JP2010073411A - 高分子電解質膜の製造方法、高分子電解質膜及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温・無加湿の条件下においても安定して高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜、このような高分子電解質膜を製造でき、かつ、高い生産性を有する高分子電解質膜の製造方法、及び、このような高分子電解質を使用することにより高い発電特性を有する燃料電池を提供する。
【解決手段】酸性官能基を有する(炭化水素系)高分子電解質と、遊離酸、遊離酸とルイス塩基との混合物、または、遊離酸と有機塩との混合物のいずれか1種からなる遊離酸源とを、極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を湿式製膜することにより、高分子電解質に遊離酸がドープされた高分子電解質膜を得る高分子電解質膜の製造方法が提供される。
【選択図】なし
【解決手段】酸性官能基を有する(炭化水素系)高分子電解質と、遊離酸、遊離酸とルイス塩基との混合物、または、遊離酸と有機塩との混合物のいずれか1種からなる遊離酸源とを、極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を湿式製膜することにより、高分子電解質に遊離酸がドープされた高分子電解質膜を得る高分子電解質膜の製造方法が提供される。
【選択図】なし
Description
本発明は、高分子電解質膜の製造方法、高分子電解質膜及び燃料電池に関する。
電気化学デバイスに応用可能であり、特に、次世代のクリーンエネルギーとして注目されている燃料電池においては、近年、100℃以上の高温における運転が可能となるような無加湿または低加湿下でプロトンが伝導可能な電解質膜の開発が活発に行われている。このように、水に依存しない高温下でプロトン伝導が可能な電解質膜が提供されれば、燃料電池システムの簡略化が図られることから、家庭用コジェネレーション用途または自動車用用途として普及することが期待できる。
このような家庭用コジェネレーション用途または自動車用用途に好適なものとして、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)があるが、PEFCは、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜が触媒とガス拡散層等で構成される燃料極と酸素極によって挟まれた構造の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有しており、燃料極に水素ガスを、酸素極に空気または酸素を供給することによって次式の電気化学反応が生じ、起電力を得る仕組みである。
(燃料極)H2 → 2H+ + 2e−
(酸素極)2H+ + 1/2O2 + 2e− → H2O
(燃料極)H2 → 2H+ + 2e−
(酸素極)2H+ + 1/2O2 + 2e− → H2O
上述したプロトン伝導性を有する高分子電解質膜については、米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)や、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等が従来から知られている。これらの高分子電解質のプロトン伝導は、スルホン酸周囲の水分子が伝導に介在しているため、加湿等によって一定の湿潤状態で燃料電池に応用されるのが一般的である。そのため、運転温度は一般的に80℃以下とされ、この制限によって、触媒の一酸化炭素被毒などの問題が生じるため、選択的一酸化炭素除去が必要となり、燃料電池システムは、より複雑かつ高コストとならざるを得ない状況である。
このような問題に鑑み、100℃以上で駆動するPEFCに関する様々な提案がなされている。一般に、100℃以上での発電においては触媒活性が向上することから、一酸化炭素による被毒の程度が軽減される可能性が示唆され、ひいては燃料電池寿命が向上するとされている。しかし、150℃程度といった中温域における運転においては水分子が安定に存在できないことから、リン酸をドープしたポリベンズイミダゾールを中心とした、水媒体に依存しない電解質系を用いた燃料電池が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような燃料電池では、150℃程度といった中温域でも発電が可能とされている。
また、特許文献1に記載の技術の他に、プロトン移動媒体として常温溶融塩を用いた燃料電池が考案されている。このような燃料電池としては、例えば、一般的な常温溶融塩をプロトンの移動媒体とする発明(例えば、特許文献2を参照)を中心に、常温溶融塩は液体であることから、この常温溶融塩を固定化する方法として、ポリアリレンとの組み合わせ(例えば、特許文献3を参照)や、ポリベンズイミダゾール類等との組み合わせ(例えば、特許文献4を参照)、Zwitter ion型溶融塩および酸との組合せ(例えば、特許文献5及び特許文献6を参照)等が検討されているが、これまで考案されている常温溶融塩を用いた発電に関する特性確認における分極特性はきわめて低い、という問題があった。例えば、特許文献2では、分極曲線は示されているものの、継続的に発電したデータが示されておらず、特許文献3では、発電可能な根拠となるデータは示されていない。また、特許文献5、6には、電気化学測定結果として、継続的な通電試験の結果が記載されているものの、その特性は極めて低い。
一方、従来のNafion(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸型高分子電解質に、リン酸をドープした技術(例えば、非特許文献1を参照)、一般的な常温溶融塩をドープした電解質(例えば、非特許文献2を参照)、または、スルホン化ポリスルホンにトリアゾールをドープした強酸−弱塩基の組合せ(例えば、非特許文献3を参照)に関してもプロトン移動の有無を確認はしているものの、発電特性に関しては十分に触れられておらず、その技術の燃料電池への実用化においては十分な検証が行われていないのが実情である。
ただし、非特許文献1における検討に見られるように、リン酸などの酸性のプロトン媒体を用いた場合においては、上述したリン酸をドープしたポリベンズイミダゾールに見られるように、発電に必要なプロトンの移動は比較的容易に達成できることから、発電も可能と考えられる。
しかしながら、非特許文献1に記載された技術のように、高分子電解質を溶解させた溶液から高分子電解質膜を湿式製膜した後にリン酸をドープする方法は、一般的であるものの、ドープ前後での膜の物理的特性が大きく変化すること、平衡状態となるまでの量のリン酸をドープするために長時間を要すること等の問題がある。また、リン酸をドープした高分子電解質を用いて直接高分子電解質膜を製膜する連続工程を考えた場合、リン酸をドープするための容器および高分子電解質膜を支持する支持ロールなどを耐酸性の材質を用いて設けなければならず、高分子電解質膜の生産性を高くするためには様々な問題をクリアしなければならない、というのが現状である。
これに対して、非特許文献4に開示されているように、高分子電解質を構成するモノマーの合成からリン酸をドープした高分子電解質膜を用いて膜−電極接合体(Membrane−Electrode Assembly、MEA)を製造するまでの工程を連続的に行う技術が提案されている。しかし、この方法では、耐酸性の大規模な設備が必要となる上、溶媒であるポリリン酸の加水分解工程等の条件を試行錯誤により設定することが必要となることが予想される。
また、100℃以上無加湿において燃料電池の運転が可能な高分子電解質としては、上述したようなリン酸をドープした高分子電解質膜以外に、溶融塩などの検討も行われている(例えば、非特許文献5を参照)ものの、十分な発電特性が得られていないのが現状である。
さらに、上述の溶融塩などをプロトン移動媒体として利用する方法としては、溶融塩中でモノマーを重合する方法(例えば、非特許文献6を参照)や、高分子電解質と溶液状態で相溶させた溶液を湿式製膜する方法(例えば、非特許文献7を参照)が提案されている。これらの自立膜を得る方法は、高分子電解質膜にリン酸をドープする方法と比較して、一般的に生産性が高いと考えられる。しかし、その電解質膜自体の特性においては、実用的な発電特性を得るには更なるプロトン伝導機構の調査や開発の必要性が求められる。
このように、いずれの酸ドープ型の電解質や溶融塩型の電解質においても、例えば100℃以上の高温かつ無加湿の条件で十分なプロトン伝導性や発電特性を有するものや、酸ドープ型の電解質膜の製造において高い生産性を有する方法は提案されていない、という問題があった。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、高温・無加湿の条件下においても安定して高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜、このような高分子電解質膜を製造でき、かつ、高い生産性を有する高分子電解質膜の製造方法、及び、このような高分子電解質を使用することにより高い発電特性を有する燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、酸性官能基を有する所定の高分子電解質は、リン酸等の遊離酸と極性有機溶媒中で相溶でき、これにより、酸ドープ型の高分子電解質膜を湿式製膜により製膜できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のある観点によれば、酸性官能基を有する(炭化水素系)高分子電解質と、遊離酸、遊離酸とルイス塩基との混合物、または、遊離酸と有機塩との混合物のいずれか1種からなる遊離酸源とを、極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を湿式製膜することにより、前記高分子電解質に前記遊離酸がドープされた高分子電解質膜を得る高分子電解質膜の製造方法が提供される。
ここで、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記高分子電解質の主骨格は、芳香族系エンジニアリングプラスチックであることが好ましい。前記芳香族系エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエーテルスルホンまたはポリベンズイミダゾールが挙げられる。
また、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記遊離酸は、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物であることが好ましい。前記酸性無機リン化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸またはホスホン酸が挙げられ、前記酸性有機リン化合物としては、例えば、ビニルホスホン酸またはエチルホスホン酸が挙げられる。
また、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記有機塩は、第四級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
また、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記極性有機溶媒は、アミド系有機溶媒であることが好ましい。前記アミド系有機溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルホルムアミドが挙げられる。
また、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記高分子電解質の酸性官能基のモル数nAと、前記遊離酸のモル数nBと、前記ルイス塩基のモル数nCとが、nA+nB>nCの関係を満たすことが好ましい。
また、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記極性溶媒中に、前記高分子電解質100質量部に対して20質量部以上80質量部以下の前記遊離酸を溶解させることが好ましい。
