JP2010074917A - プロテクタおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】車体固定部を有するプロテクタの製造コストを抑えつつ、車体固定部の強度を高く保持できる。
【解決手段】車両に配索されるワイヤハーネスを挿通した状態で車体に固定されるプロテクタであって、断面凹形状のプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の上面開口に取り付ける蓋材とを、夫々樹脂板を真空成形または圧空成形して形成しており、前記プロテクタ本体の側壁外面に車体固定部を一体的に突設し、該車体固定部に射出成形品からなる別部材の締付板を取り付けている。
【選択図】図１

Description

本発明はプロテクタおよびその製造方法に関し、詳しくは、車体固定部を有するプロテクタの製造コストを抑えつつ、車体固定部の強度を高く保持できるものである。

ワイヤハーネスを挿通して車体に固定されるプロテクタとして、従来よりさまざまなタイプのプロテクタが用いられている。
例えば、特開平８−２５１７５６号公報（特許文献１）には、図８に示すように、上面が開口されたプロテクタ本体２と上面を開閉する蓋材３とからなるプロテクタ１が示されており、プロテクタ本体２の側壁には車体固定部４が外方に突出するように一体的に成形されている。このような構造を有するプロテクタ１は一般に射出成形により形成されており、前記車体固定部４のように大きな負荷に耐えうる強度が求められる部分も、射出成形によれば所要の厚さや形状に精度よく成形することができるため、必要な強度を保持させることが可能となる。
しかし、射出成形によるプロテクタの形成は、金型費用が高く、射出成形機の構造も複雑であるため、プロテクタの製造コストが増大するという問題がある。

一方、真空成形や圧空成形は、成形機の構造が射出成形機よりシンプルで、成形金型も雌型または雄型のいずれか一方でよいため、製造コストを削減することは可能である。しかし、前記真空成形あるいは圧空成形は、一枚の軟化させた樹脂板を真空状態あるいは圧縮空気による加圧状態で金型に密着させて成形する方式であるため、プロテクタを真空成形または圧空成形で作製すると、車体固定部のように角部の多い複雑形状を有する部分の厚さが薄くなり、車体固定部の形状によっては形成することができない場合もある。また、たとえ形成できたとしても車体固定部として必要な強度を持たせることが難しいという問題がある。

特開平８−２５１７５６号公報

本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、車体固定部を有するプロテクタの製造コストを抑えつつ、車体固定部の強度を高く保持できることを課題としている。

前記課題を解決するため、第１の発明は、車両に配索されるワイヤハーネスを挿通した状態で車体に固定されるプロテクタであって、
断面凹形状のプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の上面開口に取り付ける蓋材とを、夫々樹脂板を真空成形または圧空成形して形成しており、
前記プロテクタ本体の側壁外面に車体固定部を一体的に突設し、該車体固定部に射出成形品からなる別部材の締付板を取り付けていることを特徴とするプロテクタを提供している。

前記のように、プロテクタ本体および蓋材をそれぞれ真空成形または圧空成形して形成することにより、金型費用を抑制し、プロテクタの製造コストを大幅に削減することができる。また、寸法の大きなプロテクタでも比較的容易に製造することが可能となる。

一方、前記真空成形または圧空成形により、車体固定部を一体的に突設したプロテクタ本体を形成する場合、プロテクタ本体から突出させた車体固定部付近の厚さが薄くなって、車体固定部として必要な強度を保持できないおそれがある。しかしながら、前記のように、車体固定部に射出成形品からなる別部材の締付板を固着しているため、該締付板によって車体固定部をしっかりと補強することができる。よって、前記締付板が固着された車体固定部に大きな負荷が加わっても、車体固定部が損傷することなく、ワイヤハーネスを挿通したプロテクタを車体に安定保持することが可能となる。

前記別体の締付板の肉厚はプロテクタ本体の肉厚より大であり、該締付板に前記車体の係止孔に挿入係止するクランプを予め突設しており、あるいは、該締付板に車体に締結するボルト孔を設けていることが好ましい。

前記のように、プロテクタ本体の肉厚より大きな肉厚を有する締付板を車体固定部に固着することにより、ワイヤハーネスを挿通したプロテクタを安定保持できる十分な強度を車体固定部に持たせることができる。特に、前記締付板の肉厚を、プロテクタ本体の最大厚さ部分の１５０〜２５０％程度とすることが好ましい。

