本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体に液体を吐出するためのヘッドと、
前記媒体に液体を吐出するときにおいて、前記ヘッドを移動させる移動機構と、
前記ヘッドに設けられ、前記ヘッドからの前記液体の吐出を制御する第1制御部と、
前記第1制御部の温度を取得するための温度取得部と、
前記温度取得部が取得した温度が所定温度よりも高いとき、前記ヘッドに液体を吐出させることなく前記移動機構に前記ヘッドを移動させる第2制御部と、
を備える液体吐出装置。
このようにすることで、液体の吐出を制御するためにヘッドに設けられた制御部(第1制御部)の温度が高くなることを防止することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記媒体を搬送するための搬送機構をさらに備え、前記制御部は、前記液体を吐出することなく前記移動機構に前記ヘッドを移動させるときには、前記媒体を搬送しないように前記搬送機構を制御することが望ましい。また、前記第2制御部は、前記温度取得部が取得した温度が高いほど、前記ヘッドに液体を吐出することなく前記移動機構に前記ヘッドを移動させる時間を長くすることが望ましい。また、前記温度取得部は、前記第1制御部の温度の履歴に基づいて前記第1制御部の予測温度を求め、該予測温度を前記第1制御部の温度として取得することが望ましい。また、前記温度取得部は、前記ヘッドの各ノズルから液体を吐出するか否かを示すデータに基づいて前記第1制御部の予測温度を求め、該予測温度を前記第1制御部の温度として取得することとしてもよい。
また、前記液体を加熱するための加熱部をさらに備えることが望ましい。また、前記ヘッドの上部にはヒートシンクが設けられることが望ましい。
このようにすることで、液体の吐出を制御するためにヘッドに設けられた制御部(第1制御部)の温度が高くなることを防止することができる。
液体の吐出を制御する制御部が取り付けられたヘッドが、該ヘッドの移動方向に移動しつつ前記媒体に液体を吐出することと、
前記制御部の温度を取得することと、
取得した前記温度が所定温度よりも高いとき、前記ヘッドに液体を吐出させることなく前記ヘッドを該ヘッドの移動方向に移動させることと、
を含む液体吐出方法。
このようにすることで、液体の吐出を制御するためにヘッドに設けられた制御部の温度が高くなることを防止することができる。
===実施形態===
図1は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。図2Aは、プリンタ1の外観の斜視図であり、図2Bは、プリンタ1の横断面図である。以下、図を参照しつつ、プリンタ1の構成について説明する。
プリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、コントローラ60、インタフェース65、駆動信号生成回路70、及びヒータ80を有する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に給紙するためのローラである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の用紙Sを支持する。排紙ローラ25は、用紙Sをプリンタの外部に排出するローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモータ32によって駆動される。
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられているため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が用紙Sに形成される。尚、ヘッド41の上部にはヒートシンク48が取り付けられている。
ところで、プリンタ1には各インク色のインクを貯留するインクタンク42が固定されている。そして、インクタンク42の各インク色を貯留する各セルにはチューブ49が取り付けられており、これらのチューブ49の他端はヘッド41に接続される。このようにして、各インク色のインクがヘッド41に供給されるようになっている。尚、チューブ49はヘッド41が移動方向について端から端まで移動可能な十分な長さを有している。また、後述するように、チューブ49の途中にはインクを加熱するためのヒータ80が設けられる。
