JP2010075885A - 被覆粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能が安定的に得られる被覆粒子を歩留まりよく製造することができる被覆粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の被覆粒子の製造方法は、粒子の表面がポリアミン系化合物で被覆されている被覆粒子を製造するものであり、前記粒子と前記ポリアミン系化合物とを含有する分散液を調製した後、該分散液を、液滴として加熱雰囲気中に供給することにより加熱して、前記粒子の表面に前記ポリアミン系化合物を被覆することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、被覆粒子の製造方法に関するものである。
例えば、リン酸カルシウム系化合物は、カルシウムイオンとリン酸基とが高密度に規則的に配列した構造を有し、両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有する。このため、このリン酸カルシウム系化合物で構成される粒子(リン酸カルシウム系化合物粒子)は、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、細胞等の生体関連物質を分離する分離用カラムの吸着剤として広く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなリン酸カルシウム系化合物粒子では、例えば、タンパク質を分離する場合、タンパク質が酸性タンパク質であると、その構造中に含まれるカルボキシル基がリン酸カルシウム系化合物粒子のカルシウムイオンに配位結合して吸着し、または、タンパク質が塩基性タンパク質であると、その構造中に含まれるアミノ基がリン酸カルシウム系化合物粒子のリン酸基にイオン結合して吸着する。そのため、タンパク質は、リン酸カルシウム系化合物粒子に対する各タンパク質における吸着能の大きさの差に基づいて分離される。
しかしながら、リン酸カルシウム系化合物は、リン酸基による負電荷と比較して、カルシウムイオンによる正電荷の方が小さいため、負電荷を有する酸性タンパク質のような物質を吸着する吸着能が小さい。
そのため、リン酸カルシウム系化合物粒子を吸着剤として備えるカラム(吸着装置)では、I)試料液中に含まれる負電荷の有する吸着物の回収率が低くなる、II)試料液中に負電荷を有する吸着物が複数含まれる場合、各吸着物が比較的早期にほぼ同時に溶出してしまうため十分な分離能が得られない等の問題がある。
特開平10−153588号公報
かかる問題点を解消することを目的に、本発明者は鋭意検討した結果、リン酸カルシウム系化合物粒子の表面を、正荷電を有するポリアミン系化合物で被覆することにより、得られた被覆粒子は、正荷電が大きなものとなるので、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能を有する被覆粒子とすることができることを見出し、リン酸カルシウム系化合物粒子の表面がポリアミン系化合物で被覆された被覆粒子について、本発明者は既に出願している。
このような被覆粒子は、リン酸カルシウム系化合物粒子とポリアミン系化合物とを含有する分散液を用意し、この分散液を加熱することにより製造することができるが、リン酸カルシウム系化合物粒子とポリアミン系化合物との間の結合が安定的に行われ、より高い歩留りで製造することができる製造方法が望まれる。
また、かかる問題は、少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成されるリン酸カルシウム系化合物粒子に限らず各種粒子について同様に生じている。
したがって、本発明の目的は、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能が安定的に得られる被覆粒子を歩留まりよく製造することができる被覆粒子の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(14)の本発明により達成される。
(1) 粒子の表面がポリアミン系化合物で被覆されている被覆粒子の製造方法であって、
前記粒子と前記ポリアミン系化合物とを含有する分散液を調製した後、該分散液を液滴として加熱雰囲気中に供給することにより、前記液滴を加熱して前記粒子の表面に前記ポリアミン系化合物を被覆することを特徴とする被覆粒子の製造方法。
これにより、吸着物の荷電状態に関わらず、優れた吸着能および分離能が安定的に得られる被覆粒子を歩留まりよく製造することができる。
(2) 一対の円板と、前記一対の円板の外周部に複数個配置されたスペーサと、前記分散液を注入する注入部とを有する噴霧盤を回転させつつ、前記注入部に前記分散液を注入することにより、前記一対の円板の外周方向から遠心力により、前記分散液を飛散させて液滴化させる方法を用いて、前記分散液を液滴として加熱雰囲気中に供給する上記(1)に記載の被覆粒子の製造方法。
このような遠心力を用いた液滴の形成方法では、分散液に含まれる粒子に、圧縮力が掛かることなく液滴を形成し得ることから、粒子が破壊されてしまうのを的確に抑制または防止することができる。
(3) 前記加熱雰囲気の温度は、30〜200℃である上記(1)または(2)に記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、ポリエチレンイミンの変質・劣化を防止しつつ、アパタイトとポリエチレンイミンとを効率よく反応させることができ、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを確実に被覆させることができる。
(4) 前記液滴の量は、0.1〜8000pLである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、生成される被覆粒子同士が凝集して、被覆粒子の凝集体が形成されるのを的確に抑制または防止することができる。
(5) 前記分散液中の前記粒子の含有量は、20万〜200万個/mLである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、加熱雰囲気中において液滴を加熱して、粒子の構成材料とポリアミン系化合物との反応を行う際に、隣接する粒子同士を連結するようにポリアミン系化合物が結合してしまうのを確実に防止することができる。
(6) 前記粒子の平均粒径は、1μm超である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、本発明の被覆粒子の製造方法で製造された被覆粒子を吸着装置が備える吸着剤に適用した際に、吸着装置が有するフィルタ部材の目詰まりや吸着装置内での液体の滞留を確実に防止しつつ、吸着剤が吸着物を吸着するのに十分な表面積を確保することができる。
(7) 前記ポリアミン系化合物は、ポリエチレンイミンである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
ポリエチレンイミンは、エチレンイミンが直鎖状に連結されたものと、分枝状に連結されたものとが有り、特に分枝状のポリエチレンイミンを用いれば、粒子に対してポリエチレンイミンで強固に被覆することができる。
(8) 前記ポリエチレンイミンの平均分子量は、800〜100000である上記(7)に記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が凝集塊を形成するのを防止しつつ、粒子の表面をポリエチレンイミンで確実に被覆することができる。
(9) 前記分散液中における前記粒子と前記ポリエチレンイミンとの重量比は、500:1〜10:1である上記(7)または(8)に記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、ポリエチレンイミン同士の結着によって、粒子同士が凝集塊を形成するのを防止しつつ、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆することができる。
(10) 前記粒子は、その少なくとも表面付近がセラミックス材料で構成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
セラミックス材料は、生体関連物質等の各種物質に対して、優れた吸着能を有していることから、各種物質を吸着剤に吸着させる吸着剤の骨格として好適に使用される。
(11) 前記セラミックス材料は、リン酸カルシウム系化合物である上記(10)に記載の被覆粒子の製造方法。
