JP2010072004A - 原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法 - Google Patents

原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法 Download PDF

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秀幸 細川
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Abstract

【課題】電気伝導率の増加を抑制することにより応力腐食割れ感受性の増大を抑制し、プラントの健全性を向上させることができる原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法を提供する。
【解決手段】沸騰水型原子力プラントの運転中に、沸騰水型原子力プラントの原子炉水中に、酸素又は過酸化水素と化学反応して原子炉水中の酸素又は過酸化水素の濃度を低減せしめる物質を注入し、沸騰水型原子力プラントの運転停止期間中に、沸騰水型原子力プラントの給水加熱器伝熱面に、2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物の層を形成する。原子炉水への水素注入等を停止した場合であっても、原子炉水中のクロムイオン濃度の増大を抑制することができる。その結果、電気伝導率の上を抑制することができ、ひいては応力腐食割れに対する感受性の増大を抑制することが可能となるので、プラントの健全性を向上させることができる。
【選択図】 図1

Description

沸騰水型原子力プラントの予防保全技術に係り、特にステンレス鋼及びニッケル基合金等の原子炉構造材料の応力腐食割れを緩和する方法に関する。
沸騰水型原子力プラントにおいては、プラント稼働率向上の観点から、炉内構造物や圧力境界を構成する材料に対する応力腐食割れ(以下「SCC」という。)を抑制することが重要な課題となっている。SCCは材料,応力及び環境の3因子が重畳したときに発生するとされている。従って、これらの3因子の内、少なくとも1因子を緩和することによりSCCを緩和することができる。3因子の中で、環境因子の緩和は、一般に少ない工事,低コストで実施できるというメリットがある。
プラント運転中においては、炉心の強いガンマ線や中性子線の作用により、原子炉冷却水が放射線分解し、酸素及び過酸化水素を生じさせる。この結果、原子炉冷却水は酸素及び過酸化水素が数百ppb程度存在する高温環境(100℃以上を高温という。尚、定格出力運転時の炉心出口の温度は288℃である。)となる。炉内構造物や圧力境界を構成する構造材料(ステンレス,ニッケル基合金等)は、このような環境下の原子炉冷却水に曝されることとなる。
原子炉冷却水の環境を表す指標として腐食電位(以下「ECP」という。)がある。図2は、304型ステンレス鋼(以下「SUS304鋼」という。)のき裂進展速度(以下「CGR」という。)とECPとの関係を示している。図2の横軸はECPを示しており、縦軸はCGRを示している。試験片としてSUS304鋼を用い、温度が288℃、電気伝導率が0.1μS/cmから0.3μS/cmという条件下で試験が行われた。図2から、ECPが低下するとCGRが減少することがわかる。
図3は、酸素又は過酸化水素濃度に対するSUS304鋼のECPの依存性を示している。図3の横軸は酸素又は過酸化水素の濃度を示しており、縦軸はECPを示している。
試験片としてSUS304鋼を用い、温度が280℃の条件下で試験を行った。図3から、酸素も過酸化水素もその濃度が低くなるほどECPも低くなることがわかる。従って、原子炉冷却水に曝された構造材料のSCCを緩和するためにはECPを低減することが必要であり、そのECPの低減は、原子炉水(原子炉炉心を流れた冷却材を含み、イオン交換樹脂塔などで不純物が除去されていない冷却水をいう。原子炉圧力容器,原子炉冷却水再循環系配管,ボトムドレン配管,原子炉冷却水ろ過脱塩器の上流側の原子炉冷却水浄化系配管を流れる冷却水である。)中に存在する酸素及び過酸化水素の濃度を低減することにより達成される。
この課題に対して、給水系から水素を添加する技術(以下「水素注入」という。)が、国内外の多くのプラントで実施されている。水素注入は、水の放射線分解によって生じた酸素及び過酸化水素を水素と反応させて水に戻すことにより、原子炉水中の酸素及び過酸化水素濃度を低減する技術である(例えば、特許文献1参照)。
図2は、CGRとECPとの関係に加えて電気伝導率の影響も合わせて示している。図2から、電気伝導率が0.1μS/cmの場合よりも0.3μS/cmの場合のほうが、同じECPであってもCGRが高いことがわかる。つまり、電気伝導率が高くなるとCGRも高くなる。沸騰水型原子力プラントの原子炉水中に水素注入を行っているプラントでは、水素注入を停止すると原子炉水中のクロムイオン濃度が急激に増加し、その結果として、原子炉水中の電気伝導率が増加するという問題が生じる。従って、原子炉水中に水素注入を行っているプラントでは、水素注入を停止するとクロムイオン濃度の増大により電気伝導率が上昇し、その結果、SCC感受性が増大する可能性がある。
特開平05−100087号公報
