以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における多機能周辺装置(以下、「MFP(Multi Function Peripheral)」と称する)10と、そのMFP10との間で無線通信が行われるデジタルコードレス子機(以下、「子機」と称する)50,70と、アクセスポイント90とから構成される無線通信システム1の電気的構成を示したブロック図である。
この無線通信システム1において、MFP10は、デジタルコードレス電話(DCL)による無線通信により子機50,70との間で通話を行うデジタルコードレス電話(DCL)機能、無線LAN(WLAN)による無線通信によりアクセスポイント90との間でデータの送受信を行う無線LAN(WLAN)機能、電話回線網500を介して外部の電話機(図示せず)と通話を行う一般電話機能、及び、これらの機能を介して受信した画像データをプリンタ23によって印刷するプリント機能を有する装置である。
DCLによる無線通信100およびWLANによる無線通信200は、いずれもISMバンドと称される2.4GHz帯(2.4GHz〜2.5GHz)の周波数帯域を使用する。よって、DCLによる無線通信100およびWLANによる無線通信200が同時に行われると、互いの無線通信で使用されるチャンネルにおいて電波が干渉し合い、各無線通信において電波障害が発生する恐れがある。
この場合、WLANによる無線通信200は、広い周波数帯域を用いて送信データを直接スペクトラム拡散するため、狭い周波数帯域を使用するDCLとの間で電波干渉が生じても、その影響を受けにくいが、逆にDCLによる無線通信100では、その影響を大きく受けてしまう。
また、DCLによる無線通信100では、リアルタイムに音声データを送受信しなければならないため、電波障害が発生して、通信中の音声データに雑音が混入したり、音声データが受信できないといった問題が発生しても、それをリカバリーする手法を採用するのが難しい。このような背景から、DCLによる無線通信100は、電波障害の影響を受けやすく、雑音や音途切れ等により音声品質が低下しやすい。
この低下は特に、DCLによる無線通信100と無線LANによる無線通信200との電波障害の度合が著しく高まる場合、即ち、子機50(子機70)とアクセスポイント90とが比較的近くに位置する場合に発生する。
本実施形態における無線通信システム1では、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の発生可能性を抑制することができるように構成されている。
次いで、MFP10の電気的構成について説明する。なお、子機50と子機70とは同一の構成であるので、以後の説明においては、子機50の説明を代表して行い、子機70の説明を省略する。
MFP10は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、フラッシュメモリ14、デジタルコードレス通信制御回路(以下、「DCL(Digital Cordless)通信制御回路」と称する)15、DCL用アレーアンテナ16、DCL電波到来角度推定回路17、無線LAN通信制御回路(以下、「WLAN通信制御回路」と称する)18、WLAN用アレーアンテナ19、WLAN電波到来角度推定回路20、操作ボタン21、液晶ディスプレイ(以下、「LCD(Liquid Crystal Display)」と称する)22、プリンタ23、送受話器24、音声処理回路25、NCU(Network Control Unit)26を備えている。
CPU11、ROM12、およびRAM13は、バスライン27を介して互いに接続されている。また、送受話器24とNCU26とは、音声処理回路25に接続されている。更に、DCL通信制御回路15、DCL電波到来角度推定回路17、WLAN通信制御回路18、WLAN電波到来角度推定回路20、操作ボタン21、LCD22、プリンタ23、音声処理回路25、NCU26およびバスライン27は、入出力ポート28を介して互いに接続されている。
CPU11は、ROM12やRAM13に記憶される固定値やプログラム、或いは、DCL通信制御回路15やWLAN通信制御回路18を介して送信する信号、DCL電波到来角度推定回路17やWLAN電波到来角度推定回路20を介して受信する信号、またはNCU26を介して送受信される信号に従って、MFP10が有している各機能の制御や、入出力ポート28と接続された各部を制御する演算装置である。
ROM12は、MFP10で実行されるプログラムや、その制御プログラムで参照される固定値などを格納した書換不能な不揮発性のメモリである。この制御プログラムは、図3および図4に示すフローチャートが例示される。また、ROM12には、通信方式メモリ12aが設けられている。この通信方式メモリ12aには、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式を変更するための制御データが記憶されている。なお、この通信方式メモリ12aには、以下の3つの通信方式に関する制御データが記憶されている。
第1に、2.4GHz帯を89のDCLチャンネル(dch1〜dch89)に分割し、このうち例えば45のDCLチャンネルの間を所定の周期(ホッピング周期:1/100秒)毎にホッピングすると共に、送信データを1度送信する方式(以下、「シングル方式」と称す)に関する制御データが記憶されている。第2に、前述した45のDCLチャンネルの間を所定の周期(ホッピング周期:1/100秒)毎にホッピングすると共に、送信データを送信し、その送信後、送信データを再び送信する方式(以下、「マルチ方式」と称す)に関する制御データが記憶されている。第3に、前述した45のDCLチャンネルの間を、WLANチャンネルの周波数を避けて、所定の周期(ホッピング周期:1/100秒)毎にホッピングする方式(以下、「回避ホッピング方式」と称す)に関する制御データが記憶されている。
なお、回避ホッピング方式に設定された場合には、MFP10は、各WLANチャンネルに対応するDCLチャンネルの一覧が予め記憶されたテーブルを参照することで、避けるべきWLANチャンネルに対応するDCLチャンネルを除外してホッピングを行う。これにより、WLANチャンネルの周波数を避けて、所定の周期(ホッピング周期:1/100秒)毎にDCLチャンネルをホッピングさせることができる。なお、このテーブルは、ROM12に記憶されている。
RAM13は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、MFP10の各操作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。フラッシュメモリ14は、MFP10の電源オフ後も記憶されたデータを保持すると共に、その保持されたデータを書き換え可能な不揮発性のメモリである。このフラッシュメモリ14には、第1〜第4エリアメモリ14a〜14d、第1〜第4エリア通信方式メモリ14e〜14h、および周波数記憶メモリ14iが設けられている。なお、この第1〜第4エリアメモリ14a〜14d、および第1〜第4エリア通信方式メモリ14e〜14hの詳細については、図2を参照して後述する。