リン酸カルシウム系化合物は、両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有する。そのため、その少なくとも表面付近が、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された粒子は、正または負電荷を有する各種物質に対して優れた吸着能を有するため、その表面に生体関連物質等の各種吸着物を吸着させる吸着剤の骨格として好適に使用される。
(12) 前記分散液は、分散媒として、水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含有する上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
分散液を加熱することにより、リン酸カルシウム系化合物とポリアミン系化合物とを反応させることができるとともに、比較的低温域の加熱で、分散媒を分散液中から除去することができる。
(13) 前記分散媒は、メタノールを主成分とする上記(12)に記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、リン酸カルシウム系化合物とポリアミン系化合物とを効率よく反応させることができる。すなわち、リン酸カルシウム系化合物に含まれるリン酸基と、ポリアミン系化合物に含まれるアミノ基との反応を効率よく進行させることができる。その結果、粒子の表面のポリアミン系化合物による被覆率をより確実に向上させることができる。
(14) 前記粒子1gに対する前記ポリエチレンイミンの被覆量は、0.1〜100mgである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
これにより、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が凝集塊を形成するのを防止しつつ、粒子の正電荷を確実に増加させることができ、特に負電荷の大きな吸着物に対する吸着能および分離能を十分に向上させることができる。
粒子の表面がポリアミン系化合物で被覆されている被覆粒子を製造する際に、これら粒子とポリアミン系化合物とを含有する分散液を液滴として、加熱雰囲気中に供給することにより、この液滴を加熱して粒子の表面にポリアミン系化合物が被覆された被覆粒子を得る構成とすれば、粒子の表面に対するポリアミン系化合物の結合が安定的に行われることとなる。さらに、得られる被覆粒子同士が凝集体を形成することなく製造されるので、得られる被覆粒子の歩留まりの向上を図ることができる。
以下、本発明の被覆粒子の製造方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<被覆粒子>
まず、本発明の被覆粒子の製造方法により製造される被覆粒子について説明する。
本発明の被覆粒子の製造方法により製造される被覆粒子は、その表面に、例えば、タンパク質、ヌクレオチド、核酸および細胞等の生体関連物質等の物質(吸着物)を吸着させる吸着剤として機能するものである。このような被覆粒子は、例えば、吸着装置が備えるカラム内に充填された形態で、試料液に含まれる複数種の吸着物を分離する分離用カラムの充填剤(吸着剤)として用いられる。
この場合、複数種の吸着物を含む試料液を、カラム内を通過させることにより、試料液に含まれる各吸着物が被覆粒子に吸着する。そして、溶出液を、このカラム内を通過させると、被覆粒子に吸着した各吸着物が、被覆粒子に対する吸着性の差異および溶出液に対する親和性の差異に基づいた溶出時間で溶出する。そのため、このカラムを通過した溶出液を、所定時間毎に分画することにより、各吸着物がそれぞれ分離される。
このような吸着剤として用いられる被覆粒子は、粒子(担体)の表面が、ポリアミン系化合物で被覆されているものである。
粒子は、被覆粒子の骨格を構成する部分である。
この粒子の構成材料としては、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム系化合物、アルミナ、ジルコニア、シリカのような各種セラミックス材料の他、カーボンブラック、セルロース、ダイヤモンドおよび各種樹脂材料等が挙げられる。
なお、樹脂材料としては、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的には、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン等、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、エボナイド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、粒子は、その少なくとも表面付近が、主としてセラミックス材料で構成されているのが好ましい。セラミックス材料は、生体関連物質等の各種物質に対して、優れた吸着能を有していることから、各種物質を吸着剤に吸着させる吸着剤の骨格として好適に使用される。このような吸着剤の骨格に対して正電荷をより付与する際に、本発明の被覆粒子の製造方法が好適に適用される。
さらに、セラミックス材料としては、特に、リン酸カルシウム系化合物であるのが好ましい。
リン酸カルシウム系化合物は、Ca10(POで表され、Ca/P比が1.0〜2.0のものが用いられ、カルシウムイオンとリン酸基とが高密度に規則的に配列した構造を有し、両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有する。このため、その少なくとも表面付近が、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された粒子は、正または負電荷を有する各種物質に対して優れた吸着能を有するため、その表面に生体関連物質等の各種吸着物を吸着させる吸着剤の骨格として好適に使用される。
このように両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有するリン酸カルシウム系化合物に対して正電荷をさらに付与して、負電荷を有する各種物質に対する吸着能をより向上させたい場合に、本発明の被覆粒子の製造方法が好適に適用される。
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、フッ素アパタイト(Ca10(PO)、塩素アパタイト(Ca10(POCl)、炭酸フッ素アパタイト(Ca10(PO,CO)、炭酸水酸アパタイト(Ca10(PO,CO(OH))等のうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、リン酸カルシウム系化合物としては、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))を主成分とするものが好適である。ハイドロキシアパタイトは、生体関連物質に対して優れた親和性を有することから生体材料として広く用いられため、吸着物質として生体関連物質を選択した場合には、被覆粒子に吸着物質が極めて効率よく吸着するようになる。また、ハイドロキシアパタイトは、生体関連物質に対するダメージを与える可能性が特に低いため、生体関連物質(吸着物質)を変質・劣化しない状態で吸着させることができる。
なお、これらのリン酸カルシウム系化合物は、公知の湿式合成法、乾式合成法等によって合成することができる。この場合、リン酸カルシウム系化合物中には、その合成の際に残存する物質(原料等)または合成の過程で生じる二次反応生成物等が含まれていてもよい。
なお、粒子をその少なくとも表面がリン酸カルシウム系化合物で構成されているものとする場合、粒子は、その全体がリン酸カルシウム系化合物で構成されたものであってもよく、図1に示すように、樹脂材料等で構成された粒子状の基材210の表面を主としてリン酸カルシウム系化合物で構成されるリン酸カルシウム系化合物層220で被覆した粒子200のような構成のものであってもよい。図1に示すような粒子とすれば、粒子の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(密度等)等の調整が容易となる。
基材210を構成する樹脂材料としては、前述したのと同様のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、リン酸カルシウム系化合物層220は、図1に示すように、基材210の表面付近に、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された微小粒子230(以下、単に「微小粒子230」と言う。)の一部が貫入することにより形成されたものであるのが好ましい。これにより、リン酸カルシウム系化合物層220と基材210との密着性を優れたものとすることができる。このため、リン酸カルシウム系化合物層220の基材210の表面からの剥離を好適に防止すること、すなわち、粒子および被覆粒子の強度を優れたものとすることができる。
