JP7453463B1 - 炭素質材料及びその製造方法、並びに吸着フィルター - Google Patents

炭素質材料及びその製造方法、並びに吸着フィルター Download PDF

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Abstract

【課題】ブタン類に対して高い吸着性能を有する炭素質材料及びその製造方法、並びに吸着フィルターを提供すること。【解決手段】本発明の炭素質材料は、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm3/g)が0.23cm3/g以上0.35cm3/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、炭素質材料及びその製造方法、並びに吸着フィルターに関する。
自動車排出ガス中の揮発性有機化合物(VOC)は、アルデヒドなどの有害物質を含むだけでなく、光化学反応によって有害物質を生成する原因ともなる。排出量が多く光化学反応を起こしやすいVOCとしては、例えば、n-ブタン及びイソブタンのようなブタン、並びに1,2-ブタジエン及び1,3-ブタジエンのようなブテン(以下、本明細書において、これらのブタン及びブテンを包括して単に「ブタン類」とも称する)が挙げられる。ブタン類は走行環境において車内空間に流入し、運転者に対する健康への悪影響や、臭気による不快感を与える。そのため、自動車には、通常、これらの物質に対する吸着材として活性炭を組み込んだ自動車用フィルターが備えられている。
そのようなフィルター用の吸着材として、例えば、特許文献1において、BET比表面積が700m/g以上1300m/g以下である活性炭に芳香族アミノスルホン酸と特定の有機酸とを所定量で添着させた複合ガス吸着材が記載されている。引用文献1の吸着材は、アルデヒド及びブタンを含有する複合ガスの吸着を目的としている。
特開2011-143359号公報
しかしながら、特許文献1の吸着材において、アセトアルデヒドは、活性炭の吸着特性に関係なく、添着物質により高い除去性能を得ているが、ブタンは、活性炭の吸着特性である比表面積のみを制御することで除去性能を得ている。しかし、比表面積のみの制御では、ブタン吸着に有効な小さなミクロ孔を制御することができず、高いブタン除去性能を得ることができない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ブタン類に対して高い吸着性能を有する炭素質材料及びその製造方法、並びに吸着フィルターを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、細孔容積、充填密度、及びリアクティブブラック5価がそれぞれ特定の範囲にある炭素質材料が、ブタン類に対して高い吸着性能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の実施態様を含む。
[1]窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である、炭素質材料。
[2]よう素吸着量が710mg/g以上1,500mg/g以下である、[1]に記載の炭素質材料。
[3]前記細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合が61%以上92%以下である、[1]に記載の炭素質材料。
[4]ミクロ孔の平均細孔径が0.60nm以上0.80nm以下である、[1]に記載の炭素質材料。
[5]n-ブタン、イソブタン、1,2-ブタジエン、及び1,3-ブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の吸着に用いられる、[1]~[4]のいずれかに記載の炭素質材料。
[6]原料を炭化して炭化物を得る炭化工程と、前記炭化物を賦活処理して賦活物を得る賦活工程と、を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
[7]前記賦活物を洗浄する洗浄工程を更に含む、[6]に記載の製造方法。
[8]前記原料が、ヤシ殻である、[6]に記載の製造方法。
[9][1]~[4]のいずれかに記載の炭素質材料を含む、吸着フィルター。
[10]前記吸着フィルターが自動車用である、[9]に記載の吸着フィルター。
本発明によれば、ブタン類に対して高い吸着性能を有する炭素質材料及びその製造方法、並びに吸着フィルターを提供することができる。
図1は、流動炉の模式断面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
[炭素質材料]
本実施形態の炭素質材料は、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である。
炭素質材料が、このような要件を備えることにより、ブタン類に対して高い吸着性能を有する。そのため、本実施形態の炭素質材料は、ブタン類を除去するための吸着フィルターに好適である。ブタン類としては、n-ブタン、及びイソ-ブタンなどのブタン、並びに1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエンなどのブテンが挙げられる。
炭素質材料において、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)(以下、単に「細孔径0.80nm以下の細孔容積」とも称する)は、0.23cm3/g以上0.35cm3/g以下である。炭素質材料は、細孔径0.80nm以下の細孔容積が特定の範囲にあるため、分子サイズが比較的小さなブタン類に対して優れた吸着性能を有する。すなわち、細孔径0.80nm以下の細孔容積が0.23cm3/g以上であることで、分子サイズの比較的小さい物質の除去に適した小さな細孔容積が十分となり、ブタン類に対する吸着性能が著しく向上する。また、細孔径0.80nm以下の細孔容積が0.35cm3/g以下であることで、ブタン類の分子サイズよりも小さい物質に適する細孔容積の存在量が少なくなり、その分、ブタン類に適する細孔容積が多くなる。そのため、ブタン類に対する吸着性能が著しく向上する。
本明細書において、炭素質材料が有する細孔は、IUPAC(国際純正応用化学連合)の分類基準に準拠し、その細孔径(直径)に応じて、細孔径が2.0nm未満の細孔をミクロ孔とし、細孔径が2.0nm以上50.0nm以下の細孔をメソ孔とし、細孔径が50.0nmを超える細孔をマクロ孔と分類する。ミクロ孔は、メソ孔よりも小さな細孔であり、分子サイズの比較的小さなブタン類の吸着に有効である。
本明細書において、細孔径0.80nm以下の細孔容積は、QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)によって算出される。QSDFT法とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm以上約40nm以下の細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法は、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。細孔径0.80nm以下の細孔容積の具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。
細孔径0.80nm以下の細孔容積は、好ましくは0.235cm3/g以上0.300cm3/g以下であり、より好ましく0.240cm3/g以上0.270cm3/g以下である。細孔径0.80nm以下の細孔容積の範囲が上記範囲にあると、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にある。