周波数記憶メモリ14iは、MFP10に設けられたWLAN通信制御回路18とアクセスポイント90に設けられたWLAN通信制御回路90aとの間で行う無線通信200に使用するWLANチャンネルの周波数を記憶するメモリである。なお、WLANチャンネルの周波数が、操作ボタン21の操作によって設定されると、MFP10は、その設定された周波数を周波数記憶メモリ14iに記憶する。
DCL通信制御回路15は、3本のアンテナから構成されるDCL用アレーアンテナ16を有しており、1本のアンテナから構成されるDCL用アンテナ57を有する子機50のDCL通信制御回路56との間で無線通信100を行いながら、通話による音声データを構成するデジタル信号の送受信を行う回路である。
DCL通信制御回路15は、操作ボタン21の操作によってDCLによる通話開始要求がユーザから行われるか、或いは、子機50または子機70から通話開始要求信号を受信した場合に、その通話開始要求信号を送信した子機50または子機70との間で無線通信100による通話を開始する。また、操作ボタン21の操作によってDCLによる通話終了要求がユーザから行われるか、或いは、子機50または子機70から通話終了要求信号を受信した場合に、その通話終了要求信号を送信した子機50または子機70との間の無線通信100による通話を終了する。
DCL通信制御回路15は、CPU11に対して、動作状態を通知する機能を有しているので、CPU11は、DCL通信制御回路15による通知機能によって、DCLによる無線通信100の実行状態を判断することができる。
例えば、DCL通信制御回路15は、DCLによる通話開始要求または通話終了要求があったことを、CPU11に対して通知する。これにより、CPU11は、DCLによる通話開始要求があったか否か、若しくは、DCLによる通話が終了したか否かを判断することができる。
DCL電波到来角度推定回路17は、DCL通信制御回路15と接続されており、子機50(子機70)から出力されたDCL用電波がMFP10に入力される角度であって、MFP10に対する水平面内における入力角度を検出する回路である。子機50(子機70)から出力されたDCL用電波は、DCL用アレーアンテナ16により受信される。DCL用アレーアンテナ16は指向性が同一の3本のアンテナがそれぞれ異なる位置に配置された構成であるので、各アンテナにより受信されるDCL用電波の電界強度および位相が異なるものとなる。この各アンテナにより受信されたDCL用電波の電界強度および位相が、DCL通信制御回路15を介してDCL電波到来角度推定回路17に入力される。すると、DCL電波到来角度推定回路17は、各アンテナにより受信されたDCL用電波の電界強度の違いおよび位相差により、MFP10の水平面内におけるDCL用電波の入力角度を検出する。このDCL用電波の入力角度の検出により、CPU11は、図2で後述する12のエリアのうち、何れのエリアに、子機50(子機70)が存在しているかを検出することができる。
WLAN通信制御回路18は、3本のアンテナから構成されるWLAN用アレーアンテナ19を有しており、1本のアンテナから構成されるWLAN用アンテナ90bを有するアクセスポイント90との間で、WLAN規格であるIEEE 802.11bに準拠して、無線通信200を行う回路である。
MFP10は、このWLAN通信制御回路18を制御することにより、アクセスポイント90に接続されたLAN400と繋がる外部装置(図示せず)や、アクセスポイント90とWLANによる無線通信を行うPC(Personal Computer、図示せず)との間で、各種のデータを構成するデジタル信号を送受信する。なお、WLANによる無線通信200は、2.4GHz帯を14のWLANチャンネル(wch1〜wch14)に分割し、そのうちの1のWLANチャンネルを継続して利用しながら、直接拡散方式により無線通信を行う。
WLAN通信制御回路18は、操作ボタン21によるユーザの操作によってアクセスポイント90に対して送信要求信号であるRTS(Request to Send)信号を送信するか、或いは、アクセスポイント90からRTS信号を受信すると、WLANによる無線通信200を開始し、LAN400と繋がる外部装置(図示せず)や、アクセスポイント90とWLANによる無線通信を行うPC(図示せず)との間で、データの送受信を行う。
また、WLAN通信制御回路18は、CPU11に対して、WLANによる無線通信200の通信開始を通知する機能を有しているので、CPU11は、WLAN通信制御回路18による通知機能によって、WLANによる無線通信200の実行開始を判定することができる。
WLAN電波到来角度推定回路20は、WLAN通信制御回路18と接続されており、アクセスポイント90から出力されたWLAN用電波がMFP10に入力される角度であって、MFP10に対する水平面内における入力角度を検出する回路である。アクセスポイント90から出力されたWLAN用電波は、WLAN用アレーアンテナ19により受信される。WLAN用アレーアンテナ19は指向性が同一の3つのアンテナがそれぞれ異なる位置に配置された構成であるので、各アンテナにより受信されるWLAN用電波の電界強度および位相が異なるものとなる。この各アンテナにより受信されたWLAN用電波の電界強度および位相が、WLAN通信制御回路18を介してWLAN電波到来角度推定回路20に入力される。すると、WLAN電波到来角度推定回路20は、各アンテナにより受信されたWLAN用電波の電界強度の違いおよび位相差により、MFP10の水平面内におけるWLAN用電波の入力角度を検出する。このWLAN用電波の入力角度の検出により、CPU11は、図2で後述する12のエリアのうち、何れのエリアに、アクセスポイント90が存在しているかを検出することができる。
操作ボタン21は、各種動作の指示を行うための入力ボタンである。LCD22は、操作ボタン21の操作に応じてメニューや動作状態などを表示するための表示デバイスである。ユーザは操作ボタン21を操作することにより、その操作に対応する情報をLCD22に表示させることができる。
プリンタ23は、画像をプリンタ23に設けられた給紙カセット(図示せず)内の記録用紙へ印刷するプリント処理を行うもので、MFP10は、このプリンタ23を制御することによって、プリント機能を実現する。
送受話器24は、通話を行うための装置であり、マイクロフォンとスピーカとを有している。音声処理回路25は、アナログ音声信号をデジタル信号へ、デジタル信号をアナログ音声信号へ変換する回路であり、子機50(子機70)から送信されDCL通信制御回路15により受信されたデジタル信号をアナログ音声信号に変換して、送受話器24やNCU26へ出力する。