この場合、リン酸カルシウム系化合物層220は、例えば、基材210の表面に、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成された多孔質粒子を衝突させることにより形成することができる。かかる方法によれば、容易かつ確実に、リン酸カルシウム系化合物層220を形成することができる。
また、粒子は、その平均粒子径が1μm超であるのが好ましく、2〜200μm程度であるのがより好ましく、2〜100μm程度であるのがさらに好ましい。
粒子の平均粒径を1μm超とすれば、ポリアミン系化合物で被覆された被覆粒子を、後述する吸着装置400が備える吸着剤として適用したときに、フィルタ部材600、700の目詰まりを確実に防止することができる。また、被覆粒子同士の間を液体が容易に流れ、吸着装置400内で液体が滞留するのを防止することができる。その結果、被覆粒子は、優れた分離能を発揮するものとなる。
また、少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成されている粒子では、一般的に、その表面で露出するカルシウムイオンとリン酸基とでは、カルシウムイオンの露出量がリン酸基の露出量と比較して少なくなる傾向を示す。すなわち、リン酸基による負電荷と比較して、カルシウムイオンによる正電荷の方が小さくなる傾向を示す。そして、このような傾向は、粒子の粒径を1μm超のように比較的大きくした場合により認められる。
そのため、粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆して、被覆粒子を、カルシウムイオンによる正電荷の他に、アミノ基による正荷電を有する構成とすれば、被覆粒子の表面で負電荷と正電荷とをバランスよく露出させることができる。その結果、被覆粒子は、負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方に対して、優れた吸着能を発揮するものとなる。
かかる構成の粒子は、ポリアミン系化合物で被覆されている。
なお、以下では、少なくとも表面付近がリン酸カルシウム系化合物で構成されている粒子が、ポリアミン系化合物で被覆されている場合を一例に説明する。
このように粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆すると、ポリアミン系化合物に含まれるアミノ基は正電荷を有し、粒子の表面ではリン酸基が露出しているため、アミノ基は、その一部がリン酸基と結合し、リン酸基と結合したもの以外が被覆粒子の表面で露出することとなる。そのため、少なくとも表面がリン酸カルシウム系化合物で構成された被覆粒子は、カルシウムイオンによる正電荷の他に、アミノ基による正電荷を有するものとなるため、負電荷を有する酸性タンパク質やヌクレオチドのような物質(吸着物)に対する吸着能が向上する。
また、ポリエチレンイミンの被覆量を変化させることによって、被覆粒子の荷電状態を制御することができるので、目的とする吸着物の荷電状態に応じて、これに対する吸着性が最適となるように、被覆粒子の荷電状態を調整することができる。その結果、荷電状態が異なる各種吸着物に対して、より優れた吸着能および分離能を得ることができる。
ポリアミン系化合物としては、例えば、ポリエチレンイミンおよびポリリジン等が挙げられるが、これらの中でも、特にポリエチレンイミンであるのが好ましい。
このポリエチレンイミンは、下記化学式(1)で表されるエチレンイミンの重合体である。
Figure 2010075885
かかる構成のポリエチレンイミンは、エチレンイミンが直鎖状に連結されたものと、分枝状に連結されたものとが有り、例えば、それぞれ、下記化学式(2)、(3)に示すものが有るが、本発明では、分枝状に連結されたものであるのが好ましい。
Figure 2010075885
[式中、mは2以上の整数を表す。]
Figure 2010075885
[式中、nは1以上の整数を表す。]
エチレンイミンが分枝状に連結されたポリエチレンイミンは、上記化学式(3)のように、網目構造をなしていることから、粒子を被覆する際に、粒子に対してポリエチレンイミンで強固に被覆することができる。また、粒子の表面で露出するリン酸基にアミノ基が結合する際に、粒子の表面で露出するカルシウムイオンを被覆することなく網目構造から露出させることができる。その結果、被覆粒子は、負電荷を有する物質に対する吸着能をより確実に向上させることができる。
なお、ポリアミン系化合物としては、上述したものの他、例えば、ポリエチレンイミンの水素の少なくとも一部が、他の元素または原子団により置き換えられたポリエチレンイミン誘導体であってもよい。
ポリエチレンイミンの平均分子量は、800〜100000程度であるのが好ましく、5000〜80000程度であるのがより好ましい。平均分子量が小さ過ぎると、ポリエチレンイミンによって粒子を確実に覆うことが困難となり、被覆粒子の荷電状態を、所望のものとするのが困難となるおそれがある。また、平均分子量が上記上限を超えると、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が大きな凝集塊を作り、比表面積の大きな被覆粒子を得ることが困難となるおそれがある。
ポリエチレンイミンの被覆量は、粒子1gに対して0.1〜100mg程度であるのが好ましく、0.5〜50mg程度であるのがより好ましく、0.5〜15mg程度であるのがさらに好ましい。被覆量が少ないと、被覆粒子における正電荷を増加させる効果が小さく、特に負電荷の大きな吸着物に対する吸着能を十分に向上させることができないおそれがある。また、被覆量が多いと、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が大きな凝集塊を作り、比表面積の大きな被覆粒子を得ることが困難となるおそれがある。
なお、ポリエチレンイミンの被覆量は、例えば、次のようにして測定することができる。
まず、被覆粒子0.10gと1N水酸化ナトリウム溶液20mLとを混合し、15secボルテックスをかけることによって3時間震とうし、懸濁液を得る。これにより、水酸化ナトリウム溶液中に被覆粒子を被覆するポリエチレンイミンが溶解する。
次に、懸濁液を遠心し、その上清(原液)を採取する。そして、この原液の一部を、段階的に希釈することによって複数の希釈液を調製する。
次に、原液および各希釈液の各20μLと、CBB試薬(タンパク質染色試薬)180μLとをそれぞれ混合し、20分間静置する。その後、各試料について630nmでの吸光度を測定し、希釈倍率と吸光度との相関図を得る。
一方、既知濃度のポリエチレンイミン溶液(標準溶液)と、このポリエチレンイミン溶液を段階的に希釈した複数の希釈液について、同様にしてCBB染色および吸光度測定を行い、希釈倍率と吸光度との関係を示す検量線を得る。
そして、この検量線の傾きと、試料における相関図の傾きとの比を求め、これに基づいて、原液中のポリエチレンイミンの量および被覆粒子1g当たりのポリエチレンイミンの量が算出される。
<被覆粒子の製造方法>
次に、上述した被覆粒子を製造する本発明の被覆粒子の製造方法を説明する。
なお、本実施形態では、全体がハイドロキシアパタイトによって構成された粒子(ハイドロキシアパタイト粒子)の表面を、ポリエチレンイミンで被覆することにより被覆粒子を製造する場合を一例に説明する。
ここで、本発明の被覆粒子の製造方法を説明するのに先立って、本発明の被覆粒子の製造方法に用いられるスプレードライヤー装置について説明する。
図2は、粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆する際に用いるスプレードライヤー装置の構成を示す断面図、図3は、図2に示すスプレードライヤー装置が備える噴霧盤の構成を示すための部分断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図2、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
<<スプレードライヤー装置>>
図2に示すスプレードライヤー装置1は、加熱室2と、この加熱室2内に設置され、分散液を液滴として加熱室2内に供給するための噴霧盤4と、噴霧盤4を回転させる回転部9と、分散液を貯留する貯留タンク6と、分散媒を貯留タンク6から噴霧盤4に送液する送液部3と、加熱室2内に加熱された気体を供給する送気部7と、加熱室2内から気体を排気する排気部8とを有している。