また、真空成形や圧空成形で形成が困難なクランプやボルト孔を、前記のように、射出成形で形成される締付板に予め設けておくと、該締付板と車体固定部との固着によって、前記締付板に設けた寸法精度の高いクランプおよびボルト孔を、車体固定部のクランプおよびボルト孔として利用することが可能になる。よって、車体固定部の車体への保持力を向上させることができる。

前記クランプを除く締付板の表面に前記樹脂板が被覆されていると共に、該締付板の外周面に設けた溝に前記樹脂板が嵌合していることが好ましい。

前記のように、締付板の表面を真空成形または圧空成形した樹脂板で被覆していると共に、締付板の外周面に設けた溝にも前記樹脂板を嵌合させる構造とすることによって、前記樹脂板から形成される車体固定部と締付板との固着表面積を大きくして固着力を高めることができる。
なお、前記締付板を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ナイロン等を用いることが好ましい。

第２の発明は、前記プロテクタの製造方法であって、
厚さ１ｍｍ〜３ｍｍのポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートから選択される樹脂板を用いると共に、予め射出成形した前記締付板を用い、
プロテクタ本体成形用の金型の車体固定部形成部に前記締付板をセットし、
前記樹脂板を加熱して軟化させ、プロテクタ本体成形用の金型の表面に前記軟化させた樹脂板を被せ、該状態で樹脂板に真空または圧空を負荷して前記金型および前記締付板に沿わせ、前記締付板をインサート成形した状態で前記プロテクタ本体を形成していることを特徴とするプロテクタの製造方法を提供している。

前記のように、プロテクタ本体用の金型の車体固定部形成部に前記締付板をセットした状態で、軟化させた樹脂板を金型表面に被せて真空成形または圧空成形することにより、締付板をプロテクタ本体の車体固定部にインサート成形して締付板と車体固定部とを一体化させたプロテクタ本体を容易に形成することができる。

具体的には、樹脂板を所定温度に加熱、軟化させた状態で、締付板をセットしたプロテクタ本体成形用の金型に樹脂板を被せ、前記金型に設けた複数の吸引孔より真空吸引して樹脂板を前記金型および締付板に密着させることによって、プロテクタ本体を形成することができる（真空成形）。
また、前記のように加熱、軟化させた樹脂板に、圧力が９８ＫＰａ〜４９０ＫＰａ程度の圧縮空気を上方から吹き付けて前記金型および締付板に樹脂板を密着させることによっても、プロテクタ本体を形成することができる（圧空成形）。
なお、樹脂板の加熱温度としては樹脂板の熱変形温度以上が好ましく、樹脂板の材質がポリプロピレンの場合には、加熱温度を１００〜１３０℃程度とすることが好ましい。
また、プロテクタの蓋材もプロテクタ本体と同様、真空または圧空を負荷して形成することが好ましい。

前記締付板に突設したクランプと対応する位置の樹脂板には、該クランプを露出させる開口を設けていることが好ましい。

前記のように、締付板に突設したクランプと対応する位置の樹脂板に予め開口を設けておくことで、真空成形または圧空成形後においても前記クランプは樹脂板で被覆されることなく露出され、寸法精度の高いクランプ形状を保つことができる。

前述したように、本発明によれば、プロテクタ本体および蓋材をそれぞれ真空成形または圧空成形して形成することにより、金型費用を抑制し、プロテクタの製造コストを大幅に削減することができる。
また、前記のように、車体固定部に射出成形品からなる別部材の締付板を固着することによって車体固定部をしっかりと補強することができ、前記締付板が固着された車体固定部に大きな負荷が加わっても、車体固定部が損傷することなくワイヤハーネスを挿通したプロテクタを車体に安定保持することが可能となる。

以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図１乃至図７は本実施形態を示す。
図１は、車両に配索されるワイヤハーネスＷ／Ｈを挿通した状態で車体３０に固定されるプロテクタ１０を示しており、断面凹形状のプロテクタ本体１１と、プロテクタ本体１１の上面開口に取り付ける蓋材１２とからプロテクタ１０を構成している。
なお、図２は、図１のプロテクタ本体１１を裏返した状態を示している。

図１、図２に示すように、プロテクタ本体１１の両側壁１１ａ外面には、車体固定部１３、１４をそれぞれ一体的に突設している。車体固定部１３、１４には、底板部１３ａ、１４ａを設けていると共に、該底板部１３ａ、１４ａの両側には側板部１３ｂ、１４ｂを設けている。

