換操作可能となっている。前記上昇位置LUにおいては、図示しないバイパス通路を経由させてチルト制御弁8Bに作動油を供給可能としている。
前記チルト制御弁8Bも同様に、図示しないマストをロックする中立位置と、マストを前傾させる前傾位置と、マストを後傾させる後傾位置とを備える。前記中立位置では、ブリードオフ通路を介して下流への作動油の排出を許容し且つ図示しないチルトシリンダのシリンダ室への作動油の給排を遮断してチルトシリンダをロックする。前記前傾位置では、ブリードオフ通路を遮断して下流への作動油の排出を遮断し且つチルトシリンダの一方のシリンダ室に作動油を供給し且つ他方のシリンダ室から作動油を排出してチルトシリンダにより図示しないマストを前傾させる。前記後傾位置では、ブリードオフ通路を遮断して下流への作動油の排出を遮断し且つチルトシリンダの他方のシリンダ室に作動油を供給し且つ一方のシリンダ室から作動油を排出してチルトシリンダにより図示しないマストを後傾させる。そして、これらの位置をチルト操作レバー10Bにより切換操作可能となっている。
図2は操舵装置及びプライオリティ流量制御弁の一例を示す油圧回路図である。前記操舵装置6は、図2に示すように、操舵制御弁20、ステアリングシリンダ21等からなる公知の全油圧式のパワーステアリング装置である。前記操舵装置6は、また、ステアリングハンドル22の操舵によって回転するオービットロールポンプ23と称されるメータリング装置および切換え弁24を備える。前記操舵装置6は、プライオリティ流量制御弁5を介して第1油圧ポンプ3から供給される作動油を、操舵方向に対応して切換えられる切換え弁24により操舵方向に対応させ且つその操舵速度に応じて回転するオービットロールポンプ23により計量した流量だけステアリングシリンダ21に対し供給する。ステアリングシリンダ21は両ロッドタイプであって、操舵制御弁20から操舵方向に対応して供給される作動油によって動作し、ピストンロッド21Aを操舵方向に応じて変位させ、図示しないナックルアームを操舵方向に応じて回動させ、図示しない操舵輪を左操舵又は右操舵する。
前記切換え弁24は、ステアリングハンドル22を回転操作していない場合に中立位置にあり、プライオリティ流量制御弁5から通路12を通して供給される作動油のオービットロールポンプ23への供給を遮断する。また、負荷信号ポート25に制御オリフィス26A,26Bを介して供給される作動油をタンク2へドレーンして負荷信号としての圧力をゼロとする。ステアリングハンドル22が回転操作されると、前記切換え弁24は、その回転方向に応じて中立位置から切換えられ、通路12から供給される作動油を前記回転方向に応じてオービットロールポンプ23へ供給する。そして、オービットロールポンプ23への供給油圧を負荷信号として負荷信号ポート25から出力する。前記負荷信号としてのオービットロールポンプ23への供給圧力は、ステアリングハンドル22の操舵速度およびステアリングシリンダ21の作動負荷に応じて増減される。
前記プライオリティ流量制御弁5は、図2に示されているように、第1油圧ポンプ3からの作動油を、プライオリティ流出ポート15に通路12を介して接続された操舵装置6と、過流流出ポート16に接続された荷役操作弁8への通路13と、に分流させるものである。そして、分流制御のためにバルブスプール17を備え、そのバルブスプール17の位置に応じて操舵装置6側と荷役操作弁8側との分流割合を変更可能としている。
バルブスプール17には、第1油圧ポンプ3から供給される流入流体が操舵装置6側に流れるように、バルブスプール17を付勢するスプリング17Aと、このスプリング17Aと協同して、操舵装置6の負荷圧力による付勢力とが一方の端面側に作用するよう構成している。操舵装置6の負荷圧力は、負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bを介して導いた操舵装置6の負荷信号ポート25の圧力に応じて変化する。これらの付勢力はバルブスプール17を、図中A位置側となるよう付勢する。また、これらの付勢力に対向させて他方の端面側には、操舵装置6で消費される流量低下時に補助回路である荷役操作弁8側への分流量を増量するように、操舵装置6への供給圧力をバルブスプール17の反対側端部に導入したフィードバック付勢力が作用するよう構成している。このフィードバック付勢力はバルブスプール17を、図中B位置側となるよう付勢する。
プライオリティ流出ポート15は複数の制御オリフィス26A,26Bを備える負荷信号ライン26を介して操舵装置6の負荷信号ポート25に接続されている。そして、操舵装置6への通路12の供給圧力(PS圧)と操舵装置6の負荷信号ポート25の負荷圧力とにより複数の制御オリフィス26A、26B同士の間の負荷信号ライン26の分岐点には分圧を生じる。この分圧を、前記負荷圧力による付勢力として前記バルブスプール17の一方の端面に導入するようにしている。
そして、本実施形態の油圧回路装置においては、図1に示すように、プライオリティ流量制御弁5よりの余剰流量を荷役操作弁8へ供給する通路13から分岐して、作動油をタンク2へ還流させるドレーン通路18を備える。また、前記ドレーン通路18中に配置した第1遮断弁30と、前記余剰流量を荷役操作弁8へ供給する通路13において、前記分岐点と前記合流点との間の通路13に配置した第2遮断弁40とを備える。
前記第1遮断弁30は、閉弁位置と開弁位置とを備える。そして、前記第1遮断弁30は、エンジン回転数が低回転領域(例えば、700〜950[rpm])にある状態では開弁位置にあり、エンジン回転数が中回転領域(例えば、1000[rpm])を超える場合に閉弁位置に切換えられる。また、前記第2遮断弁40も、閉弁位置と開弁位置とを備え、エンジン回転数が低回転領域にある状態では閉弁位置にあり、エンジン回転数が中回転領域を超える場合に開弁位置に切換えられるようにしている。
本実施形態においては、上記第1,2遮断弁30,40を作動させるために、第1遮断弁30に対しては、スプリング31により開弁位置側へ付勢している。また、第2油圧ポンプ4の吐出油を前記合流点に導く通路14中に配置したオリフィス32の上流の圧力Paを閉弁位置に付勢するパイロット圧として導入すると共に、同オリフィス32の下流の圧力Pbを開弁位置に付勢するパイロット圧として導入している。
このため、オリフィス32を通過する第2油圧ポンプ4よりの作動油量がエンジン回転数の上昇に連れて増加されていくと、オリフィス32前後の圧力差(Pa−Pb)も増加する。この圧力差が第1遮断弁30を開弁方向に付勢しているスプリング31の付勢力に打勝つ時点で第1遮断弁30は閉弁方向に切換えられる。従って、スプリング31の付勢力を調整することにより、第1遮断弁30が閉弁するエンジン回転数を任意の回転数に設定することができる。
また、第2遮断弁40に対しては、スプリング31(第1遮断弁30と共用)により閉弁位置側へ付勢している。また、第1遮断弁30の上流の圧力Pcを開弁方向に付勢するパイロット圧として導入すると共に、第2油圧ポンプ4の吐出油を前記合流点に導く通路14中に配置した前記オリフィス32の下流の圧力Pbを閉弁位置に付勢するパイロット圧として導入している。
このため、第1遮断弁30が前記したように開弁状態から閉弁状態に切換えられると、第2遮断弁40を開弁方向に付勢するパイロット圧Pcが第1遮断弁30の閉弁に伴い上昇するため、第2遮断弁40は第1遮断弁30の閉弁作動に連動して開弁状態に切換えられる。
従って、エンジン回転数の低回転領域から中高回転領域に変化する間において、第1,2油圧ポンプ3,4より吐出される作動油量は、図4に示すように、変化される。即ち、第1油圧ポンプ3より吐出される作動油は、図4(A)に示すように、低回転領域においては、操舵装置6に供給される流量を超えた余剰の流量はプライオリティ流量制御弁5より分流されて第1遮断弁30及びドレーン通路18を経由してタンク2へ還流される。また、中高回転領域においては、操舵装置6に供給される流量を超えた余剰の流量はプライオリティ流量制御弁5より分流されて第2遮断弁40を介して荷役装置7へ供給される。また、第2油圧ポンプ4より吐出される作動油は、図4(B)に示すように、低回転領域においては、単独で荷役装置7へ供給され、中高回転領域においては、前記したプライオリティ流量制御弁5より分流された第1油圧ポンプ3よりの作動油と合流して荷役装置7へ供給される。従って、操舵装置6と荷役装置7へ供給される作動油量は、図4(C)に示すように、エンジン回転数により変化される。
なお、プライオリティ流量制御弁5が操舵装置6の作動圧(PS圧)に感応して供給する作動油量を可変制御するものにおいては、操舵装置6を操作していない場合には、図4(A)〜(C)において、点線で示すように変化する。即ち、低回転領域においては、分流される余剰の作動油量が増量されてタンク2へ還流され、中高回転領域においては、分流される余剰の作動油量が増量されて荷役装置7へ供給する作動油量を増量させる。従って、実際に分流される余剰の作動油量は、点線で示す状態と実線で示す状態との間で、操舵装置6の操舵速度に応じて変化する。
また、前記第1、2遮断弁30,40は、第2油圧ポンプ4の吐出油を前記合流点に導く通路14に配置したオリフィス32の下流の圧力Pbを導く共通のパイロット室を挟んで直列に配列している。そして、共通のパイロット室に配置した共通のスプリング32により互いに離間する方向に付勢されて、第1遮断弁30を開弁位置に付勢し、第2遮断弁40を閉弁位置に付勢している。このため、第1,2遮断弁30,40はあたかも互いに連動する一個のバルブとして取扱うことができる。
前記第1遮断弁30を閉弁位置に付勢する方向のパイロット圧Paを導入するパイロット通路には、ダンピングオリフィス34と、ダンピングオリフィス34と並列接続されて、ワンウェイダンパ33が配置されている。前記ワンウェイダンパ33は、第1遮断弁30側から第2油圧ポンプ4側への作動油流れは許容する一方、第2油圧ポンプ4側から第1遮断弁30側への作動油流れは遮断するチェック弁35とよりなる。
このワンウェイダンパ33は、エンジン回転増加時には、第1遮断弁30の閉弁動作を緩やかにする。その結果、プライオリティ流量制御弁5よりの荷役装置7側への余剰流量が、急激に第2油圧ポンプ4よりの吐出作動油と合流することを緩和し、荷役装置7へ供給される作動油量が急激に増加することによる荷役装置7の急激な動きを防止する。また、エンジン回転が中回転領域から低回転領域に低下した場合に、その回転低下による前記圧力差の低下に素速く第1遮断弁30を応動させて、第1油圧ポンプ3と第2油圧ポンプ4を素速く分離する。その結果、フル積載での荷役操作中での第1,2油圧ポンプ3,4の両ポンプ駆動による負荷トルクが加わったままとなることによるエンスト(エンジンストール)の防止を図れるようにしている。
以上の構成の産業車両の油圧回路装置の動作について以下に説明する。イグニッションキーによりエンジン1が始動されると第1、2油圧ポンプ3,4が駆動され、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油はプライオリティ流量制御弁5へ供給され、プライオリティ流量制御弁5は操舵装置6と荷役操作弁8への各通路12,13に分流して作動油を供給する。また、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油はオリフィス32が配置された通路14を経由して合流点に達し、荷役装置7を作動させる荷役操作弁8に供給される。
