JP2010061104A - ホログラム記録媒体及びホログラム記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ホログラム記録媒体100としての品質を向上することができる。
【解決手段】本発明のホログラム記録媒体100は、光に応じて重合する光硬化型樹脂及び有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる記録層101を有する。すなわち、記録層101は、有機金属化合物が加水分解及び重縮合反応することによって形成された無機マトリックスと、光硬化型樹脂とを含有する。水分量とは、溶剤として使用された水及びアルコール、並びに重縮合反応において発生する水及び加水分解反応によって有機金属化合物に生じるヒドロキシル基を含有するものである。
【選択図】図5
【解決手段】本発明のホログラム記録媒体100は、光に応じて重合する光硬化型樹脂及び有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる記録層101を有する。すなわち、記録層101は、有機金属化合物が加水分解及び重縮合反応することによって形成された無機マトリックスと、光硬化型樹脂とを含有する。水分量とは、溶剤として使用された水及びアルコール、並びに重縮合反応において発生する水及び加水分解反応によって有機金属化合物に生じるヒドロキシル基を含有するものである。
【選択図】図5
Description
本発明はホログラム記録媒体及びホログラム記録材料に関し、例えばホログラムの形成により情報を記録するホログラム記録媒体に適用して好適なものである。
次世代のデータストレージメディアとして、ホログラフィックメモリ(ホログラム記録
媒体)が注目されている。
媒体)が注目されている。
ホログラム記録媒体は、記録データに応じた空間光変調を受けて生成された信号光と、
この信号光とは別の参照光とによって形成された干渉縞(回折格子:ホログラム)をデータとして記録する記録媒体である。具体的に、ホログラム記録媒体は、記録層中に形成された干渉縞の強度分布に応じて記録層内に屈折率変調生じさせることにより、データを記録する。
この信号光とは別の参照光とによって形成された干渉縞(回折格子:ホログラム)をデータとして記録する記録媒体である。具体的に、ホログラム記録媒体は、記録層中に形成された干渉縞の強度分布に応じて記録層内に屈折率変調生じさせることにより、データを記録する。
ホログラム記録媒体としては、同一箇所に複数のホログラムを多重記録する、いわゆるボリュームホログラム方式が知られている(例えば特許文献1参照)。また、ホログラム記録媒体として、1ビットの情報を表す微少なホログラムをホログラム記録媒体の厚さ方向に重ねて記録するマイクロリフレクター方式が知られている(例えば特許文献2参照)。
このようなホログラム記録媒体の記録層として、ホログラムを記録可能なホログラム記録材料が用いられる。このホログラム記録材料に求められる特性として、ホログラムの高多重度又はマークサイズの制御、記録前後の大きな屈折率変調、高感度、低散乱、低熱膨張率及び高耐久性等が挙げられ、これら記録媒体の特性を大きく左右するホログラム記録材料も研究開発が活発に進められている。
例えば、特許文献3には、光重合性モノマーと、その反応場である有機バインダー(有機マトリックス)とを主成分とするホログラム記録材料が開示されている。この特許文献1に記載のホログラム記録材料は、いわゆるフォトポリマーとして知られている。しかしながら、有機マトリックス材料を用いるフォトポリマーは、例えば温度などの外部環境の変化に伴う特性変化が比較的大きいという問題を有する。すなわち、ホログラム記録材料として有機マトリックス材料を使用することは、耐環境性の面で問題がある。
ホログラム記録材料としては、このように有機マトリックス材料を用いるフォトポリマーの他にも、無機マトリックス材料を用いるようにされたものがある。つまり、無機マトリックス材料と光硬化型樹脂とを主成分とするホログラム記録材料である。無機マトリックス材料は安価で、上述の耐環境性、及び耐久性に優れるだけでなく、有機系の光硬化型樹脂との屈折率変調をつけやすく、高い回折効率が得られるというメリットを有する。光硬化型樹脂は、例えばモノマー(又はオリゴマー)及び光重合開始剤から構成される。
例えば、特許文献4には、無機物質ネットワーク(無機マトリックス)の層中に、光重合性モノマー(又はオリゴマー)、及び光重合開始剤を含むホログラム記録材料が開示されている。また、この特許文献4では、無機ネットワークを有機修飾することにより、無機ネットワーク膜の脆さを改善することも開示されている。
また、特許文献1及び特許文献5には、同じく無機物質ネットワークの膜中に、光重合性モノマー(又はオリゴマー)、及び光重合開始剤を含むホログラム記録材料が開示されている。
ところで特許文献1、4及び5に記載のホログラム記録材料では、無機ネットワークを形成するため、重縮合反応が可能な有機金属化合物を使用している。この有機金属化合物は、重縮合反応の際に発生する水分の影響により、ホログラム記録媒体としての品質を低下させてしまうという問題があった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ホログラム記録媒体としての品質を向上させ得るホログラム記録媒体及びホログラム記録材料を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明のホログラム記録媒体においては、光に応じて重合する光硬化型樹脂及び有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる記録層を有するようにした。
これにより、ホログラム記録媒体は、記録層における有機金属化合物の重縮合反応をほぼ終了させた状態にすることができるため、経時変化を殆ど生じさせないようにできる。
また、本発明のホログラム記録材料においては、光に応じて重合する光硬化型樹脂及び有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなるようにした。
これにより、ホログラム記録材料は、有機金属化合物の重縮合反応をほぼ終了させた状態にすることができるため、経時変化を殆ど生じさせないようにできる。
本発明によれば、有機金属化合物の重縮合反応をほぼ終了させた状態にすることができるため、経時変化を殆ど生じさせないようにできる。かくして本発明は、品質を向上させ得るホログラム記録媒体及びホログラム記録材料を実現できる。
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ホログラム記録媒体の構成及びその製造方法)
2.第2の実施の形態(貼り合わせによる記録層の作製)
3.他の実施の形態
1.第1の実施の形態(ホログラム記録媒体の構成及びその製造方法)
2.第2の実施の形態(貼り合わせによる記録層の作製)
3.他の実施の形態
<1.第1の実施の形態>
[1−1.ホログラム記録媒体の構成]
図1(A)〜(C)に示すように、ホログラム記録媒体100は、基板102及び103の間にスペーサ104を挟み、当該スペーサ104の中心部分の空間に記録層101を形成することにより、全体として情報を記録するメディアとして機能するようになされている。
[1−1.ホログラム記録媒体の構成]
図1(A)〜(C)に示すように、ホログラム記録媒体100は、基板102及び103の間にスペーサ104を挟み、当該スペーサ104の中心部分の空間に記録層101を形成することにより、全体として情報を記録するメディアとして機能するようになされている。
ホログラム記録媒体100は、記録層101にホログラムを多重にページ記録する、いわゆるボリュームホログラム方式で情報が記録されることが想定されている。
ホログラム記録媒体100の形状に特に制限はなく、図1のように矩形板状に形成することはもちろん、BD(Blu-ray Disc、登録商標)やDVD(Di[g]ital Versatile Disc)などの一般的な光ディスクのように円盤状に形成し、中央部分にチャッキング用の孔を形成することも可能である。
基板102及び103はガラス基板、アクリル樹脂やポリカーボネイト樹脂など種々の光学材料でなり、光を高い割合で透過させるようになされている。また基板102及び103は、X方向の長さdx及びY方向の長さdyがそれぞれ約50[mm]〜150[mm](50[mm]以上、150[mm]以下、以下、同様の意味で〜を用いる)程度、厚さt2及びt3が約0.05〜1.2[mm]でなる正方形板状、長方形板状又は円盤状等に構成されている。
記録層101は、0.05[mm]〜2.0[mm]、さらに好ましくは0.1[mm]〜1.0[mm]でなることが好ましい。記録層101を薄くすると、多重記録の多重可能な記録数を減少させることになり、光情報記録媒体100としての記憶容量を大きくすることができず、好ましくない。また、記録層101を厚くすると、記録層101総体としての透過率が低下し、奥側において照射される光ビームの光強度を低下させるため、好ましくない。
基板102及び103の外側表面(記録層101と接触しない面)には、波長が記録用及び再生用でなる光ビームに対して無反射となるようなAR(AntiReflection coatin[g])処理を施しても良い。このAR処理としては、例えば4層無機層(Nb2O2/SiO2/Nb2O5/SiO2)を形成することができる。もちろん、AR処理を施さなくても良い。
記録層101は、少なくとも、(1)光重合性モノマー若しくは光重合性オリゴマー(以下、これをモノマー類と呼ぶ)、(2)光重合開始剤、(3)加水分解性官能基を持ち且つ重縮合が可能である有機金属化合物を含んでいる。
(1)モノマー類は、分子内にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の重合可能な基を少なくとも1個以上含有する。モノマー類は、異種の光重合性モノマーを任意の比率で混合させて使用してもよく、また共重合体(コポリマー)を使用してもよい。モノマー類の含有量は、重縮合後の有機金属化合物重量に対して5〜50[重量%]、より好ましくは10〜30[重量%]を含有していることが望ましい。
モノマー類の含有量が少ないと、記録層101における参照光及び信号光に応じたポリマー化が十分に進行せず、屈折率変調が不十分となり、モノマー類の含有量が多いと、記録層101としての参照光及び信号光に対する透過率の低下を生じさせるからである。
(2)光重合開始剤は、光重合性モノマー若しくはオリゴマーの重合開始剤として機能する物質であれば特に限定されない。その例としては、アゾ類、アジド類、ベンジルジメチルケタール類、α-ヒドロキシケトン類、α-アミノケトン類、ビスアシルフォスフィンオキサイド類、メタロセン類などが用いられる。光重合開始剤の含有量は、重縮合後の有機金属化合物重量に対して0.05〜30[重量%]、より好ましくは3〜10[重量%]を含有していることが望ましい。
光重合開始剤の含有量が少ないと、参照光及び信号光に応じたポリマー化が十分に進行せず、屈折率変調が不十分となり、光重合開始剤の含有量が多いと、ポリマー化をかえって阻害するからである。
モノマー類及び光重合開始剤は、その種類に限定されることはなく、任意の材料が単独若しくは組み合わされて使用される。すなわち、記録層101は、ラジカル重合型のモノマー類とラジカル発生型の光重合開始剤、又はカチオン重合型のモノマー類とカチオン発生型の光重合開始剤、アニオン重合型のモノマー類とアニオン発生剤の光重合開始剤若しくはこれらの混合物をモノマー類及び光重合開始剤として含有する。
(3)加水分解性官能基を持ち且つ重縮合が可能である有機金属化合物は、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物及び有機亜鉛化合物のうち少なくとも1種を含むものが好ましい。特に、アルコキシル基を有する金属アルコキシドが好ましく、具体的にはケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどを単体または混合体で用いる。
また、有機金属化合物における有機部は、直鎖、分岐あるいは環状の何れの形態である炭素原子数1〜10のアルキル基、ビニル基、スチリル基、炭素原子数3〜10のアセトキシアルキル基、炭素原子数5〜15のアクリロキシアルキル基、炭素原子数6〜16のメタクリロキシアルキル基、置換あるいは未置換の炭素原子数6〜10のアリール基などが挙げられる。
このような有機金属化合物が加水分解および重縮合することで、有機金属化合物が架橋して高分子化し、図2の模式図に示されるようなマトリックス(ネットワーク)構造を有するマトリックス材料が得られる。この図1に示すように、マトリックス構造は、ポリマー鎖が3次元的に繋がって形成されるものである。
ここで、このようなマトリックス構造体は、上記有機金属化合物としての無機材料に基づき得られる。この意味で、上記有機金属化合物の加水分解・重縮合により得られる、このようなマトリックス構造体のことを、無機マトリックス材料と称する。
記録層101は、有機金属化合物として、有機ケイ素化合物を含むことが特に好ましい。無機マトリックス材料として良好な特性を呈し得るからである。有機ケイ素化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、テトラメトキシシランなどが好適に用いられる。
記録層101は、有機ケイ素化合物に加え、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物及び有機亜鉛化合物のうち少なくとも1種を含有することがさらに好ましい。有機ケイ素化合物が結合してなるシロキサンと化学結合することが知られており、当該化学結合の結果、明部及び暗部における屈折率の差異を拡大し得るからである。
ここで確認のために、上記のような無機マトリックス材料をホログラム記録材料として用いた場合の記録原理について、図3〜図5の模式図を参照して説明する。記録層101は、図2に示したようなマトリックス構造を有する無機マトリックス材料中に、少なくとも(1)の光重合性モノマー類と(2)の光重合開始剤とが略均一に分散されている。