車体固定部１３、１４の底板部１３ａ、１４ａには、射出成形品からなる別部材の締付板１５、１６（ポリプロピレンまたはナンロン製）を固着して、底板部１３ａ、１４ａと一体化させている。
締付板１５、１６のうち、一方の締付板１５には、車体３０の係止穴（図示せず）に挿入係止するクランプ１５ａを予め突設している一方、他方の締付板１６には、車体３０に締結するボルトＢを通すボルト孔１６ａを予め設けている。
また、締付板１５、１６の肉厚はプロテクタ本体１１の肉厚より大としており、本実施形態においては、締付板１５、１６の肉厚をプロテクタ本体１１の最大厚さ部分の２００％程度としている。
さらに、締付板１５、１６の外周面には、車体固定部１３、１４を形成する樹脂板１７が嵌合できる溝１５ｂ、１６ｂを連続して設けている（図３、図５参照）。

前記車体固定部１３、１４を突設したプロテクタ本体１１は、樹脂板１７を真空成形することによって形成している。プロテクタ本体１１を形成するための樹脂板１７としては、本実施形態では、厚さ１．５ｍｍ程度のポリプロピレン製の樹脂板１７を用いている。
図３は、プロテクタ本体成形用の金型（雄型）１８の車体固定部形成部１８ａ、１８ｂに締付板１５、１６をそれぞれセットした状態を示している。また、図４は、前記締付板１５、１６をセットした金型１８を用いて、プロテクタ本体１１の真空成形を行う工程を模式的な断面図で示している。

まず、樹脂板１７をヒータ１９で熱変形温度以上（本実施形態では１３０℃程度）に加熱して軟化させ［図４（Ａ）］、軟化した樹脂板１７を前記締付板１５、１６をセットしたプロテクタ本体成形用金型１８の表面上に被せてセットする［図４（Ｂ）］。
続いて、金型１８に設けた複数の吸引孔２０から空気を吸引して真空状態にし、樹脂板１７を金型１８に密着させて成形する［図４（Ｃ）］。この際、金型１８の車体固定部形成部１８ａ、１８ｂにセットした締付板１５、１６の表面にも樹脂板１７が密着すると共に、締付板１５、１６の外周面に設けた溝１５ｂ、１６ｂに樹脂板１７が嵌合する。（図６）。一方、締付板１５に突設したクランプ１５ａと対応する位置の樹脂板１７には、クランプ１５ａを露出させる開口１７ａを設けているため、クランプ１５ａは樹脂板１７で被覆されることなく露出した状態となっている(図２参照)。

前記のようにしてプロテクタ本体１１の形状に樹脂板１７が賦形されると共に、締付板１５、１６を車体固定部１３、１４にインサート成形した成形品１７０を、熱変形温度未満の温度まで冷却した後、該成形品１７０を金型１８から取り外す［図４（Ｄ）］。不要部分のトリミングや樹脂板１７側のボルト孔１７ｂの加工等を経て、図１、図２に示すようなプロテクタ本体１１が完成する。
なお、プロテクタ１０の蓋材１２も、プロテクタ本体１１と同様の樹脂板を用いて真空成形することにより形成することができる。

図１に示すプロテクタ本体１１にワイヤハーネスＷ／Ｈを挿通した後、蓋材１２をプロテクタ本体１１の上面開口に取り付ける。締付板１５をインサート成形した車体固定部１３の底板部１３ａから下方に突出させたクランプ１５ａを車体３０の係止孔（図示せず）に挿入係止すると共に、締付板１６をインサート成形した車体固定部１４の連通したボルト孔１７ｂ、１６ａにボルトＢを通して車体３０に締結固定することにより、ワイヤハーネスＷ／Ｈを挿通したプロテクタ１０の車体３０への取り付けが完了する（図７）。

前記のように、プロテクタ本体１１および蓋材１２をそれぞれ真空成形して形成することにより、金型費用を抑制し、プロテクタ１０の製造コストを大幅に削減することができる。
また、前記のように、車体固定部１３、１４に射出成形品からなる別部材の締付板１５、１６を固着することによって車体固定部１３、１４をしっかりと補強することができ、締付板１５、１６が固着された車体固定部１３、１４に大きな負荷が加わっても、車体固定部１３、１４が損傷することなくワイヤハーネスＷ／Ｈを挿通したプロテクタ１０を車体３０に安定保持することが可能となる。

特に、プロテクタ本体１１の肉厚より大きな肉厚を有する締付板１５、１６を車体固定部１３、１４に固着することにより、ワイヤハーネスＷ／Ｈを挿通したプロテクタ１０を安定保持できる十分な強度を車体固定部１３、１４に持たせることができる。