検出器群50には、ヘッド41の内部に設けられ温度を取得するためのヘッド温度センサ51と、チューブ49内のインクの温度を取得するためのインク温度センサ52を含む。ヘッド温度センサ51とインク温度センサ52の構成については後述する。
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニットである。コントローラ60は、不図示のCPUなどの演算装置と、メモリなどの記憶装置とを有する。CPUなどの演算装置は、プリンタ全体の制御を行うための処理装置である。メモリなどの記憶装置は、演算装置のプログラムを記憶する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を含む。このような構成によりコントローラ60は、プログラムに従って各ユニットを制御する。
外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、用紙などの媒体に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
インタフェース65は、前述のように外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。
駆動信号生成回路70は、インクを吐出する際にヘッド41に印加される駆動信号COMを生成する。駆動信号生成回路70は、不図示のD/Aコンバータと電流を増幅するためのトランジスタを含む。駆動信号生成回路70にはコントローラ60から駆動信号COMの波形を規定するためのデジタル信号が送られる。D/Aコンバータはこのデジタル信号に応じたアナログ信号を生成する。そして、トランジスタはこの信号を電流増幅して、駆動信号COMとしてヘッド41へと出力するようになっている。
ヒータ80は、チューブを通るインクを加熱するためのものである。ヒータ80のオン・オフはコントローラ60によって制御される。コントローラ60は、インク温度センサ52よりチューブ49のインクの温度を取得しているので、この温度に基づいてヒータ80の制御を行うことができる。
図3は、ヘッド41とその周辺の各部を説明するための図である。図には、ヘッド41とインクタンク42とチューブ49とインク温度センサ52とヒータ80が示されている。本実施形態では、4色のインクを用いるようにするために、インクタンク42には4つのセルが設けられている。そして、セルには、ブラック、シアン、マゼンタ、及び、イエローのインクが貯留されている。
インクタンク42の各セルの下部にはチューブ49が取り付けられている。チューブ49は、ヘッド41が前述の移動方向について端から端まで十分移動可能な長さが用意される。チューブ49はまとめられヒータ80内部に入る。ヒータ80は、チューブ49の一部を取り囲むように構成されている。ヒータ80は、例えば電熱線などによって構成することができる。ヒータ80を通過したチューブ49は、インク温度センサ52に接する。その後、チューブ49は、ヘッド41に接続する。
このような構成にすることで、ヒータ80によって加熱されたインクの温度がインク温度センサ52によって取得され、コントローラ60にフィードバックされる。これにより、ヒータ80がコントローラ60に制御されることができるようになり、所望の温度のインクをヘッド41に供給できるようになる。本実施形態では、70℃でインクをヘッド41に供給できるように温度が制御される。よって、ヒータ80からヘッド41に入るまでのチューブ長を考慮して、インク温度センサ52の位置における目標温度が例えば72℃になるようにヒータ80が制御される。
図4は、ヒートシンク48が取り付けられたヘッド41の一部断面図である。ヘッド41には複数のノズル列が形成されるが、ここではノズル列について垂直方向に切断したときの1つのノズルの断面を示している。実際には、ノズル列が複数並んでおり、複数の色のインクを吐出できるようになっている。この図を参照しつつ、個々のノズルからインクを吐出するための構造について説明する。