本発明は、電気伝導率の増加を抑制することにより応力腐食割れ感受性の増大を抑制し、プラントの健全性を向上させることができる、原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法を提供することを課題とする。
沸騰水型原子力プラントの運転中に、沸騰水型原子力プラントの原子炉水中に、酸素又は過酸化水素と化学反応して原子炉水中の酸素又は過酸化水素の濃度を低減せしめる物質を注入し、沸騰水型原子力プラントの運転停止期間中に、沸騰水型原子力プラントの給水加熱器伝熱面に、2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物の層を形成する。
本発明によれば、原子炉水への水素注入等を停止した場合であっても、原子炉水中のクロムイオン濃度の増大を抑制することができる。その結果、電気伝導率の上を抑制することができ、ひいては応力腐食割れに対する感受性の増大を抑制することが可能となり、プラントの健全性を向上させることができる。
Fe34皮膜を形成したSUS304鋼の腐食試験の結果を示す図。 SUS304鋼のCGRとECPとの関係を示す図。 酸素又は過酸化水素濃度に対するSUS304鋼のECPの依存性を示す図。 第1の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示す図。 SUS304鋼の腐食速度の温度依存性を示す図。 給水加熱器伝熱面の表面にピネル型構造の化合物の層を形成させるための処理設備を示す図。 第2の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示す図。 第3の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示す図。 第4の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示す図。
発明者は、原子炉水中への水素の注入を停止した際に、クロムイオン濃度の増大を抑制し、ひいてはCGRを低減する方法について検討したので、その検討内容を以下に示す。
原子炉水中に水素注入を行う沸騰水型原子力プラントにおいて、プラント停止操作等により水素の注入が停止した際に、原子炉水中のクロムイオン濃度が増加する現象は、以下に述べるクロムイオンの性質によると考えられる。
クロムイオンは式1により、酸化性環境ではクロム酸イオン(HCrO4 -)として存在し、還元性環境では3価のクロムイオン(Cr3+)として存在する。
(式1)
HCrO4 -+7H++3e-=Cr3++4H2
純水中ではクロム酸イオンの溶解度は大きくイオンとして存在し易いが、3価のクロムイオンは溶解度が小さく、式2によりクロム酸化物(Cr(OH)3 又はCr23)として析出し易い。
(式2)
Cr3++3H2O=Cr(OH)3+3H+
これらのクロムイオンの性質を考慮すると、原子炉水中に水素注入を行う沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入が停止した際に原子炉水中のクロムイオン濃度が増加する現象のメカニズムは次のように考えられる。クロムイオンはステンレス鋼製の給水加熱器伝熱面の腐食溶出により発生し、冷却水(給水)により原子炉圧力容器内に持ち込まれる。給水中には酸素が10〜100ppb 程度存在し、酸化性であるため、クロムイオンは溶解度の大きいクロム酸イオンとして存在する。水素注入を行うと原子炉水中の酸素や過酸化水素の濃度が減少し、原子炉水は還元性となる。還元性ではクロムイオンは溶解度の小さい3価のクロムイオンになるため、クロム酸化物として析出し易くなる。すなわち、クロムイオンが炉内構造材料表面にクロム酸化物として析出して蓄積される。水素注入が停止すると原子炉水中の酸素,過酸化水素濃度が増加して原子炉水が酸化性になる。酸化性環境ではクロム酸化物は溶解度の大きいクロム酸イオンとして再溶解する。この再溶解が水素注入停止後速やかに生じるため、原子炉水中のクロムイオン濃度が急激に増加するものと考えられる。
尚、水素注入を行わないプラントでは原子炉水は酸化性であるため、クロムイオンはクロム酸イオンとして存在し、炉内構造材料表面に析出せずに原子炉水中に残ると考えられる。原子炉水中に残ったクロムイオンは原子炉水浄化系(原子炉圧力容器の原子炉水の一部を引き出し、原子炉水中に含まれる不純物を除去する系統)で除去される。そのため、水素注入を行わないプラントの原子炉水中には定常的にクロムイオンが存在するが、クロムイオン濃度の急激な増加は生じない。
発明者はクロムイオンに関する上述のメカニズムを考慮し、原子炉水中への水素注入を停止した際に、クロムイオン濃度の増大を抑制し、ひいてはCGRを低減する方法について検討した結果、以下に述べる4種類の方法が有効であるとの結論に達した。
第1の方法は、原子炉圧力容器に供給する冷却水が接する給水加熱器伝熱面に、2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル構造(化学式XY24で示される酸化物に見られる結晶構造の一形式。立方晶系に属し、単位格子中に化学単位(XY24)8個を含む。)の化合物の層を形成するものである。