また、前記高分子電解質膜の製造方法において、前記遊離酸は、ビニルホスホン酸であり、前記湿式製膜後に、前記高分子電解質にドープされた前記ビニルホスホン酸を重合させてもよい。この場合、前記極性有機溶媒中にさらに多官能重合性化合物を溶解させた前記混合溶液を湿式製膜し、当該湿式製膜後に、前記多官能重合性化合物と前記ビニルホスホン酸とを共重合させてもよい。前記多官能重合性化合物としては、例えば、多官能ビニル化合物、ジアクリレート、またはジメタクリレートが挙げられる。
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、酸性官能基を有する芳香族系エンジニアリングプラスチックを主骨格とし、かつ、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物からなる遊離酸がドープされた高分子電解質膜が提供される。
ここで、前記高分子電解質膜において、前記芳香族系エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエーテルスルホンまたはポリベンズイミダゾールが挙げられる。
また、前記高分子電解質膜において、前記酸性無機リン化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸またはホスホン酸が挙げられ、前記酸性有機リン化合物としては、例えば、ビニルホスホン酸またはエチルホスホン酸が挙げられる。
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、上述した高分子電解質膜を用いた膜電極接合体を備える燃料電池が提供される。
本発明によれば、酸性官能基を有する所定の高分子電解質とリン酸等の遊離酸と極性有機溶媒中で相溶させ、酸ドープ型の高分子電解質膜を湿式製膜により製膜することにより、高温・無加湿の条件下においても安定して高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜、このような高分子電解質膜を製造でき、かつ、高い生産性を有する高分子電解質膜の製造方法、及び、このような高分子電解質を使用することにより高い発電特性を有する燃料電池を提供することが可能となる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
(湿式製膜による酸ドープ型の高分子電解質膜の製造について)
まず、本発明の説明をする前に、本発明者らが本発明を完成させる際に得た知見について説明する。
まず、本発明の説明をする前に、本発明者らが本発明を完成させる際に得た知見について説明する。
<現状について>
上述したように、従来は、リン酸等の酸をドープした高分子電解質膜を湿式製膜により直接得ることはできなかった。この理由としては、一般的な知見にて文献等で開示されているわけではないが、一般的には、リン酸等の酸をドープまたは保持できる高分子材料は、非特許文献3や非特許文献8に記載された高分子構造に見られるように、高分子骨格に含窒素化合物を含む構造になっている。このような高分子材料は、高分子自体が塩基性を有する場合、この塩基性の高分子(例えば、ポリベンズイミダゾール:PBI)に対してドープする酸が相互作用を示し、一種の塩構造を形成するために安定的に酸を保持できると考えられている。従って、高分子自体は湿式製膜の際の溶媒に可溶であっても、溶媒中に高分子が溶解した高分子溶液に酸を混合すると、高分子が塩基性を有する場合には、高分子溶液中の塩基と混合した酸とにより、即座に酸塩基複合体を形成する。この酸塩基複合体は、溶媒に不溶であるので、溶液中に沈殿を生じてしまう。また、この酸塩基複合体は、成形性に乏しく、複合体自体を膜状にするのは極めて困難である。
上述したように、従来は、リン酸等の酸をドープした高分子電解質膜を湿式製膜により直接得ることはできなかった。この理由としては、一般的な知見にて文献等で開示されているわけではないが、一般的には、リン酸等の酸をドープまたは保持できる高分子材料は、非特許文献3や非特許文献8に記載された高分子構造に見られるように、高分子骨格に含窒素化合物を含む構造になっている。このような高分子材料は、高分子自体が塩基性を有する場合、この塩基性の高分子(例えば、ポリベンズイミダゾール:PBI)に対してドープする酸が相互作用を示し、一種の塩構造を形成するために安定的に酸を保持できると考えられている。従って、高分子自体は湿式製膜の際の溶媒に可溶であっても、溶媒中に高分子が溶解した高分子溶液に酸を混合すると、高分子が塩基性を有する場合には、高分子溶液中の塩基と混合した酸とにより、即座に酸塩基複合体を形成する。この酸塩基複合体は、溶媒に不溶であるので、溶液中に沈殿を生じてしまう。また、この酸塩基複合体は、成形性に乏しく、複合体自体を膜状にするのは極めて困難である。
また、一方で、リン酸と高分子との複合化は比較的古くから検討されていることが知られている。例えば、非特許文献9や非特許文献10においては、N−N−ジメチルホルムアミド(DMF)とリン酸のゲルと称して、ポリビニリデンフロライドまたはポリグリシジルメタクリレートを高分子骨格に用いて電解質を形成し、プロトン伝導体を供することが可能な技術が開示されている。これらの電解質は、非特許文献9や非特許文献10で開示されている材料構成およびその評価温度の範囲から見ても明らかなように、高温に耐えうる電解質ではない。また、これらの電解質の高分子構造は、いずれも塩基性ユニットを含む構造でもないので、溶媒中における高分子電解質と酸との相溶を可能としている。しかし、非特許文献9および非特許文献10の技術における高分子の役割は、ポリビニリデンフロライドまたはポリグリシジルメタクリレートのような高分子骨格を用いて、DMFとリン酸のゲルを保持することに過ぎず、燃料電池に使用した場合の発電特性などに関しては全く検討されていない。
以上のように、いずれの酸ドープ型の高分子電解質膜においても、湿式製膜により高分子電解質が溶解した溶液から直接高分子電解質膜が得られるという高い生産性を有し、かつ、得られた高分子電解質膜が高温・無加湿の条件下で安定して高いプロトン伝導度を有するものは提案されていない。また、このような酸ドープ型の高分子電解質膜を用いた燃料電池が高温・無加湿の条件下で安定して優れた発電特性を有するものも提案されていない。
このような現状に対して、本発明者らは、高温・無加湿の条件下で安定して高いプロトン伝導度を有する高分子電解質を湿式製膜により直接得るための方法について行った検討について以下に説明する。
<高分子電解質膜の作製条件についての検討>
まず、高分子電解質にドープさせる酸の一例としてポリリン酸を使用し、塩基性の極性有機溶媒に対する溶解性を調査した実験について説明する。この実験では、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と記載する。)、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と記載する。)、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する。)の3種の極性有機溶媒に、ポリリン酸を溶解させた。ポリリン酸の極性有機溶媒への添加量は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%とした。この結果を下記の表1に示す。なお、下記表1において、○は(室温(25℃)で)可溶、△は60℃で可溶、×は不溶であることをそれぞれ示している。
まず、高分子電解質にドープさせる酸の一例としてポリリン酸を使用し、塩基性の極性有機溶媒に対する溶解性を調査した実験について説明する。この実験では、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と記載する。)、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と記載する。)、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する。)の3種の極性有機溶媒に、ポリリン酸を溶解させた。ポリリン酸の極性有機溶媒への添加量は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%とした。この結果を下記の表1に示す。なお、下記表1において、○は(室温(25℃)で)可溶、△は60℃で可溶、×は不溶であることをそれぞれ示している。
表1に示すように、NMPおよびDMFは、室温ではポリリン酸を20質量%までは溶解させることができ、60℃ではポリリン酸を30質量%まで溶解させることができた。一方、DMAcは、ポリリン酸が10質量%でも溶解させることはできなかった。この結果より、ポリリン酸を溶解させるには、極性有機溶媒としてNMPおよびDMFを使用することが好ましいことがわかる。
次に、酸性官能基を有する高分子電解質の一例としてスルホン酸基を有する高分子を使用し、塩基性の極性有機溶媒に対する溶解性を調査した実験について説明する。この実験では、使用した極性有機溶媒は、ポリリン酸の場合と同様に3種の溶媒を使用し、これらの極性有機溶媒にそれぞれ、スルホン酸基を有する高分子の一例として、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを溶解させた。スルホン酸基を有する高分子の極性有機溶媒への添加量は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%とした。この結果を下記の表2に示す。なお、下記表1において、○は可溶、×は不溶であることをそれぞれ示している。また、△は、可溶であるが粘性が非常に高く、攪拌が困難な状態を示している。
表2に示すように、NMPは、10〜40質量%において可溶であるが、30〜40質量%において粘性が高くなった。また、DMAcは、10〜40質量%において可溶であるが、40質量%において粘性が高くなった。さらに、DMFは、10〜30質量%において可溶であるが、30質量%において粘性が高くなった。この結果から、高分子電解質を溶解させるには、極性有機溶媒としてDMAc、NMPを使用することが好ましく、DMAcが特に好ましいということがわかる。
ところで、湿式製膜により直接酸がドープされた高分子電解質膜を製膜するためには、高分子電解質とそれにドープさせる酸の双方が極性有機溶媒中に溶解している必要がある。しかし、DMAcは、上記表1で示したように、ポリリン酸を溶解させることはできないことから、ポリリン酸及びスルホン酸基を有する高分子電解質の双方を溶解させるためには、NMPが最も好ましい溶媒といえる。
以上のような検討結果を得た後に、本発明者らがさらに検討を進めたところ、スルホン酸基を有する高分子電解質を溶解させたDMAcは、ポリリン酸を溶解させることができるという知見を得ることができ、この知見に基づき、本発明者らは本発明を完成させた。以下、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法、およびこの製造方法により得られた高分子電解質膜とこれを利用した燃料電池について詳細に説明する。
[本発明に係る高分子電解質膜の製造方法について]
本発明に係る高分子電解質膜の製造方法は、酸性官能基を有する高分子電解質と、遊離酸源とを極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を湿式製膜することにより、高分子電解質に遊離酸がドープされた高分子電解質膜を得るものである。より詳細には、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法は、大きく分けて、以下の4つの工程からなる。
(1)溶液調製工程
(2)製膜工程
(3)予備乾燥工程
(4)乾燥工程
本発明に係る高分子電解質膜の製造方法は、酸性官能基を有する高分子電解質と、遊離酸源とを極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を湿式製膜することにより、高分子電解質に遊離酸がドープされた高分子電解質膜を得るものである。より詳細には、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法は、大きく分けて、以下の4つの工程からなる。
(1)溶液調製工程
(2)製膜工程
(3)予備乾燥工程
(4)乾燥工程
(溶液調製工程について)
