JP2010054024A - 自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法 - Google Patents

自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法 Download PDF

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英樹 富田
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Abstract

【課題】車両が長期に亘って使用される場合であっても、ニュートラル制御の実行による車両の燃費改善効果を良好に維持できる自動変速装置の制御装置及び自動変速機の制御方法を提供する。
【解決手段】ECUは、ニュートラル制御の開始条件が成立した場合(ステップS10が肯定判定)、車両の走行距離Dsを検出する(ステップS14)。走行距離Dsが学習再設定閾値KDs未満である場合(ステップS15が肯定判定)、ECUは、EEPROMに記憶される第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理を実行する(ステップS22)。走行距離Dsが学習再設定閾値KDs以上である場合(ステップS15が否定判定)、ECUは、第1目標油圧KPc1を用いない第1ニュートラル制御を実行する(ステップS20)。この際、ECUは、第1目標油圧KPc1を再学習し、EEPROMを更新する。
【選択図】図6

Description

本発明は、自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法に関する。
一般に、車両には、原動機としてのエンジンの回転が伝達される自動変速機が搭載されている。このような自動変速機には、回転伝達機構としてのトルクコンバータと変速機構とが設けられており、該変速機構には、エンジンからトルクコンバータを介して伝達された回転を断・接制御するための入力クラッチが設けられている。この入力クラッチは、自動変速機のレンジが前進走行レンジ(以下、「Dレンジ」という。)である場合には係合状態とされる一方、ニュートラルレンジ(以下、「Nレンジ」という。)である場合には解放状態とされるようになっている。
そのため、車両の停止時に自動変速機のレンジがDレンジである場合には、自動変速機のレンジがNレンジである場合に比して入力クラッチが係合状態であるためにトルクコンバータで生じる負荷が大きくなり、結果として、車両の燃費の悪化を招いていた。そこで、近時では、車両の燃費の向上を図ることができる装置として、例えば特許文献1に記載されるような自動変速機の制御装置が提案されている。
こうした制御装置は、車両が停止状態であると判断した場合に、入力クラッチを介したトルクコンバータ側から変速機構側への回転伝達効率を低減させるニュートラル制御を実行するようになっている。このニュートラル制御は、入力クラッチに対する油圧を減圧して入力クラッチの入力側部材に対する出力側部材の係合力を極力小さくさせる制御である。
すなわち、上記制御装置は、ニュートラル制御の開始条件が成立した場合、入力クラッチに対する油圧を、該入力クラッチを介した上記回転伝達効率が所定効率まで低減するように減圧させるリリース制御を実行する。その後、上記制御装置は、入力クラッチに対する油圧を一定圧に保持させるインニュートラル制御を実行するようになっている。すなわち、インニュートラル制御中では、入力クラッチが半係合状態で維持される。そのため、車両停止時では、入力クラッチを介した回転伝達効率が低効率で維持されるため、トルクコンバータで生じる負荷が低減される結果、車両の燃費が向上していた。
特開2001−165289号公報
ところで、入力クラッチは、車両を長期に亘って使用するに連れて、その特性が摩耗などによって経時的に変化する。そのため、車両の走行距離が例えば「10km」である場合に入力クラッチを半係合状態にするために必要な油圧は、入力クラッチの特定の経時変化によって、車両の走行距離が例えば「10000km」である場合に入力クラッチを半係合状態にするために必要な油圧と異なる可能性がある。そのため、インニュートラル制御にて入力クラッチに対する油圧を予め設定された目標油圧で保持させる制御構成の場合、車両が長期に亘って使用されると、ニュートラル制御による燃費改善効果が低くなってしまうおそれがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が長期に亘って使用される場合であっても、ニュートラル制御の実行による車両の燃費改善効果を良好に維持できる自動変速装置の制御装置及び自動変速機の制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、自動変速機の制御装置にかかる請求項1に記載の発明は、車両に搭載される原動機の回転を変速機構に伝達するための回転伝達機構と、該回転伝達機構から伝達された回転を断・接制御するための入力クラッチとを備える自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、車両が停止状態である場合に、前記入力クラッチを介した前記回転伝達機構側から前記変速機構側への回転伝達効率を車両走行時に比して低減させるニュートラル制御を実行する制御手段を備える自動変速機の制御装置において、前記ニュートラル制御時において前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率を低効率で維持させるための該入力クラッチの流体圧を目標流体圧として学習する学習手段と、該学習手段によって学習された前記目標流体圧を記憶する記憶手段と、車両の使用期間を数値的に示す使用期間数を計測する計測手段と、をさらに備え、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が予め設定された目標圧再設定閾値以上であるときに、前記制御手段は、前記目標流体圧を非使用の状態で前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させるリリース制御と、前記入力クラッチに対する流体圧を前記リリース制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧以下となる流体圧で維持させるインニュートラル制御とを含むニュートラル制御を実行し、前記学習手段は、前記リリース制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧又は該流体圧よりも低圧の流体圧を目標流体圧として学習して前記記憶手段に記憶させることを要旨とする。
上記構成によれば、ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、使用期間数が目標圧再設定閾値以上であるときには、記憶手段に記憶される目標流体圧を用いないニュートラル制御が実行される。この際、記憶手段には、今回実行されるニュートラル制御時においてリリース制御の終了時における入力クラッチに対する流体圧又は該流体圧よりも低圧の流体圧が新たな目標流体圧として記憶される。そのため、これ以降は、入力クラッチの特性が経年的に変化したとしても、該特性の変化に対応した目標流体圧を用いたニュートラル制御が実行される。したがって、車両が長期に亘って使用される場合であっても、目標流体圧を用いたニュートラル制御の実行による車両の燃費改善効果を良好に維持できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、前記制御手段は、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であるときに、前記入力クラッチの流体圧を前記記憶手段に記憶される前記目標流体圧又は該目標流体圧から設定圧を減圧した流体圧まで減圧させるリリース制御を実行した後、前記入力クラッチを一定圧に保持させるインニュートラル制御を実行することを要旨とする。
上記構成によれば、使用期間数が目標圧再設定閾値未満である場合には、入力クラッチの特性が現時点の目標流体圧を記憶手段に記憶させてからあまり変化していないと判断され、該記憶手段に記憶される目標流体圧を用いたニュートラル制御が実行される。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自動変速機の制御装置において、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値以上であるときに、前記制御手段は、前記目標流体圧を非使用の状態で前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させる前記リリース制御が終了した後、前記入力クラッチに対する流体圧を変動させる回転伝達効率確認制御を実行し、該回転伝達効率確認制御により前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率が低効率として予め設定された所定状態であると判定した場合、前記入力クラッチに対する流体圧を、前記回転伝達効率確認制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧、又は、該入力クラッチに対する流体圧から設定圧を減圧させた流体圧で維持させるインニュートラル制御を実行し、前記学習手段は、前記回転伝達効率確認制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧を目標流体圧として学習して前記記憶手段に記憶させることを要旨とする。
上記構成によれば、使用期間数が目標圧再設定閾値以上である場合、目標流体圧を用いないリリース制御後のインニュートラル制御では回転伝達効率確認制御が実行される。そして、入力クラッチに対する流体圧は、回転伝達効率確認制御の終了時における入力クラッチの流体圧、又は、該入力クラッチに対する流体圧から設定圧を減圧した流体圧で保持される。そして、記憶手段には、回転伝達効率確認制御の終了時における入力クラッチに対する流体圧が目標流体圧として記憶される。そのため、目標流体圧を用いたニュートラル制御の実行時には、インニュートラル制御中において、入力クラッチの入力側部材に対する出力側部材の位置関係を一定にすることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の自動変速機の制御装置において、前記入力クラッチの入力側回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記回転伝達効率確認制御時において、前記入力クラッチに対する流体圧を予め設定された所定圧力範囲内で変動させ、該回転伝達効率確認制御の実行時において前記回転数検出手段によって検出された前記入力クラッチの入力側回転数の変動量が予め設定された回転数閾値以下である場合に、前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率が前記所定状態であると判定することを要旨とする。
上記構成によれば、回転伝達効率確認制御では、入力クラッチに対する流体圧を所定圧力範囲内で変動させ、該流体圧の変動に基づく入力クラッチの入力側回転数の変動量が検出される。そして、この検出結果が回転数閾値以下である場合に、入力クラッチを介した回転伝達効率が所定状態であると判定される。すなわち、本発明の回転伝達効率確認制御は、入力クラッチの入力側部材に対する出力側部材の係合力が小さいほど該入力クラッチを介した回転伝達効率が低減し、上記流体圧の変動に応じた入力クラッチの入力側回転数の変動量が少なくなるという作用を利用している。そのため、インニュートラル制御中における入力クラッチの入力側部材と出力側部材との位置関係が、好適に調整される。
