JP2010065122A - エラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料の選択幅が広く、取り扱い性に優れ、かつ緩衝部材や防振部材等への利用に適しているエラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】エラストマー部材10は、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料からなる基材11と、基材11の表面に形成された樹脂層12とを備えている。樹脂層12は、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末を付着した後、熱可塑性樹脂粉末を溶融して固化することにより形成される。
【選択図】図1
【解決手段】エラストマー部材10は、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料からなる基材11と、基材11の表面に形成された樹脂層12とを備えている。樹脂層12は、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末を付着した後、熱可塑性樹脂粉末を溶融して固化することにより形成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、エラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法に関する。
従来から、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料からなるエラストマー部材が、防振部材、制振部材、緩衝部材、パッキンなどに利用されている。このようなエラストマー部材を用いた例として、特許文献1には、ノートブックタイプのパーソナルコンピュータ(以下、「ノートPC」と称す)に搭載されるハードディスク装置用の緩衝部材が開示されている。緩衝部材は、外部からの振動や衝撃をハードディスク装置に伝えにくくするものであり、ハーディスク装置の筐体に取り付けられる。また、特許文献2には、光学ディスクメディア装置に搭載されるディスクドライブ装置用の防振部材が開示されている。防振部材は、光ディスクの回転により生じる振動を抑制するものであり、ディスク回転部や光学ピックアップ等を搭載したメカニカルシャーシの側部に取り付けられる。
また、上述した防振部材、制振部材、緩衝部材、パッキンなどに適したエラストマー部材として、特許文献3には、衝撃吸収性及び振動吸収性に優れたゲル材が開示されている。エラストマー部材であるゲル材では、可塑剤や粘着性付与剤などの添加により、ベース材料である高分子材料の柔軟性が高められている。また、特許文献4には、ゲル状の弾性高分子材料からなる基材と、基材の表面に形成されたコーティング被膜とを備えるエラストマー部材が開示されている。コーティング被膜は、基材の粘着性を抑制するものであり、ラテックスを主成分として含む組成物により形成されている。また、コーティング被膜は、基材の表面に上記の組成物をディッピング法や、コータ又はスプレー等を用いて塗工した後、所定の条件で加熱処理することにより形成される。
しかしながら、特許文献3に開示のエラストマー部材は、高い柔軟性のみならず、高い粘着性をも有している。このため、エラストマー部材の表面にゴミが付着し易い等の理由から、使用時や運搬時、又は梱包時等における取り扱い性が良くないという問題がある。例えば、エラストマー部材をノートPC用の緩衝部材に用いた場合、ゲルの柔軟性や粘着性に起因して、ハードディスクの筐体への緩衝部材の装着が困難になったり、又は、運搬時や梱包時にエラストマー部材同士がくっ付いたりする虞がある。更には、柔軟性に富むエラストマー部材が変形したまま、他のエラストマー部材にくっ付いてしまうこともある。
その点、特許文献4に開示のエラストマー部材によれば、基材の表面に設けられたコーティング被膜によって、基材の粘着性に起因する取り扱い難さについては改善されている。しかしながら、使用される基材の種類によっては、コーティング被膜を基材の表面に付着させ難いという欠点がある。このため、柔軟性や振動減衰性の向上を目的とした材料開発において、エラストマー部材の材料の選択幅が制限されるといった問題がある。
特開2005−038538号公報
特開平10−172272号公報
特開平10−279753号公報
特開2004−256704号公報
本発明の目的は、材料の選択幅が広く、取り扱い性に優れ、かつ緩衝部材や防振部材等への利用に適しているエラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、弾性高分子材料からなる基材と、基材の表面に形成された樹脂層とを備え、樹脂層は、基材の表面に熱可塑性樹脂粉末を付着した後、熱可塑性樹脂粉末を溶融して固化することにより形成されることをその要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、樹脂層の一対の表面において基材と反対側に位置する表面には突部が形成されていることをその要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、熱可塑性樹脂粉末は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されていることをその要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、熱可塑性樹脂粉末は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されていることをその要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、樹脂層は、基材の表面全体に設けられていることをその要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、樹脂層は、基材の表面において部分的に設けられていることをその要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、樹脂層は、基材の表面において部分的に設けられていることをその要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の発明において、基材は熱硬化性ゴムからなることをその要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の発明において、基材は熱可塑性樹脂からなり、基材の融点は、樹脂層を形成する熱可塑性樹脂粉末の融点よりも高いことをその要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の発明において、基材は熱可塑性樹脂からなり、基材の融点は、樹脂層を形成する熱可塑性樹脂粉末の融点よりも高いことをその要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の発明を、外部からの衝撃の被着体への伝達を抑制する緩衝部材に適用したことをその要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の発明を、振動体で発生する振動の対象物への伝達を抑制する防振部材に適用したことをその要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の発明を、振動体で発生する振動の対象物への伝達を抑制する防振部材に適用したことをその要旨とする。
請求項10に記載の発明は、エラストマー部材の製造方法であって、弾性高分子材料を成形して基材を形成する工程と、基材の表面上に熱可塑性樹脂粉末を付着させる工程と、熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融した後、溶融した熱可塑性樹脂を固化して樹脂層を形成する工程とを備えることをその要旨とする。
本発明によれば、材料の選択幅が広く、取り扱い性に優れ、かつ緩衝部材や防振部材等への利用に適しているエラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法を提供することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明のエラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。
以下、本発明のエラストマー部材及びエラストマー部材の製造方法を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a),(b)に示すように、エラストマー部材10は、基材11と、基材11の表面に形成された樹脂層12とを備えている。基材11は、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料によりシート状に形成されている。また、樹脂層12は、基材11の一対の表面のうち一方の表面全体を覆うように形成されている。樹脂層12は、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末を付着した後、その樹脂粉末を溶融して固化することにより形成される。本発明のエラストマー部材10によれば、材料の選択幅が広く、かつ基材11の粘着性による取り扱い難さが改善されている。また、エラストマー部材10は、特に、外部からの振動や衝撃の被着体への伝達を抑制するための緩衝部材や、振動体で発生する振動の対象物への伝達を抑制するための制振部材や防振部材などの用途に適している。
ここで、ゴム状の弾性高分子材料とは、高分子材料をベース材料として含む材料であって、室温で小さな応力を受けて変形すると共に、変形した形から急速に元の形に戻るゴム弾性を備えた材料を意味する。また、ゲル状の弾性高分子材料とは、高分子材料をベース材料として含む材料であって、日本工業機規格であるJIS K 6253のタイプEの硬度計で測定される値が5未満である材料を意味する。ゲル状の弾性高分子材料は、ゴム状の弾性高分子材料よりも軟らかい性質を有している。
高分子材料として、柔軟性に富み、緩衝特性や振動減衰特性に優れているとの理由から、好ましくは、高分子ゲル、ゴム及び熱可塑性エラストマーなどが用いられる。高分子ゲルとして、例えば、シリコーンゲル、及びポリウレタンゲルが挙げられる。ゴムとして、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリイソブチレンゴム、及びアクリルゴムが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとして、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。高分子材料として、これらの具体例のうちの一種のみを単独で用いてもよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
弾性高分子材料として、好ましくは、熱硬化性ゴムが用いられる。これは、樹脂層12の形成時に熱可塑性樹脂粉末を加熱しても基材11が変形し難いことから、熱可塑性樹脂粉末の材料の選択幅を広くできるためである。熱硬化性ゴムとして、例えば、ブチルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリイソブチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。弾性高分子材料として熱可塑性樹脂を用いることもできるが、この場合、樹脂層12の形成時に加熱しても基材11を変形させないようにする必要がある。このため、基材11を形成する熱可塑性樹脂として、樹脂層12を形成する熱可塑性樹脂粉末より高い融点を有する熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、基材11を形成する熱可塑性樹脂として、例えば、融点が約160℃以上であるポリエステル系熱可塑性エラストマーやポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、この場合、樹脂層12を形成する熱可塑性樹脂粉末として、例えば、融点が140℃以下であるポリエチレン樹脂粉末、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂粉末等が挙げられる。このように、エラストマー部材10の製造に際し、樹脂層12の形成に伴う基材11の変形を極力抑えるとの理由から、基材11を形成する熱可塑性樹脂の融点と、樹脂層12を形成する熱可塑性樹脂粉末の融点との差を、少なくとも20℃以上確保することが好ましい。
