本発明は、画像形成装置のインクタンク等に関し、特に、供給路を介して接続されたインク供給部からインクが供給されるインクタンク、インク供給システム及びインク供給方法に関する。
紙、フィルム等様々な記録部材に対して印刷を行う手段として、インクジェット記録装置(液滴吐出装置)が知られている。インクジェット記録装置は、インクタンクから液体吐出ヘッドへインクを供給し、供給されたインクをピエゾ等の圧電素子に電圧を印加することにより、液体吐出ヘッドのノズルから記録部材上へインクを吐出させ、記録部材上で上記動作を繰り返すことにより、高精細な画像を記録部材上に形成させる。
インクジェット記録装置は、従来のオフセット印刷等のように版を必要としない無版印刷のため、製版工程を必要としないだけでなく、小ロット印字にも即時対応ができ、需要に応じた印刷を可能とする。
特に近年は、印字物に高画質化や耐久性が求められており、その為のインクの開発が印刷装置同様急速に進められている。このように印刷物に求められる要求を満たすためには、安定吐出が求められる。
また微小インク滴の吐出により記録部材表面上に任意の画像を印写するインクジェット記録装置においては、インクタンク内のインクが消費され尽くすと、記録部材への書き込みが不能になるばかりでなく、ノズルに至るインク供給路、インク液室内に空気が入り込んでしまい、新たにインクを補給したとしても、吐出不良等の不具合が発生してしまい、その不具合を復旧させる為に多大の時間を要する。
その不具合を解消する為に、インクタンク内にインクを常に規定量満たしておく必要があり、そのインク充填時にインクタンク内のインクレベルを検知する検知手段を設ける方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、インク室に備えたインク検知センサでインク室のインクが一定量以下となったことを検知するインクタンクが開示されている。
また、インク溢れや圧力変動等によりインクタンクからインクが漏れることを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、インクタンク内に負圧を維持し急激な体積膨張に対応したバッファ空間を形成した圧力調整モジュールを有し、圧力調整モジュールが圧力変動に対し負圧を維持するインクタンクが開示されている。このインクタンクは、更に、大きな圧力変動に対し、インク貯蔵部にインクを満たしたときに当該インクの液面よりも下となる位置に配され,端部が外部と通気されている第1のパイプと、端部がインク貯蔵部の底面に隣接している第2のパイプを介して外気を前記インク貯蔵部内に供給しインク貯蔵部からのインク漏れを防止するチェック弁を有する。
実公平08−5811号公報
特許第3701278号公報
しかしながら、近年、インクジェット記録装置のメーカが出荷する純正インク以外に、サードパーティが製造・販売するリフィルインクが市場に出まわっており、各メーカの純正インク以外のインクを、ユーザが容易に安価で手にすることができるといった状況が生まれた。
例えば、インク室のインク残量を検知するインク検知センサは純正インクに最適化されているため、これらリフィルインクを使用した場合、インク室のインク残量を正確に検知できないおそれがある。例えば、インク充填時にインクタンク内のインクレベルを検知する手段に電極ピンを用い、電極ピンにてインクの電気抵抗を検知してインクタンク内のインク満杯検知を行う場合、残量が少なければ電気抵抗が高くなることでインクが一定量以下であることを検知する。しかし、リフィルインクを使用した場合、一定量を超過していても検知設定値以上の電気抵抗値を示すことがあり、電極ピンで満杯を検知できず、カートリッジからインクをインクタンク内に供給し続け、最終的にはインクタンクの破裂、又は、大気に連通する通路からインクが溢れ出してしまい、マシン不良を引き起こす可能性がある。
このような不都合は、電極ピンでインク残量を検知する場合だけでなく、特許文献2のように液面のマグネットフロートが底面のセンサに接近することで検知する検知方法でも、例えばリフィルインクと純正インクの密度が違うような場合に生じうる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、インクの種類の影響を低減して、インクタンク内のインクが満杯であることを検知することができる、インクタンク、インク供給システム及びインク供給方法を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明は、液滴吐出ヘッドに直結されたヘッドタンクに、供給路を介して接続されたインク供給部からインクが供給されるインクタンクにおいて、ヘッドタンクのインク収容部に配置されインクの満杯を検知する第1のインク検知手段と、インク収容部と連通路を介して連通し、インク収容部よりも上部に設けられた大気開放部に配置された第2のインク検知手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、外部に近い大気開放部にもインク検知手段を設けることで、インクが上部まで充填されたことを検知し、インク漏れを未然に防止することができる。