ホログラム記録媒体に対するデータの記録時には、記録層101に対し、信号光(記録データに応じた空間光変調を施した光)と参照光とが照射され、これら2つの光の干渉に応じた所要の光強度分布(明部と暗部)が形成される。記録層101は、この光強度分布における明部において、光重合開始剤の働きにより記録層101中のモノマー類が光重合反応を起こすことにより、モノマー類をポリマー化させる。一方、記録層101は、暗部において、光強度が不足するため、モノマー類をほとんどポリマー化させない。
記録層101は、モノマー類がポリマー化され、明部におけるモノマー類の密度を減少させることにより、明部と暗部でのモノマー類の密度差を生じさせることになる。このとき、記録層101は、化学ポテンシャルを一定に保つためにモノマー類を明部から暗部へ拡散移動させることになり、明部のポリマー化をさらに進行させることになる。
この結果、記録層101中では、光強度分布に応じて、次の図4の模式図に示されるようにポリマーの多い領域(図中の色付部)とポリマーの少ない領域(図中の白抜き部)とが形成されることになる。このとき、ポリマーの多い領域とポリマーの少ない領域とには、屈折率差が与えられるものとなる。つまり、記録層101には、信号光と参照光との干渉縞が、屈折率差のパターンによって形成される。
このようにしてホログラム記録媒体100においては、記録データを反映したホログラムが形成されることによってデータの記録が行われる。
記録層101は、水分量が好ましくは2000[ppm]以下であり、より好ましくは1904[ppm]以下、さらに好ましくは1770[ppm]以下である。水分量が多いと、以下に示すような問題を引き起こすからである。なお水分とは、記録層101中に含まれる水及びアルコール、並びに有機金属化合物に残存するヒドロキシル基(ここではOH基の総称としてヒドロキシル基という表現を用いる)を含有する。
第1に、水は無機ネットワーク(マトリックス)やモノマー類との相溶性が低いため、記録層101の内部で材料の非均一化を生じさせ、光散乱を引き起こしてしまう。すなわち、水分の混入により、記録層101に散乱光を生じさせ、記録層101の透過率を低下させると共に、当該散乱光によりデータ再生時のノイズを生じさせるという問題がある。
第2に、他の材料に比べて水は熱膨張率が大きく、わずかに混入するだけで記録層101の熱膨張率を増大させてしまう。すなわち、水分の混入により、ホログラム記録媒体100の温度変化に対する耐性を低下させ、ホログラム記録媒体100の耐環境性を低下させてしまう。
第3に、水は予測不能な副反応(記録層中の不純物との反応など)を生じさせる。すなわち、水分の混入により、少しずつ記録層101中の材料が変質されてしまい、例えば透過率の低下など、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下を招くことがある。
記録層101は、好ましくは水分量が166[ppm]以上であり、さらに好ましくは214[ppm]以上である。詳しくは後述するが、水分量が少ないと、重縮合後の有機金属化合物が溶剤不溶となり、モノマー類及び光重合開始剤との均一な混合が困難となるからである。
記録層101は、常温(25[℃])において、貯蔵弾性率が5.0×105[Pa]以下でなることが好ましい。貯蔵弾性率が大きいと、無機マトリックス材料中のモノマーの拡散移動が制限されてしまい、十分な屈折率変調が得られないからである。
本発明のホログラム記録材料は、先に挙げた(1)〜(3)の組成物以外にも、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾルなどの好適な金属ナノ微粒子、或いは有機ナノ微粒子を微量添加することもできる。好適なナノ微粒子を添加することで記録層101の回折効率や収縮が改善される場合がある。光散乱を抑えるためにこれら粒子径は15[nm]以下が望ましく、より好ましくは粒子径10[nm]以下である。
また、モノマー類の含有率が無機マトリックス材料に対して10[重量%]以下である場合は、記録層101中にクラックが生ずる場合がある。この現象を回避するために、乾燥制御剤(DCCA)、例えばDMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)、ホルムアミドを、無機マトリックス材料の重量に対して1[重量%]を超えない範囲で添加してもよい。
[1−2.ホログラム記録媒体の製造方法]
上述した(3)の有機金属化合物は、加水分解反応によってヒドロキシル基(OH)が生成される。このヒドロキシル基が記録層101に残存すると、当該ヒドロキシル基が経時的にゆっくりと反応することにより、記録層101中に水、若しくはアルコールを発生することになる。一般的に、この発生した水(水及びアルコール)は、無機ネットワークやモノマー類との相溶性が低いため、光散乱の問題を引き起こす。また、水は、ホログラム記録材料(すなわち(1)〜(3))よりも熱膨張率が大きいため、温度など外部環境の変化に弱い、つまりホログラム記録媒体100として耐環境性を低下させるなどの問題を引き起こす。
上述した(3)の有機金属化合物は、加水分解反応によってヒドロキシル基(OH)が生成される。このヒドロキシル基が記録層101に残存すると、当該ヒドロキシル基が経時的にゆっくりと反応することにより、記録層101中に水、若しくはアルコールを発生することになる。一般的に、この発生した水(水及びアルコール)は、無機ネットワークやモノマー類との相溶性が低いため、光散乱の問題を引き起こす。また、水は、ホログラム記録材料(すなわち(1)〜(3))よりも熱膨張率が大きいため、温度など外部環境の変化に弱い、つまりホログラム記録媒体100として耐環境性を低下させるなどの問題を引き起こす。
この点の改善を図るために、本発明では、ホログラム記録材料の製造工程を見直すこととした。
図5は、本発明に基づくホログラム記録材料の製造工程を示したフローチャートである。
先ず、第1工程SP1にて、(3)の有機金属化合物の加水分解を行う。
図5は、本発明に基づくホログラム記録材料の製造工程を示したフローチャートである。
先ず、第1工程SP1にて、(3)の有機金属化合物の加水分解を行う。
そして、本発明では、第2工程SP2として、第1工程SP1を経て得られた加水分解後の有機金属化合物を加熱・脱水する。すなわち、加熱処理後、脱水処理を施す。
ここで、脱水処理としては、加熱処理により発生した水分を減圧留去する。なお、金属アルコキシドの加水分解が不完全な場合には加熱処理によってアルコールも発生するが、その場合、脱水処理によっては、このアルコールについても留去されることになる。この場合の脱水処理では、100〜200[℃]で水分、アルコールを減圧留去する。
ここで、脱水処理としては、加熱処理により発生した水分を減圧留去する。なお、金属アルコキシドの加水分解が不完全な場合には加熱処理によってアルコールも発生するが、その場合、脱水処理によっては、このアルコールについても留去されることになる。この場合の脱水処理では、100〜200[℃]で水分、アルコールを減圧留去する。
なお確認のために述べておくと、この第2工程SP2における加熱処理により、有機金属化合物の重縮合反応が加速する。つまり本発明の場合、この第2工程SP2が有機金属化合物の重縮合工程を兼ねているものである。
そして、次の第3工程SP3では、脱水後の有機金属化合物(無機マトリックス材料)を好適な溶剤(例えばTHF:テトラヒドロフラン)に溶解して、無機マトリックス溶液とする。
さらに、次の第4工程SP4にて、無機マトリックス溶液に(1)のモノマー類と(2)の光重合開始剤とを添加し、攪拌・混合する。このとき攪拌は、先の図3に示したようにモノマー類と光重合開始剤が無機マトリックス材料に対し均一に分布させる目的で行われるものである。なお後述もするように、このような攪拌・混合工程によりホログラム記録材料を生成する際には、モノマー類及び光重合開始剤以外の材料も添加することができる。
その上で、第5工程SP5では、第4工程SP4を経て得られたホログラム記録材料(記録層組成物)について、不要な溶剤を留去する。この工程SP5による溶剤留去は、ホログラム記録材料の粘度を記録層101として成膜し易い適切な粘度に調整するために行われる。
この図5に示される製造工程からも理解されるように、本発明では、加水分解後の有機金属化合物に対し、加熱・脱水処理を施すものとしている。つまり、ホログラムの記録層の材料として用いられるホログラム記録材料の生成過程全体で見れば、モノマー類の添加前の段階において、加熱・脱水処理を施すものである。
ここで確認のために、従来のホログラム記録材料の製造工程を、次の図6のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでは、製造工程として、先に挙げた特許文献5(特開2007−156451公報)、特許文献1(特開2007−156452公報)に開示される製造工程を従来例として挙げる。この従来例では、本発明と同様に無機マトリックス材料を用いてホログラム記録材料を作製している。
図6において、従来のホログラム記録材料の製造工程では、工程SP101において、有機金属化合物を加水分解し、工程SP102にてモノマー類と光重合開始剤とを添加後、攪拌、混合した上で、工程SP104にて溶剤留去・乾燥を行う。
或いは、工程SP103にて光硬化型樹脂(モノマー類及び光重合開始剤)を添加後、有機金属化合物の加水分解、及び両者の混合を行った上で、工程SP104にて溶剤留去・乾燥を行うものとされている。
図6において、従来のホログラム記録材料の製造工程では、工程SP101において、有機金属化合物を加水分解し、工程SP102にてモノマー類と光重合開始剤とを添加後、攪拌、混合した上で、工程SP104にて溶剤留去・乾燥を行う。
或いは、工程SP103にて光硬化型樹脂(モノマー類及び光重合開始剤)を添加後、有機金属化合物の加水分解、及び両者の混合を行った上で、工程SP104にて溶剤留去・乾燥を行うものとされている。
このようにして従来の製造工程では、有機金属化合物に対し、モノマー類としての有機化合物を添加した後に、溶剤留去・乾燥工程(脱水工程に相当)を行うものとされている。この場合、脱水対象とする材料には有機化合物が添加されているため、加熱温度は例えば80[℃]以下であることが望ましい(モノマー類又は光重合開始剤の変質防止のため)。このように加熱温度が比較的低温とされるために、従来では、未反応ヒドロキシル基(シラノール基)の重縮合反応を加速させることができず、記録媒体製造後の記録層中での水分発生が助長されていたものである。
無機マトリックス材料の加熱・脱水処理を、モノマー類や光重合開始剤等と混合してin situ(同系内)で行うと、その熱によりモノマー類の重合が始まるか、或いは熱分解を起こすなどにより、光硬化型樹脂としての機能が失われる可能性がある。無機マトリックス材料の加熱・脱水と光硬化型樹脂等との混合を独立して行うことで、無機マトリックス材料の加熱・脱水時における加熱温度を比較的高温とすることができる。但し、無機マトリックス材料の加熱・脱水処理温度に対して化学的安定性を保つことのできる材料に関しては、加熱・脱水前にその混合を行っておくことができることは言うまでもない。
このように比較的高温での加熱が可能となることで、有機金属化合物に残存する水の除去は勿論、当該加熱処理により重縮合する有機金属化合物中に残存することになるヒドロキシル基の重縮合反応も加速させることができ、結果として、記録媒体製造後における記録層中の水分量を効果的に抑制することができる。
このように比較的高温での加熱が可能となることで、有機金属化合物に残存する水の除去は勿論、当該加熱処理により重縮合する有機金属化合物中に残存することになるヒドロキシル基の重縮合反応も加速させることができ、結果として、記録媒体製造後における記録層中の水分量を効果的に抑制することができる。
本発明では、光硬化型樹脂(モノマー類及び光重合開始剤)の添加前、加水分解後の有機金属化合物に対して加熱・脱水処理を施すことで、重縮合後の有機金属化合物中に発生するヒドロキシル基由来の水分の発生を抑制することができ、媒体製造後における記録層中の水分量を効果的に抑制することができる。
本発明の加熱・脱水工程において、その加熱温度は200[℃]以上、好ましくは200[℃]〜350[℃]である(この点については後の図7による実験を参照)。
本発明の加熱・脱水工程において、その加熱温度は200[℃]以上、好ましくは200[℃]〜350[℃]である(この点については後の図7による実験を参照)。
但し、ここで注意すべきは、加熱により完全に有機金属化合物の重縮合反応を進ませてネットワーク構造を完成させてしまうと、無機マトリックス材料は溶剤に不溶となり、記録層として成膜する際の加工が非常に困難となってしまう点である。つまり、加熱の条件としては、溶剤に可溶な物性を保ちつつ、できる限り未反応ヒドロキシル基の重縮合反応を進ませるような条件とすることが最も望ましいものとなる。
或いは、少なくとも加熱温度条件(200[℃]以上、好ましくは200[℃]〜350[℃])に基づく加熱処理を行って残存するヒドロキシル基を重縮合反応させるものとすれば、従来よりも媒体製造後における水分量の抑制を図ることができるので、結果として、従来よりもホログラム記録媒体の品質向上を図ることができる。
或いは、少なくとも加熱温度条件(200[℃]以上、好ましくは200[℃]〜350[℃])に基づく加熱処理を行って残存するヒドロキシル基を重縮合反応させるものとすれば、従来よりも媒体製造後における水分量の抑制を図ることができるので、結果として、従来よりもホログラム記録媒体の品質向上を図ることができる。
[1−3.実施例]
[1−3−1.加熱条件と有機金属化合物の特性]
加熱・脱水工程における加熱条件について、実際に実験を行った結果を次の図7に示す。本実施例では、有機金属化合物単体としての特性について実験を行った。
[1−3−1.加熱条件と有機金属化合物の特性]
加熱・脱水工程における加熱条件について、実際に実験を行った結果を次の図7に示す。本実施例では、有機金属化合物単体としての特性について実験を行った。
(3)の有機金属化合物の一例としてフェニルトリメトキシシラン(5.0[g])を用い、有機金属化合物に対して水(2.0[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(3滴)を添加して、有機金属調整液を調整した。有機金属調整液を終夜室温攪拌して加水分解反応を進行させた。有機金属調整液中に残存する過剰の溶剤を減圧留去し、150[℃]で減圧乾燥を行って固体の測定サンプルを得た。得られた測定サンプル20[mg]を、気化装置付きのカールフィッシャー水分測定機にセットし、測定温度150〜350[℃]における水(水又はアルコール)の発生量を測定した。
