JP2010047684A - 熱可塑性シリコーンゴム組成物及び成形品 - Google Patents

熱可塑性シリコーンゴム組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコーンゴム特有の優れた柔軟性、耐熱性及び密封性を損なうことなく優れた機械特性及び耐摩耗性を有する熱可塑性シリコーンゴム組成物、及びこれを成形してなる、医療用器具として好適な成形品を提供する。
【解決手段】架橋シリコーンゴムパウダー100質量部及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂5〜150質量部を配合し、混練して得られることを特徴とする熱可塑性シリコーンゴム組成物;かかる熱可塑性シリコーンゴム組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性シリコーンゴム組成物、及びこれを成形してなる、医療用器具として好適な成形品に関する。
近年、ゴム弾性を有する軟質性材料として、熱可塑性樹脂と同様に押出成形や射出成形等の成形加工が可能で、かつリサイクル可能な熱可塑性エラストマーが、様々な分野で使用されている。なかでも特に、オレフィン系やスチレン系の熱可塑性エラストマーは、適度な柔軟性、ゴム弾性及び成形加工性を有し、各種加硫ゴムの代替品として広く利用されている。
しかし、これら熱可塑性エラストマーは、使用されているゴムの硬度が比較的高いため、医療用器具等をはじめ、一層高い柔軟性が求められる成形品の用途に使用する場合には、多量の可塑剤を配合することが必要となる。しかし、このような成形品においては、可塑剤が成形品表面から滲み出してくるという問題点があった。
これに対し、ゴムの中でも特に優れた柔軟性、耐熱性及び密封性を併せ持つシリコーンゴムを使用した熱可塑性シリコーンゴム組成物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平6−313110号公報 特開平9−132722号公報
しかし、特許文献1で開示されている熱可塑性シリコーンゴム組成物では、使用する樹脂成分が、エチレン−酢酸ビニル共重合体に限定されており、汎用性が低く、しかもシリコーンゴムの優れた特徴である耐熱性や密封性が著しく低下するという問題点があった。
また、特許文献2で開示されている熱可塑性シリコーンゴム組成物では、使用する樹脂成分の種類が限定されていないものの、樹脂成分とシリコーンゴムとの相溶性が低く、シリコーンゴムの配合量が限定されてしまう。そのため、かかる熱可塑性シリコーンゴム組成物は、使用している樹脂成分を改質したに過ぎないものであり、シリコーンゴム特有の優れた柔軟性を有していないという問題点があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シリコーンゴム特有の優れた柔軟性、耐熱性及び密封性を損なうことなく優れた機械特性及び耐摩耗性を有する熱可塑性シリコーンゴム組成物、及びこれを成形してなる、医療用器具として好適な成形品を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、架橋シリコーンゴムパウダー100質量部及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂5〜150質量部を配合し、混練して得られる熱可塑性シリコーンゴム組成物を成形してなることを特徴とする成形品を提供する。
上記本発明の成形品において、前記熱可塑性シリコーンゴム組成物が、さらに前記シリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂以外の熱可塑性樹脂を200質量部以下配合し、混練して得られるものであることが好ましい。
また、本発明は、架橋シリコーンゴムパウダー100質量部及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂5〜150質量部を配合し、混練して得られることを特徴とする熱可塑性シリコーンゴム組成物を提供する。
本発明によれば、従来よりもシリコーンゴムの配合量が多い熱可塑性シリコーンゴム組成物が得られる。かかる熱可塑性シリコーンゴム組成物及びこれを成形してなる成形品は、シリコーンゴム特有の優れた柔軟性、耐熱性及び密封性を有し、しかも優れた機械特性及び耐摩耗性を有するので、特に医療用器具としての用途に好適である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の成形品は、架橋シリコーンゴムパウダー(以下、成分(a)と略記する)100質量部及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂(以下、成分(b)と略記する)5〜150質量部を配合し、混練して得られる熱可塑性シリコーンゴム組成物を成形してなることを特徴とする。
また、本発明において「架橋」とは、オリゴマー同士の結合のみならず、構成単位となるモノマー成分同士の結合も含むものとし、結合する分子の大きさを限定するものではない。