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の自動変速機の制御装置において、前記入力クラッチに対して流体圧を発生させるための流体の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であると共に、前記温度検出手段によって検出された流体の温度が予め設定された設定温度領域範囲内であるときに、前記入力クラッチの流体圧を前記記憶手段に記憶される前記目標流体圧又は該目標流体圧から前記設定圧を減圧した流体圧まで減圧させるリリース制御を実行した後、前記入力クラッチの流体圧を一定圧に保持させるインニュートラル制御を実行することを要旨とする。
上記構成によれば、流体の温度が、車両の燃費改善効果が大きいと判断される設定温度領域範囲内である場合には、入力クラッチの流体圧を目標流体圧又は該目標流体圧から設定圧を減圧した流体圧まで減圧させ、その後、一定圧に保持させるニュートラル制御が実行される。そのため、使用期間数が目標圧再設定閾値未満である場合には、目標流体圧を用いたニュートラル制御の実行によって確実に燃費を向上させることが可能になる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の自動変速機の制御装置において、前記制御手段は、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であると共に、前記温度検出手段によって検出された流体の温度が前記設定温度領域範囲内であるときに、前記入力クラッチに対する流体圧を前記記憶手段から読み出された前記目標流体圧まで減圧させ、その後、前記入力クラッチに対する流体圧を前記目標流体圧から前記設定圧を減圧させるリリース制御を実行することを要旨とする。
上記構成では、リリース制御時において、入力クラッチに対する流体圧は、2段階に分けて減圧される。そのため、入力クラッチに対する流体圧の1段階ごとの減圧度合は、入力クラッチに対する流体圧を目標流体圧から設定圧を減算した流体圧まで1回で一気に減圧させる場合に比して少なくなる。そのため、リリース制御の実行によって、係合状態にある入力クラッチを半係合状態又は解放状態にする際に該入力クラッチから発生する振動を低減させることが可能になる。
請求項7に記載の発明は、請求項2、請求項5及び請求項6のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置において、前記入力クラッチに対して流体圧を発生させるための流体の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段によって検出された前記流体の温度が低いほど前記設定圧を小さな値に設定する温度設定圧設定手段と、をさらに備えたことを要旨とする。
一般に、流体の粘性は、該流体の温度が低いほど高くなる。すなわち、流体の温度が低いほど、制御手段などからの制御指令に応じた入力クラッチに対する実際の流体圧(以下、「実流体圧」という。)の変動速度が遅くなる。そこで、本発明では、設定圧は、流体の温度が低いほど小さな値に設定される。そのため、設定圧を用いたニュートラル制御では、流体の温度に関係なく、入力クラッチに対する実流体圧を速やかに一定圧(即ち、目標流体圧から設定圧を減算した圧力)で保持させることができる。また、ニュートラル制御を終了させる際には、流体の温度に関係なく、入力クラッチに対する実流体圧を該入力クラッチが係合状態になるような圧力まで速やかに増圧させることができる。そのため、車両の速やかな発進に貢献できる。
請求項8に記載の発明は、請求項2及び請求項5〜請求項7のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置において、前記入力クラッチに対する流体圧を検出する流体圧検出手段と、前記リリース制御の実行前に前記流体圧検出手段によって検出された流体圧が低圧であるほど前記設定圧を小さい値に設定する流体圧設定圧設定手段と、をさらに備えたことを要旨とする。
一般に、ニュートラル制御が実行される前の入力クラッチに対する流体圧が低圧であるほど、入力クラッチに対する実流体圧と、制御手段などによって設定された制御指令値との差分が大きくなる傾向が見られる。具体的には、実流体圧は、制御指令値に基づく流体圧よりも低圧になる傾向が見られる。そこで、本発明では、設定圧は、ニュートラル制御が実行される前の入力クラッチに対する流体圧が低圧であるほど小さな値に設定される。そのため、ニュートラル制御が実行される前の入力クラッチに対する実流体圧の大きさによって、入力クラッチに対する流体圧が一定圧に保持される際における該入力クラッチに対する実流体圧の大きさが変わってしまうことが抑制される。したがって、本発明のニュートラル制御の実行に基づく燃費改善効果が、ニュートラル制御が実行される前の入力クラッチに対する流体圧の大きさによって変わってしまうことが抑制される。また、ニュートラル制御を終了させる際には、ニュートラル制御が実行される前の入力クラッチに対する流体圧の大きさに関係なく、入力クラッチに対する実流体圧を、該入力クラッチが係合状態になるような圧力まで速やかに増圧させることができる。すなわち、車両の速やかな発進に貢献できる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置において、前記計測手段は、車両の走行距離を使用期間数として計測することを要旨とする。
一般に、車両の走行距離の長さに応じて入力クラッチの摩耗などに起因した経年的な変化具合が大きくなる。そこで、本発明では、車両の走行距離に応じて記憶手段に記憶される目標流体圧が更新される。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置において、前記計測手段は、車両の走行する時間の合計を使用期間数として計測することを要旨とする。
一般に、車両の走行する時間の合計が多いほど入力クラッチの摩耗などに起因した経年的な変化具合が大きくなる。そこで、本発明では、車両の走行する時間の合計に応じて記憶手段に記憶される目標流体圧が更新される。
一方、自動変速機の制御方法にかかる請求項11に記載の発明は、車両に搭載される原動機の回転を変速機構に伝達するための回転伝達機構と、該回転伝達機構から伝達された回転を断・接制御するための入力クラッチとを備える自動変速機の制御方法であって、車両の停止時において、前記入力クラッチを介した前記回転伝達機構側から前記変速機構側への回転伝達効率を車両走行時に比して低減させるニュートラル制御の開始条件が成立した場合に、前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率が低減されるように前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させるリリースステップと、該リリースステップの実行後、前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率を低効率で維持させるインニュートラルステップと、を有する自動変速機の制御方法において、前記インニュートラルステップにて前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率を低効率で維持させるための該入力クラッチの流体圧を目標流体圧として学習して記憶手段に記憶させる学習ステップと、車両の使用期間を数値的に示す使用期間数を計測させる計測ステップと、をさらに有し、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測ステップにて計測した使用期間数が予め設定された目標圧再設定閾値以上であるときに、前記リリースステップでは、前記目標流体圧を非使用の状態で前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させ、前記インニュートラルステップでは、前記入力クラッチに対する流体圧を前記リリースステップの終了時における前記入力クラッチに対する流体圧以下となる流体圧で保持させ、前記学習ステップでは、前記リリースステップの終了時における前記入力クラッチに対する流体圧又は該流体圧よりも低圧の流体圧を目標流体圧として学習して前記記憶手段に記憶させることを要旨とする。
上記構成によれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を得ることができる。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の自動変速機の制御方法において、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測ステップにて計測した使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であるときに、前記リリースステップでは、前記入力クラッチの流体圧を前記記憶手段に記憶される前記目標流体圧又は該目標流体圧よりも設定圧だけ低圧の流体圧まで減圧させると共に、前記インニュートラルステップでは、前記入力クラッチを一定圧に保持させ、さらに、前記学習ステップの実行を規制することを要旨とする。
上記構成によれば、請求項2に記載の発明と同等の作用効果を得ることができる。
本発明を車両に搭載される自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法に具体化した一実施形態を図1〜図12に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の自動変速機11は、前進5段後進1段の自動変速機である。この自動変速機11は、動力伝達方向における上流側となる原動機としてのエンジン10側から下流側となる駆動輪側に向けて順に配置された、回転伝達機構としてのトルクコンバータ12、3速主変速機構13、3速副変速機構14及びディファレンシャル機構15を備えている。そして、これら各機構12〜15は、トランスミッションケース16内にそれぞれ収納されている。このトランスミッションケース16内には、エンジン10側から延設されたクランクシャフト10aと整列して配置された、第1軸(以下、「入力軸」と示す。)17、該入力軸17と平行な第2軸(以下、「カウンタ軸」と示す。)18及び第3軸19(左右の前輪の車軸であって、「左右前車軸19l、19r」と示す。)が回転自在に支持されている。
トルクコンバータ12内には、クランクシャフト10aに連結されたポンプインペラ21、ステータ22及びタービン23が設けられている。そして、エンジン10(クランクシャフト10a)の回転に基づきポンプインペラ21が回転した場合に、該回転がトルクコンバータ12内の流体としての作動油を介してタービン23に伝達されることにより、エンジン10の回転が3速主変速機構13に伝達される。また、トルクコンバータ12内には、ロックアップクラッチ24が設けられている。このロックアップクラッチ24が係合した場合には、該ロックアップクラッチ24を介してポンプインペラ21とタービン23とが機械的に接続される。そのため、エンジン10の回転は、作動油を介することなく3速主変速機構13に直接伝達される。
3速主変速機構13は、シンプルプラネタリギヤ30及びダブルピニオンプラネタリギヤ31を有するプラネタリギヤユニット32を備えている。シンプルプラネタリギヤ30は、サンギヤS1、リングギヤR1、及びこれら各ギヤS1,R1に噛合するピニオンP1を支持する共通キャリヤCRを備えた構成とされている。一方、ダブルピニオンプラネタリギヤ31は、サンギヤS2、リングギヤR2、及びシンプルプラネタリギヤ30の構成要素でもある共通キャリヤCRを備えた構成とされている。この共通キャリヤCRは、サンギヤS2に噛合するピニオンP1aとリングギヤR2に噛合するピニオンP2とを、該各ピニオンP1a,P2が相互に噛合した状態で支持している。