加熱室2は、その全体形状が筒状をなしており、上端か下端に向かってその内径が、鉛直方向の途中までほぼ一定であるが、途中から下端に向かって漸減しており、その下端に設けられた貫通孔21で開口する構成となっている。このような構成の加熱室2において、分散液を液滴として噴霧盤4から供給すると、分散液が加熱されることに起因して、分散液中に含まれるハイドロキシアパタイト粒子の表面がポリエチレンイミンで被覆されるとともに、分散媒が除去されることにより被覆粒子が形成され、この被覆粒子(粉体)が、その自重で加熱室2の下側に貯まることにより、貫通孔21から回収される。
加熱室2には、図2に示すように、加熱室2内に加熱された気体を供給する送気部7が接続されている。
送気部7は、気体(例えば空気)を送気する送風機71と、気体を加熱室2内に導く供給ライン72と、噴霧盤4の近傍で供給ライン72が開口する開口部73と、気体中の粉塵を除去するためのフィルタ74とで構成されており、加熱された気体を噴霧盤4の近傍を通過して加熱室2内に供給し得るようになっている。これにより、噴霧盤4より噴出される液滴を直接的に加熱して、早期に被覆粒子を乾燥物として得ることができる。
そして、この送気部7の供給ライン72の途中には、ヒータ51を備える加熱手段5が設けられており、ヒータ51に通電することにより、送気部7により供給される気体を加熱し得るようになっている。かかる構成とすることにより、加熱室2内に供給された気体を高温な状態で供給し得ることから、加熱室2内を高温に加熱された状態とすることができる。
また、加熱室2には、排気ライン81と貯留室82とで構成される排気部8が接続されている。これにより、送気部7から送気された過剰な量の気体をこの排気部8を介して外部に排出することができる。また、本実施形態では、排気ライン81の途中に貯留室82が設けられていることから、排気部8から排気される気体に混入した微細な被覆粒子を、この貯留室82に留めさせて回収することができる。そのため、加熱室2外部への粉体の排出を確実に防止することができる。
また、加熱室2の内部の上側には、噴霧盤4が設置されているが、この噴霧盤4に分散液を供給し得るように、送液部3を介して貯留タンク6が接続されている。
送液部3は、一端が貯留タンク6に接続され、他端が噴霧盤4に分散液を供給し得るように構成された送液ライン(配管)32と、送液ライン32の途中に設けられ、分散液を噴霧盤4に供給する高圧ポンプ31とを有している。なお、送液ライン32の他端(噴霧盤4側の端部)は、図3に示すように、後述する噴霧盤4の開口部44を介して、噴霧盤4の内部に分散液を供給し得るような位置に配置されている。かかる構成とすることにより、高圧ポンプ31の作動により、送液ライン32を介して、貯留タンク6に貯留された分散液を噴霧盤4に供給することができ、この分散液を液滴として噴霧盤4から加熱室2内に供給することができる。このとき、加熱室2内が高温に加熱された状態となっていることから、液滴として供給された分散液が急速に加熱されることに起因して、分散液中に含まれるハイドロキシアパタイト粒子の表面がポリエチレンイミンで被覆されるとともに、分散媒が除去されることにより被覆粒子が形成される。
回転部9は、加熱室2に固定された軸受け93と、噴霧盤4の中心から軸受け93を通って上方へ延設された回転軸92と、この回転軸92の上端に接続されかつ回転軸92をその軸周りに回転させるモーター91とを有し、モーター91を回転させることにより、その下端に接続された噴霧盤4を回転させる。
また、本実施形態では、図3に示すように、軸受け93の内部を通って、送液ライン32が噴霧盤4の開口部44に分散液を注入し得るように配置されている。これにより、分散液が噴霧盤4の内部(空隙)に供給され、噴霧盤4の回転により、分散液が液滴として、加熱室2内に供給(噴霧)される。
噴霧盤4は、送液部3を介して貯留タンク6から供給された分散液を、その回転により遠心力が分散液に加わり、噴霧盤4の外周方向から分散液を飛散させて液滴化させることにより、液滴として加熱室2内に噴霧する。
この噴霧盤4は、図3に示すように、同心円状をなす上側円板41および下側円板42(一対の円板)と、これら一対の円板41、42の外周部に複数個配置された柱状体(スペーサ)43とを有する。
上側円板41および下側円板42は、それぞれ、それらの中心部で回転軸92に固定されている。また、上側円板41には、同心円状をなす開口部44が設けられており、この開口部44を介して、上側円板41と下側円板42との間に形成された空隙内に分散液が供給される。なお、本実施形態では、この空隙により、分散液が注入される注入部が構成される。
柱状体43は、円板41、42の外周部にほぼ等間隔に配置されることにより、円板41、42同士を連結するとともに、柱状体43同士の間に噴出孔45を形成する。これにより、前記空隙内に供給された分散液に、円板41、42による回転により遠心力が加わると、分散液は、噴霧盤4から押し出される際に、柱状体43により細分化された状態となり、円板41、42の外周方向から飛散して液滴化されるため、噴出孔45から液滴として噴出(噴霧)される。
以上のような構成のスプレードライヤー装置1を用いることにより、分散液を液滴として加熱室2内に供給することができ、この液滴を加熱室2内で加熱することにより、ハイドロキシアパタイト粒子の表面が、ポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子を製造することができる。
以下、かかる構成のスプレードライヤー装置を用いて、被覆粒子を製造する製造方法について説明する。
なお、以下では、全体がハイドロキシアパタイトによって構成された粒子を、湿式合成法を用いて作製する場合とする。
[S1:ハイドロキシアパタイトの凝集体を含むスラリーを得る工程]
この工程では、水酸化カルシウム(第1の原料)とリン酸(第2の原料)とを、攪拌しつつ反応させ、ハイドロキシアパタイトの凝集体を含むスラリーを得る。
具体的には、容器(図示せず)内で、水酸化カルシウムを含む液を攪拌しつつ、リン酸水溶液を滴下し、混合する。
本実施形態では、リン酸を水溶液として使用する湿式合成法が用いられる。これにより、高価な製造設備を必要とせず、より容易かつ効率よくハイドロキシアパタイト(合成物)を合成することができる。
なお、本発明では、第1の原料および第2の原料は、それらの少なくとも一方を溶液として用いるようにすればよく、双方を溶液として用いるようにしてもよい。
また、この反応を攪拌しつつ行うことにより、水酸化カルシウムとリン酸との反応を効率よく進行させること、すなわち、それらの反応の効率を向上させることができる。
[S2:スラリーを乾燥してハイドロキシアパタイトの粉体を得る工程]
この工程では、前記工程[S1]で得られたスラリーを乾燥させ、粉体を得る。
この乾燥の方法としては、噴霧乾燥法が好適に使用される。かかる方法によれば、所望の粒径の粉体を、より確実かつ短時間で得ることができる。
以上のような工程を経て、ハイドロキシアパタイト(合成物)の粒体(ハイドロキシアパタイト粒子)が得られる。なお、噴霧乾燥によって得られたハイドロキシアパタイトは、150〜1200℃程度、好ましくは200〜800℃程度で焼成してもよい。
[S3:ハイドロキシアパタイト粒子の表面をポリエチレンイミンで被覆する工程]
この工程では、前記工程[S2]で得られたハイドロキシアパタイト粒子と、ポリエチレンイミンと、分散媒(液体)とを混合することにより粒子・ポリエチレンイミン分散液(調製液)を調製する。その後、この分散液を、液滴として加熱雰囲気(加熱室2)中に供給することにより加熱して、ハイドロキシアパタイト粒子の表面をポリエチレンイミンで被覆するとともに、分散媒を除去することにより、被覆粒子を乾燥物として加熱室2内に得る。
まず、ポリエチレンイミン分散液を調整する。
ここで、粒子・ポリエチレンイミン分散液を調整する方法、すなわちハイドロキシアパタイト粒子と、ポリエチレンイミンと、分散媒とを混合する方法は、特に限定されず、I)分散媒にハイドロキシアパタイト粒子とポリエチレンイミンとを同時に添加する方法、II)分散媒にハイドロキシアパタイト粒子を添加した後に、さらにポリエチレンイミンを添加する方法、およびIII)分散媒にポリエチレンイミンを添加した後に、さらにハイドロキシアパタイト粒子を添加する方法が挙げられるが、中でもIII)の方法であるのが好ましい。III)の方法であれば、ポリエチレンイミンが分散中に溶解した後に、分散媒中にハイドロキシアパタイト粒子が分散することになるので、ハイドロキシアパタイト粒子に対してポリエチレンイミンを均一に接触させることができるため、得られる各被覆粒子をポリエチレンイミンで均一に被覆されたものとすることができる。
以下、III)の方法を代表に、具体的に説明する。
まず、ポリエチレンイミンを、分散媒中に溶解してポリエチレンイミン溶液を調製する。