この図7の結果に示されるように、加熱温度150[℃]では測定サンプルからの水分の発生はほとんどなく、200[℃]に加熱することで徐々に水が発生し、約6900[ppm]の水が発生した時点で水の発生が殆どなくなった。
その後、気化装置の温度を250[℃]に上げると、測定サンプルからの水の発生が再び始まり、さらに約3600[ppm]の水が発生した。この時点での測定サンプルは、溶剤(ここではテトラヒドロフラン)に可溶な無色透明固体であった。
さらに、300[℃]〜350[℃]で数十分加熱すると、約300[ppm]の水が発生した。この時点での測定サンプルは溶剤(テトラヒドロフラン)に不溶な無色透明固体であった。
この結果から、加熱により残存ヒドロキシル基(この場合はシラノール基)による重縮合反応を加速させることができ、加熱条件として、加熱温度および加熱時間を調節することで、ホログラム記録材料に存在する残存ヒドロキシル基由来の水分量を制御できることが分かる。
この場合に測定サンプルとして用いた材料に関しては、加熱温度が200[℃]未満であると十分に未反応ヒドロキシル基を除去することができず、また350[℃]で加熱すると重縮合反応はほぼ完結する。
また、300[ppm]の水分量が含まれていれば、溶剤に可溶な物性が保たれることが理解できる。
この場合に測定サンプルとして用いた材料に関しては、加熱温度が200[℃]未満であると十分に未反応ヒドロキシル基を除去することができず、また350[℃]で加熱すると重縮合反応はほぼ完結する。
また、300[ppm]の水分量が含まれていれば、溶剤に可溶な物性が保たれることが理解できる。
なお確認のために述べておくと、「300[ppm]の水分量」は、有機金属化合物に残存するヒドロキシル基の重縮合反応が加速して生じる可能性のある水も含んでいるものである。つまり、ここで言う「水分量」とは、将来的に「水」となり得る潜在的な水分も含んだものを指す。
この図7に示した結果は一例であり、最適とされる加熱条件(加熱温度・加熱時間)については、有機金属化合物として選定する材料の種類や量に応じて異なってくる。
実際の記録媒体製造過程においては、有機金属化合物として選定した材料について、図7に示したような加熱条件/発生水分量についての実験を行った結果に基づき、最適とされる加熱条件を割り出した上で、その条件により加熱・脱水工程を行うことになる。この加熱条件は、例えば溶剤に可溶な物性を維持できる限界点付近まで残存ヒドロキシル基の重縮合を進行させるができる条件が挙げられる。
実際の記録媒体製造過程においては、有機金属化合物として選定した材料について、図7に示したような加熱条件/発生水分量についての実験を行った結果に基づき、最適とされる加熱条件を割り出した上で、その条件により加熱・脱水工程を行うことになる。この加熱条件は、例えば溶剤に可溶な物性を維持できる限界点付近まで残存ヒドロキシル基の重縮合を進行させるができる条件が挙げられる。
[1−3−2.水分量と特性]
本発明の無機マトリックス材料は、重縮合後における、気化装置付きのカールフィッシャー水分測定機(残存ヒドロキシル基についても水分量としてカウントされる)により測定した水分量によって特徴付けることができる。
本発明の無機マトリックス材料は、重縮合後における、気化装置付きのカールフィッシャー水分測定機(残存ヒドロキシル基についても水分量としてカウントされる)により測定した水分量によって特徴付けることができる。
確認のために述べておくと、本発明において、水分量測定に気化装置付きのカールフィッシャー水分測定機を用いるのは、上述した潜在的な水分量が従来の問題点の解決にあたり重要な意味を有するためである。なお、気化装置付きの水分測定機を用いる場合は、測定サンプル中の残存ヒドロキシル基を完全に重縮合させるまでの発生水分量を測定することになる。このとき、気化装置の設定温度は残存ヒドロキシル基の重縮合を加速することのできる温度に設定する必要がある。つまり、先の図7の結果からも明らかなように、加熱温度が200[℃]未満では除去される水分は物理的に吸着された水分が主体となる。一方、300[℃]超では重縮合反応の進行により、実質的にヒドロキシル基は存在しない。この点で水分量測定時の加熱温度条件としてはその上限が300[℃]が必要最小限の条件となる。ここで、水分量の測定時には上述のように残存ヒドロキシル基を完全に重縮合させるので、加熱時の設定温度は温度範囲(350[℃])を上限側に設定するのが好ましい。
以下の実験1、実験2として、それぞれ測定水分量の異なる無機マトリックス材料について、経時的な光透過率の変化を比較する実験を行った。
ここで、残存ヒドロキシル基(シラノール基)による事後的な水分発生量が多いほど、水分と材料間の屈折率差による材料不均一化が生じ、透過率は低下する傾向となる。従っ
て下記実験1,2において、透過率の低下が少ないということは、品質劣化の少ない優れた光記録用材料であるということを表すものとなる。
ここで、残存ヒドロキシル基(シラノール基)による事後的な水分発生量が多いほど、水分と材料間の屈折率差による材料不均一化が生じ、透過率は低下する傾向となる。従っ
て下記実験1,2において、透過率の低下が少ないということは、品質劣化の少ない優れた光記録用材料であるということを表すものとなる。
(実験1)
実験1は、(3)の有機金属化合物として、フェニルトリメトキシシランを選定したものである。
このフェニルトリメトキシシラン(5.0[g])を、水(2.0[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌した後、過剰の溶剤を減圧留去、150[℃]にて減圧乾燥を行った。残渣分を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応が完結していることを確認した。この残渣物を材料Aとする。
また、この材料Aをさらに220[℃]にて20分加熱し、発生した水分やメタノールを150[℃]にて減圧留去した。これによる脱水残渣物を材料Bとする。
さらに、材料Aを250[℃]にて30分加熱し、発生した水分やメタノールを150[℃]にて減圧留去し、得られた脱水残渣物を材料Cとする。
実験1は、(3)の有機金属化合物として、フェニルトリメトキシシランを選定したものである。
このフェニルトリメトキシシラン(5.0[g])を、水(2.0[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌した後、過剰の溶剤を減圧留去、150[℃]にて減圧乾燥を行った。残渣分を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応が完結していることを確認した。この残渣物を材料Aとする。
また、この材料Aをさらに220[℃]にて20分加熱し、発生した水分やメタノールを150[℃]にて減圧留去した。これによる脱水残渣物を材料Bとする。
さらに、材料Aを250[℃]にて30分加熱し、発生した水分やメタノールを150[℃]にて減圧留去し、得られた脱水残渣物を材料Cとする。
材料A,B,Cの水分量を気化装置付きカールフィッシャー水分測定機で測定した。結果
は、
材料A=1.2[%]
材料B=2000[ppm]
材料C=300[ppm]
であった。
なお、ここでの水分測定は、各材料の一部をサンプルし、該サンプルについて行ったものである(実験2における水分測定ついても同様)。
は、
材料A=1.2[%]
材料B=2000[ppm]
材料C=300[ppm]
であった。
なお、ここでの水分測定は、各材料の一部をサンプルし、該サンプルについて行ったものである(実験2における水分測定ついても同様)。
片面に反射防止膜が付いたガラス基板2枚を用い、反射防止膜が付いていない面で材料A,B,Cをそれぞれ材料膜厚1[mm]で挟み、光透過率測定用のセルを作製した。材料A,B,Cについての各セルの波長405[nm]の照射光に対する光透過率を製造直後(1時間以内)、製造10日後、製造30日後に測定し、経時変化を確認した。なお、この際の保管は室温で行った。結果を表1に示す。
材料A(水分量1.2[%])の透過率は、製造直後は97.4[%]であったが製造10日後には93.3[%]となり4.1[%]透過率が低下した。製造30日後には93.1[%]となり、製造10日後からさらに0.2[%]の透過率低下が確認された。
製造10日後の材料Aの測定用セルにおいては、発生した水と材料間の屈折率差による材料不均一化(ゆらぎ)を目視で確認した。
製造10日後の材料Aの測定用セルにおいては、発生した水と材料間の屈折率差による材料不均一化(ゆらぎ)を目視で確認した。
一方、250[℃]で加熱後脱水処理した材料B(水分量2000[ppm])の透過率は、製造直後は97.8[%]であり、製造10日後には0.6[%]の低下、30日後には0.9[%]の低下が確認された。材料Aと比較すると大幅に透過率劣化が抑えられたことが分かる。
また、300[℃]で加熱後脱水処理した材料C(水分量300[ppm])は、製造直後から製造30日後までほとんど透過率劣化が確認されなかった。
材料B、材料Cについての各測定用セルにおいては、製造後30日を経過しても、材料Aのセルで発生したような材料不均一化(ゆらぎ)は確認されず、均一な膜質が保たれていた。
また、300[℃]で加熱後脱水処理した材料C(水分量300[ppm])は、製造直後から製造30日後までほとんど透過率劣化が確認されなかった。
材料B、材料Cについての各測定用セルにおいては、製造後30日を経過しても、材料Aのセルで発生したような材料不均一化(ゆらぎ)は確認されず、均一な膜質が保たれていた。
(実験2)
実験2は、(3)の有機金属化合物としてフェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランを選定したものである。
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(5.0[g])とを、水(2.7[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌した後、過剰の溶剤を減圧留去し、150[℃]にて減圧乾燥を行った。残渣分を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応は完結していることを確認した。この時点での残渣物を材料Dとする。
また、材料Dを250[℃]にて30分加熱し、発生した水やメタノールを150[℃]にて減圧留去した脱水残渣物を材料Eとする。
さらに、材料Dを300[℃]にて20分加熱し、発生した水やメタノールを150[℃]にて減圧留去した脱水残渣物を材料Fとする。
材料D,E,Fについて気化装置付きカールフィッシャー水分測定機で水分測定を行った。結果は、
材料D=2.3[%]
材料E=2000[ppm]
材料F=300[ppm]であった。
実験1と同様に、片面に反射防止膜が付いたガラス基板2枚を用い、反射防止膜が付いていない面で材料D,E,Fをそれぞれ材料膜厚1[mm]で挟み、光透過率測定用のセルを作製した。材料D,E,Fの各セルの波長405[nm]の照射光に対する光透過率を製造直後(1時間以内)、製造10日後、製造30日後に測定し経時変化を確認した。なお、この場合も保管温度は室温とした。結果を表2に示す。
実験2は、(3)の有機金属化合物としてフェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランを選定したものである。
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(5.0[g])とを、水(2.7[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌した後、過剰の溶剤を減圧留去し、150[℃]にて減圧乾燥を行った。残渣分を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応は完結していることを確認した。この時点での残渣物を材料Dとする。
また、材料Dを250[℃]にて30分加熱し、発生した水やメタノールを150[℃]にて減圧留去した脱水残渣物を材料Eとする。
さらに、材料Dを300[℃]にて20分加熱し、発生した水やメタノールを150[℃]にて減圧留去した脱水残渣物を材料Fとする。
材料D,E,Fについて気化装置付きカールフィッシャー水分測定機で水分測定を行った。結果は、
材料D=2.3[%]
材料E=2000[ppm]
材料F=300[ppm]であった。
実験1と同様に、片面に反射防止膜が付いたガラス基板2枚を用い、反射防止膜が付いていない面で材料D,E,Fをそれぞれ材料膜厚1[mm]で挟み、光透過率測定用のセルを作製した。材料D,E,Fの各セルの波長405[nm]の照射光に対する光透過率を製造直後(1時間以内)、製造10日後、製造30日後に測定し経時変化を確認した。なお、この場合も保管温度は室温とした。結果を表2に示す。
材料D(水分量2.3[%])の透過率は、製造直後は96.0[%]であったが、製造10日後には90.8[%]となり5.2[%]透過率が低下した。製造30日後には90.1[%]となり、製造10日後からさらに0.7[%]の透過率低下が確認された。
材料Dの製造10日後のセルは発生した水と材料間の屈折率差による材料不均一化(ゆらぎ)を目視で確認した。
材料Dの製造10日後のセルは発生した水と材料間の屈折率差による材料不均一化(ゆらぎ)を目視で確認した。
270[℃]で加熱後脱水処理した材料E(水分量2000[ppm])の透過率は、製造直後は95.6[%]であり、製造10日後には0.5[%]の低下、30日後には0.6[%]の低下が確認された。材料Dと比較すると透過率低下は大幅に抑えられている。
また、350[℃]で加熱後脱水処理した材料F(水分量300[ppm])は、製造直後から製造30日後までほとんど透過率劣化は確認されなかった。
この場合も、加熱・脱水処理した材料E、材料Fの各セルにおいては、製造後30日経過しても、材料Dで発生したような材料不均一化(ゆらぎ)は確認されず、材料の均一性が保たれていた。
また、350[℃]で加熱後脱水処理した材料F(水分量300[ppm])は、製造直後から製造30日後までほとんど透過率劣化は確認されなかった。