弾性高分子材料は、柔軟性、減衰性、生産性、耐候性、及び耐熱性の向上を目的として、好ましくは、添加剤を含有している。添加剤として、例えば、可塑剤、粘着性付与剤、補強材、着色剤、耐熱向上剤、カップリング剤、難燃剤、触媒、硬化遅延剤、劣化防止剤等が挙げられる。
基材11の硬度としては、特に限定されないが、例えば、エラストマー部材10を制振部材や防振部材として用いる場合、JIS K 6253のタイプAの硬度計により測定される基材11の硬度は、好ましくは、70以下である。また、エラストマー部材10を緩衝部材として用いる場合、同規格タイプEの硬度計により測定される基材11の硬度は、好ましくは、60以下である。
樹脂層12に用いられる熱可塑性樹脂粉末として、粉末状に形成可能な熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂粉末として、具体的には、ポリエチレン(PE)樹脂の他、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、及びポリカーボネート(PC)樹脂が挙げられる。上記以外にも、熱可塑性樹脂として、熱可塑性エラストマー、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及びエステル系熱可塑性エラストマーなどが用いられる。熱可塑性樹脂粉末として、これらの具体例のうちの一種のみを単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。これら具体例のうち、柔軟性に優れ、かつ安価であるとの理由から、好ましくは、PE樹脂、PP樹脂、EVA樹脂、及びスチレン系熱可塑性エラストマー等が用いられる。また、微粒子タイプの樹脂粉末が市販されており入手し易いとの理由から、より好ましくは、PE樹脂、PP樹脂、及びEVA樹脂等が用いられる。
熱可塑性樹脂粉末の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは、50μm以下であり、より好ましくは、30μm以下である。熱可塑性樹脂粉末の平均粒径が50μmを超えると、樹脂層12の平均厚さを50μm以下にすることが困難になり、エラストマー部材10の緩衝特性や振動減衰特性に悪影響を及ぼす。また、樹脂層12の表面に形成される凹凸のサイズも大きくなり、エラストマー部材10とエラストマー部材10が取り付けられる被着体との密着性も低下する。一方、熱可塑性樹脂粉末の平均粒径を30μm以下に設定することにより、樹脂層12を十分に薄くすることができるため、基材11の柔軟性等を損なうこともなく、エラストマー部材10の緩衝特性や振動減衰特性が十分に発揮される。
樹脂層12は、基材11の表面に不均一に付着した熱可塑性樹脂粉末を溶融して、固化することによって形成される。このことから、樹脂層12の厚さは不均一である。この場合、樹脂層12の平均厚さは、好ましくは、50μm以下であり、より好ましくは、30μm以下である。樹脂層12の平均厚さが50μmを超えると、上述したように、樹脂層12によって基材11の柔軟性が損なわれるため、エラストマー部材10の緩衝特性や振動減衰特性が十分に発揮されない。一方、樹脂層12の平均厚さを30μm以下に設定することにより、基材11の柔軟性を損なうこともないため、エラストマー部材10による緩衝特性や振動減衰特性が十分に発揮される。
図2(b),(c)に示すように、樹脂層12の表面12aには、複数の突部12bが形成されている。樹脂層12は、該樹脂層12中の熱可塑性樹脂に起因して、基材11よりも低い粘着性を有している。また、樹脂層12は、該樹脂層12中の熱可塑性樹脂に起因して、基材11よりも高い硬度を有している。そのため、樹脂層12は、基材11の表面に形成されることで、基材11の粘着性を低下させることができ、結果として、エラストマー部材10の取り扱い性を高めることができる。また、樹脂層12は、基材11の補強材としても機能することもできる。
次に、エラストマー部材10の製造方法について説明する。
エラストマー部材10は、基材11を成形する工程と、基材11の表面上に熱可塑性樹脂粉末を付着させる工程と、熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融した後、溶融した熱可塑性樹脂粉末を固化して樹脂層12を形成する工程とを経て製造される。
エラストマー部材10は、基材11を成形する工程と、基材11の表面上に熱可塑性樹脂粉末を付着させる工程と、熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融した後、溶融した熱可塑性樹脂粉末を固化して樹脂層12を形成する工程とを経て製造される。
基材11を形成する工程では、まず、ベース材料である高分子材料、硬化剤、触媒、各種添加剤等を配合して、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料を調整する。その際、弾性高分子材料は、製品を製造できる材料にしたり、添加剤を均一に混合したりするとの理由から、攪拌機、混練機を用いて攪拌機及び混練することが好ましい。次に、調整した弾性高分子材料をシート状に成形して、基材11を形成する。基材11をシート状に成形する方法として、例えば、プレス成形、バーコーター法、ドクターブレード法、コンマコーター法、カレンダー成形法、及びTダイ等を用いた押出成形法が挙げられる。
熱可塑性樹脂粉末を付着させる工程では、図2(a)に示すように、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を付着させる。熱可塑性樹脂粉末13の付着方法として、例えば、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を落下させたり、吹き付けたりする方法が挙げられる。上記以外にも、例えば、熱可塑性樹脂粉末13が敷き詰められた容器を準備し、その中に基材11を入れて、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を付着させる方法も挙げられる。これらの具体例において、静電気の引力を利用した静電印刷法を用いることにより、柔軟性や粘着性により取り扱い難い基材11であってもその表面に熱塑性樹脂粉末を付着させることができる。この工程では、基材11が粘着性を有しているため、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を容易に付着させることができる。