その後、このポリエチレンイミン溶液に、ハイドロキシアパタイト粒子を加えて分散させ、さらに、必要に応じて、分散媒を加えて混合ことにより、粒子・ポリエチレンイミン分散液を得る。
なお、上記のように、ハイドロキシアパタイト粒子を加えた後に、さらに分散媒を加える構成とすれば、ハイドロキシアパタイト粒子・ポリエチレンイミン分散媒でのハイドロキシアパタイト粒子の分散性がより向上するため、得られる各被覆粒子をポリエチレンイミンでより均一に被覆されたものとすることができる。
分散媒としては、特に限定されないが、水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含んでいるのが好ましく、水、アルコールおよびこれらの混合溶媒が好ましく用いられる。これにより、粒子・ポリエチレンイミン分散液を加熱することにより、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとを反応させることができるとともに、比較的低温域の加熱で、分散媒を粒子・ポリエチレンイミン分散液中から除去することができる。
アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、分散媒は、特に、メタノールを主成分として構成されているのが好ましい。分散媒としてメタノールを主成分として構成されているものを用いることにより、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとを効率よく反応させることができる。すなわち、ハイドロキシアパタイトに含まれるリン酸基と、ポリエチレンイミンに含まれるアミノ基との反応を効率よく進行させることができる。その結果、粒子の表面のポリエチレンイミンによる被覆率をより確実に向上させることができる。
また、分散媒としてメタノールを主成分として構成されているものを用いる場合、分散媒中におけるメタノールの含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、65〜85wt%程度であるのがより好ましい。これにより、分散媒としてメタノールを主成分と構成されるものを用いた場合に得られる効果がより顕著に発揮される。
さらに、ポリエチレンイミンの被覆量を精度よく制御することができ、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で確実に被覆することができる。
また、所望の被覆量を得るために要するポリエチレンイミンの使用量を抑制することができるため、材料コストの低減が図られる。
分散液中における、粒子とポリエチレンイミンとの混合比(重量比)は、分散媒の種類、粒子の比表面積等によっても若干異なるが、例えば、分散媒としてメタノールを主成分として構成されているものを用いる場合、500:1〜10:1程度であるのが好ましく、100:1〜50:1程度であるのがより好ましい。ポリエチレンイミンの混合比が少な過ぎると、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆するのが困難となるおそれがある。また、ポリエチレンイミンの混合比が多すぎると、ポリエチレンイミン同士の結着により、粒子同士が大きな凝集塊を作り、比表面積の大きな被覆粒子を得ることが困難となるおそれがある。
また、粒子・ポリエチレンイミン分散液中のハイドロキシアパタイト粒子の含有量は、特に限定されないが、20万〜200万個/mL程度であるのが好ましく、50万〜150万/mL程度であるのがより好ましい。これにより、加熱室2中において粒子・ポリエチレンイミン分散液(液滴)を加熱して、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとの反応を行う際に、隣接するハイドロキシアパタイト粒子同士を連結するようにポリエチレンイミンが結合してしまうのを確実に防止することができる。その結果、被覆粒子の凝集体が生成されるのを好適に防止することができる。
次に、粒子・ポリエチレンイミン分散液を、加熱雰囲気中に液滴として供給することにより、この液滴を加熱する。これにより、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとが反応して、ハイドロキシアパタイト粒子がポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子が得られるとともに、粒子・ポリエチレンイミン中の分散媒が除去されることにより、被覆粒子が加熱雰囲気中に乾燥物として得られる。
このように、加熱雰囲気中に液滴として供給して加熱する構成とすることにより、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとの反応が安定的に行われてハイドロキシアパタイト粒子が得られるとともに、被覆粒子を乾燥する際に、被覆粒子が凝集して凝集体が形成されるのを的確に抑制または防止することができ、得られる被覆粒子の歩留まりの向上を図ることができる。
このような、液滴の加熱雰囲気中における加熱は、前述した、スプレードライヤー装置1を用いたスプレードライ法により容易に行われる。
ここで、スプレードライヤー装置1を用いて、加熱室(加熱雰囲気)2中に、粒子・ポリエチレンイミン分散液を液滴として供給するには、前述したように、噴霧盤4を回転させた状態で、貯留タンク6に貯留した粒子・ポリエチレンイミン分散液を送液部3を介して、噴霧盤4に供給することにより行われる。
噴霧盤4に供給された粒子・ポリエチレンイミン分散液は、噴霧盤4の回転により生じた遠心力により、噴霧盤4から押し出される際に、柱状体43により細分化された状態となり、円板41、42の外周方向から飛散して液滴化されるため、噴出孔45から液滴として噴出(噴霧)される。このような遠心力を用いた液滴の形成方法では、粒子・ポリエチレンイミン分散液に含まれる粒子に、圧縮力が掛かることなく液滴を形成し得る。そのため、粒子が破壊されてしまうのを的確に抑制または防止することができる。
液滴を加熱室2中に供給する際の噴霧盤4の回転数は、粒子・ポリエチレンイミン分散液の粘度等によっても若干異なるが、3000〜60000rpm程度であるのが好ましく、5000〜50000rpm程度であるのがより好ましく、10000〜40000rpm程度であるのがさらに好ましい。粒子・ポリエチレンイミン分散液を液滴として加熱室2中のほぼ全体に亘って確実に供給することができる。
また、加熱室2中に供給される液滴の量、すなわち粒子・ポリエチレンイミン分散液の1滴の量は、0.1〜8000pL程度であるのが好ましく、1〜400pL程度であるのがより好ましい。これにより、生成される被覆粒子同士が凝集して、被覆粒子の凝集体が形成されるのを的確に抑制または防止することができる。
また、加熱室2中に供給された液滴を加熱する加熱温度、すなわち加熱雰囲気の温度は、溶媒の種類によっても若干異なるが、30〜200℃程度であるのが好ましく、55〜95℃程度であるのがより好ましい。加熱温度が低すぎると、ハイドロキシアパタイトとポリエチレンイミンとの反応が不十分となり、粒子の表面に、ポリエチレンイミンを所望の被覆量で被覆するのが困難となるおそれがある。また、加熱温度が高すぎると、ポリエチレンイミンが変質・劣化してしまうおそれがあり好ましくない。
[S4:被覆粒子を回収する工程]
次に、前記工程[S3]で得られたハイドロキシアパタイト粒子がポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子を加熱室2中から回収する。
ここで、前記工程[S3]で得られた被覆粒子は、乾燥物として加熱室2中で得られ、その自重で加熱室2の下側に貯まることとなる。また、排気部8から排気される気体に混入した微細な被覆粒子は、同じくその自重で貯留室82の下側に貯まることとなる。したがって、本実施形態では、加熱室2および貯留室82にそれぞれ設けられた貫通孔21および貫通孔83を介して被覆粒子が回収される。
次に、回収された被覆粒子を、フィルタ上に載せ、被覆粒子およびフィルタに、蒸留水を通過させることによって被覆粒子を洗浄する。その後、フィルタ上から被覆粒子を回収し、デシケータ等を用いて乾燥する。
この被覆粒子の洗浄は、被覆粒子およびフィルタを通過させた後の蒸留水が、ニンヒドリン試薬と反応させたとき、その呈色反応が確認されなくなるまで行うことが好ましい。これにより、被覆粒子に付着している未反応のポリエチレンイミンを確実に除去することができる。その結果、残存する未反応のポリエチレンイミンによって、被覆粒子の吸着能や分離能が損なわれたり、吸着物が変質したりすることを防止することができる。さらに後述する吸着装置が備える吸着剤に被覆粒子を適用した際に、溶出液中にポリエチレンイミンが漏出してしまうのを確実に防止することができる。