この場合も、加熱・脱水処理した材料E、材料Fの各セルにおいては、製造後30日経過しても、材料Dで発生したような材料不均一化(ゆらぎ)は確認されず、材料の均一性が保たれていた。
実験1,2より、加熱・脱水処理した結果の測定水分量が2000[ppm]以下、より好ましくは300[ppm]程度に抑えられることで、無機マトリックス材料の光透過率の経時劣化を大幅に抑えられることが確認された。
この結果から、本発明の無機マトリックス材料は、重縮合後における、気化装置付きのカールフィッシャー水分測定機による測定水分量を2000[ppm]以下にすることにより、透過率の経時的劣化を著しく抑制し得ることが確認された。
ここで、本発明の無機マトリックス材料(脱水無機マトリックス材料)としてのホログラム記録材料が奏する効果について整理しておく。
上述のように本発明のホログラム記録材料(無機マトリックス材料)によれば、記録層中における水分量(経時変化により事後的に発生する水も含む)を従来よりも格段に抑えることができるので、
1)記録層中の水による熱膨張率についての問題の解決が図られ、温度変化に強い、耐環境性の高いホログラム記録材料及びホログラム記録媒体を実現することができる。
2)水による記録層中の光散乱の問題の解決も図られ、再生特性の向上も図られる。
3)水による記録層中の予測不能な副反応についての問題の解決も図られ、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下の防止を図ることができる。
また、本発明の加熱・脱水処理では従来よりも高温の加熱が可能となるので、無機マトリックス材料の硬度を相当に上げることができる。このため、
4)油状物であるモノマー類の含有率をより上げることができるという効果も奏する。
上述のように本発明のホログラム記録材料(無機マトリックス材料)によれば、記録層中における水分量(経時変化により事後的に発生する水も含む)を従来よりも格段に抑えることができるので、
1)記録層中の水による熱膨張率についての問題の解決が図られ、温度変化に強い、耐環境性の高いホログラム記録材料及びホログラム記録媒体を実現することができる。
2)水による記録層中の光散乱の問題の解決も図られ、再生特性の向上も図られる。
3)水による記録層中の予測不能な副反応についての問題の解決も図られ、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下の防止を図ることができる。
また、本発明の加熱・脱水処理では従来よりも高温の加熱が可能となるので、無機マトリックス材料の硬度を相当に上げることができる。このため、
4)油状物であるモノマー類の含有率をより上げることができるという効果も奏する。
[1−3−3.ホログラム記録材料の調整]
[1−3−3−1.実施例1]
(無機マトリックス材料の生成)
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(5.0[g])とを、水(2.7[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌し、加水分解反応を進行させ、有機金属化合物調整液を調整した。有機金属化合物調整液から過剰の溶剤を減圧留去し、さらに、150[℃]にて減圧乾燥を行うことにより、無機マトリックス材料を得た。得られた無機マトリックス材料を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応が完結していることを確認した。
この無機マトリックス材料を電気炉中で300[℃]で20分間加熱した後、真空乾燥器で200[℃]・2時間減圧乾燥することで脱水無機マトリックス材料を得た。
[1−3−3−1.実施例1]
(無機マトリックス材料の生成)
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(5.0[g])とを、水(2.7[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌し、加水分解反応を進行させ、有機金属化合物調整液を調整した。有機金属化合物調整液から過剰の溶剤を減圧留去し、さらに、150[℃]にて減圧乾燥を行うことにより、無機マトリックス材料を得た。得られた無機マトリックス材料を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応が完結していることを確認した。
この無機マトリックス材料を電気炉中で300[℃]で20分間加熱した後、真空乾燥器で200[℃]・2時間減圧乾燥することで脱水無機マトリックス材料を得た。
(無機マトリックス溶液の調整)
このようにして得られた脱水無機マトリックス材料を、50[重量%]となるようにTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し無機マトリックス溶液を調整した。
このようにして得られた脱水無機マトリックス材料を、50[重量%]となるようにTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し無機マトリックス溶液を調整した。
(ホログラム記録材料の調整)
無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート300[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド9[mg]を加え、室温で30分間攪拌し、混合調整液を調整した。この混合調整液から溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、高粘性油状物をホログラム記録材料として得た。
無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート300[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド9[mg]を加え、室温で30分間攪拌し、混合調整液を調整した。この混合調整液から溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、高粘性油状物をホログラム記録材料として得た。
(ホログラム記録媒体の作製)
図1の記録媒体断面構造図を参照して、ホログラム記録材料を用いた実施例としてのホログラム記録媒体100の作製手順(製造工程)を説明する。
先ず、基板102の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ550[μm]となるように塗布した。ホログラム記録材料の塗布は、スピンコート、ディップコート、フローコートなど各種手法を採ることができる。
このようにホログラム記録材料が塗布された基板102を50[℃]にて2時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。ガラス製でなる基板102の温度を50[℃]に保ち、環状のスペーサ104を挟むようにして別のガラス製でなる基板103でカバーした。ここでは、厚さ(高さ)0.5[mm]によるスペーサ104を用いることで、成膜されたホログラム記録材料(つまり記録層)の厚さを0.5[mm]に調節した。
図1の記録媒体断面構造図を参照して、ホログラム記録材料を用いた実施例としてのホログラム記録媒体100の作製手順(製造工程)を説明する。
先ず、基板102の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ550[μm]となるように塗布した。ホログラム記録材料の塗布は、スピンコート、ディップコート、フローコートなど各種手法を採ることができる。
このようにホログラム記録材料が塗布された基板102を50[℃]にて2時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。ガラス製でなる基板102の温度を50[℃]に保ち、環状のスペーサ104を挟むようにして別のガラス製でなる基板103でカバーした。ここでは、厚さ(高さ)0.5[mm]によるスペーサ104を用いることで、成膜されたホログラム記録材料(つまり記録層)の厚さを0.5[mm]に調節した。
(記録再生特性)
図8に示すような光学系を用いて、ホログラム記録媒体100についての記録再生特性の実験を行った。
先ず、この光学系において、図中のレーザダイオード5は、例えば中心波長405[nm]のレーザ光を出射する。このレーザダイオードから出射された光は、第1シャッター6を介した後、空間フィルタ7にて波面成形され、コリメーションレンズ8で平行光となるようにされた後、ミラー9→ミラー10を介してビームスプリッタBSに入射する。このビームスプリッタBSにより、分光された2つの平行光が得られる。図のように一方の平行光はミラー11を反射後、第2シャッター12を介して所定位置にセットされたホログラム記録媒体100に照射される。また、他方の平行光はミラー13で反射されてホログラム記録媒体100に対して照射される。ミラー11、ミラー13の設置角度は、2つの平行光の光軸がホログラム記録媒体100の記録層101中で交差するようにして調整されている。このとき、2つの平行光のなす角度θは43°であった。
図8に示すような光学系を用いて、ホログラム記録媒体100についての記録再生特性の実験を行った。
先ず、この光学系において、図中のレーザダイオード5は、例えば中心波長405[nm]のレーザ光を出射する。このレーザダイオードから出射された光は、第1シャッター6を介した後、空間フィルタ7にて波面成形され、コリメーションレンズ8で平行光となるようにされた後、ミラー9→ミラー10を介してビームスプリッタBSに入射する。このビームスプリッタBSにより、分光された2つの平行光が得られる。図のように一方の平行光はミラー11を反射後、第2シャッター12を介して所定位置にセットされたホログラム記録媒体100に照射される。また、他方の平行光はミラー13で反射されてホログラム記録媒体100に対して照射される。ミラー11、ミラー13の設置角度は、2つの平行光の光軸がホログラム記録媒体100の記録層101中で交差するようにして調整されている。このとき、2つの平行光のなす角度θは43°であった。
ホログラムの記録は、第1シャッター6及び第2シャッター12を開放状態として2つの平行光の干渉縞をホログラム記録媒体100の記録層101に形成することで行う。ここではいわゆる角度多重方式として、複数のホログラムを同一位置に対して記録する手法を採用した。具体的には、ホログラム記録媒体100を図中の矢印方向に所定角度ずつ回転させる一方で、各回転角度ごとに、第2シャッター12の開閉によりホログラムを順次記録するものである。この実験では、ホログラムの多重枚数を61(媒体回転角度範囲=−30°〜+30°、記録角度間隔1°)とした。
また、再生時には、第1シャッター6を開放し、第2シャッター12を閉じた状態でホログラム記録媒体100を回転させ、各回転角度(各記録角度)ごとに、記録されたホログラムに応じた回折光(再生光)を得、それらをディテクタ14にて検出した。このディテクタ14による各再生光の検出結果に基づき回折効率を計算した。
このような回折効率の計算を、ホログラム記録媒体100の作製後、直ちに行った。多重記録されたホログラムからの回折効率の1/2乗の和としてM/♯(ダイナミックレンジ)を求めたところ、3.8(記録層1[mm]換算)であった。
また、この際、波長405[nm]の照射光に対する光透過率を測定したところ、72[%]であった。
また、この際、波長405[nm]の照射光に対する光透過率を測定したところ、72[%]であった。
また、実験では、経時変化を調べるため、多重記録を行ったホログラム記録媒体100を室温で10日間保管した後、同じ条件でホログラムの多重記録を行った際のダイナミックレンジM/♯、及び波長405[nm]における光透過率も求めた。結果は、ダイナミックレンジM/♯=3.8(記録層1[mm]換算)、光透過率=72[%]であった。
このように実施例1としてのホログラム記録媒体100については、経時的な特性劣化は殆ど確認されなかった。つまりこの結果より、実施例1としてのホログラム記録媒体100によれば、経時的な特性劣化が良好に抑制された非常に高品質なホログラム記録媒体が実現されることが理解できる。
なお、実施例1においては、ホログラム記録媒体100の製造工程に関して、ホログラム記録材料を塗布後、残存溶剤の留去を50[℃]で減圧留去する場合を例示したが、この残存溶剤の留去に関しては、少なくとも室温〜80[℃]、常圧もしくは減圧下で行うものとすればよい。
このような条件で溶剤の留去を行うことで、先の図3の模式図に示したように無機マトリックス中にモノマー類、および光重合開始剤が略均一に分散し固化した記録層101が成膜されることになる。
また、この成膜工程は、酸素の重合阻害を避けるため、窒素雰囲気下で行ってもよい。
このような条件で溶剤の留去を行うことで、先の図3の模式図に示したように無機マトリックス中にモノマー類、および光重合開始剤が略均一に分散し固化した記録層101が成膜されることになる。
また、この成膜工程は、酸素の重合阻害を避けるため、窒素雰囲気下で行ってもよい。
また、記録層101の厚さを0.5[mm]に調節するものとしたが、本発明において、記録層101の膜厚は1[μm]〜2[mm]、好ましくは100[μm]〜1[mm]である。
また、実施例では、ホログラム記録媒体としていわゆる透過型のホログラム記録媒体を作製する場合を例示したが、本発明のホログラム記録媒体としては、反射膜を備える反射型のホログラム記録媒体とすることもできる。
また、先の図7に示したホログラム記録媒体の構造も一例に過ぎず、例えばホログラムの記録位置を案内するための案内トラックを形成したトラック形成層など別途の層を追加的に設けるなど、図1に示した以外の構造を採ることができる。すなわち、本発明のホログラム記録媒体としては、上述した本発明としての加熱・脱水工程を経た無機マトリックス材料を用いて生成されたホログラム記録材料が記録層として成膜されたものであればよく、それ以外の構造について特に限定されるべきものではない。
また、先の図7に示したホログラム記録媒体の構造も一例に過ぎず、例えばホログラムの記録位置を案内するための案内トラックを形成したトラック形成層など別途の層を追加的に設けるなど、図1に示した以外の構造を採ることができる。すなわち、本発明のホログラム記録媒体としては、上述した本発明としての加熱・脱水工程を経た無機マトリックス材料を用いて生成されたホログラム記録材料が記録層として成膜されたものであればよく、それ以外の構造について特に限定されるべきものではない。