給水加熱器伝熱面は一般に230℃以下であるため、給水加熱器伝熱面には鉄酸化物(α−Fe23)や水酸化鉄(α−FeOOH)が生じる。これらの酸化物は微細粒子や非晶質であるため、多孔性の酸化物層となる。そのため給水加熱器伝熱面の母材に対する腐食抑制効果が小さく、腐食に伴うクロムイオンの溶出を抑制することができない。一方、2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物は、結晶性の化合物であるため緻密な酸化物層となる。そのため給水加熱器伝熱面の母材表面に対して2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物の層を形成すると、給水加熱器伝熱面の母材に対する腐食を抑制でき、腐食に伴うクロムイオンの溶出を抑制することができる。つまり、給水加熱器伝熱面からのクロムイオンの溶出を抑制して、原子炉圧力容器へのクロムイオンの流入を低減することにより、原子炉内構造物表面へのクロム酸化物の蓄積を抑制でき、水素注入停止時のクロムイオン濃度の急激な増加や電気伝導率の増加を抑制することができる。
2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物を用いることにより給水加熱器伝熱面の母材に対する腐食を抑制することができることを実験により確認したので、その結果を図1に示す。図1は、Fe34(2価のFeイオンと3価のFeイオンから構成されるスピネル型構造の化合物)皮膜を形成したSUS304鋼の腐食試験の結果を示している。Fe34の層(厚さ約1μm)を形成したSUS304鋼板とFe34の層を形成していないSUS304鋼板を、温度260℃、溶存酸素濃度10μg/cm2の準静的環境下で500h浸漬することにより腐食試験を行った。SUS304鋼板へのFe34層の形成は、pH及び酸化還元電位を調整した温度90℃のFeイオン含有溶液中にSUS304鋼板を浸漬することにより行った。図1の縦軸は重量変化量を示しており、腐食量が大きいほどその値が大きくなる。図1の実験結果から、未処理のSUS304鋼板に対して、Fe34を形成したSUS304鋼板は、腐食量(重量変化量)が約1/2となった。つまり、Fe34の皮膜形成により腐食量が約1/2に低減した。上記実験結果から、スピネル型構造の化合物の層をSUS304鋼の表面に形成するとSUS304鋼の腐食を抑制することができることがわかる。
ここで、スピネル構造の化合物を構成する2価の金属イオンとしては、放射化の影響が小さく、クロムイオンの発生源とならない鉄,ニッケル,亜鉛,マグネシウム,マンガンが望ましい。
第2の方法は、給水加熱器と圧力容器とを接続する配管の冷却水が接する面に、ジルコニウム又はジルコニウム合金を設置するものである。
ジルコニウム又はジルコニウム合金中のジルコニウムは、式3−式5により、溶存酸素と化学反応する。
(式3)
Zr=Zr4++4e-
(式4)
2+4e-=2O2-
(式5)
Zr+O2=ZrO2
また、溶存酸素のない環境では、ジルコニウムは式3,式6,式7により水と化学反応する。
(式6)
2O+2e-=H2+O2-
(式7)
Zr+2H2O=ZrO2+2H2
温度に依存するが、式3の反応により腐食電位は−1000から−400mV(SHE)の低い腐食電位を示す。つまり、ジルコニウムの存在により、給水加熱器伝熱面から腐食溶出したクロム酸イオンとして存在するクロムイオンを式1に従って還元でき、さらに式2に従って析出させることができる。尚、ジルコニウムは原子炉内に入っても放射化の影響が小さいので、放射線被曝の観点からも好ましい。ジルコニウム以外にチタンやハフニウムでも、同じ作用が得られる。給水からクロムイオンを除去し、原子炉圧力容器へのクロムイオンの流入を低減することにより、原子炉内構造物表面へのクロム酸化物の蓄積を抑制でき、水素注入停止時のクロムイオン濃度の急激な増加、ひいては電気伝導率の増加を抑制することができる。
第3の方法は、プラント停止操作開始から原子炉水温度が100℃となるまでの期間に、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入するものである。
原子炉内の還元性環境を維持することにより、原子炉内構造物表面に付着したクロム酸化物からのクロムイオンの溶出を抑制することができ、水素注入停止時のクロムイオン濃度の急激な増加、ひいては電気伝導率の増加を抑制することができる。
第4の方法は、プラント停止操作開始から原子炉水温度が100℃となるまでの期間に原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入し、その後、原子炉水温度が100℃以下の期間に原子炉水中に酸化剤を注入するものである。
プラント停止操作開始から原子炉水温度が100℃となるまでの期間においては、原子炉内の還元性環境を維持することにより、原子炉内構造物表面に付着したクロム酸化物からのクロムイオンの溶出を抑制する。更にその後、原子炉水温度が100℃以下の期間においては、原子炉水中に酸素,過酸化水素、及びオゾンなどの酸化剤を原子炉水中に添加して原子炉内を酸化性環境にすることにより、原子炉内構造物表面に付着したクロム酸化物からのクロムイオンの溶出を促進する。尚、原子炉中への酸化剤の注入に際しては実効酸素濃度を32μmol/L以下とすることが望ましい。実効酸素濃度が32μmol/L以下であり、かつ原子炉水の温度が100℃以下の環境化においては、ステンレス鋼のSCC感受性が小さいため、プラントの健全性への影響も十分に小さいともの考えられるからである。酸化剤として酸素,過酸化水素、及びオゾンを用いる場合、実効酸素濃度は式8のように表すことができる。