熱可塑性樹脂粉末13の付着量は、該粉末が基材11から脱落しない程度の量に設定されている。熱可塑性樹脂粉末13の付着量は、該熱可塑性樹脂粉末13の比重等に応じて決められるが、該熱可塑性樹脂粉末13を基材11の表面に保持できるとの理由から、好ましくは、1〜30g/m2の範囲である。
樹脂層12を形成する工程では、まず、基材11に付着した熱可塑性樹脂粉末13を加熱して溶融する。そして、溶融した熱可塑性樹脂を固化することにより、基材11の表面に樹脂層12が形成される。熱可塑性樹脂粉末13の加熱方法は、特に限定されないが、例えば、加熱機、加熱炉、高温槽等を用いた加熱が挙げられる。弾性高分子材料として熱硬化性ゴムを用いた場合、熱硬化性ゴムの加硫硬化による基材11の成形と、熱可塑性樹脂粉末13の溶融とを同時に行うことができる。また、熱硬化性ゴムとしてシリコーンゲル又はシリコーンゴムを用いた場合、基材11の成形後に行われる2次加硫と、熱可塑性樹脂粉末13の溶融とを同時に行うこともできる。
溶融した熱可塑性樹脂を固化する方法として、特に限定されないが、例えば、室温(25℃)雰囲気下で放置して冷却する方法を用いてもよい。本実施形態では、熱可塑性樹脂粉末13の加熱温度及び加熱時間と、溶融した熱可塑性樹脂の冷却温度及び冷却時間とを適宜に調整することにより、以下の様にして樹脂層12の表面上に突部12bが形成される。
即ち、熱可塑性樹脂粉末13の加熱温度及び加熱時間の調整により、基材11の表面に付着した複数の熱可塑性樹脂粉末13のうちの一部が溶融したり、一つの熱可塑性樹脂粉末が周縁部のみで溶融し、かつ中心部では完全に溶融しなかったりすることがある。そのため、樹脂層12中には、少なくとも一部が溶融していない熱可塑性樹脂粉末13が存在している。こうして、突部12bは、樹脂層12中の熱可塑性樹脂粉末13によって、又は熱可塑性樹脂粉末13が樹脂層12の表面上に露出することによって形成される。また、突部12bは、熱可塑性樹脂の冷却温度及び冷却時間の調整により、溶融した熱可塑性樹脂が粒子形状を維持した状態で固化することによっても形成される。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)エラストマー部材10は、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料からなる基材11と、基材11の表面に形成された樹脂層12とを備えている。樹脂層12は、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を付着し、その熱可塑性樹脂粉末13を溶融して固化することにより形成される。基材11は、弾性高分子材料の性質である柔軟性と、柔軟性に起因する粘着性とを有している。一方、樹脂層12は、樹脂層12中の熱可塑性樹脂に起因して、基材11に比べて低い粘着性を有している。このため、基材11の表面に樹脂層12を形成することにより、基材11の粘着性による取り扱い難さを改善することができる。よって、エラストマー部材10の取り扱い性を向上させることができる。
(1)エラストマー部材10は、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料からなる基材11と、基材11の表面に形成された樹脂層12とを備えている。樹脂層12は、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を付着し、その熱可塑性樹脂粉末13を溶融して固化することにより形成される。基材11は、弾性高分子材料の性質である柔軟性と、柔軟性に起因する粘着性とを有している。一方、樹脂層12は、樹脂層12中の熱可塑性樹脂に起因して、基材11に比べて低い粘着性を有している。このため、基材11の表面に樹脂層12を形成することにより、基材11の粘着性による取り扱い難さを改善することができる。よって、エラストマー部材10の取り扱い性を向上させることができる。
また、樹脂層12は、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を付着し、その熱可塑性樹脂粉末13を溶融して固化することにより形成される。この場合、基材の表面にラテックスを主成分として含む組成物を塗工し、加熱処理してコーティング被膜を形成する従来の方法と比べ、基材11の表面に対して、樹脂層12を強固に付着させることができる。このため、付着し易さ等を理由として、樹脂層12によって使用可能な基材11の種類が制限されることもない。同様に、基材11によって樹脂層12の材料が制限されることもない。よって、上記従来の方法と比べ、柔軟性や振動減衰性の向上を目的とした材料開発において、エラストマー部材10の材料の選択幅を広げることができる。
更に、樹脂層12に代えて樹脂フィルムを基材11上に積層した構成と比べて、エラストマー部材10を容易に裁断することができる。これは以下の理由による。即ち、樹脂層12は、その製造方法に起因して、樹脂フィルムに比べて薄く、かつ不均一な厚さを有している。加えて、樹脂層12中には、複数の空隙が形成されている。この空隙は、基材11の表面に付着した熱可塑性樹脂粉末13間に存在していた空気が溶融した樹脂中に混入して形成されたものである。これらの理由により、樹脂層12は、樹脂フィルムに比べて引き裂き強度が低く、結果として容易に切断することができる。従って、エラストマー部材10は、大面積の基材11をシート状に成形し、基材11の表面に樹脂層12を形成した後、用途に応じて所定の形状及び寸法に裁断することにより容易に形成される。また、樹脂層12中には空隙が形成されているため、樹脂層12は、エラストマー部材10の曲げや圧縮等に追従して容易に変形することもできる。
(2)樹脂層12は、基材11の表面上に熱可塑性樹脂粉末13を付着し、該熱可塑性樹脂粉末13を溶融して固化することにより形成される。この方法によれば、基材11の表面全体に樹脂層12を形成したり、又は基材21の表面の一部にのみ樹脂層12を形成することができる。つまり、基材11の表面において、所望の個所にのみ、樹脂層12を形成することができる。よって、エラストマー部材10の表面に、粘着性を有する部分と非粘着性を有する部分とを共存させることができる。従って、エラストマー部材10の設計のバリエーションを広げることができる。