[1−3−3−2.比較例1]
(無機マトリックス溶液の調整)
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(5.0[g])とを、水(2.7[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌し、加水分解反応を進行させ、有機金属化合物調整液を調整した。有機金属化合物調整液から過剰の溶剤を減圧留去した。さらに有機金属化合物調整液を150[℃]にて3時間減圧乾燥を行うことにより、無機マトリックス材料を得た。得られた無機マトリックス材料を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応は完結していることを確認した。この無機マトリックス材料を50[重量%]となるように溶剤(THF)に溶解し無機マトリックス溶液を調整した。
(無機マトリックス溶液の調整)
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(5.0[g])とを、水(2.7[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌し、加水分解反応を進行させ、有機金属化合物調整液を調整した。有機金属化合物調整液から過剰の溶剤を減圧留去した。さらに有機金属化合物調整液を150[℃]にて3時間減圧乾燥を行うことにより、無機マトリックス材料を得た。得られた無機マトリックス材料を核磁気共鳴スペクトル測定し加水分解反応は完結していることを確認した。この無機マトリックス材料を50[重量%]となるように溶剤(THF)に溶解し無機マトリックス溶液を調整した。
すなわち、この比較例1では、実施例1において実行された300[℃]で20分間加熱した後、真空乾燥器で200[℃]・2時間減圧乾燥することで脱水する加熱・脱水工程が省略されている。
(ホログラム記録材料の調整)
このようにして作製した無機マトリックス溶液を用いること以外は、先の実施例1の場合と同様にホログラム記録材料の調整を行った。
このようにして作製した無機マトリックス溶液を用いること以外は、先の実施例1の場合と同様にホログラム記録材料の調整を行った。
(ホログラム記録媒体の作製)
「ホログラム記録材料の調整」で作製したホログラム記録材料を用いること以外は、実施例の場合と同様にホログラム記録媒体を作製することを試みた。
しかしながら、基板102上に塗布したホログラム記録材料が固化せず、ホログラム記録媒体100の作製ができなかった。
「ホログラム記録材料の調整」で作製したホログラム記録材料を用いること以外は、実施例の場合と同様にホログラム記録媒体を作製することを試みた。
しかしながら、基板102上に塗布したホログラム記録材料が固化せず、ホログラム記録媒体100の作製ができなかった。
この比較例1の結果から、同一処方であっても、加熱・脱水工程が省略されることにより、重縮合が進行せず、記録層101としての弾性率が大きく低下することが確認された。言い換えると、本発明(実施例1)の加熱・脱水工程を経た脱水無機マトリクス材料をホログラム記録媒体の作製に用いることで、記録層101総体としての弾性率を向上させることができ、記録層101におけるモノマー類の含有率を上げられることが確認された。
[1−3−3−3.比較例2]
(無機マトリックス溶液の調整)
上述の比較例1と同様の調整手法により無機マトリックス溶液を調整した。
(無機マトリックス溶液の調整)
上述の比較例1と同様の調整手法により無機マトリックス溶液を調整した。
(ホログラム記録層組成物の調整)
「無機マトリックス溶液の調整」で作製した無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート150[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド9[mg]を加え30分室温攪拌した。溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、得られた高粘性油状物をホログラム記録材料とした。
「無機マトリックス溶液の調整」で作製した無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート150[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド9[mg]を加え30分室温攪拌した。溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、得られた高粘性油状物をホログラム記録材料とした。
(ホログラム記録媒体の作製)
「ホログラム記録材料の調整」で作製したホログラム記録材料を用いること以外は、実施例1と同様の作製手法でホログラム記録媒体を作製した。
「ホログラム記録材料の調整」で作製したホログラム記録材料を用いること以外は、実施例1と同様の作製手法でホログラム記録媒体を作製した。
(記録再生特性)
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=2.4(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は74[%]であった。
また、室温で10日間保管した後のホログラム記録媒体についてと同じ条件で記録再生特性を確認したところ、ダイナミックレンジM/♯=2.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は69[%]であった。 つまり、この比較例2の手法で生成されたホログラム記録媒体については、経時的な特性劣化が確認された。
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=2.4(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は74[%]であった。
また、室温で10日間保管した後のホログラム記録媒体についてと同じ条件で記録再生特性を確認したところ、ダイナミックレンジM/♯=2.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は69[%]であった。 つまり、この比較例2の手法で生成されたホログラム記録媒体については、経時的な特性劣化が確認された。
この比較例2の結果からも、本発明における加熱・脱水工程を経て生成された脱水無機マトリクス材料をホログラム記録媒体の作製に用いることで、経時劣化の抑制が図られた高品質な記録媒体が実現できることが理解される。
[1−3−3−4.実施例2]
実施例2では、有機金属化合物として、有機ケイ素化合物及び有機チタン化合物を混合して使用した。
実施例2では、有機金属化合物として、有機ケイ素化合物及び有機チタン化合物を混合して使用した。
(ホログラム記録材料の調整)
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とチタン含有率が7.0[重量%]のチタンテトラアセチルアセトネート(1.4[g])とを、水(0.15[g])/エタノール(10[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にしてホログラム記録材料を調整した。
フェニルトリメトキシシラン(4.0[g])とチタン含有率が7.0[重量%]のチタンテトラアセチルアセトネート(1.4[g])とを、水(0.15[g])/エタノール(10[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にしてホログラム記録材料を調整した。
(ホログラム記録媒体の作製)
基板102の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ550[μm]となるように塗布した。
このようにホログラム記録材料が塗布された基板102を70[℃]にて10時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。基板102の温度を50[℃]に保ち、厚さ0.5[mm]でなる環状のスペーサ104を挟むようにして基板103でカバーすることにより、厚さ0.5[mm]でなる記録層101を形成した。
基板102の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ550[μm]となるように塗布した。
このようにホログラム記録材料が塗布された基板102を70[℃]にて10時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。基板102の温度を50[℃]に保ち、厚さ0.5[mm]でなる環状のスペーサ104を挟むようにして基板103でカバーすることにより、厚さ0.5[mm]でなる記録層101を形成した。
(記録再生特性)
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=12.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は58[%]であった。
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=12.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は58[%]であった。
また、室温で10日間保管した後のホログラム記録媒体についてと同じ条件で記録再生特性を確認したところ、ダイナミックレンジM/♯=12.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は58[%]であった。つまり、この実施例2の手法で生成されたホログラム記録媒体については、経時的な特性劣化がみられなかった。
なお実施例2では、ホログラム記録媒体の記録前に実行されるプレキュア(記録前露光)の条件が実施例1と相違するために、ダイナミックレンジM/♯の値が大幅に上昇している。実施例3〜6についても同様である。
[1−3−3−5.実施例3]
実施例3では、有機金属化合物として、有機ケイ素化合物及び有機ジルコニウム化合物を混合して使用した。
実施例3では、有機金属化合物として、有機ケイ素化合物及び有機ジルコニウム化合物を混合して使用した。
(ホログラム記録媒体の作製)
フェニルトリメトキシシラン(2.0[g])とジルコニウム含有率が12.9[重量%]のジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(4.6[g])とを、水(0.132[g])/エタノール(5[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にしてホログラム記録材料を調整した。このホログラム記録材料を用い、実施例2と同様にしてホログラム記録媒体を作製した。
フェニルトリメトキシシラン(2.0[g])とジルコニウム含有率が12.9[重量%]のジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(4.6[g])とを、水(0.132[g])/エタノール(5[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にしてホログラム記録材料を調整した。このホログラム記録材料を用い、実施例2と同様にしてホログラム記録媒体を作製した。
(記録再生特性)
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=18.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は92[%]であった。
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=18.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は92[%]であった。
また、室温で10日間保管した後のホログラム記録媒体についてと同じ条件で記録再生特性を確認したところ、ダイナミックレンジM/♯=18.1(記録層1[mm]換算)、多重記録後の波長405[nm]における光透過率は92[%]であった。つまり、この実施例3の手法で生成されたホログラム記録媒体については、経時的な特性劣化がみられなかった。
[1−3−4.実施例まとめ]
このように、有機金属化合物を用いた無機マトリックス材料は、水分量を2000[ppm]以下に調整することにより、透過率の経時劣化を著しく抑制し得ることが確認された。透過率の経時劣化が系全体(無機マトリックス材料)に対する水分量に応じて生じている。このことから、ホログラム記録材料の主成分(バインダー)として、かかる無機マトリックス材料を用いる場合、系全体(ホログラム記録材料)に対して同様に水分量を2000[ppm]以下に調整することにより、透過率の経時劣化を著しく抑制し得るといえる。
このように、有機金属化合物を用いた無機マトリックス材料は、水分量を2000[ppm]以下に調整することにより、透過率の経時劣化を著しく抑制し得ることが確認された。透過率の経時劣化が系全体(無機マトリックス材料)に対する水分量に応じて生じている。このことから、ホログラム記録材料の主成分(バインダー)として、かかる無機マトリックス材料を用いる場合、系全体(ホログラム記録材料)に対して同様に水分量を2000[ppm]以下に調整することにより、透過率の経時劣化を著しく抑制し得るといえる。
また、ホログラム記録材料は、水分量が2000[ppm]以下でなる無機マトリックス材料を用いることにより、一段と確実に透過率の経時劣化を抑制することができる。ホログラム記録材料は、無機マトリックス材料に対して少なくとも5[重量%]、好ましくは10[重量%]以上のモノマー類を含有し、少なくとも0.05[重量%]、好ましくは3[重量%]以上の光重合開始剤を含有している。このため、ホログラム記録材料は、水分量を1904[ppm](2000[ppm]/105.05[重量%])以下、好ましくは1770[ppm](2000[ppm]/113[重量%])以下に調整することにより、一段と確実に透過率の経時劣化を抑制することができる。