そして、エンジン10の回転がトルクコンバータ12を介して伝達される入力軸17は、プラネタリギヤユニット32に対し、入力クラッチとしての第1クラッチC1を介してシンプルプラネタリギヤ30のリングギヤR1に連結し得ると共に、第2クラッチC2を介してサンギヤS1に連結し得る。また、ダブルピニオンプラネタリギヤ31のサンギヤS2は、第1ブレーキB1にて直接係止し得ると共に、第1ワンウェイクラッチF1を介して第2ブレーキB2にて係止し得る。また、ダブルピニオンプラネタリギヤ31のリングギヤR2は、第3ブレーキB3及び第2ワンウェイクラッチF2にて係止し得る。そして、共通キャリヤCRは、3速主変速機構13の出力部材であるカウンタドライブギヤ33に連結されている。
3速副変速機構14は、第1シンプルプラネタリギヤ36、第2シンプルプラネタリギヤ37及び出力ギヤ35を備え、これら各ギヤ35,36,37は、カウンタ軸18の軸線方向における一方側(図1では右側)から他方側(図1では左側)に向けて順に配置されている。第1シンプルプラネタリギヤ36は、リングギヤR3、サンギヤS3及びピニオンP3を備えた構成とされ、リングギヤR3には、3速主変速機構13のカウンタドライブギヤ33に噛合するカウンタドリブンギヤ38が連結されている。また、サンギヤS3は、カウンタ軸18に回転自在に支持されると共に、ピニオンP3は、カウンタ軸18に一体に連結されたフランジからなるキャリヤCR3に支持されている。このキャリヤCR3は、UDダイレクトクラッチC3のインナハブに連結されている。
第2シンプルプラネタリギヤ37は、サンギヤS4、リングギヤR4及びピニオンP4を備えた構成とされている。サンギヤS4は、第1シンプルプラネタリギヤ36のサンギヤS4に連結されると共に、リングギヤR4は、カウンタ軸18に連結されている。そして、第1シンプルプラネタリギヤ36のキャリヤCR3と各サンギヤS3,S4との間には、UDダイレクトクラッチC3が配置され、各サンギヤS3,S4は、バンドブレーキからなる第4ブレーキB4にてそれぞれ係止し得る。さらに、ピニオンP4は、キャリヤCR4に支持され、該キャリヤCR4は、第5ブレーキB5にて係止し得る。
なお、上述した各ブレーキB1〜B5及び第2ワンウェイクラッチF2は、トランスミッションケース16の内側面にそれぞれ取着されている。
ディファレンシャル機構15は、3速副変速機構14の出力ギヤ35に噛合するリングギヤ39を備えている。そして、出力ギヤ35側からリングギヤ39を介して伝達された回転は、左右に分岐されて左右前車軸19l,19rにそれぞれ伝達される。
以上のように構成された自動変速機11では、図2に示すように、後述する油圧制御回路40(図3参照)による油圧の制御により、各クラッチC1〜C3,F1,F2及び各ブレーキB1〜B5が選択的に係脱及び作動する。すなわち、各レンジでは、図2に示す作動表において「○」が付されたクラッチ及びブレーキが係合状態になり、エンジンブレーキ時には、図2の作動表において「△」が付されたブレーキが係合状態になる。例えば、前進走行レンジ(以下、「Dレンジ」という。)において変速段が第1速(1ST)である場合、第1クラッチC1、第5ブレーキB5及び第2ワンウェイクラッチF2がそれぞれ係合状態になる。また、第1速でのエンジンブレーキ時には、第3ブレーキB3が係合状態になる。なお、他の変速段や後進走行レンジ(以下、「REVレンジ」という。)の場合については、その記載を省略するものとする。
次に、自動変速機11の油圧制御回路40について図1及び図3に基づき説明する。なお、図3では、第1クラッチC1の係脱に関係する部分のみ図示している。
図3に示すように、調圧機構としての油圧制御回路40は、自動変速機11の下方に配置される図示しないバルブボディ内に形成されている。そして、油圧制御回路40は、ポンプインペラ21の回転によって駆動するオイルポンプ41の駆動に基づき、図示しないオイルタンクから作動油が供給されるように構成されている。また、油圧制御回路40には、オイルポンプ41に接続された、マニュアルバルブ42、プライマリレギュレータバルブ43及びモジュレータバルブ44が設けられている。このモジュレータバルブ44には、リニアソレノイド弁45,46が接続されており、リニアソレノイド弁45にはコントロールバルブ47が接続されている。このコントロールバルブ47には、第1クラッチC1の係脱を制御するための油圧サーボC−1が接続されている。
そして、オイルポンプ41の駆動に基づき発生した作動油圧は、プライマリレギュレータバルブ43によってライン圧に調圧された後に、マニュアルバルブ42及びモジュレータバルブ44にそれぞれ供給される。すると、モジュレータバルブ44ではライン圧が減圧され、該減圧されたライン圧が、各リニアソレノイド弁45,46の入力ポート45a,46aに供給される。このようにライン圧が供給された各リニアソレノイド弁45,46では、それぞれの通電態様に対応した制御油圧が生成される。そして、リニアソレノイド弁45で生成された制御油圧は、出力ポート45bを介してコントロールバルブ47に出力されると共に、リニアソレノイド弁46で生成された制御油圧は、出力ポート46bを介してプライマリレギュレータバルブ43に出力される。
また、コントロールバルブ47には、その入力ポート47aを介してマニュアルバルブ42からライン圧が供給され、該ライン圧は、ポート47bに入力されるリニアソレノイド弁45からの制御油圧に基づき往復動するスプール47cにより調圧され、ポート47dから油圧サーボC−1に供給される。すなわち、リニアソレノイド弁45の通電に対応して油圧サーボC−1に供給される作動油圧が調圧されることにより、第1クラッチC1の係脱に関する制御が行われる。
本実施形態の油圧制御回路40は、上記オイルタンク側からの作動油の流入部の大きさが油圧サーボC−1への流出部の大きさよりも小さくなるように構成されている。そのため、油圧制御回路40内に十分な作動油が貯留される場合、油圧サーボC−1内の実際の作動油圧(以下、「実作動油圧」という。)は、油圧制御回路40の駆動に基づく制御指令値(「第1作動油圧」ともいう。)に追随して速やかに調圧される。一方、油圧制御回路40内に十分な作動油が貯留されていない場合、油圧制御回路40が油圧サーボC−1内に適量以下の作動油しか供給できない可能性があり、油圧サーボC−1内の実際の作動油圧(以下、「実作動油圧」という。)は、油圧制御回路40の駆動に基づく制御指令値よりも低圧になる可能性がある。すなわち、油圧制御回路40内に貯留される作動油が少ないほど、制御指令値と実作動油圧との油圧差が大きくなる傾向が見られる。
次に、自動変速機11の駆動を制御する制御装置としての電子制御装置(以下、「ECU」という。)について図4に基づき以下説明する。
図4に示すように、ECU50は、入力側インターフェース(図示略)と、出力側インターフェース(図示略)と、CPU51、ROM52、RAM53及び記憶手段としてのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory )54などを備えたデジタルコンピュータと、各機構を駆動させるための駆動回路とを主体として構成されている。ECU50の入力側インターフェースには、エンジン10(クランクシャフト10a)の回転数(以下、「エンジン回転数」という。)を検出するためのエンジン回転数センサSE1、入力軸17の回転数(以下、「入力軸回転数」という。)を検出するための入力軸回転数センサSE2、及び油圧サーボC−1に供給される作動油の油温(温度)を検出するための油温センサSE3が電気的に接続されている。また、入力側インターフェースには、図示しないブレーキペダルが踏込み操作された場合に「オン」信号を出力するブレーキスイッチSW1、車両の車体速度(以下、「車速」と略記する。)を検出するための車速センサSE4、自動変速機11のシフトレンジを検出するためのシフトポジションセンサSE5、及び図示しないアクセルペダルのスロットル開度を検出するためのスロットル開度センサSE6が電気的に接続されている。
一方、ECU50の出力側インターフェースには、各リニアソレノイド弁45,46(即ち、油圧制御回路40)が電気的に接続されている。そして、ECU50は、各種センサSE1〜SE6及びブレーキスイッチSW1からの各種検出信号に基づき、油圧制御回路40の駆動を制御する。
デジタルコンピュータにおいて、ROM52には、油圧制御回路40を介して自動変速機11を制御するための各種の制御プログラム(後述するニュートラル制御処理等)、各種マップ(図5に示すマップ等)及び各種閾値(後述する学習再設定閾値、学習判定閾値、第1油温閾値、第2油温閾値、変動量閾値、第1減圧時間等)などが記憶されている。また、RAM53には、車両の図示しないイグニッションスイッチの「オン」中に適宜書き換えられる各種の情報(後述する第1作動油圧、油温、設定圧、変動量等)などがそれぞれ記憶される。また、EEPROM54には、上記イグニッションスイッチが「オフ」になっても消去されるべきではない各種の情報(後述する走行距離、第1目標油圧等)などが記憶される。
次に、ROM52に記憶されるマップについて図5に基づき説明する。
図5に示すマップは、後述する設定圧Poff(図6参照)を設定するためのマップである。図5に示すように、設定圧Poffは、後述するリリース制御が開始される直前で油圧サーボC−1に供給される第1作動油圧(第1クラッチC1に対する流体圧)Pc1が高圧であるほど大きな値に設定されると共に、油圧サーボC−1に供給される作動油の油温Tfが高温であるほど大きな値に設定される。すなわち、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1未満であると共に、第1作動油圧Pc1が第1油圧閾値KPc11である場合、第1設定圧Poff11に設定される。また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1以上であって且つ該第1油温閾値KT1よりも高温の第2油温閾値KT2以下であると共に、第1作動油圧Pc1が第1油圧閾値KPc11である場合、第1設定圧Poff11よりも高圧の第2設定圧Poff12に設定される。さらに、設定圧Poffは、油温Tfが第2油温閾値KT2よりも高温であると共に、第1作動油圧Pc1が第1油圧閾値KPc11である場合、第2設定圧Poff12よりも高圧の第3設定圧Poff13に設定される。
また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1未満であると共に、第1作動油圧Pc1が第1油圧閾値KPc11よりも高圧の第2油圧閾値KPc12である場合、第1設定圧Poff11と同等の第4設定圧Poff21に設定される。また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1以上であって且つ第2油温閾値KT2以下であると共に、第1作動油圧Pc1が第2油圧閾値KPc12である場合、第2設定圧Poff12と同等の第5設定圧Poff22に設定される。さらに、設定圧Poffは、油温Tfが第2油温閾値KT2よりも高温であると共に、第1作動油圧Pc1が第2油圧閾値KPc12である場合、第3設定圧Poff13と同等の第6設定圧Poff23に設定される。
また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1未満であると共に、第1作動油圧Pc1が第2油圧閾値KPc12よりも高圧の第3油圧閾値KPc13である場合、第4設定圧Poff21よりも高圧の第7設定圧Poff31に設定される。また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1以上であって且つ第2油温閾値KT2以下であると共に、第1作動油圧Pc1が第3油圧閾値KPc13である場合、第5設定圧Poff22よりも高圧の第8設定圧Poff32に設定される。さらに、設定圧Poffは、油温Tfが第2油温閾値KT2よりも高温であると共に、第1作動油圧Pc1が第3油圧閾値KPc13である場合、第6設定圧Poff23よりも高温の第9設定圧Poff33に設定される。