(3)複数の突部12bは、樹脂層12の表面12aに形成されている。この突部12bの存在により、樹脂層12の表面粗さが高くなり、樹脂層12の粘着性が低下する。更に、樹脂層12中には、溶融していない熱可塑性樹脂粉末13が存在している。これにより、熱可塑性樹脂粉末13とその周囲に存在する熱可塑性樹脂粉末13との間の界面に沿って、樹脂層12を基材11と共に容易に裁断することができ、ひいてはエラストマー部材10を容易に裁断することができる。
(4)樹脂層12は、基材11の一対の表面のうちの一方の表面にのみ形成されている。そのため、基材11の一対の表面のうちの他方の表面は、露出されており、基材11による粘着性を有している。よって、基材11の露出した表面の粘着性を利用して、エラストマー部材10を被着体に取り付けることができ、また被着体に対するエラストマー部材10の位置を固定することができる。
(5)エラストマー部材10は、ゴム状又はゲル状の弾性高分子材料から基材11を成形する工程と、基材11の表面に熱可塑性樹脂粉末13を付着させる工程と、熱可塑性樹脂粉末13を溶融及び固化して樹脂層12を形成する工程とを経て製造される。熱可塑性樹脂粉末13を付着させる工程では、基材11の粘着性を利用することで、接着剤や粘着剤等を用いることなく、熱可塑性樹脂粉末13を基材11の表面に容易に付着させることができる。よって、樹脂層12を容易に形成することができ、ひいてはエラストマー部材10を容易に製造することができる。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図3及び図4を参照して説明する。なお、第2実施形態における第1実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図3及び図4を参照して説明する。なお、第2実施形態における第1実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図3及び図4に示すように、エラストマー部材は、例えば、ノートPCに搭載されるハードディスクドライブ装置(以下、「HDD装置」と称す)等の外部記憶装置用の緩衝部材20として形成されている。すなわち、第1実施形態では、エラストマー部材10がシート状に形成されていたのに対し、第2実施形態では、本発明のエラストマー部材が、ノートPC内で被着体としてのHDD装置2を弾性的に保持する緩衝部材20として形成されている。
緩衝部材20は、第1実施形態と同様に、基材21と、基材21の表面に形成された樹脂層22とを備えている。一方で、緩衝部材20は、第1実施形態のエラストマー部材とは異なり、立体的な形状を有している。具体的には、緩衝部材20は、断面U字状をなす略箱状に形成されている。このため、基材21を形成する弾性高分子材料として、形状の保持性や成形性などの観点から、好ましくは、ゴム状の弾性高分子材料が用いられる。
ゴム状の弾性高分子材料として、例えば、合成ゴム等の熱硬化性ゴム、及び熱可塑性エラストマー等が挙げられる。上記の緩衝部材20には、落下時の衝撃によるHDD装置2の破損を防ぐため衝撃吸収特性を有することは勿論のこと、HDD装置2やその周辺機器、外部からの振動によるHDD装置の誤動作を抑制するため振動減衰性についても求められる。このような理由から、弾性高分子材料として熱硬化性ゴムを用いる場合、振動減衰性の高いブチルゴムを用いることが好ましい。また、ブチルゴム以外にも他の合成ゴムに添加剤として可塑剤や粘着性付与剤を配合し、柔軟性や振動減衰性を高めた材料を用いてもよい。また、基材21を形成する材料としてブチルゴムを用いることで、樹脂層22の形成時に熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融することにより基材21が変形することを抑止できる。よって、樹脂層22を形成する熱可塑性樹脂粉末について材料の選択幅を広げることができる。
一方、弾性高分子材料として熱可塑性エラストマーを用いる場合、成形性及び柔軟性の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。より具体的には、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)と、減衰性の高いスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)との混合材料が用いられる。この場合、基材21を形成するスチレン系熱可塑性エラストマーとして、樹脂層22を形成する熱可塑性樹脂粉末よりも高い融点を有するエラストマーを用いることで、樹脂層22の形成時に熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融することにより基材21が変形することを抑止できる。
緩衝部材20は、HDD装置2の上面を支持する上面支持部20a、側面を支持する側面支持部20b、及び底面を支持する底面支持部20cを有している。緩衝部材20は、HDD装置2の一対の側部にそれぞれ装着された状態で使用される。緩衝部材20をHDD装置2に装着した後、HDD装置2は、一対の緩衝部材20と共にノートPCの格納部1内に収納される。この状態で、HDD装置2は、一対の緩衝部材20を介し、格納部1内の略中央において弾性的に支持される。
緩衝部材20の形成方法として、まず、ゴム状の弾性高分子材料を準備し、これを所定の形状に成形して、基材21を形成する。次に、樹脂層22の形成のため、基材21の表面全体に熱可塑性樹脂粉末13を付着する。そして、熱可塑性樹脂粉末13を加熱して溶融し、更に冷却して固化することにより、基材21の表面に、所定の厚みを有する樹脂層22を形成する。こうして、エラストマー部材からなる緩衝部材20を形成する。この場合、熱硬化性ゴムから基材21を形成する場合、例えば、金型に原料を注入し、熱プレスにより成形する方法が用いられる。また、熱可塑性エラストマーから基材21を形成する場合、射出成形法が用いられる。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(6)緩衝部材20は、弾性高分子材料からなる基材21の表面に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層22を備えている。このため、樹脂層22によって、基材21の表面の粘着性が打ち消されているため、粘着性に起因する取り扱い難さを改善することができる。従って、取り扱い性に優れ、例えばHDD装置への装着が容易な緩衝部材20を提供することができる。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について図5及び図6を参照して説明する。なお、第3実施形態における第1実施形態と同様の部分については、その詳細な説明を省略する。
