本発明は一般に成膜方法に係り、特にルテニウム膜の成膜方法に関する。
金属膜の成膜技術は半導体装置の製造において重要である。特にルテニウム(Ru)膜は、キャパシタを集積化した半導体装置において、キャパシタの電極として重要である。
Papadatos, F., et al., J. Mater. Res. Vol.22, No.8, Aug 2007, pp.2254-2264
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トレンチキャパシタなどの微細なキャパシタを集積化した半導体装置の製造においては、優れたステップカバレッジが要求される。このため、Ru膜を電極として使う場合、従来は、
で表される構造式を有するビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(EtCp)2)や、
で表される構造式を有する(2,4−ジメチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(EtCp)(C7H11):DER)などの、Ruの有機金属錯体を原料としたCVD法やALD法により成膜を行うことが提案されている。
その際、従来は、これらの有機金属錯体原料に酸素ガスを添加し、Ru原子とこれを配位する有機基との間の結合を酸素により切断し、基板上へのRu原子の堆積を低温で生じさせていた。
図1は、Ru(EtCp)2を原料として使ったRu膜の成膜反応を概念的に示す図である。
図1を参照するに、Ru(EtCp)2に酸素原子が作用するとRuと配位子との結合が酸素原子により切断され、Ru原子が被処理基板上に堆積する一方、脱離したエチルシクロペンタジエニル基は系外へと排出される。
しかし、Ru(EtCp)2やDERは熱安定性の高い原料であり、Ru膜の成膜を、酸素ガスを添加して行った場合には、成膜初期にインキュベーション時間が発生し、被処理基板表面への高い密度での核生成が困難になる問題が生じる。また、いったん核が生成すると、成膜が少数の核から急速に進行するため、このような過程で得られる膜は、膜質や表面粗さが劣り、また密着性が劣るという問題があった。特にこのような膜質の劣るRu膜を微細なキャパシタの下部電極膜として使う場合は、その上に、HfO2やZrO2などの金属酸化物よりなる高誘電率膜をキャパシタ絶縁膜として成膜することが多いが、その際に使われる酸化雰囲気が膜質の劣る下部電極膜を通過してその下のコンタクトプラグ層にまで到達する恐れがあり、素子特性を劣化させてしまう懸念があった。
本発明によるルテニウム膜の成膜方法は、誘電体膜を担持する被処理基板表面近傍にプラズマを発生させ、前記誘電体膜表面を前記プラズマで改質する工程と、前記改質された誘電体膜表面に、ルテニウムの有機金属錯体を不活性キャリアガスとともに供給し、前記有機金属錯体を分解させることにより、前記誘電体膜上にルテニウム膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、ルテニウム膜の成膜に先立って、前記成膜が生じる誘電体膜の表面がプラズマにより改質されるため、インキュベーション時間が短縮され、高い密度での核生成が生じ、得られるルテニウム膜の膜質が向上し、また密着性が向上する。
[第1の実施形態]
図2Aおよび2Bは、本発明の第1の実施形態によるRu膜の成膜工程を示す図である。
図2Aを参照するに、シリコン基板1上には例えば熱酸化膜よりなる誘電体膜2が形成されており、前記誘電体膜2の表面がアンモニアガスあるいは水素ガスのプラズマに曝露され、改質される。上記改質をアンモニアガスプラズマで行った場合、前記誘電体膜2の表面のOH終端や水素終端が解除され、ダングリングボンドが多数形成されたり、一部では窒素終端が形成されたりし、非常に活性な表面が得られる。また上記改質を水素ガスプラズマで行った場合、前記誘電体膜2の表面のOH終端が解除され、ダングリングボンドが多数形成されたり、一部では水素終端が形成されたりする。
さらに図2Bに示すように、このように改質された前記誘電体膜2の表面にRu膜4が、Ruの有機金属錯体を原料とした有機金属気相成長法により成膜される。
図3は、前記図2Aの改質工程で使われるプラズマ装置10の概略的構成を示す。
図3を参照するに、前記プラズマ改質装置は被処理基板Wを保持する基板保持台11Aを収容し排気ポート11BにおいてAPCバルブおよび真空ポンプを含む排気系12により排気される処理容器11を備え、前記処理容器の上部には、前記基板保持台11A上の被処理基板Wに対向してシャワーヘッド13が設けられている。