また、前記のように、射出成形で形成される締付板１５、１６にクランプ１５ａやボルト孔１６ａを予め設けておくと、締付板１５、１６と車体固定部１３、１４との固着によって、寸法精度の高いクランプ１５ａおよびボルト孔１６ａを、車体固定部１３、１４のクランプおよびボルト孔として利用することが可能になる。よって、車体固定部１３、１４の車体３０への保持力を向上させることができる。

さらに、前記のように、締付板１５、１６の表面を真空成形した樹脂板１７で被覆していると共に、締付板１５、１６の外周面に設けた溝１５ｂ、１６ｂにも樹脂板１７を嵌合させる構造とすることによって、樹脂板１７から形成される車体固定部１３、１４と締付板１５、１６との固着表面積を大きくし固着力をさらに高めることができる。

また、プロテクタ本体１１を製造する際には、前記のように、プロテクタ本体用の金型１８の車体固定部形成部１８ａ、１８ｂに締付板１５、１６をセットした状態で、軟化させた樹脂板１７を金型１８表面に被せて真空成形することにより、締付板１５、１６を車体固定部１３、１４の底板部１３ａ、１４ａにインサート成形して締付板１５、１６と車体固定部１３、１４とを一体化させたプロテクタ本体１１を容易に形成することができる。

なお、本実施形態ではプロテクタ本体１１および蓋材１２を真空成形で形成しているが、金型１８にセットされた軟化した樹脂板１７の上方から圧力が９８ＫＰａ〜４９０Ｐａ程度の圧縮空気を吹き付けて樹脂板１７を金型１８に密着させる圧空成形で形成してもよい。

本実施形態のプロテクタの分解斜視図である。 プロテクタ本体を裏返した状態を示す概略斜視図である。 プロテクタ本体用の金型の車体固定部形成部に締付板をセットした状態を示す概略斜視図である。 （Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）は、真空成形工程を示す概略断面図である。 締付板を示す概略斜視図である。 締付板が樹脂板で被覆されている状態を示す概略断面図である。 ワイヤハーネスを挿通したプロテクタを車体に固定した状態を示す概略斜視図である。 従来例を示す図である。

符号の説明

１０ プロテクタ
１１ プロテクタ本体
１２ 蓋材
１３、１４ 車体固定部
１５、１６ 締付板
１５ａ クランプ
１６ａ ボルト孔
１５ｂ、１６ｂ 溝
１７ 樹脂板
１７ａ 開口
１７ｂ ボルト孔
１８ プロテクタ本体用の金型
１８ａ、１８ｂ 車体固定部形成部
１９ ヒータ
２０ 吸引孔
３０ 車体
１７０ 成形品

Claims (5)

1. 車両に配索されるワイヤハーネスを挿通した状態で車体に固定されるプロテクタであって、
   断面凹形状のプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の上面開口に取り付ける蓋材とを、夫々樹脂板を真空成形または圧空成形して形成しており、
   前記プロテクタ本体の側壁外面に車体固定部を一体的に突設し、該車体固定部に射出成形品からなる別部材の締付板を取り付けていることを特徴とするプロテクタ。
2. 前記別体の締付板の肉厚はプロテクタ本体の肉厚より大であり、該締付板に前記車体の係止孔に挿入係止するクランプを予め突設しており、あるいは、該締付板に車体に締結するボルト孔を設けている請求項１に記載のプロテクタ。
3. 前記クランプを除く締付板の表面に前記樹脂板が被覆されていると共に、該締付板の外周面に設けた溝に前記樹脂板が嵌合している請求項２に記載のプロテクタ。
4. 請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載のプロテクタの製造方法であって、
   厚さ１ｍｍ〜３ｍｍのポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートから選択される樹脂板を用いると共に、予め射出成形した前記締付板を用い、
   プロテクタ本体成形用の金型の車体固定部形成部に前記締付板をセットし、
   前記樹脂板を加熱して軟化させ、プロテクタ本体成形用の金型の表面に前記軟化させた樹脂板を被せ、該状態で樹脂板に真空または圧空を負荷して前記金型および前記締付板に沿わせ、前記締付板をインサート成形した状態で前記プロテクタ本体を形成していることを特徴とするプロテクタの製造方法。
5. 前記締付板に突設したクランプと対応する位置の樹脂板には、該クランプを露出させる開口を設けている請求項４に記載のプロテクタの製造方法。

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