炭素質材料において、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度(以下、単に「充填密度」とも称する)は、0.43g/mL以上0.65g/mL以下である。充填密度は、炭素質材料の細孔容積の影響を大きく受ける。そのため、体積基準の累積分布の50%粒子径(D50)が9.0μm以上11.0μm以下に調整された炭素質材料を用いて、その充填密度を測定した場合、その充填密度の値は、炭素質材料の保有する細孔容積の指標となる。充填密度が上記範囲にあることで、炭素質材料は、ブタン類に対する吸着性能をより高いレベルで実現できる傾向にある。充填密度が0.43g/mL以上であることで、炭素質材料の細孔が大きくなりすぎず、ブタン類の吸着に対して有効な細孔を多く保有することができる。充填密度が0.65g/mL以下であることで、ブタン類の吸着に寄与する細孔が十分に存在する傾向にある。充填密度の具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。
充填密度は、好ましくは0.50g/mL以上0.63g/mL以下であり、より好ましく0.52g/mL以上0.60g/mL以下である。充填密度の範囲が上記範囲にあると、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にある。
炭素質材料のリアクティブブラック5価は、3.0g/L以上60.0g/L以下である。リアクティブブラック5は、下記式(1)で表される染料であり、C.I.リアクティブブラック-5とも称される。
Figure 0007453463000002
リアクティブブラック5は、その分子量が995.88と大きく、嵩高い構造を有するため、リアクティブブラック5価は、炭素質材料が有する大きな細孔における累積細孔容積の指標となる。炭素質材料は、リアクティブブラック5価が上記範囲にあることで、ブタン類に対して、高い吸着性能を発揮する。リアクティブブラック5価が3.0g/L以上であることで、炭素質材料が有する細孔のうち、ブタン類を吸着し難い比較的大きな細孔が少なくなる。そのため、ブタン類に対する吸着に有効な細孔容積が大きくなり、その結果、ブタン類に対する吸着性能が著しく向上する。また、リアクティブブラック5価が60.0g/L以下であることで、炭素質材料は、ブタン類の吸着に有効な細孔量を保持できる。そのため、ブタン類に対する吸着性能が著しく向上する。
リアクティブブラック5価は、例えば、次のようにして算出することができる。すなわち、まず、紫外可視分光光度計を用いて、波長594nm及び光路長(セル長)10mmの条件にて、リアクティブブラック5を含む試験液と、その試験液に炭素質材料を混合し十分にリアクティブブラック5を炭素質材料に吸着させた後に、リアクティブブラック5が吸着した炭素質材料を除去して得られる残液の、それぞれの吸光度を測定する。そして、これらの吸光度を用いて、残液中に含まれるリアクティブブラック5の残存率(%)と、炭素質材料1g当たりのリアクティブブラック5の吸着量(/g)とを算出する。リアクティブブラック5価(g/L)は、これらの値を用いて、1Lの試験液中のリアクティブブラック5を99%除去するために必要な炭素質材料の量として算出する。なお、リアクティブブラック5価の測定において、炭素質材料としては、体積基準の累積分布の50%粒子径(D50)が9.0μm以上11.0μm以下に調整された炭素質材料を用いることが好ましい。本明細書において、50%粒子径(D50)は、レーザー回折光散乱法粒度分布測定装置を用いて、体積基準のメジアン径として測定される値を称する。リアクティブブラック5価の具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。
リアクティブブラック5価は、好ましくは10.0g/L以上55.0g/L以下であり、より好ましくは15.0g/L以上50.0g/L以下であり、更に好ましくは20.0g/L以上40.0g/L以下であり、更により好ましくは22.0g/L以上30.0g/L以下である。リアクティブブラック5価の範囲が上記範囲にあると、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にある。
炭素質材料のよう素吸着量は、好ましくは710mg/g以上1,500mg/g以下であり、より好ましくは750mg/g以上1,300mg/g以下であり、更に好ましくは800mg/g以上1,120mg/g以下である。よう素吸着量の範囲が上記範囲にあると、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にある。
よう素吸着量は、炭素質材料に存在する、ブタン類を物理吸着することが可能な細孔の表面積の指標である。炭素質材料のよう素吸着量が上記範囲にあることで、炭素質材料は、ブタン類に対して、高い吸着性能を発揮する。よう素吸着量が710mg/g以上であることで、炭素質材料の細孔容積が小さくなりすぎず、ブタン類の吸着に対して有効な細孔を多く保有することができる。よう素吸着が1,500mg/g以下であることで炭素質材料の細孔が大きくなりすぎず、ブタン類の吸着に対して有効な細孔を多く保有することができる。
よう素吸着量は、JIS K 1474(2014年)に準拠して測定及び算出される。よう素吸着量における具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。
炭素質材料において、細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合は、好ましくは61%以上92%以下であり、より好ましくは70%以上90%以下であり、更に好ましくは73%以上89%以下である。その細孔容積の割合の範囲が上記範囲にあると、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にある。
細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合は、炭素質材料が保有する小さな細孔の割合である。細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合が61%以上であると、ブタン類に対して有効な小さな細孔を多く保有し、高い吸着性能を発揮する傾向にある。細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合が92%以下であると、細孔径が小さくなりすぎず、ブタン類の吸着に有効な細孔を多く保有するため、高い吸着性能を発揮する傾向にある。
細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合は、細孔径2.0nm以下の細孔容積に対する、細孔径0.80nm以下の細孔容積の比率で求められる。細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合の具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。
炭素質材料のミクロ孔の平均細孔径は、好ましくは0.60nm以上0.80nm以下であり、好ましくは0.61nm以上0.75nm以下であり、より好ましくは0.63nm以上0.70nm以下である。平均細孔径の範囲が上記範囲にあると、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にある。
ミクロ孔の平均細孔径とは、炭素質材料におけるミクロ孔の細孔径の平均値である。平均細孔径が上記範囲にあると、炭素質材料は、ブタン類の吸着に有効な細孔をより好適に保有できる傾向にある。
ミクロ孔の平均細孔径は、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出したミクロ孔の中で細孔径2.0nm以下の比表面積(m/g)(以下、単に「ミクロ孔の比表面積」とも称する)と、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出したミクロ孔の中で細孔径2.0nm以下の細孔容積(cm/g)(以下、単に「ミクロ孔の細孔容積」とも称する)とを用いて、下記式(2)により算出される。平均細孔径の具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。なお、ミクロ孔の平均細孔径の測定及び算出に際しては、細孔径が2.0nmの細孔もミクロ孔とした。
ミクロ孔の平均細孔径(nm)=(ミクロ孔の細孔容積(cm/g)/ミクロ孔の比表面積(m/g))×2000・・・(2)
