JP2010053567A - 鋼製枕木およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鋼製の上面板2に前面板3及び後面板4並びに両側の側面板5を一体に備えた鋼製枕木本体における上面板2の上面に座盤7を溶接により固定した鋼製枕木において、前記座盤7の周囲を前記上面板2に固定している溶接部分14が上面板2と共に上に凸に曲げ加工が施されて突出部8が形成されている鋼製枕木。鋼製の上面板2に前面板3及び後面板4並びに両側の側面板5を一体として成型加工された鋼製枕木本体にそれぞれ鋼製座盤7を溶接により固定する鋼製枕木の製造方法において、前記上面板2に座盤7の周囲を溶接により固定した後、前記座盤7の周囲を前記上面板2に固定している溶接部分14を上面板2と共に上に凸に曲げ加工を施して突出部8を形成する座盤付き鋼製枕木の製造方法。
【選択図】図1
Description
図11に示す前記の鋼製枕木1を図8に取り出して示し、図9(a)では鋼製座盤7付近で鋼製枕木1の長手方向に直角な図8のb−b線で切断した断面図を示す、図9(b)では、図8における片側の一対の鋼製座盤7付近を拡大して示し、図10は図8の平面図を示している。
そして従来、図11に示すように、レール17を枕木10に線バネクリップ18等により締結する場合に用いられる鋼製枕木10としては、図7〜図10に示すように、鋼製の上面板2と前後の面板3,4と各側面板5とを備えていると共に、上面板2の上面に座盤7を溶接14により固定したものが知られている。
前記のように使用されていると、座盤7と上面板2との溶接部14、特に上面板2側の溶接止端部15(レール側よりの溶接止端部15と、鋼製座盤1の幅方向の溶接止端部15とがあり、特に、レール側よりの溶接止端部15を問題としている)には、溶接による引っ張り残留応力が残ったままとなっており、また、前記の溶接により、上面板2は、図7(a)に示すように全体として下に凸となるように微小変形(例えば、湾曲変形する。なお、図では誇張して表現している。)し、上面板2の幅方向中央で約1mm前後の低レベルとなっている。
また、溶接部を焼きなましするという方法も知られているが(例えば、非特許文献1参照)、コストが高く、また変形が大きいという問題がある。
鋼構造物の疲労設計指針・同解説 214〜215頁、1993年、技報堂出版発行
図示を省略するが、実路実験により測定した結果、座盤7のレール側の溶接部における溶接止端部から3mmの部分で測定した結果、TPC盈車(トーピードカー)を走行させた場合、356MPaの圧縮応力が発生したが、前記の大きな引っ張り残留応力(例えば、540MPa)よりは小さい値であり、大きな引っ張り残留応力が溶接部に常時作用していることがわかった。
このように下に凸とされている上面板2の鋼製枕木10に、レール17を締結して、列車を走行させた場合、列車載荷により作用する列車応力は圧縮だが、前記のように溶接部14に大きな引張り残留応力があり、また、締結により負荷される荷重および列車により載荷される荷重により、鋼製枕木10の幅方向中央においてレール17に下向きの荷重が作用すると、レール17が下に凸に微小曲げ変形を起こすため、図7(b)に示すように、上面板2と前面板3あるいは後面板4とが接続している肩部19相互が、矢印CおよびDに示すように、離れる方向に締結力および載荷荷重が作用する。これらにより、上面板2の上面側が幅方向に伸びるように変形するように作用するので、溶接部14、特に溶接止端部15に益々引張応力が増加するようになり、鋼製枕木10における溶接部14は、溶接止端部15を基点とする止端部亀裂等の疲労損傷(疲労亀裂)を生じる恐れが高くなるという問題がある。
本発明は、座盤溶接部の疲労寿命を向上させた鋼製枕木およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、第2発明では、第1発明の鋼製枕木において、前記の突出部が形成されていることにより、前記座盤の溶接されている部分における溶接止端部のビード直角方向での表面の残留応力が50MPaより小さくなっていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の鋼製枕木において、上面板部分における溶接されている部分が下側から上側に向かって上面板と共に押圧されて突出部が形成され、前記の突出部の形成により、上面板と共に板曲げ加工が施されていることを特徴とする。
第4発明の座盤付き鋼製枕木の製造方法においては、鋼製の上面板に前面板及び後面板並びに両側の側面板を一体として成型加工された鋼製枕木本体にそれぞれ鋼製座盤を溶接により固定する鋼製枕木の製造方法において、前記上面板に座盤の周囲を溶接により固定した後、前記座盤の周囲を前記上面板に固定している溶接部分を上面板と共に上に凸に曲げ加工を施して突出部を形成することを特徴とする。
また、第2発明の鋼製枕木によると、前記の突出部が形成されていることにより、前記座盤の溶接されている部分における溶接止端部のビード直角方向での表面の残留応力が50MPaより小さくなっているので、溶接止端部の引っ張り残留応力を小さい値にしてあり、引張領域での応力変動が小さくなるため、溶接止端部に疲労き裂が生じる恐れがない品質の高い鋼製枕木とすることができる。
また、第3発明の鋼製枕木では、上面板部分における溶接されている部分が下側から上側に向かって上面板と共に押圧されて突出部が形成され、前記の突出部の形成により、上面板と共に板曲げ加工が施されているので、単に上面板部分に板曲げ加工を施して、座盤が溶接により固定されている上面板部分を上に凸に加工して、鋼製枕木の疲労寿命を高めることができる。