また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1未満であると共に、第1作動油圧Pc1が第3油圧閾値KPc13よりも高圧の第4油圧閾値KPc14である場合、第7設定圧Poff31よりも高圧の第10設定圧Poff41に設定される。また、設定圧Poffは、油温Tfが第1油温閾値KT1以上であって且つ第2油温閾値KT2以下であると共に、第1作動油圧Pc1が第4油圧閾値KPc14である場合、第8設定圧Poff32よりも高圧の第11設定圧Poff42に設定される。さらに、設定圧Poffは、油温Tfが第2油温閾値KT2よりも高温であると共に、第1作動油圧Pc1が第4油圧閾値KPc14である場合、第9設定圧Poff33よりも高温の第12設定圧Poff43に設定される。
次に、本実施形態のECU50が実行する各種制御処理のうちニュートラル制御処理ルーチンについて、図6に示すフローチャートと図10〜図12に示すタイミングチャートとに基づき説明する。なお、ニュートラル制御とは、第1クラッチC1を介したトルクコンバータ12側から3速主変速機構13側への回転伝達効率を車両走行時に比して低減させ、車両の燃費向上を図る制御である。また、図10に示すタイミングチャートは、後述する第1ニュートラル制御処理(即ち、従来のニュートラル制御処理)が実行されたときのタイミングチャートであり、図11に示すタイミングチャートは、後述する第2ニュートラル制御処理が実行されたときのタイミングチャートである。また、図12に示すタイミングチャートは、後述する第3ニュートラル制御処理が実行されたときのタイミングチャートである。
さて、ECU50は、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、予め設定された所定周期毎にニュートラル制御処理ルーチンを実行する。このニュートラル制御処理ルーチンにおいて、ECU50は、ニュートラル制御の開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS10)。具体的には、ECU50は、車速センサSE4からの検出信号に基づき車速を検出すると共に、スロットル開度センサSE6からの検出信号に基づき上記アクセルペダルのスロットル開度を検出する。そして、ECU50は、シフトポジションセンサSE5からの検出信号に基づき自動変速機11のレンジがDレンジであること、ブレーキスイッチSW1が「オン」であること、車両の車速がほぼ「0(零)km/h」であること、及び上記アクセルペダルのスロットル開度が「0(零)」であることが全て成立するか否かを判定する。そして、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、ECU50は、上述した4つの条件のうち少なくとも1つの条件が非成立であるため、ニュートラル制御処理ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、ECU50は、ニュートラル制御の開始条件が成立したと判断し、油圧制御回路40の駆動に基づき油圧サーボC−1に供給される作動油圧を第1作動油圧Pc1として検出する(ステップS11)。この第1作動油圧Pc1は、油圧制御回路40によって調圧される制御指令値である。こうした第1作動油圧Pc1は、油圧サーボC−1内の実作動油圧を検出するためのセンサを設けなくても、油圧制御回路40の駆動に応じたパターメータなどを演算式に代入することにより算出可能である。したがって、本実施形態では、ECU50が、流体圧検出手段としても機能する。
続いて、ECU50は、油温センサSE3からの検出信号に基づき油圧サーボC−1に供給される作動油の油温Tfを検出する(ステップS12)。したがって、本実施形態では、ECU50が、温度検出手段としても機能する。そして、ECU50は、図5に示すマップにステップS12,S13で検出した第1作動油圧Pc1と油温Tfとを代入して設定圧Poffを設定する(ステップS13)。例えば、油温Tfが第1油温閾値KT1よりも高温であって且つ第2油温閾値KT2よりも低温の所定温度であって、且つ第1作動油圧Pc1が第3油圧閾値KPc13である場合、設定圧Poffは、図5に示すマップを参照して第8設定圧Poff32に設定される。また、油温Tfが上記所定温度であって、且つ第1作動油圧Pc1が第2油圧閾値KPc12よりも高圧であって且つ第3油圧閾値KPc13よりも低圧の所定油圧である場合、設定圧Poffは、第5設定圧Poff22よりも大きく且つ第8設定圧Poff32未満の油圧に設定される。すなわち、本実施形態では、設定圧Poffは、油圧閾値KPc11〜KPc14の間で線形補完される。したがって、本実施形態では、ECU50が、温度設定圧設定手段及び流体圧設定圧設定手段としても機能する。
ここで、図10、図11及び図12の各タイミングチャートに示すように、後述するリリース制御が実行される直前の第1タイミングt11,t21,t31では、第1作動油圧Pc1が検出されると共に、油圧サーボC−1に供給される作動油の油温Tfが検出される。さらに、本実施形態では、第1タイミングt11,t21、t31で設定圧Poffが設定される。
図6のフローチャートに戻り、ECU50は、車両の使用期間を数値的に示す使用期間数として車両の走行距離Dsを検出するための走行距離検出処理を実行する(ステップS14)。具体的には、ECU50は、入力軸回転数センサSE2からの検出信号に基づき入力軸17の入力軸回転数Nc1を検出すると共に、現時点の自動変速機11の変速段(例えば第4速(4th))を検出する。そして、ECU50は、検出した入力軸回転数Nc1に対して変速段に対応したギヤ比を乗算し、該乗算結果を用いて所定周期での走行距離(以下、「単位走行距離」という。)を算出する。その後、ECU50は、最後に更新された走行距離Dsに単位走行距離を積算し、該積算結果を最新の走行距離DsとしてEEPROM54を記憶させる。したがって、本実施形態では、所定周期毎の単位走行距離を積算して走行距離Dsを求めるECU50が、計測手段としても機能する。また、ステップS14が、計測ステップに相当する。
そして、ECU50は、ステップS14にて検出した走行距離Dsが予め設定された学習再設定閾値(目標圧再設定閾値)KDs未満であるか否かを判定する(ステップS15)。この学習再設定閾値KDsは、後述する第1目標油圧KPc1が最後に設定されてからの第1クラッチC1の摩耗などに起因して第1目標油圧KPc1の再設定が必要であるか否かを判断するための基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS15の判定結果が否定判定(Ds≧KDs)である場合、ECU50は、第1目標油圧KPc1の再設定が必要であると判断し、その処理を後述するステップS18に移行する。
一方、ステップS15の判定結果が肯定判定(Ds<KDs)である場合、ECU50は、EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されているか否かを判定する(ステップS16)。この判定結果が否定判定である場合、ECU50は、EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されていないため、ステップS12にて検出した作動油の油温Tfが予め設定された学習判定閾値KTfs以上であるか否かを判定する(ステップS17)。この学習判定閾値KTfsは、車両の暖機運転が完了して作動油の特性(特に粘性)が安定状態であるか否かを判断するための基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。また、学習判定閾値KTfsは、後述する設定温度領域範囲内の温度に設定されることが望ましい。
ステップS17の判定結果が否定判定(Tf<KTfs)である場合、ECU50は、作動油の特性が未だ安定状態ではないと判断し、その処理を後述するステップS20に移行する。一方、ステップS17の判定結果が肯定判定(Tf≧KTfs)である場合、ECU50は、その処理を次のステップS18に移行する。
ステップS18において、ECU50は、学習フラグFlg1を「オン」にセットし、その処理を後述するステップS20に移行する。
その一方で、ステップS16の判定結果が肯定判定である場合、ECU50は、ステップS12にて検出した作動油の油温Tfが、予め設定された設定温度領域範囲の下限値である第1油温閾値KTf1以上であるか否かを判定する(ステップS19)。作動油の粘性は、その油温Tfが低いほど高くなる。そのため、油温Tfが第1油温閾値KTf1未満である場合には、作動油の粘性が高すぎて制御指令値(第1作動油圧Pc1)に対する実作動油圧RPc1(図10参照)の即応性が低くなる可能性がある。そして、ステップS19の判定結果が否定判定(Tf<KTf1)である場合、ECU50は、その処理を次のステップS20に移行する。
ステップS20において、ECU50は、図7に詳述する第1ニュートラル制御処理を実行する。この第1ニュートラル制御処理では、第1クラッチC1に供給される第1作動油圧Pc1を減圧させて第1クラッチC1を介した回転伝達効率を低減させる第1リリース制御(他のリリース制御)と、第1クラッチC1を介した回転伝達効率を低効率で維持させる第1インニュートラル制御(低温時インニュートラル制御、他のインニュートラル制御)とが実行される。したがって、本実施形態では、ECU50が、制御手段としても機能する。その後、ECU50は、その処理を後述するステップS24に移行する。
一方、ステップS19の判定結果が肯定判定(Tf≧KTf1)である場合、ECU50は、作動油の粘性が比較的低いと判断し、ステップS12にて検出した作動油の油温Tfが上記設定温度領域範囲の上限値である第2油温閾値KTf2以下であるか否かを判定する(ステップS21)。この判定結果が肯定判定(KTf1≦Tf≦KTf2)である場合、ECU50は、第1ニュートラル制御処理とは内容が異なる第2ニュートラル制御処理(図8に詳述する。)を実行する(ステップS22)。この第2ニュートラル制御処理では、第1リリース制御とは異なる第2リリース制御が実行された後、第1インニュートラル制御とは異なる第2インニュートラル制御が実行される。その後、ECU50は、その処理を後述するステップS24に移行する。
一方、ステップS21の判定結果が否定判定(Tf>KTf2)である場合、ECU50は、作動油の粘性が低すぎると判断し、第1及び第2ニュートラル制御とは異なる第3ニュートラル制御を実行する(ステップS23)。この第3ニュートラル制御では、第1リリース制御が実行された後、第1及び第2インニュートラル制御とは異なる第3インニュートラル制御(高温時インニュートラル制御)が実行される。その後、ECU50は、その処理を次のステップS24に移行する。
ステップS24において、ECU50は、ニュートラル制御の終了条件が成立したか否かを判定する。すなわち、ステップS24では、シフトポジションセンサSE5からの検出信号に基づき自動変速機11のレンジがDレンジであること、ブレーキスイッチSW1が「オン」であること、車速がほぼ「0(零)km/h」であること、及び上記アクセルペダルのスロットル開度が「0(零)」であることのうち少なくとも1つが非成立になったか否かが判定される。