さらに前記基板保持台11Aにはヒータ11Hが埋設され、例えば13.56MHzの高周波源15が接続されている。前記バルブV1,MFC14A,14B、排気系12、ヒータ11Hおよび高周波源15は、コンピュータよりなる制御装置100により制御される。
動作時には、前記シャワーヘッド13に前記バルブV1およびそれぞれの質量流量制御装置(MFC)14A,14Bを介してArなどの希ガスとアンモニア(NH3)ガスあるいは水素(H2)ガスが供給され、前記高周波源15が駆動されることにより、前記被処理基板Wの表面にアンモニアガスあるいは水素ガスのプラズマが形成され、前記被処理基板W表面の誘電体膜が、図2Aで説明したように改質を受ける。
図3の改質装置10では前記シャワーヘッド13が接地されており、改質装置10は平行平板型のプラズマ発生装置になっていることに注意すべきである。
図4は、前記図2Bの改質工程で使われるRu膜の成膜装置20の概略的構成を示す。
図4を参照するに、成膜装置20はMOCVD装置であり、被処理基板Wを保持する基板保持台21Aを収容し排気ポート21BにおいてAPCバルブおよび真空ポンプを含む排気系22により排気される処理容器21を備えている。前記処理容器21の上部には、前記基板保持台21A上の被処理基板Wに対向してシャワーヘッド23が設けられている。排気ポート21Bには、前記処理容器21内部の圧力を制御するため、コンダクタンスを変化できるAPCバルブ(図示せず)が設けられている。
前記シャワーヘッド23は互いに分離した拡散室23aおよび23bを有するポストミックス型のシャワーヘッドであり、拡散室23aにはバルブV21および原料ガスライン24bを介して原料容器24が接続されており、前記原料容器24には、Ruの有機金属錯体原料として、例えば
で表される構造式を有するDERが、例えば100℃の温度で保持されている。
前記原料容器24中の有機金属錯体原料は、質量流量制御装置(MFC)24Aを備えたライン24aからのArキャリアガスによりバブリングされ、形成された有機金属錯体原料ガスが、前記原料ガスライン24bおよび前記バルブV21を通って前記シャワーヘッド23中の拡散室23aに供給される。さらに原料ガスライン24b中の有機金属錯体原料ガスには、ライン24cより、MFC24Cを介してArガスなどの不活性ガスが、希釈ガスとして添加される。前記希釈ガスの流量を制御することにより、前記原料容器24における有機金属錯体原料の状態、特に気化速度を変更することなく、前記原料ガスの濃度を必要に応じて迅速に調整することができる。このようにシャワーヘッド23の拡散室23aに供給された有機金属錯体原料ガスは、キャリアガスおよび添加された希釈ガスとともに、前記シャワーヘッド23下面に被処理基板Wと対面して形成され、前記拡散室23aに連通したシャワー開口部23Aより、前記処理容器21内部に画成されたプロセス空間21Sへと放出される。
また前記原料ガス供給ライン24bのうち、前記バルブV21の上流側で前記MFC24Cの下流側のノードNにおいてプリフローライン24Pが、バルブV23を介して接続されている。前記プリフローライン24Pは前記排気系22に直結されており、このため、前記バルブV21を閉じバルブV23を開いた場合、前記原料ガス供給ライン24b中の有機金属錯体原料は、前記キャリアガスおよび添加された希釈ガスとともに、前記排気系22へと棄てられる。
さらに図4の成膜装置20では、前記シャワーヘッド23の拡散室23bにライン24dよりMFC24DおよびバルブV22を介して酸素(O2)ガスが供給され、前記酸素ガスは前記拡散室23bに連通して前記シャワーヘッド23の下面に形成された開口部23Bより、前記処理空間21Sへと放出される。さらに前記バルブV22を介して供給される酸素ガスには、ライン24eおよびMFC24Eを介して希釈Arガスが添加される。
さらに図4の成膜装置20では、前記バルブV21〜V23の動作が、前記図3の改質装置10を制御する同じコントローラ100により制御される。ここで前記コントローラ100はプログラムをロードされた汎用コンピュータであり、他にも排気系22,MFC24C〜24E,原料容器24の温度などを制御する。
前記改質装置10および成膜装置20は、図5に示すようにロードロック室131を有する真空搬送室132を介して互いに結合されてクラスタ処理装置を構成しており、前記ロードロック室131に導入された被処理基板は前記真空搬送室132中を図2Aの改質処理のため、前記改質装置10へと、外気に触れることなく搬送される。また前記改質装置10で改質処理された基板は前記真空搬送室132を通って前記成膜装置20に、外気に触れることなく搬送される。さらに前記成膜装置20で処理された被処理基板は、前記真空搬送室132を通って前記ロードロック室131に、外気に触れることなく戻される。