また、音声処理回路25は、送受話器24に音声が入力された時に出力されるアナログ音声信号、及び、外部の電話機(図示せず)から電話回線網500を介してNCU26によって受信されるアナログ音声信号をデジタル信号(音声データ)に変換して、DCL通信制御回路15へ出力する。尚、DCL通信制御回路15に入力されたデジタル信号(音声データ)は、DCLによる無線通信100によって子機50(子機70)へ送信される。
NCU26は、電話回線網500と接続されており、電話回線網500へのダイヤル信号の送出や、電話回線網500からの呼出信号の応答などを行って、外部の電話機(図示せず)との通話を制御するものである。MFP10は、このNCU26を制御することにより一般電話機能を実現する。
ここで、図2を参照して、子機50(子機70)が存在するエリアとアクセスポイント90が存在するエリアとの関係から、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式を決定するMFP10の処理について、概要を説明する。なお、この処理の詳細については、図3および図4を参照して行う。
図2(a)は、MFP10に対する水平面を、MFP10を中心として30度毎に12の均等なエリア(領域)に仮想的に分割し、その後、アクセスポイント90が存在するエリアを特定した図であり、図2(b)は、第1〜第4エリアメモリ14a〜14dに記憶される内容および第1〜第4エリア通信方式メモリ14e〜14hに記憶される内容を模式的に示した図であり、図2(c)は、分割した12の各エリアと、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式との関係を示した図である。
図2(a)に示すように、MFP10は、後述する図3のエリア設定処理で、まず、MFP10に対する水平面を、MFP10を中心として30度毎に12の均等なエリア(領域)に仮想的に分割する。その後、MFP10の正面方向(MFP10の操作ボタン21が配置された面に正対する方向)を基準として反時計回りに、分割した各エリアに1〜12のエリアナンバーを付与していく。その後、MFP10は、後述する図3のエリア設定処理で、アクセスポイント90からの電波到来角度を推定する。
図2(a)は、アクセスポイント90からの電波到来角度を推定した結果、アクセスポイント90が存在するエリアのエリアナンバーが「3」であると特定された場合を示している。アクセスポイント90が存在するエリアの特定が行われると、MFP10は、後述する図3のエリア設定処理で、アクセスポイント90が存在するエリアとそのアクセスポイント90が存在するエリアを両側から挟む2つのエリアとから第1エリアを形成する。
図2(a)に示すように、アクセスポイント90がエリアナンバー「3」のエリアに存在する場合には、エリアナンバー「3」のエリアを両側から挟む2つのエリアは、エリアナンバー「2」,「4」のエリアとなる。よって、第1エリアは、エリアナンバー「2」〜「4」の3つのエリアから形成される。
次に、MFP10は、後述する図3のエリア設定処理で、第1エリアを第1象限とした場合に、その第1象限に隣接する第2象限内に形成される3つのエリアからなる第2エリアを形成する。前述の通り、第1エリアは、エリアナンバー「2」〜「4」のエリアであるので、これらのエリアを第1象限とした場合に、第2象限内に形成される3つのエリアのエリアナンバーは、「5」〜「7」となる。よって、第2エリアは、エリアナンバー「5」〜「7」の3つのエリアから形成される。
次に、MFP10は、後述する図3のエリア設定処理で、第1エリアを第1象限とした場合に、その第1象限に対向する第3象限内に形成される3つのエリアからなる第3エリアを形成する。また、MFP10は、後述する図3のエリア設定処理で、第1エリアを第1象限とした場合に、その第1象限に隣接する第4象限内に形成される3つのエリアからなる第4エリアを形成する。
第3エリアおよび第4エリアは、第2エリアの形成方法と同様の方法でMFP10により形成される。なお、第3エリアは、エリアナンバー「8」〜「10」の3つのエリアから形成され、第4エリアは、エリアナンバー「11」〜「1」の3つのエリアから形成される。
なお、MFP10が、アクセスポイント90からの電波到来角度を推定して、アクセスポイント90が存在するエリアを特定し、その後、第1〜第4エリアを決定するのは、次の理由による。即ち、アクセスポイント90は、子機50(子機70)と異なり、一度設置されるとその設置場所から移動することが少ない。よって、移動することが少ないアクセスポイント90の存在エリアをまず特定することで、第1〜第4エリアを正確に決定することができるからである。
図2(b)に示すように、MFP10により形成された第1〜第4エリアの各エリアナンバーが、第1〜第4エリアメモリ14a〜14dに記憶される。第1エリアメモリ14aは、第1エリアを形成するエリアナンバーを記憶するメモリであり、図2(a)に示すようにアクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、エリアナンバー「2」〜「4」を記憶する。
同様に、第2エリアメモリ14bは、第2エリアを形成するエリアナンバーを記憶するメモリであり、図2(a)に示すようにアクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、エリアナンバー「5」〜「7」を記憶する。第3エリアメモリ14cは、第3エリアを形成するエリアナンバーを記憶するメモリであり、図2(a)に示すようにアクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、エリアナンバー「8」〜「10」を記憶する。最後に、第4エリアメモリ14dは、第4エリアを形成するエリアナンバーを記憶するメモリであり、図2(a)に示すようにアクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、エリアナンバー「11」〜「1」を記憶する。
次に、MFP10は、第1〜第4エリアの各エリア毎に、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式を、回避ホッピング方式、マルチ方式、またはシングル方式の何れかに決定する。具体的には、子機50(子機70)が第1エリアに存在する場合には、MFP10は、子機50(子機70)とアクセスポイント90とがMFP10に対して近似した方向に存在すると判定して、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式を回避ホッピング方式に決定する。これは、子機50(子機70)とアクセスポイント90とがMFP10に対して近似した方向に存在していれば、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200によって電波障害を受ける度合が高いので、WLANによる無線通信200から電波障害を受けない回避ホッピング方式でDCLによる無線通信100を行うためである。
