以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
また、本発明において、反転層とは、誘電体膜中の固定電荷となる不純物によって誘起される、p型半導体表面の電子キャリア層、n型半導体層表面の正孔キャリア層、または、i型(真性型)半導体表面の電子キャリア層または正孔キャリア層の場合も含む。
また、本発明の実施の形態においては、n型層およびp型層を、半導体層と同じ半導体材料に不純物をドープすることによって形成したが、半導体層とは異なる半導体材料を用いてもよい。たとえば、半導体層としてアモルファスシリコンを用いる場合、n型またはp型不純物をドープしたアモルファスシリコンゲルマニウム、または、アモルファス炭化シリコンなどをn型層またはp型層として用いることもできる。
また、本発明の実施の形態においては、半導体層として主にシリコンを用いる場合を中心に説明するが、半導体層としてはシリコンのほかに、窒化ガリウム、炭化シリコン、カドミウムテルル、ガリウム砒素、インジウムリン、Cu(In,Ga)Se2、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム等を用いることもできる。
<実施の形態1>
図1(a)に、本発明の光電変換装置の一例の光入射側の表面の模式的な平面図を示す。ここで、図1(a)に示す構成の本実施の形態の光電変換装置の光入射側の表面には誘電体膜としての酸化シリコン膜6が設置されている。また、酸化シリコン膜6の下部には不純物含有層としての櫛形状のn+層3が形成されており、櫛形状のn+層3に接する表面電極として帯状の金属電極8が形成されている。
図1(b)に、図1(a)の1b−1bに沿った模式的な断面を示し、図1(c)に図1(a)の1c−1cに沿った模式的な断面を示す。図1(b)および図1(c)に示すように、本実施の形態の光電変換装置においては、半導体層としてのp型シリコン基板2の光入射側の表面には上記のn+層3が形成されている。また、p型シリコン基板2の光入射側の表面とは反対側の表面となる裏面にはp+層1が形成されており、p+層1の裏面に接するように裏面電極7が形成されている。なお、p+層1は、p型シリコン基板2よりも高濃度でp型不純物が含有されている層である。
さらに、上記の酸化シリコン膜6は、p型シリコン基板2の光入射側の表面を覆うようにして形成されている。そして、酸化シリコン膜6は、p型シリコン基板2の光入射側の表面との界面において、正の固定電荷となる不純物としてのセシウム5を有している。
ここで、セシウム5は、p型シリコン基板2の光入射側の表面との界面近傍においてイオン化して正の固定電荷となっているため、酸化シリコン膜6が接するp型シリコン基板2の光入射側の表面の少なくとも一部の領域にはn+層3と同様にn型半導体として機能する表面反転層4が誘起される。
なお、p型シリコン基板2の代わりに、真性タイプのシリコン基板を用いてもよい。
以下、図1に示す構成の本実施の形態の光電変換装置の製造方法の一例について説明する。まず、p型シリコン基板2の光入射側の表面に酸化シリコン膜6を形成する。ここで、p型シリコン基板2が単結晶シリコンからなる場合には、たとえば800℃〜1200℃の温度で、好ましくは900℃〜1050℃の温度で熱酸化することによりp型シリコン基板2の光入射側の表面に酸化シリコン膜6を形成することができる。なお、酸化シリコン膜6は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて形成してもよい。また、プラズマCVD法を用いて酸化シリコン膜6を形成することにより、たとえば400℃以下といった低温で酸化シリコン膜6を形成することができる。
次に、p型シリコン基板2の裏面にp+層1を形成する。ここで、p+層1の形成は、たとえばp型シリコン基板2の裏面にp型不純物を拡散させることなどによって行なうことができる。また、p型不純物の拡散は、たとえばBBr3などのp型不純物(ボロン)を含むガスを用いた気相拡散により行なうことができる。なお、p型不純物としては、ボロン以外にも、たとえばアルミニウムやインジウムなどを用いることができる。また、p+層1は、たとえばイオン注入法またはイオンドーピング法などを用いてp型不純物をp型シリコン基板2の裏面に導入した後にアニールすることなどによっても形成することができる。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面にn+層3を形成する。ここで、n+層3の形成は、p型シリコン基板2の光入射側の表面にn型不純物を拡散させることによって行なうことができる。また、n型不純物の拡散は、たとえば、n+層3の形成箇所に対応する箇所の酸化シリコン膜6の一部に開口部を設け、その開口部からPOCl3などのn型不純物(リン)を含むガスを用いた気相拡散により行なうことができる。なお、n型不純物としては、リン以外にも、たとえば砒素またはアンチモンなどを用いることができる。また、n+層3は、たとえばイオン注入法またはイオンドーピング法などを用いてn型不純物をp型シリコン基板2の表面に導入した後にアニールすることなどによっても形成することができる。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面に形成された酸化シリコン膜6にセシウム5を含有させる。ここで、セシウム5は、たとえば、p型シリコン基板2の光入射側の表面上に形成された酸化シリコン膜6にセシウムイオンをイオン注入することによって、酸化シリコン膜6にセシウム5を含有させることができる。
次に、p型シリコン基板2のアニールを行なう。ここで、p型シリコン基板2のアニールは、たとえば上記のセシウムイオン注入後のp型シリコン基板2をたとえば800℃〜1000℃の温度でアニールすることにより行なうことができる。これにより、酸化シリコン膜6中のセシウム5をp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面に偏析させることができる。酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2との界面に偏析したセシウム5は電子をp型シリコン基板2に放出することによって正に帯電してイオン化するため、酸化シリコン膜6が接するp型シリコン基板2の光入射側の表面に表面反転層4が形成される。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面に金属電極8を形成する。ここで、金属電極8は、たとえば、金属電極8が形成される箇所に対応する酸化シリコン膜6の箇所に開口部を設け、マスクなどを用いて金属を所定の形状に蒸着すること等によって形成することができる。
次に、p型シリコン基板2のp+層1の裏面に裏面電極7を形成する。ここで、裏面電極7は、たとえば、p型シリコン基板2のp+層1の裏面に金属を蒸着すること等によって形成することができる。
最後に、上記の金属電極8および裏面電極7の形成後のp型シリコン基板2のアニールを行なうことによって、上記の構成を有する本実施の形態の光電変換装置の一例が作製される。ここで、p型シリコン基板2のアニールは、たとえば350℃〜500℃の温度の水素雰囲気にp型シリコン基板2を曝すことによって行なうことができる。
以上のようにして作製した上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2の光入射側の表面とが接しており、酸化シリコン膜6のp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面でイオン化したセシウムによって、p型シリコン基板2の光入射側の表面に表面反転層4が形成される。
したがって、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、固定電荷を含む第二層と半導体表面との間に固定電荷を含まない第一層が設置された構成の特許文献1に記載の太陽電池と比べて表面反転層4に高密度に負電荷が誘起されやすく、n型半導体としての機能が高められ、p型シリコン基板2の光入射側の表面におけるキャリアの再結合が抑制されることなどにより、光電変換効率などの光電変換装置の特性が向上する。
また、p型シリコン基板2の光入射側の表面に短波長の光の吸収源となるn+層3の代わりに、n型半導体として機能する表面反転層4を設けることによって、短波長の光の吸収がn+層3と比べて抑えられるため、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面におけるセシウムの偏析量によって表面反転層4に誘起される負電荷(電子)の密度を制御することができる。
特に、本実施の形態のように、酸化シリコン膜6へのセシウムイオン注入とアニールによって酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2との界面にセシウムを偏析させる場合、表面反転層4における最適な負電荷の密度を得るためのセシウムイオン注入量のマージンが広いため、安定した品質で高特性の光電変換装置を提供することができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面における界面準位を表面反転層4に誘起される負電荷で終端することにより、p型シリコン基板2の光入射側の表面における界面準位でのキャリアの再結合が抑制され、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、上記においては、半導体層としてp型シリコン基板2を用いたが、これには限定されず、たとえば結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンまたはシリコン以外の他の種類の半導体などの半導体層を用いてもよい。なお、結晶シリコンには、単結晶シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンと多結晶シリコンとの混合体などが含まれる。