また、有機化合物調整液の加熱条件について行った実験1及び実験2により、重縮合反応を迅速に進行させるためには、150[℃]以上の高温加熱が必須であることが確認された。水分とは、有機金属化合物において未反応のヒドロキシル基を含有する。光硬化型樹脂の特性を保持するため、当該光硬化型樹脂の混合後に80[℃]を超える加熱処理を実行し得ず、光硬化型樹脂の混合後に水分量を減少させることができない。これらのことから、水分量が2000[ppm]以下であるということは、すなわち光硬化型樹脂の混合前に重縮合反応を進行させる加熱・脱水処理が実行されたことを意味している。
無機マトリックス材料は、水分量を300[ppm]以上に調整することにより、重縮合反応を過度に進行させることなく、溶剤可溶な固形物の状態を維持することができる。ホログラム記録材料は、無機マトリックス材料に対して多くとも50[重量%]以下、好ましくは30[重量%]以下のモノマー類を含有し、多くとも30[重量%]以下、好ましくは10[重量%]以下の光重合開始剤を含有している。このため、ホログラム記録材料は、水分量を166[ppm](300[ppm]/180[重量%])以上、好ましくは214[ppm](300[ppm]/140[重量%])以上に調整することにより、無機マトリックス材料の溶剤可溶性を担保することができる。
ホログラム記録材料の主成分(バインダー)として、有機金属化合物を用いた無機マトリックス材料を使用する場合、重縮合反応を迅速に進行させるためには、図7に示したように、150[℃]程度の高温による加熱処理が必要となる。
一方で、光重合性のモノマー類及び光重合開始剤は、一般的に、長時間の高温加熱により変質又はポリマー化を開始することが知られている。従って、モノマー類及び光重合開始剤を混合した混合調整液に対する加熱温度は、通常、80[℃]以下が望ましい。
すなわち、光重合性のモノマー類及び光重合開始剤を混合してしまうと、加熱により有機金属化合物の重縮合反応を進行させることが実質上困難となる。一方、有機金属化合物は、常温においてもゆっくりと重縮合反応を進行させる。従って、例えばホログラム記録材料は、真空又は減圧によりホログラム記録材料が脱水された場合であっても、重縮合反応によって経時的に水を発生させ、ホログラム記録媒体としての特性を低下させることになる。
表3に、実施例1〜3並びに比較例1及び2の透過率及びダイナミックレンジの経時変化をまとめて示す。表からわかるように、ホログラム記録材料は、比較例2のように加熱・脱水工程が省略されると、経時変化により、10日後のダイナミックレンジを低下させることが確認された。これに対して、ホログラム記録材料は、実施例1のように加熱・脱水工程が存在することにより、経時変化を殆ど生じさせず、10日後のダイナミックレンジを殆ど低下させないことが確認された。
また、ホログラム記録材料は、加熱・脱水工程の省略によって重縮合反応が未進行でなることにより、その硬度を著しく低下させることが確認された。ホログラム記録材料は、加熱・脱水工程の省略に伴って液状のモノマー類及び光重合開始剤の含有量を減少させる必要が生じてしまった。この結果、ホログラム記録材料において、実施例1と比較して、比較例2における製造直後のダイナミックレンジの低下が確認された。
ホログラム記録材料は、実施例2及び3のように、有機金属化合物として有機ケイ素化合物に加えて有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物を混合した場合であっても、加熱・脱水工程の存在により、経時変化を殆ど生じさせず、10日後のダイナミックレンジを殆ど低下させないことが確認された。特に有機金属化合物として有機ジルコニウム化合物を混合した実施例3では、有機チタン化合物を混合した実施例2と比してダイナミックレンジの大幅な向上が確認された。
なお、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物は、有機ケイ素化合物が重縮合して形成されるシロキサンと化学結合して有機ケイ素化合物と共に無機マトリックスを形成し、信号光及び参照光に応じた明部の屈折率を高めることが一般的に知られている。他にも、Al、Znを含有する有機金属化合物も同様の効果が得られることが知られていることから、これらを用いた場合であっても実施例2及び3と同様の効果が得られると考えられる。
なお、本発明はこの実施例に限定されるべきものでないことは言うまでもない。
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、ホログラム記録媒体100の記録層101は、光に応じて重合する光硬化型樹脂及び加水分解によって付加されたヒドロキシル基が重縮合反応することによりマトリックス(無機マトリックス)を形成する有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる。すなわち、記録層101は、有機金属化合物が加水分解及び重縮合反応することによって形成された無機マトリックスと、光硬化型樹脂とを含有する。なお、水分量とは、溶剤として使用された水及びアルコール、並びに重縮合反応において発生する水及び加水分解反応によって有機金属化合物に生じるヒドロキシル基を含有するものである。
以上の構成において、ホログラム記録媒体100の記録層101は、光に応じて重合する光硬化型樹脂及び加水分解によって付加されたヒドロキシル基が重縮合反応することによりマトリックス(無機マトリックス)を形成する有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる。すなわち、記録層101は、有機金属化合物が加水分解及び重縮合反応することによって形成された無機マトリックスと、光硬化型樹脂とを含有する。なお、水分量とは、溶剤として使用された水及びアルコール、並びに重縮合反応において発生する水及び加水分解反応によって有機金属化合物に生じるヒドロキシル基を含有するものである。
これにより、ホログラム記録媒体100は、重縮合反応の進行により記録層101の特性を経時的に殆ど変化させずに済み、ホログラム記録媒体100としての特性を良好に保つことができる。
ここで、記録層101に含有される水は、透過率の経時的変化以外にも、以下のような問題を引き起こすことが知られている。
第1に、他の材料に比べて水は熱膨張率が大きく、わずかに混入するだけで熱膨張率の大きい媒体となってしまう。すなわち、温度変化に弱く、耐環境性の低い記録媒体となってしまう。
第2に、水は無機ネットワーク(マトリックス)やモノマー類との相溶性が低いため、光散乱を引き起こし、この散乱光によりデータ再生時のノイズが生ずるという問題がある。
また、第3に、水は、予測不能な副反応(記録層中の不純物との反応など)により少しずつ記録層中の材料を変質させ、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下を招くことがある。
例えば、無機マトリックス材料を用いる記録材料のうち、特許文献2に記載の記録材料では、材料組成として系内に水を入れており、様々な問題が生じると考えられる。
第2に、水は無機ネットワーク(マトリックス)やモノマー類との相溶性が低いため、光散乱を引き起こし、この散乱光によりデータ再生時のノイズが生ずるという問題がある。
また、第3に、水は、予測不能な副反応(記録層中の不純物との反応など)により少しずつ記録層中の材料を変質させ、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下を招くことがある。
例えば、無機マトリックス材料を用いる記録材料のうち、特許文献2に記載の記録材料では、材料組成として系内に水を入れており、様々な問題が生じると考えられる。
また、特許文献3,4に記載される記録材料に関しては、これらの文献で開示されている無機マトリックス材料の作製条件によっては、無機マトリックス材料中に未反応のヒドロキシル基が多く残存してしまうことになる。これら残存した未反応ヒドロキシル基は、経時変化によりゆっくりと重縮合し、記録層中に生成物である水を徐々に発生させることになる。このように、結果として記録層中に水が生じてしまうことで、特許文献3,4に記載の発明によっても、上述の第1〜第3と同様の問題が生じることになる。
記録層101が含有する水分量は、166[ppm]以上、より好ましくは214[ppm]以上でなる。
これにより、記録層101は、無機マトリックス材料を溶剤に溶解させた状態で当該無機マトリックス材料及び光硬化型樹脂を混合させることができ、内部を均一化することができる。
記録層101が含有する水分量は、1904[ppm]以下、より好ましくは1770[ppm]以下でなる。
これにより、記録層101は、経時による特性変化を一段と確実に抑制することができる。
記録層101は、有機金属化合物が200[℃]以上の高温で加熱・乾燥処理された後に、光硬化型樹脂が混合されてなる。
これにより、記録層101は、重縮合反応の進行及び脱水を事前に行うことができるため、当該記録層101中における水分量(経時変化により事後的に発生する水も含む)を従来よりも格段に抑えることができる。
これにより、記録層101中の水分による熱膨張率についての問題の解決が図られ、温度変化に強い、耐環境性の高い記録媒体を実現することができる。
また、水による記録層中の光散乱の問題の解決も図られ、再生特性の向上も図られる。
また、水による記録層中の予測不能な副反応についての問題の解決も図られ、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下の防止を図ることができる。
これにより、記録層101中の水分による熱膨張率についての問題の解決が図られ、温度変化に強い、耐環境性の高い記録媒体を実現することができる。
また、水による記録層中の光散乱の問題の解決も図られ、再生特性の向上も図られる。
また、水による記録層中の予測不能な副反応についての問題の解決も図られ、アーカイブライフ(良好な記録状態の維持期間)の低下の防止を図ることができる。
また、記録層101は、加熱・脱水工程によって従来よりも無機マトリックス材料の硬度を上げることができるため、油状物であるモノマー類の含有率をより上げることができる。
記録層101に含有される有機金属化合物は、少なくともSiを含有する。これにより、有機金属化合物は、良好な無機マトリックスを形成し得ることが確認されている。
記録層101に含有される有機金属化合物は、Siに加え、Ti、Zr、Al、Znのいずれかを含有する。これにより、有機金属化合物は、シロキサンと共に良好な無機マトリックスを形成し得ることが確認されている。
以上の構成によれば、ホログラム記録媒体の記録層101は、水分量を2000[ppm]以下に抑制する。これにより、記録層101は、バインダーとして有機金属化合物を使用するに当たって、水分による悪影響を効果的に抑制し、特性を向上させることができる。
<2.第2の実施の形態>
図9〜図10に示す第2の実施の形態においては、図1〜図8に示す第1の実施の形態と対応する箇所に同一符号を附して示し、同一部分についての説明を省略する。第2の実施の形態では、記録層101に対応する記録層201が、複数層の塗膜201aが重ねられて形成されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
図9〜図10に示す第2の実施の形態においては、図1〜図8に示す第1の実施の形態と対応する箇所に同一符号を附して示し、同一部分についての説明を省略する。第2の実施の形態では、記録層101に対応する記録層201が、複数層の塗膜201aが重ねられて形成されている点が、第1の実施の形態と異なっている。
[2−1.ホログラム記録媒体の構成]
図9(A)に示すように、ホログラム記録媒体100に対応するホログラム記録媒体200では、2層の塗膜201aが重なることにより記録層201が形成されている。
図9(A)に示すように、ホログラム記録媒体100に対応するホログラム記録媒体200では、2層の塗膜201aが重なることにより記録層201が形成されている。
例えば図9(B)に示すように、ホログラム記録媒体200は、基板102及び103上にそれぞれ形成された塗膜201a同士を貼り合わせることにより作製される。また、図9(C)に示すように、基板102及び103上に重ね塗りされた複数の塗膜201a同士を貼り合わせることにより、3層以上の塗膜201aからなる記録層201を形成することもできる。また、基板102又は103の一方の基板に重ね塗りされた複数の塗膜201a上に他方の基板を貼り合わせるようにしても良い。
塗膜201aは、当該塗膜201aが溶剤を含有する状態で形成され、塗膜201aが形成されるごとに加熱又は減圧、若しくはその両方により乾燥されてから重ね塗り又は貼り合わせが実行されることが好ましい。
これにより、1層の記録層101を形成する場合と比較して、記録層201内部に含有する溶剤を効率良く留去することが可能となり、記録層201の内部の残留溶剤量を減少させて、記録層201の記録特性を向上させることができる。また、乾燥に要する時間を短縮することも可能である。
特に、塗膜201aを60[℃]〜80[℃]程度に加熱し、0.02[MPa]以下に減圧することにより、THFなどの低沸点の溶剤及び低沸点の不純物などを効果的に除去することができる。なお、光重合開始剤及びモノマー類の光活性を維持するため、加熱温度を80[℃]以下にすることが好ましい。
塗膜201aの厚さは、記録層201が所望の厚さになるよう、塗膜201aの数に応じて適宜選択される。例えば塗膜201aが2層形成される場合であれば、1層当たり0.05[mm]〜1.0[mm]程度、塗膜201aが10層形成される場合であれば、1層当たり0.01[mm]〜0.1[mm]程度であることが好ましい。特に、塗膜201aを1層当たり0.03[mm]以下に形成することにより、記録層201の記録特性を一段と向上させることができる。
塗膜201aの形成及び貼り合わせは、窒素雰囲気下で実行されることが好ましい。記録層201の内部に酸素が取り込まれることによる重合阻害を抑制し得るからである。
記録層201は、25[℃]〜80[℃]のいずれかにおける貯蔵弾性率が3.5×104[Pa]以下であることが好ましい。貯蔵弾性率が3.5×104[Pa]を超えると、塗膜201aを貼り合わせる際に気泡が混入したり、塗膜201aの境界における密度ムラが緩和されないからである。
