JP2010058688A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動力配分装置を備えた車両において旋回性能および操舵フィールの向上を図ることができる車両用操舵装置を提供する
【解決手段】車両に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ14と、操舵角と車速に応じて予め設定された規範ヨーレートとヨーレートセンサ14で検出された実ヨーレートとの偏差に基づいてオーバーステア状態を検出しオーバーステアを抑制すべくアシストモータ31を制御するオーバーステア抑制制御部(オーバーステア抑制基本制御量算出部22、制御ゲイン算出部23)と、を備える電動パワーステアリング装置1において、左右輪の駆動力配分を制御することにより車両のヨーモーメントを制御する左右駆動力配分装置2が旋回外側の車輪への配分量を多くしているときは、制御ゲイン算出部23がオーバーステア抑制の制御ゲインを低下させる。
【選択図】図1

Description

この発明は、車両用操舵装置に関するものである。
車両操舵時の運転者の操舵力を軽減する車両用電動パワーステアリング装置には、操舵トルクに応じて操舵アシスト量を制御するものがある。この電動パワーステアリング装置では、一般的に、操舵トルクが大きくなるほど電動アシストモータで発生させるアシストトルク(操舵アシスト量)を増大させ、操舵トルクが小さくなるほどアシストトルクを減少させるように制御する。
また、電動パワーステアリング装置には、操舵角と車速に応じて予め設定された規範ヨーレートとヨーレートセンサで検出された実ヨーレートとの偏差に基づいてオーバーステア状態を検出し、このオーバーステアを抑制するオーバーステア抑制制御量を算出し、オーバーステア抑制制御量で前記操舵アシスト量を補正するものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、車両には、運動性能を向上させるため、走行状況に応じて各輪の駆動力を配分する駆動力配分装置を備えるものがある。この駆動力配分装置では、例えば、左右輪の駆動力配分を異ならせることによりヨーモーメントを制御することができ、旋回外側の後輪(すなわち、後輪外輪)の駆動力の配分を増やすことにより、内向きのヨーモーメントを発生させて、旋回性能を向上させることができる(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−40293号公報 特開2007−302024号公報
前記オーバーステア抑制制御を行う電動パワーステアリング装置と前記駆動力配分装置の両方を備えた車両においては、それぞれの装置をそれぞれ個別に制御しているため、電動パワーステアリング装置によるオーバーステア抑制制御と、駆動力配分装置の左右駆動力配分制御によるヨーモーメント制御とが干渉して、操舵フィールが低下する場合があるという課題があった。
そこで、この発明は、駆動力配分装置を備えた車両において操舵フィールの向上を図ることができる車両用操舵装置を提供するものである。
この発明に係る車両用操舵装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ(例えば、後述する実施例におけるヨーレートセンサ14)と、操舵角と車速に応じて予め設定された規範ヨーレートと前記ヨーレートセンサで検出された実ヨーレートとの偏差に基づいてオーバーステア状態を検出し、オーバーステアを抑制すべく操舵駆動部(例えば、後述する実施例におけるアシストモータ31)を制御するオーバーステア抑制制御部(例えば、後述する実施例におけるオーバーステア抑制基本制御量算出部22、制御ゲイン算出部23)と、を備える車両用操舵装置(例えば、後述する実施例における電動パワーステアリング装置1)において、左右輪の駆動力配分を制御することにより車両のヨーモーメントを制御する左右駆動力配分装置(例えば、後述する実施例における駆動力配分装置2)が旋回外側の車輪への配分量を多くしているときは、前記オーバーステア抑制制御部におけるオーバーステア抑制の制御ゲインを低下させることを特徴とする車両用操舵装置である。
左右駆動力配分装置が旋回外側の車輪への配分量を多くしているときは、内向きのヨーモーメントを発生させて旋回を行い易くしようとしているので、このときに操舵装置のオーバーステア抑制制御部の制御ゲインを低下させることにより、不必要なオーバーステア抑制制御が操舵装置に作用しないようにすることができ、操舵フィールの低下を抑制することができる。