また、上記においては、p型シリコン基板2が単結晶シリコンからなる場合について説明したが、p型シリコン基板2に代えてたとえばアモルファスシリコンからなる半導体層を用いた場合には、セシウム5を含む酸化シリコン膜6を形成した後には、高温プロセスを行なわないようにして本実施の形態の光電変換装置を作製することが好ましい。
また、上記においては、誘電体膜として酸化シリコン膜6を用いたが、これに限定されないことは言うまでもなく、たとえば、酸化シリコン、酸窒化シリコンおよび窒化シリコンからなる群から選択された少なくとも1種を用いてもよい。
また、誘電体膜としては、バンドギャップが4.2eV以上である誘電体膜を用いることが好ましい。たとえば太陽光の大部分は300nm以上の波長を有する光から構成されているため、バンドギャップが4.2eV以上である誘電体膜を用いて太陽光を入射させた場合には、300nm以上の波長を有する太陽光が誘電体膜で吸収されるのが抑制され、変換ロスが少なくなるため、光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
また、上記においては、正の固定電荷となる不純物としてセシウム5を用いた場合について説明したが、これには限定されず、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リン、砒素およびアンチモンからなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、p型とn型の導電型が入れ替わっていてもよい。この場合には、セシウムのような正の固定電荷となる不純物の代わりに、負の固定電荷となる不純物を用いることができる。負の固定電荷となる不純物としては、たとえば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、白金、フッ化フラーレン、酸化フラーレン、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。
なお、正の固定電荷となる不純物および負の固定電荷となる不純物はそれぞれ酸化物の状態で含まれていてもよい。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、上記の不純物が最も多く存在する箇所は、半導体層としてのp型シリコン基板2と誘電体膜としての酸化シリコン膜6との界面から、この界面に対して垂直な方向に半導体層としてのp型シリコン基板2側に5nm進向した領域と、誘電体膜としての酸化シリコン膜6側に5nm進向した領域との間の領域に位置することが好ましい。この場合には、上記構成の本実施の形態の光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
すなわち、本実施の形態の光電変換装置においては、誘電体膜が、半導体層との界面近傍に、正または負の固定電荷となる不純物を有していればよいが、この不純物の少なくとも一部が、半導体層と誘電体膜との界面から、この界面に対して垂直な方向に半導体層側に5nm進向した領域と、誘電体膜側に5nm進向した領域との間の領域に存在していればよい。
また、上記においては、p型シリコン基板2の光入射側の酸化シリコン膜6を反射防止膜として機能させてもよく、酸化シリコン膜6の表面にテクスチャ構造および/またはモスアイ構造などを形成してもよいことは言うまでもない。
また、上述したように、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、n型とp型の導電型を入れ替えてもよい。なお、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においてn型とp型の導電型を入れ替えた場合には、正と負の電荷の極性も入れ替わることになる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p+層1については形成しなくてもよい。
<実施の形態2>
図2(a)に、本発明の光電変換装置の他の一例の光入射側の表面の模式的な平面図を示す。また、図2(b)に図2(a)の2b−2bに沿った模式的な断面を示し、図2(c)に図2(a)の2c−2cに沿った模式的な断面を示す。
ここで、図2(a)〜図2(c)に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面の全面にn+層3と接する電極として透明導電膜9が形成されている点に特徴がある。
本実施の形態のような構成とすることによって、p型シリコン基板2の光入射側の表面の全面から光を入射させることができ、電極の低抵抗化による光電変換装置の光電変換効率などの特性の向上をさらに向上させることが可能になる。また、電極のパターンニング工程および電極のパターンニング用のマスクが必要なくなるため、製造コストの低減および製造効率の向上も可能となる。
なお、透明導電膜9としては、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide)、IO(Indium Oxide;酸化インジウム)、TO(Tin Oxide;酸化スズ)またはZO(Zinc Oxide;酸化亜鉛)からなる層の単層または複数層の積層体を用いることができる。
また、透明導電膜9は、たとえば、n+層3の少なくとも一部が露出するように酸化シリコン膜6の一部に開口部を設け、ITO、IO、TOまたはZOなどからなる透明導電膜9をその上から覆うように蒸着等することによって形成することができる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態3>
図3(a)に、本発明の光電変換装置の他の一例の光入射側の表面の模式的な平面図を示す。また、図3(b)に図3(a)の3b−3bに沿った模式的な断面を示し、図3(c)に図3(a)の3c−3cに沿った模式的な断面を示す。
ここで、図3(a)〜図3(c)に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面にn+層3と接する電極としての透明導電膜9が櫛形状に形成されている点に特徴がある。
本実施の形態のような構成とすることによって、p型シリコン基板2の光入射側の表面上に形成される透明導電膜9の表面の面積を低減することができるため、透明導電膜9による光の反射や吸収を抑制することができる。これにより、本実施の形態の光電変換装置においては、実施の形態2の構成の光電変換装置と比べて、光電変換効率などの特性の向上をさらに向上させることが可能になる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1および実施の形態2と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態4>
図4(a)に、本発明の光電変換装置の他の一例の光入射側の表面の模式的な平面図を示す。また、図4(b)に図4(a)の4b−4bに沿った模式的な断面を示し、図4(c)に図4(a)の4c−4cに沿った模式的な断面を示す。
ここで、図4(a)〜図4(c)に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面にn+層3と接する電極として櫛形状の金属シリサイド10が形成されている点に特徴がある。
本実施の形態のような構成とすることによって、従来から公知の自己整合シリサイド化(SALICIDE)プロセスを用いることによって櫛形状のn+層3の表面上に櫛形状の金属シリサイド10を形成することができ、電極のパターンニング工程および電極のパターンニング用のマスクが必要なくなるため、製造コストの低減および製造効率の向上が可能となる。
なお、金属シリサイド10としては、少なくとも1種の任意の金属とシリコンとの化合物からなるものであれば特には限定されず用いることができ、たとえば、チタンシリサイド(TiSix(x≒0.5〜2))、エルビウムシリサイド(ErSix(x≒0.5〜2))、イッテルビウムシリサイド(YbSix(x≒0.5〜2))、白金シリサイド(PtSix(x≒0.5〜1))、ニッケルシリサイド(NixSi(x≒0.5〜2))またはコバルトシリサイド(CoxSi(x≒0.5〜2))などを用いることができる。また、p型シリコン基板2の代わりに、アモルファスシリコンなどを用いる場合のように低温プロセスが必要である場合であっても、NixSi(x≒1〜2)、CoxSi(x≒1〜2)を用いることにより、たとえば400℃以下の低温で金属シリサイド10を形成することが可能である。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1〜実施の形態3と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態5>
図5に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な断面図を示す。図5に示す構成の本実施の形態の光電変換装置は、第1の光電変換層51と、第2の光電変換層52と、第3の光電変換層53とが光入射側からこの順序で積層された積層構造を有している。
ここで、第1の光電変換層51は、第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2aと、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面に接するように設置されている誘電体膜である表面誘電体膜としての酸化シリコン膜6とを有している。
また、酸化シリコン膜6は、第1のアモルファスシリコン層2aとの界面近傍に、正の固定電荷となる不純物としてのセシウム5を有している。ここで、セシウム5は、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面との界面近傍においてイオン化して正の固定電荷となっているため、酸化シリコン膜6が接する第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面の少なくとも一部の領域にはn型半導体として機能する表面反転層4が誘起される。