そして、エンジン回転数が低回転領域(例えば、700〜950[rpm])においては、第1油圧ポンプ3及び第2油圧ポンプ4よりの作動油の吐出量は比較的少ない。このため、第2油圧ポンプ4の吐出油を導く通路14に設けられている前記オリフィス32の上流と下流の圧力差(Pa−Pb)は比較的小さい。このため、前記オリフィス32の上流と下流の圧力差(Pa−Pb)により作動する第1遮断弁30は、開弁位置に位置される。このため、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、ドレーン通路18を介してタンク2へ還流させる。
また、前記第2遮断弁40に開弁方向に作用する上流圧力Pcは、第1遮断弁30が開弁位置にあり、ドレーン通路18によりタンク2へ還流されている。このため、大気圧近傍に低下しており、閉弁方向に作用する前記オリフィス32下流の圧力Pbとスプリング31の付勢力により閉弁位置に切換えられている。
荷役装置7が非操作状態である場合には、第2油圧ポンプ4から荷役操作弁8へ供給された作動油は、チルト制御バルブ8Bおよび/またはリフト制御バルブ8Aの中立位置を流通し、タンク2へ還流されている。いずれかの荷役レバー10A,10Bが操作されると、第2油圧ポンプ4より供給された作動油を操作された荷役レバー10A,10Bの操作量に応じた流量の作動油をリフト制御弁8A若しくはチルト制御弁8Bから制御されるリフトシリンダ9若しくはチルトシリンダ等の荷役機器の油圧シリンダに供給する。そして、荷役レバー10A,10Bの操作量に応じた動作速度で荷役装置7が作動する。荷役操作弁8への供給圧(荷役圧力)は、荷役負荷に応じて上昇し、荷役負荷が定格の負荷状態である場合には、18[MPa]まで上昇する。この場合に必要とする油圧は、第2油圧ポンプ4で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第2油圧ポンプ4への駆動トルクにより賄われる。即ち、エンジン1の低回転領域では、荷役負荷は比較的小容量の第2油圧ポンプ4のみにしか作用せず、エンジン1への負荷を小さくでき、荷役負荷によるエンジンストールを防止できる。
また、前記操舵装置6のステアリングハンドル22が操舵中でない場合には、操舵装置6の切換えバルブ24は中立位置にあり、通路12よりの作動油は遮断(通過流量、0[L/min])されている。このため、操舵装置6へ供給される作動油は、負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bを経由させてタンク2へ(通過流量は、例えば、約0.5〜1.5[L/min])還流される。
このため、前記操舵装置6で消費される流量は最小流量に抑制されて負荷信号ポート25からの負荷信号圧(LS圧)も最低圧に維持される。一方、操舵装置6への通路12を経由してのPS圧は、負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bによる圧力降下分だけ上昇(例えば、0.05[MPa])する。プライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17はB位置側に付勢され、大部分の作動油は荷役操作弁8への通路13に供給され、前述の通り、開放状態の第1遮断弁30及びドレーン通路18を介してタンク2へ還流される。
即ち、第1油圧ポンプ3への駆動トルクは、低下されたPS圧にポンプ容量を乗算した最小の駆動トルクとなり、第2油圧ポンプ4の駆動トルクは、吐出した作動油がタンク2へ還流されるため、殆ど駆動トルクを必要としない。
ステアリングハンドル22が操舵されると、切換えバルブ24がステアリングハンドル22の操舵方向に応じて切換えられ、通路12を経由して供給された作動油をオービットロールポンプ23に供給する。そして、ステアリングハンドル22の操舵速度に応じた油量の作動油を切換えバルブ24を経由させてステアリングシリンダ21へ供給しようとする。切換えバルブ24の通路12、負荷信号ライン26は下流のオービットロールポンプ23入口で連通し、負荷信号ポート25からの負荷信号圧は通路12のPS圧まで上昇される。
この負荷信号ポート25の圧力上昇は、負荷信号ライン26からプライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17の一方の端部に伝達される。そして、バルブスプール17をB位置(荷役装置7への通路面積大、操舵装置6への通路面積小)側からA位置(荷役装置7への通路面積小、操舵装置6への通路面積大)側に付勢して、操舵装置6へ供給する作動油量を増量させようとする。
このため、プライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17は、A位置側(荷役への通路面積小、操舵装置6への通路面積大)へ移動し、パワーステアリング圧(PS圧)を急速に上昇(例えば、10[MPa])させる。このため、操舵装置6に供給された作動油は、操舵制御バルブ20を介してステアリングシリンダ21を作動させて、操舵輪をステアリングハンドル22の操舵に応じて転舵させる。この場合に必要とする油圧は、第1油圧ポンプ3で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1油圧ポンプ3への駆動トルクにより賄われる。しかしながら、パワーステアリング圧(PS圧)はその上限が、例えば、10[MPa]と比較的低圧であるため、第1油圧ポンプ3への駆動トルクによるエンジン1への負荷は比較的小さく、操舵負荷のみによるエンジンストールを発生することはない。
また、荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合には、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用するが、荷役装置7によるポンプ負荷トルクを比較的小さくできる。即ち、「負荷トルクを下げるモード」となることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
また、エンジン回転数が中回転領域以上(例えば、1000[rpm]〜)に上昇した場合には、第2油圧ポンプ4よりの作動油の吐出量もエンジン回転数に比例して増加し、前記オリフィス32の上流と下流の圧力差(Pa−Pb)が比較的大きくなる。このため、前記第1遮断弁30は閉弁位置に切換えられる。プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止される。前記第2遮断弁40に開弁方向に作用する上流圧力Pcは上昇し、閉弁方向に作用する前記オリフィス32下流の圧力Pbとスプリング31の付勢力に打勝って、第2遮断弁40は開弁位置に切換えられる。プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は、通路13及び第2遮断弁40を介して合流点に流入し、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。
このため、荷役装置7が操作されない状態では、第2油圧ポンプ4には荷役装置7の荷役圧力による負荷トルクは作用しない。第1油圧ポンプ3には、操舵装置6の操作に応じたPS圧発生のための負荷トルクのみが作用する。また、荷役装置7が操作される場合には、第1,2油圧ポンプ3,4の双方に荷役装置7の荷役圧力による負荷トルクが作用する。操舵装置6の操作に応じたPS圧は、プライオリティ流量制御弁5より優先的に操舵装置6側へ分流される作動油の荷役圧力からPS圧への減圧により得られることとなる。以下、具体的に説明する。
荷役装置7が非操作状態である場合には、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油と第2油圧ポンプ4から供給された作動油は、チルト制御バルブ8Bおよび/またはリフト制御バルブ8Aの中立位置を流通し、タンク2へ還流される。このため、第1、2油圧ポンプ3,4には操舵装置6へのPS圧発生の負荷トルクと荷役装置7への荷役圧力発生のための負荷トルクは作用しない。
操舵装置6の切換えバルブ24は中立位置に移動し、プライオリティ流量制御弁5から通路12へ供給される作動油は遮断(通過流量、0[L/min])される。操舵装置6へ供給される作動油は、負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bを経由させてタンク2へ(通過流量は、例えば、約0.5〜1.5[L/min])還流されるのみとなる。このため、前記操舵装置6で消費される流量は、最小流量に抑制されて負荷信号ポート25からの負荷信号圧(LS圧)も最低圧に維持される。一方、操舵装置6への通路12を経由してのPS圧は、負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bによる圧力降下分だけ上昇(例えば、0.05[MPa])する。プライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17はB位置側に付勢され、大部分の作動油は荷役操作弁8への通路13に供給される。従って、荷役装置7の荷役操作弁8に供給される作動油量は、操舵装置6で消費される最小流量を差引いた第1油圧ポンプ3による吐出量の大部分の作動油と第2油圧ポンプ4による吐出量との合計流量の作動油が供給される。
操舵装置6が操作されると、操舵装置6の切換えバルブ24がステアリングハンドル22の操舵方向に応じて切換えられ、通路12を経由して供給された作動油をオービットロールポンプ23に供給する。そして、ステアリングハンドル22の操舵速度に応じた油量の作動油を切換えバルブ24を経由させてステアリングシリンダ21へ供給しようとする。切換えバルブ24の通路12、負荷信号ライン26は下流のオービットロールポンプ23入口で連通し、負荷信号ポート25からの負荷信号圧は通路12のPS圧まで上昇される。
この負荷信号ポート25の圧力上昇は、負荷信号ライン26からプライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17の一方の端部に伝達される。そして、バルブスプール17をB位置(荷役装置7への通路面積大、操舵装置6への通路面積小)側からA位置(荷役装置7への通路面積小、操舵装置6への通路面積大)側に付勢して、操舵装置6へ供給する作動油量を増量させようとする。
このため、プライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17は、A位置側(荷役への通路面積小、操舵装置6への通路面積大)へ移動し、パワーステアリング圧(PS圧)を急速に上昇(例えば、10[MPa])させる。このため、操舵装置6に供給された作動油は、操舵制御バルブ20を介してステアリングシリンダ21を作動させて、操舵輪をステアリングハンドル22の操舵に応じて転舵させる。この場合に必要とする油圧は、第1油圧ポンプ3からプライオリティ流量制御弁5へ供給される作動油圧をPS圧に上昇させ、その負荷トルクはエンジン1による第1油圧ポンプ3への駆動トルクにより賄われる。
この場合、操舵装置6は、ステアリングハンドル22による操作速度に比例して大きくなり、ステアリングハンドル22の操舵速度の低下に連れて少なくなる作動油量を消費する。このため、プライオリティ流量制御弁5は、操舵装置6で消費される作動油量を、第1油圧ポンプ3で発生した作動油量より減じた作動油量を、荷役装置7への通路13に分流させる。
上記したように、操舵装置6のみが操作される場合における必要とする油圧は、エンジン1の低回転領域におけると同様に、第1油圧ポンプ3で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1油圧ポンプ3への駆動トルクにより賄われる。しかしながら、パワーステアリング圧(PS圧)はその上限が、例えば、10[MPa]と比較的低圧であるため、第1油圧ポンプ3への駆動トルクによるエンジン1への負荷は比較的小さく、操舵負荷のみによるエンジンストールを発生することはない。