(式8)
[O2]eff=[O2]+(1/2)[H22]+(2/3)[O3
ここで、[O2]effは実効酸素濃度(mol/L)、[O2]は酸素濃度(mol/L)、
[H22]は過酸化水素濃度(mol/L)、[O3]はオゾン濃度(mol/L)である。
このように、プラント停止操作開始後原子炉水温度が100℃以下の期間に原子炉水中に酸化剤を注入することにより、原子炉内構造物表面へのクロム酸化物の蓄積量を低減できる。従って、次のプラント運転時にクロムイオンが溶出することを抑制することができるので、水素注入停止時のクロムイオン濃度の急激な増加や、電気伝導率の増加を抑制することができる。
尚、上記各方法においては、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質として水素を用いるが、水素以外にもアンモニアやヒドラジン,アルコール等を用いた場合にも、水素注入の場合と同様に、原子炉内構造物表面にクロム酸化物が蓄積し、プラント停止操作時等において、クロムイオンの溶出によるクロムイオン濃度の急激な増加や、電気伝導率の増加が生じると考えられる。しかし、上記各方法を用いるにより、アンモニアやヒドラジン,アルコール等を用いた場合にも、水素注入の場合と同様に、クロムイオン濃度の急激な増加,電気伝導率の増加を抑制することができる。
以下、本発明に係る原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法の第1の実施例を、図1及び図4乃至図6を用いて説明する。本実施例は、上述した第1の方法に基づき、給水加熱器伝熱面に、2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル構造の化合物の層を形成するものである。
図4は、第1の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示している。沸騰水型原子力プラントは、復水冷却器13と復水ろ過脱塩器3と給水ポンプ4と給水加熱器5と核燃料の装荷された原子炉圧力容器1とを給水系配管6で接続し、原子炉圧力容器1とタービン2とを主蒸気配管14で接続し、さらにタービン2と復水冷却器13とを接続することにより閉ループを構成する。原子炉冷却材としては水を用いる。
冷却材として用いる水を冷却水という。原子炉圧力容器1で水を蒸気にし、この蒸気を使ってタービン2を回転させ、タービン2によって発電機(図示せず)を回して発電を行う。タービン2の回転に用いた蒸気は復水冷却器13で水に戻され、復水ろ過脱塩器3で不純物が除去された後、給水ポンプ4で給水加熱器5を通して原子炉圧力容器1に戻される。これとは別に、原子炉圧力容器1下部と原子炉冷却水再循環ポンプ7とジェットポンプ15入り口とを原子炉冷却水再循環系配管16が接続する。原子炉冷却水再循環ポンプ7により炉心に流れる冷却水流量を増加させることにより、熱出力を増加させることができる。本実施例では、原子炉冷却水再循環系配管16を有する原子炉を用いて説明する。この原子炉では、原子炉冷却水再循環系配管16上流側と原子炉冷却水浄化系ポンプ9と原子炉冷却水浄化系熱交換器11と原子炉冷却水ろ過脱塩器12と給水系配管6とを原子炉冷却水浄化系配管10で接続し、原子炉冷却水浄化系ポンプ9により冷却水を原子炉冷却水ろ過脱塩器12に通水することにより、原子炉水中の不純物を浄化する。また、原子炉圧力容器1の底部と原子炉冷却水浄化系配管10とを接続するボトムドレン配管8が設置されている。更に、原子炉圧力容器1の炉心上部には、非常時に炉心を冷却するために原子炉炉心に冷却水を注入する非常用炉心冷却系や、核燃料の核反応を制御する制御棒を駆動させるために冷却水を注入する制御棒駆動水圧系が設置されている(図示せず)。さらに、各系統配管での水質を水質モニタ21〜25によりモニタし、主蒸気配管14の線量率を主蒸気配管線量率測定器26によりモニタする。
沸騰水型原子力プラントの炉内構造物のSCC緩和を目的として、原子炉水中に水素を注入する。原子炉水中への水素の注入は、原子力プラント運転期間中に連続的又は断続的に行われる。水素を注入できる期間は、原子炉冷却水ろ過脱塩器12を出た冷却水が原子炉圧力容器1に送水されるプラント運転期間に限定される。このように、原子炉水中に水素を注入するために、給水系配管6には水素ガス発生装置31及び水素ガス注入量調整バルブ32が給水系配管に設置されている。給水系配管6は比較的低圧であるため、水素を容易に冷却水中に注入することができる。尚、本実施例では、炉内構造物のSCC緩和を目的として水素を注入するが、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質であればアンモニア,ヒドラジン,アルコール等でもよい。
次に、給水加熱器伝熱面の表面に2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物の層を形成させるための処理設備(以下単に「処理設備」という。)、及び沸騰水型原子力プラントの停止期間中に、給水加熱器伝熱面にスピネル型構造の化合物の層を形成するための手順について説明する。
