JP2010064914A - 炭化珪素単結晶の製造装置および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶液成長炉内のSiを含む融液3の液面にSiC種結晶8を接触させてSiC結晶成長を行うSiC単結晶の製造装置1において、SiC種結晶基板8をSiを含む融液3に接触させる直前まで、SiC種結晶基板8が融液3の蒸気に触れないための保護機構2を設けてなるSiC単結晶の製造装置1、およびSiC種結晶基板8をSiを含む融液3に接触させる直前まで、SiC種結晶基板8が融液3の蒸気に触れさせないように保護することによって、溶液成長炉内のSiを含む融液3の液面にSiC種結晶8を接触させてSiC結晶成長を行うSiC単結晶の製造方法。
【選択図】図2
Description
SiCの結晶多形とは、化学量論的には同じ組成でありながら原子の積層様式が軸方向にのみ異なる多くの結晶構造を取り得る現象であり、SiCの結晶多形としては3C型4H型、6H型、15Rなどが知られている。
しかし、ジャスト面を含めてオフ角が小さくなるほど、低温安定な多形(ポリタイプ)である3C−SiCが生成しやすいことがPhys.Stat.Sol.(b)、202号、247頁、1997年の論文に報告されている。この結果は化学気相堆積法についてのものであるが、溶液成長においても同様の問題が発生すると考えられる。そして、溶液成長においてはのみではなく、前記の種々の結晶多形が混入する。
特に、ジャスト面あるいは低オフ角(8°未満)基板上へのSiCエピタキシャル成長では、オフ角基板上へのエピタキシャル成長において標準的な技術であるステップフロー成長を採用できないため、異種多形が混入しやすい。その中でも特に、高速成長ではその傾向が顕著である。
2種以上の結晶形が混在すると高性能SiCパワーデバイスを実現するためには許されないことが指摘されている。
このため、結晶多形の生成を防止乃至は抑制するための解決策が求められている。
また、特開2007−261844号公報には、SiとCrとCとを含む融液を使用して液相成長法によりSiC単結晶を高い成長速度で製造するSiC単結晶の製造方法が記載されており、SiC単結晶の製造装置として黒鉛蓋、黒鉛坩堝、種結晶基板を取付けたシード軸および加熱炉を備え、シード軸を黒鉛蓋のシード軸差し込み口から挿入可能である製造装置が記載されている。
従って、この発明の目的は、溶液法によりSiC単結晶を製造する際に、結晶多形の生成を防止乃至は抑制することが可能であるSiC単結晶の製造装置およびSiC単結晶の製造方法を提供することである。
本発明は、溶液成長炉内のSiを含む融液の液面にSiC種結晶を接触させてSiC結晶成長を行うSiC単結晶の製造装置において、SiC種結晶基板をSiを含む融液に接触させる直前まで、SiC種結晶基板が融液の蒸気に触れないための保護機構を設けてなるSiC単結晶の製造装置に関する。
また、本発明によれば、溶液法により結晶多形の生成を防止乃至は抑制してSiC単結晶を製造することができる。
図1は、従来公知の溶液法によるSiC単結晶の製造に一般的に用いられている製造装置の概略を示す模式図である。図2〜6は、本発明の実施態様のSiC単結晶の製造装置の概略を示す模式図である。図7は、従来法によって得られたSiC単結晶成長層のラマン散乱スペクトルである。図8は、本発明の実施態様によって得られたSiC単結晶成長層のラマン散乱スペクトルである。
本発明の溶液法によるSiC単結晶の製造装置およびSiC単結晶の製造方法に関する発明は、この高温に加熱されたSiを含む融液3への種結晶の接触直前まで、SiC種結晶基板8が融液の蒸気に触れないための保護機構2を設けたSiC単結晶の製造装置1により、溶液法によって結晶多形の生成を防止乃至は抑制することが可能であることを見出したことに基づいている。
図2に示す実施態様において、SiC単結晶の製造装置1は、溶液成長炉10内のSiC融液3と坩堝4、例えば黒鉛坩堝と外部加熱装置5、例えば高周波コイルと断熱材6と、SiC種結晶基板8と支持軸7、例えば黒鉛製軸とからなる溶液成長炉において、種結晶の装着軸である支持軸7の前記溶液成長炉における摺動経路の上端部に設けられた可動式の蓋部20である保護機構2を備えてなる。
この蓋部20である保護機構2により、SiC種結晶基板8をSiを含む融液3に接触させる直前まで、SiC種結晶基板8が融液の蒸気に触れないため、結晶成長前の基板を清浄に保つことができ、その結果、異種多形の混入を防ぐことができると考えられる。
この実施態様において、前記の蓋を構成する材料としては成長温度にもよるが融点が1000℃以上のものを用いることが好ましい。