いずれかの荷役レバー10A,10Bが操作されると、プライオリティ流量制御弁5の余剰の作動油と第2油圧ポンプ4よりの作動油が、荷役操作弁8から制御されるリフトシリンダ9若しくはチルトシリンダ等の荷役装置7の油圧シリンダに、荷役レバー10A,10Bの操作量に応じた流量により供給される。そして、荷役レバー10A,10Bの操作量に応じた動作速度で荷役装置7が作動する。荷役操作弁8への供給圧(荷役圧力)は、荷役負荷に応じて上昇し、荷役負荷が定格の負荷状態である場合には、18[MPa]まで上昇する。この場合に必要とする油圧は、第1,2油圧ポンプ3,4で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1,2油圧ポンプ3,4への駆動トルクにより賄われる。
荷役操作弁8への供給圧(荷役圧力)は、荷役負荷に応じて上昇し、荷役負荷が定格の負荷状態である場合には、18[MPa]まで上昇する。この場合に必要とする油圧は、第1,2油圧ポンプ3,4で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1,2油圧ポンプ3,4への駆動トルクにより賄われる。即ち、エンジン1の中高回転領域では、荷役負荷は第1,2油圧ポンプ3,4に作用し、エンジン1への負荷が大きくなる。しかしながら、エンジン1により発生される駆動トルクも、最大トルクの9割以上を発生させる特性を備えるため、荷役負荷によるエンジンストールを発生することを防止できる。
この状態において、操舵装置6の操作が停止されている場合には、操舵装置6の切換えバルブ24は中立位置に移動する。そして、通路12よりの作動油は遮断(通過流量、0[L/min])され、操舵装置6へ供給される作動油は、負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bを経由させてタンク2へ(通過流量は、例えば、約0.5〜1.5[L/min])還流されるのみとなる。このため、前記操舵装置6で消費される流量は最小流量に抑制されて負荷信号ポート25からの負荷信号圧(LS圧)も最低圧に維持される。同時に、操舵装置6への通路12を経由してのPS圧は負荷信号ライン26および制御オリフィス26A,26Bによる圧力降下分だけ上昇(例えば、0.05[MPa])する。
プライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17はB位置側に付勢され、大部分の作動油は荷役操作弁8への通路13に供給される。従って、荷役装置7の荷役操作弁8に供給される作動油量は、操舵装置6で消費される最小流量を差引いた第1油圧ポンプ3による吐出量の大部分の作動油と第2油圧ポンプ4による吐出量との合計流量の作動油が供給される。このため、第1,2油圧ポンプ3,4より吐出した作動油を余すところなく荷役装置7へ供給することができ、殆ど無駄なく荷役作業に使用することができる。
この状態から操舵装置6が操作されると、操舵装置6の切換えバルブ24がステアリングハンドル22の操舵方向に応じて切換えられ、通路12を経由して供給された作動油をオービットロールポンプ23に供給する。そして、ステアリングハンドル22の操舵速度に応じた油量の作動油を切換えバルブ24を経由させてステアリングシリンダ21へ供給しようとする。切換えバルブ24の通路12、負荷信号ライン26は下流のオービットロールポンプ23入口で連通し、負荷信号ポート25からの負荷信号圧は通路12のPS圧まで上昇される。
この負荷信号ポート25の圧力上昇は、負荷信号ライン26からプライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17の一方の端部に伝達される。そして、バルブスプール17をB位置(荷役装置7への通路面積大、操舵装置6への通路面積小)側からA位置(荷役装置7への通路面積小、操舵装置6への通路面積大)側に付勢して、操舵装置6へ供給する作動油量を増量させようとする。
このため、プライオリティ流量制御弁5のバルブスプール17は、A位置側(荷役への通路面積小、操舵装置6への通路面積大)へ移動し、パワーステアリング圧(PS圧)を急速に上昇(例えば、10[MPa])させる。このため、操舵装置6に供給された作動油は、操舵制御バルブ20を介してステアリングシリンダ21を作動させて、操舵輪をステアリングハンドル22の操舵に応じて転舵させる。この場合に必要とする油圧は、荷役装置7へ供給する作動油圧(荷役圧力)を発生している第1油圧ポンプ3からの作動油圧をプライオリティ流量制御弁5で減圧して使用される。
この場合、操舵装置6で消費される作動油量は、ステアリングハンドル22による操作速度に比例して大きくなり、ステアリングハンドル22の操舵速度の低下に連れて小さくなる。このため、プライオリティ流量制御弁5は、操舵装置6で消費される作動油量を、第1油圧ポンプ3で発生した作動油量より減じた作動油量を、荷役装置7への通路13に分流させる。
従って、荷役装置7の荷役操作弁8に供給される作動油量は、第1油圧ポンプ3による吐出量より操舵装置6で消費される作動油量を差引いた作動油量と第2油圧ポンプ4による吐出量との合計流量の作動油が供給される。このため、第1,2油圧ポンプ3,4より吐出した作動油を余すところなく荷役装置7へ供給することができ、殆ど無駄なく荷役作業に使用することができる。
この場合においても、荷役操作弁8への供給圧(荷役圧力)は、荷役負荷に応じて上昇し、荷役負荷が定格の負荷状態である場合には、18[MPa]まで上昇する。この場合に必要とする油圧は、第1,2油圧ポンプ3,4で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1,2油圧ポンプ3,4への駆動トルクにより賄われる。即ち、エンジン1の中高回転領域では、荷役負荷は第1,2油圧ポンプ3,4に作用し、エンジン1への負荷が大きくなる。しかしながら、エンジン1により発生される駆動トルクも、最大トルクの9割以上を発生させる特性を備えるため、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
図14及び図15は本実施形態の比較例の油圧回路装置である。本実施形態との比較のために、操舵装置6へ供給する圧力(PS圧)を、例えば、10[MPa]、荷役装置7を操作する圧力(荷役圧力)を、例えば、18[MPa]とする。
図14に示す比較例1の油圧回路装置では、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油をプライオリティ流量制御弁5に供給し、プライオリティ流量制御弁5から操舵装置6に優先的に供給すると共にその余剰油を荷役装置7に供給するよう構成している。そして、前記余剰油によっても荷役装置7で不足する作動油は、第2油圧ポンプ4から前記荷役装置7に直接供給するように構成している。比較例1では、第1油圧ポンプ3の余剰流量を第2油圧ポンプ4に合流させるため、第1,2油圧ポンプ3,4の合計容量を増加しなくても、荷役速度を低下させることがない特徴を備える。そのため、操舵装置6と荷役装置7の同時操作時においても、負荷トルクが増加しないことである。逆に、荷役装置7の単独操作では、後述する比較例2のように負荷トルクは低減できない。本実施形態との比較のために、第1油圧ポンプ3のポンプ容量を、例えば、35[cc]、第2油圧ポンプ4のポンプ容量を、例えば、20.5[cc]、とする。
また、図15に示す比較例2の油圧回路装置では、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油をプライオリティ流量制御弁5に供給し、プライオリティ流量制御弁5から操舵装置6に優先的に供給すると共にその余剰油をタンク2へ還流させるよう構成している。そして、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油を荷役装置7へ直接供給するように構成している。このように、第1油圧ポンプ3(操舵装置6用)と第2油圧ポンプ4(荷役装置7用)をそれぞれ独立させることで、荷役速度を低下させることなく、荷役単独操作での負荷トルクを下げることができる特徴がある。しかし、逆に第1,2油圧ポンプ3,4の合計容量は増加するため、操舵装置6と荷役装置7の同時操作では負荷トルクは悪化する。本実施形態との比較のために、第1油圧ポンプ3のポンプ容量を、例えば、35[cc]、第2油圧ポンプ4のポンプ容量を、本実施形態及び比較例1と同等の荷役速度を確保するために、例えば、47[cc]、とする。
図14に示す比較例1では、操舵装置6を単独で操作した場合の駆動トルクは、
K×PS圧(10MPa)×第1油圧ポンプ容量(35cc)=約64.5[Nm]
となる。なお、Kは常数である。
また、荷役装置7を単独で操作する場合や荷役装置7と操舵装置6の両方を同時に操作する場合の駆動トルクは、
K×荷役圧力(18MP)×(第1,2油圧ポンプ合計容量55.5cc)
=約188.2[Nm]
と非常に大きいポンプ駆動トルクを必要とする。
図5はエンジン回転数の変化に応じて発生されるエンジン駆動トルク特性を示す特性図である。上記した比較例1では、図5において1点鎖線で示すように、荷役装置7を単独で操作する場合や荷役装置7と操舵装置6の両方を同時に操作する場合のポンプ負荷トルクが、エンジン回転領域に関係なく増大される。このため、エンジン1の低回転領域では、エンジン発生トルクをポンプ負荷トルクが上回り、エンジンアイドル時にエンジンストールが発生することがある。
また、図15に示す比較例2では、操舵装置6を単独で操作した場合の駆動トルクは、
K×PS圧(10MPa)×第1油圧ポンプ容量(35cc)=約64.5[Nm]
となる。また、荷役装置7を単独で操作する場合の駆動トルクは、
K×荷役圧力(18MPa)×第2油圧ポンプ容量(47cc)=約159[Nm]
となる。従って、荷役装置7と操舵装置6の両方を同時に操作する場合の駆動トルクは、
第1油圧ポンプ(約64.5Nm)+第2油圧ポンプ(約159Nm)=約223.6[Nm]
と極めて大きいポンプ駆動トルクを必要とする。
この比較例2では、図5において2点鎖線で示すように、操舵操作と荷役操作とが同時に実行される状態では、ポンプ負荷トルクが増大するため、エンジントルクをポンプ負荷トルクが上回り、エンジンアイドル時にエンジンストールが発生することがある。
一方、本実施形態においては、第1油圧ポンプ3のポンプ容量を、例えば、35[cc]、第2油圧ポンプ4のポンプ容量を、例えば、20.5[cc]、とし、操舵装置6へ供給する圧力(PS圧)を、例えば、10[MPa]、荷役装置7を操作する圧力(荷役圧力)を、例えば、18[MPa]とすると、第1油圧ポンプ3の駆動トルクは下記の如くなる。即ち、エンジン1の低回転領域においては、操舵装置6を作動させるためにエンジン1から消費される第1油圧ポンプ3への駆動トルクは、下記の如く、PS圧にポンプ容量を乗算した、
K×PS圧(10MPa)×第1油圧ポンプ容量(35cc)=約64.5[Nm]
の駆動トルクを必要とすることとなる。なお、第2油圧ポンプ4の駆動トルクは、吐出した作動油がタンク2へ還流されるため、殆ど駆動トルクを必要としない。
また、荷役装置7を作動させるためにエンジン1から消費される第2油圧ポンプ4の駆動トルクは、
K×荷役圧力(18MPa)×第2油圧ポンプ容量(20.5cc)
=約69.5[Nm]
となる。
従って、荷役装置7と操舵装置6の両方が操作される場合の駆動トルクは、