図6は、処理設備の概略構造を示している。給水加熱器5にバルブ102,サージタンク106,温度調整器105,ポンプ104,バルブ117が配管103により接続され閉ループを構成している。この閉ループにより、これらの装置と給水加熱器5との間を薬液が循環することができる。配管103には給排水のバルブ107が設置されている。pH調整薬品タンク110が配管108により配管103に接続されており、さらに配管108にはポンプ109及びバルブ118が接続されている。酸化還元電位調整薬液タンク113が配管111により配管103に接続されており、さらに配管111にはポンプ112及びバルブ119が接続されている。金属イオン薬液タンク116が配管114により配管103に接続されており、さらに配管114にはポンプ115及びバルブ120が接続されている。
スピネル型構造の化合物を構成する金属イオンを含有する溶液を給水加熱器伝熱面に接触させすることにより、給水加熱器伝熱面の表面にスピネル型構造の化合物の層を形成することができる。尚、必要に応じて、pHや酸化還元電位の調整を行う。具体的には、以下の手順で給水加熱器伝熱面の表面にスピネル型構造の化合物の層を形成させる。
(S1)まず、プラント停止期間中に、原子炉水への水素の注入を停止する。
(S2)その後、バルブ102,117,107を開、バルブ118,119,120を閉にして、バルブ107から給水加熱器5と処理設備の系統に純水を供給する。
(S3)次に、金属イオン薬液タンク116に、給水加熱器伝熱面の表面に形成させる2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル型構造の化合物を構成する金属イオン溶液を供給する。2価の金属イオンとして使用する金属元素として、鉄,ニッケル,亜鉛,マグネシウム、マンガンを用いることができる。金属イオン溶液として、酢酸,硝酸,硫酸塩,有機酸塩の中から選ばれた試薬の溶液を用いることができる。有機酸は触媒などで分解することによりガスや水とすることができ、その結果、廃棄物量を低減することができるので、金属イオン溶液としては有機酸塩がより好ましい。
また、酸化還元電位調整薬液タンク113に、鉄イオンを酸化還元する試薬の溶液を供給する。鉄イオンを酸化還元する試薬の溶液としては、亜硝酸ナトリウムや過酸化水素,ヒドラジン等を用いることができる。また、酸素やオゾン等のガスでもよい。ガスを使用する場合、サージタンクなどで系統水をガスバブリングすればよい。
さらに、pH調整薬品タンク110に、系統水のpHを調整する試薬の溶液を供給する。pHを調整する試薬の溶液としては、アンモニアや酢酸ナトリウム,水酸化ナトリウム,ヒドラジンなどを用いることができる。
これらの溶液に対しては、窒素やアルゴンガスでバブリングすることにより溶液中の溶存酸素を除去することができる。尚、これらの溶液の供給作業は、S1の前に実施してもよい。
(S4)ポンプ104により処理設備の系統水を循環させるとともに、温度調整器105により系統水を所定の温度に昇温する。尚、系統水の昇温は、反応を促進させるため、沸騰しない範囲で高温が好ましく、より好ましくは約90℃である。
(S5)バルブ120を開にし、ポンプ115を起動して、スピネル型構造の化合物を構成する金属イオン溶液を処理設備の系統に注入する。スピネル型構造の化合物を構成する金属イオンを含有する溶液を給水加熱器伝熱面に接触させて、給水加熱器伝熱面にスピネル型構造の化合物の層を形成するためである。尚、系統水が所定の濃度 (系統濃度は1〜100mmol/L) に達したらポンプ115を停止し、バルブ120を閉にして、注入を停止する。
(S6)バルブ118を開にし、ポンプ109を起動して、pHを調整する試薬の溶液を処理設備の系統に注入する。系統水が所定のpH(室温pHで6〜11)に達したらポンプ109を停止し、バルブ118を閉にして、注入を停止する。
(S7)バルブ119を開にし、ポンプ112を起動して、系統水の酸化還元電位が所定の電位(−0.1〜−0.8V(SHE))になるように、Feイオンを酸化還元する試薬の溶液を系統水に断続的に注入する。尚、酸素やオゾンなどガスを使用する場合は、サージタンクなどで系統水をガスバブリングすればよい。
(S8)その後、給水加熱器伝熱面の表面に形成したスピネル型構造の化合物の層が所定の厚さ(1μm〜170μm)になるまで保持する。
ここで、給水加熱器5は、原子炉圧力容器1からの蒸気の一部を利用して、復水ろ過脱塩器3を出た冷却水を給水加熱器最終段出口で180−220℃程度まで昇温した後、原子炉圧力容器1に供給する装置である。そのため、給水加熱器伝熱面の熱伝達効率が重要であるが、その熱伝達効率は表面に生じる酸化皮膜厚さに影響されると考えられる。図5は、給水加熱器伝熱面に使用されるSUS304鋼の腐食速度の温度依存性を示している。図5の横軸は温度を示しており、縦軸は腐食速度を示している。凡例の“小林ら”は「『交流インピーダンス方による高温水中のステンレス鋼の腐食速度測定』腐食防食 講演会予稿集(1984年5月)」に記載されたデータであり、“本田ら(1)”は「Boshoku Gijyutu,37,p.287(1988)」に記載されたデータであり、“本田ら(2)”は「防食技術,36,p.646(1987) 」に記載されたデータである。図5から、30年間原子力発電プラントを運転した場合、炉水温度が200℃では約180mg/cm2、180℃では約120mg/cm2、160℃以下では約80mg/cm2の腐食量となることがわかる。酸化皮膜の密度をFe34の密度である5.4g/cm3と仮定すると、酸化皮膜厚さは200℃では約340μm、180℃では約220μm、160℃以下では約150μmとなる。図1の実験結果から、Fe34を付与したSUS304鋼の腐食速度は未処理の場合の約1/2になると考えられることから、30年間運転した場合の1/2であれば、給水加熱器伝熱面からの熱伝達効率を維持できると考えられる。すなわち、給水加熱器伝熱面の表面に形成するスピネル構造の化合物層の厚さは200℃となる部位では約170μm、180℃となる部位では約110μm、160℃以下となる部位では約75μmを上限とすればよい。一方、図1の実験結果より、スピネル構造の化合物層の厚さを1μmすることで腐食速度を抑制することができたことから、給水加熱器伝熱面の表面に形成するスピネル化合物の酸化物厚さは1μm以上とすればよいと考えられる。