ヘッド41は複数のノズル列を有する。そして、ヘッド41の各ノズル列は、複数のピエゾ素子421と、このピエゾ素子群421が固定される固定板423と、各ピエゾ素子421に給電するためのフレキシブルケーブル424と、から構成される。各ピエゾ素子421は、所謂片持ち梁の状態で固定板423に取り付けられている。固定板423は、ピエゾ素子421からの反力を受け止め得る剛性を備えた板状部材である。フレキシブルケーブル424は、可撓性を有するシート状の配線基板であり、固定板423とは反対側となる固定端部の側面でピエゾ素子421と電気的に接続されている。そして、このフレキシブルケーブル424の表面には、ピエゾ素子421の駆動等を制御するための制御用ICであるヘッド制御部HCが実装されている。ヘッド制御部HCは、ノズル列毎にそれぞれ設けられる。
流路ユニット44は、流路形成基板45と、ノズルプレート46と、弾性板47とを有し、流路形成基板45がノズルプレート46と弾性板47に挟まれるようにそれぞれを積層して一体的に構成される。ノズルプレート46は、ノズルが形成されたステンレス鋼製の薄いプレートである。
流路形成基板45には、圧力室451及びインク供給口452となる空部が各ノズルに対応して複数形成される。前述のチューブ49から供給されるインクはリザーバ453に供給される。リザーバ453は、チューブ49から供給されたインクを各圧力室451に供給するための液体貯留室であり、インク供給口452を通じて対応する圧力室451の他端と連通している。そして、インクカートリッジからのインクは、インク供給管(不図示)を通って、リザーバ453内に導入される。弾性板47は、島部473を備えている。そして、この島部473にピエゾ素子421の自由端部の先端が接着される。
フレキシブルケーブル424を介してピエゾ素子421に駆動信号を供給すると、ピエゾ素子421は伸縮して圧力室451の容積を膨張・収縮させる。このような圧力室451の容積変化により、圧力室451内のインクには圧力変動が生じる。そして、このインク圧力の変動を利用することでノズルからインクを吐出(噴射)させることができる。
また、ヘッド温度センサ51は後述するようにダイオード511とA/Dコンバータとから構成されるのであるが、そのうちのダイオード511がヘッド制御部HCの上部に接するように取り付けられている。そして、ヘッド制御部HCの温度を取得できるようにしている。尚、ダイオード511はヘッド制御部HCの内部に設けられることとしてもよい。
本実施形態で供給されるインクはヒータ80によって加熱され、また、後述するようにインクを吐出する際にヘッド制御部HCは発熱する。よって、これらの熱を外部へと逃がすことができるように、ヘッド41にはヒートシンク48が設けられている。ヒートシンク48は、固定板423に接するように取り付けられており、固定板を介してヘッド制御部HCの熱が放熱されるようになっている。
図5は、駆動信号COMを説明するための図である。図には複数の駆動パルスからなる駆動信号COMが示されている。また、図には駆動信号COMをピエゾ素子421に印加する際に使用されるラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHも示されている。
駆動信号COMは、周期Tで繰り返し発生させられる。繰り返し周期Tは、第1区間T1、第2区間T2、第3区間T3、及び、第4区間T4からなる。第1区間T1において第1駆動パルスPS1が発生させられる。また、第2区間T2において第2駆動パルスPS2が発生させられ、第3区間T3において第3駆動パルスPS3が発生させられ、第4区間T4において第4駆動パルスPS4が発生させられる。
第1駆動パルスPS1、第2駆動パルスPS2、及び、第4駆動パルスPS4は、インクをノズルから吐出させるために使用される駆動パルスである。一方、第3駆動パルスPS3は、微振動パルスであってノズルにおけるインク表面を微振動させるにとどまり、インクを吐出させない。
第2駆動パルスPS2は、振幅が最も大きいパルスであり、ピエゾ素子421に印加されるとノズルから大ドットを形成するためのインクが吐出される。第1駆動パルスPS1は、2番目に振幅が大きいパルスであり、これがピエゾ素子421に印加されるとノズルから中ドットを形成するためのインクが吐出される。第4駆動パルスPS4は、3番目に振幅が大きいパルスであり、これがピエゾ素子421に印加されるとノズルから小ドットを形成するためのインクが吐出される。