第1油圧ポンプ(64.5Nm)+第2油圧ポンプ(69.5Nm)=約134[Nm]
となり、比較例1,2に比較して、十分に低い駆動トルクにより第1,2ポンプを駆動することができる。このため、エンジン回転数の変化に応じて発生されるエンジン駆動トルク特性を示す図5において、実線で示すように、アイドリング状態を含む低回転領域においても、エンジンストールを防止することができる。
また、エンジン回転が中回転領域まで増速し、エンジントルクが十分に増大したところで、プライオリティ流量制御弁5の荷役装置7側への余剰流量を第2油圧ポンプ4からの作動油に合流するように第2遮断弁40を切り替える。このため、図4に示すように、荷役装置7側への流量が増大し、荷役速度の向上が図れる。
即ち、本実施形態のハイアイドル時の負荷トルクは、
・操舵装置6の操作時:
K×PS圧(10MPa)×第1油圧ポンプ容量(35cc)=約64.5[Nm]
・荷役装置7の操作時:
K×荷役圧力(18MP)×(第1,2油圧ポンプ合計容量55.5cc)
=約188.2[Nm]
・操舵装置6と荷役装置7の同時操作時:
荷役装置7の操作時と同じ=約188.2[Nm]
と負荷トルクは増大する(図5において、実線で示す特性参照)が、エンジントルクも増大しているため、エンジンストールを発生する危険もなく、荷役速度の増大が図れる。なお、このとき、第1油圧ポンプ3と第2油圧ポンプ4は合流するため、荷役負荷は両方のポンプに作用することになるため、荷役負荷がエンジントルクを超えないような第1油圧ポンプ3と第2油圧ポンプ4の容量を設定しておく必要がある。
なお、上記した実施形態では、プライオリティ流量制御弁5として、操舵装置6の作動圧(PS圧)に感応して供給する作動油量を可変制御するものについて説明したが、操舵装置6への作動油供給量を優先的に一定量確保し、第1油圧ポンプ3から供給される作動油量から操舵装置6への作動油供給量を差引いた余剰の作動油を荷役装置7への通路13へ分流する形式であってもよい。この場合には、プライオリティ流量制御弁5は、操舵装置6の操作状況に影響されることなく、第1油圧ポンプ3から供給される作動油量から操舵装置6への一定量の作動油供給量を差引いた余剰の作動油を荷役装置7への通路13へ分流させる。
そして、エンジン1の低回転領域においては、荷役装置7への通路13へ分流させた作動油は、前述の通り、開放状態の第1遮断弁30及びドレーン通路18を介してタンク2へ還流される。この場合においては、操舵装置6に必要とする油圧は、第1油圧ポンプ3で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1油圧ポンプ3への駆動トルクにより賄われる。また、荷役装置7で必要とする油圧は、第2油圧ポンプ4で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1油圧ポンプ3への駆動トルクにより賄われる。したがって、荷役負荷が比較的小さくできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
また、エンジン1の中高回転領域においては、荷役装置7への通路13へ分流させた作動油量は、エンジン1の回転数上昇につれて増加し、エンジン回転数の上昇につれて吐出量が増加する第2油圧ポンプ4よりの作動油と合流して、荷役装置7の荷役操作弁8に供給される。この場合においても、荷役装置7に必要とする油圧は、第1,2油圧ポンプ3,4で発生され、その負荷トルクはエンジン1による第1,2油圧ポンプ3,4への駆動トルクにより賄われる。即ち、エンジン1の中高回転領域では、荷役負荷は第1,2油圧ポンプ3,4に作用し、エンジン1への負荷が大きくなる。しかしながら、エンジン1により発生される駆動トルクも、最大トルクの9割以上を発生させる特性を備えるため、荷役負荷によるエンジンストールを発生することを防止できる。
また、エンジン回転領域に応じて第1遮断弁30を開弁状態から閉弁状態に切換える圧力差を発生させるために使用するオリフィスとして、第2油圧ポンプ4の吐出通路14に設けるものについて説明したが、第1油圧ポンプ3の吐出通路11に設けるものであってもよい。
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
(ア)エンジン1により常時駆動される第1油圧ポンプ3より吐出された作動油を優先的に操舵装置6へ供給すると共に余剰となる作動油を分流させるプライオリティ流量制御弁5と、エンジン1により常時駆動される第2油圧ポンプ4より吐出された作動油を前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油に合流させて、作動油が供給される荷役装置7と、を備える産業車両の油圧回路装置である。そして、前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油通路13を分岐させてタンク2へ連通させるドレーン通路18と、前記ドレーン通路18に配置され、エンジン回転数が低回転領域にある場合には開弁状態となり、前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油をタンク2へ還流させ、エンジン回転数が中高回転領域にある場合には閉弁状態となり、余剰となる作動油のタンク2への還流を停止させる第1遮断弁30と、前記プライオリティ流量制御弁5より分流され余剰の作動油通路13の前記ドレーン通路18への分岐点と前記合流点との間に配置され、前記第1遮断弁30の開弁時に閉弁し、第1遮断弁30の閉弁時に開弁する第2遮断弁40と、を備える。
このため、エンジン回転数が低回転領域にある場合には、第1遮断弁30を開弁状態とすると共に第2遮断弁40を閉弁状態とする。第1油圧ポンプ3より供給され前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油をドレーン通路18を介してタンク2へ還流させる。また、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油のみを荷役装置7に供給する。従って、荷役装置7によるポンプ負荷トルクを比較的小さくできる、即ち、「負荷トルクを下げるモード」とできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することを防止できる。
また、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、第1遮断弁30を閉弁状態とすると共に第2遮断弁40を開弁状態として、第1油圧ポンプ3より供給され前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油を、第2油圧ポンプ4よりの作動油に合流させて荷役装置7へ供給することができ、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とできる。
(イ)操舵装置6は、ステアリングハンドル22の操舵によって回転するオービットロールポンプ23よりなるメータリング装置および切換え弁24とを備え、プライオリティ流量制御弁5を介して第1油圧ポンプ3から供給される作動油を、操舵方向に対応して切換えられる切換え弁により操舵方向に対応させ且つその操舵速度に応じて回転するオービットロールポンプ23により計量した流量だけステアリングシリンダ21に対し供給する全油圧パワーステアリングで構成される。また、前記プライオリティ流量制御弁5は、制御オリフィス26A,26Bを備えた負荷信号ライン26を経由して全油圧パワーステアリングの負荷信号ポート25の信号圧を導入することにより油圧パワーステアリングへの作動油の供給量を変化させるものである。このため、操舵装置6を操作していないときは、操舵装置6への流量は限りなく少なくできるため、その他の余剰流量を余すところなく、荷役装置7側へ合流させることができ、ほとんど無駄なく荷役作業に使用することができる。
(ウ)第1遮断弁30は、第2油圧ポンプ4若しくは第1油圧ポンプ3の吐出通路14(11)に配置したオリフィス32の上流圧と下流圧との圧力差がスプリング31により設定された所定値を超えた場合に開弁状態から閉弁状態に切り替わる開閉弁により構成されている。このため、最小部品で構成でき、コストを安くできる。また、切替時のエンジン回転数は、第1遮断弁30を開弁方向に付勢しているスプリング31の付勢力を変更することで、調整可能である。
(エ)第1遮断弁30を閉弁方向に付勢する前記オリフィス32の上流圧は、ダンピングオリフィス34と、ダンピングオリフィス34と並列接続されて、第1遮断弁30側からオリフィス32上流側への作動油流れは許容する一方、オリフィス32上流側から第1遮断弁30側への作動油流れは遮断するチェック弁35とよりなる、ワンウェイダンパ33を介して第1遮断弁30に導入されている。このため、エンジン回転数の上昇時には、第1遮断弁30の閉動作を緩やかにして、プライオリティ流量制御弁5の余剰流量が急激に荷役装置7へ合流しないようにして、荷役動作の急激な動き、即ち、荷役ショックの発生や、荷物を落下させる不具合を防止できる。また、エンジン回転数が低下する時には、第1油圧ポンプ3と第2油圧ポンプ4とをすばやく分離することで、エンストを防止が図れる。
(第2実施形態)
図6は本発明を適用した産業車両の油圧回路装置の第2実施形態を示す、フォークリフトの油圧源に適用した回路図である。本実施形態においては、第2遮断弁をチェック弁とした構成を第1実施形態に追加したものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図6において、本実施形態の産業車両の油圧回路装置は、プライオリティ流量制御弁5の余剰油を第2油圧ポンプ4からの通路14との合流点へ分流する通路13に配置する第2遮断弁40として、チェック弁41を設けたものである。このチェック弁41は、プライオリティ流量制御弁5側から合流点側への流通は許容するも合流点側からプライオリティ流量制御弁5側への逆流は阻止する。その他の構成は第1実施形態と同様に構成している。
本実施形態においても、エンジン回転数が低回転領域においては、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油のプライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、第1遮断弁30を介してドレーン通路18を介してタンク2へ還流される。また、第2油圧ポンプ4よりの吐出油のみが荷役装置7へ供給されることとなる。従って、「負荷トルクを下げるモード」とすることができる。このため、荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合においても、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用する。しかしながら、荷役負荷が比較的小さくできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
また、エンジン回転数が中回転領域以上(例えば、1000[rpm]〜)に上昇した場合には、第1遮断弁30が閉弁位置に切換えら、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止される。そして、第2遮断弁40としてのチェック弁41を介して、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は合流点に流入し、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。従って、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