請求項2に係る発明は、車両に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ(例えば、後述する実施例におけるヨーレートセンサ14)と、操舵角と車速に応じて予め設定された規範ヨーレートと前記ヨーレートセンサで検出された実ヨーレートとの偏差に基づいてオーバーステア状態を検出し、オーバーステアを抑制すべく操舵駆動部(例えば、後述する実施例におけるアシストモータ31)を制御するオーバーステア抑制制御部(例えば、後述する実施例におけるオーバーステア抑制基本制御量算出部22、制御ゲイン算出部23)と、を備える車両用操舵装置(例えば、後述する実施例における電動パワーステアリング装置1)において、左右輪の駆動力配分を制御することにより車両のヨーモーメントを制御する左右駆動力配分装置(例えば、後述する実施例における駆動力配分装置2)が旋回外側の車輪への配分量を少なくしているときは、前記オーバーステア抑制制御部におけるオーバーステア抑制の制御ゲインを増大させることを特徴とする車両用操舵装置である。
左右駆動力配分装置が旋回外側の車輪への配分量を少なくしているときは、外向きのヨーモーメントを発生させてオーバーステアを抑制しようとしているので、このときに操舵装置のオーバーステア抑制制御部の制御ゲインを増大させることにより、オーバーステアを抑制する制御を強めにし、車両挙動の安定化を向上させる。
請求項1に係る発明によれば、左右駆動力配分装置が旋回外側の車輪への配分量を多くしているときに、操舵装置のオーバーステア抑制制御部による不必要なオーバーステア抑制制御が作用しないようにすることにより、操舵フィールの低下を抑制することができる。
請求項2に係る発明によれば、左右駆動力配分装置が旋回外側の車輪への配分量を少なくしているときに、オーバーステア抑制制御部によるオーバーステアを抑制する制御を強めにすることができるので、車両挙動の安定化を図ることができる。また、操舵フィールも向上する。
以下、この発明に係る車両用操舵装置の実施例を図1から図5の図面を参照して説明する。
この実施例における車両は四輪駆動車両であり、図1の構成図に示すように、電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)1と駆動力配分装置2を備えている。換言すると、この実施例における電動パワーステアリング装置1は、駆動力配分装置2を備えた車両に搭載されている。
初めに、駆動力配分装置(左右駆動力配分装置)2を説明する。駆動力配分装置2は、駆動力配分制御装置40と、駆動力配分アクチュエータ50とを備えて構成されている。駆動力配分制御装置40は、前後輪駆動力配分制御部41と、後輪左右駆動力配分制御部42と、アクチュエータ制御部43と、を備えて構成されている。
駆動力配分制御装置40には、車両の速度(車速)を検出する車速センサ12、操舵角を検出する操舵角センサ13、車両に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ14、車両の左右方向加速度(以下、横加速度という)を検出する横加速度センサ15、車両の前後方向加速度(以下、前後加速度という)を検出する前後加速度センサ16等から、それぞれ検出値に応じた出力信号が入力されるとともに、推定駆動トルク値が入力される。なお、推定駆動トルクは、エンジン回転数、エンジンシリンダ吸入空気量、トルクコンバータの出力シャフトの回転数、変速機のシフトポジション等に基づいて算出される。
前後輪駆動力配分制御部41と後輪左右駆動力配分制御部42は、車速センサ12により検出された車速と、操舵角センサ13により検出された操舵角と、ヨーレートセンサ14により検出されたヨーレートと、横加速度センサ15により検出された横加速度と、前後加速度センサ16により検出された前後加速度等の情報に基づいて車両の走行状態を検出し、検出された走行状態に応じて最適な駆動力配分となるように、前後輪の駆動力配分と、後輪の左右駆動力配分を行う。
例えば、車両が発進あるいは急加速の走行状態であることが検出された場合には、この走行状態のときには荷重が後に移動することから、前後輪駆動力配分制御部41は後輪への駆動力の配分を増やし、駆動性能を向上させる。また、車両がクルーズ走行状態であることが検出された場合には、前後輪駆動力配分制御部41は、直進安定性を向上させるために、後輪への駆動力の配分を減らす。このように、前後輪駆動力配分制御部41は車両の走行状態に応じて前輪と後輪の駆動力配分を算出し、算出された駆動力配分に応じて算出した前輪の駆動トルク(前輪駆動トルク)F_VALUEをアクチュエータ制御部43へ出力し、後輪の駆動トルク(後輪駆動トルク)R_VALUEを後輪左右駆動力配分制御部42へ出力する。