図6は、ヘッド制御部HCのブロック図である。以下、この図を参照しつつ、ヘッド制御部HCの構成と動作について説明する。なお、本図は、1つのノズル列に対応するヘッド制御部HCを示している。
このヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、信号選択部83と、制御ロジック84と、スイッチ86を有する。そして、制御ロジック84を除いた各部、すなわち、第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B、信号選択部83、及び、スイッチ86は、それぞれピエゾ素子421毎に設けられる。また、ピエゾ素子421はインクが吐出されるノズル毎に設けられるので、これらの各部はノズル毎に設けられていることになる。
ヘッド制御部HCは、コントローラ60から送られた印刷データに含まれる画素データSIに基づき、インクを吐出させるための制御を行う。すなわち、ヘッド制御部HCは、印刷データに基づいてスイッチ86を制御し、駆動信号COMにおける必要な部分を選択的にピエゾ素子421へ印加させている。本実施形態では、画素データSIが2ビットで構成され、転送用クロックSCKに同期してヘッド制御部HCへ送られてくる。この画素データSIは、2ビットで構成され、ノズル毎(ピエゾ素子421毎)に定められる。この画素データSIに関し、上位ビット群は各第1シフトレジスタ81Aにセットされ、下位ビット群は各第2シフトレジスタ81Bにセットされる。第1シフトレジスタ81Aには第1ラッチ回路82Aが接続され、第2シフトレジスタ81Bには第2ラッチ回路82Bが接続されている。そして、コントローラ60からのラッチ信号LATがHレベルになると、各第1ラッチ回路82Aは対応する画素データSIの上位ビットをラッチし、各第2ラッチ回路82Bは画素データSIの下位ビットをラッチする。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データSI(上位ビットと下位ビットの組)はそれぞれ、信号選択部83に入力される。
信号選択部83は、画素データSI(上位ビット+下位ビット、すわわち[00][01][10][11])に基づき、制御ロジック84から出力される選択データq0〜q3を選択し、スイッチ制御信号SWとして出力する。制御ロジック84は、選択データq0〜q3をラッチ信号LATやチェンジ信号CHのタイミングで出力するものである。
選択データq0は、ドット無し用の選択データである。選択データq0を選択したとき、信号選択部83はスイッチ選択信号SWとして、区間T3における駆動信号COM(第3駆動パルスPS3)をピエゾ素子421に印加させるようなタイミングでスイッチ86をオンにする。そして、対応するノズルからインク滴を吐出させない。選択データq1は、小ドット用の選択データである。選択データq1を選択したとき、信号選択部83はスイッチ選択信号SWとして、区間T4における駆動信号COM(第4駆動パルスPS4)をピエゾ素子421に印加させるようなタイミングでスイッチ86をオンにする。そして、ノズルから小ドットを形成するためのインク滴を吐出させる。選択データq2は、中ドット用の選択データである。選択データq2を選択したとき、信号選択部83はスイッチ選択信号SWとして、区間T1における駆動信号COM(第1駆動パルスPS1)をピエゾ素子421に印加させるようなタイミングでスイッチ86をオンにする。そして対応するノズルから中ドットを形成するようなインク滴を吐出させる。選択データq3を選択したとき、信号選択部83はスイッチ選択信号SWとして、区間T2における駆動信号COM(第2駆動パルスPS2)をピエゾ素子421に印加させるようなタイミングでスイッチ86をオンにする。そして、対応するノズルから大ドットを形成するようなインク滴を吐出させる。尚、ヘッド制御部HCは第1制御部に相当する。
図7Aは、スイッチ86の一例を示す回路図である。図にはFET1、FET2、及び反転回路INが示されている。図において接点Aには駆動信号COMの信号線が接続される。また、接点Yにはピエゾ素子421が接続される。また、図には前述のスイッチ制御信号SWの信号線が示されている。このような構成にすることによって、スイッチ制御信号SWがオンにされると、その期間において駆動信号COMがピエゾ素子421に印加されることとなる。ところで、このようにスイッチ86においてスイッチ制御信号SWがオンにされ駆動信号COMの電流が流れると、スイッチ86の回路に存在する抵抗によりスイッチ86自体が発熱することになる。