また、本実施形態においては、第2遮断弁40として、プライオリティ流量制御弁5側から合流点側への流通は許容するも合流点側からプライオリティ流量制御弁5側への逆流は阻止するチェック弁41を使用するため、その構成が簡略化される。また、エンジン回転領域が低回転領域から中高回転領域となり、第1遮断弁30が開弁状態から閉弁状態に切り替わっても、第1油圧ポンプ3−プライオリティ流量制御弁5−分流通路13系統の圧力が、第2油圧ポンプ4からの吐出系統の圧力以上に上昇した時点で、その流通を許容する。このため、第2油圧ポンプ4の吐出系統の圧力変動、特に、一時的な圧力低下を抑制することができる。また、第2油圧ポンプ4側の圧力がプライオリティ流量制御弁5の分流側より一瞬高くなる状態が発生してもプライオリティ流量制御弁5側へ逆流することが無く、即ち、荷役装置7への作動油が一瞬減少して荷役装置7の作動が停滞する等の不都合が無く、スムーズな荷役操作が可能となる。
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)〜(エ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
(オ)第2遮断弁40は、プライオリティ流量制御弁5側から合流点側への流通は許容するも合流点側からプライオリティ流量制御弁5側への逆流は阻止するチェック弁41により構成した。このため、第2油圧ポンプ4側の圧力が一瞬高くなる状態が発生してもプライオリティ流量制御弁5側へ逆流することがなく、スムーズな荷役操作が可能となる。
(第3実施形態)
図7は本発明を適用した産業車両の油圧回路装置の第3実施形態を示す、フォークリフトの油圧源に適用した回路図である。本実施形態においては、第1遮断弁を開弁状態から閉弁状態へ切換える圧力差を発生させるために使用するオリフィスとして、プライオリティ流量制御弁の余剰油通路をタンクへ連通させるドレーン通路に設ける構成を第1実施形態若しくは第2実施形態に追加したものである。なお、第1、2実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図7において、本実施形態の産業車両の油圧回路装置は、第1遮断弁30が配置されているドレーン通路18にオリフィス36を配置している。そして、オリフィス36の上流圧を、第1遮断弁30を閉弁位置に付勢するパイロット圧として導入すると共に、同オリフィス36の下流の圧力Pbを開弁位置に付勢するパイロット圧として導入している。また、第1遮断弁30はスプリング31により開弁位置側へ付勢するようにしている。また、前記オリフィス36の上流圧は、第1,2実施形態と同様に、ワンウェイダンパ33を介して第1遮断弁30を閉弁方向に付勢するように導入している。また、前記オリフィス36は、第1遮断弁30が開弁状態のみで作動するよう第1遮断弁30のバルブスプールに一体に配置されている。
この実施形態においては、使用するプライオリティ流量制御弁5は、操舵装置6への作動油供給量を優先的に一定量確保し、第1油圧ポンプ3から供給される作動油量から操舵装置6への作動油供給量を差引いた余剰の作動油を荷役装置7への通路13へ分流する形式が望ましい。即ち、プライオリティ流量制御弁5として、操舵装置6の作動圧(PS圧)に感応して供給する作動油量を可変制御するものを使用する場合には、操舵装置6で消費する作動油量の変動により、余剰の作動油の流量が変動する。このため、操舵装置6への作動油供給量を優先的に一定量確保し、第1油圧ポンプ3から供給される作動油量から操舵装置6への作動油供給量を差引いた余剰の作動油を荷役装置7への通路13へ分流する形式であれば、第1油圧ポンプ3から供給される作動油量から操舵装置6への作動油供給量を差引いた余剰の作動油の流量が、エンジン回転数に比例して増加される特性となることによる。
本実施形態においても、エンジン回転数が低回転領域においては、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油のプライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、第1遮断弁30を介してドレーン通路18を介してタンク2へ還流される。そして、第2油圧ポンプ4よりの吐出油のみが荷役装置7へ供給されることとなる。従って、「負荷トルクを下げるモード」とすることができる。荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合においても、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用する。しかし、荷役負荷が比較的小さくできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
また、エンジン回転数が中回転領域以上(例えば、1000[rpm]〜)に上昇した場合には、第1の遮断弁が閉弁位置に切換えら、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止される。そして、第2遮断弁40としてのチェック弁41を介して、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は合流点に流入し、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。従って、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作中であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
また、本実施形態においては、第1遮断弁30を開弁状態から閉弁状態に切り替えるために、タンク2へのドレーン通路18にオリフィス36を設け、エンジン回転数の中高回転領域の流量で発生する通過圧損(圧力差)で、第1遮断弁30を閉弁状態とするようにした。このため、最小部品で構成でき、コストを安くできる特徴を備える。また、切替時のエンジン回転数は、第1遮断弁30を開弁状態に付勢するスプリング31のスプリング力を変更することで、調整可能となる。
なお、上記実施形態では、第2遮断弁40として、チェック弁41を用いるものについて説明したが、第1実施形態で示した第2遮断弁40を用いるものであってもよい。この場合、第2遮断弁40はスプリング力により閉弁方向に付勢され、下流の合流側圧力を閉弁方向に付勢するパイロット圧として導入し、上流のプライオリティ流量制御弁5からの分流通路13の圧力を開弁方向に付勢するパイロット圧として導入することとなる。
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)、(エ)および第2実施形態における効果(オ)に加えて、以下に記載する効果を奏することができる。
(カ)第1遮断弁30は、ドレーン通路18に配置したオリフィス36の上流圧と下流圧との圧力差がスプリング31により設定された所定値を超えた場合に開弁状態から閉弁状態に切り替わる開閉弁により構成されている。このため、最小部品で構成でき、コストを安くできる。また、切替時のエンジン回転数は、第1遮断弁30を開弁方向に付勢しているスプリング31の付勢力を変更することで、調整可能となる。
(第4実施形態)
図8は、本発明を適用した産業車両の油圧回路装置の第4実施形態を示す、フォークリフトの油圧源に適用した回路図である。本実施形態においては、第1遮断弁として、開弁状態・閉弁状態に切換え可能な電磁弁とした構成を第1〜3実施形態に追加したものである。なお、第1〜3実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図8において、本実施形態の産業車両の油圧回路装置は、ドレーン通路18に配置する第1遮断弁30を、コントローラ45により開閉制御可能であり、非励磁時は開弁し励磁時に閉弁する(若しくは、非励磁時は閉弁し励磁時に開弁する)電磁開閉弁37により構成した。また、第2遮断弁40は、第2実施形態で示すチェック弁41(若しくは、第1実施形態で示す形態の第2遮断弁40)を使用する。
前記コントローラ45には、エンジン1の回転数センサ46よりの回転数信号と、ダイヤル若しくは入力キーによりなる設定回転設定手段47よりの設定回転数信号(エンジン1の低回転領域の上限回転数)と、が入力される。そして、入力されたエンジン1の回転数信号を設定回転数信号と比較し、回転数信号が設定回転数に満たない場合には、第1遮断弁30である電磁開閉弁37を非励磁状態(開弁状態)とする。また、回転数信号が設定回転数を超えた場合には、第1遮断弁30である電磁開閉弁37を励磁状態(開弁状態)とするよう構成する。
前記設定回転数は、ダイヤル若しくは入力キーによりなる設定回転設定手段47により、変更可能であり、エンジン1の出力トルク特性と、荷役装置7及び操舵装置6へ作動油を供給する第1,2油圧ポンプ3,4の負荷トルクとに対応して、調整可能である。
上記構成においては、エンジン回転数が低回転領域にある場合は、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油のプライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、第1遮断弁30である電磁開閉弁37、ドレーン通路18を介してタンク2へ還流される。そして、第2油圧ポンプ4よりの吐出油のみが荷役装置7へ供給されることとなる。従って、「負荷トルクを下げるモード」とすることができる。荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合においても、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用する。しかし、荷役負荷が比較的小さくできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
また、エンジン回転数が設定回転数を超えて中回転領域以上(例えば、1000[rpm]〜)に上昇した場合には、第1遮断弁30である電磁開閉弁37が閉弁位置に切換えられ、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止される。このため、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は、第2遮断弁40としてのチェック弁41を介して合流点に流入し、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。従って、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作中であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転数を中回転領域まで上昇させれば、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
また、前記電磁開閉弁37を、非励磁時は開放し、励磁電流に応じてその開度を絞り、所定の励磁状態で閉じる電磁比例弁に構成すると共に、前記設定回転数を電磁比例弁の励磁開始回転数と励磁完了回転数とを設定するよう構成してもよい。