第4発明の座盤付き鋼製枕木の製造方法によると、鋼製の上面板に前面板及び後面板並びに両側の側面板を一体として成型加工された鋼製枕木本体にそれぞれ鋼製座盤を溶接により固定する鋼製枕木の製造方法において、前記上面板に座盤の周囲を溶接により固定した後、前記座盤の周囲を前記上面板に固定している溶接部分を上面板と共に上に凸に曲げ加工を施して突出部を形成するので、簡単な方法により、上面板部分に板曲げ加工を施して、座盤溶接部の疲労き裂を防止することができる。
図1〜図3は、本発明の一実施形態の鋼製枕木1を示すものであって、鋼製枕木1は、鋼製の上面板2と、これに一体に接続する前後方向の前面板3および後面板4と各側面板5とにより本体部分が構成され、さらに、上面板2の上面側には、鋼製の線ばねクリップ18(図12参照)を支承するための、鋼製の座盤7が溶接により固定されている。
前記の図4を参照して説明すると、さらに本発明の鋼製枕木1においては、上面板2の上面に座盤7が溶接により固定された後、図4(a)に示すように、座盤7を固定した上面板2の部分が、上に凸に突出部8を形成するように板曲げ加工がほどこされている座盤付き鋼製枕木1とされている。
前記のような上に凸に突出部8を形成するように、板曲げ加工がほどこされた座盤付き鋼製枕木1とする場合には、図5(a)(b)に示すように、鋼製枕木1を反転して、H型鋼などの支持部材9上に調整用の鋼製ピース11を介して、座盤付き鋼製枕木1を載置する。
そして、前記支持部材9に反力をとるようにして、押圧部12を備えた油圧ジャッキなどの液圧ジャッキ13により、上面板2の溶接部14を含むように、かつ、前記溶接部14に引張塑性変形を付与するように板曲げ加工を実施するようにすればよい。このように、前記溶接部14に引張塑性変形を付与するように板曲げ加工をプレス等により実施した後、プレス荷重を除荷された時に、溶接部14に引っ張り残留応力を打ち消すように圧縮残留応力が付与される。
図5(b)に示すように、鋼製枕木1における肩部19付近を板状の鋼製ピース11を介して支承した状態で、図6(b)に示すように上面板2の幅方向中央に位置する座盤7を上面板2の裏面側から押すように板曲げ加工を施す。そして、溶接部14特に、上面板2側の溶接止端部15およびその付近の溶接部14の表面が、その溶接部14の外周側の上面板2の表面に接近するように、溶接部14部分の上面板2が上に凸に板曲げによる塑性変形を与えられることにより突出部8を形成し、溶接止端部15に圧縮残留応力を付与している。
すなわち、座盤7の溶接部に塑性加工を施すようになっていると共に、図7(a)に示すような状態の上面板2全体を、図4(a)に示すように、座盤7側に板曲げにより塑性加工を施すことになり、そのため、溶接部14特に溶接止端部の溶接による引っ張り残留応力を打ち消すように圧縮残留応力を導入することができる。前記の上に凸に突出部8を形成する高さは、上面板2が平坦面であるとした場合を基準とした場合、0mmを超える高さで2mmを超えない高さ寸法でよく、高くても1mm〜2mm程度であり、図7に示す従来例の場合には、さらに凹み分を加算して突出部8を形成する。
前記の突出部8の高さが1mm以上であれば、500MPa程度の残留応力があった場合であっても50MPa以下にまで引っ張り残留応力をキャンセル(低減するか、または無くするか、あるいは圧縮残留応力状態にする)することができ、座盤溶接部の疲労寿命を向上させることができる。
なお、試験体に用いた図1または図8あるいは図14に示す鋼製枕木の寸法は、次のとおりである。鋼製枕木の長さ寸法は2580mm、上面板2の厚さ寸法は12mm、鋼製枕木の座盤を除いた高さ寸法は121mm、鋼製枕木の幅寸法は280mmである。
本発明を実施する場合、鋼製枕木1の幅方向の上面板2の部分における溶接されている2箇所の部分に渡って、幅方向全体として上に凸に塑性変形させる形態としてもよいが、座盤7を溶接により固定している上面板2の部分における各溶接されている部分を上に凸に、それぞれ独立して塑性加工しているほうが、溶接止端部に確実に圧縮するように塑性変形を与え、引っ張り残留応力を低減するために望ましい。
2 上面板
3 前面板
4 後面板
5 側面板
7 座盤
8 突出部
9 支持部材
10 鋼製枕木
11 鋼製ピース
12 押圧部
13 液圧ジャッキ
14 溶接部分
15 溶接止端部
16 押圧部
17 レール
18 線バネクリップ
19 肩部
Claims (4)
- 鋼製の上面板に前面板及び後面板並びに両側の側面板を一体に備えた鋼製枕木本体における上面板の上面に座盤を溶接により固定した鋼製枕木において、前記座盤の周囲を前記上面板に固定している溶接部分が上面板と共に上に凸に曲げ加工が施されて突出部が形成されていることを特徴とする鋼製枕木。
- 前記の突出部が形成されていることにより、前記座盤の溶接されている部分における溶接止端部のビード直角方向での表面の残留応力が50MPaより小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製枕木。
- 上面板部分における溶接されている部分が下側から上側に向かって上面板と共に押圧されて突出部が形成され、前記の突出部の形成により、上面板と共に板曲げ加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼製枕木。
- 鋼製の上面板に前面板及び後面板並びに両側の側面板を一体として成型加工された鋼製枕木本体にそれぞれ鋼製座盤を溶接により固定する鋼製枕木の製造方法において、前記上面板に座盤の周囲を溶接により固定した後、前記座盤の周囲を前記上面板に固定している溶接部分を上面板と共に上に凸に曲げ加工を施して突出部を形成することを特徴とする座盤付き鋼製枕木の製造方法。
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