記録層201は、塗膜201aが重ねて形成された後(重ね塗り及び貼り合わせ後)に、所定の減圧時間に亘って25[℃]〜80[℃]で減圧されることが好ましい。これにより、記録層201に含有する空気及び酸素を除去できるからである。
記録層201は、塗膜201aが重ねて形成された後(重ね塗り及び貼り合わせ後)にアニール処理されることが好ましい。アニール処理は、記録層201を所定の温度下で所定のアニール時間に渡って放置することにより実行される。これにより、記録層201は、塗膜201aの乾燥時に生じる応力(特に塗膜201a間)を緩和することができ、記録層201の応力を均一化することができる。
アニール処理の温度は、特に制限されないが、60[℃]〜80[℃]であることが好ましい。アニール処理の温度が低いと十分な効果が得られず、温度が高いと光重合開始剤及びモノマー類を失活させるからである。アニール処理が行われるアニール時間は、記録層201の特性によって異なり、特に制限されないが、0.5時間〜10時間程度に亘って実行されることが好ましい。アニール時間が短いと十分な効果が得られず、時間が不要に長いと記録層201を変質させる恐れがあるからである。
[2−2.実施例4]
実施例4では、ホログラム記録材料の調整手順は実施例1と同様であるが、ホログラム記録材料の処方が実施例1とは相違する。また、ホログラム記録媒体の作製手順が実施例1と相違する。
実施例4では、ホログラム記録材料の調整手順は実施例1と同様であるが、ホログラム記録材料の処方が実施例1とは相違する。また、ホログラム記録媒体の作製手順が実施例1と相違する。
(無機マトリックス溶液の生成)
フェニルトリメトキシシラン(5.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(2.0[g])とを、水(2.0[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にして無機マトリックス溶液を調整した。
フェニルトリメトキシシラン(5.0[g])とジフェニルジメトキシシラン(2.0[g])とを、水(2.0[g])/エタノール(20[ml])/1規定塩酸(5滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にして無機マトリックス溶液を調整した。
(ホログラム記録材料の調整)
無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート200[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド10[mg]を加え、室温で30分間攪拌し、混合調整液を調整した。この混合調整液から溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、高粘性油状物をホログラム記録材料として得た。
無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート200[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド10[mg]を加え、室温で30分間攪拌し、混合調整液を調整した。この混合調整液から溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、高粘性油状物をホログラム記録材料として得た。
(ホログラム記録媒体の作製)
先ず、基板102及び103の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ300[μm]となるようにそれぞれ塗布し、塗膜201aを形成した。ホログラム記録材料の塗布は、スピンコート、ディップコート、フローコートなど各種手法を採ることができる。
先ず、基板102及び103の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ300[μm]となるようにそれぞれ塗布し、塗膜201aを形成した。ホログラム記録材料の塗布は、スピンコート、ディップコート、フローコートなど各種手法を採ることができる。
このように塗膜201aが形成された基板102及び103を80[℃]にて2時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。基板102の温度を80[℃]に保ち、環状のスペーサ104を挟むようにして基板102及び103上の塗膜201a同士を貼り合わせ、ホログラム記録媒体200を作製した。ここでは、厚さ(高さ)0.5[mm]によるスペーサ104を用いることで、成膜されたホログラム記録材料(つまり記録層)の厚さを0.5[mm]に調節した。
この貼り合わせにおいて、塗膜201a間への気泡の混入は殆ど見られず、良好な記録層201を形成することができた。
塗膜201aの貼り合わせ後、ホログラム記録媒体200の温度を80[℃]に維持したまま、雰囲気を0.02[MPa]まで減圧し、ホログラム記録媒体200を1時間放置した。さらに、雰囲気を常圧に戻し、ホログラム記録媒体200を60[℃]の環境下に3時間放置することによりアニール処理を実行した後、環境温度を徐々に常温まで低下させることにより、ホログラム記録媒体200を徐々に冷ました。
(記録層の弾性率)
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aの貯蔵弾性率の測定結果を図10に示す。貼り合わせ温度(80[℃])における貯蔵弾性率は8.2×101[Pa]であった。貯蔵弾性率の測定条件を以下に示す。
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aの貯蔵弾性率の測定結果を図10に示す。貼り合わせ温度(80[℃])における貯蔵弾性率は8.2×101[Pa]であった。貯蔵弾性率の測定条件を以下に示す。
測定装置:粘弾性測定装置VRA−100AD(レオロジカ社製)
ギャップ:300[μm]
プレート:P8ETC
周期 :1[Hz]
積算回数:2回
歪み :0.003
測定温度:40[℃]〜80[℃]
昇温速度:5[℃/min]
ギャップ:300[μm]
プレート:P8ETC
周期 :1[Hz]
積算回数:2回
歪み :0.003
測定温度:40[℃]〜80[℃]
昇温速度:5[℃/min]
(記録再生特性)
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=12.8(記録層1[mm]換算)であった。
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=12.8(記録層1[mm]換算)であった。
このように、実施例4では、特性の良好な記録層201を形成することができた。また、ホログラム記録媒体ごとのダイナミックレンジのばらつきが非常に小さいことが確認された。これは、同一厚さの記録層201を形成した場合であっても、塗膜201aの1層当たりの厚さを小さくできるため、溶剤を効果的に留去することができ、残留溶剤のばらつきが小さくなることに起因するものと考えられる。
[2−3.実施例5]
実施例5では、実施例4と同一処方のホログラム記録材料を使用するものの、20層の塗膜201aからなる記録層201を形成する点が実施例4と相違する。
実施例5では、実施例4と同一処方のホログラム記録材料を使用するものの、20層の塗膜201aからなる記録層201を形成する点が実施例4と相違する。
(ホログラム記録媒体の作製)
基板102及び103の反射防止膜が付いていない面上に、実施例4と同一方法にて調整されたホログラム記録材料を厚さ約30[μm]となるようにそれぞれ塗布し、80[℃]で10分間減圧乾燥し、1層目の塗膜201aを形成した。同様にして、この1層目の塗膜201a上に、ホログラム記録材料を厚さ約30[μm]となるようにそれぞれ塗布し、80[℃]で10分間減圧乾燥した。さらに、塗膜201aを重ねて形成することにより、基板102及び103上にそれぞれ10層の塗膜201aを重ねて形成した。10層の塗膜201aのトータルの厚さは、それぞれ約300[μm]であった。
基板102及び103の反射防止膜が付いていない面上に、実施例4と同一方法にて調整されたホログラム記録材料を厚さ約30[μm]となるようにそれぞれ塗布し、80[℃]で10分間減圧乾燥し、1層目の塗膜201aを形成した。同様にして、この1層目の塗膜201a上に、ホログラム記録材料を厚さ約30[μm]となるようにそれぞれ塗布し、80[℃]で10分間減圧乾燥した。さらに、塗膜201aを重ねて形成することにより、基板102及び103上にそれぞれ10層の塗膜201aを重ねて形成した。10層の塗膜201aのトータルの厚さは、それぞれ約300[μm]であった。
10層の塗膜201aが形成された基板102及び103を80[℃]で2時間減圧乾燥させ、残留溶剤を除去した。窒素雰囲気下において、基板102及び103の温度を80[℃]に保ち、厚さ0.5[mm]のスペーサ104を挟んで基板102及び103上に形成された塗膜201a同士を貼り合わせ、ホログラム記録媒体200を作製した。
貼り合わせ後、ホログラム記録媒体を80[℃]に加熱しながら0.02[MPa]に減圧し、1時間放置することにより、記録層201の厚さを0.5[mm]に調整した。さらに、雰囲気を常圧に戻し、80[℃]で3時間、ホログラム記録媒体を放置することにより、アニール処理を行った。
この貼り合わせにおいて、塗膜201a間への気泡の混入は殆ど見られず、良好な記録層201を形成することができた。
(記録再生特性)
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=14.5(記録層1[mm]換算)であった。1層の塗膜201a同士を貼り合わせる実施例4と比較して、ダイナミックレンジの向上が確認された。
実施例1と同様の光学系を用いて同様に記録再生特性の確認を行ったところ、ホログラム記録媒体の作製後直ちに行った評価ではダイナミックレンジM/♯=14.5(記録層1[mm]換算)であった。1層の塗膜201a同士を貼り合わせる実施例4と比較して、ダイナミックレンジの向上が確認された。
(記録層の弾性率)
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aについて、貼り合わせ温度(80[℃])における貯蔵弾性率を、実施例4と同様の条件で測定した。貯蔵弾性率は、1.9×102[Pa]であった。
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aについて、貼り合わせ温度(80[℃])における貯蔵弾性率を、実施例4と同様の条件で測定した。貯蔵弾性率は、1.9×102[Pa]であった。
[2−4.実施例6]
実施例6では、塗膜201a同士の貼り合わせを40[℃]で行った点以外は、実施例4と同様にホログラム記録媒体を作製した。
実施例6では、塗膜201a同士の貼り合わせを40[℃]で行った点以外は、実施例4と同様にホログラム記録媒体を作製した。
(ホログラム記録媒体の作製)
実施例4と同様に基板102及び103上に塗膜201aを形成した。40[℃]において、塗膜201a同士を貼り合わせることにより、2層の塗膜201aからなる記録層201を有するホログラム記録媒体201を形成した。
実施例4と同様に基板102及び103上に塗膜201aを形成した。40[℃]において、塗膜201a同士を貼り合わせることにより、2層の塗膜201aからなる記録層201を有するホログラム記録媒体201を形成した。
この貼り合わせにおいて、塗膜201a間への気泡の混入は殆ど見られず、良好な記録層201を形成することができた。
(記録層の弾性率)
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aについて、貼り合わせ温度(40[℃])における貯蔵弾性率を、実施例4と同様の条件で測定した。貯蔵弾性率は、3.5×104[Pa]であった。
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aについて、貼り合わせ温度(40[℃])における貯蔵弾性率を、実施例4と同様の条件で測定した。貯蔵弾性率は、3.5×104[Pa]であった。
[2−5.比較例3]
比較例3では、加熱・乾燥工程を省略し、重縮合反応を進行させない状態でモノマー類及び光重合開始剤を混合した。
比較例3では、加熱・乾燥工程を省略し、重縮合反応を進行させない状態でモノマー類及び光重合開始剤を混合した。
(ホログラム記録媒体の作製)
実施例4と同一処方でなる有機化合物調整液を調整した。この有機化合物調整液に対し、実施例4と同量のモノマー類及び光重合開始剤を添加し、室温にて30分間攪拌することにより、ホログラム記録材料を作製した。
実施例4と同一処方でなる有機化合物調整液を調整した。この有機化合物調整液に対し、実施例4と同量のモノマー類及び光重合開始剤を添加し、室温にて30分間攪拌することにより、ホログラム記録材料を作製した。
実施例4と同様にして、基板102及び103上にホログラム記録材料を塗布した。しかしながら、ホログラム記録材料の粘度が低いため、100[μm]以上の塗膜201aを形成できなかった。このため、50[μm]程度の塗膜201aを基板102及び103上に塗布した。塗膜201aを40[℃]で24時間乾燥させたが、流動性が大きく、塗膜201a同士を貼り合わせることができなかった。
このように、加熱・乾燥工程を省略することにより有機金属化合物によるマトリックスが形成されず、ホログラム記録材料が実施例4と同一処方であるにも拘らず、ホログラム記録媒体200を作製できなかった。
[2−6.比較例4]
比較例4では、実施例4よりも弾性率が高いホログラム記録材料を作製し、ホログラム記録媒体を作製した。
比較例4では、実施例4よりも弾性率が高いホログラム記録材料を作製し、ホログラム記録媒体を作製した。
(無機マトリックス溶液の生成)
フェニルトリメトキシシラン(5.0[g])と、水(1.6[g])/エタノール(4[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にして無機マトリックス溶液を調整した。
フェニルトリメトキシシラン(5.0[g])と、水(1.6[g])/エタノール(4[ml])/1規定塩酸(3滴)中で終夜室温攪拌し、以降は実施例1と同様にして無機マトリックス溶液を調整した。
(ホログラム記録材料の調整)