上記した構成によれば、エンジン回転数が電磁比例弁の励磁開始回転数を超えるとエンジン回転数の上昇に応じて電磁比例弁の開度を徐々に減少させ、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を通過してタンク2へ還流される流量を減少させる。一方、第2遮断弁40を通過して合流点に供給される流量を徐々に増加させることができる。そして、エンジン回転数が電磁比例弁の励磁完了回転数を超えた時点で、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量の全量を第2遮断弁40を通過して合流点に供給される流量とすることができる。即ち、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」から徐々に「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
図9に示す第2実施例においては、コントローラ45に、エンジン1の回転数センサ46よりの回転数信号と、ダイヤル若しくは入力キーによりなる設定回転設定手段47よりの設定回転数信号(エンジン1の低回転領域の上限回転数)と、荷役装置7における荷役操作レバー10A,10Bの操作の有無を検出する荷役操作スイッチ48よりの操作信号を入力するようにしたものである。
コントローラ45は、入力されるエンジン1の回転数信号を設定回転数信号と比較し、回転数信号が設定回転数に満たない場合には、荷役操作レバー10A,10Bの操作信号の有無に係わらず、第1遮断弁30である電磁開閉弁37(電磁比例弁)を非励磁状態とする。また、回転数信号が設定回転数を超えた場合においても、荷役操作レバー10A,10Bの操作信号が入力された場合にのみ、第1遮断弁30である電磁開閉弁37(電磁比例弁)を励磁状態とするよう構成する。この場合における電磁開閉弁37(電磁比例弁)は、開弁状態から閉弁状態へ、また閉弁状態から開弁状態へ、徐々に切換えられる特性が、荷役装置7の動作の安定性を確保するために望ましい。
このように構成することにより、エンジン回転数が中高回転領域にあっても、荷役装置7を操作していない場合には、プライオリティ流量制御弁5から分流される余剰の作動油を、第2遮断弁40・荷役操作弁8を介在させることなくドレーン通路18を介して直接タンク2へ還流させることができ、油温の上昇を抑制することができる。
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)、(イ)および第2実施形態における効果(オ)に加えて、以下に記載する効果を奏することができる。
(キ)エンジン回転数を検出するエンジン1の回転数センサ46を備え、第1遮断弁30は、電磁開閉弁37により構成される。前記電磁開閉弁37は、コントローラ45により前記回転数センサ46で検出されたエンジン回転数が低回転領域にある場合に開弁され、エンジン回転数が中高回転領域にある場合に閉弁するよう作動される。このため、任意のエンジン回転数で切換えることができる。
(ク)電磁開閉弁37は、開弁状態と閉弁状態との間で励磁電流に応じて任意の開度を得る電磁比例弁に構成される。前記電磁比例弁は、コントローラ45によりエンジン回転数の低回転領域と中高回転領域との切換え時にエンジン回転数に応じて開弁状態と閉弁状態の中間開度を徐々に変化させて切換えられる。これにより、エンジン回転数が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」から徐々に「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
(ケ)荷役装置7の荷役操作レバー10A,10Bの操作状態を検出する荷役操作センサ48を備える。前記電磁開閉弁37は、コントローラ45により前記回転数センサ46で検出されたエンジン回転数が低回転領域にある場合に開弁され、エンジン回転数が中高回転領域にあり且つ前記荷役操作センサ48よりの操作信号が入力されない場合には開弁状態とされる。また、前記電磁開閉弁37は、エンジン回転数が中高回転領域にあり且つ前記荷役操作センサ48よりの操作信号が入力される場合には閉弁状態とされる。これにより、エンジン回転数が中高回転領域にあっても、荷役装置7を操作していない場合には、プライオリティ流量制御弁5から分流される余剰の作動油を、第2遮断弁40・荷役操作弁8を介在させることなくドレーン通路18を介して直接タンク2へ還流させることができ、油温の上昇を抑制することができる。
(第5実施形態)
図10〜図13は、本発明の第5実施形態を適用した産業車両の油圧回路装置を示すフォークリフトの油圧源に適用した回路図であり、図10及び図11はその第1実施例、図12は第2実施例、図13は第3実施例である。本実施形態においては、エンジン回転速度が中高回転領域へと上昇され且つ荷役装置が操作された場合に、プライオリティ流量制御弁よりの余剰の作動油の荷役装置への合流を許可する構成を第1〜4実施形態に追加したものである。なお、第1〜4実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図10及び図11(図10の要部拡大図)に示す第1実施例の産業車両の油圧回路装置は、第2油圧ポンプ4の吐出油を直列に配列した一対のオリフィス52、53を介してタンク2に還流させる還流通路50を備える。前記還流通路50を流通する作動油量は、一対のオリフィス52,53の絞り穴径と第2油圧ポンプ4の吐出圧とにより変化する。例えば、吐出圧を定格圧力(荷役装置7に設定された定格積載荷重の荷物の上昇時の圧力)約18MPa、一対のオリフィス52,53の絞り穴径を0.6mmとした場合には、1[L/min]程度となる。また、前記還流通路50の一対のオリフィス52,53間に発生する中間圧は、第2油圧ポンプ4の吐出圧である荷役装置7への供給圧を一対のオリフィス52,53を介してタンク2へ還流するものである。このため、前記中間圧は、一対のオリフィス52,53の絞り穴径が、例えば、同一であれば、第2油圧ポンプ4の吐出圧の1/2の圧力値となる。
前記プライオリティ流量制御弁5の余剰油をタンク2へ還流させるドレーン通路18に配置された第1遮断弁30は、開弁方向にスプリング31により付勢され、閉弁方向へ付勢するパイロット圧として、前記還流通路50の一対のオリフィス間に発生する中間圧を導入する。即ち、前記還流通路50の上流側オリフィス52を含む上流側通路部分と一対のオリフィス52,53間を第1遮断弁30に導く通路部分とは、導入通路51を構成している。そして、前記パイロット圧により荷役装置7が操作されていることを判定する圧力値、例えば、前記中間圧が約1.5[MPa]、ポンプ吐出圧が約3[MPa]を超える場合に、前記第1遮断弁30が開弁状態から閉弁状態に切り替わるよう、スプリング31の付勢力を設定している。
前記一対のオリフィス52,53の上流の還流通路50には、電磁開閉弁60が配置されている。この電磁開閉弁60は、エンジン回転速度が、例えば、1200rpm未満の低回転領域では閉弁状態であり、エンジン回転速度が、この1200rpm以上となる中高回転領域においては電磁ソレノイドにより閉弁状態から開弁状態に切り替えられるよう構成している。前記電磁開閉弁60の閉弁状態から開弁状態へ切換えられるエンジン回転速度と、開弁状態から閉弁状態へ切換えられるエンジン回転速度との間に、前者を1200rpmより若干高い回転速度、例えば、1250rpmとし、後者を1200rpmより若干低い回転速度、例えば、1150rpmとする。即ち、回転上昇時と回転低下時の切り替わり回転速度にヒステリシスを設けることにより、切り替え回転速度近傍での電磁開閉弁60の頻繁な切り替わりを防止することができる。
前記荷役操作弁8へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4より吐出された作動油を導く通路14に、プライオリティ流量制御弁5よりの余剰油を合流させる通路13には、第2遮断弁40としての遮断弁42が配置されている。この遮断弁42は、通路13の上流側圧力が下流側圧力に対して閉弁用スプリング43で設定した圧力差を超えた際に開弁して、通路13の上流側と下流側とを連通させるよう構成している。この遮断弁42は、第1〜第4実施形態における第2遮断弁40と同様に構成してもよい。
なお、通路13の遮断弁42の下流には、荷役装置7へ供給する作動油の最高圧力を制限するリリーフ弁44が配置されている。また、本実施形態では、第2油圧ポンプ4からの作動油を荷役操作弁8へ供給する通路14の作動油をタンク2へ還流させるリターン通路70を備え、リターン通路70には遮断弁71が設けられている。前記遮断弁71は、付属する電磁開閉弁72が開弁状態とされた場合に開放して、通路14の作動油をタンク2へ還流させ、電磁開閉弁72が閉弁状態とされた場合に閉弁して、通路14の作動油のタンク2への還流を遮断する。前記電磁開閉弁72は、荷役装置7の動作の禁止時に開放状態とし、荷役装置7の動作を許可する場合に閉弁状態とする。即ち、リターン通路70と遮断弁71とは、荷役装置7の操作規制手段としての機能を備える。また、前記電磁開閉弁72を、荷役装置7の非操作時に開状態とすると共に操作時に閉状態とするようにしてもよい。この場合には、リターン通路70と遮断弁71とは、荷役装置7が操作されていない場合のアンロード機構として構成することができる。その他の構成は、第1〜第4実施形態と同様に構成している。
以上の構成からなる第1実施例の産業車両の油圧回路装置においては、エンジン回転速度が、例えば、1200rpm未満の低回転領域では電磁開閉弁60が閉弁状態である。このため、還流通路50は閉じられており、パイロット圧が供給されず、第1遮断弁30は開弁状態に保持される。第1油圧ポンプ3より吐出された作動油のプライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、第1遮断弁30である電磁開閉弁37、ドレーン通路18を介してタンク2へ還流され、第2油圧ポンプ4よりの吐出油のみが荷役装置7へ供給される。従って、「負荷トルクを下げるモード」とすることができ、荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合においても、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用する。しかし、荷役負荷が比較的小さくできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
そして、エンジン回転速度が、この1200rpm以上となる中高回転領域では、電磁開閉弁60が開弁状態に切り替わり、還流通路50が開通され、第2油圧ポンプ4の吐出油を直列に配列した一対のオリフィス52,53を介してタンク2に還流させる。このため、一対のオリフィス52,53間に発生する中間圧がパイロット圧として第1遮断弁30に供給される。しかし、荷役装置7が操作されていない状態においては、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油は、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路を介してタンク2へ還流するため、その吐出圧は上昇しない。
このため、第1遮断弁30に供給されるパイロット圧も上昇されず、第1遮断弁30は開弁位置に保持され、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油は、ドレーン通路18を経由してタンク2に還流され、第1油圧ポンプ3の吐出圧は操舵装置6を作動させるのみの圧力値に維持される。
