JP2010059579A - ヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法 - Google Patents

ヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】衛生用紙製造のクレーピング工程において強く望まれている、粘着力の低いコーティング膜の上に均一で高い粘着力を持った接着膜を形成するという課題を解決できるヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法を提供する。
【解決手段】ポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比が特定の範囲であり、かつ、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比が特定の範囲であるポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、紙タオルなどのクレープ紙製造の際に使用されるヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法に関する。
衛生用紙を製造する際に製品に柔軟性や嵩高さを出すため、クレーピングと呼ばれる紙に非常に細かいシワをよらせる工程を行い、クレーピングされた紙をクレープ紙と称する。クレーピングは、湿紙を一般にヤンキードライヤーという名称で知られている回転シリンダー式抄紙乾燥機に密着・乾燥させたのち、ドクターブレードで掻き取ることにより行われる。
クレーピングにおいては、通常、湿紙のヤンキードライヤーへの接着性を増すため、ヤンキードライヤーコーティング剤と呼ばれる熱硬化性のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を、紙料に添加する、湿紙にスプレーする及び/又はヤンキードライヤーのドラム表面に直接スプレーすること等が行われる。
ここで用いられるポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、ヤンキードライヤーのドラム表面で、水分の蒸発と同時に熱による架橋反応が始まり、まず粘着性を発現(接着膜の形成)したのち硬化し、最終的には、粘着力の低いコーティング膜を形成する。
ヤンキードライヤーに導入された湿紙は粘着性を発現したポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂と密着し、乾燥された後、ドクターブレードでポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂の接着膜と一緒に掻き取られる。一方、ドクターブレードによって掻き取られず、ヤンキードライヤーのドラム表面に残ったポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は粘着力の低いコーティング膜を形成し、ヤンキードライヤーのドラム表面を保護する。
このため、ヤンキードライヤーの安定操業のためには、ドクター部では粘着力の低いコーティング膜の上に、均一で高い粘着力を持った接着膜が形成されることが好ましい。
ところが、接着膜・コーティング膜の形成は温度・水分の影響を受けやすく、ヤンキードライヤーのドラム表面で始まる架橋反応は制御しにくいため、接着膜・コーティング膜が不均一となり、紙とヤンキードライヤーの密着性が大きく変化するため、均一なクレーピングが行われず、紙切れなどの問題があった。
この問題を回避するため、水溶性かつ熱不硬化性のポリアミドアミンや変性ポリアミドアミン樹脂を使用する(特許文献1参照)ことが提案されている。しかし、熱不硬化性樹脂を用いると、ヤンキードライヤーのドラム表面でコーティング膜が形成されないため、ドクターブレードによる掻き取りが安定的に行われず、紙に穴が開く、紙が切れるといった問題がある。
また、接着膜の粘着性発現時間の延長及び粘着力向上を目的として、熱硬化性のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂とポリビニルアルコールを併用し再湿潤性を向上させる(特許文献2参照)ことが提案されているが、粘着力の向上は認められるものの、均一な接着膜・コーティング膜を形成するといった記載はない。その他、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、湿潤紙力を付与する効果を持つため、損紙の離解性向上を目的として、湿潤紙力性の低い熱硬化性樹脂の提案(特許文献3、特許文献4参照)がなされているが、これも均一な接着膜・コーティング膜を形成するといったものではない。
特表平11−51249号公報 特開昭61−179279号公報 特開2004−285544号公報 特開2007−070740号公報
衛生用紙製造のクレーピング工程において強く望まれている、粘着力の低いコーティング膜の上に均一で高い粘着力を持った接着膜を形成するという課題を解決できるヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法を提供する。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンを一定温度で長時間反応せしめた後、残アミノ基を多塩基性無機酸で架橋するポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂であって、ポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比が特定の範囲であり、かつ、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比が特定の範囲であるポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂が、急速に均一で高い粘着力を示す接着膜を形成した後、一定時間その粘着力を保持し、その後、急速に粘着力が低いコーティング膜に変化する性能を有することを見出し、この樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキードライヤーコーティング剤を得ることができた。ヤンキードライヤーのドラム表面で上記の樹脂性能が発揮されると、ドラム表面に連続的に供給される樹脂成分は、均一で高い粘着力を発現して接着膜を形成して湿紙と均一に密着し、紙が乾燥した後、ドクターブレードにより紙と一緒にこの接着膜は掻き取られる。しかし、掻き取られなかった下部の樹脂は、その後、急速に粘着力が低いコーティング膜に変化してドラム表面を保護する。