また、車両が旋回中であることが検出された場合には、後輪左右駆動力配分制御部42は、旋回外側の後輪(すなわち、後輪外輪)の駆動力の配分を増やし、内向きのヨーモーメントを発生させることで旋回し易くしたり、後輪外輪の駆動力の配分を減らし、外向きのヨーモーメントを発生させることでオーバーステアを抑制するなどして、旋回性能および車両挙動の安定性を向上させる。このように、後輪左右駆動力配分制御部42は車両の走行状態に応じて後輪の左右の駆動力配分を算出し、算出された駆動力配分に応じて算出した左後輪への駆動トルク(左後輪駆動トルク)LR_VALUEと右後輪への駆動トルク(右後輪駆動トルク)RR_VALUEをアクチュエータ制御部43へ出力するとともに、電動パワーステアリング装置1へ出力する。
駆動力配分アクチュエータ50は、前後輪の駆動力配分を行うクラッチ等を作動するアクチュエータと、後輪の左右駆動力配分を行うクラッチ等を作動するアクチュエータからなる。
アクチュエータ制御部43は、前後輪駆動力配分制御部41から入力した前輪駆動トルクF_VALUEと、後輪左右駆動力配分制御部42から入力した左後輪駆動トルクLR_VALUEおよび右後輪駆動トルクRR_VALUEとに基づいて、駆動力配分アクチュエータ50の前記各アクチュエータの制御量を算出し、駆動力配分アクチュエータ50の前記各アクチュエータを制御する。これにより、車両の各輪には、前後輪駆動力配分制御部41で算出された前後輪の駆動力配分と、後輪左右駆動力配分制御部42で算出された後輪の左右駆動力配分にしたがった駆動力が伝達される。
次に、電動パワーステアリング装置1について説明する。電動パワーステアリング装置1は、操舵アシストトルクを発生させる電動アシストモータ(操舵駆動部)31と、電動アシストモータ(以下、アシストモータと略す)31を駆動するモータ駆動回路32と、電動パワーステアリング制御装置(以下、EPS制御装置と略す)20と、を備えて構成されている。
EPS制御装置20には、ステアリングシャフトに印加される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ11、前述した車速センサ12、操舵角センサ13、ヨーレートセンサ14から、それぞれ検出値に応じた出力信号が入力されるとともに、前述した駆動力配分制御装置40の後輪左右駆動力配分制御部42から左後輪駆動トルクLR_VALUEおよび右後輪駆動トルクRR_VALUEが入力される。
EPS制御装置20は、EPS基本制御部21と、オーバーステア抑制基本制御量算出部22と、制御ゲイン算出部23とを備えている。この実施例において、オーバーステア抑制基本制御量算出部22と制御ゲイン算出部23はオーバーステア抑制制御部を構成する。
EPS基本制御部21は、車速センサ12により検出された車速と、操舵トルクセンサ11により検出された操舵トルクとに基づいて、アシストモータ31のEPS基本制御量EPS_VALUEを算出する。EPS基本制御量EPS_VALUEの算出方法は公知の電動パワーステアリング装置と同じであるので詳細説明は省略するが、概略、操舵トルクが大きくなるにしたがってEPS基本制御量EPS_VALUEが大きくなり、車速が大きくなるにしたがってEPS基本制御量EPS_VALUEが小さくなるように設定される。
オーバーステア抑制基本制御量算出部22は、車両のオーバーステア状態を検出し、オーバーステアを抑制するための基本制御量(オーバーステア抑制基本制御量)OS_VALUEを算出する。
詳述すると、図2のブロック図に示すように、オーバーステア抑制基本制御量算出部22は規範ヨーレート算出部24を備えており、規範ヨーレート算出部24において、車速センサ12により検出された車速と操舵角センサ13により検出された操舵角とに基づいて規範ヨーレートγoを算出する。ここで、規範ヨーレートとは、車速と操舵角に基づいて算出される理想モデル上のヨーレートであり、予めマップ等にされてEPS制御装置20の記憶部(図示略)に記憶されている。
そして、オーバーステア抑制基本制御量算出部22は、ヨーレートセンサ14により検出された実ヨーレートγと規範ヨーレート算出部24で算出された規範ヨーレートγoとの偏差(以下、ヨーレート偏差という)Δγを算出する(Δγ=γ−γo)。この実施例では、ヨーレート偏差Δγをオーバーステア状態を示すパラメータとして用いており、ヨーレート偏差Δγが正の値の場合、すなわち、実ヨーレートγが規範ヨーレートγoよりも大きい場合にオーバーステア状態であると判定し、ヨーレート偏差Δγが大きいほどオーバーステア状態が強い(大きい)と判定する。