まず、(1)溶液調製工程について説明する。溶液調製工程では、酸性官能基を有する高分子電解質(例えば、スルホン酸基を有する高分子化合物)及び遊離酸(例えば、ポリリン酸)等を極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を調製する。この混合溶液は、酸性官能基を有する高分子と遊離酸とを極性有機溶媒に添加し、メカニカルスターラーやマグネチックスターラーなどを用いて攪拌することにより調製する。もちろん、攪拌に用いる器具は、メカニカルスターラーやマグネチックスターラーには限定されず、高分子および遊離酸を極性溶媒中で十分に混合して溶解できるものであれば他の器具を用いてもよい。また、混合溶液の調製の際、攪拌により気泡が発生することもあるので、真空脱泡や遠心脱泡などにより、攪拌中の混合溶液を脱泡することが好ましい。以下に、混合溶液の調製に使用する原料について詳細に説明する。
まず、(1)溶液調製工程について説明する。溶液調製工程では、酸性官能基を有する高分子電解質(例えば、スルホン酸基を有する高分子化合物)及び遊離酸(例えば、ポリリン酸)等を極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を調製する。この混合溶液は、酸性官能基を有する高分子と遊離酸とを極性有機溶媒に添加し、メカニカルスターラーやマグネチックスターラーなどを用いて攪拌することにより調製する。もちろん、攪拌に用いる器具は、メカニカルスターラーやマグネチックスターラーには限定されず、高分子および遊離酸を極性溶媒中で十分に混合して溶解できるものであれば他の器具を用いてもよい。また、混合溶液の調製の際、攪拌により気泡が発生することもあるので、真空脱泡や遠心脱泡などにより、攪拌中の混合溶液を脱泡することが好ましい。以下に、混合溶液の調製に使用する原料について詳細に説明する。
<酸性官能基を有する高分子電解質について>
本発明の溶液調製工程に使用される酸性官能基を有する高分子電解質としては、特に限定はされないが、この高分子電解質にドープさせる酸との極性溶媒への相溶性や製膜の際の加工性、耐熱性等を考慮すると、主骨格が芳香族系エンジニアリングプラスチックであることが好ましい。この芳香族系エンジニアリングプラスチックとしては、芳香属性を有するエンジニアリングプラスチックであれば特に限定はされないが、例えば、酸性官能基としてスルホン酸基を有するものとして、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリスルホン、スルホン化芳香族ポリイミド、スルホン化芳香族ポリアミド、スルホン化ポリカーボネート、スルホン化ポリエチレンテレフタレート、スルホン化ポリアリレート、スルホン化ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
本発明の溶液調製工程に使用される酸性官能基を有する高分子電解質としては、特に限定はされないが、この高分子電解質にドープさせる酸との極性溶媒への相溶性や製膜の際の加工性、耐熱性等を考慮すると、主骨格が芳香族系エンジニアリングプラスチックであることが好ましい。この芳香族系エンジニアリングプラスチックとしては、芳香属性を有するエンジニアリングプラスチックであれば特に限定はされないが、例えば、酸性官能基としてスルホン酸基を有するものとして、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリスルホン、スルホン化芳香族ポリイミド、スルホン化芳香族ポリアミド、スルホン化ポリカーボネート、スルホン化ポリエチレンテレフタレート、スルホン化ポリアリレート、スルホン化ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
また、酸性官能基として、上記のスルホン酸基の他に、例えば、リン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、スルホニルアミド基などが挙げられるが、特に、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基が好ましい。
<遊離酸源について>
本発明において、「遊離酸源」とは、遊離酸、遊離酸とルイス塩基との混合物、または、遊離酸と有機塩との混合物のいずれか1種からなるものをいう。本発明において使用される遊離酸としては特に限定はされず、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硫酸、メチルスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホニルアミドスルホン酸など様々な酸が挙げられるが、この中でも特に、熱安定性の観点から、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物であることが好ましい。このような酸性無機リン化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸などが挙げられ、この中でも特に、リン酸、ポリリン酸またはホスホン酸が好ましい。また、酸性有機リン化合物としては、例えば、ビニルホスホン酸に代表されるアリルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸等に代表されるアルキルホスホン酸、または、メチルリン酸エステル、エチルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル等に代表される酸性リン酸エステルなどが挙げられ、この中でも特に、ビニルホスホン酸またはエチルホスホン酸が好ましい。
本発明において、「遊離酸源」とは、遊離酸、遊離酸とルイス塩基との混合物、または、遊離酸と有機塩との混合物のいずれか1種からなるものをいう。本発明において使用される遊離酸としては特に限定はされず、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硫酸、メチルスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホニルアミドスルホン酸など様々な酸が挙げられるが、この中でも特に、熱安定性の観点から、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物であることが好ましい。このような酸性無機リン化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸などが挙げられ、この中でも特に、リン酸、ポリリン酸またはホスホン酸が好ましい。また、酸性有機リン化合物としては、例えば、ビニルホスホン酸に代表されるアリルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸等に代表されるアルキルホスホン酸、または、メチルリン酸エステル、エチルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル等に代表される酸性リン酸エステルなどが挙げられ、この中でも特に、ビニルホスホン酸またはエチルホスホン酸が好ましい。
また、本発明において、遊離酸と混合して使用可能なルイス塩基としては、例えば、イミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾールのようなアゾール系化合物、ピリジン、ピリダジン、ピリミジ、ピラジン、トリアジン等の含窒素複素六員環化合物、キノリン、キノキサリン、インドール、フェナジン等の含窒素縮合多環複素環化合物、プリン、ウラシル、チミン、シトシン、アデニングアニン等の核酸塩基などが挙げられる。
また、本発明において、遊離酸と混合して使用可能な有機塩としては、有機化合物カチオン及びオキソ酸アニオンからなる中性塩が挙げられる。有機化合物カチオンとしては、通常、ヘテロ環式化合物のカチオン類、特には1〜5個のヘテロ原子を含む3〜6員環のヘテロ環式化合物のカチオン類、殊にはヘテロ原子として1〜5個の窒素原子を含む3〜6員環化合物のカチオン類などが挙げられ、中でもイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が好ましい。また、鎖状の第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン等も用いることができる。
上記カチオンの中でもイミダゾリウムカチオンや鎖状の第四級アンモニウムカチオンが特に好ましく、その中でも1,3−置換イミダゾリウムカチオン、更には下記一般式(1)で表されるイミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
上記一般式(1)において、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜30のアルキル基である。R2は、より好ましくは炭素数1〜25、さらに好ましくは炭素数1〜20、最も好ましくは炭素数1〜16のアルキル基である。
上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
すなわち、本発明における有機塩としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムジハイドロジェンホスファート(DMIP)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジハイドロジェンホスファート(BMIP)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムジハイドロジェンホスファート(HMIP)、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムジハイドロジェンホスファート(MOIP)、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムジハイドロジェンホスファート(C12MIP)、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムジハイドロジェンホスファート(C16MIP)、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート(C12MIS)等が挙げられる。
<極性有機溶媒について>
本発明の溶液調製工程に使用される極性有機溶媒としては、酸性官能基を有する高分子電解質とこれにドープさせる酸の相溶性を考慮すると、例えば、含窒素化合物であるアミド系有機溶媒であることが好ましい。このようなアミド系有機溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、2-ピロリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、この中でも特に、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルホルムアミドが好ましい。
本発明の溶液調製工程に使用される極性有機溶媒としては、酸性官能基を有する高分子電解質とこれにドープさせる酸の相溶性を考慮すると、例えば、含窒素化合物であるアミド系有機溶媒であることが好ましい。このようなアミド系有機溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、2-ピロリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、この中でも特に、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルホルムアミドが好ましい。
<ルイス塩基の混合量について>
極性有機溶媒中に、高分子電解質と、遊離酸およびルイス塩基の混合物とを添加する場合には、高分子電解質中の酸性官能基のモル数nAと、遊離酸のモル数nBと、ルイス塩基のモル数nCとが、nA+nB>nCの関係を満たすようにすることが好ましい。これは、混合溶液のpHを酸性側に偏らせることにより、電荷のキャリアとなるプロトンを生成するためである。
極性有機溶媒中に、高分子電解質と、遊離酸およびルイス塩基の混合物とを添加する場合には、高分子電解質中の酸性官能基のモル数nAと、遊離酸のモル数nBと、ルイス塩基のモル数nCとが、nA+nB>nCの関係を満たすようにすることが好ましい。これは、混合溶液のpHを酸性側に偏らせることにより、電荷のキャリアとなるプロトンを生成するためである。
<高分子電解質と遊離酸の配合比について>
また、本発明の溶液調製工程においては、極性溶媒中に溶解させる高分子電解質と遊離酸との配合比は、高分子電解質100質量部に対して遊離酸が20質量部以上80質量部以下であることが好ましい。この配合比とした理由については、後述する実施例に基づいて規定したものであるので、実施例において説明する。