図6は、前記図3,4の改質装置10及び成膜装置20を使って実行される、前記図2A,2Bのプロセスに対応した本発明第1の実施形態による成膜工程を示すフローチャートである。
図6を参照するに、ステップ1において図2Aに示す、熱酸化膜などの誘電体膜2を有するシリコン基板1が前記改質装置10の基板保持台11A上に載置される。前記被処理基板Wは前記基板保持台11上において、前記ヒータ11Hを駆動することにより、所定温度に加熱・保持される。
さらに前記ステップ1では、前記排気系12により前記処理容器11内部の圧力を所定値に保持しながら前記処理容器11中にArガスとアンモニアガスあるいは水素ガスを、前記シャワーヘッド13から前記バルブV1を開くことにより導入し、この状態で前記高周波源15を駆動し、前記被処理基板Wの近傍に、前記被処理基板Wの表面に接してプラズマを発生させ、前記誘電体膜2の表面を前記プラズマにより、所定時間にわたり、改質する。
次にステップ2において前記改質された被処理基板Wは、前記改質装置10から図5の真空搬送室132を通って外気に触れることなく図4の成膜装置20に搬送され、前記成膜装置20の基板保持台21A上に載置される。前記被処理基板Wは前記基板保持台21A上において前記ヒータ21Hにより所定の成膜温度に加熱・保持される。
さらに前記排気系22により前記処理容器21中の圧力を所定値に保持しながら前記処理容器21中のプロセス空間21Sに、前記原料容器24からDERなどのRuの有機金属錯体原料が前記シャワーヘッド23から、前記バルブV23を閉じ、前記バルブV21を開くことにより導入され、前記有機金属錯体原料は、前記基板保持台21A上に被処理基板Wの表面に化学吸着する。これにより、有機金属錯体原料の分子層が前記誘電体膜2の改質表面に形成される。なお、前記ステップ1の間は、前記成膜装置20において前記バルブV21は閉じられ前記バルブV23は開かれ、前記原料容器24中において発生するRuの有機金属錯体の原料ガスは、前記プリフローライン24Pから前記排気系22へと直接に棄てられている。その結果、ステップ2において前記バルブ21が開かれ、前記有機金属錯体原料ガスの供給先が前記シャワーヘッド23へと切り替えられる場合でも、前記原料容器24中における有機金属錯体原料の気化速度に対する影響を最小限に抑制することが可能となる。
さらにステップ2においては前記バルブV21が再び閉じられると同時にバルブV23が再び開かれ、前記有機金属原料ガスが前記排気系22へと棄てられると同時に、前記バルブV22が開かれ、前記酸素ガスが希釈Arガスとともに前記シャワーヘッド23の拡散室23bに供給され、さらに前記開口部23Bを介して前記プロセス空間21Sへと導入される。
このように前記プロセス空間21Sに導入された酸素ガスは、前記基板保持台21A上に保持された前記被処理基板Wの誘電体膜2表面に形成されたRuの有機金属錯体の分子層を、例えば図1のような反応により分解させ、その結果、前記誘電体膜24の表面に、図2Bに示すRu膜4が形成される。
以下、図6のプロセスを、実施例に基づいて説明する。
実施例1では、前記被処理基板Wおよびシリコン基板1として、径が300mmのシリコンウェハを使い、これについて、前記図6のステップ1の改質処理を行い、さらにステップ2のRu膜の成膜処理を行った。前記シリコンウェハの表面には熱酸化膜が、前記誘電体膜4として10nm〜100nmの膜厚に形成されている。
その際、実施例1では前記ステップ1の工程に対応して、前記被処理基板Wを前記改質装置10において300℃の基板温度に保持し、前記アンモニアガスを供給し、前記改質処理を1Torrの圧力下、13.56MHzの高周波を500Wのパワーで60秒間供給することによりアンモニアガスプラズマを形成し、前記改質処理を行っている。
また実施例1では前記ステップ2の工程に対応して、前記改質された熱酸化膜の表面にRuの有機金属錯体原料としてDERを供給し、1Torrの圧力下、300℃の基板温度において酸素ガスとの反応により、Ru膜を成膜している。
図7は、実施例1における改質処理の詳細なシーケンスを示す。
以下、図7を参照しながら説明する。
(ステップ11)前記シリコンウェハを前記改質装置10の処理容器11に導入し、基板保持台11A上に保持する。この工程に要する時間は例えば10秒である。