このように、本発明者が見出した特定のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂をヤンキードライヤーに適用すれば、下部に粘着力が低いコーティング膜が形成され、その上に均一で高い粘着力を持った接着膜を形成するという上記課題が解決できるため、紙切れなどの問題が解消され、ヤンキードライヤーの安定操業が図られる。更に、接着膜が均一な粘着力を一定時間保持するので、湿紙との密着程度も一定に保つことが可能であり、均一で安定したクレーピングが得られ、クレープ紙の品質安定に寄与する。
すなわち、請求項1の本発明は、ポリアルキレンポリアミン残基、ジカルボン酸残基、エピクロルヒドリン残基、多塩基性無機酸残基からなるポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキ−ドライヤーコーティング剤である。
請求項2の本発明は、ポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比が0.02〜0.5であり、かつ、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比が0.1〜1.1である、請求項1記載のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキ−ドライヤーコーティング剤である。
請求項3の本発明は、多塩基性無機酸が、硫酸、リン酸、ホウ酸、酸性メタリン酸である、請求項1又は請求項2に記載のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキ−ドライヤーコーティング剤である。
請求項4の本発明は、衛生用紙製造のクレーピング工程において使用される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のヤンキードライヤーコーティング剤を、ヤンキードライヤーのドラム表面にコーティングすることを特徴とするヤンキードライヤーコーティング方法である。
本発明のヤンキードライヤーコーティング剤及びこれを用いたヤンキードライヤーコーティング方法により、衛生用紙製造のクレーピング工程において強く望まれている、粘着力の低いコーティング膜の上に均一の粘着力を持った接着膜を形成するという課題を解決できるため、均一なクレーピングが行われ、紙切れなどの問題が解消され、ヤンキードライヤーの安定操業が図られる。
本発明のヤンキードライヤーコーティング剤の有効成分として含有するポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、ポリアルキレンポリアミン類とジカルボン酸類を脱水縮合して得られるポリアミドポリアミンに、エピクロルヒドリンを反応させた後、残アミノ基を多塩基性無機酸により架橋反応させることを特徴とする。
ポリアルキレンポリアミン類とジカルボン酸類を加熱脱水縮合して得られるポリアミドポリアミンを、水溶液中でエピクロルヒドリンと反応させる方法は、例えばアメリカ合衆国特許第2926116号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明で用いるポリアルキレンポリアミンは、分子内に1級アミノ基を2個有し、その間に2級アミノ基が存在しても良いアルキレン基で結合した化合物であり、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミンに代表されるアルキレンジアミン類とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンに代表されるポリアルキレンポリアミン類が含まれる。
本発明で用いるポリアルキレンポリアミンは、上記ポリアルキレンポリアミン類1種、又は2種以上を含み、更に上記アルキレンジアミン類を併用しても良い。
本発明で用いるジカルボン酸は、分子内に2個のカルボキシル基を有する脂肪族、あるいは、芳香族の化合物であり、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸類、及び、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸類が挙げられ、これらの1種または2種以上を併用することができる。
本発明で用いる多塩基性無機酸としては、硫酸、リン酸、ホウ酸、酸性メタリン酸ソーダなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して使用することができる。中でも硫酸が最も好ましい。
本発明で用いるポリアルキルポリアミンとジカルボン酸の反応によって得られるポリアミドポリアミンは直鎖であることが好ましく、ジカルボン酸に対するポリアルキルポリアミンの反応モル比は1.0〜1.5で行うが、好ましくは、1.01〜1.2である。該反応モル比が1以下であると、過剰のジカルボン酸が、後工程で添加されるエピクロルヒドリンや多塩基性無機酸の架橋反応点となる残アミノ基を少なくするばかりか、ジカルボン酸が架橋剤として作用し、反応副生物を生成するため好ましくない。また、1.5以上であると、得られるポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂のコーティング膜が柔らかくなるため好ましくない。
本発明で用いるポリアルキルポリアミンとジカルボン酸の縮合反応の温度は、120〜200℃で行うが、好ましくは150〜190℃である。120℃以下では反応時間が長くなり、200℃以上では反応副生物が多くなるため好ましくない。