また、子機50(子機70)が第2エリアまたは第4エリアに存在する場合には、MFP10は、子機50(子機70)とアクセスポイント90とがMFP10に対して所定角度離れた方向に存在すると判定して、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式をマルチ方式に決定する。これは、子機50(子機70)とアクセスポイント90とがMFP10に対して所定角度離れた方向に存在していれば、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200によって電波障害を受ける度合が、子機50(子機70)が第1エリアに存在する場合と比較して低くなるので、マルチ方式による送信データの再送で、WLANによる無線通信200から電波障害を抑制しつつ、DCLによる無線通信100を行うことができるからである。
最後に、子機50(子機70)が第3エリアに存在する場合には、MFP10は、子機50(子機70)とアクセスポイント90とがMFP10に対して略逆方向に存在すると判定して、MFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式をシングル方式に決定する。これは、子機50(子機70)とアクセスポイント90とがMFP10に対して略逆方向に存在していれば、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200によって電波障害を受ける度合が低くなるので、DCLによる無線通信100で一般的に使用されるシングル方式でも、無線通信100を行うことができるからである。
図2(b)に示すように、第1〜第4エリア毎に決定されたMFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式が、第1〜第4エリア通信方式メモリ14e〜14hに記憶される。第1エリア通信方式メモリ14eは、子機50(子機70)が第1エリアに存在する場合の通信方式を記憶するメモリであり、図2(a)に示すように、アクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、「回避ホッピング方式」を記憶する。
同様に、第2エリア通信方式メモリ14fは、子機50(子機70)が第2エリアに存在する場合の通信方式を記憶するメモリであり、図2(a)に示すように、アクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、「マルチ方式」を記憶する。また、第3エリア通信方式メモリ14gは、子機50(子機70)が第3エリアに存在する場合の通信方式を記憶するメモリであり、図2(a)に示すように、アクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、「シングル方式」を記憶する。最後に、第4エリア通信方式メモリ14hは、子機50(子機70)が第4エリアに存在する場合の通信方式を記憶するメモリであり、図2(a)に示すように、アクセスポイント90がエリアナンバー「3」に存在する場合には、図2(b)に示すように、「マルチ方式」を記憶する。
上述のようにして、第1〜第4エリア毎に決定されたMFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式は、図2(c)に示す結果となる。図2(c)から分かるように、アクセスポイント90が存在するエリア(エリアナンバー「3」のエリア)を基準として、第1〜第4エリアが形成され、その第1〜第4エリア毎にMFP10および子機50(子機70)のDCLによる無線通信100の通信方式が決定されている。
例えば、子機50が第1エリアに存在し、子機70が第3エリアにする場合には、MFP10と子機50との通信方式は(DCLによる無線通信100の通信方式は)、「周波数ホッピング方式」に決定される一方、MFP10と子機70との通信方式は、「シングル方式」に決定される。
このように、MFP10は、子機50(子機70)とアクセスポイント90とのMFP10に対する方向から、即ち、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の度合に応じて、DCLによる無線通信100の通信方式を子機毎に決定する。つまり、MFP10は、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の度合に応じて、DCLによる無線通信100の最適となる通信方式を子機毎に設定することができる。よって、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の発生可能性を抑制することができる。
図1の説明に戻る。次に、子機50の電気的構成について説明する。子機50は、MFP10との間で行われるDCLによる無線通信100を介して、MFP10や電話回線網500を介して接続される外部の電話機(図示せず)との間で通話を行うための装置である。子機50は、CPU51、ROM52、RAM53、操作ボタン54、LCD55、DCL通信制御回路56、DCL用アンテナ57、送受話器58、および音声処理回路59を有している。
CPU51、ROM52、およびRAM53は、バスライン60を介して互いに接続されている。また、送受話器58は、音声処理回路59に接続されている。更に、操作ボタン54、LCD55、音声処理回路59、およびバスライン60は、入出力ポート61を介して互いに接続されている。
CPU51は、ROM52やRAM53に記憶される固定値やプログラム、或いは、DCL通信制御回路56を介して送受信する信号に従って、子機50が有している各機能の制御や、入出力ポート61と接続された各部を制御する演算装置である。
ROM52は、子機50で実行されるプログラムや、その制御プログラムで参照される固定値などを格納した書換可能な不揮発性のメモリである。この制御プログラムは、図5に示すフローチャートが例示される。
RAM53は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、MFP10の各操作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。このRAM53には、通信方式メモリ53aが設けられている。通信方式メモリ53aは、DCL通信制御回路56を使用して行う無線通信100の通信方式を記憶するメモリである。通信方式メモリ53aに1の通信方式が記憶されると(回避ホッピング方式、マルチ方式、シングル方式のいずれかの方式が記憶されると)、DCL通信制御回路56は、その記憶された通信方式で無線通信100を実行する。