以上のような工程を経て、ハイドロキシアパタイト粒子の表面が、ポリエチレンイミンで被覆された被覆粒子を製造することができる。
なお、本実施形態では、上述したようなスプレードライヤー装置を用いて、粒子・ポリエチレンイミン分散液を液滴とし、この液滴を加熱雰囲気中に供給する場合について説明したが、前記分散液を液滴化する方法としては、特に限定されず、例えば、噴出孔を備えるノズルを用い、この噴出孔に分散液を圧力を加えた状態で供給することにより分散液を液滴化する方法や、圧電素子を用い、この圧電素子の振動により分散液を液滴化する方法(インクジェット法)等を用いることもできる。
<吸着装置>
次に、本発明の被覆粒子の製造方法により製造された被覆粒子が吸着剤として適用された吸着装置について説明する。
図4は、本発明の被覆粒子の製造方法により製造された被覆粒子が吸着剤として適用された吸着装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「流入側」、下側を「流出側」と言う。
ここで、流入側とは、目的とする吸着物を分離(精製)する際に、例えば、試料液(吸着物を含む液体)、溶出用緩衝液(溶出液)等の液体を、吸着装置内に供給する側のことを言い、一方、流出側とは、前記流入側と反対側、すなわち、前記液体が吸着装置内から流出する側のことを言う。
図4に示す吸着装置400は、カラム500と、粒状の被覆粒子が吸着剤として充填された吸着剤100と、2枚のフィルタ部材600、700とを有している。
カラム500は、カラム本体510と、このカラム本体510の流入側端部および流出側端部に、それぞれ装着されるキャップ(蓋体)520、530とで構成されている。
カラム本体510は、例えば円筒状の部材で構成されている。カラム本体510を含めカラム500を構成する各部(各部材)の構成材料としては、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料、各種金属材料、各種セラミックス材料等が挙げられる。
カラム本体510には、その流入側開口および流出側開口を、それぞれ塞ぐようにフィルタ部材600、700を配置した状態で、その流入側端部および流出側端部に、それぞれキャップ520、530が螺合により装着される。
このような構成のカラム500では、カラム本体510と各フィルタ部材600、700とにより、吸着剤充填空間560が画成されている。そして、この吸着剤充填空間560の少なくとも一部に(本実施形態では、ほぼ満量で)、本発明の被覆粒子が吸着剤100として充填されている。
吸着剤充填空間560の容積は、試料液の容量に応じて適宜設定され、特に限定されないが、試料液1mLに対して、0.05〜10mL程度が好ましく、0.5〜2mL程度がより好ましい。
吸着剤充填空間560の寸法を上記のように設定し、かつ被覆粒子の寸法を前述のように設定することにより、複数種の吸着物を相互にかつ確実に分離することができる。
また、カラム本体510に各キャップ520、530を装着した状態で、これらの間の液密性が確保されるように構成されている。
各キャップ520、530のほぼ中央には、それぞれ、流入管540および流出管550が液密に固着(固定)されている。この流入管540およびフィルタ部材600を介して被覆粒子に、前記液体が供給される。また、被覆粒子に供給された液体は、被覆粒子同士の間(間隙)を通過して、フィルタ部材700および流出管550を介して、カラム500外へ流出する。このとき、被覆粒子を、その平均粒径が1μm超であるものとした場合、被覆粒子同士の間には、液体が流れるのに十分な間隙が形成される。そのため、被覆粒子同士の間を、液体が容易に流れ、カラム本体510内で液体が滞留するのを好適に防止することができる。そして、このようにカラム本体510内を液体が通過する過程で、被覆粒子が負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方に対して優れた吸着能を有することから、試料液(試料)に含まれる複数種の吸着物は、被覆粒子に対する吸着性の差異および緩衝液に対する親和性の差異に基づいて確実に分離される。
各フィルタ部材600、700は、それぞれ、吸着剤充填空間560から被覆粒子が流出するのを防止する機能を有するものである。これらのフィルタ部材600、700は、それぞれ、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエーテルポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる不織布、発泡体(連通孔を有するスポンジ状多孔質体)、織布、メッシュ等で構成されている。
各フィルタ部材600、700の平均孔径は、通常、0.2〜0.8μm程度に設定される。そのため、被覆粒子を、その平均粒径が1μm超であるものとした場合、この被覆粒子を吸着剤100として備える吸着装置400では、被覆粒子がフィルタ部材600、700の孔部に入り込んで目詰まりが生じたり、被覆粒子がフィルタ部材600、700を通過して流出することが、確実に防止される。
以上のように構成された吸着装置では、被覆粒子が負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方に対して優れた吸着能を有することから、各種物質が主に静電相互作用によって被覆粒子に吸着し、この吸着剤100に対する吸着性の差異および緩衝液に対する親和性の差異に基づいて、それぞれを分離することができる。すなわち、試料液中に含まれる負電荷を有する物質および正電荷を有する物質の双方を、確実に分離・回収することができる。
また、例えば、溶出用緩衝液の塩濃度を連続的または段階的に変化させことにより、複数種の吸着物を分解能よく分離することができるため、早期に負電荷を有する物質が溶出液中に漏出してしまうという問題も解消される。
なお、本実施形態のように、被覆粒子を吸着剤充填空間560にほぼ満量充填する場合には、被覆粒子は、吸着剤充填空間560の各部において、ほぼ同一の組成をなしているのが好ましい。これにより、吸着装置400は、各種吸着物の分離(精製)能が特に優れたものとなる。
また、吸着剤充填空間560の一部(例えば流入管540側の一部)に被覆粒子を充填し、その他の部分には他の吸着剤を充填するようにしてもよい。
次に、このような吸着装置400を用いた分離方法の一例について説明する。
[1] 調製工程
まず、複数種の吸着物を含む試料と、緩衝液とを混合して、試料液を調製する。
試料液の調製に用いる緩衝液は、その塩濃度が後述する溶出用緩衝液の塩濃度と等しいか低いのが好ましい。これにより、吸着剤100として充填されている被覆粒子に吸着物を確実に吸着させることができる。
試料液を調製する際に用いる緩衝液の量は、特に限定されないが、吸着物の質量に対して、5〜50000倍程度であるのが好ましく、50〜1000倍程度であるのがより好ましい。
また、この緩衝液のpHは、試料に含まれる吸着物の種類によって異なるが、例えば、吸着物がタンパク質、ヌクレオチドおよび核酸等の生体関連物質である場合、6〜8程度であるのが好ましく、6.5〜7.5程度であるのがより好ましい。
さらに、緩衝液の温度も、特に限定されないが、20〜50℃程度であるのが好ましく、25〜45℃程度であるのがより好ましい。
かかるpH範囲および温度範囲の緩衝液を用いることにより、吸着物が生体関連物質である場合、その変質を確実に抑えて、被覆粒子に効率よく付着させることができる。その結果、目的とする吸着物の回収率の向上を図ることができる。
なお、調製した試料液中に固形物が含まれる場合には、試料液中から固形物を除去するのが好ましい。これにより、カラム500の目詰まりを確実に防止することができる。この固形物を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、試料液を遠心分離した後、上清液を回収し、この上清液から残存する固形物をフィルタにより濾別する方法等が挙げられる。
[2] 供給工程
次に、この試料液を、流入管540およびフィルタ部材600を介して被覆粒子に供給して、カラム500(吸着装置400)内を通過させて、吸着剤(被覆粒子)1に接触させる。
これにより、被覆粒子に対して吸着能の低い成分は、フィルタ部材700および流出管550を介してカラム500内から流出する。そして、被覆粒子に対して吸着能が高い成分は、カラム500内に保持される。
[3] 分画工程
次に、流入管540からカラム500内に、吸着物を溶出させるための溶出用緩衝液(溶出液)を供給して、カラム500内から流出管550を介して流出する流出液を、所定量ずつ分画(採取)する。