インクの種類の影響を低減して、インクタンク内のインクが満杯であることを検知することができる、インクタンク、インク供給システム及びインク供給方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のインクタンク100は、インクタンク100内に複数対の電極ピンを設け、すべての電極ピン対において該インクタンク100内のインク有無を対になっている電極ピン間を短絡するインクの抵抗値により検知する。複数対の電極ピンのうち少なくとも1対は、インクタンク上部(液面よりも上)に設けられるので、インクタンク内のインクが充溢状態(満杯状態)であることを検知することができる。
インクタンク内とインクタンク上部のそれぞれでインクの有無を検知することで、リフィルインクに対してもインクタンクから溢れる前にインクの満杯状態を確実に検知することができ、インクタンク100からのインク漏れ出しを未然に回避することができる。
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置200を前方側から見た斜視説明図の一例を示す。このインクジェット記録装置200は、装置本体1と、装置本体1に装着された記録部材(以下、用紙42という)を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙42をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
さらに、装置本体1の前面の一端部側(図では給排紙トレイ部の正面視右側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなった各色のインクカートリッジ10を装填するためのカートリッジ装填部4を有する。インクカートリッジ10は各色毎又は複数色をそれぞれ脱着できる。カートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
カートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段である。記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しない場合は「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
次に、このインクジェット記録装置200の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図の一例を、図3は同じく要部平面説明図の一例をそれぞれ示す。
左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3の矢印方向(キャリッジ主走査方向)に往復移動(走査)する。
このキャリッジ33には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、の各色のインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド34a、34b(区別しないときは「液体吐出ヘッド34」という。)を有する。液体吐出ヘッド34は、主走査方向と直交する副走査方向に配列した、複数のノズルからなるノズル列34N1,34N2を備え、ノズルをインク滴吐出方向である下方に向けている。
液体吐出ヘッド34は、図ではそれぞれ2つのノズル列を有し、液体吐出ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)のインク液滴を、他方のノズル列はシアン(C)のインク液滴を、液体吐出ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)のインク液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)のインク液滴を、それぞれ吐出する。
液体吐出ヘッド34を構成するインクジェットヘッドには、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなど、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を備えたものを使用できる。
また、キャリッジ33には、液体吐出ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35は、各色毎にインク供給チューブ36を介して、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。
なお、カートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを、ヘッドタンク35に送液するための供給ポンプユニット24が設けられている。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を液体吐出ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48と、を備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して液体吐出ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。
搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによって搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動し、両面印字の場合には更にベルト搬送方向と逆方向に周回移動する。
さらに、液体吐出ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転により戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の主走査方向一方側(図3の右側)の非印字領域には、液体吐出ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
維持回復機構81には、液体吐出ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために画像形成に寄与しないインク液滴を吐出させる空吐出を行う際、そのインク液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。
また、図3に示すように、印字領域を挟んで維持回復機構81の反対側の非印字領域には、画像形成中などに増粘したインクを排出するために記録に寄与しないインク液滴を吐出させる空吐出を行う際、そのインク液滴を受ける空吐出受け88が配置されている。この空吐出受け88には液体吐出ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したインクジェット記録装置200においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、静電力により用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
液体吐出ヘッド34はFFC(フレキシブルフラットケーブル)22を介して制御ユニット23と接続されている。制御ユニット23は、CPU、ROM、RAM、NVRAM、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、入出力インターフェイス、モータ駆動IC、液体吐出ヘッド制御IC等をバスで接続したコンピュータとして実装される。
制御ユニット23は、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、印字(画像形成)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で液体吐出ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で液体吐出ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、液体吐出ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
次に、このインクジェット記録装置200におけるヘッドタンク35側での安定した吐出を行うために適用する本実施形態に係るインクタンク100の一例について図4、図5を参照して説明する。なお、図4はインクタンク100の模式的説明図(側面断面図)を、図5は分解斜視図をそれぞれ示す。
インクタンク100は、ヘッドタンク35とフィルタユニット209とにより構成される。こられに、液体吐出ヘッド34を加えたものをインクタンク100としてもよい。
ヘッドタンク35は、1つの液体吐出ヘッド34の2つのノズル列にそれぞれ異なる色の記録液を供給するため容器本体(タンク本体)202の両側(紙面の手前と奥)に、それぞれ記録液収容部であるインク収容部201A、201Bを形成し、これらのインク収容部201Aの開口には可撓性を有するフィルム状部材(可撓性フィルム状部材)211(図5のみ図示)を接着又は溶着などで貼り付けて封止している。
更にインク収容部201内部にはタンク本体202とフィルム状部材211との間にフィルム状部材211を外方に付勢するための弾性部材であるバネ(スプリング)212を配設し、フィルム状部材211及びバネ212によって負圧発生機構を構成している。なお、フィルム状部材211の変位に応じて変位する負圧検知レバーを備えるが図示を省略している。
フィルム状部材211は単層構成でもよいが、種類の異なる第1層と第2層とをラミネートした二層構成、例えばポリエチレンとナイロンのフィルム状部材をラミネートした構成としたり、第1層にシリカ蒸着層を形成した構成とすることができる。
また、タンク本体202の上部にはインク収容部201を大気に開放するための大気開放通路203を形成し、この大気開放通路203を開閉する大気開放機構204を備えている。この大気開放機構204は、通路204aを開閉するボール弁体204bと、このボール弁体204bを弁座204c側に付勢するスプリング204dなどで構成している。