炭素質材料の形状は、用途によっても異なり、特に限定されない。そのような形状としては、例えば、粉末状、塊状、破砕状、球状、円柱、楕円球状、歪曲状、楕円柱、楕円錐台、並びに三角柱、四角柱、五角柱、及び六角柱などの多角柱などの棒状、糸状、中実ペレット及び中空ペレットなどのペレット状、粉末状等の破砕状、基板状(シート状)、織り布(クロス)状、フェルト状等の繊維状、及びブロック状等が挙げられる。
炭素質材料の形状としては、公知の吸着フィルターにおける炭素質材料として適用可能な形状とすることが好ましい。そのような形状としては、例えば、球状、楕円球状、歪曲状、棒状、糸状、ペレット状、粉末状等の破砕状、基板状(シート状)、織り布(クロス)状、繊維状、及びブロック状が挙げられる。これらの形状は、具体的使用態様に応じて適宜選択することできる。これらの中でも、単位体積当たりの吸着性能が高いことから、炭素質材料の形状は、破砕状が好ましく、粉末状がより好ましい。粉末状の炭素質材料である場合、その寸法は特に限定されず、具体的使用態様に応じて適宜粒度等を調整すればよい。
本明細書において、破砕状とは、形状が一定ではなく、通常、角のある任意の形状をもつ粒子を称する。また、粉末状とは、例えば、微粉状、粉状、細粒状、及び顆粒状の粉体を称し、通常、体積基準の累積分布の50%粒子径(D50)は、1μm以上150μm以下である。
例えば、炭素質材料を自動車用の吸着フィルターとして用いる場合、その形状は、好ましくは、粉末状、粒状、ペレット状、及び繊維状である。炭素質材料が、そのような形状であると、シート加工及びプリーツ充填加工により供し易く、好適なフィルターを得ることができる。そのため、炭素質材料は、得られるフィルターから流出し難く、吸着フィルターとして好適に使用できる傾向にある。
炭素質材料としては、活性炭であることが好ましい。
[炭素質材料の製造方法]
本実施形態の炭素質材料は、公知の製造方法によって得ることができる。
そのような方法としては、例えば、熱分解法、賦活法、被覆法、及び蒸着法等を挙げることができる。製造方法としては、賦活法を用いることが好ましい。それらの製造方法を用いることで、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
本実施形態の炭素質材料の製造方法は、原料を炭化して炭化物を得る炭化工程と、炭化物を賦活処理して賦活物を得る賦活工程と、を含む。本実施形態の炭素質材料の製造方法は、賦活物を洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。
(炭化工程)
炭素質材料の製造方法は、原料を炭化して炭化物を得る炭化工程を含む。
原料としては、所望の炭素質材料を得ることができる材料であれば特に限定されない。原料としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻などの果実殻、パーム核、梅、及び桃等の種子、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜、石炭(泥炭、亜炭、褐炭、及び瀝青炭など)、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、及びコールタールなどの植物系原料又は化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びポリアミド樹脂などの各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、及びポリクロロプレンなどの合成ゴム;その他合成木材;合成パルプなどが挙げられる。これらの原料は、単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。
原料は、天然物であることが好ましく、ヤシ殻であることがより好ましい。そのような原料を用いることで、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料を更に容易に製造できる傾向にある。
原料は、必要に応じて、添加剤等を含んでもよい。また、添加物等は、必要に応じて、炭化物に加えてもよい。
そのような添加剤等としては、例えば、水、コールタール、無水タール、硬質ピッチ、コールタール系ピッチ、及び石油系ピッチが挙げられる。添加剤等は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
添加剤等は、それぞれ、原料又は炭化物100質量部に対して、通常1.0質量部以上50.0質量部以下で配合される。また、添加剤等の合計量は、原料又は炭化物100質量部に対して、通常1質量部以上100質量部以下である。原料又は炭化物と、添加剤と、を混合するに際しては、必要に応じて、予め原料又は炭化物中の酸素量を、原料又は炭化物100質量%に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下の範囲で調節してもよい。酸素量の調節は、例えば、150℃以上300℃以下の加熱下で、原料又は炭化物と、酸素と、を混合することで行うことができる。
炭素質材料の製造方法では、原料を炭化させる前に、原料を粉砕あるいは成型してもよい。そのような方法としては、例えば、原料を炭化させる前に、原料を公知の粉砕機を用いて粉末状又は粒状に粉砕した後、炭化を行う方法が挙げられる。また、原料を炭化させる前に、原料を公知の方法でペレット状に成型した後、炭化を行う方法が挙げられる。
原料の形状を粉末状とした場合、粉末の粒度(体積基準の累積分布の50%粒子径、D50)は、好ましくは1μm以上150μm以下である。原料の形状を粒状とした場合、粒の粒度(D50)は、好ましくは150μm以上2000μm以下である。原料の形状をペレット状とした場合は、ペレットの粒度(D50)は、好ましくは2000μm以上3000μm以下である。
原料の炭化方法は、特に限定されず、例えば、無酸素の条件で300℃以上900℃以下、好ましくは400℃以上800℃以下まで加熱する方法が挙げられる。
炭化時間は、原料、及び炭化を行う設備によって適宜設定できる。炭化時間としては、例えば、15分以上20時間以下であり、好ましくは30分以上10時間以下である。炭化処理は、例えば、流動炉などの公知の製造設備を用いて行うことができる。また、炭化処理は、空気を排除して減圧下で行ってもよく、窒素雰囲気下で行ってもよい。
炭素質材料の製造方法では、公知の粉砕機を用いて、炭化物を粉末状又は粒状に粉砕してもよい。また、公知の方法を用いて、炭化物をペレット状に成型してもよい。これらにより、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料を一層容易に製造できる傾向にある。炭素質材料の製造方法では、炭化物を粉末状又は粒状に粉砕した後、あるいはペレット状に成形した後、必要に応じて粉末状の炭化物に添加剤等を加えて公知の方法で混練し、得られた混練物を公知の方法で成型してもよい。
炭化物の形状を粉末状、粒状、又はペレット状とした場合、炭化物のそれぞれの粒度(体積基準の累積分布の50%粒子径、D50)の好ましい範囲は、上記の原料の形状を粉末状、粒状、又はペレット状とした場合の好ましく範囲と同じである。
炭素質材料の製造方法では、公知の方法を用いて、炭化物、粉末状又は粒状の炭化物、混練物、粉末状又は粒状の混練物を、円柱ペレット状に成型してもよい。これにより、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料を一層容易に製造できる傾向にある。
炭化物の形状を円柱ペレット状とした場合、円柱ペレットの直径は、好ましくは0.1mm以上4.0mm以下である。また、円柱ペレットのアスペクト比(直径:高さ)は、好ましくは1:1~1:10である。
上記炭化工程により、原料の炭化物が得られる。
炭素質材料の製造方法は、炭化工程の後に、炭化物を洗浄処理及び/又は乾燥処理等を行う、洗浄工程及び/又は乾燥工程を有してもよい。これらの工程における条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。また、下記の洗浄工程及び乾燥工程を参照してもよい。
(賦活工程)
炭素質材料の製造方法は、炭化物を賦活処理して賦活物を得る賦活工程を含む。
賦活処理としては、公知の方法を採用できる。
賦活処理は、ロータリーキルン、流動炉、及びスリープ炉(縦型炉)などの公知の製造設備を用いることができる。また、賦活処理は、空気を排除して減圧下で行ってもよく、窒素雰囲気下で行ってもよい。