したがって、エンジン回転速度が中高回転領域となる場合においても、荷役装置7が操作されていない場合には、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油は、ドレーン通路18を経由してタンク2に還流される。このため、荷役装置7へは第2油圧ポンプ4からの吐出油のみが供給されるものとできる。即ち、エンジン回転速度が上昇した中高回転量位置であっても、荷役装置7への供給作動油量の増加を低減でき、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路で発生する圧損を低減できる。
なお、前記還流通路50を還流してタンク2に流出する作動油量は、第2油圧ポンプ4の吐出圧が定格圧力18[MPa]の時に1[L/min]であるため、それと比較してごく僅かである。そして、この還流量は第2油圧ポンプ4の吐出圧の上昇につれて増加し、第2油圧ポンプ4の吐出圧が定格圧力(荷役装置7に設定された定格積載荷重の荷物の上昇時の圧力)18[MPa]の時に1[L/min]に向かって増加する。
この状態において、荷役装置7が操作されると、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油は、荷役操作弁8のブリードオフ通路を介してのタンク2への還流が制限されて荷役装置7へ供給されるため、荷役装置7の負荷(例えば、積載荷重)に応じて上昇する。前記第2油圧ポンプ4の吐出圧の上昇は、一対のオリフィス52,53間に発生する中間圧をオリフィス52,53による時間遅れを伴って徐々に上昇させ、第1遮断弁30に供給しているパイロット圧を徐々に上昇させる。そして、そのパイロット圧が、例えば、1.5[MPa]と荷役装置7が操作されていることを判定する閾値を超えた場合には、スプリング31の付勢力に抗して第1遮断弁30を開弁状態から徐々に閉弁状態に切り替える。これにより、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止される。そして、第2遮断弁40としての遮断弁を介して、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は合流点に流入させ、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。従って、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転速度が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作中であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転速度を中回転領域まで上昇させれば、前述の如く、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転速度を中回転領域まで上昇させれば、第1遮断弁30が閉弁状態に切り替えられ、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油を第2遮断弁40を介して合流点に導くことができ、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
本実施例においては、第2油圧ポンプ4の吐出圧を一対のオリフィス52,53を介してタンク2へ還流させる還流通路50を形成し、一対のオリフィス52,53間に発生する中間圧をパイロット圧として導入し、第1遮断弁30を閉弁する方向に付勢するよう構成している。このため、第2油圧ポンプ4から吐出される作動油の一部をタンク2へ還流させるのみで減圧されたパイロット圧を得ることができる。
図12に示す第2実施例の産業車両の油圧回路装置では、第2油圧ポンプ4の吐出油を一個のオリフィス52を介してタンク2に還流させる還流通路50を備える。前記還流通路50を流通する作動油量は、一個のオリフィス52の絞り穴径と第2油圧ポンプ4の吐出圧とにより変化され、例えば、吐出圧を定格圧力(荷役装置7に設定された定格積載荷重の荷物の上昇時の圧力)約18MPa、一個のオリフィスの絞り穴径を0.6mmとした場合には、2[L/min]程度となる。
前記一個のオリフィス52の下流の還流通路50には、電磁開閉弁61が配置されている。この電磁開閉弁61は、エンジン回転速度が、例えば、1200rpm未満の低回転領域で開弁状態とされ、エンジン回転速度が、この1200rpm以上となる中高回転領域で、電磁ソレノイドにより開弁状態から閉弁状態に切り替るよう構成している。
前記プライオリティ流量制御弁5の余剰油をタンク2へ還流させるドレーン通路18に配置された第1遮断弁30は、開弁方向にスプリング31により付勢され、閉弁方向へ付勢するパイロット圧として、前記還流通路50の一個のオリフィス52の下流(前記電磁開閉弁の上流)に発生する圧力をオリフィス54を介して導入する。即ち、前記還流通路50の上流側オリフィス52を含む上流側通路部分とオリフィス52の下流をオリフィス54を介して第1遮断弁30に導く通路部分とは、導入通路51を構成している。そして、前記第1遮断弁30は、前記還流通路50の一個のオリフィス52の下流(前記電磁開閉弁61の上流)に発生する圧力が、例えば、約3[MPa]、ポンプ吐出圧が約3[MPa]を超える場合に、開弁状態から閉弁状態に切り替わるよう、スプリング31の付勢力を設定している。その他の構成は、第1実施例と同様に構成している。
以上の構成からなる第2実施例の産業車両の油圧回路装置においては、エンジン回転速度が、例えば、1200rpm未満の低回転領域では、電磁開閉弁61が開弁状態であるため、還流通路50は開放されており、パイロット圧が発生されず、第1遮断弁30は開弁状態に保持される。このため、第1油圧ポンプ3より吐出された作動油のプライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、第1遮断弁30、ドレーン通路18を介してタンク2へ還流され、第2油圧ポンプ4よりの吐出油のみが荷役装置7へ供給されることとなる。従って、「負荷トルクを下げるモード」とすることができ、荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合においても、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用する。しかし、荷役負荷が比較的小さくできることから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。なお、この場合の還流通路50を還流してタンク2に流出する作動油量は、第2油圧ポンプ4の吐出圧が定格圧力18[MPa]の時に2[L/min]であるため、それと比較してごく僅かである。そして、この還流量は第2油圧ポンプ4の吐出圧の上昇につれて増加し、第2油圧ポンプ4の吐出圧が定格圧力(荷役装置7に設定された定格積載荷重の荷物の上昇時の圧力)18[MPa]の時に2[L/min]に向かって増加する。
そして、エンジン回転速度が、この1200rpm以上となる中高回転領域では、電磁開閉弁61が閉弁状態に切り替わり、還流通路50が遮断され、パイロット圧が発生する。また、還流通路50が遮断されるため、還流通路50を還流してタンク2に流出する作動油はゼロとなる。
しかし、荷役装置7が操作されていない状態においては、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油は、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路を介してタンク2へ還流するため、その吐出圧は上昇しない。このため、第1遮断弁30に供給されるパイロット圧も上昇されず、第1遮断弁30は開弁位置に保持され、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油は、ドレーン通路18を経由してタンク2に還流され、第1油圧ポンプ3の吐出圧は操舵装置6を作動させるのみの圧力値に維持される。
したがって、エンジン回転速度が中高回転領域となる場合においても、荷役装置7が操作されていない場合には、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油は、ドレーン通路18を経由してタンク2に還流される。このため、荷役装置7へは第2油圧ポンプ4からの吐出油のみが供給されるものとできる。このため、エンジン回転速度が上昇した中高回転量位置であっても、荷役装置7への供給作動油量の増加を低減でき、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路で発生する圧損を低減できる。
この状態において、荷役装置7が操作されると、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油は、荷役操作弁8のブリードオフ通路を介してタンク2への還流が制限されて荷役装置7へ供給されるため、荷役装置7の負荷(例えば、積載荷重)に応じて上昇する。前記第2油圧ポンプ4の吐出圧の上昇は、第1遮断弁30に供給しているパイロット圧をオリフィス52,54による時間遅れを伴って徐々に上昇させる。そして、そのパイロット圧が、例えば、3[MPa]と荷役装置7が操作されていることを判定する圧力閾値を超えた場合には、スプリング31の付勢力に抗して第1遮断弁30を開弁状態から徐々に閉弁状態に切り替える。これにより、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止され、第2遮断弁40としての遮断弁42を介して、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は合流点に流入させ、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。従って、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転速度が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作中であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転速度を中回転領域まで上昇させれば、前述の如く、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転速度を中回転領域まで上昇させれば、第1遮断弁30が閉弁状態に切り替えられ、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油を第2遮断弁40を介して合流点に導くことができ、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
本実施例においては、第2油圧ポンプ4の吐出圧を、エンジン回転速度の低回転領域においてのみ、タンク2へ還流させて第1遮断弁30へのパイロット圧の発生を阻止するものであるため、エンジン回転速度の中高回転領域での作動油のタンク2への還流を阻止できる。
図13に示す第3実施例の産業車両の油圧回路装置では、前記プライオリティ流量制御弁5の余剰油をタンク2へ還流させるドレーン通路18に配置された第1遮断弁30は、開弁方向にスプリング31により付勢され、閉弁方向へ付勢するパイロット圧として、第2油圧ポンプ4の吐出油をオリフィス54を介して導入する。前記第1遮断弁30は、前記パイロット圧が、例えば、約3[MPa]、ポンプ吐出圧が約3[MPa]を超える場合に、開弁状態から閉弁状態に切り替わるよう、スプリング31の付勢力を設定している。