ステップS24の判定結果が否定判定である場合、ECU50は、ステップS24の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS24の判定処理を繰り返し実行する(即ち、インニュートラル制御に基づき第1作動油圧Pc1が一定圧に保持される)。一方、ステップS24の判定結果が肯定判定である場合、ECU50は、車両の運転手が該車両を発進させる可能性があると判断し、第1クラッチC1を介した回転伝達効率を高くするためのアプライ制御が実行される(ステップS25)。そして、ECU50は、アプライ制御が終了すると、ニュートラル制御処理ルーチンを一旦終了する。
すなわち、図10、図11及び図12の各タイミングチャートに示すように、第7タイミングt17,t27,t37では、第1作動油圧Pc1が一気に増圧され、その後、徐々に増圧される。その結果、実作動油圧RPc1が増圧され、第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の係合力が大きくなる。そして、第1クラッチC1が係合状態になった時点(第8タイミングt18,t28,t38)で第1作動油圧Pc1が保持される。
次に、上記ステップS20の第1ニュートラル制御処理(第1ニュートラル制御処理ルーチン)について、図7に示すフローチャート及び図10に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、第1ニュートラル制御処理ルーチンにおいて、ECU50は、油圧サーボC−1に供給される第1作動油圧Pc1を減圧させ、係合状態にあった第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の係合力を低下させる第1リリース制御を実行する(ステップS30)。この第1リリース制御は、上記第1目標油圧KPc1を非使用の状態で第1作動油圧Pc1を減圧させる他のリリース制御である。
すなわち、図10のタイミングチャートに示すように、第1リリース制御が第1タイミングt11の直後から実行されると、第1作動油圧Pc1の減圧に追随して油圧サーボC−1内の実作動油圧RPc1が減圧される。そして、実作動油圧RPc1の減圧によって第1クラッチC1の係合力が徐々に弱くなる(即ち、回転伝達効率が低下する)ことにより、入力軸17に加わる負荷が徐々に低減される。その結果、エンジン回転数センサSE1からの検出信号に基づきECU50によって検出されるエンジン10のエンジン回転数Neと、入力軸回転数センサSE2からの検出信号に基づきECU50によって検出される入力軸17の入力軸回転数Nc1との差回転Nは、徐々に大きくなる。そして、リリース制御開始後の第2タイミングt12からは、入力軸17の入力軸回転数Nc1が徐々に上昇して差回転Nが小さくなる。そして、その後の第3タイミングt13では、第1クラッチC1がストロークニアエンド状態になったと判断され、第1リリース制御が終了する。なお、ニュートラル制御中は、図示しないアクセルペダルが踏込み操作されないため、エンジン回転数Neは、一定回転数になる。
図7のフローチャートに戻り、ECU50は、従来の場合と同様の第1インニュートラル制御を実行する(ステップS31)。具体的には、ECU50は、第1クラッチC1を介した回転伝達効率が低効率として予め設定された所定状態であるか否かを確認するための回転伝達効率確認制御処理を、所定時間の間、実行する(ステップS31−1)。すなわち、ステップS31−1では、第1クラッチC1が本当にストロークニアエンド状態であるか否かが判定される。
ここで、図10のタイミングチャートに示すように、回転伝達効率確認制御処理では、第1作動油圧Pc1が変動油圧D1だけ増圧され、その後、第1作動油圧Pc1が変動油圧D1だけ減圧される(第4タイミングt14)。すると、こうした第1作動油圧Pc1の微少変動に少し遅れて実作動油圧RPc1が微少変動し、入力軸17の入力軸回転数Nc1は、少しだけ低下した後に、元通りの回転数まで上昇するように変動する(第5タイミングt15)。そして、上記のような第1作動油圧Pc1を予め設定された所定圧力範囲(変動油圧D1の範囲)内で微少変動させることが間欠的に複数回(本実施形態では3回)実行されると、回転伝達効率確認制御処理が終了する(第6タイミングt16)。
なお、入力軸17には、第1クラッチC1を構成する入力側部材と出力側部材のうち入力側部材が連結されている。そのため、入力軸17の入力軸回転数Nc1は、第1クラッチC1の入力側回転数と等しくなる。すなわち、本実施形態では、入力軸回転数Nc1が第1クラッチC1の入力側回転数として検出される。したがって、本実施形態では、入力軸回転数センサSE2からの検出信号に基づき入力軸回転数Nc1を検出するECU50が、回転数検出手段としても機能する。
図7のフローチャートに戻り、ECU50は、上記回転伝達効率確認制御処理時に検出された所定回数分の変動量Nch(即ち、所定回数の第1作動油圧Pc1の微少変動に基づき検出した全ての変動量Nch)が全て変動量閾値(回転数閾値)KNch以下であるか否かを判定する(ステップS31−2)。回転伝達効率確認制御処理は、第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の係合力が小さいほど第1クラッチC1を介した回転伝達効率が低減し、第1作動油圧Pc1の微少変動に応じた入力軸回転数Nc1の変動量Nchが少なくなるという作用を利用している。そのため、変動量Nchが小さいほど、第1クラッチC1を介した回転伝達効率が低いといえる。したがって、変動量閾値KNchは、第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の係合力がほぼ「0(零)」となる、いわゆるストロークエンド状態に近い状態であるストロークニアエンド状態を検出するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。なお、第1クラッチC1がストロークニアエンド状態であることを、「第1クラッチC1を介した回転伝達効率が所定状態である」ともいう。
ステップS31−2の判定結果が否定判定(所定回数分のNchのうち少なくとも1つ>KNch)である場合、ECU50は、第1クラッチC1が未だストロークニアエンド状態ではない可能性があると判断し、変動油圧D1と同程度の値に設定された所定減圧量D2だけ第1作動油圧Pc1を減圧させるべく油圧制御回路40を駆動させる(ステップS31−3)。その後、ECU50は、その処理を前述したステップS31−1に移行する。
一方、ステップS31−2の判定結果が肯定判定(所定回数分のNch>KNch)である場合、ECU50は、第1クラッチC1がストロークニアエンド状態であると判断し、第1作動油圧Pc1を回転伝達効率確認制御処理により増圧させた分(即ち、変動油圧D1)だけ減圧させた後に一定圧に保持させる(ステップS31−4)。そして、ECU50は、第1インニュートラル制御を終了し、その処理を次のステップS32に移行する。なお、本実施形態では、ステップS31−4の処理が終了した状態のことを、「回転伝達確認制御が収束した状態」ともいう。
ステップS32において、ECU50は、学習フラグFlg1が「オン」にセットされているか否かを判定する。この判定結果が否定判定(Flg1=「オフ」)である場合、ECU50は、第1ニュートラル制御処理ルーチンを終了する。一方、ステップS32の判定結果が肯定判定(Flg1=「オン」)である場合、ECU50は、現時点の第1作動油圧Pc1を検出する(ステップS33)。続いて、ECU50は、ステップS33にて検出した第1作動油圧Pc1を第1目標油圧KPc1としてEEPROM54に記憶させる(ステップS34)。したがって、本実施形態では、ECU50が、学習手段としても機能する。また、ステップS33,S34により、学習ステップが構成される。すなわち、図10のタイミングチャートに示すように、本実施形態では、回転伝達効率確認制御が収束した際において学習フラグFlg1が「オン」である場合には、第6タイミングt16での第1作動油圧Pc1が第1目標油圧KPc1に設定される。
図7のフローチャートに戻り、ステップS34の処理が終了すると、ECU50は、第1目標油圧KPc1の学習を規制させるために学習フラグFlg1を「オフ」にリセットし(ステップS35)、第1ニュートラル制御処理ルーチンを終了する。なお、図7に示すフローチャートには記載がないが、第1ニュートラル制御処理ルーチンの処理中であってもニュートラル制御の終了条件が成立した場合、ECU50は、第1ニュートラル制御処理ルーチンを強制的に終了し、その処理を上述したステップS17に移行する。
次に、上記ステップS22の第2ニュートラル制御処理(第2ニュートラル制御処理ルーチン)について、図8に示すフローチャート及び図11に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、第2ニュートラル制御処理ルーチンにおいて、ECU50は、上記第1リリース制御とは異なる態様で、油圧サーボC−1に供給される第1作動油圧Pc1を減圧させる第2リリース制御を実行する(ステップS40)。具体的には、ECU50は、第1作動油圧Pc1を予め設定された第1リリース油圧ΔP1だけ減圧させる(ステップS40−1)。続いて、ECU50は、上記ステップS40−1の実行により、第1作動油圧Pc1が第1目標油圧KPc1以下の油圧になったか否かを判定する(ステップS40−2)。この判定結果が否定判定(Pc1>KPc1)である場合、ECU50は、ステップS40−2の判定結果が肯定判定になるまでステップS40−1,S40−2の各処理を繰り返し実行する。すなわち、第1作動油圧Pc1は、予め設定された第1の減圧速度で減圧される。なお、この第1の減圧速度は、上述した第1リリース制御時における第1作動油圧Pc1の減圧速度と同程度に設定されている。
一方、ステップS40−2の判定結果が肯定判定(Pc1≦KPc1)である場合、ECU50は、第1作動油圧Pc1をステップS40−2の判定結果が肯定判定になった時点の油圧で保持させる。そして、ECU50は、第1作動油圧Pc1の保持が開始されてからの経過時間が第1減圧時間KTdを経過したか否かを判定する(ステップS40−3)。第1減圧時間KTdは、作動油の油温Tfが第1油温閾値KTf1程度であっても油圧サーボC−1内の実作動油圧RPc1が第1目標油圧KPc1に近い油圧まで確実に減圧されるように設定されたいわゆる待ち時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS40−3の判定結果が否定判定である場合、ECU50は、実作動油圧RPc1が第1目標油圧KPc1に近い油圧に未だなっていない可能性があると判断し、ステップS40−3の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS40−3の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS40−3の判定結果が肯定判定である場合、ECU50は、その処理を後述するステップS40−4に移行する。
すなわち、図11のタイミングチャートに示すように、第1タイミングt21の直後から第1作動油圧Pc1を用いる第2リリース制御が実行され、第1作動油圧Pc1は、第1目標油圧KPc1まで第1の減圧速度で減圧される。そして、第1作動油圧Pc1は、第1目標油圧KPc1以下の油圧になると保持される(第2タイミングt22)。この際に、実作動油圧RPc1は、第1作動油圧Pc1に追随するように徐々に減圧される。そして、第2タイミングt22から第1減圧時間KTd後の第3タイミングt23までには、実作動油圧RPc1が第1目標油圧KPc1に近い油圧まで減圧される。
なお、実作動油圧RPc1の減圧速度は、作動油の油温Tfや第1タイミングt21での第1作動油圧Pc1によって変動する。すなわち、作動油の油温Tfが低いほど作動油の粘性が高くなるため、実作動油圧RPc1は、第1作動油圧Pc1に対する追随性が悪化し、上記第1の減圧速度によりも遅い減圧速度で減圧される。