また、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面とは反対側の表面となる裏面には、上記の表面反転層4とは逆の導電型の第1の不純物(本実施の形態においてはp型不純物)を有する第1の不純物含有層としてのp+層1が形成されている。
また、第2の光電変換層52は、第2の半導体層としての第2のアモルファスシリコン層2bを有している。
ここで、第2のアモルファスシリコン層2bの光入射側の表面に上記の第1の不純物とは逆の導電型の第2の不純物(本実施の形態においてはn型不純物)を有する第2の不純物含有層としてのn+層3が形成されている。
また、第2のアモルファスシリコン層2bの光入射側の表面とは反対側の表面となる裏面には、上記の第2の不純物とは逆の導電型の第3の不純物(本実施の形態においてはp型不純物)を有する第3の不純物含有層としてのp+層1が形成されている。
また、第3の光電変換層53は、第3の半導体層としての第3のアモルファスシリコン層2cを有している。
ここで、第3のアモルファスシリコン層2cの光入射側の表面には、上記の第3の不純物とは逆の導電型の第4の不純物(本実施の形態においてはn型不純物)を有する第4の不純物含有層としてのn+層3が形成されている。
また、第3のアモルファスシリコン層2cの光入射側の表面とは反対側の表面となる裏面には、上記の第4の不純物とは逆の導電型の第5の不純物(本実施の形態においてはp型不純物)を有する第5の不純物含有層としてのp+層1が形成されている。
そして、上記の第1の光電変換層51の光入射側の表面とは反対側の裏面に形成されたp+層1と、上記の第2の光電変換層52の光入射側の表面に形成されたn+層3とが接合されている。また、上記の第2の光電変換層52の光入射側の表面とは反対側の裏面に形成されたp+層1と、上記の第3の光電変換層53の光入射側の表面に形成されたn+層3とが接合されている。これらの接合によって、第1の光電変換層51、第2の光電変換層52および第3の光電変換層53が光入射側からこの順序で積層された積層構造を構成している。
また、上記の積層構造の第1の光電変換層51の第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面の一部に接するように表面電極としての透明導電膜9が形成されているとともに、上記の積層構造の第3の光電変換層53の第3のアモルファスシリコン層2cの裏面のp+層1に接するようにたとえばアルミニウムなどからなる裏面電極7が形成されている。ここで、透明導電膜9は、酸化シリコン膜6に形成された開口部を通して第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面と接している。
なお、透明導電膜9と第1のアモルファスシリコン層2aとの大部分の接触部においてはショットキバリアにより導通を図ることが困難であり、光電変換装置で生成したキャリアを取り出すのは難しい。しかしながら、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面に接触する透明導電膜9の端部であるエッジ部11は表面反転層4と接触し、エッジ部11においてはショットキバリア変調効果によりショットキバリアが低減して接触抵抗が低くなりオーミック接続が可能となるため、光電変換装置で生成したキャリアをより容易に外部に取り出すことが可能になる。
以下、図5に示す構成の本実施の形態の光電変換装置の製造方法の一例について説明する。まず、裏面電極7の表面上に第3の光電変換層53を形成する。ここで、第3の光電変換層53は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、裏面電極7の表面上に、p型不純物をドープさせたp型アモルファスシリコン膜を形成してp+層1を形成した後に、p型不純物のドープを停止してノンドープのアモルファスシリコン膜を形成して第3のアモルファスシリコン層2cを形成し、さらにはn型不純物をドープさせたn型アモルファスシリコン膜を形成してn+層3を形成することによって形成することができる。
また、p型不純物のドープによるp型アモルファスシリコン膜の形成は、たとえば、p型不純物を含むドーピングガスをアモルファスシリコン膜の原料ガスに混入した状態でアモルファスシリコン膜を成膜することによって行なうことができる。なお、p型不純物としては、たとえば、ボロン、インジウムまたはアルミニウムなどを用いることができる。
また、n型不純物のドープによるn型アモルファスシリコン膜の形成は、たとえば、n型不純物を含むドーピングガスをアモルファスシリコン膜の原料ガスに混入した状態でアモルファスシリコン膜を成膜することによって行なうことができる。なお、n型不純物としては、たとえば、リン、砒素またはアンチモンなどを用いることができる。
なお、第3の光電変換層53として、n−i−p構造のアモルファスシリコンを用いたが、表面にn+層を形成したp型の単結晶または多結晶シリコンを用いてもよい。この場合には、変換効率がさらに向上する。
次に、第3の光電変換層53の表面上に第2の光電変換層52を形成する。ここで、第2の光電変換層52も、第3の光電変換層53と同様に、たとえばCVD法などによって、第3の光電変換層53の表面上に、p型不純物をドープさせたp型アモルファスシリコン膜を形成してp+層1を形成した後に、p型不純物のドープを停止してノンドープのアモルファスシリコン膜を形成して第2のアモルファスシリコン層2bを形成し、さらにはn型不純物をドープさせたn型アモルファスシリコン膜を形成してn+層3を形成することによって形成することができる。
次に、第2の光電変換層52の表面上に第1の光電変換層51を形成する。ここで、第1の光電変換層51は、たとえば以下のようにして形成することができる。まず、CVD法などによって、第2の光電変換層52の表面上に、p型不純物をドープさせたp型アモルファスシリコン膜を形成してp+層1を形成した後に、p型不純物のドープを停止してノンドープのアモルファスシリコン膜を形成して第1のアモルファスシリコン層2aを形成する。その後、第1のアモルファスシリコン層2aの表面上にセシウム5を含む酸化シリコン膜6を形成することによって、第1の光電変換層51を形成することができる。
ここで、セシウム5を含む酸化シリコン膜6は、たとえばCVD法において、酸化シリコンの原料とともにセシウム蒸気などのセシウムを含むガスを導入することにより形成することができる。また、セシウム5は、たとえば、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面上に形成された酸化シリコン膜6にセシウムイオンをイオン注入することによって、酸化シリコン膜6にイオン化したセシウム5を含有させることができる。また、アモルファスシリコン層2aの表面に、たとえば塩化セシウム水溶液または水酸化セシウム水溶液などのセシウムを含有する溶液を塗布し、乾燥した後、たとえばCVD法などによって酸化シリコン膜6を形成することにより、アモルファスシリコン層2aと酸化シリコン膜6との界面付近にセシウム5を配置することができる。
最後に、第1の光電変換層51の光入射側の表面上に透明導電膜9を形成することによって、図5に示す構成の本実施の形態の光電変換装置が作製される。ここで、透明導電膜9は、たとえば、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面の少なくとも一部が露出するように酸化シリコン膜6の一部に開口部を設け、ITO、IO、TOまたはZOなどからなる透明導電膜9をその上から覆うように、スパッタリングまたは蒸着等することによって形成することができる。
以上のようにして作製した上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6と第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面とが接しており、酸化シリコン膜6の第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面との界面でイオン化したセシウムによって、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面に表面反転層4が形成される。
したがって、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、固定電荷を含む第二層と半導体表面との間に固定電荷を含まない第一層が設置された構成の特許文献1に記載の太陽電池と比べて表面反転層4に高密度に負電荷が誘起されやすく、n型半導体としての機能が高められ、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面におけるキャリアの再結合が抑制されることなどにより、光電変換効率などの光電変換装置の特性が向上する。
また、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面に短波長の光の吸収源となるn+層の代わりに、n型半導体として機能する表面反転層4を設けることによって、短波長の光の吸収がn+層と比べて抑えられるため、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6と第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面との界面におけるセシウムの偏析量によって表面反転層4に誘起される負電荷の密度を制御することができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面における界面準位を表面反転層4に誘起される負電荷で終端することにより、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面における界面準位でのキャリアの再結合が抑制され、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、本実施の形態の光電変換装置のように、表面電極と接する半導体層にアモルファスシリコンを用いている場合には、不純物の活性化率が低くなるため、表面電極と接する半導体層に高濃度の不純物ドープ層を形成することは難しいが、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6中のイオン化したセシウムによって第1のアモルファスシリコン層2aの表面に表面反転層4を形成することができ、表面反転層4と透明導電膜9とを接触させることができるため、高濃度の不純物ドープ層を形成する必要がない。