尚、スピネル型構造の化合物を給水加熱器伝熱面表面へ付着処理するに際しては、材質や表面状態が給水加熱器伝熱面の表面と同様の試験片をサージタンク108に浸漬させておく。付着処理中に、この試験片を適時取出し、その重量変化量を計測することにより、給水加熱器伝熱面の表面に形成されたスピネル酸化物の厚さを求めることができる。つまり、取出し時の試験片の重量、初期の試験片の重量、及び試験片の表面積がわかれば、式9からスピネル酸化物の厚さを求めることができる。
(式9)
(厚さ/μm)={(取出し時重量/g)−(初期重量/g)}/(表面積/cm2)
×1.85×10-9
(S9)給水加熱器伝熱面の表面に形成されたスピネル型構造の化合物の層が所定の厚さを越えたら、温度調整器105で系統水を室温に冷却する。
(S10)その後、バルブ107を開にして処理設備から系統水を排水する。必要に応じて純水を系統に注入し、給水加熱器5を水洗する。以上により、本実施例による原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法の全工程を終了する。
本実施例によれば、給水加熱器伝熱面に、2価の金属イオンと3価の鉄イオンからなるスピネル構造の化合物の層を形成することにより、給水加熱器伝熱面の母材に対する腐食を抑制でき、腐食に伴うクロムイオンの溶出を抑制することができる。つまり、給水加熱器伝熱面からのクロムイオンの溶出を抑制して、原子炉圧力容器へのクロムイオンの流入を低減することにより、原子炉内構造物表面へのクロム酸化物の蓄積を抑制することができる。従って、原子炉水への水素注入等を停止した場合であっても、原子炉水中のクロムイオン濃度の増大を抑制することができ、その結果、電気伝導率の上昇を抑制し、ひいては応力腐食割れに対する感受性の増大を抑制することが可能となる。
尚、従来技術として、プラント建設時に800℃以上の高温ガス中で母材表面を酸化処理することにより緻密な酸化皮膜を母材表面に形成する方法がある。しかし、既に運転を開始したプラントでこのような処理することは非常に困難である。一方、本実施例のように、プラント停止期間中に、給水加熱器伝熱面にスピネル構造の化合物を形成する方法は100℃以下での実施が可能であるため、既に運転を開始したプラントに対しても容易に処理をすることができる。
給水加熱器5は複数の装置からなり、上流側から各装置で段階的に昇温する構成となっている。クロムイオン発生量は給水加熱器伝熱面の腐食量に比例して大きくなるため、給水加熱器伝熱面の腐食量が大きい高温側、特に160℃以上となる装置に対して実施すれば、効果的にクロムイオン発生量を抑制することができる。
次に、本発明に係る原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法の第2の実施例を、図7を用いて説明する。本実施例は、給水加熱器と圧力容器とを接続する配管の冷却水が接する面に、ジルコニウム又はジルコニウム合金を設置するものである。
図7に示すように、冷却水の流れと平行になるように格子状に組み上げたジルコニウム板201を配管202内に設置する。格子状に組み上げたジルコニウム板201を配管202内に設置することにより、ジルコニウム板201に給水加熱器から腐食溶出したクロムイオンを還元して析出させる。
本実施例によれば、ジルコニウム板表面にクロムイオンを析出させることにより給水からクロムイオンを除去し、原子炉圧力容器へのクロムイオンの流入を低減して、原子炉内構造物表面へのクロム酸化物の蓄積を抑制することができる。従って、原子炉水への水素注入等を停止した場合であっても、原子炉水中のクロムイオン濃度の増大を抑制することができ、その結果、電気伝導率の上昇を抑制し、ひいては応力腐食割れに対する感受性の増大を抑制することが可能となる。
尚、上記実施例では、給水加熱器と圧力容器とを接続する配管中にジルコニウム板201を用いたが、ジルコニウム板201の代わりにジルコニウム合金板を用いても同様の効果を得ることができる。また、ジルコニウム板201の代わりに、ジルコニウムの薄膜をクラッディングした板を用いることもできる。さらには、給水系配管の接水面に直接ジルコニウム合金の薄膜をクラッディングしてもよい。尚、ジルコニウムの薄膜をクラッディングした板を用いた場合には、給水系配管の接水面に直接ジルコニウム合金の薄膜をクラッディングした場合と比較して、冷却水の流れの影響を小さく保ちつつ、冷却水とジルコニウムとの接液面積を大きくすることができる。尚、ジルコニウムの薄膜をクラッディングする代わりに、ジルコニウム合金の薄膜をクラッディングしても同様の効果を得ることができる。