また、ニュートラル制御の開始直前の第1作動油圧Pc1が低圧であるほど、第1タイミングt21での実作動油圧RPc1が低い。この場合、油圧サーボC−1に供給する作動油の単位時間あたりの供給量が少なくてよいため、油圧制御回路40内に貯留される作動油量が少ない可能性がある。こうした状態で第2リリース制御が実行されて第1作動油圧Pc1が減圧される場合、実作動油圧RPc1の単位時間あたりの減圧量は、第1タイミングt11で検出した第1作動油圧Pc1が高圧である場合に比して多い。すなわち、第1タイミングt11での第1作動油圧Pc1が低圧であるほど、実作動油圧RPc1の減圧速度が速くなる。そのため、第2タイミングt22における実作動油圧RPc1の大きさは、第1タイミングt11での第1作動油圧Pc1が低圧であるほど低圧になる可能性がある。
図8のフローチャートに戻り、ステップS40−4において、ECU50は、現時点の第1作動油圧Pc1を第1リリース油圧ΔP1よりも小さい値に予め設定された第2リリース油圧ΔP2(<ΔP1)だけ減圧させる。続いて、ECU50は、現時点の第1作動油圧Pc1が第1目標油圧KPc1から上記ステップS13にて設定された設定圧Poffだけ減圧された油圧以下の油圧になったか否かを判定する(ステップS40−5)。この判定結果が否定判定(Pc1>(KPc1−Poff))である場合、ECU50は、ステップS40−5が肯定判定になるまでステップS40−4,S40−5の各処理を繰り返し実行する。すなわち、第1作動油圧Pc1は、上記第1の減圧速度よりも遅い第2の減圧速度で減圧される。一方、ステップS40−5の判定結果が肯定判定(Pc1≦(KPc1−Poff))である場合、ECU50は、第1作動油圧Pc1の減圧を停止させる。そして、ECU50は、第2リリース制御を終了し、その処理を後述するステップS41に移行する。
ここで、図11のタイミングチャートに示すように、第3タイミングt23からは、油圧サーボC−1に供給される第1作動油圧Pc1が徐々に減圧される。この際の減圧速度(即ち、第2の減圧速度)は、第1タイミングt21から第2タイミングt22までの減圧速度(即ち、第1の減圧速度)よりも遅い。そして、第4タイミングt24では、第1作動油圧Pc1が第1目標油圧KPc1(即ち、第3タイミングt23時点の第1作動油圧Pc1)から設定圧Poffだけ減圧した油圧以下の油圧になるため、第1作動油圧Pc1の減圧が停止される。
また、第1タイミングt21での第1作動油圧Pc1が低圧であることに起因して第3タイミングt23での実作動油圧RPc1が低圧である場合であっても、設定圧Poffが低圧で設定されるため、第3タイミングt23以降で実作動油圧RPc1が低くなり過ぎることが回避される。すなわち、第4タイミングt24以降の実作動油圧RPc1は、第1タイミングt21での第1作動油圧Pc1の大きさに関係なく、第2ニュートラル制御処理が実行される毎にほぼ同一油圧となる。
図8のフローチャートに戻り、ステップS41において、ECU50は、第1インニュートラル制御とは異なる第2インニュートラル制御が実行され、その後、第2ニュートラル制御処理ルーチンを終了する。この第2インニュートラル制御は、第1インニュートラル制御とは異なり、回転伝達効率確認制御が実行されずに、第1作動油圧Pc1の保持を開始する制御である。すなわち、図11のタイミングチャートに示すように、第1作動油圧Pc1は、第2リリース制御の終了時における油圧に保持される。なお、図8に示すフローチャートには記載がないが、第2ニュートラル制御処理ルーチンの処理中であってもニュートラル制御の終了条件が成立した場合、ECU50は、第2ニュートラル制御処理ルーチンを強制的に終了し、その処理を上述したステップS17に移行する。
次に、上記ステップS23の第3ニュートラル制御処理(第3ニュートラル制御処理ルーチン)について、図9に示すフローチャート及び図12に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、第3ニュートラル制御処理ルーチンにおいて、ECU50は、上記ステップS30と同等の第1リリース制御を実行する(ステップS50)。すなわち、図12のタイミングチャートに示すように、第1作動油圧Pc1の減圧は、第1タイミングt31の直後から開始される。そして、第3タイミングt33が経過すると、第1リリース制御が終了し、第1作動油圧Pc1の減圧が停止される。
図9のフローチャートに戻り、ECU50は、第1及び第2インニュートラル制御とは異なる第3インニュートラル制御が実行される(ステップS51)。具体的には、ECU50は、上記ステップS31−1と同等の回転伝達効率確認制御処理を実行する(ステップS51−1)。続いて、ECU50は、上記ステップS31−2と同等の判定処理を実行する(ステップS51−2)。この判定結果が否定判定である場合、ECU50は、上記ステップS31−3と同等の処理を実行し(ステップS51−3)、その処理を前述したステップS51−1に移行する。一方、ステップS51−2の判定結果が肯定判定である場合、ECU50は、上記ステップS31−4と同等の処理を実行する(ステップS51−4)。
続いて、ECU50は、上記ステップS13にて設定した設定圧PoffをEEPROM54から読み出し、第1作動油圧Pc1を設定圧Poffだけ減圧させる(ステップS51−5)。その後、ECU50は、第1作動油圧Pc1を一定圧で保持させた状態で第3ニュートラル制御処理ルーチンを終了する。
すなわち、図12のタイミングチャートに示すように、回転伝達効率確認制御が収束した第6タイミングt36では、第1作動油圧Pc1が設定圧Poffだけ減圧される。そのため、第6タイミングt36後の作動油圧Pc1は、上記第1インニュートラル制御が実行された際の第6タイミングt16後の作動油圧Pc1よりも低圧であって、且つ上記第2ニュートラル制御処理が実行された際の第4タイミングt24後の作動油圧Pc1と略同等の油圧に設定される。したがって、第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の係合力は、上記第1インニュートラル制御時における係合力よりも小さくなる。つまり、第3インニュートラル制御が実行されると、第1クラッチC1は、よりストロークエンドに近い状態となる。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されている場合、油圧サーボC−1に供給される第1作動油圧Pc1は、第2ニュートラル制御処理の実行によって、第1目標油圧KPc1よりも設定圧Poffだけ低い油圧まで減圧され、その後、一定圧に保持される。すなわち、第2ニュートラル制御処理が実行される場合は、ニュートラル制御が実行される毎に回転伝達効率確認制御処理が実行される場合(第1及び第3ニュートラル制御処理)に比して回転伝達効率確認制御処理が実行されない分だけ、第1作動油圧Pc1を一定圧で保持するタイミングを速やかに作り出すことができる。そのため、車両停止時間が比較的短い場合であっても、第2ニュートラル制御処理が実行されることにより、車両の燃費を向上させることができる。
(2)一方、EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されていない場合には、第1リリース制御後に回転伝達効率確認制御処理を実行する第1ニュートラル制御が実行される。そして、油圧サーボC−1に供給される第1作動油圧Pc1は、回転伝達効率確認制御が収束した時点の第1作動油圧Pc1で保持される。すなわち、第1クラッチC1がストロークニアエンド状態になる。そのため、車両の停止時間が比較的長い場合には、第1ニュートラル制御処理の実行によって車両の燃費を向上させることができる。
(3)EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されていない場合には、第1インニュートラル制御時において回転伝達効率確認制御が収束した時点の第1作動油圧Pc1が第1目標油圧KPc1としてEEPROM54に記憶される。そのため、その後のニュートラル制御時では、EEPROM54に記憶される第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理が実行される。したがって、ニュートラル制御の開始条件が成立する毎に第1ニュートラル制御が実行される場合に比して第1作動油圧Pc1を一定圧で保持するタイミングを速やかに作り出すことができる分、車両の燃費を向上させることができる。
(4)もし仮にEEPROM54に第1目標油圧KPc1が未記憶であって、且つ作動油の油温Tfが学習判定閾値KTfs未満である場合に、第1目標油圧KPc1の学習を行わせたとすると、以下に示す問題が発生する可能性がある。すなわち、作動油の油温Tfが学習判定閾値KTfs未満である場合には、作動油の特性が特殊な状態(例えば、粘性が高すぎる状態)である。そのため、こうした条件で学習された第1目標油圧KPc1を用いて第2ニュートラル制御処理を実行したとしても、実作動油圧RPc1を十分に減圧させることができずに、第1クラッチC1での係合力が比較的大きい状態で第1作動油圧Pc1が保持される可能性がある。こうした場合、第2ニュートラル制御処理を実行しても、車両の燃費改善効果が低くなってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、作動油の油温Tfが学習判定閾値KTfs以上である場合において第1ニュートラル制御が実行されるときに、回転伝達効率確認制御が収束した時点の第1作動油圧Pc1が第1目標油圧KPc1としてEEPROM54に記憶される。そのため、作動油の油温Tfが低い特殊条件で第1目標油圧KPc1が設定されることが回避されることから、第2ニュートラル制御処理の実行により車両の燃費改善効果を確実に高めることができる。
(5)第2リリース制御時において、第1作動油圧Pc1は、2段階に分けて減圧される。そのため、第1作動油圧Pc1の1段階ごとの減圧度合は、1回で第1目標油圧KPc1から設定圧Poffを減算した油圧まで一気に減圧させる場合に比して小さくなる。そのため、第2リリース制御の実行によって、係合状態にある第1クラッチC1を半係合状態にする際に該第1クラッチC1から発生する振動を低減させることができる。
(6)しかも、第1作動油圧Pc1の2段階目の減圧時(図11における第3タイミングt23から開始される減圧時)には、1段階目の減圧時(第1タイミングt21の直後から開始される減圧時)に比して減圧速度が遅い。そのため、2段階目の減圧によって、第1クラッチC1から発生する振動を小さくすることができる。すなわち、第2ニュートラル制御処理中であっても車両に搭乗する搭乗者に不快感を与えることを抑制できる。
(7)一般に、作動油の粘性は、該作動油の油温Tfが低いほど高くなる。すなわち、油温Tfが低いほど油圧サーボC−1内の実作動油圧RPc1の第1作動油圧Pc1に対する追随性が悪くなることから、ECU50などからの制御指令に応じた実作動油圧RPc1の変動速度が遅くなる。そこで、本実施形態では、設定圧Poffは、油温Tfが低いほど小さな値に設定される。そのため、回転伝達効率確認制御が収束した直後では、油温Tfに関係なく、実作動油圧RPc1が一定圧に保持させる状態を速やかに作り出すことができる。また、ニュートラル制御を終了させる際には、油温Tfに関係なく、実作動油圧RPc1を、第1クラッチC1が係合状態になるような油圧まで速やかに増圧させることができる。そのため、車両の速やかな発進に貢献できる。
