JP2015074370A - 車両制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の目的は、旋回時の車両挙動を速やかに安定化させることができる車両制御装置を提供することにある。
[車両制御装置の構成]
図1は、実施例1の車両制御装置の構成図である。
実施例1では、ドライバの操舵入力を受ける操舵部1と、左右前輪(転舵輪)6L,6Rを転舵する転舵部2とが機械的に切り離されたステアバイワイヤ(SBW)方式の操舵装置を採用している。
操舵部1は、ステアリングホイール3、コラムシャフト4、反力モータ5を備える。コラムシャフト4は、ステアリングホイール3と一体に回転する。反力モータ5は、例えば、ブラシレスモータであり、図外の減速機を介してコラムシャフト4と接続され、コラムシャフト4に対し前輪6L,6Rの転舵状態に応じた操舵反力トルクを出力する。
転舵部2は、前輪6L,6R、ピニオンシャフト7、ステアリングギア8、転舵モータ9を備える。ステアリングギア8は、ラック&ピニオン式のステアリングギアであり、ピニオンシャフト7の回転に応じて前輪6L,6Rを転舵する。転舵モータ9は、例えば、ブラシレスモータであり、図外の減速機を介してラック10と接続され、ラック10に対しステアリングホイール3の操舵角に応じて前輪6L,6Rを転舵するための転舵トルクを出力する。
車両安定化制御コントローラ16は、各センサからのセンサ値に基づき各車輪のブレーキ増減圧指令値を演算する。ブレーキアクチュエータ18は、ブレーキ増減圧指令値に応じて各車輪のホイルシリンダ17のブレーキ液圧を増減する。ブレーキアクチュエータ18により増減圧制御されたブレーキ液圧は液圧経路19を介してホイルシリンダ17に供給される。
また、車両安定化制御コントローラ16は、操舵角の遷移状態に基づき、急速な切り返し操舵が行われるときに見られる所定の舵角遷移状態であると判断した場合に、前輪6L,6Rのホイルシリンダ圧を所定量増圧する減速制御を実行する。以下、図2のフローチャートを用いて、減速制御の内容を詳しく説明する。
図2は、車両安定化制御コントローラ16による減速制御処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、車両電源投入後より所定時間毎(例えば10[ms]毎)に実行される。
ステップS1では、ヨーイング系統物理量を入力する。
ここでは、操舵角センサ11からの操舵角、転舵角センサ12からの転舵角、横Gセンサ13からの横G、ヨーレイトセンサ14からのヨーレイトを入力し、例えば、最も応答特性の早いものを選択し、ヨーイング系統物理量として採用する。一般的には、各センサ値をヨーレイトに換算し、最も応答特性の早いものを選択するが、通常はドライバの操作系統が最も早い応答特性となる。よって、操舵角をヨーイング系統物理量として採用するのが好ましい。
ここで、所定の舵角遷移状態、すなわち、急速な切り返し操舵の予測方法の一例を、図3のタイムチャートを用いて説明する。
図3は、ドライバが緊急回避時に急速な切り返し操舵を行ったときの操舵角と操舵角速度のタイムチャートである。所定の舵角遷移状態とは、以下の4条件が全て成立した場合とする。
条件1:操舵角中立位置近傍からの切り増し操舵の操舵角速度[deg/s]があらかじめ実験などで求めた所定の閾値を超えた場合
条件2:切り増し操舵から切り戻し操舵に入るまでの時間があらかじめ実験などで求めた所定の時間内である場合
条件3:切り戻し操舵の操舵角速度 [deg/s]が、前述の所定の閾値を超えた場合
条件4:車両安定化制御がON状態、すなわち、ヨーレイト>横Gヨーレイト換算値の場合
車両安定化制御コントローラ16は、上記4条件が全て成立した場合、舵角遷移状態判断フラグをセット(=1)し、それ以外は舵角遷移状態判断フラグをリセット(=0)する。
ステップS4では、車両を減速させるために必要となる制御量を演算し、制御量に基づいてブレーキアクチュエータ18およびパワートレインコントローラ21に指令を出力する車両減速指令処理を実施する。ステップS4は、急速な切り返し操舵が予測された場合、左右前輪の少なくとも1輪のブレーキ液圧を増加すると共に、駆動輪に付与される駆動力を低減する減速制御手段に相当する。