(6)緩衝部材20は、弾性高分子材料からなる基材21の表面に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層22を備えている。このため、樹脂層22によって、基材21の表面の粘着性が打ち消されているため、粘着性に起因する取り扱い難さを改善することができる。従って、取り扱い性に優れ、例えばHDD装置への装着が容易な緩衝部材20を提供することができる。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について図5及び図6を参照して説明する。なお、第3実施形態における第1実施形態と同様の部分については、その詳細な説明を省略する。
図5及び図6に示すように、エラストマー部材は、防振部材であるダンパー30として形成されている。すなわち、第3実施形態では、本発明のエラストマー部材が、対象物である光学ピックアップ等を搭載したメカニカルシャーシ3の側部に取り付けられるダンパー30として形成されている。
ダンパー30は、第1実施形態と同様に、基材31と、基材31の表面に形成された樹脂層32とを備えている。また、ダンパー30は、第2実施形態と同様に、立体的な形状を有している。具体的には、ダンパー30は、略円筒状に形成されている。このため、基材31を形成する弾性高分子材料として、形状の保持性や成形性などの観点から、好ましくは、ゴム状の弾性高分子材料、具体的には、ブチルゴムが用いられる。
ダンパー30は、上部と下部とに、ダンパー30の外周面に沿って環状に延びる突出部30a,30bをそれぞれ有している。ダンパー30は、上部及び下部の両突出部30a,30b間に、メカニカルシャーシ3を保持するための取付溝30cを有している。ダンパー30の中央には、ダンパー30の軸線に沿って延びる挿通孔30dが形成されている。ダンパー30の挿通孔30dには、ダンパー30を介してメカニカルシャーシ3を筐体4に固定するための固定ピン5が挿通される。
ダンパー30の形成方法として、まず、ゴム状の弾性高分子材料を準備し、これを所定の形状に成形して、基材31を形成する。次に、樹脂層32の形成のため、基材31の表面全体に熱可塑性樹脂粉末を付着する。そして、熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融し、更に冷却して固化することにより、基材31の表面に、所定の厚みを有する樹脂層32を形成する。こうして、エラストマー部材からなるダンパー30を形成する。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(7)ダンパー30は、弾性高分子材料からなる基材31の表面に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層32を備えている。このため、樹脂層32によって、基材31の表面の粘着性が打ち消されているため、粘着性に起因する取り扱い難さを改善することができる。従って、取り扱い性に優れ、例えばメカニカルシャーシ等への取り付けが容易なダンパー30を提供することができる。
(7)ダンパー30は、弾性高分子材料からなる基材31の表面に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層32を備えている。このため、樹脂層32によって、基材31の表面の粘着性が打ち消されているため、粘着性に起因する取り扱い難さを改善することができる。従って、取り扱い性に優れ、例えばメカニカルシャーシ等への取り付けが容易なダンパー30を提供することができる。
なお、上記の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第1実施形態において、エラストマー部材10は、基材11の一対の表面のうちの一方の表面にのみ樹脂層12を備えていたが、これに代えて、図7(a),(b)に示すように、エラストマー部材70は、基材71の一対の表面の両方に樹脂層72を備えてもよい。この場合、基材71の一対の表面の両方に樹脂層72を設けることにより、基材71の一方の表面にのみ樹脂層72を設けた構成に比べ、更に取り扱い性の優れたエラストマー部材を形成することができる。また、図8に示すように、エラストマー部材80は、基材81の一対の表面81aに加え、基材81の一対の側面81bのうちの少なくとも一方に樹脂層82を備えてもよい。なお、図8に示すエラストマー部材80は、基材81の両側面81bに樹脂層82を備えている。この場合、エラストマー部材80の表面81a及び側面81bにおいて、粘着性を有する基材81の表面が全く露出していない。このため、エラストマー部材80は、被着体に対するエラストマー部材80の位置決めや、その位置決めに際し粘着性を必要としない用途等に適している。
・第1実施形態において、エラストマー部材10は、基材11の一対の表面のうちの一方の表面にのみ樹脂層12を備えていたが、これに代えて、図7(a),(b)に示すように、エラストマー部材70は、基材71の一対の表面の両方に樹脂層72を備えてもよい。この場合、基材71の一対の表面の両方に樹脂層72を設けることにより、基材71の一方の表面にのみ樹脂層72を設けた構成に比べ、更に取り扱い性の優れたエラストマー部材を形成することができる。また、図8に示すように、エラストマー部材80は、基材81の一対の表面81aに加え、基材81の一対の側面81bのうちの少なくとも一方に樹脂層82を備えてもよい。なお、図8に示すエラストマー部材80は、基材81の両側面81bに樹脂層82を備えている。この場合、エラストマー部材80の表面81a及び側面81bにおいて、粘着性を有する基材81の表面が全く露出していない。このため、エラストマー部材80は、被着体に対するエラストマー部材80の位置決めや、その位置決めに際し粘着性を必要としない用途等に適している。
・第1実施形態において、樹脂層12は、基材11の表面全体に設けられていたが、基材1の表面において部分的に設けてもよい。例えば、図9(a),(b)に示すように、帯状をなす複数の樹脂層92を基材91の表面に間隔を空けて設けてもよい。また、図示はしないが、図9(a),(b)に示す帯状の樹脂層92に代えて、ドット状の樹脂層を基材91の表面に間隔を空けて設けてもよい。