(ステップ12)前記ステップ(11)の後、前記バルブV1を開き、Arガスを前記MFC14Aから前記処理容器11に1000sccmの流量で供給し、前記排気系12を駆動して前記処理容器11内部の圧力を1Torrに制御しながら、前記シリコンウェハを昇温させる。この工程に要する時間は例えば30秒である。
(ステップ13)前記ステップ(12)の後、前記MFC14Aおよび14Bを制御して前記Arガスをアンモニアガスに切り替え、前記処理容器11内部の圧力を1Torrに維持したまま、前記アンモニアガスを前記処理容器11に前記MFC14Bから、5000sccmの流量で供給する。この工程に要する時間は例えば10秒である。
(ステップ14)前記ステップ(13)の後、前記高周波源15を駆動し、前記基板保持台11Aに周波数が13.56MHzの高周波を500Wのパワーで印加し、プラズマを点火する。この状態でプラズマ処理を、例えば60秒間継続する。
(ステップ15)前記ステップ(14)の後、前記アンモニアガスの供給を遮断し、さらに前記高周波パワーの供給を遮断してプラズマを消火する。さらに前記排気ポート11Bのコンダクタンスを最大に設定し、Arガスを1000sccmの流量で供給することにより、前記処理容器11中に残留するアンモニアガスをパージする。この工程に要する時間は約10秒である。
(ステップ16)前記ステップ(15)の後、前記処理容器11への全てのガスの供給を遮断し、前記処理容器11内部を真空状態に排気する。
(ステップ17)前記ステップ(16)の後、前記シリコンウェハを前記基板保持台11Aから持ち上げ、処理容器11から、図5のクラスタ処理装置の真空搬送室132へと取り出す。
図8は、実施例1における成膜処理の詳細なシーケンスを示す。
以下、図8を参照しながら説明する。
(ステップ21)前記ステップ1で改質処理された前記シリコンウェハは、前記真空搬送室132から前記成膜装置20の処理容器21に導入され、前記基板保持台21A上に載置される。
(ステップ22)前記ステップ(21)の後、前記バルブV22を開き、Arガスを前記MFC24Eから前記処理容器21に、前記シャワーヘッド23の拡散室23bおよび開口部23Bを介して2000sccmの流量で供給し、同時に前記排気系22を駆動することで前記処理容器21内部の圧力を1Torrに制御しながら、前記シリコンウェハを昇温させる。この工程に要する時間は例えば30秒である。
(ステップ23)前記ステップ(22)の後、前記MFC24EからのArガスを500sccmの流量で流しつつ、前記処理容器21内の圧力を1Torrに維持し、さらに前記バルブV21を閉じた状態でバルブV23を開き、前記原料容器24にArキャリアガスを前記MFC24Aから300sccmの流量で供給し、前記原料容器24中におけるDERの気化を安定させる。この工程に要する時間は例えば20秒である。
(ステップ24)前記ステップ(23)の後、前記Arキャリアガスの流量を350sccmに増加させ、前記バルブV21を開きバルブV23を閉じて、前記原料容器24で生じたDERの蒸気を前記シャワーヘッド23の拡散室23aから開口部23Aを通って前記プロセス空間21Sへと導入する。この工程に要する時間は例えば5秒間である。この間に、導入されたDERは前記被処理基板W上の熱酸化膜2の改質された表面に化学吸着し、DERの分子層が形成される。このようにして形成されたDERの分子層は、DERの1分子ないし数分子分の厚さを有している。
(ステップ25)次に前記バルブV23を開き、バルブV21を閉じ、前記MFC24EよりArガスを前記プロセス空間21Sに前記MFC24Eから6000sccmの流量で導入する。またその際、前記処理容器21の排気ポ―ト21Bのコンダクタンスを最大に設定する。これにより、前記処理容器21内部が、前記プロセス空間21Sも含めてパージされ、DERなどの有機金属錯体原料が除去される。この工程に要する時間は例えば5秒間である。
(ステップ26)次に前記MFC24Eから供給されるArガスの流量を400sccmに設定し、さらにMFC24Dから酸素ガスを100sccmの流量で、前記プロセス空間21Sに、前記シャワーヘッド23の拡散室23bおよび開口部23Bを介して、前記Arガスとともに導入する。その際、前記排気ポート21Bのコンダクタンスを制御し、前記プロセス空間21Sの圧力を3Torrに設定する。この工程は例えば7秒間実行され、これにより、前記改質された熱酸化膜2の表面に吸着していたDERが分解し、所望のRu膜4の、1〜数原子層の堆積が生じる。