そして、オーバーステア抑制基本制御量算出部22は、ヨーレート偏差Δγに基づいて、OS抑制基本制御量マップMを参照してオーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEを算出する。OS抑制基本制御量マップMは実験データ等に基づいて予め作成されたものであり、EPS制御装置20の前記記憶部に記憶されている。この実施例におけるOS抑制基本制御量マップMでは、ヨーレート偏差Δγが第1の所定値Δγ1以下ではオーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEは0であり、第1の所定値Δγ1を越えるとヨーレート偏差Δγの増加にしたがってオーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEも徐々に増大し、ヨーレート偏差Δγが第2の所定値Δγ2以上になるとオーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEは上限値で一定となるように設定されている。
制御ゲイン算出部23は、駆動力配分制御装置40の後輪左右駆動力配分制御部42から入力した左後輪駆動トルクLR_VALUEおよび右後輪駆動トルクRR_VALUEに基づいてオーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEに対する制御ゲインOS_GAINを算出する。制御ゲインOS_GAINの算出方法については後で詳述する。
そして、EPS制御装置20は、オーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEに制御ゲインOS_GAINを乗じて、オーバーステア抑制制御量EPS_HOSEI_VALUEを算出し(EPS_HOSEI_VALUE=OS_VALUE×OS_GAIN)、EPS基本制御量EPS_VALUEからオーバーステア抑制制御量EPS_HOSEI_VALUEを減算して、アシストモータ31の目標電流Ioを算出し(Io=EPS_VALUE−EPS_HOSEI_VALUE)、この目標電流Ioをモータ駆動回路32へ出力する。オーバーステア抑制制御量EPS_HOSEI_VALUEは、車両の旋回走行時などにおいてオーバーステアを抑制する方向のトルクを発生させる反力成分と言える。
モータ駆動回路32では、アシストモータ31の実電流が前記目標電流Ioと一致するように、フィードバック制御が行われる。
次に、EPS制御装置20において実行されるオーバーステア抑制制御量算出処理を図3のフローチャートに従って説明する。なお、図3のフローチャートに示すオーバーステア抑制制御量算出処理ルーチンは一定時間毎に繰り返し実行される。
まず、ステップS101において、右後輪駆動トルクRR_VALUEと左後輪駆動トルクLR_VALUEのトルク差DTを算出する(DT=RR_VALUE−LR_VALUE)。
次に、ステップS102に進み、トルク差DTの絶対値に基づき、図4のゲインオフセットマップを参照して、ゲインオフセット量GAIN_OFFSETを算出する。この実施例におけるゲインオフセットマップでは、トルク差DTの絶対値が第1の所定値DT1以下ではゲインオフセット量GAIN_OFFSETは0であり(不感帯)、第1の所定値DT1を越えるとトルク差DTの絶対値が増大するにしたがってゲインオフセット量GAIN_OFFSETが徐々に増大し、トルク差DTの絶対値が第2の所定値DT2以上になるとゲインオフセット量GAIN_OFFSETは上限値で一定となるように設定されている。なお、上限値は1より小さい正の値(例えば、0.5)に設定する。
次に、ステップS103に進み、操舵角センサ13で検出された操舵角STR_ANGLEに基づいて車両が左旋回しているか否かを判定する。なお、この実施例で使用する操舵角センサ13は、左旋回方向の操舵角を正の値、右旋回方向の操舵角を負の値で出力するものとする。
ステップS103における判定結果が「YES」(STR_ANGLE>0、左旋回)である場合には、ステップS104に進み、ステップS101で算出したトルク差DTが0より大きいか否か、すなわち、右後輪駆動トルクRR_VALUEが左後輪駆動トルクLR_VALUEよりも大きいか否かを判定する。
ステップS104における判定結果が「YES」(DT>0)である場合には、左旋回時に右後輪駆動トルクRR_VALUEが左後輪駆動トルクLR_VALUEよりも大きいことから、駆動力配分装置2は外側後輪の駆動力を大きくして旋回方向に対して内向きのヨーモーメントを発生させているので、ステップS105に進み、通常時の制御ゲインである1からゲインオフセット量GAIN_OFFSETを減算して制御ゲインOS_GAINを算出する(OS_GAIN=1−GAIN_OFFSET)。したがって、この場合には、トルク差DTがDT1以上のときに、制御ゲインOS_GAINは1より小さい値となる。