この場合、エラストマー部材90は、粘着性部分と非粘着性部分とを有しており、非粘着性部分では、樹脂層92の厚さの分だけ、基材91よりも厚く形成されている。そのため、作業者の手は、樹脂層92に触れるものの、粘着性を有する基材91の表面にはほとんど触れない。よって、基材91の粘着性による取り扱い難さを改善することができる。また、基材91の表面が部分的に露出しているため、エラストマー部材90が全体的に圧縮されて使用されると、この露出している部分が樹脂層92と略面一の面となるように変形するため、基材91の粘着性を利用することができる。そのため、基材91の粘着性を利用することで、被着体に対するエラストマー部材90の位置決めを容易に行うこともできる。
・第2実施形態において、基材21の表面全体に樹脂層22を設けていたが、これに代えて、図10に示すように、基材101の外側の表面にのみ樹脂層102を設けてもよい。この構成によれば、HDD装置2の側部を収容する緩衝部材100の内側では、基材101の表面が露出しているため、基材101による粘着性が発揮される。よって、基材101による粘着性によって、緩衝部材100をHDD装置2に密着させることができる。一方、作業者の手が触れる緩衝部材100の外側では、基材101の表面が樹脂層102により覆われているため、基材101の粘着性に起因する取り扱い難さが改善されている。
・第3実施形態において、周知の粘性流体封入ダンパーの一部を、本発明のエラストマー部材により構成してもよい。この種のダンパーは、密閉容器と、密閉容器中に封入される粘性流体とを備えている。密閉容器は、ゴム状の弾性高分子材料からなる可撓部を有する容器本体と、容器本体の開口を開閉する蓋体とを含む。この場合、容器本体の可撓部を、本発明のエラストマー部材により構成することができる。
次に、実施例、比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1においては、以下の工程に従って、図3及び図4に示す緩衝部材20を作製した。緩衝部材20を作製するため、まず、ゴム状の弾性高分子材料を圧縮成形して、基材21を形成した。次に、基材21の表面全体に熱可塑性樹脂粉末13(図2(a)参照)を付着した。続いて、熱可塑性樹脂粉末13を溶融するため、基材21を恒温槽に入れて、150℃の雰囲気下で1時間加熱した。そして、溶融した熱可塑性樹脂粉末13を固化するため、基材21を恒温槽から出して、室温雰囲気下で5分間放置した。こうして、基材21の表面に樹脂層22を形成し、緩衝部材20を作製した。なお、ゴム状の弾性高分子材料に含まれるベース材料として、タイプAの硬度計により測定される硬度が30であるブチルゴム(JSR株式会社製の商品名JSR BUTYL)を用いた。また、熱可塑性樹脂粉末13として、20μmの平均粒子径を有するPE粉末(三井化学株式会社製のMIPELON(登録商標)XM200)を用いた。基材21に対する熱可塑性樹脂粉末13の付着量は3.0g/m2であった。また、樹脂層22の平均厚さは約20μmであった。
(実施例2)
実施例2では、基材21に対する熱可塑性樹脂粉末13の付着量が9.8g/m2であり、樹脂層22の平均厚さが約40μmである以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(実施例3)
実施例3では、熱可塑性樹脂粉末13として20μmの平均粒子径を有するPP粉末を用いたことと、恒温槽の温度を170℃に設定したこと以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(実施例4)
実施例4では、熱可塑性樹脂粉末13として20μmの平均粒子径を有するEVA粉末を用いたことと、恒温槽の温度を120℃に設定したこと以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(実施例5)
実施例5では、基材21の材質及び成型法が異なる以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。即ち、実施例5では、弾性高分子材料に含まれるベース材料としてタイプAの硬度計により測定される硬度が20であるスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマー組成物を用いた。そして、この熱可塑性エラストマー組成物を用いて射出成形により基材21を成形した。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)100質量部と、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)10質量部と、粘着付与材としての水添テルペン樹脂5質量部とを配合した混合材料を用いた。
(比較例1)
比較例1では、樹脂層22を省略した以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(比較例2)
比較例2では、基材21の表面に付着したPE粉末を溶融しない以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。つまり、比較例2では、ブチルゴムを圧縮成形して基材21を形成し、その表面にPE粉末を付着させただけのものを緩衝部材20として用いた。
(比較例3)
比較例3では、樹脂層22を省略した以外は、実施例5と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
<取り扱い性の評価>
実施例1〜5、比較例1〜3について、得られた緩衝部材20を、図3及び図4に示すように、HDD装置2の一対の側部に装着する作業を行うことで、取り扱い性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1の作業性を示す項目中の「〇」は、10人の作業者のうち8人以上が装着し易いと評価したことを示し、「×」は、10人の作業者のうち8人以上が装着し難いと評価したことを示す。なお、表1中、IIRはブチルゴムを示し、TPESはスチレン系熱可塑性エラストマーを示す。また、表1中、タック性とは、粘着性を意味する。
(実施例1)