また、本発明の溶液調製工程においては、極性溶媒中に溶解させる高分子電解質と遊離酸との配合比は、高分子電解質100質量部に対して遊離酸が20質量部以上80質量部以下であることが好ましい。この配合比とした理由については、後述する実施例に基づいて規定したものであるので、実施例において説明する。
(製膜工程について)
次に、(2)製膜工程について説明する。製膜工程では、溶液調製工程で調製された混合溶液を用いて湿式製膜により、遊離酸がドープされた高分子電解質膜を直接製膜する。より詳細には、本発明の製膜工程では、溶液調製工程で調製された混合溶液を、公知のコーティング方法を用いて基材上にキャスティングすることにより高分子電解質膜を製膜する。コーティング方法としては、例えば、ダイコータ、コンマコータ(登録商標)、ドクターブレード、アプリケーションロールなどを使用して基材にキャスティングする方法が挙げられる。また、混合溶液をキャスティングする基材としては、例えば、PET(poly(ethylene terephthalate))やポリイミド(ガラス)などを使用できる。
次に、(2)製膜工程について説明する。製膜工程では、溶液調製工程で調製された混合溶液を用いて湿式製膜により、遊離酸がドープされた高分子電解質膜を直接製膜する。より詳細には、本発明の製膜工程では、溶液調製工程で調製された混合溶液を、公知のコーティング方法を用いて基材上にキャスティングすることにより高分子電解質膜を製膜する。コーティング方法としては、例えば、ダイコータ、コンマコータ(登録商標)、ドクターブレード、アプリケーションロールなどを使用して基材にキャスティングする方法が挙げられる。また、混合溶液をキャスティングする基材としては、例えば、PET(poly(ethylene terephthalate))やポリイミド(ガラス)などを使用できる。
(予備乾燥工程について)
続いて、(3)予備乾燥工程について説明する。予備乾燥工程では、製膜工程で基材上にキャスティングされた高分子電解質膜を、40〜80℃、好ましくは60℃程度で少なくとも10分以上(ブロア無しの場合)、好ましくは20分以上、さらに好ましくは40分程度乾燥させる。この予備乾燥工程は、高分子電解質膜の表面を形成させるとともに、高分子電解質膜中に含まれる極性有機溶媒の粗除去を目的としている。本発明者ら行った検討(後述の実施例を参照)によれば、乾燥手段としてホットプレートを用い、ブロア無しの無風状態の場合、予備乾燥を60℃で10分程度実施すると膜の表面が形成され、20分程度実施すると膜を基材上から剥離させることが可能となり、40分程度実施すると極性有機溶媒を80質量%以上揮発させることが可能となる。ここで、乾燥温度が高く、予備乾燥が速すぎると、表面形成が先に進んでバルク中の溶媒が抜けにくくなり不具合が生じる、あるいは、シワや応力緩和などの原因になるため、好ましくない。逆に、乾燥温度が低すぎると、乾燥に時間を要してしまい、生産性が著しく低下する。このような理由から、本発明では予備乾燥工程の条件を40〜80℃(好ましくは60℃程度)で少なくとも10分以上(ブロア無しの場合)、好ましくは20分以上、さらに好ましくは40分程度と規定した。
続いて、(3)予備乾燥工程について説明する。予備乾燥工程では、製膜工程で基材上にキャスティングされた高分子電解質膜を、40〜80℃、好ましくは60℃程度で少なくとも10分以上(ブロア無しの場合)、好ましくは20分以上、さらに好ましくは40分程度乾燥させる。この予備乾燥工程は、高分子電解質膜の表面を形成させるとともに、高分子電解質膜中に含まれる極性有機溶媒の粗除去を目的としている。本発明者ら行った検討(後述の実施例を参照)によれば、乾燥手段としてホットプレートを用い、ブロア無しの無風状態の場合、予備乾燥を60℃で10分程度実施すると膜の表面が形成され、20分程度実施すると膜を基材上から剥離させることが可能となり、40分程度実施すると極性有機溶媒を80質量%以上揮発させることが可能となる。ここで、乾燥温度が高く、予備乾燥が速すぎると、表面形成が先に進んでバルク中の溶媒が抜けにくくなり不具合が生じる、あるいは、シワや応力緩和などの原因になるため、好ましくない。逆に、乾燥温度が低すぎると、乾燥に時間を要してしまい、生産性が著しく低下する。このような理由から、本発明では予備乾燥工程の条件を40〜80℃(好ましくは60℃程度)で少なくとも10分以上(ブロア無しの場合)、好ましくは20分以上、さらに好ましくは40分程度と規定した。
(乾燥工程について)
続いて、(4)乾燥工程について説明する。乾燥工程(以下、「本乾燥」という場合がある。)では、予備乾燥工程で膜表面が形成された高分子電解質膜を、110℃以上150℃以下(好ましくは130℃以下)で少なくとも20分以上(ブロア無しの場合)乾燥させる。この乾燥工程は、高分子電解質膜中に含まれる水分や極性有機溶媒の除去を目的としている。本発明者ら行った検討(後述の実施例を参照)によれば、乾燥手段としてオーブンを用い、ブロア無しの無風状態の場合、110℃以上150℃以下において20分以上乾燥させると、高分子電解質膜中に含まれる水分や極性有機溶媒が揮発し、十分に乾燥させることが可能となる。このような結果から、本発明では乾燥工程の条件を110℃以上150℃以下で少なくとも20分以上と規定した。
続いて、(4)乾燥工程について説明する。乾燥工程(以下、「本乾燥」という場合がある。)では、予備乾燥工程で膜表面が形成された高分子電解質膜を、110℃以上150℃以下(好ましくは130℃以下)で少なくとも20分以上(ブロア無しの場合)乾燥させる。この乾燥工程は、高分子電解質膜中に含まれる水分や極性有機溶媒の除去を目的としている。本発明者ら行った検討(後述の実施例を参照)によれば、乾燥手段としてオーブンを用い、ブロア無しの無風状態の場合、110℃以上150℃以下において20分以上乾燥させると、高分子電解質膜中に含まれる水分や極性有機溶媒が揮発し、十分に乾燥させることが可能となる。このような結果から、本発明では乾燥工程の条件を110℃以上150℃以下で少なくとも20分以上と規定した。
(作用効果について)
フィルム状の高分子電解質膜を成型した後に、この膜に遊離酸をドープするプロセスは、従来は、バッチプロセスであり、高分子電解質膜が多量の遊離酸を吸収するため、酸が電解質膜の表面に遊離したりしてしまうという問題があった。また、高分子電解質膜が膨潤する酸が平衡状態となる平衡膨潤まで多量に酸をドープしなければ、プロトン伝導度が不十分となる。従って、高分子電解質膜を長時間酸に浸漬させなければならず、生産性が低下するとともに、膜の機械的強度も低下する、という問題があった。
フィルム状の高分子電解質膜を成型した後に、この膜に遊離酸をドープするプロセスは、従来は、バッチプロセスであり、高分子電解質膜が多量の遊離酸を吸収するため、酸が電解質膜の表面に遊離したりしてしまうという問題があった。また、高分子電解質膜が膨潤する酸が平衡状態となる平衡膨潤まで多量に酸をドープしなければ、プロトン伝導度が不十分となる。従って、高分子電解質膜を長時間酸に浸漬させなければならず、生産性が低下するとともに、膜の機械的強度も低下する、という問題があった。
一方、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法によれば、高分子および遊離酸を極性有機溶媒中に相溶させ、キャスト法によりフィルムを製膜することが可能となる。そのため、均一なドープ膜(酸がドープされた高分子電解質膜)をフィルム製膜後直接得ることができる。従って、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法によれば、酸がドープされた高分子電解質膜の生産性を向上させることができる。また、本発明では、高分子として、酸性官能基(例えば、スルホン酸基)を有する高分子を使用しており、この酸性官能基がプロトン伝導に寄与する。また、ドープする酸と高分子中の酸性官能基とのインターラクションが弱いため、低い酸のドープ率でも高いプロトン伝導度を有する高分子電解質膜が得られる。このように、酸のドープ率が低くできることから、高分子の平衡膨潤まで酸をドープする必要が無いので、本発明の方法により製造された高分子電解質膜は、高い機械的強度を有することができる。
(二次加工について)
本発明の高分子電解質膜の製造方法においては、遊離酸としてビニルホスホン酸を使用した場合には、製膜後の高分子電解質膜を二次加工により半固体化させてもよい。すなわち、製膜工程の後に、高分子電解質にドープされたビニルホスホン酸を重合させることにより、膜の強度を向上させてもよい。これにより、製膜された高分子電解質膜の機械的強度を向上させることができる。ビニルホスホン酸を重合させる方法としては、例えば、製膜されたフィルム状の高分子電解質膜に、紫外光、β線、γ線、電子線、またはこれらの組み合わせを照射する方法、あるいは、重合開始剤を用いる方法などを用いることができるが、特に限定はされない。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾイソブチレートに代表されるアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシドに代表される過酸化物系重合開始剤、2,2,6,6−テトラピペリジニルオキシルに代用されるラジカルリビング重合開始剤、紫外光による重合においては、Irgacure651, 184, 369に代表される光重合開始剤等を使用することができる。
本発明の高分子電解質膜の製造方法においては、遊離酸としてビニルホスホン酸を使用した場合には、製膜後の高分子電解質膜を二次加工により半固体化させてもよい。すなわち、製膜工程の後に、高分子電解質にドープされたビニルホスホン酸を重合させることにより、膜の強度を向上させてもよい。これにより、製膜された高分子電解質膜の機械的強度を向上させることができる。ビニルホスホン酸を重合させる方法としては、例えば、製膜されたフィルム状の高分子電解質膜に、紫外光、β線、γ線、電子線、またはこれらの組み合わせを照射する方法、あるいは、重合開始剤を用いる方法などを用いることができるが、特に限定はされない。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾイソブチレートに代表されるアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシドに代表される過酸化物系重合開始剤、2,2,6,6−テトラピペリジニルオキシルに代用されるラジカルリビング重合開始剤、紫外光による重合においては、Irgacure651, 184, 369に代表される光重合開始剤等を使用することができる。
また、上述した溶液調製工程において、極性有機溶媒中に、高分子電解質、遊離酸源に加えて、さらに多官能重合性化合物を溶解させた混合溶液を調製し、この混合溶液を湿式製膜により製膜した後に、多官能重合性化合物とビニルホスホン酸とを共重合させてもよい。このように、多官能重合性化合物とビニルホスホン酸とを共重合させることにより、ビニルホスホン酸の水溶性成分を低下させることができるとともに、製膜された高分子電解質膜の機械的強度を向上させることができる。これにより、発電中における生成水への酸性分の流出が原因とされる電池内部抵抗の増加が抑制され、長期運転が可能となる。ビニルホスホン酸を重合させる方法としては、例えば、製膜されたフィルム状の高分子電解質膜に、紫外光、β線、γ線、電子線、またはこれらの組み合わせを照射する方法、あるいは、重合開始剤を用いる方法などを用いることができる。また、多官能重合性化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルフェニルフォスフィン、ジビニルシロキサン等のような多官能ビニル化合物、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等のような多官能アクリレート化合物などを使用することができる。
[本発明に係る高分子電解質膜の構造について]
以上、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法について詳細に説明したが、続いて、このような方法で製造された本発明に係る高分子電解質膜の構造について説明する。
以上、本発明に係る高分子電解質膜の製造方法について詳細に説明したが、続いて、このような方法で製造された本発明に係る高分子電解質膜の構造について説明する。