(ステップ27)次に前記酸素ガスの供給を遮断し、前記MFC24Eより供給されるArガスの流量を6000sccmに増加させ、さらに前記排気ポート21Bのコンダクタンスを最大にして前記処理容器21の内部をパージする。この工程は、例えば5秒間実行される。
(ステップ28)さらに前記ステップ(24)〜(27)を、例えば200回繰り返し、前記Ru膜を所望の、例えば19nmの膜厚まで増大させる。
(ステップ29)前記ステップ(28)の後、前記MFC24EからのArガスの流量を2000sccmに増加させ、前記処理容器21内部のパージを、例えば30秒間実行する。
(ステップ30)さらに全てのガスの供給を遮断し、前記処理容器21の内部を前記排気系22により真空排気する。この工程は、例えば10秒間実行される。
さらに前記ステップ(30)の後、前記被処理基板を前記成膜装置20から前記真空搬送室132へと取り出し、ロードロック室131へと戻す。
実施例2においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)を3Torrの圧力に変更して行った。
実施例2においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)を5Torrの圧力に変更して行った。
実施例4においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)を200Wのパワーに変更して行った。
実施例4においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)を800Wのパワーに変更して行った。
実施例6においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)において20秒間行った。
実施例7においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)において180秒間行った。
実施例8においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)において400℃の基板温度で行った。
実施例9においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)において500℃の基板温度で行った。
図9〜図12は、前記実施例1〜9により得られたRu膜4について、表面粗さ(Rms)を測定した結果を、前記実施例1において前記図7のプラズマ改質処理工程を省略した比較例と比較して示す図である。
図9を参照するに、前記プラズマ改質処理の際の圧力を1Torr〜5Torrの範囲で変化させても、得られたRu膜4は比較例に比べて優れた表面粗さを示し、膜質が向上していることがわかる。
図10を参照するに、前記プラズマ改質処理の際のプラズマ励起に使われる高周波パワーを200W〜800Wの範囲で変化させても、得られたRu膜4は比較例に比べて優れた表面粗さを示し、膜質が向上していることがわかる。
図11を参照するに、前記プラズマ改質処理の際の処理時間を20秒から180秒の範囲で変化させても、得られたRu膜4は比較例に比べて優れた表面粗さを示し、膜質が向上していることがわかる。
図12を参照するに、前記プラズマ改質処理の際の基板温度を300℃〜500℃の範囲で変化させても、得られたRu膜4は比較例に比べて優れた表面粗さを示し、膜質が向上していることがわかる。
実施例10においては前記図7の改質処理を、前記実施例1と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)の改質処理の際のガスを水素ガスに変更して行った。
実施例11においては前記図7の改質処理を、前記実施例10と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)の改質処理の際の圧力を3Torrに変更して行った。
実施例12においては前記図7の改質処理を、前記実施例10と同一の条件で、ただし前記ステップ(14)の改質処理の際の圧力を5Torrに変更して行った。
図13は、前記実施例10〜12により得られたRu膜4について、表面粗さ(Rms)を測定した結果を、前記実施例10において前記図7のプラズマ改質処理工程を省略した比較例と比較して示す図である。
図13を参照するに、前記プラズマ改質処理の際の圧力を1Torr〜5Torrの範囲で変化させても、得られたRu膜4は比較例に比べて優れた表面粗さを示し、膜質が向上していることがわかる。