ステップS104における判定結果が「NO」(DT≦0)である場合には、左旋回時に右後輪駆動トルクRR_VALUEが左後輪駆動トルクLR_VALUE以下であることから、駆動力配分装置2は外側後輪の駆動力を小さくして旋回方向に対して外向きのヨーモーメントを発生させているので、ステップS106に進み、通常時の制御ゲインである1にゲインオフセット量GAIN_OFFSETを加算して制御ゲインOS_GAINを算出する(OS_GAIN=1+GAIN_OFFSET)。したがって、この場合には、トルク差DTがDT1以上のときに、制御ゲインOS_GAINは1より大きい値となる。
一方、ステップS103における判定結果が「NO」(STR_ANGLE≦0、右旋回)である場合には、ステップS107に進み、ステップS101で算出したトルク差DTが0より大きいか否か、すなわち、右後輪駆動トルクRR_VALUEが左後輪駆動トルクLR_VALUEよりも大きいか否かを判定する。
ステップS107における判定結果が「YES」(DT>0)である場合には、右旋回時に右後輪駆動トルクRR_VALUEが左後輪駆動トルクLR_VALUEよりも大きいことから、駆動力配分装置2は外側後輪の駆動力を小さくして旋回方向に対して外向きのヨーモーメントを発生させているので、ステップS108に進み、通常時の制御ゲインである1にゲインオフセット量GAIN_OFFSETを加算して制御ゲインOS_GAINを算出する(OS_GAIN=1+GAIN_OFFSET)。したがって、この場合には、トルク差DTがDT1以上のときに、制御ゲインOS_GAINは1より大きい値となる。
ステップS107における判定結果が「NO」(DT≦0)である場合には、右旋回時に右後輪駆動トルクRR_VALUEが左後輪駆動トルクLR_VALUE以下であることから、駆動力配分装置2は外側後輪の駆動力を大きくして旋回方向に対して内向きのヨーモーメントを発生させているので、ステップS109に進み、通常時の制御ゲインである1からゲインオフセット量GAIN_OFFSETを減算して制御ゲインOS_GAINを算出する(OS_GAIN=1−GAIN_OFFSET)。したがって、この場合には、トルク差DTがDT1以上のときに、制御ゲインOS_GAINは1より小さい値となる。
そして、ステップS105,S106,S108,S109からステップS110に進み、オーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEに制御ゲインOS_GAINを乗じて、オーバーステア抑制制御量EPS_HOSEI_VALUEを算出する(EPS_HOSEI_VALUE=OS_VALUE×OS_GAIN)。
このように構成された電動パワーステアリング装置1によれば、車両の旋回時に駆動力配分装置2が旋回外側の車輪への駆動力配分量を多くしているときには、電動パワーステアリング装置1におけるオーバーステア抑制制御の制御ゲインOS_GAINを1より小さくすることができる(ステップS105,S109に対応)。その結果、車両の旋回時に駆動力配分装置2が旋回外側の車輪への駆動力配分量を多くして、旋回方向に対して内向きのヨーモーメントを発生させ、旋回を行い易くしているときに、電動パワーステアリング装置1による不必要なオーバーステア抑制制御が作用しないようにすることができ、操舵フィールの低下を抑制することができる。
また、駆動力配分装置2が旋回外側の車輪への駆動力配分量を少なくしているときには、電動パワーステアリング装置1におけるオーバーステア抑制制御の制御ゲインOS_GAINを1より大きくすることができる(ステップS106,S108に対応)。その結果、車両の旋回時に駆動力配分装置2が旋回外側の車輪への駆動力配分量を少なくして、旋回方向に対して外向きのヨーモーメントを発生させ、オーバーステアを抑制しようとしているときに、電動パワーステアリング装置1においてオーバーステアを抑制する制御を強めにすることができるので、電動パワーステアリング装置1と駆動力配分装置2が共にオーバーステアを抑制する方向に協調制御されることとなり、車両挙動の安定化が向上する。また、電動パワーステアリング装置1と駆動力配分装置2が協調制御されることにより、操舵フィールも向上する。
次に、この実施例の電動パワーステアリング装置1におけるアシストモータ31の制御手順を図5のフローチャートにしたがって説明する。
まず、ステップS201では、駆動力配分制御装置40において駆動力配分(前後輪の駆動力配分と後輪の左右駆動力配分)を算出する。
次に、ステップS202に進み、ステップS201で算出された駆動力配分にしたがって駆動力配分アクチュエータ50を制御する。