本発明に係る高分子電解質膜は、酸性官能基を有する芳香族系エンジニアリングプラスチックを主骨格とし、かつ、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物からなる遊離酸がドープされたものである。ここで、芳香族系エンジニアリングプラスチックとして、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾールなどを使用できる点、酸性無機リン化合物として、例えば、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸などを使用できる点、酸性有機リン化合物として、例えば、ビニルホスホン酸、エチルホスホン酸などを使用できる点については、上述したので詳細な説明を省略する。
(作用効果について)
以上のような本発明に係る高分子電解質膜によれば、上述したように、高分子電解質膜の主骨格となる高分子として、酸性官能基(例えば、スルホン酸基)を有する高分子を使用しており、この酸性官能基がプロトン伝導に寄与する。また、ドープする酸と高分子中の酸性官能基とのインターラクションが弱いため、本発明に係る高分子電解質膜は、低い酸のドープ率でも高いプロトン伝導度を有することができる。また、このように、酸のドープ率が低くできることから、高分子の平衡膨潤まで酸をドープする必要が無いので、本発明に係る高分子電解質膜は、高い機械的強度を有することができる。
以上のような本発明に係る高分子電解質膜によれば、上述したように、高分子電解質膜の主骨格となる高分子として、酸性官能基(例えば、スルホン酸基)を有する高分子を使用しており、この酸性官能基がプロトン伝導に寄与する。また、ドープする酸と高分子中の酸性官能基とのインターラクションが弱いため、本発明に係る高分子電解質膜は、低い酸のドープ率でも高いプロトン伝導度を有することができる。また、このように、酸のドープ率が低くできることから、高分子の平衡膨潤まで酸をドープする必要が無いので、本発明に係る高分子電解質膜は、高い機械的強度を有することができる。
また、遊離酸としてビニルホスホン酸を用い、製膜後にビニルホスホン酸を重合させた場合には、芳香族系エンジニアリングプラスチックを主骨格とする高分子電解質にドープされたビニルホスホン酸が重合され、膜の機械的強度を向上させることができる。さらに、多官能重合性化合物を用いて、ビニルホスホン酸と共重合させた場合には、膜の機械的強度が向上するのみならず、ビニルホスホン酸の水溶性成分を低下させることができ、これにより、発電中における生成水による酸性分の流出が回避可能となり、長期運転が可能となる。
[本発明に係る燃料電池について]
本発明に係る燃料電池は、上述した高分子電解質膜を用いた膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備える。本発明に係る高分子電解質膜は、高温(例えば150℃程度)・無加湿の条件下で、安定して高いプロトン伝導性および機械的強度を有するので、これを用いた本発明に係る燃料電池は、起電力特性、電流−電圧特性、電池寿命等の発電特性に優れるものとなる。
本発明に係る燃料電池は、上述した高分子電解質膜を用いた膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備える。本発明に係る高分子電解質膜は、高温(例えば150℃程度)・無加湿の条件下で、安定して高いプロトン伝導性および機械的強度を有するので、これを用いた本発明に係る燃料電池は、起電力特性、電流−電圧特性、電池寿命等の発電特性に優れるものとなる。
このような本発明の燃料電池は、上述のようにして得た高分子電解質膜を用いて、公知の方法により製造することができる。
すなわち、例えば、PEFCの場合には、上述のようにして得た高分子電解質膜の両側を電極としての触媒層で挟み、さらにガス拡散層を設け、これらを一体化してMEAを製造する。次に、このMEAの両側を金属セパレータ等のセパレータで挟み、単位セルを構成し、この単位セルを複数並べることにより、燃料電池スタックを製造することができる。
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(高分子電解質と遊離酸の配合比に関する検討)
初めに、高分子電解質と遊離酸との配合比について本発明者らが検討した結果について説明する。
初めに、高分子電解質と遊離酸との配合比について本発明者らが検討した結果について説明する。
<実験例1>
まず、高分子電解質としてスルホン化した高分子の一例として、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを、遊離酸としてポリリン酸(以下、「PPA」と記載する。)を、極性有機溶媒としてDMAcを使用し、高分子100質量部に対するPPAの量を20〜160質量部としたときに、均一な混合溶液を調製できるPPAの量の範囲について検討した。その結果を下記表3に示す。なお、上述したように、通常は、PPAは、DMAcに対して不溶であるが、スルホン化した高分子を溶解させたDMAcに対しては溶解可能となる。
まず、高分子電解質としてスルホン化した高分子の一例として、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを、遊離酸としてポリリン酸(以下、「PPA」と記載する。)を、極性有機溶媒としてDMAcを使用し、高分子100質量部に対するPPAの量を20〜160質量部としたときに、均一な混合溶液を調製できるPPAの量の範囲について検討した。その結果を下記表3に示す。なお、上述したように、通常は、PPAは、DMAcに対して不溶であるが、スルホン化した高分子を溶解させたDMAcに対しては溶解可能となる。
上記表3には、高分子に対するPPAの配合比(質量部)、DMAcおよびPPAの量(g)、ならびに調製後の混合溶液の状態を示した。均一な高分子電解質膜を得るためには、均一な混合溶液を得る必要があるのだが、表3に示すように、均一な混合溶液を得るためには、スルホン化した高分子に対するPPAの量を20質量部以上80質量部以下とすることが好ましく、80質量部とすることが特に好ましいことがわかった。
また、上記のようにして調製した混合溶液をキャスト法により製膜した結果を下記の表4に示す。本実験例における高分子電解質膜は、調製した混合溶液を約0.5cm3使用し、基板上にギャップ500μmでキャストし、乾燥させて製膜した。また、乾燥は、ホットプレート上にて60℃で1時間の予備乾燥の後、さらに、オーブン内にて120℃で30分間行った。
上記表4には、高分子に対するPPAの配合比(質量部)、得られた高分子電解質膜の膜厚および膜の状態を示した。表4に示すように、スルホン化した高分子に対するPPAの量を20質量部以上80質量部以下において、リン酸の外部への浸み出しがなく、特に、PPAの量が80質量部において、均一な膜が得られることがわかった。
<実験例2>
実験例2では、極性有機溶媒としてNMPを用いること以外は、実験例1と同様にして、均一な混合溶液を調製できるPPAの量の範囲について検討した。その結果を下記表5に示す。
実験例2では、極性有機溶媒としてNMPを用いること以外は、実験例1と同様にして、均一な混合溶液を調製できるPPAの量の範囲について検討した。その結果を下記表5に示す。
上記表5には、高分子に対するPPAの配合比(質量部)、NMPおよびPPAの量(g)、ならびに調製後の混合溶液の状態を示した。表5に示すように、均一な混合溶液を得るためには、スルホン化した高分子に対するPPAの量を20質量部以上80質量部以下とすることが好ましいことがわかった。なお、PPAの量が100質量部の場合でも均一な混合溶液を得ることができたが、粘度が非常に高くほとんど流動性がないため、基板へのキャストが困難であった。従って、均一な高分子電解質膜を得るという観点からは、スルホン化した高分子に対するPPAの量を80質量部以下とすることが好ましい。また、プロトン伝導度の観点からはPPAの量が多いほど有利なのだが、PPAが120質量部を超えると基板へのキャストができなくなるため、高分子電解質膜を得ることができない。
上記表3および表5に示した結果からわかるように、PPAに対する溶解性が異なるDMAcとNMPのいずれを用いた場合でも、スルホン化した高分子に対するPPAの配合比については、ほぼ同様の結果が得られた。
また、上記のようにして調製した混合溶液を、実験例1と同様にキャスト法により製膜した結果、表6に示した通り、スルホン化した高分子に対するPPAの量を20質量部以上80質量部以下において、リン酸の外部への浸み出しがなく、特に、PPAの量が80質量部において、均一な膜が得られることがわかった。
(予備乾燥時間に関する検討)
次に、予備乾燥工程における乾燥時間について本発明者らが検討した結果について説明する。
次に、予備乾燥工程における乾燥時間について本発明者らが検討した結果について説明する。
<実験例3>
本実験例では、ポリイミドガラス基板にキャストした混合溶液(ここでは、高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)20質量%をDMAcに溶解させたDMAc溶液に、高分子質量に対して60質量%となるようにPPAを配合した溶液)をホットスターラー上で乾燥させ、溶媒の揮発量を調査した。溶媒の揮発量は、乾燥時間10分、20分、30分、40分、50分および60分の時点における膜の質量の変化量(減少量)を測定し、乾燥前の膜の質量に対する膜の質量の変化量の割合を、揮発した溶媒の割合として示した。また、本実験は、ブロワーが無い無風状態で行った。その結果を下記表7に示した。
本実験例では、ポリイミドガラス基板にキャストした混合溶液(ここでは、高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)20質量%をDMAcに溶解させたDMAc溶液に、高分子質量に対して60質量%となるようにPPAを配合した溶液)をホットスターラー上で乾燥させ、溶媒の揮発量を調査した。溶媒の揮発量は、乾燥時間10分、20分、30分、40分、50分および60分の時点における膜の質量の変化量(減少量)を測定し、乾燥前の膜の質量に対する膜の質量の変化量の割合を、揮発した溶媒の割合として示した。また、本実験は、ブロワーが無い無風状態で行った。その結果を下記表7に示した。
表7に示すように、乾燥時間が10分を経過すると、高分子電解質膜の表面が形成され、20分を経過すると、ガラス基板上からフィルムを剥離させることが可能となった。すなわち、少なくとも10分を60℃で乾燥し、後工程の本乾燥へ送る必要があることがわかった。また、予備乾燥後に、キャストに用いた基材を剥離して、本乾燥で両面からブロワーからの風を当てて乾燥させるのであれば、予備乾燥は、少なくとも20分以上必要であるといえる。逆に、基材(バックフィルム)を付着させたまま、後工程の本乾燥へ送るのであれば、予備乾燥は10分程度で十分であることがわかった。
(本乾燥温度に関する検討)
次に、予備乾燥の後の乾燥(本乾燥)工程における乾燥温度について本発明者らが検討した結果について説明する。
次に、予備乾燥の後の乾燥(本乾燥)工程における乾燥温度について本発明者らが検討した結果について説明する。
<実験例4>
本実験例では、ポリイミドガラス基板にキャストした混合溶液(ここでは、高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)20質量%をDMAcに溶解させたDMAc溶液に、高分子質量に対して60質量%となるようにPPAを配合した溶液)を用いて乾燥温度の影響を調査した。また、作成した高分子電荷質膜に対し、予備乾燥時間の影響を受けないよう予備乾燥を60℃にて1時間行った後、20分間の本乾燥を110℃、130℃、150℃および170℃でそれぞれ行った。本実験例の結果を下記表8に示す。
本実験例では、ポリイミドガラス基板にキャストした混合溶液(ここでは、高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)20質量%をDMAcに溶解させたDMAc溶液に、高分子質量に対して60質量%となるようにPPAを配合した溶液)を用いて乾燥温度の影響を調査した。また、作成した高分子電荷質膜に対し、予備乾燥時間の影響を受けないよう予備乾燥を60℃にて1時間行った後、20分間の本乾燥を110℃、130℃、150℃および170℃でそれぞれ行った。本実験例の結果を下記表8に示す。