図14は、前記比較例による前記Ru膜4が形成されたシリコンウェハについてテープテストを行った結果を示す写真、図15A〜15Dは、前記実施例1〜9による前記Ru膜4が形成されたシリコンウェハについてテープテストを行った結果を示す写真、さらに図16は、前記実施例10〜12による前記Ru膜4が形成されたシリコンウェハについてテープテストを行った結果を示す写真である。
図14を参照するに、前記図7の改質処理を省略した場合には、テープテストの結果、Ru膜の大規模な剥離が発生しているのがわかる。
これに対し、図15A〜15Dよりわかるように、前記実施例1〜9の改質処理を行うことにより、Ruの剥離を効果的に抑制することが可能である。
さらに図16より、同様なRu膜の剥離の抑制効果は、前記改質処理を水素プラズマ中において実行した場合にも得られることがわかる。
このように本実施形態によれば、図6あるいは図7で示した誘電体膜表面の改質を行うことにより、Ru膜の成膜を、酸素ガスによりRuの有機金属錯体原料を分解させる従来の成膜方法により実行しても、形成されるRu膜の膜質および密着性を大きく向上させることが可能となる。これは前記改質処理の結果、前記成膜工程においてインキュベーション時間が短縮され、高い密度で核生成が生じるためであると考えられる。
なお前記図6あるいは図7で示した改質処理は、アンモニアガスプラズマあるいは水素ガスプラズマに限定されるものではなく、HeガスプラズマやArガスプラズマ、Krガスプラズマ、XeガスプラズマやNeガスプラズマなど、他の希ガスプラズマにより実行することも可能である。
[第2の実施形態]
図17は、本発明の第2の実施形態において使われるRu膜の成膜装置30の概略的構成を示す。
図17を参照するに、成膜装置30はMOCVD装置であり、被処理基板Wを保持する基板保持台31Aを収容し排気ポート31BにおいてAPCバルブおよび真空ポンプを含む排気系32により排気される処理容器31を備えている。前記処理容器の上部には、前記基板保持台31A上の被処理基板Wに対向してシャワーヘッド33が設けられている。
前記シャワーヘッド33は互いに分離した拡散室33aおよび33bを有するポストミックス型のシャワーヘッドであり、拡散室33aにはバルブV31および原料ガスライン34bを介して原料容器34が接続されており、前記原料容器34には、Ruの有機金属錯体原料として、
で表される構造式を有するDERが、例えば100℃の温度で保持されている。
前記原料容器34中の有機金属錯体原料は、質量流量制御装置(MFC)34Aを備えたライン34aからのArキャリアガスによりバブリングされ、形成された有機金属錯体原料ガスが、前記原料ガスライン34bおよび前記バルブV31を通って前記シャワーヘッド33中の拡散室33aに供給される。さらに原料ガスライン34b中の有機金属錯体原料ガスには、ライン34cより、MFC34Cを介してArガスなどの不活性ガスが、希釈ガスとして添加される。このようにシャワーヘッド33の拡散室33aに供給された有機金属錯体原料ガスは、キャリアガスおよび添加された希釈ガスとともに、前記シャワーヘッド33下面に被処理基板Wと対面して形成され、前記拡散室33aに連通したシャワー開口部33Aより、前記処理容器31内部に画成されたプロセス空間31Sへと放出される。
また前記原料ガス供給ライン34bのうち、前記バルブV31の上流側で前記MFC34Cの下流側のノードNにおいてプリフローライン34Pが、バルブV33を介して接続されている。前記プリフローライン34Pは前記排気系32に直結されており、このため、前記バルブV31を閉じバルブV33を開いた場合、前記原料ガス供給ライン34b中の有機金属錯体原料は、前記キャリアガスおよび添加された希釈ガスとともに、前記排気系32へと棄てられる。
さらに図17の成膜装置30では、前記シャワーヘッド33の拡散室33bにライン34dよりMFC34DおよびバルブV32を介してアンモニア(NH3)ガスが供給され、前記NH3ガスは前記拡散室33bに連通して前記シャワーヘッド33の下面に形成された開口部33Bより、前記処理空間31Sへと放出される。さらに前記バルブV32を介して供給されるNH3ガスには、ライン34eおよびMFC34Eを介して希釈Arガスが添加される。
前記基板保持台31Aにはヒータ31Hが埋設されており、前記被処理基板Wの基板温度を制御しており、さらに例えば周波数が13.56MHzの高周波源35が前記基板保持台31Aに接続されている。そこで前記高周波源35を駆動することにより、前記処理空間31Sには、前記被処理基板Wに近接してプラズマが形成される。