ついで、上記ポリアミドポリアミンにエピクロルヒドリンを反応させるが、エピクロルヒドリンの、ポリアミドポリアミンに存在する2級アミノ基に対する反応モル比は0.02〜0.5で行う。該反応モル比が0.02以下であると、エピクロルヒドリンによる架橋部分が少なくなり、得られる樹脂構造の均一性が損なわれるため好ましくなく、また、0.5以上であると、後工程で行われる多塩基性無機酸の架橋反応点が無くなり、同じく該均一性が損なわれ好ましくない。
本発明で用いるエピクロルヒドリンによる架橋反応の温度は、30〜80℃で行うが、好ましくは40〜60℃であり、この架橋反応は反応が完全に終結するまで一定温度で行わなければならない。30℃以下であると架橋反応が起こり難く、80℃以上であると急速に反応が進行し、ゲル化が起こるため好ましくない。また、一定温度で該反応を進めないと、エピクロルヒドリンによる架橋の位置が変化し、得られる樹脂構造の均一性が損なわれるため好ましくなく、更に、同じ理由で、この架橋反応を完全に終結するまで行う必要があり、そのため、該反応の反応時間は通常、3〜24時間を要する。
エピクロルヒドリンとの反応終了後、得られた樹脂の構造上に残った未反応の2級アミノ基の間を多塩基性無機酸にて架橋するが、本発明で用いる未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は、中和当量として0.1〜1.1、好ましくは0.5〜1.0である。該反応モル比が0.1以下ではコーティング膜に粘着性が残り、1.1以上では遊離の多塩基性無機酸が大量に残るため、ヤンキードライヤーに適用した場合に装置腐食が懸念されるため好ましくない。
このようにして得られた本発明のヤンキードライヤーコーティング剤の有効成分として含有するポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は均一な樹脂構造を有しており、また、架橋反応を完全に終結させているので、制御が難しく接着膜・コーティング膜が不均一になる要因であったヤンキードライヤーのドラム表面で始まる架橋反応を排除することができる。そのため、本発明のヤンキードライヤーコーティング剤をヤンキードライヤーに適用した場合にドライヤードラム表面で粘着性の低いコーティング膜の上に均一で高い粘着力を持った接着膜を形成することができる。
本発明のヤンキードライヤーコーティング剤の添加個所は、(1)原料調整を行う、原質・調成工程での添加、(2)ファンポンプ部の紙料スラリーへの添加、(3)プレスパート出口の湿紙の裏側にスプレーする、(4)ヤンキードライヤーのドラム表面に直接スプレーすることが挙げられるが、このうちのいくつかを併用することもできる。
本発明のヤンキードライヤーコーティング剤の添加量は、ヤンキードライヤーの運転状況により適宜決定すれば良いが、通常は500〜10000ppm対パルプ(有効成分−mg/パルプ固形分−kg)である。
本発明のヤンキードライヤーコーティング剤を工程に添加する方法には、薬液ポンプを使用して、原液で添加する、あるいは水に溶解して添加する方法があり、添加箇所の状況に応じて、いずれの方法を用いても良い。
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ジエチレントリアミンを108.2g(1.05モル)、アジピン酸146.1g(1.00モル)、水146.1gを仕込み、160〜170℃にて脱水反応を6時間行い、ポリアミドを得た。これに、水を加えて50%ポリアミド水溶液とした(ポリアミドA)。次に、温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドAを112.5g(0.24モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン10.5g(0.11モル)を投入した。その後、50℃に昇温し、12時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で98%硫酸1.0g(0.01モル)を加え、固形分18.5%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂A)
樹脂Aのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.46であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は1.0である。
(実施例2)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドAを112.5g(0.24モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン6.8g(0.074モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、8時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で98%硫酸3.0g(0.03モル)を加え、固形分18.2%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂B)
樹脂Bのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.31であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は0.66である。
(実施例3)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ジエチレントリアミンを112.3g(1.1モル)、アジピン酸146.1g(1.00モル)、水50gを仕込み、160〜170℃にて脱水反応を6時間行い、ポリアミドを得た。これに、水を加えて50%ポリアミド水溶液とした(ポリアミドB)。次に、温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドBを112.5g(0.23モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン7.0g(0.076モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、12時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で98%硫酸3.9g(0.039モル)を加え、固形分18.4%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂C)