次に、本発明に係る原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法の第3の実施例を、図8を用いて説明する。本実施例は、上述した第3の方法に基づき、プラント停止操作の開始から原子炉水温度が100℃以上である期間に、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入するものである。
図8は、第3の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示している。第3の実施例を適用する原子力プラントは第1の実施例で説明した図4に示す原子力プラントと同様の構造であるから詳細な説明は省略する。但し、第1の実施例で説明した沸騰水型原子力プラントとは、原子炉水浄化系配管10に水素ガス発生装置301及び水素ガス注入量調整バルブ302が接続される点が異なる。
以下に、プラント停止操作の開始から原子炉水温度が100℃までの期間に、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入する手順を以下に示す。尚、本実施例においては、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質として水素を用いる。
まず、給水系配管6からの冷却水の供給を停止する。その後、水素ガス注入量調整バルブ302を開にし、水素を原子炉水中に注入する。原子炉水中への水素の注入は連続的又は断続的に行うことができる。また、原子炉水中への水素の注入に際しては、原子炉底部の溶存酸素濃度を水質モニタ22により測定する。そして、この測定結果に基づいて、原子炉水中の溶存酸素濃度が給水系から冷却水供給が行われている期間の濃度と同程度以下となるように、水素の注入量を調整する。その後、原子炉水温度が100℃以下になったら、水素ガス注入量調整バルブ302を閉にし、水素の注入を停止する。以上により、本実施例による原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法の全工程を終了する。
本実施例によれば、原子炉内の還元性環境を維持することにより、原子炉内構造物表面に付着したクロム酸化物からのクロムイオンの溶出を抑制することができる。従って、原子炉水への水素注入等を停止した場合であっても、原子炉水中のクロムイオン濃度の増大を抑制することができ、その結果、電気伝導率の上昇を抑制し、ひいては応力腐食割れに対する感受性の増大を抑制することが可能となる。
本実施例では原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素を低減する効果を示す物質として水素を例に挙げたが、アンモニアやヒドラジンなどの還元剤やアルコールでもよい。
また、水素ガス発生装置301及び水素ガス注入量調整バルブ302は、原子炉水浄化系配管10の代わりに原子炉冷却水再循環系配管16に接続してもよい。
さらに、本実施例では、原子炉水中の溶存酸素濃度を制御するために、原子炉底部の溶存酸素濃度を水質モニタ22により測定したが、クロムイオン濃度を水質モニタ22により測定し、この結果をもとに、原子炉水中の溶存酸素濃度を制御することも可能である。
次に、本発明に係る原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法の第4の実施例を、図9を用いて説明する。本実施例は、上述した第4の方法に基づき、プラント停止操作の開始後であって原子炉水温度が100℃以上である期間に原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入し、その後、原子炉水温度が100度以下の期間に原子炉水中に酸化剤を注入するものである。
図9は、第4の実施例の応力腐食割れ緩和方法を適用する沸騰水型原子力プラントを示している。第4の実施例を適用する原子力プラントは第3の実施例で説明した図8に示す原子力プラントと同様の構造であるから詳細な説明は省略する。但し、第1の実施例で説明した沸騰水型原子力プラントとは、原子炉水浄化系配管10に過酸化水素水タンク401及び過酸化水素注入ポンプ402が接続されている点が異なる。尚、本実施例では酸化剤として過酸化水素を用いるが、過酸化水素の代わりに酸素やオゾンを用いてもよい。
以下に、プラント停止操作の開始後であって原子炉水温度が100℃以上である期間に原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入し、その後、原子炉水温度が100度以下の期間に原子炉水中に酸化剤を注入する手順について示す。尚、本実施例においては、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質として水素を用いる。
まず、第3の実施例と同様に、プラント停止操作の開始から原子炉水温度が100℃までの期間に、原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質である水素を原子炉水中に注入する。具体的には以下の通りである。給水系配管6からの冷却水の供給を停止する。その後、水素ガス注入量調整バルブ302を開にし、水素を原子炉水中に注入する。原子炉水中への水素の注入は連続的又は断続的に行うことができる。また、原子炉水中への水素の注入に際しては、原子炉底部の溶存酸素濃度を水質モニタ22により測定する。そして、この測定結果に基づいて、原子炉水中の溶存酸素濃度が給水系から冷却水供給が行われている期間の濃度と同程度以下となるように、水素の注入量を調整する。原子炉水への水素の注入は、原子炉水温度が100℃までの期間に行う。その後、水素ガス注入量調整バルブ302を閉にし、水素の注入を停止する。