賦活処理は、流動炉を用いて行うことが好ましい。流動炉は、炭化物と活性ガスとを効率よく接触させることできることから、メソ孔が発達せず、ミクロ孔を炭素質材料に多く付与でき、特に、細孔径が0.80nm以下の細孔を短時間で効率よく炭素質材料に付与できる傾向にある。
流動炉を用いて賦活処理を行う場合、流動炉に投入される炭化物は、JIS Z8801-1:2019で規定する標準篩用金網にて、好ましくは70メッシュ(目開き寸法:243μm)篩上10メッシュ篩下(目開き寸法:1.54mm)の粒度を有し、より好ましくは70メッシュ(目開き寸法:243μm)篩上14メッシュ篩下(目開き寸法:1.31mm)の粒度を有する。炭化物の粒度が上記範囲にあることにより、炭化物の賦活の進行に伴って質量が軽くなった賦活物が、流動炉内により留まり、賦活をより効率的に行うことが可能となる。炭化物としては、炭化工程の前に予め所望のサイズに原料を切断することで粒度を調整した炭化物を用いてもよく、炭化物を所望のサイズに破砕分級することで粒度を調整した炭化物を用いてもよい。
賦活処理の方法としては、例えば、水蒸気ガス、酸素ガス、及び二酸化炭素ガスなどの活性ガスによる方法が挙げられる。賦活方法として活性ガスを用いることで、ミクロ孔を多く有し、特に、細孔径が0.80nm以下の細孔をより多く有する炭素質材料をより容易に得ることができる傾向にある。なお、活性ガスと共に窒素などの不活性ガスを併用してもよい。
活性ガスとしては、水蒸気ガス、酸素ガス、及び二酸化炭素ガスからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、水蒸気ガス、酸素ガス、及び二酸化炭素ガスの全てを用いることがより好ましい。
水蒸気ガスは、より十分な反応速度を有し、生産効率をより低下させずに反応速度をより制御できる傾向にある。また、水蒸気ガスを用いることで、ミクロ孔を炭素質材料に多く付与でき、特に、細孔径が0.80nm以下の細孔の割合を炭素質材料に多く付与できる傾向にある。そのため、ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料を好適に製造できる傾向にある。
通常、賦活反応は吸熱反応であるため、賦活反応をより効率的に進行させるためには、一定以上の熱量が必要である。その熱量を維持するため、活性ガスには、水蒸気ガスと共に、酸素ガスを用いることが好ましい。賦活反応時に発生する揮発性ガスが酸素ガスと反応し燃焼することで、賦活に必要な熱量を維持することが可能となる。なお、揮発性ガスとしては、例えば、炭化物を賦活することによって発生する水素ガス及び一酸化炭素ガスなどの可燃性ガスが挙げられる。
活性ガスとして、過剰量の酸素ガスが流動炉に導入されると、揮発性ガスと反応しない余分な酸素ガスが生じる。その余分な酸素ガスは、炭化物と燃焼反応し、炭素質材料の細孔を破壊するおそれがある。そのため、賦活処理は、酸素ガスの量を好適な範囲に制御しながら行うことが好ましい。
活性ガスとして水蒸気ガスと酸素ガスとを用いた場合、それらの割合は、酸素ガス1容量%に対して、好ましくは水蒸気ガスが5容量%以上15容量%以下であり、より好ましくは水蒸気ガスが8容量%以上12容量%以下である。それらの割合が上記範囲にあることにより、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
活性ガスとして、水蒸気ガスと酸素ガスと二酸化炭素ガスとを用いた場合、水蒸気のガス分圧は、10容量%以上30容量%以下であることが好ましく、15容量%以上25容量%以下であることがより好ましい。酸素ガス分圧は、0.5容量%以上5容量%以下であることが好ましく、1容量%以上4容量%以下であることがより好ましい。二酸化炭素ガス分圧は、1容量%以上10容量%以下であることが好ましく、3容量%以上7容量%以下であることがより好ましい。なお、その他のガスとして、窒素などの不活性ガスが含まれていてもよい。その場合、不活性ガスの分圧は、55容量%以上88.5容量%以下であることが好ましく、64容量%以上81容量%以下であることがより好ましい。それらの割合が上記範囲にあることにより、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
活性ガスとして水蒸気ガスと酸素ガスとを用いた場合、それらの流量は、1分間当たり、合計量で10リットル(L)以上300リットル(L)以下であることが好ましい。
賦活処理の時間は、原料、賦活温度、及び製造設備などの条件によって適宜設定できる。賦活時間としては、例えば、20分間以上48時間以下であり、好ましくは30分間以上36時間以下であり、より好ましくは40分間以上24時間以下であり、更に好ましく45分間以上480分間以下であり、更により好ましく50分間以上360分間以下である。賦活時間が上記範囲にあることにより、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
賦活処理の温度は、好ましくは750℃以上1,200℃以下であり、より好ましくは800℃以上1,100℃以下であり、更に好ましくは870℃以上950℃以下である。賦活温度が上記範囲にあることにより、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
賦活処理を行うための賦活装置としては、例えば、図1の模式断面図で示すような流動炉が挙げられる。
図1に示すとおり、流動炉は、通常、最下層にガス導入口1~4と、その上層に配された流動層5と、その上層に配された可燃性ガスの燃焼層6と、その上層に配されたガス排出口8とを備える。ガス導入口1~4から導入されたガスは、ガスの主方向Aに向かって送気され、流動層5と可燃ガスの燃焼層6とを通風しながら、ガス排出口8から排出される。流動層5には、原料である炭化物が装入され、流動層5内で賦活されることで炭素質材料が製造される。
ガス導入口1~4は、水蒸気ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び窒素ガスのそれぞれのガスを流動炉に導入するための入口である。ガス導入口1~4は、それぞれ、水蒸気ガスの導入口、二酸化炭素ガスの導入口、窒素ガスの導入口、及び酸素ガスの導入口であることが好ましい。ガス導入口1~4がそのように配され、それぞれのガスが流動炉に導入されることにより、炭化物(原料)の賦活処理がより好適に進み、所望の炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。なお、図1では、ガス導入口が4つ配されているが、ガス導入口の数は、例えば、原料の種類、賦活の度合い、及び設備の大きさ等によって適宜設定できる。また、ガス導入口1~4に導入されるガス種も、例えば、原料の種類、賦活の度合い、及び設備の大きさ等によって適宜設定できる。
図1に示すように、流動炉は、酸素含有ガスを導入するための酸素含有ガス導入口7を備えることが好ましい。酸素含有ガス導入口7より酸素含有ガスを流動炉内に導入することで、揮発性ガスを効率よく燃焼させることができる。それにより、燃焼熱が発生し、その燃焼熱によって流動層5内の温度をより上昇させることができ、賦活をより効率的に進めることができる。
また、揮発性ガスが、酸素含有ガスと効率よく燃焼することで、ガス導入口1~4から導入される酸素ガスは、過剰になり難くなる。その結果、酸素ガスは、炭化物との燃焼反応をより好適に抑制することができるため、炭素質材料の細孔をより制御し易くなる。
そのような理由から、所望の細孔及び比表面積を有する炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
酸素含有ガス導入口7の位置は、流動炉内において、流動層5の上端に接しない位置にあり、可燃ガスの燃焼層6内に酸素含有ガスを導入できる位置にすることが好ましい。また、酸素含有ガス導入口7の向きは、ガスの主方向Aと平行であり、ガスの主方向Aと反対(すなわち、下流層側)にすることが好ましい。酸素含有ガス導入口7をそのように配することで、酸素含有ガスが、可燃ガスの燃焼層6内に好適に送風されるため、流動炉内の温度をより上昇させることが可能となる。それにより、より均一に炭化物を賦活させることができることから、所望の細孔径分布を有する炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