樹脂Cのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.33であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は1.0である。
(実施例4)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドBを112.5g(0.23モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン3.0g(0.032モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、10時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で98%硫酸1.0g(0.01モル)を加え、固形分17.7%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂D)
樹脂Dのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.14であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は0.12である。
(実施例5)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ジエチレントリアミン118.5g(1.15モル)、アジピン酸146.1g(1.00モル)、水50gを仕込み、160〜170℃にて脱水反応を6時間行い、ポリアミドを得た。これに、水を加えて50%ポリアミド水溶液とした(ポリアミドC)。次に、温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドCを112.5g(0.23モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン0.46g(0.005モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、15時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で98%硫酸6.8g(0.068モル)を加え、固形分18.4%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂E)
樹脂Eのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.22であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は0.62である。
(実施例6)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドAを112.5g(0.24モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン6.8g(0.074モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、8時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で75%リン酸3.9g(0.03モル)を加え、固形分18.1%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂F)
樹脂Fのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.31であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は0.098である。
(比較例1)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドBを112.5g(0.23モル)と水250.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン13.9g(0.15モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、12時間保持し、固形分18.6%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂G)
樹脂Gは多塩基性無機酸による架橋反応を行っていない。
樹脂Gのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.65である。また、樹脂Gは多塩基性無機酸による架橋反応を行っていないので、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は0.0になる。
(比較例2)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドBを112.5g(0.23モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン0.25g(0.0027モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、12時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で98%硫酸10.8g(0.11モル)を加え、固形分18.5%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂H)
樹脂Hのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.01であり、また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比は1.0である。
(比較例3)