次に、ステップS203に進み、実ヨーレートγと規範ヨーレートγoとのヨーレート偏差Δγに基づいてオーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEを算出する。
次に、ステップS204に進み、右後輪駆動トルクRR_VALUEと左後輪駆動トルクLR_VALUEのトルク差DTに基づいて、制御ゲインOS_GAINを算出する。
次に、ステップS205に進み、オーバーステア抑制基本制御量OS_VALUEに制御ゲインOS_GAINを乗じて、オーバーステア抑制制御量EPS_HOSEI_VALUEを算出する。
次に、ステップS206に進み、電動パワーステアリング装置1の制御量、すなわちアシストモータ31の目標電流Ioを算出する。アシストモータ31の目標電流Ioは、EPS基本制御量EPS_VALUEからオーバーステア抑制制御量EPS_HOSEI_VALUEを減算して算出する。
次に、ステップS207に進み、アシストモータ31の実電流が前記目標電流Ioと一致するように制御する。
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
前述した実施例では四輪駆動車両の態様で説明したが、この発明は、四輪駆動車両以外の車両にも適用可能であり、少なくとも左右輪の駆動力配分が可能な車両であれば適用可能である。
さらに、操舵方式は、前輪操舵であっても四輪操舵であってもよい。
また、図4に示されるゲインオフセットマップは一例であり、これに限られるものではない。図4に示されゲインオフセットマップにおけるゲインオフセット量の上限値も0.5に限られるものではなく、1より小さい適宜の値に設定可能である。
この発明に係る操舵装置を備えた車両の実施例における構成図である。 実施例の電動パワーステアリング装置におけるオーバーステア抑制基本制御量算出部のブロック図である。 実施例の電動パワーステアリング装置においてオーバーステア抑制制御量算出処理を示すフローチャートである。 実施例におけるゲインオフセットマップの一例である。 実施例における電動パワーステアリング装置においてアシストモータ制御手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)
2 駆動力配分装置(左右駆動力配分装置)
14 ヨーレートセンサ
22 オーバーステア抑制基本制御量算出部(オーバーステア抑制制御部)
23 制御ゲイン算出部(オーバーステア抑制制御部)
31 電動アシストモータ(操舵駆動部)

Claims (2)

  1. 車両に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
    操舵角と車速に応じて予め設定された規範ヨーレートと前記ヨーレートセンサで検出された実ヨーレートとの偏差に基づいてオーバーステア状態を検出し、オーバーステアを抑制すべく操舵駆動部を制御するオーバーステア抑制制御部と、
    を備える車両用操舵装置において、
    左右輪の駆動力配分を制御することにより車両のヨーモーメントを制御する左右駆動力配分装置が旋回外側の車輪への配分量を多くしているときは、前記オーバーステア抑制制御部におけるオーバーステア抑制の制御ゲインを低下させることを特徴とする車両用操舵装置。
  2. 車両に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
    操舵角と車速に応じて予め設定された規範ヨーレートと前記ヨーレートセンサで検出された実ヨーレートとの偏差に基づいてオーバーステア状態を検出し、オーバーステアを抑制すべく操舵駆動部を制御するオーバーステア抑制制御部と、
    を備える車両用操舵装置において、
    左右輪の駆動力配分を制御することにより車両のヨーモーメントを制御する左右駆動力配分装置が旋回外側の車輪への配分量を少なくしているときは、前記オーバーステア抑制制御部におけるオーバーステア抑制の制御ゲインを増大させることを特徴とする車両用操舵装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013028329A (ja) * 2011-07-28 2013-02-07 Hyundai Motor Co Ltd インホイールモータを利用した車両制御方法
KR20160148186A (ko) * 2015-06-16 2016-12-26 현대자동차주식회사 전동식 조향장치 고장 여부 검출장치 및 방법

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