ステップS41では、車輪速センサ15からの車輪速に基づいて車速を算出する。車速は、例えば左右後輪の車輪速平均値とする。
ステップS42では、目標車速を演算する。目標車速は、例えば、横Gセンサ13の検出値をヨーレイトセンサ14の検出値で除算した値とする。また、あらかじめ実験などにより、各センサ検出値に対する目標車速をテーブル値として設定し、算出しても良い。
ステップS43では、ステップS42で求めた目標車速から、ステップS41で算出した実車速を減じて車輪速差を求める。
ステップS44では、ステップS43で求めた車輪速差がゼロよりも大きいか否かを判定し、YESの場合にはステップS45へ進み、NOの場合には本制御を終了する。
ステップS45では、ステップS43で求めた車輪速差にゲインを乗算するゲイン処理を施す。ゲインは、あらかじめ実験などにより、所定の走行シーンにおける、車両挙動への影響を見ながら適合して行く。
ステップS46では、ステップS45でゲイン処理を施した結果を減速指令演算用に単位変換し、ブレーキアクチュエータ18およびパワートレインコントローラ21に指令を出力する。実施例1では、ブレーキアクチュエータ18に対し前輪6L,6Rのブレーキ液圧を共に所定量増加させる指令と、パワートレインコントローラ21に対しパワートレイン20の駆動力を低減させる指令とを出力する。
[車両安定化制御の応答遅れについて]
操舵装置としてステアバイワイヤ方式を採用している車両では、ステアリングホイールと転舵輪との間に機械的な結合を持たないため、操舵角に対する転舵角の応答性が向上する。その結果、ステアリングホイールと転舵輪との間が機械的に結合された従来の車両と比較して、旋回応答(ヨー共振周波数)が向上するという利点がある。加えて、近年では、環境性能を重視したハイブリッド車両や電気自動車といった二次バッテリを搭載した車両の開発が促進されている。それらの車両では、パッケージング性能を考慮し、二次バッテリを床下に設置する構成が多く見られる。このような場合、重量物である二次バッテリが車両の中心に位置することとなるため、従来のスポーツカー並に転回性能が向上する。すなわち、近年の車両では、従来の車両と比較して、ヨー共振周波数が高くなる傾向がある。
これに対し、実施例1では、急速な切り返し操舵が予測された場合、減速制御により前輪6L,6Rのブレーキ液圧を増加する。つまり、旋回内輪の接地荷重抜けが発生するシーンを予測し、接地荷重抜けが発生する前に前輪6L,6Rの制動力を増加させて前輪6L,6Rの接地荷重を高めておく。図6は実施例1における各車輪の接地荷重の変化を示す模式図であり、実施例1では、旋回内輪(左輪)の接地荷重抜けが発生する時点t5の時点では、既に前輪6L,6Rの接地荷重が高められている。接地荷重が増えると路面摩擦係数μが増加するため、図7に示すように、減速制御を実施しない場合(破線)と比較して前輪6L,6Rのμ-S特性を向上させることができる。このとき、前輪6L,6Rの摩擦円は、図8の破線で示す領域まで拡大するため、接地荷重抜けが生じた場合であっても、図8の実線で示す領域まで摩擦円の大きさを確保することができる。これにより、ステアバイワイヤ方式に操舵装置を採用した車両において、車両安定化制御によるブレーキ液圧の制御に応答遅れが生じる場合であっても、車両安定化制御が応答可能な摩擦円領域を確保できる。つまり、車両安定化に必要な制動力を左前輪6Lに付与できるため、オーバーステア傾向を早期に抑制でき、過大なオーバーステア傾向の発生を抑制できる。
実施例1では、減速制御において左右前輪6L,6Rのブレーキ液圧を増加させる。これにより、後輪のブレーキ液圧を増加させる場合と比較して、旋回時の車両姿勢をより前傾させることができるため、前輪6L,6Rの摩擦円領域をより拡大できる。よって、車両安定化制御が応答可能な摩擦円領域をより拡大でき、旋回時の車両挙動を速やかに安定化させることができる。
実施例1では、操舵角速度と操舵角の変化パターンとに基づいて急速な切り返し操舵を予測している。これにより、急速な切り返し操舵を迅速かつ正確に予測でき、旋回時の車両挙動を速やかに安定化させることができる。