温度計、冷却器、撹拌機を備えた500ml四つ口フラスコに、ポリアミドAを112.5g(0.24モル)と水241.0gを仕込み、さらに、エピクロルヒドリン6.8g(0.074モル)を投入した。その後、60℃に昇温し、8時間保持した。過塩素酸滴定により、架橋反応の終結を確認した後、同温で35%塩酸9.4g(0.09モル)を加え、固形分17.9%のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液を得た。(樹脂I)
樹脂Iは塩酸による架橋反応を行っているが、塩酸は多塩基性無機酸ではない。
樹脂Iのポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比は0.31である。また、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する塩酸の反応モル比は0.98であるが、塩酸は多塩基性無機酸ではない。
実施例1〜6、比較例1〜3の反応モル比、多塩基性無機酸の使用の状況について、表1に示す。
Figure 2010059579
(剥離試験)
実施例1〜6、比較例1〜3のサンプルを用いて、剥離試験を行った。サンプルの粘着力を、湿紙を模した木綿の布と樹脂塗工面との接着力として測定した。
結果を表2、表3に示す。
<評価方法>
ステンレス板の表面に評価サンプルの15%水溶液を1mmの厚さに塗工し、130℃の乾燥機にて加熱乾燥した。1分毎にステンレス板を取り出し、縦30mm×横10mmの木綿の布(以下、「試験布」という)を塗工面に圧着した後、引張り試験機((株)東洋精機製作所 ストログラフM)に取り付け、試験布の端をチャックに挟み、チャックを一定速度で引き上げることによって、ステンレス板上の評価サンプルの塗工面に密着した試験布を該塗工面から一定速度で剥離する時の荷重を接着力として連続測定した。
試験条件は、剥離角度180°、剥離速度30mm/60秒であり、試験布の端から始まる縦30mmの試験布の剥離は60秒後に試験布の他端に達して終了する。
乾燥時間7分〜13分目の1分毎の測定での最大荷重を最高接着力として表2に示す。この測定値は評価サンプル樹脂の経時的な接着力の変化を示す。
Figure 2010059579
表2に示す通り、実施例1〜6の方法で合成した樹脂A〜Fでは、乾燥時間9分目から急速に接着力が上がり、一定で高い接着力が2分間持続した後、12分目以降、急速に接着力が低下している。一方、比較例1〜3の方法で合成した樹脂G〜Iでは、接着力が経時的に漸増、漸減しており、一定で高い接着力が維持されることも無い。
すなわち、実施例1〜6の方法で合成した樹脂A〜Fでは、均一で高い粘着力を持った接着膜と粘着力の低いコーティング膜が経時的に明確に形成されているのに対し、比較例1〜3の方法で合成した樹脂G〜Iでは、接着膜とコーティング膜の形成が不完全で、一定で高い接着力も維持されないので、樹脂G〜Iをヤンキードライヤーに適用すると湿紙との密着程度も不均一となり、安定したクレーピングが得られないばかりか、コーティング膜の形成が不完全なため、ドクターブレードによる掻き取りが安定的に行われず、紙に穴が開く、紙が切れるといった問題が発生し、ヤンキードライヤーの操業に支障をきたすことが予想される。
また、最高接着力が大きい乾燥時間10分目の測定において、剥離開始から60秒目までの10秒毎の荷重変化を接着力の変化として表3に示す。この測定値は試験布の一方の端から他方の端までの試験布全面と評価サンプル塗工面との接着力の平面分布を6点の測定値で示しており、評価サンプル樹脂によって形成される接着膜平面における接着力の均一性を示す。
Figure 2010059579
表3に示す通り、実施例1〜6の方法で合成した樹脂A〜Fは、圧着した全ての塗工面においてほぼ同じ接着力を有しており、本発明のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、均一な粘着力を有する接着膜を形成することが分かる。この均一性はヤンキードライヤーのドラム表面のどの部位においても接着膜と湿紙との密着程度が均一であることを示し、均一で安定したクレーピングを可能にする。一方、比較例1〜3の方法で合成した樹脂G〜Iは、塗工面の場所によって接着力が変化しており、均一で安定したクレーピングが得られないことを示している。
(実機ヤンキードライヤーへの適用)
比較例1に準ずる方法で製造した樹脂G(多塩基性無機酸による架橋反応未実施)を、ヤンキードライヤーにスプレーすることにより、トイレットペーパーを抄造していた抄紙機に、実施例1に準ずる方法で製造した樹脂Aを適用した。この結果、クレープ飛びが軽減され、穴あきによる紙切れ回数も減少、従来にない効果が得られた(表4参照)。
Figure 2010059579

Claims (4)

  1. ポリアルキレンポリアミン残基、ジカルボン酸残基、エピクロルヒドリン残基、多塩基性無機酸残基からなるポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキ−ドライヤーコーティング剤。
  2. ポリアミドポリアミンの2級アミノ基に対するエピクロルヒドリンの反応モル比が0.02〜0.5であり、かつ、エピクロルヒドリンの反応後の、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂中の、未反応2級アミノ基に対する多塩基性無機酸の反応モル比が0.1〜1.1である、請求項1記載のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキ−ドライヤーコーティング剤。
  3. 多塩基性無機酸が、硫酸、リン酸、ホウ酸、酸性メタリン酸である、請求項1又は請求項2に記載のポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂を有効成分として含有することを特徴とするヤンキ−ドライヤーコーティング剤。
  4. 衛生用紙製造のクレーピング工程において使用される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のヤンキードライヤーコーティング剤を、ヤンキードライヤーのドラム表面にコーティングすることを特徴とするヤンキードライヤーコーティング方法。
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