無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート150[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド7[mg]を加え、室温で30分間攪拌し、混合調整液を調整した。この混合調整液から溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、高粘性油状物をホログラム記録材料として得た。
無機マトリックス溶液2[g]中に、光重合性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート150[mg]、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド7[mg]を加え、室温で30分間攪拌し、混合調整液を調整した。この混合調整液から溶剤(THF)0.7[ml]を減圧留去し、高粘性油状物をホログラム記録材料として得た。
(ホログラム記録媒体の作製)
先ず、基板102及び103の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ300[μm]となるようにそれぞれ塗布し、塗膜201aを形成した。塗膜201aが形成された基板102及び103を80[℃]にて2時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。基板102の温度を50[℃]に保ち、環状のスペーサ104を挟むようにして基板102及び103上の塗膜201a同士を貼り合わせ、ホログラム記録媒体200を作製した。
先ず、基板102及び103の反射防止膜が付いていない面上に、ホログラム記録材料を厚さ300[μm]となるようにそれぞれ塗布し、塗膜201aを形成した。塗膜201aが形成された基板102及び103を80[℃]にて2時間減圧乾燥し、ホログラム記録材料中の残存溶剤(THF)を留去した。基板102の温度を50[℃]に保ち、環状のスペーサ104を挟むようにして基板102及び103上の塗膜201a同士を貼り合わせ、ホログラム記録媒体200を作製した。
この貼り合わせにおいて、塗膜201a間に大量に気泡が混入し、良好な記録層201を形成することができなかった。
(記録層の弾性率)
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aについて、貼り合わせ温度(50[℃])における貯蔵弾性率を、実施例4と同様の条件で測定した。貯蔵弾性率は、1.0×105[Pa]であった。
貼り合わせ前(加熱乾燥後)の塗膜201aについて、貼り合わせ温度(50[℃])における貯蔵弾性率を、実施例4と同様の条件で測定した。貯蔵弾性率は、1.0×105[Pa]であった。
このことから、塗膜201a間への気泡の混入を防ぐために、貼り合わせ時における貯蔵弾性率は、3.5×104[Pa]以下であることが必要であるといえる。
[2−7.実施例まとめ]
このように、2層以上の塗膜201aからなる記録層201を形成することにより、塗膜201aごとの厚さを小さくして残留溶剤を効果的に留去することができる。この結果、かかる記録層201を有するホログラム記録媒体201は、ロット毎の特性変化を小さくでき、品質を安定させることができる。
このように、2層以上の塗膜201aからなる記録層201を形成することにより、塗膜201aごとの厚さを小さくして残留溶剤を効果的に留去することができる。この結果、かかる記録層201を有するホログラム記録媒体201は、ロット毎の特性変化を小さくでき、品質を安定させることができる。
表4に、実施例4〜6並びに比較例3及び4の結果をまとめて示す。実施例5のように、ホログラム記録媒体201は、塗膜201aの1層当たりの厚さを30[μm]以下に抑制することにより、ダイナミックレンジを大幅に向上させることが確認された。
ホログラム記録媒体201は、貼り合わせ時の温度における塗膜201aの貯蔵弾性率が3.5×104[Pa]以下である場合に、塗膜201a同士を好適に貼り合わせできることが確認された。ここで、貼り合わせ温度は、常温〜80[℃]の範囲内から、適宜選択することが可能である。また、記録層201としての貯蔵弾性率と塗膜201aの貯蔵弾性率は同等である。このため、常温〜80[℃]における記録層201の貯蔵弾性率を3.5×104[Pa]以下に調整することにより、特性の良好なホログラム記録媒体200を作製することが可能であるといえる。
[2−8.動作及び効果]
以上の構成によれば、ホログラム記録媒体200の記録層201は、2層以上の塗膜201aを有する。
以上の構成によれば、ホログラム記録媒体200の記録層201は、2層以上の塗膜201aを有する。
これにより、記録層201は、塗膜201aごとの厚さを記録層201の厚さよりも薄くできると共に、塗膜201aごとに乾燥工程を実行できるため、記録層201から残留溶剤などを効果的に留去できる。この結果、ホログラム記録媒体200は、ホログラム記録媒体200ごとの記録特性を安定化させることができる。
塗膜201aは、1.0[mm]以下、好ましくは0.5[mm]以下でなる。これにより、記録層201は、残留溶剤などを効果的に留去できる。
塗膜201aは、0.03[mm]以下でなる。これにより、記録層201は、記録特性を向上させ得ることが確認された。
記録層201は、25[℃]〜80[℃]のいずれかにおける貯蔵弾性率が3.5×104[Pa]以下でなる。
これにより、記録層201は、塗膜201a同士を良好に貼り合わせて塗膜201aを重ねて形成させ得るため、気泡などの混入のない良好な状態の記録層201を形成させ得る。
ホログラム記録媒体201は、記録層201を挟む2枚の基板102及び103と、記録層201の厚さを制御するスペーサ104とを有する。
これにより、ホログラム記録媒体201は、柔らかい状態で貼り合わせされた記録層201の厚さをスペーサ104によって高い精度で制御し得る。
記録層201は、所定の減圧時間に亘って、80[℃]以下の温度で加熱されながら減圧(0.02[MPa])されてなる。
これにより、記録層201は、酸素が殆ど存在しない状態で記録層201を加熱することができるため、酸素及び熱によって生じる障害(重合開始剤の反応阻害など)を防止することができる。
記録層201は、所定のアニール時間に渡って、80[℃]以下(60[℃])の温度に放置されることによりアニール処理されてなる。
これにより、記録層201は、塗布及び残留溶剤の留去によって生じる塗膜201aの境界に主に偏在する応力を緩和することができ、記録層201内部を均一化することができる。
以上の構成によれば、ホログラム記録媒体200は、記録層201を複数の塗膜201aを重ねて形成することにより、記録層201に残留する溶剤量を安定化させ、ホログラム記録媒体200としての品質を安定化させ得る。
<3.他の実施の形態>
なお上述した第1及び第2の実施の形態においては、記録層101及び201に対して多重記録方式(ボリュームホログラム方式)による記録マークが形成されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば1ビットの情報を1つの記録マークに対応させて記録するいわゆるマイクロリフレクター方式でなる記録マークが形成されても良い。このマイクロリフレクター方式については、特許文献2に記載されている。
なお上述した第1及び第2の実施の形態においては、記録層101及び201に対して多重記録方式(ボリュームホログラム方式)による記録マークが形成されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば1ビットの情報を1つの記録マークに対応させて記録するいわゆるマイクロリフレクター方式でなる記録マークが形成されても良い。このマイクロリフレクター方式については、特許文献2に記載されている。
ボリュームホログラム方式では、信号光及び参照光の照射される殆どの部分に応じて比較的大きなサイズの記録マークを形成する。これに対してマイクロリフレクター方式では、信号光及び参照光の焦点近傍部分のみにおいて比較的小さなサイズの記録マークを形成する。言い換えると、マイクロリフレクター方式では、信号光及び参照光が照射される部分のうち、小さな領域でのみ記録マークを形成されなければならない。
従って、マイクロリフレクター方式では、上述した実施例と比して記録層としての信号光及び参照光に対する感度を低下させることにより、本発明のホログラム記録媒体をマイクロリフレクター方式として使用することが可能となる。例えば、記録層において重合禁止剤を多く配合したり、感度の低いモノマー類又は光重合開始剤を使用することにより、信号光及び参照光に対する感度を低下させることができる。この場合であっても、ホログラム記録媒体は、上述した実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また上述した第1及び第2の実施の形態においては、有機金属化合物として少なくともSiを含有するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、記録層101に含有される有機金属化合物は、Si、Ti、Zr、Al、Znのいずれかを含有れば良い。これらの有機金属化合物は、無機マトリックスを形成し、バインダーとして良好な特性を呈することが一般的に知られているからである。
さらに上述した第2の実施の形態においては、記録層201の貯蔵弾性率が3.5×104[Pa]以下でなるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば塗膜201aを重ね塗りのみによって形成する場合には、貯蔵弾性率に制限はない。この場合、例えば基板103上に塗膜201aを重ね塗りすることにより記録層201を形成し、接着層を設けるなどして基板102を接着させる。この場合、塗膜201aの厚さを制御することにより記録層201の厚さを制御することができるため、スペーサ104は必ずしも必要ではない。
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、記録層201の形成後に減圧・加熱工程及びアニール工程が施されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、減圧・加熱工程及びアニール工程は必ずしも必要でない。また、いずれか一方の工程のみが施されるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、記録層としての記録層101によりホログラム記録媒体としてのホログラム記録媒体100が構成されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、種々の構成による記録層によってホログラム記録媒体が構成されるようにしても良い。
本発明のホログラム記録媒体及びホログラム記録材料は、例えば大容量の情報を記録する光ディスクシステムに利用することができる。
100、200……ホログラム記録媒体、101、201……記録層、102、103……基板、104……スペーサ。
Claims (11)
- 光に応じて重合する光硬化型樹脂及び加水分解によって付加されたヒドロキシル基が重縮合反応することによりマトリックスを形成する有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる記録層
を有するホログラム記録媒体。 - 上記水分量は、
166[ppm]以上でなる
請求項1に記載のホログラム記録媒体。 - 上記記録層は、
上記有機金属化合物が200[℃]以上の高温で加熱・乾燥処理された後に、上記光硬化型樹脂が混合されてなる
請求項2に記載のホログラム記録媒体。 - 上記有機金属化合物は、
Si、Ti、Zr、Al、Znのいずれかを含有する
請求項3に記載のホログラム記録媒体。 - 上記記録層は、
2層以上の塗膜を有する
請求項4に記載のホログラム記録媒体。 - 上記塗膜は、
1.0[mm]以下、好ましくは0.5[mm]以下でなる
請求項5に記載のホログラム記録媒体。 - 上記記録層は、
25[℃]〜80[℃]のいずれかにおける貯蔵弾性率が3.5×104[Pa]以下でなる
請求項5に記載のホログラム記録媒体。 - 上記記録層を挟む2枚の基板と、
上記記録層の厚さを制御するスペーサと
を有する請求項5に記載のホログラム記録媒体。 - 上記記録層は、
所定の減圧時間に亘って、80[℃]以下の温度で加熱されながら減圧されてなる
請求項8に記載のホログラム記録媒体。 - 上記記録層は、
所定のアニール時間に渡って、80[℃]以下の温度に放置されることによりアニール処理されてなる
請求項1に記載のホログラム記録媒体。 - 光に応じて重合する光硬化型樹脂及び有機金属化合物を含有し、水分量が2000[ppm]以下でなる
ホログラム記録材料。
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JP2009133408A Pending JP2010061104A (ja) | 2008-08-06 | 2009-06-02 | ホログラム記録媒体及びホログラム記録材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2010061104A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017073348A (ja) * | 2015-10-09 | 2017-04-13 | 新日鉄住金マテリアルズ株式会社 | 有機el素子用金属積層基板及びその製造方法 |
JP2017147012A (ja) * | 2016-02-19 | 2017-08-24 | 三菱ケミカル株式会社 | ホログラム記録媒体の記録方法及び記録装置 |
-
2009
- 2009-06-02 JP JP2009133408A patent/JP2010061104A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017073348A (ja) * | 2015-10-09 | 2017-04-13 | 新日鉄住金マテリアルズ株式会社 | 有機el素子用金属積層基板及びその製造方法 |
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