さらに図17の成膜装置30では、前記バルブV31〜V33の動作および高周波源35を制御するのに、前記改質処理装置10の制御にも使われるコントローラ100が設けられている。前記コントローラ100はプログラムをロードされた汎用コンピュータであり、他にも排気系32,MFC34A、34C、34D、34E,原料容器34の温度などを制御する。
図18は、前記図6の成膜工程S2に対応して、前記図17の成膜装置30を使って実行される、本発明第2の実施形態によるRu膜の成膜工程を示すフローチャートである。
図18を参照するに、ステップ31において図示しないゲートバルブを通って、基板搬送装置のアーム(図示せず)に保持された300mm径のシリコンウェハが、前記改質装置10での改質処理の後、前記真空搬送室132を通って、前記被処理基板Wとして前記処理容器31中に導入され、被処理基板31A上に載置される。この工程は、例えば約10秒間の時間を要する。
次にステップ32において前記バルブV32を開き、前記ライン34eよりAr希釈ガスを2000sccmの流量で約30秒間にわたり前記処理容器31に供給し、その間に、前記排気系32および図示していないAPCバルブを含む排気系を制御することにより前記プロセス空間31Sの圧力を1Torrに維持しつつ、被処理基板Wの温度を、例えば300℃に昇温させる。
次にステップ33において、前記希釈ガスを、引き続き2000sccmの流量で供給しつつ、バルブV31を閉じてバルブV33を開き、この状態で前記原料容器34にキャリアガスを300sccmの流量で供給することにより、前記原料容器34中のDERを前記プリフローライン34Pへとプリフローさせる。前記ステップ33のプリフロー工程を例えば20秒間実行することにより、前記原料容器34からの有機金属錯体原料の供給が安定化する。
次にステップ34において、前記ステップ33のプリフローを継続しながら、前記高周波源35を300Wのパワーで駆動し、前記プロセス空間31S中、前記被処理基板Wの表面近傍にプラズマを形成する。
次にステップ35において前記ライン34c中の希釈ガスの流量を前記MFC34Cにより1700sccmに設定し、さらに前記バルブV31を開き同時にバルブV33を閉じることにより、前記原料容器34からの有機金属錯体原料を、前記キャリアガスおよび希釈ガスとともに、前記処理容器31に、シャワーヘッド33の拡散室33aおよびシャワー開口部33Aを介して供給し、前記被処理基板W上においてRu膜の成膜を、1Torrのプロセス圧下で約3秒間実行する。このようにしてプロセス空間31Sに導入された金属錯体原料は前記プラズマのエネルギにより図19に示すように直ちに分解し、インキュベーション時間を生じることなくRu膜4の核生成および成膜が開始される。
次にステップ36において前記高周波源35が消勢され、前記バルブV31が閉じられバルブV33が開かれることにより、前記原料容器34からの有機金属錯体原料が、キャリアガスおよびライン34c中の希釈ガスとともに、前記プリフローライン34Pへと棄てられる。さらにステップ36では前記ライン34eよりAr希釈ガスがバルブV32を介して流量6000sccmの流量で導入され、さらに前記排気系のAPCバルブを全開することにより、前記処理容器31が前記Ar希釈ガスによりパージされる。
次にステップ37おいて前記高周波源35が300Wのパワーで再び駆動され、前記被処理基板Wの表面近傍に再びプラズマが形成される。
さらにステップ38において前記処理容器31に前記ライン34dよりNH3ガスが、1000sccmの流量で、前記ライン34eからの流量が1000sccmのAr希釈ガスとともに、前記バルブV32、シャワーヘッド33の拡散室33bおよびシャワー開口部33Bを経て導入され、前記シャワー開口部33Bより前記プロセス空間31Sに放出される。前記ステップ38を例えば60秒間継続することにより、前記被処理基板Wの表面に堆積したRu膜が改質される。
次にステップ39において前記NH3ガスの供給が遮断され、前記排気系32のAPCバルブが全開され、前記ライン34eからのAr希釈ガスの流量が6000sccmに増大され、前記処理容器31がパージされる。
さらに前記ステップ35〜39を200回程度繰り返すことにより、前記被処理基板W上に厚さが約20nmのRu金属膜を成膜することができる。
図19は、前記ステップ35および38において被処理基板W表面に生じる有機金属錯体原料の分解反応として考えられるモデルの一つを概念的に示す図である。