図7Bは、スイッチ86の等価回路を示す図である。スイッチ86は、等価回路としてはスイッチSと抵抗Rとが直列接続したものとなる。すなわち、スイッチがオンにされ電流が流れると抵抗Rにおいて発熱し、結果としてスイッチ86が発熱することとなる。本実施形態において、スイッチ86には駆動信号COMにおける各駆動パルスの電力が選択的に供給されることとなる。第3区間T3における第3駆動パルスPS3が印加されたときの発熱が最も少なく、第2区間における第2駆動パルスPS2が印加されたときの発熱が最も多い。よって、ヘッド制御部HCが高温のときには、インクを吐出しないようにして第3駆動パルスPS3(微振動パルス)のみがスイッチ86を通過するようにすることが望ましい。
図8は、ヘッド温度センサ51の構成を示す図である。図には、ダイオード511とA/Dコンバータ512が示されている。ダイオード511の順方向特性は温度によって大きく変化することが知られている。よって、ダイオード511に一定電流を流し、順方向電圧を測定すれば温度の変化を検出することができる。本実施形態では、前述のようにダイオード511がヘッド41の内部に設けられており、順方向電圧をデジタル変換するためのA/Dコンバータ512がコントローラ60に設けられている。このようにすることで、コントローラ60は、ヘッド内部の温度を取得することができるようになっている。尚、このような構成は、インク温度センサ52にも同様に適用される。
図9は、ヘッド制御部HCの温度に基づいて空走査を行いつつ印刷を行うときにおける印刷処理のフローチャートである。ここで、「空走査」とは、インクを吐出せずにヘッド41をヘッドの移動方向に移動させることをいう。
まず、前述のヘッド温度センサ51を介してヘッド制御部HCの温度が取得される(S102)。次に、取得したヘッド制御部HCの温度に基づいて、空走査する時間が決定される(S104)。ヘッド制御部HCの温度に基づいて空走査する時間を求めるのは次のような理由からである。ヘッド制御部HCの温度が上昇しすぎると、ヘッド制御部HCに不具合を生ずるおそれがある。よって、ヘッド制御部HCの温度が高すぎる場合には、インクを吐出せずにヘッド41を移動させることでヘッド制御部HCの温度を下げることとしている。インクを吐出しないときには、ヘッド41の各ピエゾ素子421には微振動パルス(第3駆動パルス)のみが印加される。微振動パルスは電力が小さいためヘッド制御部HCの温度を上昇させることには寄与しない。その一方で、ヘッド41を移動することで空気中に効率的にヘッド41の熱を逃がすことができる。よって、ここでは、ヘッド制御部HCの温度が所定の温度よりも高いときには、温度に応じた時間の空走査を行うこととしている。
図10は、ヘッド制御部HCの温度と空走査時間との関係を示す空走査時間テーブルである。この空走査時間テーブルは、コントローラ60のメモリに記憶されている。空走査時間テーブルにおいて、ヘッド制御部HCの温度が−10℃〜80℃の範囲にある場合には、空走査時間が0(s)とされる。つまり、ヘッド制御部HCの温度がこの範囲にあるときには、空走査は行われない。
また、ヘッド制御部HCの温度が81℃〜90℃の範囲にある場合には、空走査時間は10(s)に設定される。また、ヘッド制御部HCの温度が91℃〜100℃の範囲にある場合には、空走査時間は30(s)に設定される。また、ヘッド制御部HCの温度が101℃〜110℃の範囲にある場合には、空走査時間は60(s)に設定される。また、ヘッド制御部HCの温度が111℃〜120℃の範囲にある場合には、空走査時間は80(s)に設定される。そして、温度が121℃を超える場合には、空走査時間は120(s)に設定される。
尚、複数のインク色を吐出する場合には、ヘッド41の構成上複数のノズル列を有することとなり、各ノズル列についてのヘッド制御部HCの温度が取得されていることになる。この場合、複数のヘッド制御部HCの温度のうち、最も温度の高いものに基づいて空走査時間が決定される。