(8)一般に、ニュートラル制御処理が実行される直前の第1作動油圧Pc1が低圧であるほど、実作動油圧RPc1と第1作動油圧Pc1との油圧差が大きくなる。そのため、リリース制御後では、ニュートラル制御が実行される直前の第1作動油圧Pc1が低圧であるほど、実作動油圧RPc1と第1作動油圧Pc1との差分が大きくなる傾向が見られる。そこで、本実施形態では、設定圧Poffは、第2及び第3ニュートラル制御処理が実行される直前の第1作動油圧Pc1が低圧であるほど小さな値に設定される。そのため、第2及び第3ニュートラル制御処理が実行される直前の実作動油圧RPc1の大きさによって、インニュートラル制御にて第1作動油圧Pc1が一定圧に保持される際の実作動油圧RPc1の大きさが変化することが抑制される。したがって、第2及び第3ニュートラル制御処理が実行される直前の第1作動油圧Pc1の大きさによって、該ニュートラル制御処理による燃費改善効率が変わってしまうことを抑制できる。また、第2及び第3ニュートラル制御処理を終了させる際には、該ニュートラル制御処理が実行される直前の第1作動油圧Pc1の大きさに関係なく、実作動油圧RPc1を第1クラッチC1が係合状態になるような油圧まで速やかに増圧させることができる。すなわち、車両の速やかな発進に貢献できる。
(9)作動油の油温Tfが設定温度領域範囲外である場合は、油温Tfに応じた作動油の粘性の相違などに起因して、第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理を実行しても、該第2ニュートラル制御処理の実行による車両の燃費改善効果が低い可能性がある。そのため、作動油の油温Tfが設定温度領域範囲内である場合にのみ、第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理が実行される。したがって、第2ニュートラル制御処理を実行することにより、車両の燃費向上を効果的に達成させることができる。
(10)作動油の油温Tfが第2油温閾値KTf2よりも高温である場合には、第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理による燃費改善効率が低いことから、第2ニュートラル制御処理とは異なる第3ニュートラル制御処理が実行される。この第3ニュートラル制御処理では、第1ニュートラル制御処理の場合に比して、第1作動油圧Pc1を設定圧Poffだけ低い油圧に保持できる。すなわち、第1クラッチC1を、ストロークエンド状態により近い状態にすることができる。そのため、第3ニュートラル制御処理の実行により、トルクコンバータ12や第1クラッチC1の摩耗などの経時変化に関係なく、車両の停止時間が比較的長い場合には車両の燃費を向上させることができる。
(11)作動油の油温Tfが第1油温閾値KTf1よりも低温である場合には、作動油の粘性が高いと判断し、第2及び第3ニュートラル制御処理とは異なる第1ニュートラル制御処理(従来のニュートラル制御処理)が実行される。すなわち、第1クラッチC1が確実にストロークニアエンド状態で維持される。そのため、作動油の粘性が低い状態で第2及び第3ニュートラル制御が実行されることが回避されることから、アプライ制御によって実作動油圧RPc1を、作動油の粘性が高い場合と同様に第1クラッチC1が係合状態となるような油圧まで速やかに増圧させることができる。
(12)回転伝達効率確認制御では、第1作動油圧Pc1を所定圧力範囲内(変動油圧D1)で微少変動させ、該第1作動油圧Pc1の微少変動に基づく第1クラッチC1の入力軸回転数Nc1の変動量Nchが検出される。そして、この検出結果が変動量閾値KNch以下である場合に、第1クラッチC1がストロークニアエンド状態であると判定される。すなわち、本実施形態の回転伝達効率確認制御は、第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の係合力が小さいほど該第1クラッチC1を介した回転伝達効率が低減し、第1作動油圧Pc1の微少変動に応じた入力軸回転数Nc1の変動量Nchが少なくなるという作用を利用している。そのため、インニュートラル制御中における第1クラッチC1の入力側部材と出力側部材との位置関係を好適に調整できる。
(13)ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、走行距離Dsが学習再設定閾値KDs以上であるときには、EEPROM54に記憶される第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理ではなく、第1目標油圧KPc1を用いない第1ニュートラル制御処理が実行される。この際、EEPROM54には、今回実行される回転伝達効率確認制御が収束した時点の第1作動油圧Pc1(即ち、第1リリース制御が終了した時点の第1作動油圧Pc1又は該第1作動油圧Pc1よりも低圧の流体圧)が新たな第1目標油圧KPc1として記憶される。そして、これ以降では、第1クラッチC1の特性の経年変化に対応した第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理が実行される。したがって、車両が長期に亘って使用される場合であっても、第2ニュートラル制御処理の実行による車両の燃費改善効果を良好に維持できる。
(14)車両を非常に気温が低い地域で使用する場合、作動油の油温Tfが学習判定閾値KTfs以上にならず、第1目標油圧KPc1の学習が一回も行われない可能性がある。こうした場合、ニュートラル制御の開始条件が成立した場合であっても、EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されていないため、第2ニュートラル制御処理が実行されない。ところが、本実施形態では、車両の走行距離Dsが学習再設定閾値KDs以上になった場合には、作動油の油温Tfに関係なく、第1目標油圧KPc1の学習が行われる。そのため、これ以降では、学習した第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理が実行される。したがって、車両が使用される環境(特に気温)に関係なく、定期的に第1目標油圧KPc1が学習されるため、該第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御処理によって、車両の燃費を向上させることができる。
(15)走行距離Dsが学習再設定閾値KDs未満である場合には、EEPROM54に記憶される第1目標油圧KPc1を用いた第2ニュートラル制御が実行される。そのため、ニュートラル制御の開始条件が成立した場合に第1ニュートラル制御処理が毎回実行される場合に比して、車両の燃費を良好に向上させることができる。
なお、本実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、ステップS10,S15,S16の各判定結果が共に肯定判定である場合において、作動油の油温Tfが第1油温閾値KTf1未満であるときには、第1ニュートラル制御処理ではなく、第2ニュートラル制御処理を実行してもよい。ただし、油温Tfが第1油温閾値KTf1未満である場合には、作動油の粘性が高いことから、設定圧Poffを「0(零)」に近い値に設定することが望ましい。このように構成すると、アプライ制御の実行により、半係合状態にある第1クラッチC1を、速やかに係合状態にすることができる。
・実施形態において、ステップS10,S15,S16の各判定結果が共に肯定判定である場合において、作動油の油温Tfが第2油温閾値KTf2よりも高温であるときにも、第2ニュートラル制御を実行してもよい。
・実施形態において、第2リリース制御では、第2リリース油圧ΔP2を第1リリース油圧ΔP1と同等の値に設定してもよい。この場合、第1タイミングt21の直後からの第1作動油圧Pc1の第1の減圧速度と、第3タイミングt23からの第1作動油圧Pc1の第2の減圧速度とが同一速度になる。
・また、第2リリース制御では、第1作動油圧Pc1を、第1目標油圧KPc1から設定圧Poffを減圧した油圧(=KPc1−Poff)まで一気に減圧させてもよい。このように構成すると、第2リリース制御の実行によって第1クラッチC1から発生する振動が上記実施形態の場合に比して多少大きくなるものの、第2リリース制御をより短時間で終了させることができる。そのため、第2ニュートラル制御処理の実行に基づき、車両の燃費をさらに向上させることができる。
・実施形態において、EEPROM54に第1目標油圧KPc1が記憶されていない場合には、作動油の油温Tfに関係なく、第1目標油圧KPc1の学習を行わせてもよい。すなわち、ステップS16の判定結果が否定判定である場合には、ステップS17の判定処理を省略してステップS18の処理を実行させてもよい。
・本実施形態では、EEPROM54に記憶される第1目標油圧KPc1が、作動油の油温Tfが第1油温閾値KTf1未満であるときの第1ニュートラル制御処理時に学習された値であることがある。こうした場合には、第1目標油圧KPc1が学習された以降のニュートラル制御の実行時において油温Tfが学習判定閾値KTfs以上であるときには、第1ニュートラル制御処理を実行して第1目標油圧KPc1を再設定させてもよい。
・実施形態において、ステップS15の判定結果が否定判定であっても、作動油の油温Tfが第1油温閾値KTf1以上である場合には、第3ニュートラル制御処理を実行させてもよい。ただし、第3ニュートラル制御処理中の回転伝達効率確認制御が収束した時点の第1作動油圧Pc1を、第1目標油圧KPc1として学習してEEPROM54に記憶させることが望ましい。
・実施形態において、ステップS14では、車両の走行する時間の合計(例えば、イグニッションスイッチが「オン」となっている間の合計)を使用期間数として計測し、ステップS15では、車両の走行する時間の合計が予め設定された学習再設定閾値未満であるか否かを判定させてもよい。このように構成しても、上記実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
・実施形態において、車両の走行距離Dsは、車両に搭載されるナビゲーションシステムから受信した情報に基づき算出した値であってもよい。
・実施形態において、設定圧Poffを、作動油の油温Tfに関係なく設定してもよい。このように構成しても、設定圧Poffは、ニュートラル制御開始直前の第1作動油圧Pc1に応じた油圧に設定されるため、回転伝達効率確認制御が収束した時点の第1作動油圧Pc1を設定圧Poffだけ減圧させた際に実作動油圧RPc1を速やかに設定圧Poffだけ減圧させることができる。
・実施形態において、設定圧Poffを、ニュートラル制御開始直前の第1作動油圧Pc1に関係なく設定してもよい。このように構成しても、設定圧Poffは、作動油の油温Tfに応じた油圧に設定されるため、回転伝達効率確認制御が収束した後に第1作動油圧Pc1を設定圧Poffだけ減圧させた際に実作動油圧RPc1を速やかに設定圧Poffだけ減圧させることができる。
・実施形態において、設定圧Poffは、予め設定された所定圧であってもよい。
・実施形態において、設定圧Poffを、第1クラッチC1を完全に解放状態にさせるような油圧としてもよい。この場合、設定圧Poffは、上記実施形態の場合に比して高圧に設定されることになる。このような制御構成にすることにより、ニュートラル制御の実行に基づく車両の燃費改善効果をより向上させることができる。しかも、回転伝達効率確認制御処理の実行によって第1クラッチC1の入力側部材に対する出力側部材の位置関係が明確になっているため、適当に第1作動油圧Pc1を減圧させる場合に比して、アプライ制御の実行による第1クラッチC1が係合状態になるまでの時間に誤差が生じることを抑制できる。
・実施形態において、回転伝達効率確認制御では、第1作動油圧Pc1を、任意の回数だけ微少変動させるようにしてもよい。ただし、第1作動油圧Pc1の微少変動が1回だけの場合には誤判定される可能性があるため、第1作動油圧Pc1を複数回微少変動させることが望ましい。
・実施形態において、第1クラッチC1の係脱を、作動油以外の他の流体(例えば、気体)の圧力を調圧制御することにより実行してもよい。