そして、インク収容部201の天面と大気開放通路203との間に隔壁部205を設け、この隔壁部205に、インク収容部201と大気開放通路203とを連通する、小孔206を形成している。小孔206は、インク収容部201に収容される記録液粘度や処方によって、ヘッドタンク35が輸送時などの振動で揺れたときでも表面張力によるメニスカスが形成されて、大気連通路203内までインク液が侵入しない形状等を有する。
また、タンク本体202にはインク収容部201にインクを供給するためのインク供給口部207を形成し、インク供給チューブ36とインク供給口部207が連結部材208を介して連結される。タンク本体202の下部にはフィルタユニット209が取り付けられ、このフィルタユニット209を介して液体吐出ヘッド34が取付けられる。さらに、タンク本体202の上部にはインク収容部201のインクを検知するための2本の電極ピン216a、216bが設けられている。この電極ピン216は、インク収容部201にインクが満杯か否かを検知する従来のセンサ、及び、インク収容部201のインク残量を検知するための従来のセンサに相当する。
ここで、タンク本体202の底面には、インク収容部201からフィルタユニット209に個別的にインクを供給するための供給口213A、213Bをそれぞれインク収容部201の端部に形成し、また、供給口213A、213Bを中央部分に配置するためにインク収容部201Aには他方の収容部に膨らんだ膨出部214Aを、となりのインク収容部201Bには、膨出部214Bをそれぞれ形成している(図6参照)。
図6は、フィルタユニット209の分解斜視図を示す。フィルタユニット209は、ユニットケース241内に、フィルタ242A、242Bを保持したフィルタ保持部材243及び蓋部材244をはめ込んで組み立てている。
ユニットケース241にはフィルタ242A、242Bを通過したインクを受けるインク受け部246A,246Bが設けられており、インク受け部246A、246Bには液体吐出ヘッド34の各ノズル列に対応するインク供給口部207と連結する連結部245A、245Bがそれぞれ形成されている。
また、蓋部材244にはインク収容部201A、201Bの供給口部213A、213Bにそれぞれ連結する連結部247A、247Bを設けている。
両端の連結部247A、247Bからフィルタ242A、242Bを介してフィルタユニット209内に導入されるインクを、液体吐出ヘッド34側との連結部245A、245Bに導くため、フィルタ242A、242Bは、図示するように平面形状で略涙形状に形成したものを用いている。
図7は、液体吐出ヘッド34の底面図の一例を示す。図7に示すように、液体吐出ヘッド34側の供給口34Aと供給口34Bを結ぶ線が、ノズル列34N及びノズル列34Nと直交するように、供給口34Aと供給口34Bがノズル面の短手方向に並べて形成されている。
1つの液体吐出ヘッド34の2つのノズル列34N1、34N2に対応する共通液室に対して異なる色の記録液を供給する場合、ノズル列34Nに沿う方向のフィルタ242A、242Bの一端部(例えば、涙形状の広い方)にインクを導入し、フィルタ242A、242Bの他端部(例えば、涙形状の狭い方)からインクを液体吐出ヘッド34の供給口34A,34Bに導出することによって、フィルタ242A、242Bの略全面を使用することができて、フィルタの除去効率が向上する。
このように構成したヘッドタンク35においても、小孔206は、ヘッドタンク35が輸送時などの振動で揺れたときでも収容している記録液の表面張力によるメニスカスが形成されて大気連通路203内まで記録液が侵入しないので、ヘッドタンク35内に記録液を充填した状態で出荷することができて、コストを低減することができ、また、ユーザがインクジェット記録装置200を初めて使用する際、インクジェット記録装置200の初期立ち上がり時間を短くすることがすることができる。
以上のようなインクタンク100の構造において、安定吐出させるための構造を、インクを収容するインクカートリッジ10から液体吐出ヘッド34に至る経路に備えている。実際に画像形成する環境としては工場、オフィスと様々な環境が想定され、特に種々の温度環境で使用されても、液体吐出ヘッド34により安定吐出を行うことができる。
本実施形態のインク溢れの対策について図8を用いて説明する。インクタンク内のインクを満杯検知用の電極ピン216a、216bを用い検知し、本体側のインクカートリッジ10からのインク供給を停止させる。検知する抵抗値としては本実施例に用いたインクでは15KΩ(以下、第1の閾値という)以下となっており、インクが短絡した電極ピン216aと電極ピン216bの抵抗値が15kΩ以下になると、インクタンク内のインクが満杯であると判断される。すなわち、満杯に相当する量のインクがインクタンク内に充填されると、電極ピン216a(又は216b)からインクを介して電極ピン216b(又は216a)に電流を流した際の、抵抗値が15KΩ以下となる。
ところが前述したように、この抵抗値15KΩは純正インクの抵抗値に対し設定された値であるため、純正インクではなく、リフィルインク等、インク自体の抵抗値が異なるインクがインクタンク内に充填され満杯になった場合には、電極満杯検知用の電極ピン216a、216bを用いた抵抗値の検知では、満杯になったことを検知できない場合がある。