また、上記においては、第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層としてそれぞれアモルファスシリコンを用いたが、これには限定されず、第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層としては、たとえば結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンまたはシリコン以外の他の種類の半導体などの半導体層をそれぞれ用いてもよい。なお、結晶シリコンには、単結晶シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンと多結晶シリコンとの混合体などが含まれる。
また、第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層にそれぞれ結晶シリコンを用いた場合には、第1の光電変換層51と第2の光電変換層52と第3の光電変換層53との積層構造は、たとえば、以下のようにして作製することができる。まず、結晶シリコンの一方の表面にp型不純物を拡散させてp+層1を形成し、結晶シリコンの他方の表面にn型不純物を拡散させてn+層3を形成したシリコン基板(両面ドープシリコン基板)を2枚作製するとともに、結晶シリコンの一方の表面のみにp型不純物を拡散させてp+層1を形成し、結晶シリコンの他方の表面にはn型不純物を拡散させずにn+層3を形成しなかったシリコン基板(片面ドープシリコン基板)を1枚作製する。そして、片面ドープシリコン基板のp+層1に1枚の両面ドープシリコン基板のn+層3を貼り合わせるとともに、当該両面ドープシリコン基板のp+層1に他の両面ドープシリコン基板のn+層3を貼り合わせることによって、上記の積層構造を作製することができる。
その後、露出している片面ドープシリコン基板の表面にセシウム5を配置した後、たとえば、熱酸化法、CVD法、ALD法、RTO(Rapid Thermal Oxidation:急速熱酸化)法、またはプラズマ酸化法などによって露出している片面ドープシリコン基板の表面の一部に酸化シリコン膜6を形成する。続いて、たとえば、スパッタ法、CVD法またはゾルゲル法などを用いることによって、ITO、IO、TOまたはZOなどからなる透明導電膜9を形成し、当該透明導電膜9とは逆側の上記積層構造の裏面のp型層に接して裏面電極7を形成することによって本実施の形態の光電変換装置を作製することができる。なお、セシウム5は、酸化シリコン膜6を形成した後、酸化シリコン膜6中にセシウムイオンをイオン注入し、その後アニールすることによって、酸化シリコン膜6と片面ドープシリコン基板の界面に偏析させてもよい。
このように、酸化シリコン膜6のアニールによって酸化シリコン膜6と第1の半導体層との界面近傍にイオン化したセシウム5を偏析させる場合、表面反転層4における最適な電子の密度を得るためのセシウムイオン注入量のマージンが広いため、安定した品質で高特性の光電変換装置を提供することができる。また、所望の膜厚よりも厚い酸化シリコン膜6を形成した後、酸化シリコン膜6中にセシウムイオンをイオン注入し、続いてアニールすることによってセシウムを酸化シリコン膜6と片面ドープシリコン基板との界面に偏析させ、その後、フッ酸水溶液などでの処理または反応性イオンエッチングなどを行なうことによって、酸化シリコン膜6が所望の膜厚になるまで薄膜化してもよい。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、光入射側に近い第1の半導体層のバンドギャップが、光入射側から遠い第2の半導体層のバンドギャップ以上であることが好ましい。また、光入射側に近い第2の半導体層のバンドギャップが、光入射側から遠い第3の半導体層のバンドギャップ以上であることがより好ましい。さらには、光入射側に近い第1の半導体層のバンドギャップが光入射側から遠い第2の半導体層のバンドギャップ以上であり、かつ光入射側に近い第2の半導体層のバンドギャップが光入射側から遠い第3の半導体層のバンドギャップ以上である(第3の半導体層のバンドギャップ≦第2の半導体層のバンドギャップ≦第1の半導体層のバンドギャップ)ことがさらに好ましい。このような光入射側から短波長の光から長波長の光を順次吸収できるような積層構造とすることによって、本実施の形態の光電変換装置に入射した光の吸収量が大きくなるため、光電変換効率などの本実施の形態の光電変換装置の特性が向上する傾向にある。
なお、上記の第3の半導体層のバンドギャップ≦第2の半導体層のバンドギャップ≦第1の半導体層のバンドギャップの関係とするための半導体層の構成としては、たとえば、第1の半導体層にアモルファスの炭化ケイ素(SiC)を用い、第2の半導体層にアモルファスシリコンを用い、第3の半導体層に微結晶シリコンを用いる構成が挙げられる。
また、上記の第3の半導体層のバンドギャップ≦第2の半導体層のバンドギャップ≦第1の半導体層のバンドギャップの関係とするための半導体層の他の構成としては、たとえば、第1の半導体層にアモルファスの炭化ケイ素を用い、第2の半導体層にアモルファスシリコンを用い、第3の半導体層にアモルファスのシリコンゲルマニウム(SiGe)を用いる構成が挙げられる。
また、第1の半導体層の厚さは、第1の半導体層内でのキャリア拡散長よりも薄いことが好ましい。この場合には、第1の半導体層内でのキャリアの再結合を有効に抑止することができるとともに、本実施の形態のように積層構造とすることによって、入射した光が吸収される確率も高くすることができる。
また、第2の半導体層の厚さは、第2の半導体層内でのキャリア拡散長よりも薄いことが好ましい。この場合には、第2の半導体層内でのキャリアの再結合を有効に抑止することができるとともに、本実施の形態のように積層構造とすることによって、入射した光が吸収される確率も高くすることができる。
また、第3の半導体層の厚さは、第3の半導体層内でのキャリア拡散長よりも薄いことが好ましい。この場合には、第3の半導体層内でのキャリアの再結合を有効に抑止することができるとともに、本実施の形態のように積層構造とすることによって、入射した光が吸収される確率も高くすることができる。
また、上記においては、表面誘電体膜として酸化シリコン膜6を用いたが、これに限定されないことは言うまでもなく、たとえば、酸化シリコン、酸窒化シリコンおよび窒化シリコンからなる群から選択された少なくとも1種を用いてもよい。
また、表面誘電体膜としては、バンドギャップが4.2eV以上である誘電体膜を用いることが好ましい。たとえば太陽光の大部分は300nm以上の波長を有する光から構成されているため、バンドギャップが4.2eV以上である表面誘電体膜を用いて太陽光を入射させた場合には、300nm以上の波長を有する太陽光が誘電体膜で吸収されるのが抑制され、変換ロスが少なくなるため、光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
また、上記においては、正の固定電荷となる不純物としてセシウム5を用いた場合について説明したが、これには限定されず、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リン、砒素およびアンチモンからなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、p型とn型の導電型が入れ替わっていてもよい。この場合には、セシウムのような正の固定電荷となる不純物の代わりに、負の固定電荷となる不純物を用いることができる。負の固定電荷となる不純物としては、たとえば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、白金、フッ化フラーレン、酸化フラーレン、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。
なお、正の固定電荷となる不純物および負の固定電荷となる不純物はそれぞれ酸化物の状態で含まれていてもよい。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、上記の不純物が最も多く存在する箇所は、第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2aと表面誘電体膜としての酸化シリコン膜6との界面から、この界面に対して垂直な方向に第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2a側に5nm進向した領域と、表面誘電体膜としての酸化シリコン膜6側に5nm進向した領域との間の領域に位置することが好ましい。この場合には、上記構成の本実施の形態の光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
すなわち、本発明の光電変換装置においては、表面誘電体膜が、第1の半導体層との界面近傍に、正または負の固定電荷となる不純物を有していればよいが、この不純物の少なくとも一部が、第1の半導体層と表面誘電体膜との界面から、この界面に対して垂直な方向に第1の半導体層側に5nm進向した領域と、表面誘電体膜側に5nm進向した領域との間の領域に存在していればよい。