表8に示すように、乾燥温度110℃では、膜の表面が、ドープしたリン酸および極性有機溶媒の影響でごくわずかに湿潤状態にあるものの、130℃より高い乾燥温度においては、十分な乾燥が成されていると考えられる。また、150℃を超えるとリン酸の脱水に伴う重量変化が現れると考えられることから、110℃以上150℃未満の乾燥温度が好ましいと考えられる。また、130℃以上で、若干茶色に膜が変色する現象が観察された。これは、スルホン酸周囲の吸着水の脱水に伴う色の変化であると考えられるが、プロトン伝導は、リン酸の寄与が支配的であることから、高分子電解質膜のプロトン伝導性等の性能へ及ぼす問題はほとんど無いといえる。
(本乾燥の温度および時間に関する検討)
次に、予備乾燥の後の乾燥(本乾燥)工程における乾燥温度及び乾燥時間について本発明者らが検討した結果について説明する。
次に、予備乾燥の後の乾燥(本乾燥)工程における乾燥温度及び乾燥時間について本発明者らが検討した結果について説明する。
<実験例5>
本実験例では、ポリイミドガラス基板にキャストした混合溶液(ここでは、高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)20質量%をDMAcに溶解させたDMAc溶液に、高分子質量に対して60質量%となるようにPPAを配合した溶液)を用いて乾燥温度及び乾燥時間の影響を調査した。また、作成した高分子電荷質膜に対し、60℃の予備乾燥を20分間行った後、本乾燥を、乾燥温度110℃、130℃、150℃および170℃で、乾燥時間20分、40分、60分および80分でそれぞれ行った。本実験例の結果を下記表9に示す。
本実験例では、ポリイミドガラス基板にキャストした混合溶液(ここでは、高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)20質量%をDMAcに溶解させたDMAc溶液に、高分子質量に対して60質量%となるようにPPAを配合した溶液)を用いて乾燥温度及び乾燥時間の影響を調査した。また、作成した高分子電荷質膜に対し、60℃の予備乾燥を20分間行った後、本乾燥を、乾燥温度110℃、130℃、150℃および170℃で、乾燥時間20分、40分、60分および80分でそれぞれ行った。本実験例の結果を下記表9に示す。
表9に示すように、何れの温度においても20分間の乾燥で約10%程度の高分子電解質膜の質量の低下が見られた。すなわち、予備乾燥と本乾燥の合計で80%以上の溶媒が除去できていることがわかる。また、表9に示した結果から、乾燥温度による溶媒除去量への影響は比較的小さく、むしろ乾燥時間に伴う溶媒除去量の変化の方が大きいということがわかった。なお、実機で製造する場合には、PETなどを基材としてロール間で印刷(キャスト)および乾燥を行うことを考えれば、150℃以下での乾燥温度が好ましいといえ、乾燥時間についても20分以上乾燥しても高分子電解質膜の質量の変化量も然程変化がないことから、20分程度で十分であるといえる。もちろん長時間乾燥すれば、それだけ水分や溶媒の除去量も増加するので、生産性等との兼ね合いで、乾燥時間を20分超としても問題は無い。
(遊離酸配合量のイオン伝導度に対する影響)
次に、遊離酸配合量のイオン伝導度に対する影響について本発明者らが検討した結果について説明する。
次に、遊離酸配合量のイオン伝導度に対する影響について本発明者らが検討した結果について説明する。
<実験例6>
本実験例では、酸性官能基を有する高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を使用し、遊離酸としてPPAを使用し、極性有機溶媒としてDMAcおよびNMPのそれぞれに溶解させた混合溶液を用いて製膜した高分子電解質膜の130℃におけるイオン伝導度を測定した。イオン伝導度の測定方法は以下の通りである。各電解質膜を13mmΦの円形に打ち抜き、テフロン(登録商標)のハウジングを有する二極の白金ブロッキング電極セルに挟み込み、恒温槽に固定して150℃に昇温して一昼夜放置した後、150℃から降温しながら、抵抗を測定した。抵抗測定には英国ソーラトロン社製SI1287 Electrochemical Interface and SI1260 Impedance/gain phase Analyzerを用いた。得られたバルク抵抗とセル定数から、イオン伝導度を算出した。その結果を下記表10に示す。なお、下記表10において、「PPA20」等は、高分子に対するPPAの配合量を示しており、例えば、PPA20であれば、高分子100質量部に対して20質量部のPPAが高分子電解質膜中に存在することを意味する。
本実験例では、酸性官能基を有する高分子としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を使用し、遊離酸としてPPAを使用し、極性有機溶媒としてDMAcおよびNMPのそれぞれに溶解させた混合溶液を用いて製膜した高分子電解質膜の130℃におけるイオン伝導度を測定した。イオン伝導度の測定方法は以下の通りである。各電解質膜を13mmΦの円形に打ち抜き、テフロン(登録商標)のハウジングを有する二極の白金ブロッキング電極セルに挟み込み、恒温槽に固定して150℃に昇温して一昼夜放置した後、150℃から降温しながら、抵抗を測定した。抵抗測定には英国ソーラトロン社製SI1287 Electrochemical Interface and SI1260 Impedance/gain phase Analyzerを用いた。得られたバルク抵抗とセル定数から、イオン伝導度を算出した。その結果を下記表10に示す。なお、下記表10において、「PPA20」等は、高分子に対するPPAの配合量を示しており、例えば、PPA20であれば、高分子100質量部に対して20質量部のPPAが高分子電解質膜中に存在することを意味する。
表10に示すように、PPAの配合量が高分子100質量部に対して20質量部以上80質量部以上の範囲においては、いずれも良好なプロトン伝導度を示した。また、プロトン伝導度は、極性有機溶媒の種類によらず、PAAの配合量が20質量部から60質量部までは上昇し、60質量部をピークとして、80質量部ではやや低下するということがわかった。この結果から、PPA等の遊離酸の配合量としては、高分子電解質100質量部に対して20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、40質量部以上80質量部以下がさらに好ましく、60質量部が最も好ましい、ということが示唆された。
(高分子電解質膜の物性評価)
後述する方法で合成した3種類の高分子電解質を用いて高分子電解質膜を作製し、作製した高分子電解質膜のプロトン伝導度、および、得られた高分子電解質膜を使用して作製した燃料電池の発電特性を評価した。プロトン伝導度および発電特性の試験方法は、以下の通りである。
後述する方法で合成した3種類の高分子電解質を用いて高分子電解質膜を作製し、作製した高分子電解質膜のプロトン伝導度、および、得られた高分子電解質膜を使用して作製した燃料電池の発電特性を評価した。プロトン伝導度および発電特性の試験方法は、以下の通りである。
<イオン伝導度測定の試験方法>
各電解質膜を13mmΦの円形に打ち抜き、テフロン(登録商標)のハウジングを有する二極の白金ブロッキング電極セルに挟み込み、恒温槽に固定して150℃に昇温して一昼夜放置した後、150℃から降温しながら、抵抗を測定した。抵抗測定には英国ソーラトロン社製SI1287 Electrochemical Interface and SI1260 Impedance/gain phase Analyzerを用いた。得られたバルク抵抗とセル定数から、イオン伝導度を算出した。
各電解質膜を13mmΦの円形に打ち抜き、テフロン(登録商標)のハウジングを有する二極の白金ブロッキング電極セルに挟み込み、恒温槽に固定して150℃に昇温して一昼夜放置した後、150℃から降温しながら、抵抗を測定した。抵抗測定には英国ソーラトロン社製SI1287 Electrochemical Interface and SI1260 Impedance/gain phase Analyzerを用いた。得られたバルク抵抗とセル定数から、イオン伝導度を算出した。
<燃料電池の発電特性の試験方法>
作製した電解質膜を2.8cm角に切り取った市販のガス拡散電極(米Electrochem社製触媒付電極;カーボンペーパーに触媒Pt1mg/cm2を付着させた電極;EC−20−10−7)で挟み込んで簡易的な膜−電極接合体(MEA)を作製した。次いで、テフロン(登録商標)のガスケットと該MEAをガス流路が形成されているカーボンセパレータで挟み込んだ上、集電板とエンドプレートを両極外側に配して、ボルトで締め付けてテストセルとした。このテストセルを窒素パージしながら、150℃に昇温し、水素および酸素をボンベから流量をコントロールするマスフローを介して直接(加湿器を通さず)セルへ導入した。発電の分極特性および連続発電特性の調査には、北斗電工社製電気化学測定装置HZ−3000を用いた。
作製した電解質膜を2.8cm角に切り取った市販のガス拡散電極(米Electrochem社製触媒付電極;カーボンペーパーに触媒Pt1mg/cm2を付着させた電極;EC−20−10−7)で挟み込んで簡易的な膜−電極接合体(MEA)を作製した。次いで、テフロン(登録商標)のガスケットと該MEAをガス流路が形成されているカーボンセパレータで挟み込んだ上、集電板とエンドプレートを両極外側に配して、ボルトで締め付けてテストセルとした。このテストセルを窒素パージしながら、150℃に昇温し、水素および酸素をボンベから流量をコントロールするマスフローを介して直接(加湿器を通さず)セルへ導入した。発電の分極特性および連続発電特性の調査には、北斗電工社製電気化学測定装置HZ−3000を用いた。
<高分子電解質の合成>
次いで、高分子電解質の合成方法について説明する。
(A)『J. Kerres et al., Electrochem. Syst. 3 (2000) 129』に記載された内容に基づいて、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化し、下記式(2)に示すようなスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(以下、「S−PEEK」と記載する。Ew=570)を得た。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK450P、三井東圧化学社製)50gを98%硫酸へ分散し、35℃において24時間反応の後、反応液を冷却水中に少しずつ注ぎ、pHが中性になるまで水洗を繰り返した。得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを燃焼―イオンクロマト法でEwが570であることを決定した。
(B)『R. Guan et at., Euro Polym. J., 41 (2005) 1554』に記載された内容に基づいて、ポリエーテルスルホンをスルホン化し、下記式(3)に示すようなスルホン化ポリエーテルスルホン(以下、「S−PES」と記載する。Ew=550)を得た。具体的には、ポリエーテルスルホン(ポリ1,4−フェニレンエーテルスルホン、アルドリッチ社製)20gを100mLの98%硫酸へ分散させ、室温で2時間反応の後、ゆっくりとクロロスルホン酸80mLを滴下した。反応溶液が10℃となるように約1時間保持した後、(A)と同様に反応液を冷却水中に少しずつ注ぎ、pHが中性になるまで水洗を繰り返した。得られたスルホン化ポリエーテルスルホンを逆滴定法を用いてEwが550であることを決定した。ただし、クロロスルホン酸の滴下量を60mL、あるいは70mLとしたときに、得られた高分子のEwは論文とは異なり、期待したスルホン化度は得られなかった。ここでは、Ewが550と明確なサンプルとして、クロロスルホン酸滴下量を80mLとしたものを用いた。