次に、決定された空走査時間だけ空走査が行われる(S106)。例えば、ヘッド制御部HCの温度が85℃にまで上昇していた場合には、空走査時間は10(s)に設定されている。よって、この場合、空走査が10(s)行われる。空走査のときのヘッド41の移動は、高速で移動させることにより、ヘッドの移動方向に何度も往復動作させることとしてもよいし、10(s)の間に1往復させることとしてもよい。また、ヘッド41の空走査の間において、ヘッド制御部HC(第1制御部)にコントローラ60(第2制御部)から印刷するための画像の画素データSIの転送は行われない。また、用紙Sの搬送も行われない。このようにして、インクを吐出させずにヘッド41の移動だけを行わせることができる。
設定された空走査時間だけ空走査が完了すると、コントローラ60から印刷するための画像の画素データSIがヘッド制御部HCに転送され、1ページ分の印刷が行われる(S108)。尚、空走査時間が0(s)に設定されていた場合、空走査は行われず、すぐに印刷が行われることになる。
次に、全ての印刷が完了したか否かについて判定される(S110)。ここで、全てのページについての印刷が完了した場合には、印刷処理を終了する。一方、全てのページについての印刷が完了していなかった場合には、次のページの印刷を行うべく、ステップS102に戻る。
このようにすることによって、ヘッド制御部HCの温度に基づいて決定された空走査時間だけヘッド41の空走査が行われ、ヘッド制御部HCが冷却されてから印刷が行われる。また、ヘッド制御部HCの温度が高い場合には、より長い空走査時間だけ空走査が行われる。空走査の間、各ノズルのピエゾ素子421については、第3駆動パルスPS3(微振動パルス)のみが印加される。微振動パルスは、他の駆動パルス(吐出パルス)に比して、電圧変化時の電圧変化割合が小さい。また、電圧電荷時の変化量も少ない。よって、スイッチ86を通過しても発熱が非常に小さく、ヘッド41の発熱に寄与しない。そのため、その間、ヘッド41の温度を下げることができる。そして、ヘッド41の発熱によりヘッド制御部HCに不具合が生ずるのを防止することができる。
尚、空走査の間、各ピエゾ素子421については前述の微振動パルスすら印加させないようにしてもよい。この場合、空走査の完了後などの所定のタイミングでインクを打ち捨てるフラッシングを行い、増粘によってノズルからインクが吐出されにくくなるのを防止することとしてもよい。
また、上述では、1ページ分の印刷を1つの単位として、ヘッド制御部HCの温度に基づいて空走査時間を決定したが、1パス毎又は数パス毎に空走査時間を決定し空走査を行わせるようにしてもよい。
ところで、上述の実施形態では、ヘッド温度センサ51が取得した温度に基づいて、空走査時間が決定されていた。しかしながら、ヘッド制御部HCは印刷を行っている間にも温度上昇する。よって、空走査時間を決定するに際し、上昇するヘッド制御部HCの温度を予測し、その予測した温度に基づいて空走査時間を決定することもできる。以下、予測したヘッド制御部HCの温度に基づいて空走査時間を決定し、空走査を行いつつ印刷を行う方法について説明する。
図11は、消費電力及び印刷時間から温度を予測したときにおける印刷処理のフローチャートである。まず、ヘッド温度センサ51を介して、ヘッド制御部HCの温度が取得される(S200)。
次に、コンピュータ110から送られた印刷データに基づいて、消費電力と印刷時間が求められる(S201)。印刷データが取得できると、これに含まれる画素データSIに基づいて各ノズルについて印加する駆動パルスの種類及び印加回数を求めることができる。各駆動パルスの電力は予め求めておくことができる。また、印刷データにより、1ページあたりに要する印刷時間を求めることができる。よって、印刷データに基づいて、消費電力及び1ページあたりに要する印刷時間を求めることができる。
次に、ヘッド制御部HCの予測温度を求める(S202)。予測温度は次式にて求めることができる。
t1=k×P×T+t0
ここで、t1は予測温度であり、t0はステップS200において取得したヘッド制御部HCの温度であり、PはステップS201において求めた電力である。また、TはステップS201において求めた1ページあたりの印刷時間であり、kは係数である。係数kは、予め実験などによってヘッド制御部HCの発生熱量に対して各部を介して空気中に逃げる熱量の割合から求められたものである。