この基板支持軸の挿入によって破壊可能な蓋部21である保護機構2としては、坩堝の上部を覆うのに十分な大きさの薄膜板あるいはシートを蓋として用いることができ、この蓋を結晶成長の直前に基板が保持された支持軸7、例えば黒鉛基板支持軸により割るなどして破壊する。
このSiを含む融液の表面に浮かせた蓋部22である保護機構2としては、その径が坩堝の内径と近い値であることが適当である。成長時にSiC種結晶基板8とSiを含む融液3の表面に浮かせた蓋部22との接触を避けたい場合には、例えば図4に示すような基板接着部の凹んだ黒鉛軸を用いてもよく、あるいは図5に示すロの字型の黒鉛支持軸を用いてもよく、さらに凹凸あるいはジグザグ、波形の浮き蓋22を用いてもよい。
図5に示す実施態様において、SiC単結晶の製造装置1は、前記の溶液成長炉において、前記種結晶の装着軸である支持軸7の先端部を覆う蓋部23、例えばロの字型の黒鉛軸にSiC種結晶基板8を保持した構造の蓋部23である保護機構2を備えてなる。この実施態様によれば、SiC種結晶基板をSiを含む融液に接触させる直前までSiC種結晶基板が融液の蒸気に触れさせないように保護する機能に加えて、前記の成長前に基板を均一に加熱することが可能となり、基板が溶液に接触する際の熱衝撃を抑制することができるので、成長開始時の結晶転位発生をさらに低減することが可能となり好適である。
図6に示す実施態様において、SiC単結晶の製造装置1は、前記の溶液成長炉において、溶液成長炉11とは別室の前記SiC種結晶基板の交換室24である保護機構2を備えており、交換室24は溶液成長炉10を含む成長室11とゲートバルブ202によって隔離されてなる。
また、本発明の図3又は図4に示す実施態様のSiC単結晶の製造装置において、蓋部が、炭素材料又は炭素化合物材料からなる製造装置が好適である。蓋部が炭素材料又は炭素化合物材料からなると、Siを含む溶液への炭素溶出が促進される。
本発明における前記の実施態様において、支持軸とSiC種結晶基板とは接着剤で固定するのが一般的である。これらの実施態様において、軸を接着後に前記の保護構造を組み立てる構成にすることが好ましい。
図2Aは、本発明の実施態様の図2に示す可動式の蓋部20を保護機構2とする製造装置1の溶媒加熱時の状態を示し、図2Bは、図2Aにおける可動式の蓋部20を回転させて結晶成長開始時の状態を示す。
図2Aに示す実施態様において、可動式蓋部20の1例である遮蔽板が坩堝4の上面より1〜5cm程度の位置に配置されていて、遮蔽板はハンドル201によって外部より抜き差し可能な構造となっていて、溶媒を加熱、例えば2000℃程度の温度に加熱前より支持軸7の下降時までの間遮蔽板からなる蓋部20を設置し、SiC種結晶をセットしてから、例えば遅くとも溶媒元素のうち最も融点の低い元素の融点温度に達してからSiC種結晶基板8を前記Siを含む融液3に接触させる直前まで、前記SiC種結晶基板8が融液の蒸気に触れさせないように保護する。
次いで、図2Bに示すように、成長開始時にハンドル201によってからなる蓋部20を坩堝4のSiを含む融液3の上から除いて、制御装置(図示せず)によって支持軸7を下降させてSiC種結晶基板8をSiを含む融液3と接触させてSiC結晶成長を行って、SiC単結晶を製造することができる。
例えば、加熱方法としては高周波誘導加熱が挙げられ、加熱時間(原料の仕込みからSiC飽和濃度に達するまでの凡その時間)としては坩堝の大きさにもよるが20分間〜10時間程度(例えば3〜7時間程度)で、雰囲気としては希ガス、例えばHe、Ne、Arなどの不活性ガスやそれらの一部をN2やメタンガスで置き換えたものが挙げられる。
本発明の製造方法の実施態様によって得られたSiC単結晶は、例えば4H−SiC種結晶を用いた場合、図8のSiC単結晶成長層のラマン散乱スペクトルに示すように、従来技術の溶液成長法によって得られたSiC単結晶成長層のラマン散乱スペクトルを示す図7と比べて、4H−SiC以外に6H−SiCに基づく786cm−1の位置のピークなどの他の結晶形のピークが確認されないか実質的に確認されない。
以下の各例において、得られたSiC単結晶成長層のラマン散乱によって得られる766cm−1および786cm−1にあるFTO(フッ素ドープ酸化錫)モードは6H−SiCの存在を、774cm−1にあるFTOモードは4H−SiCの存在を証明していることに基づいて、ラマン散乱によって得られたスペクトルによってSiC単結晶成長層の結晶形を評価した。
ラマン散乱測定:
Arレーザーを使用(波長488nm)
測定温度:室温
測定雰囲気:空気中