(C)『X. Glipa et al., Solid State Ionics 97 (1997) 323』に記載された内容に基づいて、ポリベンズイミダゾールをスルホン化し、下記式(4)に示すようなスルホン化ポリベンズイミダゾール(以下、「S−PBI」と記載する。Ew=770)を得た。具体的には以下のように、ポリベンズイミダゾールの合成を先行して行い、これをイオン化の後スルホン化した。35gのポリリン酸(キシダ化学社製)中に3,4―ジアミノ安息香酸(2.60g、東京化成社製)と1.83gの3,3’―ジアミノベンジジン(アルドリッチ社製)と1.42gのイソフタル酸(東京化成社製)を投入し、200℃で5時間反応させた。反応溶液を大量の冷水中に注ぎ込み、反応液を冷却水中に少しずつ注ぎ、pHが中性になるまで水洗を繰り返した。60℃にて真空乾燥を24時間行い、得られたポリベンズイミダゾールをジメチルアセトアミド(キシダ化学社製)に溶解した後、リチレート化をリチウムハイドライド(アルドリッチ社製)を用いて行った。このときのモル比として、論文で記載してある比率PBI:LiHは不純物の水分と反応し、失活することが想定されたため、2.5としてリチレート化を行った。その後、外部で委託合成した4−ブロモメチルベンゼンスルホン酸を過剰に投入し、窒素気流下75℃にて24時間攪拌の後、過剰のテトラヒドロフランに投入し再沈殿させた。その後、ジメチルアセトアミドに一度溶解し、不溶部をろ過した後、超純水中に再度投入した。沈殿物をろ過後、60℃にて真空乾燥を24時間行い、スルホン化ポリベンズイミダゾールを得た。Ewは(A)と同様に燃焼−イオンクロマトグラフ法による、硫黄の定量より770であることを決定した。
次いで、高分子電解質の合成方法について説明する。
(A)『J. Kerres et al., Electrochem. Syst. 3 (2000) 129』に記載された内容に基づいて、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化し、下記式(2)に示すようなスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(以下、「S−PEEK」と記載する。Ew=570)を得た。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK450P、三井東圧化学社製)50gを98%硫酸へ分散し、35℃において24時間反応の後、反応液を冷却水中に少しずつ注ぎ、pHが中性になるまで水洗を繰り返した。得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを燃焼―イオンクロマト法でEwが570であることを決定した。
(B)『R. Guan et at., Euro Polym. J., 41 (2005) 1554』に記載された内容に基づいて、ポリエーテルスルホンをスルホン化し、下記式(3)に示すようなスルホン化ポリエーテルスルホン(以下、「S−PES」と記載する。Ew=550)を得た。具体的には、ポリエーテルスルホン(ポリ1,4−フェニレンエーテルスルホン、アルドリッチ社製)20gを100mLの98%硫酸へ分散させ、室温で2時間反応の後、ゆっくりとクロロスルホン酸80mLを滴下した。反応溶液が10℃となるように約1時間保持した後、(A)と同様に反応液を冷却水中に少しずつ注ぎ、pHが中性になるまで水洗を繰り返した。得られたスルホン化ポリエーテルスルホンを逆滴定法を用いてEwが550であることを決定した。ただし、クロロスルホン酸の滴下量を60mL、あるいは70mLとしたときに、得られた高分子のEwは論文とは異なり、期待したスルホン化度は得られなかった。ここでは、Ewが550と明確なサンプルとして、クロロスルホン酸滴下量を80mLとしたものを用いた。
(C)『X. Glipa et al., Solid State Ionics 97 (1997) 323』に記載された内容に基づいて、ポリベンズイミダゾールをスルホン化し、下記式(4)に示すようなスルホン化ポリベンズイミダゾール(以下、「S−PBI」と記載する。Ew=770)を得た。具体的には以下のように、ポリベンズイミダゾールの合成を先行して行い、これをイオン化の後スルホン化した。35gのポリリン酸(キシダ化学社製)中に3,4―ジアミノ安息香酸(2.60g、東京化成社製)と1.83gの3,3’―ジアミノベンジジン(アルドリッチ社製)と1.42gのイソフタル酸(東京化成社製)を投入し、200℃で5時間反応させた。反応溶液を大量の冷水中に注ぎ込み、反応液を冷却水中に少しずつ注ぎ、pHが中性になるまで水洗を繰り返した。60℃にて真空乾燥を24時間行い、得られたポリベンズイミダゾールをジメチルアセトアミド(キシダ化学社製)に溶解した後、リチレート化をリチウムハイドライド(アルドリッチ社製)を用いて行った。このときのモル比として、論文で記載してある比率PBI:LiHは不純物の水分と反応し、失活することが想定されたため、2.5としてリチレート化を行った。その後、外部で委託合成した4−ブロモメチルベンゼンスルホン酸を過剰に投入し、窒素気流下75℃にて24時間攪拌の後、過剰のテトラヒドロフランに投入し再沈殿させた。その後、ジメチルアセトアミドに一度溶解し、不溶部をろ過した後、超純水中に再度投入した。沈殿物をろ過後、60℃にて真空乾燥を24時間行い、スルホン化ポリベンズイミダゾールを得た。Ewは(A)と同様に燃焼−イオンクロマトグラフ法による、硫黄の定量より770であることを決定した。
次いで、製造された高分子溶液を水中に沈殿させて前記ポリベンズイミダゾール系高分子を得た。
また、それぞれスルホン化した高分子の原料となるスルホン化していない高分子と、スルホン化した高分子の極性有機溶媒に対する溶解性、ならびに、リン酸を溶解したN−メチルピロリドン(NMP)に対する相溶性を調査した。なお、リン酸を溶解したNMPは、ポリリン酸(116%リン酸)2.00gをNMP12.00gに溶解したものとした。また、溶解性の判断としては、20質量%の高分子を極性有機溶媒に加えて攪拌することで、透明な溶液を調製できるか否かにより判断した。その結果を下記表11に示す。
表11に示すように、スルホン化していないS−PEEKとS−PESは、DMAcおよびNMPのいずれにも溶解せず、スルホン化することによって、同溶媒に溶解されることが分かった。一方、S−PBIは、DMAcおよびNMPのいずれにも可溶であるが、リン酸が混在すると沈殿物を生成してしまった。しかしながら、スルホン化することによって、リン酸混在下であっても、同溶媒に可溶となることが確認された。これらの材料を用いて、本発明の実施例による高分子電解質膜を以下のように調製した。
〔実施例1〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリベンズイミダゾール(S−PBI)を2.50g計り取り、ポリリン酸2.50gをN−メチルピロリドン(NMP)12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PBIとポリリン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な混合溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは130μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリベンズイミダゾール(S−PBI)を2.50g計り取り、ポリリン酸2.50gをN−メチルピロリドン(NMP)12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PBIとポリリン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な混合溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは130μmであった。
〔実施例2〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ポリリン酸 2.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEKとポリリン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な混合溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは138μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ポリリン酸 2.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEKとポリリン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な混合溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは138μmであった。
〔実施例3〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)を3.00g計り取り、ポリリン酸 2.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PESとポリリン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは135μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)を3.00g計り取り、ポリリン酸 2.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PESとポリリン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは135μmであった。
〔実施例4〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ポリリン酸2.00gとベンズイミダゾール1.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEK、ポリリン酸およびベンズイミダゾールのNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは134μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ポリリン酸2.00gとベンズイミダゾール1.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEK、ポリリン酸およびベンズイミダゾールのNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは134μmであった。
〔実施例5〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ポリリン酸2.00gと1−メチル−3−ブチルトリフルオロスルフォイミド(EMITFSI)1.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEK、ポリリン酸およびEMITFSIのNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは125μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ポリリン酸2.00gと1−メチル−3−ブチルトリフルオロスルフォイミド(EMITFSI)1.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEK、ポリリン酸およびEMITFSIのNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは125μmであった。
〔実施例6〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ビニルホスホン酸1.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEKとビニルホスホン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは125μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ビニルホスホン酸1.00gをNMP 12.00gに加えて一日常温で攪拌した。次いで、S−PEEKとビニルホスホン酸のNMP溶液を、均一となったリン酸−NMP溶液に加え、常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは125μmであった。