操作ボタン54は、各種動作の指示を行うための入力ボタンである。LCD55は、操作ボタン54の操作に応じてメニューや動作状態などを表示するための表示デバイスである。ユーザは操作ボタン54を操作することにより、その操作に対応する情報をLCD55に表示させることができる。
DCL通信制御回路56は、接続されたDCL用アンテナ57を用いて、MFP10のDCL通信制御回路15との間で無線通信100を行いながら、通話の音声を構成するデジタル信号を送受信する回路である。DCL通信制御回路56は、前述の通り、通信方式メモリ53aに記憶された1の通信方式(回避ホッピング方式、マルチ方式、シングル方式のいずれかの方式)により無線通信100を行う。なお、DCL通信制御回路56で使用されるDCLチャンネルは、通信方式メモリ53aに記憶された通信方式が何れの通信方式であっても、MFP10のDCL通信制御回路15から送信される同期信号によって、DCL通信制御回路15が使用しているDCLチャンネルと同一チャンネルに設定される。よって、DCL通信制御回路56のDCLチャンネルとDCL通信制御回路15のDCLチャンネルが不一致となることはない。
送受話器58は、通話を行うための装置であり、マイクロフォンとスピーカとを有している。音声処理回路59は、アナログ音声信号をデジタル信号へ、デジタル信号をアナログ音声信号へ変換する回路であり、MFP10から送信されDCL通信制御回路56により受信されたデジタル信号をアナログ音声信号に変換して、送受話器58へ出力する。
また、音声処理回路59は、送受話器58に音声が入力された時に出力されるアナログ音声信号をデジタル信号(音声データ)に変換して、DCL通信制御回路56へ出力する。尚、DCL通信制御回路56に入力されたデジタル信号(音声データ)は、無線通信100によってMFP10へ送信される。
次に、アクセスポイント90の電気的構成について説明する。このアクセスポイント90は、WLAN通信制御回路90aおよび1本のアンテナから構成されるWLAN用アンテナ90bを有しており、MFP10のWLAN通信制御回路18との間で無線通信200を実施可能に構成されている。また、アクセスポイント90は、LAN400と接続されており、LAN400とMFP10とを互いに接続する中継器として動作する既知の回路を有している。なお、アクセスポイント90は、MFP10から送信された電波出力要求信号を受信すると、所定期間(例えば、5秒間)、WLAN通信制御回路90aからWLAN用電波を出力する機能を有している。
次に、図3を参照して、MFP10で実行されるエリア設定処理について説明する。図3は、MFP10のCPU11で実行されるエリア設定処理のフローチャートを示した図である。エリア設定処理では、MFC10に対する水平面を12の均等なエリアに分割し、アクセスポイント90が存在するエリアを基準として、第1〜第4エリアを形成し、その第1〜第4エリア毎にDCLによる無線通信100の通信方式を決定する。なお、エリア設定処理は、DCLによる無線通信100の通信方式を決定する指示が、MFP10の操作ボタン21により行われた場合に実行される。
エリア設定処理では、まず、MFP10に対する水平面を、MFP10を中心として30度毎に12の均等なエリア(領域)に仮想的に分割する(S1)。次に、MFP10の正面方向(MFP10の操作ボタン21が配置された面に正対する方向)を基準として反時計回りに、分割した各エリアへ1〜12のエリアナンバーを付与する(S2)。
その後、電波出力要求信号をアクセスポイント90へ送信する(S3)。そして、この電波出力要求信号に応答しアクセスポイント90から出力されるWLAN用電波を受信したか否かを判定する(S4)。アクセスポイント90から出力されるWLAN用電波を受信していなければ(S4:No)、そのWLAN用電波を受信するまでS4の処理が繰り返し実行される。一方、アクセスポイント90から出力されるWLAN用電波を受信した場合には(S4:Yes)、受信したWLAN用電波からアクセスポイント90の電波到来方向を推定する(S5)。なお、この推定は、WLAN電波到来角度推定回路20を用いて行われる。S5の処理後、推定した電波到来角度から、アクセスポイント90が存在するエリアを算出する(S6)。なお、このS1〜S6の処理が実行された結果は、図2(a)に示す結果となる(アクセスポイント90がエリアナンバー「3」のエリアに存在する場合)。
S6の処理後、算出したアクセスポイント90が存在するエリアと、そのエリアを両側から挟む2つのエリアとを第1エリアとし、第1エリアに属するエリアナンバーを第1エリアメモリ14aに記憶する(S7)。その後、第1エリアを第1象限とした場合に、第2象限内に形成される3つのエリアを第2エリアとし、第2エリアに属するエリアナンバーを第2エリアメモリ14bに記憶する(S8)。
同様に、第1エリアを第1象限とした場合に、第3象限内に形成される3つのエリアを第3エリアとし、第3エリアに属するエリアナンバーを第3エリアメモリ14cに記憶する(S9)。そして、第1エリアを第1象限とした場合に、第4象限内に形成される3つのエリアを第4エリアとし、第4エリアに属するエリアナンバーを第4エリアメモリ14dに記憶する(S10)。
その後、第1エリアメモリ14aに記憶された各エリアナンバーに「回避ホッピング方式」の通信方式を割り当て、それを第1エリア通信方式メモリ14eに記憶する(S11)。これにより、MFP10は、子機50(子機70)が第1エリアに存在する場合には、DCLによる無線通信100の通信方式を、「回避ホッピング方式」に決定することができる。また、第2エリアメモリ14bに記憶されたエリアナンバーに「マルチ方式」の通信方式を割り当て、それを第2エリア通信方式メモリ14fに記憶する(S12)。これにより、MFP10は、子機50(子機70)が第2エリアに存在する場合には、DCLによる無線通信100の通信方式を、「マルチ方式」に決定することができる。
同様に、第3エリアメモリ14cに記憶されたエリアナンバーに「シングル方式」の通信方式を割り当て、それを第3エリア通信方式メモリ14gに記憶する(S13)。最後に、第4エリアメモリ14dに記憶されたエリアナンバーに「マルチ方式」の通信方式を割り当て、それを第4エリア通信方式メモリ14hに記憶する(S14)。その後、このエリア設定処理を終了する。このS12およびS13の処理により、MFP10は、子機50(子機70)が第3エリアに存在する場合には、DCLによる無線通信100の通信方式を、「シングル方式」に決定し、子機50(子機70)が第4エリアに存在する場合には、DCLによる無線通信100の通信方式を、「マルチ方式」に決定することができる。