・実施形態では、自動変速機11を、他の自動変速機(例えば、前進4段後進1段の自動変速機)に具体化してもよい。また、自動変速機11を、変速機構にベルトが設けられてなる無段式変速機に具体化してもよい。
・実施形態において、自動変速機11は、電気自動車やハイブリッド車両に搭載してもよい。この場合、電気自動車やハイブリッド車両の駆動源となるモータが、原動機として機能することになる。
本実施形態の自動変速機を示すスケルトン図。 各変速段における各クラッチ及び各ブレーキの作動表。 第1クラッチの係脱制御に関係する部分の油圧制御回路を示す模式図。 電気的構成を示すブロック図。 設定圧を設定するためのマップ。 ニュートラル制御処理ルーチンを説明するフローチャート。 第1ニュートラル制御処理ルーチンを説明するフローチャート。 第2ニュートラル制御処理ルーチンを説明するフローチャート。 第3ニュートラル制御処理ルーチンを説明するフローチャート。 第1ニュートラル制御処理が実行される際の第1作動油圧、実作動油圧及び入力軸回転数が変動するタイミングを示すタイミングチャート。 第2ニュートラル制御処理が実行される際の第1作動油圧、実作動油圧及び入力軸回転数が変動するタイミングを示すタイミングチャート。 第3ニュートラル制御処理が実行される際の第1作動油圧、実作動油圧及び入力軸回転数が変動するタイミングを示すタイミングチャート。
符号の説明
10…原動機としてのエンジン、11…自動変速機、12…回転伝達機構としてのトルクコンバータ、13,14…変速機構、50…制御装置、学習手段、計測手段、温度検出手段、回転数検出手段、温度設定圧設定手段、流体圧検出手段、流体圧設定圧設定手段としてのECU、54…記憶手段としてのEEPROM、C1…入力クラッチとしての第1クラッチ、Ds…使用期間数としての走行距離、KDs…目標圧再設定閾値としての学習再設定閾値、KNch…回転数閾値としての変動量閾値、KPc1…目標流体圧としての第1目標油圧、KTf1…下限値としての第1油温閾値、KTf2…上限値としての第2油温閾値、KTfs…学習判定閾値、Nc1…入力側回転数としての入力軸回転数、Nch…変動量、Pc1…流体圧としての第1作動油圧、Poff…設定圧、Tf…流体の温度としての油温。

Claims (12)

  1. 車両に搭載される原動機の回転を変速機構に伝達するための回転伝達機構と、該回転伝達機構から伝達された回転を断・接制御するための入力クラッチとを備える自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、
    車両が停止状態である場合に、前記入力クラッチを介した前記回転伝達機構側から前記変速機構側への回転伝達効率を車両走行時に比して低減させるニュートラル制御を実行する制御手段を備える自動変速機の制御装置において、
    前記ニュートラル制御時において前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率を低効率で維持させるための該入力クラッチの流体圧を目標流体圧として学習する学習手段と、
    該学習手段によって学習された前記目標流体圧を記憶する記憶手段と、
    車両の使用期間を数値的に示す使用期間数を計測する計測手段と、をさらに備え、
    前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が予め設定された目標圧再設定閾値以上であるときに、
    前記制御手段は、前記目標流体圧を非使用の状態で前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させるリリース制御と、前記入力クラッチに対する流体圧を前記リリース制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧以下となる流体圧で維持させるインニュートラル制御とを含むニュートラル制御を実行し、
    前記学習手段は、前記リリース制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧又は該流体圧よりも低圧の流体圧を目標流体圧として学習して前記記憶手段に記憶させる自動変速機の制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であるときに、前記入力クラッチの流体圧を前記記憶手段に記憶される前記目標流体圧又は該目標流体圧から設定圧を減圧した流体圧まで減圧させるリリース制御を実行した後、前記入力クラッチを一定圧に保持させるインニュートラル制御を実行する請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値以上であるときに、
    前記制御手段は、前記目標流体圧を非使用の状態で前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させる前記リリース制御が終了した後、前記入力クラッチに対する流体圧を変動させる回転伝達効率確認制御を実行し、該回転伝達効率確認制御により前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率が低効率として予め設定された所定状態であると判定した場合、前記入力クラッチに対する流体圧を、前記回転伝達効率確認制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧、又は、該入力クラッチに対する流体圧から設定圧を減圧させた流体圧で維持させるインニュートラル制御を実行し、
    前記学習手段は、前記回転伝達効率確認制御の終了時における前記入力クラッチに対する流体圧を目標流体圧として学習して前記記憶手段に記憶させる請求項1又は請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
  4. 前記入力クラッチの入力側回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記回転伝達効率確認制御時において、前記入力クラッチに対する流体圧を予め設定された所定圧力範囲内で変動させ、該回転伝達効率確認制御の実行時において前記回転数検出手段によって検出された前記入力クラッチの入力側回転数の変動量が予め設定された回転数閾値以下である場合に、前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率が前記所定状態であると判定する請求項3に記載の自動変速機の制御装置。
  5. 前記入力クラッチに対して流体圧を発生させるための流体の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であると共に、前記温度検出手段によって検出された流体の温度が予め設定された設定温度領域範囲内であるときに、前記入力クラッチの流体圧を前記記憶手段に記憶される前記目標流体圧又は該目標流体圧から前記設定圧を減圧した流体圧まで減圧させるリリース制御を実行した後、前記入力クラッチの流体圧を一定圧に保持させるインニュートラル制御を実行する請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
  6. 前記制御手段は、前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測手段によって計測された使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であると共に、前記温度検出手段によって検出された流体の温度が前記設定温度領域範囲内であるときに、前記入力クラッチに対する流体圧を前記記憶手段から読み出された前記目標流体圧まで減圧させ、その後、前記入力クラッチに対する流体圧を前記目標流体圧から前記設定圧を減圧させるリリース制御を実行する請求項5に記載の自動変速機の制御装置。
  7. 前記入力クラッチに対して流体圧を発生させるための流体の温度を検出する温度検出手段と、
    該温度検出手段によって検出された前記流体の温度が低いほど前記設定圧を小さな値に設定する温度設定圧設定手段と、をさらに備えた請求項2、請求項5及び請求項6のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置。
  8. 前記入力クラッチに対する流体圧を検出する流体圧検出手段と、
    前記リリース制御の実行前に前記流体圧検出手段によって検出された流体圧が低圧であるほど前記設定圧を小さい値に設定する流体圧設定圧設定手段と、をさらに備えた請求項2及び請求項5〜請求項7のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置。
  9. 前記計測手段は、車両の走行距離を使用期間数として計測する請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置。
  10. 前記計測手段は、車両の走行する時間の合計を使用期間数として計測する請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の自動変速機の制御装置。
  11. 車両に搭載される原動機の回転を変速機構に伝達するための回転伝達機構と、該回転伝達機構から伝達された回転を断・接制御するための入力クラッチとを備える自動変速機の制御方法であって、
    車両の停止時において、前記入力クラッチを介した前記回転伝達機構側から前記変速機構側への回転伝達効率を車両走行時に比して低減させるニュートラル制御の開始条件が成立した場合に、前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率が低減されるように前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させるリリースステップと、該リリースステップの実行後、前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率を低効率で維持させるインニュートラルステップと、を有する自動変速機の制御方法において、
    前記インニュートラルステップにて前記入力クラッチを介した前記回転伝達効率を低効率で維持させるための該入力クラッチの流体圧を目標流体圧として学習して記憶手段に記憶させる学習ステップと、
    車両の使用期間を数値的に示す使用期間数を計測させる計測ステップと、をさらに有し、
    前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測ステップにて計測した使用期間数が予め設定された目標圧再設定閾値以上であるときに、
    前記リリースステップでは、前記目標流体圧を非使用の状態で前記入力クラッチに対する流体圧を減圧させ、
    前記インニュートラルステップでは、前記入力クラッチに対する流体圧を前記リリースステップの終了時における前記入力クラッチに対する流体圧以下となる流体圧で保持させ、
    前記学習ステップでは、前記リリースステップの終了時における前記入力クラッチに対する流体圧又は該流体圧よりも低圧の流体圧を目標流体圧として学習して前記記憶手段に記憶させる自動変速機の制御方法。
  12. 前記ニュートラル制御の開始条件が成立した場合において、前記計測ステップにて計測した使用期間数が前記目標圧再設定閾値未満であるときに、
    前記リリースステップでは、前記入力クラッチの流体圧を前記記憶手段に記憶される前記目標流体圧又は該目標流体圧よりも設定圧だけ低圧の流体圧まで減圧させると共に、前記インニュートラルステップでは、前記入力クラッチを一定圧に保持させ、さらに、前記学習ステップの実行を規制する請求項11に記載の自動変速機の制御方法。
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