続いて、原子炉水温度が100℃以下になったら、過酸化水素水タンク401から過酸化水素注入ポンプ402により、過酸化水素水を原子炉水中に注入する。原子炉水への過酸化水素水の注入は連続的又は断続的に行うことができる。また、原子炉水への過酸化水素水の注入に際しては、原子炉底部の溶存酸素濃度を水質モニタ22により測定する。そしてこの測定結果に基づいて、実効酸素濃度が32μmol/L 以下となるように過酸化水素水の注入量を調整する。構造材に蓄積していたクロム酸化物量が十分に低減したら、過酸化水素注入ポンプ402を停止し、原子炉水中への過酸化水素の注入を停止する。クロムイオン濃度は過酸化水素の注入を開始すると増加し、構造材に蓄積していたクロム酸化物が十分に減少すると減少する。従って、クロムイオン濃度をモニタすることにより、構造材に蓄積していたクロム酸化物量が十分に低減したか否かを判断することができる。例えば、クロムイオン濃度が最大値の1/10以下になった時点を、構造材に蓄積していたクロム酸化物量が十分に低減したときのクロムイオン濃度と考えることができる。以上により、本実施例による原子力プラント構造材料の応力腐食割れを緩和する方法の全工程を終了する。
本実施例によれば、第3の実施例と同様に、プラント停止操作の開始から原子炉水温度が100℃までの期間に原子炉水中に含まれる酸素又は過酸化水素と化学反応してその濃度を低減せしめる物質を原子炉水中に注入することにより、原子炉内の還元性環境を維持し、原子炉内構造物表面に付着したクロム酸化物からのクロムイオンの溶出を抑制することができる。さらには、プラント停止操作開始後であって原子炉水温度が100℃以下の期間に原子炉水中に酸化剤を注入することにより、原子炉内構造物表面へのクロム酸化物蓄積量を低減でき、次のプラント運転時にクロムイオンが溶出することを抑制することができる。従って、原子炉水への水素注入等を停止した場合であっても、原子炉水中のクロムイオン濃度の増大を抑制することができ、その結果、電気伝導率の上昇を抑制し、ひいては応力腐食割れに対する感受性の増大を抑制することが可能となる。
本実施例においては、原子炉水浄化系配管10に過酸化水素水タンク401及び過酸化水素注入ポンプ402を接続したが、原子炉水浄化系配管10の代わりに原子炉冷却水再循環系配管16に接続してもよい。
尚、上記各実施例において、プラント運転期間とは給水系から原子炉圧力容器1に冷却水注入が行われている期間を、プラント停止期間とは制御棒が全挿入されている期間及び原子炉圧力容器の蓋が開けられている期間を、プラントの停止操作期間とはプラント運転期間後から給水系から原子炉圧力容器1への冷却水注入が停止して制御棒が全挿入されるまでの期間をいう。
1…原子炉圧力容器、5…給水加熱器、31…水素ガス発生装置、110…pH調整薬液タンク、113…酸化還元電位調整薬液タンク、116…金属イオン薬液タンク、201…ジルコニウム板、301…水素ガス発生装置、401…過酸化水素水タンク。

Claims (5)

  1. 沸騰水型原子力プラントの運転中に、前記沸騰水型原子力プラントの原子炉水中に、酸素又は過酸化水素と化学反応して前記原子炉水中の酸素又は過酸化水素の濃度を低減せしめる物質を注入し、
    前記沸騰水型原子力プラントの給水加熱器と圧力容器とを接続する配管内にジルコニウム又はジルコニウム合金が設置された状態で、前記配管内に冷却水を供給する原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法。
  2. 請求項1において、前記ジルコニウム又はジルコニウム合金は、格子状に組み上げたジルコニウム板又はジルコニウム合金板である原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法。
  3. 沸騰水型原子力プラントの運転中に、前記沸騰水型原子力プラントの原子炉水中に、酸素又は過酸化水素と化学反応して前記原子炉水中の酸素又は過酸化水素の濃度を低減せしめる物質を注入し、
    前記沸騰水型原子力プラントの運転停止操作の開始後であって前記原子炉水の温度が100℃以上である期間に、前記原子炉水中に、前記原子炉水中の酸素又は過酸化水素の濃度を低減せしめる物質を注入する原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法。
  4. 請求項3において、さらに前記沸騰水型原子力プラントの運転停止操作の開始後であって前記原子炉水の温度が100℃以下である期間に、前記原子炉中に酸化剤を注入する原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法。
  5. 請求項1乃至4の何れかにおいて、酸素又は過酸化水素と化学反応して前記原子炉水中の酸素又は過酸化水素の濃度を低減せしめる前記物質は、水素,アンモニア,ヒドラジン、及びアルコールのうち少なくともいずれかである原子力プラント構造材料の応力腐食割れ緩和方法。
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