また、純正インクによりインクタンク内に満杯にしても、インクカートリッジ10内に混入した気泡などが原因で、インクカートリッジ10からインクと共に気泡をインクタンク内に送ってしまった場合には、インクが泡状になり、電極ピン216a、216bにより検知される抵抗値が大きくなり(満杯になっても15kΩを超えたままとなり)、満杯になったことを検知できない事態が生じうる。
そこで、本実施形態のインクタンク100は、インクタンク内の電極満杯検知用の電極ピン216a、216bとは別に、インクタンク内が大気に連通する大気開放通路203に、対の電極ピン132a、132bを設ける。そして、電極ピン132a(又は132b)から大気開放通路203のインクを介して電極ピン132b(又は132a)に電流を流した際の抵抗値が、第2の閾値以下であれば、大気開放通路203にインクが到達していると判定される。
ここで、第1の閾値と第2の閾値について説明する。電極ピン216a、216bと、電極ピン132a、132bとは、対の電極間の距離が同じとは限らず、長さや表面積などの形状が異なり、また、インクタンク内と大気開放通路203ではその体積が異なるため電極ピン間を短絡するインクの容量も異なる。このため、同じインクでも電極ピン216a、216bと、電極ピン132a、132bとで検知された抵抗値は異なると考えられる。したがって、第2の閾値は、インクが存在することを検知できるように第1の閾値とは独立に設定される。すなわち、第1の閾値=第2の閾値、第1の閾値>第2の閾値、又は、第1の閾値<第2の閾値、のいずれの関係であってもよい。
一方、電極ピン132a、132bは、大気開放通路203に設置されるため、インクタンク内よりも敏感にインクを検知することが好ましい。したがって、例えば大気開放通路203を純正インクが満たした状態で検知される抵抗値が15kΩ未満とすると、第2の閾値は、15kΩよりも大きい値に設定されることが好適となる。例えば、仮に、インクタンク100と大気開放通路203に徐々に同じインクを充填した場合、電極ピン132aと132bの方がより早期にインクの存在を検知できるようになっている。より好ましくは、わずかなインクにより電極ピン132aと132b間にインクが付着しても検知できるように第2の閾値は設定されている。これにより、抵抗値の大きいリフィルインクが使用されたり、気泡が混入しても、大気開放通路203にインクが存在する際にこれを検知することが可能になる。
電極ピン216a、216bによりインクタンク内のインク満杯検知を検知できなかった場合でも、対の電極ピン132a、132bにて抵抗値を検知することで、大気開放通路203のインクの存在を検知でき、インクタンク内へのインク供給を停止させることができる。
また、このような事態に陥った場合、インクタンク100としての機能不良に陥るため、マシン本体は故障状態と判断し、本体側のメイン電源が落ちる構造にすることが望ましい。このような追加のインク検知手段を設けることにより、安全性の確保されたマシン構造となる。
図9は、インクジェット記録装置200の機能ブロック図の一例を、図10は、インク供給の停止の手順を示すフローチャート図の一例を、それぞれ示す。図9の機能ブロック図は、制御ユニット23が有するCPUがROMに記憶されたプログラムを実行するか、又は、ASIC等のハードウェアにより実現される。第1判定部110は、インクタンク内の電極ピン216a、216bが検知する抵抗値を第1の閾値と比較し比較結果を出力する。第2判定部130は、大気開放通路203の電極ピン132a、132bが検知する抵抗値を第2の閾値と比較し比較結果を出力する。インク供給判定部は、第1判定部110と第2判定部130の判定結果に基づき、インク供給を継続するか、停止するかを判定する。電源制御部140は、大気開放通路203にインクが存在する場合に、インクジェット記録装置200のメイン電源をオフにする。
図10のフローチャート図は、例えばインクタンク100へのインク供給が開始するとスタートする。したがって、既にインク収容部201のインク残量が所定値以下になり、インクカートリッジ10からインク収容部201へのインク供給がスタートしている。
インクの供給がスタートすると、第1判定部110は、インクタンク内の抵抗値が第1の閾値以下か否かを判定する(S10)。電極ピン216a、216bにより検知された抵抗値が第1の閾値以下の場合(S10のYes)、インク収容部201のインクが満杯状態であることになるので、インク供給停止判定部120はインクの供給を停止する(S20)。
インクタンク内の抵抗値が第1の閾値以下でない場合(S20のNo)、インクタンクにリフィルインクが充填されている可能性や、インクが泡状に充填されている可能性があるので、第2判定部130が大気開放通路203の抵抗値が第2の閾値以下か否かを判定する(S30)。
電極ピン132a、132bにより検知された抵抗値が第2の閾値以下の場合(S30のYes)、大気開放通路203にインクが存在する可能性があるので、インク供給停止判定部120はインクの供給を停止する(S40)。したがって、本実施例では、リフィルインクが充填されていたり、インクが泡状に充填されていても、それを検知してインク供給を停止するのでインク溢れを確実に防止できる。