(1) ドライバの操舵入力を受ける操舵部1と、操舵部1と機械的に切り離され前輪6L,6Rを転舵する転舵部2と、車輪のブレーキ液圧を制御して車両挙動を安定化させる車両安定化制御コントローラ16と、車両のヨーイング系統の物理量を検出するヨーイング系統物理量検出手段(操舵角センサ11、転舵角センサ12、横Gセンサ13、ヨーレイトセンサ14)と、ヨーイング系統の物理量に基づき、急速な切り返し操舵を予測する急速切り返し操舵予測手段(ステップS2)と、急速な切り返し操舵が予測された場合、左右前輪6L,6Rのブレーキ液圧を増加すると共に、駆動輪に付与される駆動力を低減する減速制御手段(ステップS4)と、を備えた。
よって、ステアバイワイヤ方式に操舵装置を採用した車両において、車両安定化制御によるブレーキ液圧の制御に応答遅れが生じる場合であっても、旋回内輪の接地荷重抜けが生じる前に前輪6L,6Rの摩擦円領域を拡大させることができ、車両安定化制御が応答可能な摩擦円領域を確保できる。つまり、車両安定化に必要な制動力を旋回内側の前輪に付与できるため、オーバーステア傾向を早期に抑制でき、過大なオーバーステア傾向の発生を抑制できる。
よって、実際に車両にヨーイングが発生するよりも早く、ヨーイング系統の状態を検出することができる。すなわち、急速な切り返し操舵を早期に予測できるため、旋回時の車両挙動を速やかに安定化させることができる。
よって、急速な切り返し操舵を迅速かつ正確に予測でき、旋回時の車両挙動を速やかに安定化させることができる。
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
舵角遷移状態判断フラグのセット条件は、あらかじめ実験などにより旋回時の車両挙動を確認し、条件を設定しても良い。例えば、ドライバが操舵中立位置から切り増し操舵を行ったときの操舵角速度が所定の閾値を所定時間上回ったとき、舵角遷移状態判断フラグをセットしても良い。
減速制御では、前輪の少なくとも一方のブレーキ液圧を増加すれば良い。
2 転舵部
3 ステアリングホイール
4 コラムシャフト
5 反力モータ
6L,6R 左右前輪
7 ピニオンシャフト
8 ステアリングギア
9 転舵モータ
10 ラック
11 操舵角センサ(ヨーイング系統物理量検出手段)
12 転舵角センサ(ヨーイング系統物理量検出手段)
13 横Gセンサ(ヨーイング系統物理量検出手段)
14 ヨーレイトセンサ(ヨーイング系統物理量検出手段)
15 車輪速センサ
16 車両安定化制御コントローラ(車両安定化制御手段)
17 ホイルシリンダ
18 ブレーキアクチュエータ
19 液圧経路
20 パワートレイン
21 パワートレインコントローラ
22 ブレーキペダル
23 マスタシリンダ
24 マスタシリンダ圧センサ
25 ストロークセンサ
Claims (3)
- ドライバの操舵入力を受ける操舵部と、
前記操舵部と機械的に切り離され転舵輪を転舵する転舵部と、
車輪のブレーキ液圧を制御して車両挙動を安定化させる車両安定化制御手段と、
車両のヨーイング系統の物理量を検出するヨーイング系統物理量検出手段と、
前記ヨーイング系統の物理量に基づき、急速な切り返し操舵を予測する急速切り返し操舵予測手段と、
急速な切り返し操舵が予測された場合、前輪のブレーキ液圧を増加すると共に、駆動輪に付与される駆動力を低減する減速制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1に記載の車両制御装置において、
前記ヨーイング系統物理量は、前記操舵部の操舵角であることを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1または2に記載の車両制御装置において、
前記急速切り返し操舵予測手段は、前記ヨーイング系統物理量の変化速度と変化パターンとに基づいて急速な切り返し操舵を予測することを特徴とする車両制御装置。
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