実施例1においては、以下の工程に従って、図3及び図4に示す緩衝部材20を作製した。緩衝部材20を作製するため、まず、ゴム状の弾性高分子材料を圧縮成形して、基材21を形成した。次に、基材21の表面全体に熱可塑性樹脂粉末13(図2(a)参照)を付着した。続いて、熱可塑性樹脂粉末13を溶融するため、基材21を恒温槽に入れて、150℃の雰囲気下で1時間加熱した。そして、溶融した熱可塑性樹脂粉末13を固化するため、基材21を恒温槽から出して、室温雰囲気下で5分間放置した。こうして、基材21の表面に樹脂層22を形成し、緩衝部材20を作製した。なお、ゴム状の弾性高分子材料に含まれるベース材料として、タイプAの硬度計により測定される硬度が30であるブチルゴム(JSR株式会社製の商品名JSR BUTYL)を用いた。また、熱可塑性樹脂粉末13として、20μmの平均粒子径を有するPE粉末(三井化学株式会社製のMIPELON(登録商標)XM200)を用いた。基材21に対する熱可塑性樹脂粉末13の付着量は3.0g/m2であった。また、樹脂層22の平均厚さは約20μmであった。
(実施例2)
実施例2では、基材21に対する熱可塑性樹脂粉末13の付着量が9.8g/m2であり、樹脂層22の平均厚さが約40μmである以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(実施例3)
実施例3では、熱可塑性樹脂粉末13として20μmの平均粒子径を有するPP粉末を用いたことと、恒温槽の温度を170℃に設定したこと以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(実施例4)
実施例4では、熱可塑性樹脂粉末13として20μmの平均粒子径を有するEVA粉末を用いたことと、恒温槽の温度を120℃に設定したこと以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(実施例5)
実施例5では、基材21の材質及び成型法が異なる以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。即ち、実施例5では、弾性高分子材料に含まれるベース材料としてタイプAの硬度計により測定される硬度が20であるスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマー組成物を用いた。そして、この熱可塑性エラストマー組成物を用いて射出成形により基材21を成形した。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)100質量部と、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)10質量部と、粘着付与材としての水添テルペン樹脂5質量部とを配合した混合材料を用いた。
(比較例1)
比較例1では、樹脂層22を省略した以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
(比較例2)
比較例2では、基材21の表面に付着したPE粉末を溶融しない以外は、実施例1と同じ構成の緩衝部材20を作製した。つまり、比較例2では、ブチルゴムを圧縮成形して基材21を形成し、その表面にPE粉末を付着させただけのものを緩衝部材20として用いた。
(比較例3)
比較例3では、樹脂層22を省略した以外は、実施例5と同じ構成の緩衝部材20を作製した。
<取り扱い性の評価>
実施例1〜5、比較例1〜3について、得られた緩衝部材20を、図3及び図4に示すように、HDD装置2の一対の側部に装着する作業を行うことで、取り扱い性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1の作業性を示す項目中の「〇」は、10人の作業者のうち8人以上が装着し易いと評価したことを示し、「×」は、10人の作業者のうち8人以上が装着し難いと評価したことを示す。なお、表1中、IIRはブチルゴムを示し、TPESはスチレン系熱可塑性エラストマーを示す。また、表1中、タック性とは、粘着性を意味する。
10…エラストマー部材、11…基材、12…樹脂層、12a…表面、12b…突部、13…熱可塑性樹脂粉末、20…緩衝部材、30…防振部材。
Claims (10)
- 弾性高分子材料からなる基材と、
前記基材の表面に形成された樹脂層とを備え、
前記樹脂層は、前記基材の表面に熱可塑性樹脂粉末を付着した後、前記熱可塑性樹脂粉末を溶融して固化することにより形成されることを特徴とするエラストマー部材。 - 前記樹脂層の一対の表面において前記基材と反対側に位置する表面には突部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー部材。
- 前記熱可塑性樹脂粉末は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のエラストマー部材。
- 前記樹脂層は、前記基材の表面全体に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のエラストマー部材。
- 前記樹脂層は、前記基材の表面において部分的に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のエラストマー部材。
- 前記基材は熱硬化性ゴムからなることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のエラストマー部材。
- 前記基材は熱可塑性樹脂からなり、
前記基材の融点は、前記樹脂層を形成する熱可塑性樹脂粉末の融点よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のエラストマー部材。 - 請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のエラストマー部材を、外部からの衝撃の被着体への伝達を抑制する緩衝部材に適用したことを特徴とするエラストマー部材。
- 請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のエラストマー部材を、振動体で発生する振動の対象物への伝達を抑制する防振部材に適用したことを特徴とするエラストマー部材。
- エラストマー部材の製造方法であって、
弾性高分子材料を成形して基材を形成する工程と、
前記基材の表面上に熱可塑性樹脂粉末を付着させる工程と、
前記熱可塑性樹脂粉末を加熱して溶融した後、溶融した熱可塑性樹脂を固化して樹脂層を形成する工程と
を備えることを特徴とするエラストマー部材の製造方法。
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