また、上記においては、第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の酸化シリコン膜6を反射防止膜として機能させてもよく、酸化シリコン膜6の表面にテクスチャ構造および/またはモスアイ構造などを形成してもよいことは言うまでもない。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層の3層を積層した積層構造を有する場合について説明したが、3層に限定されるものではないことは言うまでもない。
また、上述したように、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、n型とp型の導電型を入れ替えてもよい。なお、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においてn型とp型の導電型を入れ替えた場合には、正と負の電荷の極性も入れ替わることになる。
また、本実施の形態の光電変換装置のように、第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層にそれぞれアモルファスシリコンを用いる場合には、第1の半導体層、第2の半導体層および第3の半導体層はそれぞれ光入射側の表面にp+層を有していることが好ましい。これは次のような理由による。光照射時のキャリア生成は、半導体層の中でも光入射側で多く起こるため、半導体層の光入射側の表面にp+層を設けることによって、電子に比べてライフタイムの短い正孔がp+層に到達するまでの移動距離を小さくすることができる。したがって、正孔の再結合を抑制することによって、変換効率を向上させることができる。
上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、透明導電膜9として、たとえば、ITO、IO、TOまたはZOからなる層の単層または複数層の積層体を用いることができる。
なお、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、透明導電膜9に代えて、金属電極を用いてもよい。しかしながら、第1の半導体層に接する電極として金属電極を用いる場合には、光入射を考慮して、第1の半導体層の表面の一部のみに形成されていることが好ましい。
<実施の形態6>
図6に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な断面図を示す。ここで、図6に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、第1の光電変換層51の第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面の一部にn+層3が形成されており、n+層3に透明導電膜9が接するようにして形成されている点に特徴がある。
本実施の形態のような構成とすることによって、実施の形態5の構成の光電変換装置と比べて、透明導電膜9の接触抵抗を低減することができるため、光電変換装置の光電変換効率などの特性を向上させることが可能になる。
また、本実施の形態の光電変換装置の酸化シリコン膜6においては、正の固定電荷となるイオン化されたセシウム5が第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面との界面近傍に配置されているため、酸化シリコン膜6と接するn+層3の領域に負電荷が誘起されて蓄積層13が形成される。この蓄積層13と透明導電膜9との接触によっても透明導電膜9の接触抵抗を低減することができる。なお、上記および下記のいずれの実施の形態の光電変換装置の構成においても、負の電荷が誘起される反転層とn+層との重複領域、および正の電荷が誘起される反転層とp+層との重複領域はいずれも蓄積層となりうることは言うまでもない。
また、n+層3は、第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面に、n+層3の形成箇所に対応する箇所に開口部を有するマスクを設置した後にn型不純物をこの開口部から拡散させることによって形成することができる。なお、n型不純物の拡散は、たとえば、POCl3などのn型不純物を含むガスを用いた気相拡散により行なうことができる。また、たとえば、上記の開口部へのイオン注入またはイオンドーピングによって、リン、砒素またはアンチモンなどのn型不純物をドーピングすることによってn+層3を形成することもできる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態5と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態7>
図7に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な断面図を示す。ここで、図7に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、第1の光電変換層51の第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面の一部に金属シリサイド10が形成されている点に特徴がある。
本実施の形態のような構成とすることによって、金属シリサイド10は、金属のように低抵抗であるために金属シリサイド10によって低抵抗の櫛形状の電極を形成することができ、また透明導電膜による光の吸収を抑制することができることから、実施の形態5の光電変換装置と比べて、光電変換装置の光電変換効率などの特性を向上させることが可能になる。
なお、金属シリサイド10は、たとえば従来から公知の自己整合シリサイド化(SALICIDE)プロセスを用いることによって形成することができる。SALICIDEプロセスを用いることにより、電極加工用のマスクを不要とし、容易に電極を形成することが可能となる。
また、金属シリサイド10としては、少なくとも1種の任意の金属とシリコンとの化合物からなるものであれば特には限定されず用いることができ、シリコンと化合する金属としては、たとえば、Ti、Ni、Co、Er、YbまたはPtなどが挙げられる。なかでも、シリコンと化合する金属としては、低温で形成可能なニッケルシリサイド(NixSi(x≒0.5〜2))またはコバルトシリサイド(CoxSi(x≒0.5〜2))などを用いることができる。
また、本実施の形態の光電変換装置においては、金属シリサイド10に接する透明導電膜等を用いて配線層を形成しても良い。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態5と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態8>
図8に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な断面図を示す。ここで、図8に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、第1の光電変換層51の第1の半導体層としての第1のアモルファスシリコン層2aの光入射側の表面の一部に金属シリサイド10が形成されており、金属シリサイド10と第1のアモルファスシリコン層2aとの間の領域にn型不純物が偏析することによって形成されたn+層3が形成されている点に特徴がある。
本実施の形態のような構成においても、実施の形態7の構成の光電変換装置と比べて、金属シリサイド10と第1のアモルファスシリコン層2aとの間の整流特性を改善することができ、また金属シリサイド10と表面反転層4と間の抵抗を下げることができるため、光電変換装置の光電変換効率などの特性を向上させることが可能になる。
また、本実施の形態のような構成とすることによって、実施の形態7の構成の光電変換装置と比べて、透明導電膜9の接触抵抗をさらに低減することができるため、光電変換装置の光電変換効率などの特性をさらに向上させることが可能になる。
また、本実施の形態の光電変換装置においては、金属シリサイド10と接する透明導電膜を形成しても良い。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態5〜7と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態9>
図9に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な断面図を示す。ここで、図9に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、第3の光電変換層53の第3のアモルファスシリコン層2cの裏面に接するように、表面誘電体膜4が有する正の固定電荷となるセシウム5とは逆の極性の負の固定電荷となる不純物50を有する裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60が形成されている点に特徴がある。
ここで、裏面誘電体膜に含まれる負の固定電荷となる不純物は、第3のアモルファスシリコン層2cの裏面との界面近傍においてイオン化等して負の固定電荷となっているため、裏面誘電体膜が接する第3のアモルファスシリコン層2cの裏面の少なくとも一部の領域にはp型半導体として機能する裏面反転層40が誘起される。
上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、裏面電極7として透明導電膜などの透明電極を用いて、第1の光電変換層51側からだけでなく第3の光電変換層53側からも光を入射させたときに、第3の光電変換層のp+層1による短波長の光の吸収を抑制することができるため、光電変換装置の光電変換効率などの特性を向上させることが可能になる。