上述したS6〜S13の処理が実行された結果は、図2(b)に示す結果となる(アクセスポイント90がエリアナンバー「3」のエリアに存在する場合)。このように、エリア設定処理では、子機50(子機70)が存在するエリアとアクセスポイント90が存在するエリアとの関係から、即ち、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の度合に応じて、DCLによる無線通信100の最適となる通信方式を決定することができる。
次に、図4を参照して、MFP10で実行される通信方式設定処理について説明する。図4は、MFP10のCPU11で実行される通信方式設定処理のフローチャートを示した図である。通信方式設定処理では、DCLによる無線通信100の通信方式を、エリア設定処理(図3参照)で決定した通信方式に設定する。なお、通信方式設定処理は、MFP10の電源が投入されると、その投入期間中、定期的に(例えば、1秒間隔で)実行される。
また、この通信方式設定処理は、各子機毎に個別に実行される処理である。即ち、通信方式設定処理は、子機50に対して実行されると共に、子機70に対しても子機50とは別に実行される。よって、MFP10は、各子機毎に、DCLによる無線通信100の最適となる通信方式を設定することができる。なお、図4においては、子機50についての説明を代表して行い、子機70の説明は省略する。
通信方式設定処理では、まず、子機50からのDCL用電波を受信中であるか、即ち、子機50とのDCLによる無線通信100が行われているか否かを判定する(S31)。子機50からのDCL用電波を受信していなければ(S31:No)、DCLによる無線通信100の通信方式を設定する必要がないので、この通信方式設定処理を終了する。
一方、子機50からのDCL用電波を受信中である場合には、即ち、子機50とのDCLによる無線通信100が行われている場合には(S31:Yes)、受信したDCL用電波から、子機50の電波到来角度を推定する(S32)。なお、この電波到来角度の推定は、DCL電波到来角度推定回路17を用いて実行される。
その後、推定した電波到来角度から、子機50が存在するエリアを算出する(S33)。そして、子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第1エリアメモリ14aに記憶されているか否かを判定する(S34)。子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第1エリアメモリ14aに記憶されている場合には(S34:Yes)、子機50は、第1エリア(図2(c)参照)に存在する。よって、第1エリア通信方式メモリ14eに記憶された「回避ホッピング方式」に子機50の通信方式を設定する設定信号を、DCL用電波を送信中である子機50へ送信する(S35)。この設定信号により、子機50は、DCLによる無線通信100の通信方式を「回避ホッピング方式」に設定することができる。その後、DCL通信制御回路15の通信方式を「回避ホッピング方式」に設定する(S36)。これにより、MFP10は、DCLによる無線通信100の通信方式を、子機50の通信方式と同じ「回避ホッピング方式」に設定することができる。
なお、回避ホッピング方式は、前述の通り、WLANチャンネルの周波数を避けて、DCLチャンネルをホッピングさせる通信方式である。よって、子機50が、第1エリア(図2(c)参照)に存在していても、WLANによる無線通信200から電波障害を受けずに、DCLによる無線通信100を行うことができる。
S34の処理で、子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第1エリアメモリ14aに記憶されていない場合には(S34:No)、子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第2エリアメモリ14bに記憶されているか否かを判定する(S37)。子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第2エリアメモリ14bに記憶されている場合には(S37:Yes)、子機50は、第2エリア(図2(c)参照)に存在する。よって、第2エリア通信方式メモリ14fに記憶された「マルチ方式」に子機50の通信方式を設定する設定信号を、子機50へ送信する(S38)。この設定信号により、子機50は、DCLによる無線通信100の通信方式を「マルチ方式」に設定することができる。その後、DCL通信制御回路15の通信方式を「マルチ方式」に設定する(S39)。これにより、MFP10は、DCLによる無線通信100の通信方式を、子機50の通信方式と同じ「マルチ方式」に設定することができる。
マルチ方式は、前述の通り、送信データを送信し、その送信後、その送信データを再び送信する通信方式である。よって、第2エリアに子機が複数存在することで、DCLチャンネルがWLANチャンネルの周波数帯域に含まれてしまい、WLANによる無線通信200からの電波障害が発生したとしても、送信データの再送時に電波障害がなければ、なんら問題なく通話を継続することができる。従って、マルチ方式では、簡易な方法で、WLANによる無線通信200から受ける電波障害を抑制することができる。
S37の処理で、子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第2エリアメモリ14bに記憶されていないと判定された場合には(S37:No)、子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第3エリアメモリ14cに記憶されているか否かを判定する(S40)。子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第3エリアメモリ14cに記憶されている場合には(S40:Yes)、子機50は、第3エリア(図2(c)参照)に存在する。よって、第3エリア通信方式メモリ14gに記憶された「シングル方式」に子機50の通信方式を設定する設定信号を、子機50へ送信する(S41)。この設定信号により、子機50は、DCLによる無線通信100の通信方式を「シングル方式」に設定することができる。その後、DCL通信制御回路15の通信方式を「シングル方式」に設定する(S42)。これにより、MFP10は、DCLによる無線通信100の通信方式を、子機50の通信方式と同じ「シングル方式」に設定することができる。
このシングル方式は、前述の通り、DCLによる無線通信100で一般的に使用される通信方式である。この一般的に使用される通信方式への設定を、子機50が第3エリアに存在する場合に、即ち、電波障害を受ける度合が低い場合に限定することで、DCLチャンネルがWLANチャンネルから受ける電波障害の発生可能性を抑制することができる。