流動炉の材質としては、流動炉に用いられる材質であれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼が挙げられる。
このように、賦活装置として流動炉を用いることで、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料をより容易に製造できる傾向にある。
上記賦活工程により、賦活物が得られる。
炭素質材料の製造方法は、賦活工程の後に、賦活物を洗浄処理及び/又は乾燥処理等を行う、洗浄工程及び/又は乾燥工程等を有してもよい。これらの工程における条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。また、下記の洗浄工程及び乾燥工程を参照してもよい。
(洗浄工程)
炭素質材料は、賦活工程で得られた賦活物を洗浄する洗浄工程を経て得られることが好ましい。洗浄としては、水洗浄であることがより好ましい。そのような洗浄工程を経ることで、窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である炭素質材料を更に容易に製造できる傾向にある。
洗浄における温度及び時間は、目的とする炭素質材料が得られるように適宜調整すればよい。
(乾燥工程)
炭素質材料は、洗浄工程で得られた洗浄物を乾燥する乾燥工程を経て得られることが好ましい。
乾燥方法としては、特に限定されず、自然乾燥、加熱乾燥、及び熱風乾燥などの公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥方法としては、加熱及び/又は減圧する方法が好ましい。加熱にて乾燥する方法としては、乾燥ムラがなく、安定して乾燥できる点から、熱風による乾燥方法が好ましい。乾燥工程において、炭素質材料の水分率が20.0質量%以下になるまで乾燥することが好ましく、10.0質量%以下になるまで乾燥することがより好ましい。
加熱方法としては、例えば、静置型の定温乾燥機;静置型の熱風乾燥機;真空乾燥機;回転式のエバポレーター;コニカルドライヤー、ナウタードライヤー等の混合式の乾燥機等による加熱方法が挙げられる。加熱温度は、炭素質材料が硬化し、かつ、融解しない温度であればよく、例えば、40℃以上300℃以下が好ましい。
減圧方法としては、例えば、オイルポンプ、オイルレスポンプ、及びアスピレータ等を用いた減圧方法が挙げられる。減圧方法における圧力は、通常0.00001MPa以上0.05MPa以下である。
乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常1分以上20時間以下程度である。
このようにして得られた炭素質材料は、そのまま用いてもよいし、必要に応じて公知の方法によって、破砕、粉砕、及び分級による粒子サイズの調節;例えば、水、有機溶剤、酸水溶液、及びアルカリ水溶液を用いた、追加の洗浄による高純度化;追加の熱処理を用いた耐久性付与及び構造調整を実施して、炭素質材料を得てもよい。
[用途]
炭素質材料は、ブタン類を、除去、吸着、濃縮、及び回収する様々な用途に好適に用いることができる。そのような用途は、除去、吸着、濃縮、及び回収の操作が、適宜組み合わせる用途であってもよい。そのような用途としては、例えば、吸着フィルター、及び充填カラムが挙げられる。
炭素質材料は、n-ブタン、イソブタン、1,2-ブタジエン、及び1,3-ブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種のブタン類の吸着に好適に用いられる。炭素質材料は、n-ブタン、及びイソブタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の吸着により好適に用いられ、n-ブタンの吸着に更に好適に用いられる。
[ブタン類の吸着方法]
ブタン類の吸着方法は、炭素質材料に、ブタン類を吸着させる吸着工程を含む。ブタン類を吸着する方法としては、例えば、炭素質材料にブタン類を吸着させて、炭素質材料中にブタン類を濃縮させる方法が挙げられる。濃縮方法は、炭素質材料として本実施形態の炭素質材料を用いること以外に、公知のブタン類の吸着方法、濃縮方法、及び回収方法等と同様の工程を有していてもよい。
吸着工程では、例えば、ブタン類を炭素質材料と接触させることで、ブタン類を炭素質材料に吸着させる。
[装置]
装置は、炭素質材料を備える。装置は、炭素質材料として本実施形態の炭素質材料を用いること以外に、公知の装置と同様の構成を有していてもよい。
炭素質材料の機能は、これを含む装置によって利用される。装置は、処理装置であることが好ましい。なお、本明細書において、「処理装置」とは、VOC等に含まれるブタン類を、本実施形態の炭素質材料により、除去、吸着、濃縮、及び回収できる装置であれば、特に限定されない。そのような処理装置は、除去、吸着、濃縮、及び回収の操作を、適宜組み合わせる装置であってもよい。そのような処理装置としては、例えば、炭素質材料を含む、吸着フィルター、カラム、タンク又は浴、チューブ、カートリッジ、ボンベ、及びシート(以下、単に「炭素質材料を含むフィルター等」とも称す)を含む装置、並びに吸着装置、及び濃縮装置が挙げられる。
装置は、例えば、ブタン類と炭素質材料を接触させるための吸着部を備える。吸着部では、必要に応じて、本実施形態に係る炭素質材料以外の吸着材を含んでもよい。そのような吸着材としては、例えば、本実施形態に係る炭素質材料以外の活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、不織布、及び多孔性有機化合物が挙げられる。
処理装置は、炭素質材料を含む吸着フィルター等と共に、その他の吸着フィルターを備えてもよい。このようなその他の吸着フィルターとしては、例えば、ステンレス製、アルミニウム製、ブロンズ製、銅製、チタン製、及びニッケル製等を使用した金属製フィルター;ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアミド、及びフッ素系樹脂等を使用した樹脂フィルターが挙げられる。
また、処理装置は、バッチ式でも、連続式でもよく、炭素質材料は、どちらの様式にも用いることができる。
〔吸着フィルター〕
本実施形態の吸着フィルターは、本実施形態の炭素質材料を含む。また、吸着フィルターは、自動車用であることが好ましい。
吸着フィルターは、炭素質材料を含むことから、ブタン類に対して高い吸着性能を有する、そのため、例えば、吸着フィルターを自動車に設置することで、車内空間に浮遊するブタン類を効率よく除去することが可能である。
吸着フィルターは、炭素質材料と繊維状バインダーとを含むことが好ましい。
繊維状バインダーとしては、例えば、フィブリル化させることによって、炭素質材料を絡めて賦形できるものが挙げられる。そのような繊維状バインダーとしては、合成品であってもよく、天然品であってもよい。繊維状バインダーとしては、例えば、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、及びパルプなどが挙げられる。
繊維状バインダーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。繊維状バインダーとしては、ポリアクリロニトリル繊維、及び/又はパルプであることが好ましい。これらの繊維状バインダーを用いることで、吸着フィルターの密度及び吸着フィルターの強度をさらに上げ、性能低下を抑制することができる。
ブタン類に対してより高い吸着性能を有する炭素質材料が得られる傾向にあることから、吸着フィルターは、炭素質材料100質量部に対して、繊維状バインダーを好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下で含む。下限としては、通常、0.01質量部以上である。
なお、吸着フィルターが、後述する他の機能性成分を含む場合、フィルター組成についていう「炭素質材料100質量部に対して」は「炭素質材料と他の機能性成分の合計100質量部に対して」と読み替えて適用すればよい。