また、大気開放通路203にインクが存在する場合、電源制御部140はインクジェット記録装置200のメイン電源をオフにする(S50)。すなわち、大気開放通路203にインクが存在するとインクタンク100として機能不良になるおそれが高いので、メイン電源をオフにして印字品質が低下するなどの不都合を引き起こす前にフェールセーフ制御する。なお、操作/表示部5にエラーメッセージを表示したりアラーム音を発してもよい。
インク収容部201が満杯でなく大気開放通路203にインクが存在しない場合(S30のNo)、制御ユニット23はインク供給を継続する(S60)。
以上説明したように、本実施例のインクジェット記録装置200は、インク収容部201のインクが満杯であることを検知でき、かつ、大気開放通路203にインクが存在することを検知するので、インクタンク100からのインク溢れ出しにより、プリンタの破損や記録部材のインク汚れ等の問題が未然に防止できる。
インクジェット記録装置200は、インクタンク100からのインク漏れ以外にも、インク供給チューブ36からの漏れ、製造工程時のインクや充填液漏れが生じうる。また、インクをインクタンク100に充填してからインクジェット記録装置200を出荷する充填出荷時は、他のインクジェット記録装置200からのインク漏れが別のインクジェット記録装置200に浸入するおそれがある。
このようなインクが高圧部に付着すると電気的ショートにより不具合が生じるため、事前に検知することが好ましい。そこで、本実施例のインクジェット記録装置200は、FFC22にインクの付着を検知する活電部310を設けた。
図11は活電部310を有するFFC22の平面図の一例を示す。図では活電部310をキャリッジ33とFFC22の接続部に設けた。FFC22は、平角導体と言われる錫メッキ銅線(以下、単に電線という)をポリエステルフィルムでサンドイッチした構造となっている。側面図に示すように、FFC22の端部は、その一面が電気的な接続用(端子)にむき出しになっており、他方の面にキャリッジ33などのコネクタ等に差し込めるよう補強板が貼り合わせられている。キャリッジ33側の被覆部でない部分を活電部310に適用することができる。
FFC22は、制御用の信号線、電源ライン等、インクの吐出に必要な複数の電線が平行に配線されているが、本実施例ではインクの吐出に関係のない、1対の電線をFFC22内に配線する。この1対の電線とむき出し部により活電部310が構成される。
インクタンク100からのインク漏れ、インク供給チューブ36からの漏れ、製造工程時のインクや充填液漏れ、外部からのインクの侵入時、FFC22に付着したインクは活電部310に到達すると考えられる。このため、活電部310によりインク漏れを検知できる。
なお、活電部310はFFC22とキャリッジ33側の端部でなく、FFC22がたわんでインク液が対流しやすい場所に設けてもよい。また、活電部310はFFC22の複数箇所に設けてもよい。
FFC22は、制御ユニット23に接続されており、実施例1と同様に1対の電線間を短絡するインクの抵抗値、又は、電線間に電流が流れるか否かを検知することができる。例えば、活電部310の電線の一方に電圧を印可して、他方の電線に電流が流れるかにより、活電部310にインクが付着しているか否かを判定する。
図12は、本実施例のインクジェット記録装置200の機能ブロック図の一例を、図13は、インク供給の停止の手順を示すフローチャート図の一例を、それぞれ示す。図12において、図10と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例のインクジェット記録装置200は第3判定部150を有し、第3判定部150は活電部310にインクが付着したか否かを判定する。
そして図13に示すように、インク収容部201が満杯でなくかつ大気開放通路203にインクが存在しなくても、活電部310にインクが付着する(S55のYes)と、インク供給停止判定部120はインクの供給を停止し(S40)、電源制御部140はインクジェット記録装置200のメイン電源をオフにする(S50)。
すなわち、活電部310にインクが付着した場合、高圧ライン等にもインクが付着しショートなどの不具合のおそれがあるので、メイン電源をオフにする。なお、操作/表示部5にエラーメッセージを表示したりアラーム音を発してもよい。
本実施例のインクジェット記録装置200によれば、実施例1の効果に加え、インクタンク内だけでなくインクジェット記録装置内のインク漏れを検知し、電源をオフにするなど適切な対応を施すことができる。
また、本実施例では、インク収容部201のインクの満杯状態、及び、大気開放通路203のインクの存在を判定した後に活電部310へのインクの付着を検知したが、活電部310にインクが付着しているか否かを独立に検知してもよい。
本実施例ではインクタンク100の外側に電極ピン133a、133bを設け、インクタンク100からのインク漏れを検知するインクジェット記録装置200について説明する。