次に、求めたヘッド制御部HCの予測温度に基づいて、空走査時間が決定される(S204)。ここでの空走査時間の決定方法は、前述のステップS104(図9)における決定方法と同様であるが、印刷中における温度上昇を見込んで、より長い空走査時間を採用することとしてもよい。
次に、決定した空走査時間だけ、ヘッド41が空走査される(S206)。ここでのヘッド41の空走査は、前述のステップS106(図9)におけるものと同様に行われる。
このようにして、設定された空走査時間の空走査が行われヘッド41が冷却されると、1ページ分の印刷が行われる(S208)。次に、全ての印刷が完了したか否かについて判定される(S210)。ここで、全てのページについての印刷が完了した場合には、印刷処理を終了する。一方、全てのページについての印刷が完了していなかった場合には、次のページの印刷を行うべく、ステップS200に戻る。
このようにすることで、ヘッド制御部HCの予測温度に基づいて設定された空走査時間だけ空走査を行って、ヘッド制御部HCの温度が高くならないようにすることができる。
尚、ステップS206とステップS208との間に次のようなステップS207を設けることとしてもよい。ステップS207において、再度、ヘッド制御部HCの温度が取得される。そして、ヘッド制御部HCの温度が所定の温度以下に下がっているか否かについて判定され、ヘッド制御部HCの温度が所定の温度以下に下がっていない場合には、ステップS201に戻る。一方、ヘッド制御部HCの温度が所定温度以下に下がっている場合には、ステップS208において1ページの印刷を行う。このようにすることによって、確実にヘッド制御部HCの温度を下げた状態で印刷を行うことができる。
ところで、印刷を行う際、同じ画像の印刷を繰り返し行う場合がある。つまり、1ページ分の同じ印刷データを用いて複数枚の用紙に印刷を行う場合がある。このような場合には、次のようにしてヘッド制御部HCの温度を予測しつつ印刷を行うことができる。
図12は、同じ印刷データを用いて複数枚の用紙に印刷をおこなうときにおける印刷処理のフローチャートである。まず、ヘッド温度センサ51を介してヘッド制御部HCの温度が取得される(S302)。
次に、コンピュータ110から送られた印刷データに基づいて1ページ分の印刷が行われる(S304)。1ページ分の印刷が完了すると、要求された全ての印刷が完了したか否かについて判定される(S306)。ここで、全ての印刷が完了した場合(つまり、要求された印刷が1ページの印刷である場合)には印刷処理を終了する。一方、同じ画像のページをさらに複数ページ印刷する場合には、ステップS308が実行される。
ステップS308において、ヘッド制御部HCの温度が再度取得される。そして、次のページの印刷後におけるヘッド制御部HCの予測温度が求められる(S310)。予測温度は、次式によって求められる。
T=T2+(T2−T1)
ここで、Tは予測温度、T2はステップS308において取得されたヘッド制御部HCの温度、T1はステップS302において取得されたヘッド制御部HCの温度である。
次に、予測温度Tに基づいて、空走査時間が決定される(S312)。空走査時間は、空走査時間テーブルを参照することにより行われる。
次に、決定された空走査時間だけヘッド41の空走査が行われる(S314)。空走査の方法については、前述のステップS106(図9)と同様である。そして、ステップS302に戻り、ヘッド制御部HCの温度が再度取得されてから、印刷データに基づいて1ページ分の印刷が行われる(S304)。このような動作が、要求された全ての印刷が完了するまで行われる。
このようにすることによって、同じ画像のページを複数印刷する場合においてヘッド制御部HCの予測温度を用いて空走査を行い、ヘッド制御部HCの温度が高くなることを防止しつつ印刷を行うことができる。
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、液体吐出装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
例えば、取得したヘッド制御部HCの温度の履歴に基づいてヘッド制御部HCの温度を予測し、予測した温度に応じて空走査を行うようにしてから印刷を行うようにすることもできる。
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。