図19を参照するに、前記プロセス空間31Sに導入されたDERにステップ35においてプラズマが作用すると、例えば2,4−ジメチルペンタジエニル基とRu原子の結合が切れ、2,4−ジメチルペンタジエニル基が脱離して被処理基板W上に前記Ru膜の堆積が生じる。ただし、このようにして堆積したRu膜では、図19に示すようにRu原子とエチルシクロペンタジエニル基との結合が切れていない場合があり、そこで図18のプロセスではステップ38において、NH3ガスをプラズマ励起して形成されるNHラジカルNH*を堆積したRu膜に作用させ、エチルシクロペンタジエニル基を脱離させてRu膜を改質し、高純度Ru膜4を得ている。
本実施形態によれば、ステップ35においてプラズマを形成しているため前記DERの分解は直ちに生じ、インキュベーション時間は実質的に発生しない。またこれにより、被処理基板Wの表面には直ちに高密度で核生成が生じる。このため、このようにして形成されたRu膜を改質したRu膜4では膜密度が高く、また表面粗さが小さく、電気抵抗が低い好ましい特徴を有する。
本実施形態においては、Ru膜の成膜の際のインキュベーション時間を短縮できるため、先の改質工程と合わせて、得られるRu膜の膜質をさらに向上させることができる。
なお、前記図6および図8あるいは図18のRu膜4の成膜工程は、Ru原料が前記ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(DER)、(2,4−ジメチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(EtCp)2)に限定されるものではなく、他にトリス(ジイソブチリルメタン)ルテニウム、ビス(イソヘキセプタン−2,4−ジオネート)ノルボルナジエンルテニウム、ビス(2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウムなどのRuの有機金属錯体原料を使って行ってもよい。
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
従来のRuの有機金属錯体を使った成膜反応モデルを示す図である。
第1の実施形態によるRu膜の成膜方法を示す図(その1)である。
第1の実施形態によるRu膜の成膜方法を示す図(その2)である。
図2Aの改質工程で使われる改質装置の構成を示す図である。
図2Bの成膜工程で使われる成膜装置の構成を示す図である。
図3の改質装置と図4の成膜装置を集積化したクラスタ型基板処理装置の構成を示す図である。
第1の実施形態によるRu膜の成膜方法を示すフローチャートである。
図6の成膜方法のうち、図2Aの改質工程を示すフローチャートである。
図6の成膜方法のうち、図2Bの成膜工程を示すフローチャートである。
発明の効果を示す図(その1)である。
発明の効果を示す図(その1)である。
発明の効果を示す図(その2)である。
発明の効果を示す図(その3)である。
発明の効果を示す図(その4)である。
比較例に対するテープテストの結果を示す図である。
第1の実施形態のうち、アンモニアガスプラズマを使った実施例に対するテープテストの結果を示す図(その1)である。
第1の実施形態のうち、アンモニアガスプラズマを使った実施例に対するテープテストの結果を示す図(その2)である。
第1の実施形態のうち、アンモニアガスプラズマを使った実施例に対するテープテストの結果を示す図(その3)である。
第1の実施形態のうち、アンモニアガスプラズマを使った実施例に対するテープテストの結果を示す図(その4)である。
第1の実施形態のうち、水素ガスプラズマを使った実施例に対するテープテストの結果を示す図である。
第2の実施形態で使われる成膜装置を示す図である。
第2の実施形態によるRu膜の成膜工程を示すフローチャートである。
第2の実施形態におけるRu膜の成膜機構を概略的に示す図である。
符号の説明
1 シリコンウェハ
2 酸化膜
4 改質Ru膜
10 改質装置
11,21,31 処理容器
11A,21A,31A 基板保持台
11B 排気ポート
11H,21H,31H ヒータ
21S,31S プロセス空間
13,23,33 シャワーヘッド
23A,23B,33A,33B シャワー開口部
23a,23b,33a,33b 拡散室
24,34 原料容器
14A,14B,24A〜24E,34A〜34E MFC
24a〜24e,34a〜34e ガスライン
15,35 高周波源
20,30 成膜装置
131 ロードロック室
132 真空搬送室
V1,V21−V23,V31−V33 バルブ