本実施形態では、溶出用緩衝液の塩濃度を連続的または段階的に変化させる。なお、溶出用緩衝液には、前記調製工程において用いる緩衝液と同種のものが好適に用いられる。
ここで、複数種の吸着物が被覆粒子に吸着している場合、被覆粒子に溶出用緩衝液が接触すると、まず、被覆粒子に対する吸着能が低い吸着物が被覆粒子から離脱し、流出管550から流出する。その後、被覆粒子に吸着した他の吸着物は、被覆粒子に対する吸着能が低いものから、溶出用緩衝液の塩濃度に応じて被覆粒子から離脱する。そして、溶出用緩衝液中に混入し、流出管550から流出する流出液中に回収される。そのため、流出管550から流出する流出液を所定量ずつ分画すれば、複数種の吸着物を含む試料液中から特定の吸着物を分離することができる。
ここで、被覆粒子は、ポリアミン系化合物の被覆量を変化させることによって、その荷電状態、すなわち、各吸着物に対する吸着能を制御することができる。このため、例えば、回収したい吸着物に対する吸着能を優先して、ポリアミン系化合物の被覆量を設定した場合には、この吸着物の回収率を向上させることができる。
また、さらに、回収したい吸着物に対する吸着能と、他の吸着物に対する吸着能との差がより大きくなるように、ポリアミン系化合物の被覆量を設定した場合には、回収したい吸着物の溶出時間と他の吸着物の溶出時間との差をより長くすることができ、複数種の吸着物を含む試料液中から特定の吸着物を分離能よく分離することができる。
なお、緩衝液の通液速度は、特に限定されないが、1〜10mL/min程度であるのが好ましく、1〜5mL/min程度であるのがより好ましい。
緩衝液の通液時間は、特に限定されないが、それぞれ、5〜60min程度であるのが好ましく、10〜30min程度であるのがより好ましい。
以上、本発明の被覆粒子の製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の被覆粒子の製造方法は、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.被覆粒子の製造
(実施例)
まず、水酸化カルシウム140gを純水1200mLに分散させて分散液を調製し、この分散液を攪拌しつつ、これにリン酸水溶液(リン酸濃度10wt%)700mLを滴下した。これにより、水酸化カルシウムとリン酸とを反応させてハイドロキシアパタイトを合成し、ハイドロキシアパタイトの凝集体を含有するスラリーを得た。
次に、このスラリーを噴霧乾燥し、更に分級することにより、ハイドロキシアパタイトの粒体(平均粒径40μmのHAp粒子)を得、その後、このハイドロキシアパタイトの粒体を700℃で焼成した。
次に、1.5wt%ポリエチレンイミン(MW70000)水溶液9Lに、焼成したハイドロキシアパタイト粒子1kgを混合することにより、粒子・ポリエチレンイミン分散液を得た。
次に粒子・ポリエチレンイミン分散液を、スプレードライヤー装置(大川原化工機社製、「OC−20」)を用いて、液滴として加熱雰囲気中に供給して加熱した。これにより、粒子を構成するハイドロキシアパタイトと、ポリエチレンイミンとを反応させ、ハイドロキシアパタイト粒子の表面を、ポリエチレンイミンで被覆するとともに、分散液中に含まれる分散媒を除去して粒子を乾燥体として得た。
なお、加熱雰囲気中で、粒子・ポリエチレンイミン分散液の液滴を加熱する加熱条件は以下に示す通りである。
<加熱条件>
・加熱室の温度 :90℃
・液滴の量 :40pL
次に、得られた粒子を、フィルタ上に載せ、粒子およびフィルタに、蒸留水を通過させることによって粒子を洗浄した。この粒子の洗浄は、粒子およびフィルタを通過させた後の蒸留水が、ニンヒドリン試薬と反応させたとき、その呈色反応が確認されなくなるまで行った。
その後、フィルタ上から粒子を回収し、デシケータを用いて乾燥した。
以上のようにして、ハイドロキシアパタイト粒子の表面がポリエチレンイミンで被覆された粒子(被覆粒子:PEI−HAp粒子)を得た。
(比較例1)
まず、前記実施例と同様にして、ハイドロキシアパタイトの粒体(平均粒径40μmのHAp粒子)を得た後、このハイドロキシアパタイトの粒体を700℃で焼成した。
次に、1.0wt%ポリエチレンイミン(MW70000)水溶液150mLに、焼成したハイドロキシアパタイト粒子100gを混合することにより、粒子・ポリエチレンイミン分散液を得た。
次に、分散液を、ロータリーエバポレータ内に収容し、エバポレータ内の分散液を浴槽を用いて加熱した。これにより、ハイドロキシアパタイト粒子の表面を、ポリエチレンイミンで被覆するとともに、分散液中に含まれる分散媒を除去して粒子を乾燥体として得た。
なお、容器中で、粒子・ポリエチレンイミン分散液の液滴を加熱する加熱条件は以下に示す通りである。
<加熱条件>
・浴槽の温度 : 80℃
・エバポレータの回転数 : 78−80回/min
・冷却水温 : 8−9℃
・エバポレータの真空度 : 22.25hPa
次に、前記実施例と同様にして、得られた粒子を、洗浄した後、乾燥することにより、被覆粒子(PEI−HAp粒子)を得た。
(比較例2)
ポリエチレンイミンによる粒子の被覆を省略した以外は、実施例1と同様にして、粒子(HAp粒子)を得た。
2.評価
2−1.被覆粒子の凝集の有無の確認
実施例および比較例1で製造された被覆粒子について、それぞれ、凝集の有無について確認した。
その結果、図5に示すように、実施例の被覆粒子では、凝集体はほとんど認められなかった。これに対して、比較例1の被覆粒子では、隣接する被覆粒子同士が凝集することに起因して、多くの凝集体が認められる結果であった。
2−2.タンパク質の溶出パターンの検討
実施例および比較例1、2で製造された粒子を、それぞれ、カラム(40×100mm)内に充填した。なお、比較例1で製造された粒子については、凝集体を形成しているものを取り除いてからカラム内に充填した。
その後、400mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を10分間、さらに10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を20分間、それぞれ、1.0mL/minの速度で通液することにより、各カラム中に充填された粒子の洗浄を行った。
また、試料液として、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に、オバルブミン(Ova)を10mg/mL、ミオグロビン(Myo)を5mg/mL、α−キモトリプシノーゲン−A(α−Chymo)を5mg/mL、チトクローム−C(Cyto)を5mg/mLそれぞれ溶解したタンパク質混合液を用意した。
そして、各カラム内に、このタンパク質混合液50μLを、1.0mL/minの速度で供給した後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、1.0mL/minの速度で1分間供給した。
続いて、各カラム内に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、10mMのものが100%の状態から、400mMのものが75%となるまで連続的に変化させて15分間供給した後、400mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を5分間供給した。
そして、各カラムから流出する流出液について、280nmにおける吸光度曲線を観測した。各カラムについて観測された吸光度曲線を、図6に示す。
図6を見ると、比較例2の粒子(HAp粒子)を用いたカラムでは、試料液中のタンパク質が、オバルブミン、ミオグロビン、α−キモトリプシノーゲン−A、チトクローム−Cの順で溶出する。
これに対して、実施例および比較例1の粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムでは、ミオグロビン、α−キモトリプシノーゲン−A、チトクローム−Cがほぼ同じ溶出時間で溶出して1つのピークとして観測され、オバルブミンのみが、他のタンパク質よりも遅れて溶出して別のピークとして観測された。
このことから、実施例の被覆粒子では、比較例1の被覆粒子と同様に、ハイドロキシアパタイト粒子がポリエチレンイミンで被覆されており、これを吸着剤とするカラムのタンパク質の溶出パターンを変化させ得ることがわかった。
すなわち、実施例の被覆粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムでは、比較例1と同様に、特に、オバルブミン(酸性タンパク質)の溶出時間が遅くなっていることから、特に、酸性タンパク質に対する吸着能が向上し、酸性タンパク質を他のタンパク質から分離する性能(酸性タンパク質に対する分離能)を向上させ得ることがわかった。