吸着フィルターは、本実施形態の効果が阻害されない限りにおいて、他の機能性成分を含んでもよい。そのような他の機能性成分としては、例えば、溶解性鉛を吸着除去できるチタノシリケート及びゼオライト系粉末などの鉛吸着材;イオン交換樹脂;キレート樹脂;抗菌性を付与するために銀イオン及び/又は銀化合物を含む各種吸着材などが挙げられる。
〔自動車用吸着フィルター〕
本実施形態の自動車用吸着フィルターは、本実施形態の炭素質材料を含む。自動車用吸着フィルターは、本実施形態の炭素質材料を含む以外、公知の自動車用吸着フィルターと同様の構成を有してもよい。自動車用吸着フィルターは、炭素質材料を含むことにより、ブタン類に対して高い吸着性能を有する。そのため、例えば、吸着フィルターを自動車に設置することで、車内空間に浮遊するブタン類を効率よく除去することが可能である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
〔評価方法〕
(1)細孔径0.80nm以下の細孔容積
・BELSORP-MAXを使用する窒素ガス吸着等温線の測定
比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製BELSORP(登録商標)-MAX(商品名))を使用し、炭素質材料を真空条件下で300℃及び3時間加熱した後に、温度77Kの条件下での窒素ガス吸着等温線を測定した。
・細孔容積の測定
窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出したミクロ孔の中で細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm)は、次のようにして算出した。具体的には、上記の「BELSORP-MAXを使用する窒素ガス吸着等温線の測定」により得られた窒素ガス吸着等温線の値を使用し、Caluculation modelとしてN at 77K carbon[slit pore/cyl.pore (QSDFT Ads.model)]を適用して細孔径分布を計算することで、細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)を算出した。
(2)充填密度
炭素質材料の充填密度(g/mL)は、JIS K1474(2014年)に準拠して測定した。具体的には、まず、炭素質材料を115±5℃の定温乾燥器(ヤマト科学(株)DVS402(商品名))で3時間乾燥した。その後、乾燥剤としてシリカゲルを使用したデシケーター中にて室温まで放冷し、放冷後の炭素質材料を得た。放冷後の炭素質材料を、充填密度測定容器((有)東陽電磁機械製作所製 型番TD-V5(商品名))の貯蔵漏斗に導入し、付属のバイブレータにて、炭素質材料を充填密度測定容器の100mLの標線まで充填した。充填後の炭素質材料の質量を0.1gの桁まで測定した。
(3)リアクティブブラック5価
炭素質材料を用いて、リアクティブブラック5価(g/L)を測定した。
具体的には、まず、炭素質材料を、体積基準の累積分布の50%粒子径(D50)が10.0μm以下程度になるよう粉砕し、115℃の定温乾燥器(ヤマト科学(株)DVS402(商品名))中で3時間乾燥した。その後、乾燥剤としてシリカゲルを使用したデシケーター中にて室温まで放冷し、放冷後の炭素質材料を得た。
一方、次のようにして、リン酸緩衝液とリアクティブブラック5(シグマアルドリッチ製)とを含む試験液Aを調製した。すなわち、まず、リン酸二水素カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)7.26gと、リン酸水素二ナトリウム・12水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)28.66gとを2Lの蒸留水に溶解させて、リン酸緩衝液(pH:7.0)を調製した。その後、得られたリン酸緩衝液1Lに対して、リアクティブブラック5を約0.5g以上1.2g以下の範囲で加えて試験液Aを調製した。なお、その際、リアクティブブラック5の量は、次のようにして調整した。すなわち、得られた試験液Aを蒸留水にて20倍希釈した溶液の吸光度が1.18以上1.23以下の範囲に入るようにリン酸緩衝液1Lに加えるリアクティブブラック5の量を適宜調整した。吸光度は波長594nmの吸光度であり、光路長10mmのガラスセルを用いて、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテク製ダブルビーム分光光度計U-2910(商品名))にて測定した。なお、上述のようにして得られた試験液Aを20倍に希釈した溶液を試験液Bとして、その試験液Bを下記の吸光度の測定に用いた。
次いで、共栓付き三角フラスコ100mLに、上記の放冷後の炭素質材料を任意の質量(下記式(II)による、ろ液中に含まれるリアクティブブラック5の残存率が10%程度となる量)だけ分取し、その炭素質材料を上記で調製した試験液A50mLに加え、振とう恒温槽(タイテック(株)製ウォーターバスシェーカーMM-10(商品名))を用いて、40℃の水浴中にて150回/分の速度で5時間振とうし、混合液を得た。その後、メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製DISMIC(登録商標)25HP045AN(商品名))を用いて、混合液をろ過することにより、ろ液を得た。
光路長10mmのガラスセルを用いて、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテク製ダブルビーム分光光度計U-2910(商品名))にて、得られた試験液Bとろ液について、それぞれの波長594nmにおける吸光度を測定した。それらの吸光度を用いて、下記式(I)により、炭素質材料1g当たりのリアクティブブラック5の吸着量(以下、単に「炭素質材料1g当たりのRB5吸着量(/g)」と称する)を算出した。
炭素質材料1g当たりのRB5吸着量(/g)=(試験液Bの波長594nmにおける吸光度×20-ろ液の波長594nmにおける吸光度)/炭素質材料の質量(g)・・・(I)
また、下記式(II)により、ろ液中に含まれるリアクティブブラック5の残存率(以下、単に「RB5残存率(%)」と称する)を算出した。
RB5残存率(%)=(ろ液の波長594nmにおける吸光度/試験液Bの波長594nmにおける吸光度×20)×100・・・(II)
次いで、横軸にRB5残存率(%)を、縦軸に炭素質材料1g当たりのRB5吸着量(/g)を用いて累乗近似曲線を作成した。その累乗近似式を用いて、リアクティブブラック5残存率が1%におけるリアクティブブラック5の吸着量(以下、単に「RB5残存率が1%におけるRB5吸着量(/g)」と称する)を求め、式(III)により、リアクティブブラック5価(g/L)を算出した。
リアクティブブラック5価(g/L)=(試験液Bの波長594nmにおける吸光度×20×0.99/RB5残存率が1%におけるRB5吸着量(/g))/0.05(L)・・・(III)
なお、式(III)中の0.05(L)は、試験液の量である。
(4)よう素吸着量(よう素吸着性能)
炭素質材料のよう素吸着量(mg/g)を測定及び算出した。
具体的には、よう素吸着量の測定は、JIS K1474(2014年)に準拠して行った。すなわち、まず、JIS Z8801-1に準拠して、45μmの網篩を90%以上通過するまで炭素質材料を粉砕し、115℃の定温乾燥器(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))中で3時間乾燥した。その後、乾燥剤としてシリカゲルを使用したデシケーター中で室温まで放冷し、放冷後の炭素質材料を得た。
一方、蒸留水約1Lに、よう化カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)25.0gと、よう素(富士フィルム和光純薬(株)製)13.0gとを溶解させ、よう素溶液とした。よう素溶液を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液(富士フィルム和光純薬(株)製)により滴定し、よう素溶液に適宜蒸留水を加えることで、0.05mol/Lのよう素溶液を調製した。