なお、裏面誘電体膜としては、酸化シリコン膜60を用いたが、これに限定されないことは言うまでもなく、たとえば、酸化シリコン、酸窒化シリコンおよび窒化シリコンからなる群から選択された少なくとも1種を用いてもよい。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60に含まれる不純物50が最も多く存在する箇所は、第3の半導体層としての第3のアモルファスシリコン層2cと裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60との界面から、この界面に対して垂直な方向に第3の半導体層としての第3のアモルファスシリコン層2c側に5nm進向した領域と、裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60側に5nm進向した領域との間の領域に位置することが好ましい。この場合には、上記構成の本実施の形態の光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
すなわち、本発明の光電変換装置においては、裏面誘電体膜が、第3の半導体層との界面近傍に、表面誘電体膜に含まれる正または負の固定電荷となる不純物と逆の極性の固定電荷となる不純物を有していることが好ましいが、この不純物の少なくとも一部が、第3の半導体層と裏面誘電体膜との界面から、この界面に対して垂直な方向に第3の半導体層側に5nm進向した領域と、裏面誘電体膜側に5nm進向した領域との間の領域に存在していればよい。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態5と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態10>
図10に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な斜視図を示す。ここで、図10に示す構成の本実施の形態の光電変換装置の半導体層としてのp型シリコン基板2の光入射側の表面には凹凸15が形成されており、凹凸15が形成されているp型シリコン基板2の光入射側の表面上には表面誘電体膜としての酸化シリコン膜6が設置されている。また、半導体層としてのp型シリコン基板2の光入射側の表面の一部にはn+層3が形成されている。
また、酸化シリコン膜6は、p型シリコン基板2の光入射側の表面との界面近傍において、正の固定電荷となる不純物としてのセシウム(図示せず)を有しており、セシウムはp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面近傍においてイオン化して正の固定電荷となっているため、酸化シリコン膜6が接するp型シリコン基板2の光入射側の表面の少なくとも一部の領域にはn+層3と同様にn型半導体として機能する表面反転層4が誘起される。
また、p型シリコン基板2の光入射側の表面とは反対側の表面となる裏面の一部にはp+層1が形成されているとともに、p型シリコン基板2の裏面上には酸化シリコン膜26が設置されている。また、p型シリコン基板2の裏面上には酸化シリコン膜26を介して裏面電極7が形成されており、裏面電極7は酸化シリコン膜26に形成された開口部を通してp+層1の裏面の一部に接するように形成されている。
また、p型シリコン基板2の光入射側の表面上には酸化シリコン膜6を介して表面電極としての金属電極8が形成されており、金属電極8は酸化シリコン膜6に形成された開口部を通してn+層3の表面の一部に接するように形成されている。
以下、図10に示す構成の本実施の形態の光電変換装置の製造方法の一例について説明する。まず、p型シリコン基板2の光入射側の表面に凹凸15を形成する。ここで、凹凸15の形成は、たとえば、水酸化カリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を用いたウエットエッチングによりp型シリコン基板2の光入射側の表面にテクスチャ構造を形成することにより行なうことができる。
また、凹凸15の形成は、たとえば、レーザ光の照射、RIE(Reactive Ion Etching)またはプラズマ照射などによってp型シリコン基板2の光入射側の表面の一部を除去することによっても行なうことができる。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面上に酸化シリコン膜6を形成するとともに、p型シリコン基板2の光入射側の表面とは反対側の裏面上に酸化シリコン膜26を形成する。ここで、p型シリコン基板2が単結晶シリコンからなる場合には、たとえば950℃以上の温度で熱酸化することによりp型シリコン基板2の光入射側の表面に酸化シリコン膜6を形成するとともに、p型シリコン基板2の裏面に酸化シリコン膜26を形成することができる。
次に、p型シリコン基板2の裏面にp+層1を形成する。ここで、p+層1の形成は、たとえば、p型シリコン基板2の裏面にp+層1の形成箇所に対応する箇所に開口部を設けたマスクを設置し、その開口部からp型不純物を拡散させることなどによって行なうことができる。また、p型不純物の拡散は、たとえばBBr3などのp型不純物を含むガスを用いた気相拡散により行なうことができる。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面にn+層3を形成する。ここで、n+層3の形成は、p型シリコン基板2の光入射側の表面にn型不純物を拡散させることによって行なうことができる。また、n型不純物の拡散は、たとえば、n+層3の形成箇所に対応する箇所の酸化シリコン膜6の一部に開口部を設け、その開口部からPOCl3などのn型不純物を含むガスを用いた気相拡散により行なうことができる。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面に形成された酸化シリコン膜6にセシウム5を含有させる。ここで、セシウム5は、たとえば、p型シリコン基板2の光入射側の表面上に形成された酸化シリコン膜6にセシウムイオンをイオン注入することによって、酸化シリコン膜6にイオン化したセシウム5を含有させることができる。
次に、p型シリコン基板2のアニールを行なう。ここで、p型シリコン基板2のアニールは、たとえば上記のセシウムイオン注入後のp型シリコン基板2をたとえば800℃〜1000℃の温度でアニールすることにより行なうことができる。これにより、酸化シリコン膜6中のイオン化したセシウム5をp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面に偏析させることができるため、酸化シリコン膜6が接するp型シリコン基板2の光入射側の表面に表面反転層4が形成される。
次に、p型シリコン基板2の光入射側の表面に金属電極8を形成する。ここで、金属電極8は、たとえば、金属電極8に接触させるn+層3の表面を露出させる箇所に酸化シリコン膜6に開口部を設け、マスクなどを用いて金属を所定の形状に蒸着すること等によって形成することができる。
次に、p型シリコン基板2の裏面に裏面電極7を形成する。ここで、裏面電極7は、たとえば、裏面電極7に接触させるp+層1の表面を露出させる箇所に酸化シリコン膜6に開口部を設け、マスクなどを用いて金属を蒸着すること等によって形成することができる。
最後に、上記の金属電極8および裏面電極7の形成後のp型シリコン基板2のアニールを行なうことによって、上記の構成を有する本実施の形態の光電変換装置の一例が作製される。ここで、p型シリコン基板2のアニールは、たとえば350℃〜500℃の温度の水素雰囲気にp型シリコン基板2を曝すことによって行なうことができる。
以上のようにして作製した上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2の光入射側の表面とが接しており、酸化シリコン膜6のp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面でイオン化したセシウムによって、p型シリコン基板2の光入射側の表面に表面反転層4が形成される。
したがって、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、固定電荷を含む第二層と半導体表面との間に固定電荷を含まない第一層が設置された構成の特許文献1に記載の太陽電池と比べて表面反転層4に高密度に負電荷が誘起されやすく、n型半導体としての機能が高められ、p型シリコン基板2の光入射側の表面におけるキャリアの再結合が抑制されることなどにより、光電変換効率などの光電変換装置の特性が向上する。
また、p型シリコン基板2の光入射側の表面に短波長の光の吸収源となるn+層3の代わりに、n型半導体として機能する表面反転層4を設けることによって、短波長の光の吸収がn+層3と比べて抑えられるため、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、酸化シリコン膜6中に固定電荷を配置することにより、n+層3を形成する場合に比べてビルトインポテンシャルが増大するため、p型シリコン基板2の内部電界が大きくなる。この大きい内部電界によりキャリア伝導は拡散成分よりもドリフト成分の方が支配的となり、キャリアの移動速度が増大し、キャリアの再結合が抑制される。これにより、キャリアの収集効率を向上させることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2の光入射側の表面との界面におけるセシウムの偏析量によって表面反転層4に誘起される負電荷の密度を制御することができる。
特に、本実施の形態のように、酸化シリコン膜6へのセシウムイオン注入とアニールによって酸化シリコン膜6とp型シリコン基板2との界面にセシウムを偏析させる場合、表面反転層4における最適な負電荷の密度を得るためのセシウムイオン注入量のマージンが広いため、安定した品質で高特性の光電変換装置を提供することができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面における界面準位を表面反転層4に誘起される負電荷で終端することにより、p型シリコン基板2の光入射側の表面における界面準位でのキャリアの再結合が抑制され、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