S40の処理で、子機50が存在するエリアのエリアナンバーが、第3エリアメモリ14cに記憶されていないと判定された場合には(S40:No)、子機50が存在するエリアのエリアナンバーは、第4エリアメモリ14cに記憶されている。つまり、子機50は、第4エリア(図2(c)参照)に存在する。よって、第4エリア通信方式メモリ14hに記憶された「マルチ方式」に子機50の通信方式を設定する設定信号を、子機50へ送信する(S43)。その後、DCL通信制御回路15の通信方式を「マルチ方式」に設定する(S44)。
なお、S36、S39、S42またはS44のいずれかの処理が実行されると、この通信方式設定処理を終了する。
上述した通り、通信方式設定処理では、MFP10は、子機50が存在するエリアに応じて、DCLによる無線通信100の通信方式を決定し、その決定した通信方式に子機50の通信方式を設定する設定信号を送信すると共に、MFP10の通信方式を、子機50の通信方式と一致させる。よって、MFP10は、子機50が存在するエリアに応じて、DCLによる無線通信100の通信方式を変えたとしても、子機50との通話を継続することができる。
また、通信方式設定処理は、子機毎に実行されるので、MFP10は、子機毎に、DCLによる無線通信100の通信方式を設定することができる。
また、通信方式設定処理では、S31の処理を定期的に(例えば、1秒毎に)実行しているので、ユーザが子機50を持って各エリアに移動したとしても、その移動先のエリアを確実に特定し、その特定したエリアに応じて、子機50との通信方式を設定することができる。
次に、図5を参照して、子機50で実行される子機用通信方式設定処理について説明する。図5は、子機50のCPU51で実行される子機用通信方式設定処理のフローチャートを示した図である。この子機用通信方式設定処理は、子機50の電源投入後、その投入期間中、定期的に(例えば、0.5秒毎に)実行される処理である。なお、子機50で実行される子機用通信方式設定処理と子機70で実行される子機用通信方式設定処理とは同一であるので、図5においては、子機50についての説明を代表して行い、子機70の説明は省略する。
子機用通信方式設定処理では、まず、MFP10から送信された設定信号を受信したか否かが判定される(S61)。設定信号を受信していない場合には(S61:No)、通信方式を設定する必要がないので、この子機用通信方式設定処理を終了する。一方、設定信号を受信した場合には(S61:Yes)、子機50の通信方式を設定するS62以降の処理へ移行する。ここで、子機50は、設定信号を受信した場合には、その設定信号をRAM53に記憶する。このRAM53に記憶された設定信号は、この子機用通信方式設定処理が終了する際に、クリアされる。
なお、設定信号は、MFP10と通話が行われている場合に限り送信されるので(図4のS31参照)、設定信号を受信した(S61:Yes)と判定されるのは、子機50がMFP10と無線通信中であるときに限られる。よって、子機50がMFP10と無線通信100を行っていないときは、MFP10によって設定信号が送信されることはない。従って、子機50がMFP10と無線通信100を行っていないにも拘らず、MFP10から設定信号が無駄に送信されることを防止することができる。
S61の処理で設定信号を受信したと判定されると(S61:Yes)、受信した設定信号の示す通信方式が「回避ホッピング方式」であるか否かが判定される(S62)。受信した設定信号の示す通信方式が「回避ホッピング方式」である場合には(S62:Yes)、DCL通信制御回路56の通信方式を「回避ホッピング方式」に設定し、この通信方式を通信方式メモリ53aに記憶する(S63)。これにより、子機50は、DCLによる無線通信100の通信方式を、MFP10の通信方式と同じ「回避ホッピング方式」に設定することができる。
一方、受信した設定信号の示す通信方式が「回避ホッピング方式」でない場合には(S62:No)、受信した設定信号の示す通信方式が「マルチ方式」であるか否かが判定される(S64)。受信した設定信号の示す通信方式が「マルチ方式」である場合には(S64:Yes)、DCL通信制御回路56の通信方式を「マルチ方式」に設定し、この通信方式を通信方式メモリ53aに記憶する(S65)。これにより、子機50は、DCLによる無線通信100の通信方式を、MFP10の通信方式と同じ「マルチ方式」に設定することができる。
一方、受信した設定信号の示す通信方式が「マルチ方式」でない場合には(S64:No)、受信した設定信号の示す通信方式が「シングル方式」であるので、DCL通信制御回路56の通信方式を「シングル方式」に設定し、この通信方式を通信方式メモリ53aに記憶する(S66)。これにより、子機50は、DCLによる無線通信100の通信方式を、MFP10の通信方式と同じ「シングル方式」に設定することができる。
このように、子機用通信方式設定処理では、MFP10から送信される設定信号に応じて、通信方式を設定するので、子機50は、誤りなく、DCL通信制御回路56の通信方式を、MFP10の通信方式と一致させることができる。よって、子機50が存在するエリアに応じて、通信方式が変更されたとしても、子機50は、MFP10との通話を継続することができる。
上述した通り、本実施形態の通信システム1によれば、MFP10は、子機50(子機70)とアクセスポイント90とのMFP10に対する方向から、即ち、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の度合に応じて、DCLによる無線通信100の通信方式を子機毎に決定する。つまり、MFP10は、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の度合に応じて、DCLによる無線通信100の最適となる通信方式を子機毎に設定することができる。よって、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の発生可能性を抑制することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
本実施形態においては、MFP10は、子機50(子機70)からのDCL用電波が受信中である場合に、即ち、MFP10と子機50(子機70)とのDCLによる無線通信100が実行中である場合に、子機50が存在するエリアに応じて通信方式を決定し、その決定した通信方式に子機50の通信方式を設定する設定信号を送信すると共に、MFP10の通信方式を子機50の通信方式と一致させたが、これに限られるものではない。即ち、MFP10は、MFP10と子機50(子機70)とのDCLによる無線通信100が実行中である場合に加え、MFP10と子機50(子機70)とのDCLによる無線通信100が実行されていない場合であっても、子機50が存在するエリアに応じて通信方式を決定し、その決定した通信方式に子機50の通信方式を設定する設定信号を送信すると共に、MFP10の通信方式を子機50の通信方式と一致させても良い。この構成の場合には、DCLによる無線通信100が実行されていない場合であっても、MFP10と子機50(子機70)との間で定期的に通信を行うように構成する。そして、子機50(子機70)からの定期的な通信による電波をMFP10が受信する度に、通信方式設定処理(図4参照)を実行するに構成すれば良い。なお、この構成の場合には、通信方式設定処理で実行されるS31の処理を削除すれば良い。