前記パイロット圧の導入通路51には、導入通路51を流通させる開通位置と、導入通路51を遮断し且つ第1遮断弁30側の下流となる導入通路51をタンク2へ開放する遮断位置と、を備える三方切換え弁62が配置されている。前記三方切換え弁62は、エンジン回転速度が、例えば、1200rpm未満の低回転領域で遮断位置とされ、エンジン回転速度が、この1200rpm以上となる中高回転領域で、電磁ソレノイドにより遮断位置から開通位置に切り替るよう構成している。その他の構成は、第1実施例と同様に構成している。
以上の構成からなる第3実施例の産業車両の油圧回路装置においては、エンジン回転速度が、例えば、1200rpm未満の低回転領域では、三方切換え弁62が遮断位置である。このため、下流側の導入通路51は三方切換え弁62によりタンク2へ解放されており、パイロット圧は発生されず、第1遮断弁30は開弁状態に保持される。第1油圧ポンプ3より吐出された作動油のプライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量は、第1遮断弁30、ドレーン通路18を介してタンク2へ還流され、第2油圧ポンプ4よりの吐出油のみが荷役装置7へ供給される。従って、「負荷トルクを下げるモード」とすることができ、荷役装置7と操舵装置6との両者が操作される場合においても、操舵装置6へ作動油を供給する第1油圧ポンプ3と荷役装置7へ作動油を供給する第2油圧ポンプ4との両者の駆動トルクがエンジン1に負荷トルクとして作用するが、荷役負荷が比較的小さくできる。このことから、操舵負荷が加算されたとしても、エンジンストールが発生することは防止できる。
そして、エンジン回転速度が、この1200rpm以上となる中高回転領域では、三方切換え弁62が開通位置に切り替わり、導入通路51を介して第2油圧ポンプ4の吐出圧が導入され、パイロット圧が発生する。
しかし、荷役装置7が操作されていない状態においては、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油は、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路を介してタンク2へ還流するため、その吐出圧は上昇しない。このため、第1遮断弁30に供給されるパイロット圧も上昇されず、第1遮断弁30は開弁位置に保持され、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油は、ドレーン通路18を経由してタンク2に還流され、第1油圧ポンプ3の吐出圧は操舵装置6を作動させるのみの圧力値に維持される。
したがって、エンジン回転速度が中高回転領域となる場合においても、荷役装置7が操作されていない場合には、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油は、ドレーン通路18を経由してタンク2に還流される。このため、荷役装置7へは第2油圧ポンプ4からの吐出油のみが供給されるものとできる。即ち、エンジン回転速度が上昇した中高回転量位置であっても、荷役装置7への供給作動油量の増加を低減でき、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路で発生する圧損を低減できる。
この状態において、荷役装置7が操作されると、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油は、荷役操作弁8のブリードオフ通路を介してタンク2への還流が制限されて荷役装置7へ供給されるため、荷役装置7の負荷(例えば、積載荷重)に応じて上昇する。前記第2油圧ポンプ4の吐出圧の上昇は、第1遮断弁30に供給しているパイロット圧をオリフィス54による時間遅れを伴って徐々に上昇させる。そして、そのパイロット圧が、例えば、3[MPa]と荷役装置7が操作されていることを判定する圧力閾値を超えた場合には、スプリング31の付勢力に抗して第1遮断弁30を開弁状態から徐々に閉弁状態に切り替える。これにより、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰流量のドレーン通路18を介してのタンク2への還流が停止され、第2遮断弁40としての遮断弁42を介して、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油は合流点に流入させ、第2油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して荷役装置7の荷役操作弁8へ供給される。従って、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」とすることができる。
また、エンジン回転速度が低回転領域での「負荷トルクを下げるモード」での荷役操作中であっても、荷役スピードを向上させたい場合には、アクセルペダルを踏込むことにより、エンジン回転速度を中回転領域まで上昇させれば、前述の如く、荷役装置7の操作性が阻害されることがない。即ち、エンジン回転速度を中回転領域まで上昇させれば、第1遮断弁30が閉弁状態に切り替えられ、プライオリティ流量制御弁5より分流される余剰の作動油を第2遮断弁40を介して合流点に導くことができ、「同時操作においても、負荷トルクを増大させず、荷役速度を維持するモード」に変化させることができる。
本実施例においては、第2油圧ポンプ4の吐出圧を第1、2実施例の遮断弁よりも構造が複雑で高価な三方切換弁62を使用している。そして、エンジン回転速度の低回転領域ではパイロット圧として第1遮断弁30に供給することを阻止し、エンジン回転速度の中高回転領域ではパイロット圧として第1遮断弁30へ供給するようにしている。このため、第1,2実施例のように、パイロット圧を導入するためのタンク2への還流通路50を不要とでき、第2油圧ポンプ4の吐出油の全量を荷役装置7へ供給することができる。
以上に説明した本実施形態においては、エンジン回転速度が中高回転領域へと上昇されても、荷役装置7が動作されていない場合には、プライオリティ流量制御弁5よりの余剰の作動油を荷役装置7へ合流させることなく、ドレーン通路18および第1遮断弁30を介してタンク2へ還流させる。このため、操作されていない荷役装置7へ、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油を、第1油圧ポンプ3からの作動油と合流させた、比較的流量の多い作動油が供給することを防止できる。このため、エンジン回転速度が上昇した中高回転量位置であっても、荷役装置7への供給作動油量の増加を低減でき、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路で発生する圧損を低減できる。
また、荷役装置7の操作信号として、第2油圧ポンプ4の吐出油圧をパイロット圧として導入して第1遮断弁30を切り替え操作するようにしている。このため、荷役操作弁8の操作レバーの操作状態を検出する検出センサや第2油圧ポンプ4の吐出圧を検出する圧力センサを設ける必要がない。
また、第1遮断弁30へのパイロット圧の導入通路51にオリフィス52、54を介在させている。このため、第1遮断弁30の開閉動作が緩やかに実施され、プライオリティ流量制御弁5よりの余剰の作動油の合流及び分離が緩やかに行われ、荷役装置7の動作にキックバック等のショックを生ずることを低減できる。
しかも、第1遮断弁30を切り替え作動させるパイロット圧の圧力値、即ち、荷役装置7が操作されていることを判定する圧力閾値で作動するよう、第1遮断弁30に作用するスプリング31の付勢力を設定している。このため、荷役操作時に確実に第1遮断弁30を閉弁動作させることができる。
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)、(イ)および第2実施形態における効果(オ)に加えて、以下に記載する効果を奏することができる。
(コ)エンジン1により常時駆動されてタンク2の作動油を夫々吸込み吐出する第1,2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプ3より吐出された作動油を優先的に操舵装置6へ供給すると共に余剰となる作動油を分流させるプライオリティ流量制御弁5と、前記第2油圧ポンプ4より吐出された作動油を前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油に合流させて、作動油が供給される荷役装置7と、を備える産業車両の油圧回路装置である。前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油通路13を分岐させてタンク2へ連通させるドレーン通路18を備える。前記ドレーン通路18に配置され、エンジン回転数が低回転領域にある場合には開弁状態となり、前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油をタンク2へ還流させ、エンジン回転数が中高回転領域にある場合には、前記荷役装置7が操作されていない状態では開弁状態となり、前記プライオリティ流量制御弁5より分流された余剰の作動油をタンク2へ還流させ、前記荷役装置7が操作されている状態では閉弁状態となり、余剰となる作動油のタンク2への還流を停止させる第1遮断弁30を備える。また、前記プライオリティ流量制御弁5より分流され余剰の作動油通路13の前記ドレーン通路18への分岐点と前記合流点との間に配置され、前記第1遮断弁30の開弁時に閉弁し、第1遮断弁30の閉弁時に開弁する第2遮断弁40を備える。
以上の構成により、操作されていない荷役装置7へ、プライオリティ流量制御弁5からの余剰の作動油を、第1油圧ポンプ3からの作動油と合流させた、比較的流量の多い作動油が供給することを防止できる。このため、エンジン回転速度が上昇した中高回転量位置であっても、荷役装置7への供給作動油量の増加を低減でき、オープンセンタに構成している荷役操作弁8のブリードオフ通路で発生する圧損を低減できる。
(サ)第1遮断弁30は、エンジン1の回転数が中高回転領域にある場合に開通する導入通路51若しくはエンジン1の回転数が中高回転領域にある場合にタンク2への還流が阻止される導入通路51を介して導入する第2油圧ポンプ4の吐出作動油の圧力が、スプリング31により設定された所定値を超えた場合に、開弁状態から閉弁状態に切り替わる開閉弁により構成されている。このため、荷役操作弁8の操作レバーの操作状態を検出する検出センサや第2油圧ポンプ4の吐出圧を検出する圧力センサを設ける必要がない。
(シ)エンジン1の回転数が中高回転領域にある場合に開通する導入通路51は、エンジン回転数が低回転領域にある場合に導入通路51を遮断し、エンジン回転数が中高回転領域にある場合に導入通路51を開通させる電磁開閉弁60,62を備える。このため、エンジン回転数の低回転領域において第1遮断弁30を確実に開弁状態に保持できる。
(ス)エンジン1の回転数が中高回転領域にある場合にタンク2への還流が阻止される導入通路51は、エンジン回転数が低回転領域にある場合に導入通路51をタンク2の開放し、エンジン回転数が中高回転領域にある場合に導入通路51のタンク2への開放を遮断する電磁開閉弁61を備える。このため、エンジン回転数の低回転領域において第1遮断弁30を確実に開弁状態に保持できる。
(セ)導入通路51には、少なくとも1個のオリフィス52,54が配置されている。このため、第1遮断弁30の開閉動作が緩やかに実施され、プライオリティ流量制御弁5よりの余剰の作動油の合流及び分離が緩やかに行われ、荷役装置7の動作にキックバック等のショックを生ずることを低減できる。
(ソ)第1遮断弁30のスプリング31により設定された所定値は、荷役装置7が操作されていることが判定できる圧力値に設定されている。このため、荷役操作時に確実に第1遮断弁30を閉弁動作させることができる。