さらに、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面に形成された凹凸15と、p型シリコン基板2の光入射側の表面とは反対側の裏面に形成された裏面電極7とによって、p型シリコン基板2の内部における光閉じ込め効果を得ることもできる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態11>
図11に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な斜視図を示す。ここで、図11に示す構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の裏面に裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60が設置されており、酸化シリコン膜60はp型シリコン基板2の裏面との界面近傍にp型シリコン基板2の光入射側の表面に表面誘電体膜として設置された酸化シリコン膜6に含まれるセシウムとは異なる極性の負の固定電荷となる不純物(図示せず)を有している点に特徴がある。
ここで、酸化シリコン膜60は、p型シリコン基板2の裏面との界面近傍において、負の固定電荷となる不純物を有しており、負の固定電荷となる不純物はp型シリコン基板2の裏面との界面近傍においてイオン化等して負の固定電荷となっているため、酸化シリコン膜60が接するp型シリコン基板2の裏面の少なくとも一部の領域にはp+層1と同様にp型半導体として機能する裏面反転層40が誘起される。
上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、p型シリコン基板2の光入射側の表面に表面反転層4が形成されているだけでなく、p型シリコン基板2の光入射側の表面と反対側の裏面に裏面反転層40が形成されており、p型シリコン基板2の光入射側の表面とその反対側の裏面においてそれぞれキャリアの再結合を抑制することができるため、実施の形態10の光電変換装置と比べて、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、実施の形態10の光電変換装置と比較して、p+層1による光の吸収を抑制することができる。
なお、裏面誘電体膜としては、酸化シリコン膜60を用いたが、これに限定されないことは言うまでもなく、たとえば、酸化シリコン、酸窒化シリコンおよび窒化シリコンからなる群から選択された少なくとも1種を用いてもよい。
また、裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60中に負の固定電荷となる不純物を含有させる方法は、表面誘電体膜としての酸化シリコン膜6と同様の方法を用いることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60に含まれる不純物が最も多く存在する箇所は、半導体層としてのp型シリコン基板2と裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60との界面から、この界面に対して垂直な方向にp型シリコン基板2側に5nm進向した領域と、裏面誘電体膜としての酸化シリコン膜60側に5nm進向した領域との間の領域に位置することが好ましい。この場合には、上記構成の本実施の形態の光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
すなわち、本発明の光電変換装置においては、裏面誘電体膜が、半導体層との界面近傍に、表面誘電体膜に含まれる正または負の固定電荷となる不純物と逆の極性の固定電荷となる不純物を有していることが好ましいが、この不純物の少なくとも一部が、半導体層と裏面誘電体膜との界面から、この界面に対して垂直な方向に半導体層側に5nm進向した領域と、裏面誘電体膜側に5nm進向した領域との間の領域に存在していればよい。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1および実施の形態10と同様であるため、ここではその説明を省略する。
<実施の形態12>
図12に、本発明の光電変換装置の他の一例の模式的な断面図を示す。図12に示す構成の本実施の形態の光電変換装置は、第1の半導体層としての薄膜シリコン層12aと、薄膜シリコン層12aの光入射側の表面に接合された第1の誘電体膜としての酸化シリコン膜6aと、薄膜シリコン層12aの光入射側の表面とは反対側の裏面に接合された第2の誘電体膜としての酸化シリコン膜6bと、酸化シリコン膜6bの裏面に接合された第2の半導体層としての薄膜シリコン層12bとの積層構造を含む構成を有している。また、(正の固定電荷を含む酸化シリコン膜)/(薄膜シリコン層)/(負の固定電荷を含む酸化シリコン膜)の周期構造を有していてもよい。
また、酸化シリコン膜6aは、薄膜シリコン層12aとの界面近傍に、正の固定電荷となる不純物20を有している。ここで、酸化シリコン膜6aにおいて、正の固定電荷となる不純物20はイオン化等することによって正の固定電荷となっているため、酸化シリコン膜6aが接する薄膜シリコン層12aの光入射側の表面の少なくとも一部の領域には負の電荷が誘起してn型半導体として機能する第1の反転層4aが誘起される。
また、酸化シリコン膜6bは、薄膜シリコン層12aとの界面近傍および薄膜シリコン層12bとの界面近傍に、負の固定電荷となる不純物21を有している。ここで、酸化シリコン膜6bにおいて、負の固定電荷となる不純物21はイオン化等することによって負の固定電荷となっているため、酸化シリコン膜6bが接する薄膜シリコン層12aの裏面の少なくとも一部の領域には正の電荷が誘起してp型半導体として機能する第2の反転層4bが誘起され、酸化シリコン膜6bが接する薄膜シリコン層12bの光入射側の表面の少なくとも一部の領域には正の電荷が誘起してp型半導体として機能する第3の反転層4cが誘起される。
さらに、薄膜シリコン層12bの裏面には、上記構成の他の積層構造が接合され、この接合されている積層構造の最外層には、薄膜シリコン層12bの裏面との界面近傍において正の固定電荷となる不純物20を含む酸化シリコン膜6cが配置されており、酸化シリコン膜6cにおいて不純物20は正の固定電荷となっている。これにより、薄膜シリコン層12bの裏面には負の電荷が誘起してn型半導体として機能する第4の反転層4dが誘起される。
したがって、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、各半導体層と各半導体層の両面にそれぞれ形成された反転層によってp−i−n構造の光電変換層が形成され、この光電変換層が順次積層された構成となっている。
なお、上記において、正の固定電荷または負の固定電荷は少なくとも界面近傍に存在していればよいため、酸化シリコン膜中に存在していてもよい。
さらに、上記構成の積層構造の一方の側面には第1導電型半導体層としてのn型半導体層17が設置されており、上記構成の積層構造の他方の側面には第2導電型半導体層としてのp型半導体層16が設置されており、n型半導体層17およびp型半導体層16にはそれぞれ図示しない電極が設置されている。
上記構成の本実施の形態の光電変換装置に光が入射することによって、薄膜シリコン層12aで生成したキャリアのうち、電子は正の固定電荷となる不純物20を有する酸化シリコン膜6a側に移動し、酸化シリコン膜6aおよびn型半導体層17を通って、n型半導体層17に設置された電極から取り出される。一方、薄膜シリコン層12aで生成したキャリアのうち、正孔は負の固定電荷となる不純物21を有する酸化シリコン膜6b側に移動し、酸化シリコン膜6bおよびp型半導体層16を通って、p型半導体層16に設置された電極から取り出される。
同様に、上記構成の本実施の形態の光電変換装置に光が入射することによって、薄膜シリコン層12bで生成したキャリアのうち、電子は正の固定電荷となる不純物20を有する酸化シリコン膜6c側に移動し、酸化シリコン膜6cおよびn型半導体層17を通って、n型半導体層17に設置された電極から取り出される。一方、薄膜シリコン層12bで生成したキャリアのうち、正孔は負の固定電荷となる不純物21を有する酸化シリコン膜6b側に移動し、酸化シリコン膜6bおよびp型半導体層16を通って、p型半導体層16に設置された電極から取り出される。
以上のような機構によるキャリアの取り出しが、本実施の形態の光電変換装置を構成する積層構造の各半導体層および各誘電体膜で行なわれることによって、本実施の形態の光電変換装置からキャリアを外部に取り出すことができる。
以下、図12に示す構成の本実施の形態の光電変換装置の製造方法の一例について説明する。まず、基板の表面上に、上記の積層構造が3周期繰り返された積層構造体を形成する。
ここで、積層構造体は、たとえばCVD法などを用いて、たとえばガラス基板などの所定の基板の表面上に、負の固定電荷となる不純物を含む酸化シリコン膜、薄膜シリコン層、正の固定電荷となる不純物を含む酸化シリコン膜および薄膜シリコン層をこの順序で順次積層していくことによって形成することができる。
なお、酸化シリコン膜中に正の固定電荷となる不純物または負の固定電荷となる不純物を導入する方法としては、たとえば、CVD法などによって薄膜シリコン層を形成した後に、正の固定電荷となる不純物のイオンまたは負の固定電荷となる不純物のイオンをイオン注入することなどによって行なうことができる。また、薄膜シリコン層に、たとえば水酸化セシウム水溶液、塩化セシウム水溶液または水酸化アルミニウム水溶液などの正または負の固定電荷となる不純物を含む水溶液を塗布して乾燥した後に、CVD法にて酸化シリコン膜を形成することによって、セシウムまたはアルミニウムなどの正または負の固定電荷となる不純物を含む酸化シリコン膜を形成することができる。また、イオン注入などを用いて正の固定電荷となる不純物を含ませた酸化シリコン膜を表面に形成した薄膜シリコン層を貼り合わせることによって形成することもできる。たとえば、単結晶シリコン基板の表面に熱酸化等によって酸化シリコン膜を形成した後、酸化シリコン膜中に固定電荷となる不純物をイオン注入等によって導入しアニールする。次に、スマートカット法等を用いることによって、単結晶シリコン基板の表面を剥離し、ガラス基板等に順次積層することもできる。