図14は、インクタンク100の外部に設けられた電極ピン133a、133bを示す図の一例である。図14において図5と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。電極ピン133a、133bは、タンク本体202の長手方向に延設された底面から鉛直上向きに設けられる。図では、大気開放機構204側に電極ピン133a、133bを設けたが、インクタンク100の反対側に設けてもよいし、複数箇所に設けてもよい。
例えば、インク供給口部207の反対側の流入口222や大気解放機構204から溢れたインクは、タンク外部を伝って底面方向に流れるので、図示する位置の電極ピン133a、133bの間に滞留することが考えられる。このため、仮にインク収容部201のインクの満杯状態又は大気開放通路203のインクの存在が検知できなかったとしても、電極ピン133a、133bによりインクタンク100の外部でインク漏れを検知できる。
図15は、本実施例のインクジェット記録装置200の機能ブロック図の一例を、図16は、インク供給の停止の手順を示すフローチャート図の一例を、それぞれ示す。図15において、図12と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例のインクジェット記録装置200は第4判定部160を有し、第4判定部160はインクタンク外部の電極ピン133a、133bにインクが付着したか否かを判定する。第4判定部160は、電極ピン133a(又は133b)の一方に電圧を印可して、他方の電極ピン133b(又は133a)に電流が流れるかにより、電極ピン133a、133bにインクが付着しているか否かを判定する。
そして図16に示すように、インク収容部201が満杯でなくかつ大気開放通路203にインクが存在しなくても、電極ピン133a、133bにインクが付着する(S56のYes)と、インク供給停止判定部120はインクの供給を停止し(S40)、電源制御部140はインクジェット記録装置200のメイン電源をオフにする(S50)。
すなわち、インク収容部201の満杯状態又は大気開放通路203のインクの存在が検知されなくても、インクタンク100の外部にインクが付着した時点でインク漏れを検知でき、他の機能に不具合をもたらす前にメイン電源をオフにすることができる。なお、操作/表示部5にエラーメッセージを表示したりアラーム音を発してもよい。
本実施例のインクジェット記録装置200によれば、実施例1の効果に加え、インクタンク外に漏れたインクを早期に検知し、電源をオフにするなど適切な対応を施すことができる。
また、図15,16では、実施例2の活電部310に付着したインクの検知について記載しなかったが、更に、活電部310によりインクの付着を検知してもよい。
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置200は、インクタンク内の複数の場所でインクの有無を検知でき、また、インクジェット記録装置内及びインクタンク外のインク漏れを検知できる。したがって、インクジェット記録装置200の不具合や用紙42のインク汚れ等の問題を未然に防止できる。
インクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図の一例である。
インクジェット記録装置の機構部の概要を示す側面模式的説明図の一例である。
インクジェット記録装置の機構部の要部平面説明図の一例である。
ヘッドタンクの模式的説明図(側面断面図)の一例である。
ヘッドタンクの分解斜視図の一例である。
フィルタユニットの分解斜視図の一例である。
液体吐出ヘッドの底面図の一例である。
インクタンクが有する電極ピンを示す図の一例である。
インクジェット記録装置の機能ブロック図の一例である(実施例1)。
インク供給の停止の手順を示すフローチャート図の一例である(実施例1)。
活電部を有するFFCの平面図の一例である。
インクジェット記録装置の機能ブロック図の一例である(実施例2)。
インク供給の停止の手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
インクタンクの外部に設けられた電極ピンを示す図の一例である。
インクジェット記録装置の機能ブロック図の一例である(実施例3)。
インク供給の停止の手順を示すフローチャート図の一例である(実施例3)。
符号の説明
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
4…カートリッジ装填部
5…操作/表示部
6…カートリッジカバー
10k、10c、10m、10y…インクカートリッジ
22…FFC
24…供給ポンプユニット
31…ガイドロッド
33…キャリッジ
34…液体吐出ヘッド
35…ヘッドタンク
36…インク供給チューブ
51…搬送ベルト
52…搬送ローラ
53…テンションローラ
56…帯電ローラ
71…両面ユニット
72…手差しトレイ
81…維持回復機構
132a,132b…電極ピン
133a,133b…電極ピン
200…インクジェット記録装置
201…インク収容部
202…タンク本体
203…大気開放通路
204…大気開放機構
206…小孔
209…フィルタユニット
216a、216b…電極ピン
310…活電部