図2に示すSiC単結晶の製造装置を用いて、下記の成長準備を行った。黒鉛製坩堝に溶媒を収容し、1700〜2100℃の範囲内の温度に加熱し、溶融させると、Cはこの時黒鉛製坩堝から供給された。
(1)n型4H−SiC(0001)ジャスト面の4H−SiC種結晶基板を黒鉛製基板支持軸に接着。
(2)黒鉛坩堝にSi−10%Ti溶媒を投入。
(3)これらを図2のように構成。
(4)大気圧のArを導入する。
(5)SiC種結晶基板と溶媒との間にステンレスと多結晶SiCとからなる遮蔽板をセット。
(6)成長時の基板温度が約1950℃となる温度まで昇温する。
(7)溶液温度が十分な温度に達したら、遮蔽物を取り除き、4H−SiC種結晶基板を接着した支持軸を下降させる。
(8)基板が溶液に接触したら、支持軸の下降を止め、成長を開始させる。
(高い温度勾配を実現することにより高い成長速度を得ることができる。)
(9)20分間成長後、基板を引き上げる。
(10)数時間かけて溶液を冷却し、基板を取り出す。
その結果、結晶の成長層の全面で4H−SiCが得られ、異種多形の混入を防ぐことができた。また、成長速度は100μm/h(時間)を超える値であり、十分な成長速度が得られた。また、得られた成長層の表面平坦性も優れていた。
得られたSiC単結晶成長層のラマン散乱スペクトルによってSiC単結晶成長層の結晶形を評価した結果を図8に示す。
図1に示すSiC単結晶成長装置を用いて、保護機構によって基板上の種結晶を保護しないで、前記SiC種結晶基板が融液の蒸気に触れさせた後、溶液成長炉内のSiを含む融液の液面にSiC種結晶を接触させた他は実施例1と同様にして、SiC結晶成長を行った。成長時間経過後、坩堝を室温まで徐冷して、成長したSiC単結晶を得た。
その結果、十分な成長速度が得られ、得られた成長層の表面平坦性は優れていたが、4H−SiCの他に3C−SiC、6H−SiCや15R−SiCなどの異種多形の混入が見られた。
得られたSiC単結晶成長層のラマン散乱スペクトルによってSiC単結晶成長層の結晶形を評価した結果を図7に示す。
なお、上記の実施例は溶液成長による4H−SiCの単結晶の製造例について示しているが、これに限定されず任意のSiC単結晶、例えば6H−SiCの単結晶の製造についても同様に適用できることが理解されるべきである。
2 保護機構
3 Siを含む融液
4 坩堝
5 外部加熱装置
6 断熱材
7 支持軸
8 SiC種結晶基板
10 従来の製造装置
11 溶液成長炉
20 可動式の蓋部
21 破壊可能な蓋部
22 SiC融液の表面に浮かせた蓋部
23 支持軸の先端部を覆う蓋部
24 溶液成長炉とは別室のSiC種結晶基板の交換室
201 ハンドル
202 ゲートバルブ
Claims (10)
- 溶液成長炉内のSiを含む融液の液面にSiC種結晶を接触させてSiC結晶成長を行うSiC単結晶の製造装置において、SiC種結晶基板をSiを含む融液に接触させる直前まで、SiC種結晶基板が融液の蒸気に触れないための保護機構を設けてなるSiC単結晶の製造装置。
- 前記保護機構が、SiC種結晶の装着軸である基板支持軸の溶液成長炉における摺動経路の上端部に設けられた可動式の蓋部である請求項1に記載の製造装置。
- 前記保護機構が、SiC種結晶の装着軸である基板支持軸の溶液成長炉における摺動経路の上端部に設けられ、基板支持軸の挿入によって破壊可能な蓋部である請求項1に記載の製造装置。
- 前記保護機構が、Siを含む融液の表面に浮かせた蓋部である請求項1に記載の製造装置。
- 前記保護機構が、SiC種結晶の装着軸である基板支持軸の先端部を覆う蓋部である請求項1に記載の製造装置。
- 前記保護機構が、溶液成長炉とは別室のSiC種結晶基板の交換室である請求項1に記載の製造装置。
- 前記蓋部が、表面を鏡面加工してなるおよび/又は高断熱材料からなる請求項2又は3に記載の製造装置。
- 前記蓋部が、炭素材料又は炭素化合物材料からなる請求項3又は4に記載の製造装置。
- 溶液成長炉内のSiを含む融液の液面にSiC種結晶を接触させてSiC結晶成長を行うSiC単結晶の製造方法において、SiC種結晶基板をSiを含む融液に接触させる直前まで、SiC種結晶基板が融液の蒸気に触れさせないように保護することによって、溶液成長炉内のSiを含む融液の液面にSiC種結晶を接触させてSiC結晶成長を行うSiC単結晶の製造方法。
- SiC結晶成長が、4H−SiC単結晶を異種多形の混入を防ぎ、且つ100μm/h(時間)を超える成長速度で行う請求項9に記載の製造方法。
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