次に、上記の積層構造体の一部を除去して基板の表面の一部を露出させる。ここで、上記の積層構造体の除去は、たとえばエッチングなどによって行なうことができる。
次に、たとえば図13の模式的断面図に示すように、上記の積層構造体の除去部分にn型半導体層17およびp型半導体層16をそれぞれ堆積させる。ここで、n型半導体層17およびp型半導体層16はそれぞれ、たとえばCVD法などによって堆積させることができる。
その後、たとえば図13に示すように、n型半導体層17の表面上にn型用電極18を形成するとともに、p型半導体層16の表面上にp型用電極19を形成する。ここで、n型用電極18およびp型用電極19はそれぞれ、たとえば、n型用電極18に用いられる金属およびp型用電極19に用いられる金属をそれぞれ蒸着させることなどによって形成することができる。
最後に、たとえば図13に示す破線に沿ってn型半導体層17およびp型半導体層16をそれぞれ切断することによって、図12に示す構成の本実施の形態の光電変換装置を作製することができる。また、n型半導体層17およびp型半導体層16を切断せずに、適切に配線を形成してもよい。
以上のようにして作製した上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜6aが薄膜シリコン層12aとが接しており、酸化シリコン膜6bが薄膜シリコン層12aと薄膜シリコン層12bの双方と接している。
したがって、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、固定電荷を含む第二層と半導体表面との間に固定電荷を含まない第一層が設置された構成の特許文献1に記載の太陽電池と比べて、第1の反転層4a、第2の反転層4b、第3の反転層4cおよび第4の反転層4dなどの反転層に正または負の電荷が高密度に誘起されやすくなり、n型半導体またはp型半導体としての機能が高められるため、各半導体層の表面におけるキャリアの再結合が抑制されることなどにより、光電変換効率などの光電変換装置の特性が向上する。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、薄膜シリコン層12aおよび薄膜シリコン層12bなどの半導体層の光入射側の表面に短波長の光の吸収源となるn+層またはp+層の代わりに、n型半導体またはp型半導体として機能する反転層を設けることによって、短波長の光の吸収がn+層またはp+層と比べて抑えられるため、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、酸化シリコン膜などの誘電体膜と薄膜シリコン層などの半導体層との界面における正または負の固定電荷となる不純物の偏析量によって反転層に誘起される正電荷または負電荷の密度を制御することができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、薄膜シリコン層12aの光入射側の表面における界面準位を第1の反転層4aに誘起される負電荷で終端することにより、薄膜シリコン層12aの光入射側の表面における界面準位でのキャリアの再結合が抑制され、光電変換効率などの光電変換装置の特性をさらに向上させることができる。
また、上記においては、第1の半導体層および第2の半導体層にそれぞれ薄膜シリコン層を用いたが、その薄膜シリコン層は、たとえば結晶シリコン、アモルファスシリコンまたは微結晶シリコンのいずれから構成されていてもよく、シリコン以外の他の種類の半導体から構成されていてもよい。なお、結晶シリコンには、単結晶シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンと多結晶シリコンとの混合体などが含まれる。
また、上記積層構造の各半導体層ごとに材質が異なっていてもよい。たとえば、光入射側から、アモルファスシリコン、多結晶シリコンおよび単結晶シリコンをこの順序で有する構成としてもよい。
また、各半導体層にそれぞれ結晶シリコンを用いた場合には、上記の積層構造は、たとえば、上記の誘電体膜が形成された結晶シリコン同士を貼り合わせることなどによって作製することができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、光入射側に近い半導体層のバンドギャップが、その半導体層よりも光入射側から遠い半導体層のバンドギャップ以上であることが好ましい。このような光入射側から短波長の光から長波長の光を順次吸収できるような半導体層の積層構造とすることによって、本実施の形態の光電変換装置に入射した光の吸収量が大きくなるため、光電変換効率などの本実施の形態の光電変換装置の特性が向上する傾向にある。
このようなバンドギャップの関係となる半導体層の積層構造のとしては、たとえば、光入射側から、アモルファスの炭化ケイ素、アモルファスシリコンおよび微結晶シリコンが積層された構造、ならびに光入射側から、アモルファスの炭化ケイ素、アモルファスシリコンおよびアモルファスのシリコンゲルマニウムが積層された構造を挙げることができる。
上記積層構造を構成する少なくとも1層の半導体層の厚さは、当該半導体層内でのキャリア拡散長よりも薄いことが好ましい。この場合には、半導体層内でのキャリアの再結合を有効に抑止することができるとともに、本実施の形態のように積層構造とすることによって入射した光が吸収される確率も高くすることができる。
また、上記においては、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜などの上記積層構造を構成する誘電体膜に酸化シリコン膜を用いたが、これに限定されないことは言うまでもなく、たとえば、酸化シリコン、酸窒化シリコンおよび窒化シリコンからなる群から選択された少なくとも1種を用いることもできる。
また、第1の誘電体膜および第2の誘電体膜などの上記積層構造を構成する誘電体膜としては、バンドギャップが4.2eV以上である誘電体膜を用いることが好ましい。たとえば太陽光の大部分は300nm以上の波長を有する光から構成されているため、バンドギャップが4.2eV以上である誘電体膜を用いて太陽光を入射させた場合には、300nm以上の波長を有する太陽光が誘電体膜で吸収されるのが抑制され、変換ロスが少なくなるため、光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
また、上記においては、正の固定電荷となる不純物としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リン、砒素およびアンチモンからなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。
負の固定電荷となる不純物としては、たとえば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、白金、フッ化フラーレン、酸化フラーレン、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、p型とn型の導電型を入れ替えるとともに、固定電荷の極性を入れ替えてもよい。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置において、上記の不純物が最も多く存在する箇所は、半導体層と誘電体膜との界面から、この界面に対して垂直な方向に半導体層側に5nm進向した領域と、誘電体膜側に5nm進向した領域との間の領域に位置することが好ましい。この場合には、上記構成の本実施の形態の光電変換装置の特性がさらに向上する傾向にある。
すなわち、各誘電体膜中における正または負の固定電荷となる不純物の少なくとも一部が、半導体層と誘電体膜との界面から、この界面に対して垂直な方向に半導体層側に5nm進向した領域と、誘電体膜側に5nm進向した領域との間の領域に存在していればよい。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、薄膜シリコン層12aの光入射側の酸化シリコン膜6aを反射防止膜として機能させてもよく、酸化シリコン膜6aの表面にテクスチャ構造および/またはモスアイ構造などを形成してもよいことは言うまでもない。
また、上記構成の本実施の形態の光電変換装置における半導体層の数および誘電体膜の数は上記の構成に限定されるものではないことは言うまでもない。
また、上述したように、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においては、n型とp型の導電型を入れ替えてもよい。なお、上記構成の本実施の形態の光電変換装置においてn型とp型の導電型を入れ替えた場合には、正と負の電荷の極性も入れ替わることになる。
1 p+層、2 p型シリコン基板、2a 第1のアモルファスシリコン層、2b 第2のアモルファスシリコン層、2c 第3のアモルファスシリコン層、3,102 n+層、4,103 表面反転層、4a 第1の反転層、4b 第2の反転層、4c 第3の反転層、4d 第4の反転層、5,104 セシウム、6,6a,6b,6c,26,60 酸化シリコン膜、7 裏面電極、8 金属電極、9 透明導電膜、10 金属シリサイド、11 エッジ部、12a,12b 薄膜シリコン層、13 蓄積層、15 凹凸、16 p型半導体層、17 n型半導体層、18 n型用電極、19 p型用電極、40 裏面反転層、20,21,50 不純物、51 第1の光電変換層、52 第2の光電変換層、53 第3の光電変換層、101 p型シリコン基板、105 酸化シリコン膜、106 窒化シリコン膜、107 電極、200,201 不純物準位、202 準位。