また、本実施形態においては、子機50(子機70)が存在するエリアが第1エリアである場合に、MFP10および子機50(子機70)の通信方式を「回避ホッピング方式」に設定したが、これに限られるものではない。即ち、子機50(子機70)が存在するエリアとアクセスポイント90が存在するエリアが一致した場合に、MFP10および子機50(子機70)の通信方式を「回避ホッピング方式」に設定する一方で、第1エリアを形成する他のエリア(図2(c)に示す場合におけるエリアナンバー「2」,「4」のエリア)に子機50(子機70)が存在する場合には、MFP10および子機50(子機70)の通信方式を「マルチ方式」に設定しても良い。この構成によれば、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200によって電波障害を受ける度合が最も高くなった場合にのみ、MFP10および子機50(子機70)の通信方式を「回避ホッピング方式」に設定する。よって、WLANチャンネルを避けるためにホッピングから除外されるDCLチャンネルの発生を極力抑え、DCLチャンネルを有効活用することができる。
また、本実施形態においては、子機50(子機70)が存在するエリアが第3エリアである場合に、MFP10および子機50(子機70)の通信方式を「シングル方式」に設定したが、これに限られるものではない。即ち、子機50(子機70)が存在するエリアが第3エリアである場合にも、子機50(子機70)が第2エリアまたは第4エリアに存在する場合と同様に、「マルチ方式」に設定しても良い。この構成によれば、子機50(子機70)が第3エリアに存在する場合であっても、「マルチ方式」に設定されるので、DCLによる無線通信100がWLANによる無線通信200から受ける電波障害の発生可能性を更に抑制することができる。
また、本実施形態においては、MFP10と子機50(子機70)とのDCLによる無線通信100が実行中である場合に、MFP10の通信方式を設定する処理(図4のS32〜S44の処理)および子機50(子機70)の通信方式を設定する処理(図5のS62〜S66の処理)を実行したが、これに限られるものではない。即ち、MFP10と子機50(子機70)とのDCLによる無線通信100が実行中である場合であり、且つ、アクセスポイント90とMFP10とがWLANによる無線通信200を行っている場合に、MFP10の通信方式を設定する処理および子機50(子機70)の通信方式を設定する処理を実行する構成としても良い。この構成の場合には、WLAN通信制御回路18による通知機能によって、MFP10のCPU11がWLANによる無線通信200の実行開始を検出した場合に、MFP10の通信方式を設定する処理を実行する構成とすれば良い。この構成の場合には、WLANによる無線通信200によりDCLによる無線通信100への電波障害が発生する可能性が発生した場合に限り、通信方式を設定する各処理が実行されるので、MFP10の通信方式を設定する処理および子機50(子機70)の通信方式を設定する処理の実行回数を低減することができる。
また、本実施形態においては、MFP10に対する水平面を、MFP10を中心として30度毎に12の均等なエリアに分割したが、これに限られるものではない。即ち、MFP10に対する水平面を、MFP10を中心として例えば15度毎に24の均等なエリアに分割して、本発明を適用しても良い。
また、本実施形態においては、MFP10は、DCL電波到来角度推定回路17を用いて、子機50(子機70)からのMFP10の水平面内におけるDCL用電波の入力角度を検出し、WLAN電波到来角度推定回路20を用いて、アクセスポイント90からのMFP10の水平面内におけるWLAN用電波の入力角度を検出したが、これに限られるものではない。即ち、DCL通信制御回路15に入力されたDCL用電波を入力すると共に、WLAN通信制御回路18に入力されたWLAN用電波を入力して、子機50(子機70)からのMFP10の水平面内におけるDCL用電波の入力角度を検出すると共に、アクセスポイント90からのMFP10の水平面内におけるWLAN用電波の入力角度を検出する1の電波到来角度推定回路を用いても良い。この構成の場合には、MFP10に、DCL電波到来角度推定回路17およびWLAN電波到来角度推定回路20の代わりに、1の電波到来角度推定回路を設け、その1の電波到来角度推定回路に、DCL通信制御回路15から出力されるDCL用電波の電界強度および位相およびWLAN通信制御回路18から出力されるWLAN用電波の電界強度および位相を入力するように構成すれば良い。この構成によれば、MFP10は、子機50(子機70)が存在するエリアとアクセスポイント90が存在するエリアとを1の電波到来角度推定回路によって検出することができる。
また、本実施形態においては、MFP10は、DCL通信制御回路15とWLAN通信制御回路18とを別々の回路で構成していたが、これに限られるものではない。即ち、DCL通信制御回路15とWLAN通信制御回路18とを1の通信制御回路として構成しても良い。この構成の場合には、1の通信制御回路と上述した1の電波到来角度推定回路とを接続し、MFP10は、1の電波到来角度推定回路を用いて、1の通信制御回路内のDCL通信制御回路15から出力されるDCL用電波で子機50(子機70)が存在するエリアを検出すると共に、1の通信制御回路内のWLAN通信制御回路18から出力されるWLAN用電波でアクセスポイント90が存在するエリアを検出する構成とすれば良い。この構成の場合には、高周波を使用するDCL通信制御回路15とWLAN通信制御回路18とを1の通信制御回路に一纏めにすることができる。
なお、1の通信制御回路と上述した1の電波到来角度推定回路とをMFP10に設ける構成においては、更に、DCL用電波を受信するDCLアレーアンテナ16とWLAN用電波を受信するWLANアレーアンテナ19とを1のアレーアンテナで実現することができる。これは、DCLアレーアンテナ16とWLANアレーアンテナ19とは、いずれも、受信周波数が2.4GHzから2.5GHzまでの周波数だからである。よって、1の通信制御回路と上述した1の電波到来角度推定回路とをMFP10に設ける構成においては、DCLアレーアンテナ16とWLANアレーアンテナ19との2つのアレーアンテナを使用することなく、1のアレーアンテナを用いて、DCL用電波およびWLAN用電波を受信することができる。従って、MFP10を小型化することができる。