2−3.ヌクレオチドの溶出パターンの検討
実施例および比較例1、2で製造された粒子を、それぞれ、カラム(40×100mm)内に充填した。なお、比較例1で製造された粒子については、凝集体を形成しているものを取り除いてからカラム内に充填した。
その後、400mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を10分間、さらに10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を20分間、それぞれ、1.0mL/minの速度で通液することにより、各カラム中に充填された粒子の洗浄を行った。
また、試料液として、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に、アデノシン、AMP、ADP、ATPを、それぞれ1mg/mL溶解したヌクレオチド溶液を用意した。
そして、各カラム内に、このヌクレオチド溶液50μLを、1.0mL/minの速度で供給した後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、1.0mL/minの速度で1分間供給した。
続いて、各カラム内に、リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を、10mMのものが100%の状態から、400mMのものが75%となるまで連続的に変化させて15分間供給した後、400mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)を5分間供給した。
そして、各カラムから流出する流出液について、260nmにおける吸光度曲線を観測した。各カラムについて観測された吸光度曲線を、それぞれ、図7に示す。
図7を見ると、実施例および比較例1のカラムの吸光度曲線においては、4つのピークが認められ、アデノシン、AMP、ADPおよびATPに対応するピークがこの順で観測されるのが分かる。これに対して、比較例2の吸光度曲線においては、3つのピークしか認められず、アデノシンとAMPのピークが重なり、1つのピークとして観測されたものと推察される。
これらのことから、実施例の被覆粒子では、比較例1の被覆粒子と同様に、ハイドロキシアパタイト粒子がポリエチレンイミンで被覆されており、これを吸着剤とするカラムの各ヌクレオチドに対応するピーク同士の距離を広げ得ることがわかった。
すなわち、実施例の被覆粒子(PEI−HAp粒子)を用いたカラムでは、比較例1と同様に、リン酸基の数の増加に伴ってその保持力が向上するため、各ヌクレオチドに対する分離能を向上させ得ることがわかった。
2−4.まとめ
以上のことから、実施例のように、ハイドロキシアパタイト粒子とポリエチレンイミンと分散液としての水とを含有する分散液を液滴として加熱雰囲気中で加熱することにより、凝集体を形成することなく、被覆粒子を製造し得ることがわかった。
また、かかる方法を用いて製造した実施例の被覆粒子は、分散液を液滴とすることなく直接加熱する従来の方法を用いて製造した比較例1と同様にの分離能を有していたことから、ポリエチレンイミンによりハイドロキシアパタイト粒子の表面が被覆されていることがわかった。
したがって、分散媒を液滴として加熱雰囲気中で加熱して被覆粒子を製造することにより、優れた吸着能および分離能が安定的に得られる被覆粒子を歩留まりよく製造し得ることがわかった。
また、分散液中に含まれる溶媒として、水の他にメタノールを含有する溶媒を用いて被覆粒子(PEI−HAp粒子)を製造し、上記2−3と同様の評価を行った。その結果、分散液の分散媒として水を用いて得られた被覆粒子を備えるカラムに比べて、分散液の分散媒としてメタノールを用いて得られた被覆粒子を備えるカラムの方が、各ヌクレオチドに対応するピーク同士の距離がより広がっている結果となった。このことから、分散液中の分散媒としてメタノールを用いることにより、より分離能に優れた被覆粒子が得られることがわかった。
本発明の被覆粒子を構成する粒子の一例を示す断面図である。 粒子の表面をポリアミン系化合物で被覆する際に用いるスプレードライヤー装置の構成を示す断面図である。 図2に示すスプレードライヤー装置が備える噴霧盤の構成を示すための部分断面図である。 本発明の被覆粒子の製造方法により製造された被覆粒子が吸着剤として適用された吸着装置の一例を示す縦断面図である。 実施例および比較例1で製造した被覆粒子(PEI−HAp粒子)の光学写真である。 実施例および比較例1、2で製造した粒子(PEI−HAp粒子またはHAp粒子)を用いたカラムについて、各種タンパク質を吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。 実施例および比較例1、2で製造した粒子(PEI−HAp粒子またはHAp粒子)を用いたカラムについて、各種ヌクレオチドを吸着させたときの流出液の吸光度曲線である。
符号の説明
1 スプレードライヤー装置
2 加熱室
21 貫通孔
3 送液部
31 高圧ポンプ
32 送液ライン
4 噴霧盤
41 上側円板
42 下側円板
43 柱状体
44 開口部
45 噴出孔
5 加熱手段
51 ヒータ
6 貯留タンク
7 送気部
71 送風機
72 供給ライン
73 開口部
74 フィルタ
8 排気部
81 排気ライン
82 貯留室
83 貫通孔
9 回転部
91 モーター
92 回転軸
93 軸受け
100 吸着剤
200 粒子
210 基材
220 リン酸カルシウム系化合物層
230 微小粒子
400 吸着装置
500 カラム
510 カラム本体
520、530 キャップ
540 流入管
550 流出管
560 吸着剤充填空間
600、700 フィルタ部材

Claims (14)

  1. 粒子の表面がポリアミン系化合物で被覆されている被覆粒子の製造方法であって、
    前記粒子と前記ポリアミン系化合物とを含有する分散液を調製した後、該分散液を液滴として加熱雰囲気中に供給することにより、前記液滴を加熱して前記粒子の表面に前記ポリアミン系化合物を被覆することを特徴とする被覆粒子の製造方法。
  2. 一対の円板と、前記一対の円板の外周部に複数個配置されたスペーサと、前記分散液を注入する注入部とを有する噴霧盤を回転させつつ、前記注入部に前記分散液を注入することにより、前記一対の円板の外周方向から遠心力により、前記分散液を飛散させて液滴化させる方法を用いて、前記分散液を液滴として加熱雰囲気中に供給する請求項1に記載の被覆粒子の製造方法。
  3. 前記加熱雰囲気の温度は、30〜200℃である請求項1または2に記載の被覆粒子の製造方法。
  4. 前記液滴の量は、0.1〜8000pLである請求項1ないし3のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
  5. 前記分散液中の前記粒子の含有量は、20万〜200万個/mLである請求項1ないし4のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
  6. 前記粒子の平均粒径は、1μm超である請求項1ないし5のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
  7. 前記ポリアミン系化合物は、ポリエチレンイミンである請求項1ないし6のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
  8. 前記ポリエチレンイミンの平均分子量は、800〜100000である請求項7に記載の被覆粒子の製造方法。
  9. 前記分散液中における前記粒子と前記ポリエチレンイミンとの重量比は、500:1〜10:1である請求項7または8に記載の被覆粒子の製造方法。
  10. 前記粒子は、その少なくとも表面付近がセラミックス材料で構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
  11. 前記セラミックス材料は、リン酸カルシウム系化合物である請求項10に記載の被覆粒子の製造方法。
  12. 前記分散液は、分散媒として、水およびアルコールのうちの少なくとも一方を含有する請求項1ないし11のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
  13. 前記分散媒は、メタノールを主成分とする請求項12に記載の被覆粒子の製造方法。
  14. 前記粒子1gに対する前記ポリエチレンイミンの被覆量は、0.1〜100mgである請求項1ないし13のいずれかに記載の被覆粒子の製造方法。
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