次いで、上記の放冷後の炭素質材料を任意量(下記ろ液の上澄み液中のよう素残留濃度が、およそ2.5g/Lとなる量)を秤量し、共栓付き三角フラスコ100mLに入れ、更に上記の0.05mol/Lのよう素溶液50mLを全量ピペットで加えた。室温(20℃以上30℃以下)にて、振とう機(タイテック(株)製中型振とう機レシプロシェーカーNR-10(商品名)))を使用して200回/分で15分振とうし、よう素を炭素質材料に吸着させ、混合液を得た。その後、セルロース混合エステルメンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製A045A025A(商品名))を用いて、混合液をろ過することにより、ろ液を得た。ろ液の上澄み液10mLを全量ピペットで採取し、0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液(富士フィルム和光純薬(株)製、ファクター:1.000)により滴定し、下記式(IV)により、よう素残留濃度を算出した。
よう素残留濃度(g/L)=滴定に用いた0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)×0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター×12.69/10・・・(IV)
下記式(V)により、炭素質材料1g当たりのよう素吸着量を算出した。
炭素質材料1g当たりのよう素吸着量=(10×0.05mol/Lのよう素溶液のファクター-滴定に用いた0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)×0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター)×12.69×5/炭素質材料の質量(g)・・・(V)
なお、0.05mol/Lのよう素溶液のファクターは、式(VI)により算出した。
0.05mol/Lのよう素溶液のファクター=(滴定に用いた0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)×0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター)/10・・・(VI)
フロインドリッヒの吸着等温式より、横軸をよう素残留濃度とし、縦軸を炭素質材料1g当たりのよう素吸着量とする吸着等温線を作成し、よう素残留濃度2.5g/Lにおける炭素質材料1g当たりのよう素吸着量(mg/g)を算出した。そのよう素吸着量をよう素吸着性能とした。
(5)ミクロ孔の平均細孔径
・細孔径2.0nm以下の比表面積の測定
上記の「(1)細孔径0.80nm以下の細孔容積」の項で得られた窒素吸着等温線を用いて、炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出したミクロ孔の中で細孔径2.0nm以下の比表面積(m/g)は、次のようにして算出した。具体的には、上記の「BELSORP-MAXを使用する窒素ガス吸着等温線の測定」により得られた窒素ガス吸着等温線の値を使用し、Caluculation modelとしてN at 77K carbon[slit pore/cyl.pore (QSDFT Ads.model)]を適用して細孔径分布を計算することで、細孔径2.0nm以下のミクロ孔の比表面積(m2/g)を算出した。
・細孔径2.0nm以下の細孔容積の測定
上記の「(1)細孔径0.80nm以下の細孔容積」の項で得られた窒素吸着等温線を用いて、炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出したミクロ孔の中で細孔径2.0nm以下の細孔容積(cm/g)は、次のようにして算出した。具体的には、上記の「BELSORP-MAXを使用する窒素ガス吸着等温線の測定」により得られた窒素ガス吸着等温線の値を使用し、Caluculation modelとしてN at 77K carbon[slit pore/cyl.pore (QSDFT Ads.model)]を適用して細孔径分布を計算することで、細孔径2.0nm以下の細孔容積(cm/g)を算出した。
・ミクロ孔の平均細孔径の算出方法
炭素質材料のミクロ孔の平均細孔径(nm)は、上記で得られた、ミクロ孔の比表面積とミクロ孔の細孔容積を用いて、以下の式(VII)から算出した。
ミクロ孔の平均細孔径(nm)=(ミクロ孔の細孔容積(cm/g)/ミクロ孔の比表面積(m/g))×2000・・・(VII)
(6)細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合
炭素質材料における細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合(%)を算出した。
具体的には、炭素質材料の細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合(%)は、上記の「(1)細孔径0.80nm以下の細孔容積」の項で得られた細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)と、上記の「(6)ミクロ孔の平均細孔径」の項で得られた細孔径2.0nm以下の細孔容積(cm/g)とを用いて、下記式(VIII)より算出した。
細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合(%)=細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)/細孔径2.0nm以下の細孔容積(cm/g)×100・・・(VIII)
(8)n-ブタン吸着量(n-ブタン吸着性能)
炭素質材料のn-ブタン吸着量(mg/g)を測定及び算出した。
具体的には、まず、JIS Z8801-1に準拠して、試験用篩を用いて、公称目開き0.600mm以上0.250mm以下の粒度範囲に炭素質材料を篩い分けて、粒度を揃えた。115±5℃の定温乾燥器(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))中で3時間、篩後の炭素質材料を乾燥した。その後、乾燥剤としてシリカゲルを使用したデシケーター中で室温まで放冷し、放冷後の炭素質材料を得た。
次いで、内径28mmのガラスカラム(岩田硝子工業(株)製)に、放冷後の炭素質材料0.492gを充填した。その後、25℃に保持された恒温液槽(ADVANTEC製LF-681(商品名))に、充填後のガラスカラムを入れて、ガラスカラム内に、相対湿度50%RTに調製した水蒸気ガスを、流量7.39L/分で30分間流通させて前処理を行った。
その後、ガスクロマトグラフ((株)島津製作所製GC-2014(商品名))に、前処理後のガラスカラムを設置して、試験ガスとして、相対湿度50%RTに調製したn-ブタンガス(濃度:80ppm)を、流量7.3L/分でカラム内に流通させた。カラムの通過前と通過後における、それぞれのn-ブタンガス濃度を測定しながら、カラム通過前のn-ブタン濃度(C)に対するカラム通過後のn-ブタン濃度(C)の破過率を算出し、その値が95%に達するまで試験を行った。なお、破過率は、下記式(IX)により算出した。
破過率(%)=カラム通過後のn-ブタン濃度(C)/カラム通過前のn-ブタン濃度(C)×100・・・(IX)
破過率が95%に達した時のn-ブタン吸着量(mg)と、ガラスカラムへの炭素質材料の充填量とから、下記式(X)を用いて、炭素質材料の1g当たりのn-ブタン吸着量(mg/g)を算出した。そのn-ブタン吸着量をn-ブタン吸着性能とした。
n-ブタン吸着量(mg/g)=破過率が95%に達した時のn-ブタン吸着量(mg)/ガラスカラムへの炭素質材料の充填量(g)・・・(X)
〔実施例1〕
(炭化工程)
温度600℃及び約2時間にて、フィリピン産のヤシ殻の炭化を行い、粉砕した後、JIS Z8801-1:2019で規定する標準篩用金網にて、70メッシュ(目開き寸法:243μm、西村金網製作所製)篩上14メッシュ篩下(目開き寸法:1.31mm、西村金網製作所製)を用いて、粒度(体積基準の累積分布の50%粒子径、D50)が405μmになるように調整を行うことで、粒状の炭化物を得た。
(賦活処理)
得られた炭化物を、図1に示すような、900℃に加熱した流動炉内に投入した。その後、活性ガス(水蒸気20容量%、酸素2容量%、二酸化炭素5容量%、及び窒素73容量%)を流動炉内に導入し、110分間賦活処理を行うことで賦活物を得た。