〔実施例7〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)3.00g、ビニルホスホン酸4.00g、ポリエチレングリコールジメタクリレート2.00g、アゾビスイソブチロニトリル0.3gをジメチルアセトアミド10.00gに溶解し25℃で3時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液をガラス基板上にドクターブレードを用いてキャストし、80℃で3時間乾燥してジメチルアセトアミドを除去した後、100℃、真空で19時間、150℃で0.5時間の熱処理を行い、その後、ガラス基板上より剥離させて自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは175μmであった。また、得られた高分子電解質膜を80℃の熱水に30分浸漬し、浸漬液中に溶出した酸および架橋剤成分の量から、浸漬前の膜中にあった酸および架橋剤成分の溶出率を算出したところ50%であった。また、交流インピーダンス法により高分子電解質膜の150℃での伝導度を測定したところ0.61mS/cmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)3.00g、ビニルホスホン酸4.00g、ポリエチレングリコールジメタクリレート2.00g、アゾビスイソブチロニトリル0.3gをジメチルアセトアミド10.00gに溶解し25℃で3時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液をガラス基板上にドクターブレードを用いてキャストし、80℃で3時間乾燥してジメチルアセトアミドを除去した後、100℃、真空で19時間、150℃で0.5時間の熱処理を行い、その後、ガラス基板上より剥離させて自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは175μmであった。また、得られた高分子電解質膜を80℃の熱水に30分浸漬し、浸漬液中に溶出した酸および架橋剤成分の量から、浸漬前の膜中にあった酸および架橋剤成分の溶出率を算出したところ50%であった。また、交流インピーダンス法により高分子電解質膜の150℃での伝導度を測定したところ0.61mS/cmであった。
なお、溶出率の測定方法の詳細については以下の通りである。すなわち、膜サンプルを約0.07gはかりとり、2gの純水に浸漬し、80℃オーブン中で30分静置させた。その後、膜を純水中から引き上げ、浸漬液1gを採取し、ガラス瓶に入れて150℃で30分加熱した。瓶中に残った残渣の重量を測定し、次の式から溶出率を算出した。
溶出率(%)=〔1−(膜サンプル中から溶出した残渣の重量)
/(サンプル膜中の酸成分と架橋剤成分の合計重量)〕×100
溶出率(%)=〔1−(膜サンプル中から溶出した残渣の重量)
/(サンプル膜中の酸成分と架橋剤成分の合計重量)〕×100
〔実施例8〕
ビニルホスホン酸2.30g、ポリエチレングリコールジメタクリレート2.30g、アゾビスイソブチロニトリル0.2gとする以外は、実施例7と同様にして自立性の膜を得た。この膜の酸および架橋剤成分の溶出率は5%、150℃での伝導度は0.02mS/cmであった。
ビニルホスホン酸2.30g、ポリエチレングリコールジメタクリレート2.30g、アゾビスイソブチロニトリル0.2gとする以外は、実施例7と同様にして自立性の膜を得た。この膜の酸および架橋剤成分の溶出率は5%、150℃での伝導度は0.02mS/cmであった。
〔比較例1〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、NMP 12.00gに加えて常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは80μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、NMP 12.00gに加えて常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは80μmであった。
〔比較例2〕
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ベンズイミダゾール1.00gを溶解したNMP 12.00gに加えて常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは85μmであった。
上記のようにして合成したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を3.00g計り取り、ベンズイミダゾール1.00gを溶解したNMP 12.00gに加えて常温にて3時間攪拌し、均一な溶液を得た。これをガラス基板上にドクターブレードを用いてキャスト法により製膜した。得られた高分子電解質膜の乾燥は、80℃にて3時間の予備乾燥の後、120℃にて2時間の乾燥を行い、溶媒であるNMPを除去し、ガラス基板上より剥離して自立性の膜を得た。得られた膜の厚みは85μmであった。
(イオン伝導度の評価結果について)
以上のようにして得た高分子電解質膜のうち、実施例1〜5の膜のプロトン伝導度を測定した結果を図1に、実施例8の膜のプロトン伝導度を測定した結果を図2に示す。なお、図1は、本発明の実施例1〜5のイオン伝導度のアレニウスプロットであり、縦軸がイオン伝導度[Scm−1]、横軸が温度(1000/T)[K−1]を示している。また、図2は、本発明の実施例8のイオン伝導度のアレニウスプロットであり、縦軸がイオン伝導度[Scm−1]、横軸が温度(1/T)[K−1]を示している。
以上のようにして得た高分子電解質膜のうち、実施例1〜5の膜のプロトン伝導度を測定した結果を図1に、実施例8の膜のプロトン伝導度を測定した結果を図2に示す。なお、図1は、本発明の実施例1〜5のイオン伝導度のアレニウスプロットであり、縦軸がイオン伝導度[Scm−1]、横軸が温度(1000/T)[K−1]を示している。また、図2は、本発明の実施例8のイオン伝導度のアレニウスプロットであり、縦軸がイオン伝導度[Scm−1]、横軸が温度(1/T)[K−1]を示している。
図1および図2に示すように、本発明の実施例1〜5および実施例8の高分子電解質膜は、高温(〜150℃程度)・無加湿の条件下においても、十分に発電可能な程度のプロトン伝導度を有することがわかる。
(発電特性の評価結果について)
次に、上記のようにして得た高分子電解質膜のうち、実施例2および実施例3の高分子電解質を用いて上述したようにして燃料電池のテストセルを作製し、発電特性(分極特性)の評価を行った結果を図3および図4に示す。なお、図3は、本発明の実施例2の高分子電解質膜を用いて作製した燃料電池テストセルの分極曲線を示すグラフであり、縦軸が電圧[V]、横軸が電流[mA]を示している。また、図4は、本発明の実施例3の高分子電解質膜を用いて作製した燃料電池テストセルの分極曲線を示すグラフであり、縦軸が電圧[V]、横軸が電流[mA]を示している。
次に、上記のようにして得た高分子電解質膜のうち、実施例2および実施例3の高分子電解質を用いて上述したようにして燃料電池のテストセルを作製し、発電特性(分極特性)の評価を行った結果を図3および図4に示す。なお、図3は、本発明の実施例2の高分子電解質膜を用いて作製した燃料電池テストセルの分極曲線を示すグラフであり、縦軸が電圧[V]、横軸が電流[mA]を示している。また、図4は、本発明の実施例3の高分子電解質膜を用いて作製した燃料電池テストセルの分極曲線を示すグラフであり、縦軸が電圧[V]、横軸が電流[mA]を示している。
図3および図4に示すように、本発明の実施例2および実施例3の高分子電解質を用いて作製したテストセルは、高温(〜150℃程度)・無加湿の条件下においても、優れた分極特性を有することがわかる。なお、実施例2の開放電圧(OCV)は、0.987[V]であり、実施例3のOCVは、0.872[V]であり、ともに高い値を示した。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
Claims (19)
- 酸性官能基を有する高分子電解質と、遊離酸、遊離酸とルイス塩基との混合物、または、遊離酸と有機塩との混合物のいずれか1種からなる遊離酸源とを、極性有機溶媒に溶解させた混合溶液を湿式製膜することにより、前記高分子電解質に前記遊離酸がドープされた高分子電解質膜を得ることを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法。
- 前記高分子電解質の主骨格は、芳香族系エンジニアリングプラスチックであることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記芳香族系エンジニアリングプラスチックは、ポリエーテルスルホンまたはポリベンズイミダゾールであることを特徴とする、請求項2に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記遊離酸は、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記酸性無機リン化合物は、リン酸、ポリリン酸またはホスホン酸であることを特徴とする、請求項4に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記酸性有機リン化合物は、ビニルホスホン酸またはエチルホスホン酸であることを特徴とする、請求項4または5に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記有機塩は、第四級アンモニウムカチオンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記極性有機溶媒は、アミド系有機溶媒であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記アミド系有機溶媒は、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルホルムアミドであることを特徴とする、請求項8に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記高分子電解質の酸性官能基のモル数nAと、前記遊離酸のモル数nBと、前記ルイス塩基のモル数nCとが、nA+nB>nCの関係を満たすことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記極性溶媒中に、前記高分子電解質100質量部に対して20質量部以上80質量部以下の前記遊離酸を溶解させることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記遊離酸は、ビニルホスホン酸であり、
前記湿式製膜後に、前記高分子電解質にドープされた前記ビニルホスホン酸を重合させることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。 - 前記極性有機溶媒中にさらに多官能重合性化合物を溶解させた前記混合溶液を湿式製膜し、当該湿式製膜後に、前記多官能重合性化合物と前記ビニルホスホン酸とを共重合させることを特徴とする、請求項12に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記多官能重合性化合物は、多官能ビニル化合物、ジアクリレート、またはジメタクリレートであることを特徴とする、請求項13に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 酸性官能基を有する芳香族系エンジニアリングプラスチックを主骨格とし、かつ、酸性無機リン化合物または酸性有機リン化合物からなる遊離酸がドープされたことを特徴とする、高分子電解質膜。
- 前記芳香族系エンジニアリングプラスチックは、ポリエーテルスルホンまたはポリベンズイミダゾールであることを特徴とする、請求項15に記載の高分子電解質膜。
- 前記酸性無機リン化合物は、リン酸、ポリリン酸またはホスホン酸であることを特徴とする、請求項15または16に記載の高分子電解質膜。
- 前記酸性有機リン化合物は、ビニルホスホン酸またはエチルホスホン酸であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれかに記載の高分子電解質膜。
- 請求項15〜18のいずれかに記載の高分子電解質膜を用いた膜電極接合体を備える、燃料電池。
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