(洗浄工程及び乾燥工程等)
得られた賦活物を水で十分に洗浄して、乾燥させることで乾燥物を得た。その後、得られた乾燥物を粉砕して、活性炭である粉砕状の炭素質材料1を得た。
〔実施例2〕
賦活工程において、130分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料2を得た。
〔実施例3〕
賦活工程において、170分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料3を得た。
〔実施例4〕
賦活工程において、190分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料4を得た。
〔実施例5〕
賦活工程において、205分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料5を得た。
〔実施例6〕
賦活工程において、225分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料6を得た。
〔実施例7〕
賦活工程において、90分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料7を得た。
〔実施例8〕
賦活工程において、240分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料8を得た。
〔実施例9〕
賦活工程において、300分間賦活処理を行うこと以外は、実施例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料9を得た。
〔比較例1〕
(炭化工程)
温度600℃及び約2時間にて、フィリピン産のヤシ殻の炭化を行い、粉砕した後、JIS Z8801-1:2019で規定する標準篩用金網にて、70メッシュ(目開き寸法:243μm、西村金網製作所製)篩上14メッシュ篩下(目開き寸法:1.31mm、西村金網製作所製社製)を用いて、粒度(体積基準の累積分布の50%粒子径、D50)が405μmになるように調整を行うことで、粒状の炭化物を得た。
(賦活処理)
得られた炭化物を、900℃に加熱した炉内に攪拌羽が搭載されているロータリーキルン中に、ロータリーキルンの容積1m3に対して約0.06倍にて投入した。その後、回転数3.0rpmでキルンを回転させながら、活性ガス(水蒸気35容量%、酸素5容量%、二酸化炭素5容量%、及び窒素55容量%)をキルン内に導入し、直ぐに取り出すことで賦活物を得た。
(洗浄工程及び乾燥工程等)
得られた賦活物を水で十分に洗浄して、乾燥させることで乾燥物を得た。その後、得られた乾燥物を粉砕して、活性炭である粉砕状の炭素質材料10を得た。
〔比較例2〕
賦活工程において、170分間賦活処理を行うこと以外は、比較例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料11を得た。
〔比較例3〕
賦活工程において、220分間賦活処理を行うこと以外は、比較例1と同様にして、活性炭である粉砕状の炭素質材料12を得た。
〔比較例4〕
(炭化工程)
温度600℃及び約2時間にて、国内及びマレーシア産の木粉の炭化を行い、粉砕した後、JIS Z8801-1:2019で規定する標準篩用金網にて、20メッシュ(目開き寸法:870μm、西村金網製作所製)篩上10メッシュ篩下(目開き寸法:1.54mm、西村金網製作所製)を用いて、粒度(体積基準の累積分布の50%粒子径、D50)が1451μmになるように調整を行うことで、粒状の炭化物を得た。
(賦活処理)
得られた炭化物を、850℃に加熱した炉内に攪拌羽が搭載されているロータリーキルン中に、ロータリーキルンの容積1m3に対して約0.06倍にて投入した。その後、回転数3.0rpmでキルンを回転させながら、活性ガス(水蒸気50容量%、酸素10容量%、二酸化炭素35.0容量%、及び窒素5.0容量%)をキルン内に導入し、比表面積が1080m/gとなるまで賦活処理を行うことで賦活物を得た。
(洗浄工程及び乾燥工程等)
得られた賦活物を希塩酸で洗浄し、次いで残留した塩酸を除去するため水で十分に洗浄して、乾燥させることで乾燥物を得た。その後、得られた乾燥物を粉砕して、活性炭である粉砕状の炭素質材料13を得た。
〔比較例5〕
実施例1の賦活工程において、110分間を225分間に変更して、実施例1で得られた粒状の炭化物を賦活処理した。得られた賦活物を粉砕した後、JIS Z8801-1:2019で規定する標準篩用金網にて、60メッシュ(目開き寸法:243μm、西村金網製作所製)篩上30メッシュ篩下(目開き寸法:550μm、西村金網製作所製)を用いて、粒度(体積基準の累積分布の50%粒子径、D50)が334μmになるように調整を行うことで、粒状の賦活物を得た。
その後、予め95℃に加温した0.5N塩酸に、得られた賦活物を浸漬し、加温しながら95℃にて20分間静置した。次いで、浸漬後の賦活物を、pHが6~7程度になるまで水洗した後、賦活物の含水量が3質量%以下になるまで乾燥させることで乾燥後の活性炭を得た。なお、乾燥後の活性炭の比表面積は、1,050m/gであった。次いで、乾燥後の活性炭に、濃度が18質量%のスルファニル酸水溶液(スルファニル酸:富士フィルム和光純薬(株)製試薬特級グレード、スルファニル酸1モルに対して、水酸化ナトリウム0.95モルを含む水溶液)を噴霧し、スルファニル酸を活性炭に添着させることで添着品1を得た。得られた添着品1をそのまま室温にて30分間放置した後、濃度が46質量%のクエン酸水溶液を噴霧し、クエン酸を活性炭に添着させることで添着品2を得た。得られた添着品2をそのまま室温にて60分間放置することで添着炭を得た。次いで、添着炭を90℃の定温乾燥機(ヤマト科学(株)DVS402(商品名))中で24時間乾燥することで、添着炭(活性炭100部に対して、スルファニル酸8.0質量部と、クエン酸4.4質量部とを含む)である炭素質材料14を得た。
Figure 0007453463000003
本実施形態の炭素質材料は、ブタン類を、除去、吸着、濃縮、及び回収する様々な用途に好適に用いることができる。
A…ガスの主方向、1, 2, 3, 4…ガス導入口、5…流動層、6…可燃性ガスの燃焼層、7…酸素含有ガス導入口、8…ガス排出口。

Claims (10)

  1. 窒素吸着等温線から炭素質材料1g当たりのQSDFT法により算出した細孔径0.80nm以下の細孔容積(cm/g)が0.23cm/g以上0.35cm/g以下であり、JIS K1474(2014年)に準拠して測定される充填密度が0.43g/mL以上0.65g/mL以下であり、リアクティブブラック5価が3.0g/L以上60.0g/L以下である、炭素質材料。
  2. よう素吸着量が710mg/g以上1,500mg/g以下である、請求項1に記載の炭素質材料。
  3. 前記細孔径0.80nm以下の細孔容積の割合が61%以上92%以下である、請求項1に記載の炭素質材料。
  4. ミクロ孔の平均細孔径が0.60nm以上0.80nm以下である、請求項1に記載の炭素質材料。
  5. n-ブタン、イソブタン、1,2-ブタジエン、及び1,3-ブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の吸着に用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の炭素質材料。
  6. 原料を炭化して炭化物を得る炭化工程と、
    前記炭化物を賦活処理して賦活物を得る賦活工程と、を含む、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の炭素質材料の製造方法。
  7. 前記賦活物を洗浄する洗浄工程を更に含む、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記原料が、ヤシ殻である、請求項6に記載の製造方法。
  9. 請求項1~4のいずれか一項に記載の炭素質材料を含む、吸着フィルター。
  10. 前記吸着フィルターが自動車用である、請求項9に記載の吸着フィルター。
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