本発明においては、成分(a)を成分(b)と組み合わせて使用することで、またパウダー状の成分(a)を使用することで、成分(a)及び(b)の相溶性を向上させている。その結果、従来よりも成分(a)の配合量が多い新規な熱可塑性シリコーンゴム組成物を得ている。このような熱可塑性シリコーンゴム組成物及びその成形品は、シリコーンゴム特有の優れた柔軟性、耐熱性及び密封性を有し、加えて、機械特性や耐磨耗性等にも優れたものである。例えば、成形品として内視鏡用鉗子栓を作製した場合、かかる鉗子栓は、チューブの抜き差しを繰り返しても、磨耗することなく、優れた密封性を維持できる。
前記成分(a)は、架橋シリコーンゴムが微粉末化されたものである。ここで架橋シリコーンゴムとは、シロキサン結合(−Si−O−)を有するポリシロキサン骨格が三次元状に架橋された構造を有するゴム状のものであれば良い。具体的には、下記一般式(I)で表される構成単位(以下、構成単位(I)と略記する)を有するものが例示できる。
Figure 2010047684
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、二価の基、あるいは置換基を有していても良いアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、ビニル基又は2−プロペニル基である。)
Rにおけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良いが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
環状のアルキル基は、単環式及び多環式のいずれでも良いが、単環式であることが好ましく、炭素数が5〜7の単環式であることがより好ましい。
Rにおけるアリール基は、単環式及び多環式のいずれでも良いが、単環式であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
Rにおけるアルコキシ基は、前記Rにおけるアルキル基が酸素原子に結合したものが例示でき、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
Rにおけるアルコキシカルボニルアルキル基は、前記Rにおけるアルキル基と、前記Rにおけるアルキル基から一つの水素原子を除いたアルキレン基とが、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)を介して結合したものが例示できる。
Rにおけるアルキルカルボニルオキシアルキル基は、前記Rにおけるアルコキシカルボニルアルキル基の、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)をカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)で置換したものが例示できる。
前記Rにおけるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、ビニル基又は2−プロペニル基は、置換基を有していても良い。
具体的には、これらの基の少なくとも一つの水素原子が置換基で置換されたものが例示できる。ここで置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が例示でき、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。置換基で置換される水素原子の数は、一つでも良いし、複数でも良く、すべての水素原子が置換基で置換されていても良い。
また、前記Rにおけるアリール基の芳香環を構成する炭素原子の一部が、窒素原子、酸素原子又はイオウ原子等のヘテロ原子で置換されていても良い。
前記Rにおける二価の基としては、酸素原子(−O−);エチレン基(−CHCH−)、プロピレン基(−CHCHCH−)等のアルキレン基が例示できる。
前記Rの少なくとも一方が二価の基である構成単位(I)は、ポリシロキサン骨格を架橋させているものである。すなわち、該二価の基の残りの一つの単結合が、別の構成単位(I)のケイ素原子との間で形成される。このようにして、構成単位(I)同士が結合されることで、ポリシロキサン骨格は二価の基で架橋されて三次元状の構造を形成している。
一方、前記Rがいずれも二価の基ではない構成単位(I)は、ポリシロキサン骨格を架橋させていないものである。
酸素原子を介してポリシロキサン骨格を架橋させる場合には、少なくとも一方のRが水酸基である前記構成単位(I)同士を脱水縮合させるか、又は少なくとも一方のRが水酸基である前記構成単位(I)と、少なくとも一方のRがアルコキシ基、好ましくはメトキシ基である前記構成単位(I)とを、脱アルコール縮合させれば良い。
エチレン基やプロピレン基等のアルキレン基を介してポリシロキサン骨格を架橋させる場合には、少なくとも一方のRがビニル基や2−プロペニル基等のアルケニル基である前記構成単位(I)と、少なくとも一方のRが水素原子である前記構成単位(I)とを付加反応させれば良い。また、少なくとも一方のRがアルキル基、好ましくはメチル基である前記構成単位(I)同士を硬化剤存在下で反応させて架橋しても良い。
前記架橋反応は、いずれも公知の反応であり、硬化剤を使用することで円滑に進行させることができる。硬化剤としては、有機過酸化物、白金系触媒等が例示できる。
ポリシロキサン骨格を形成する場合には、公知の方法でシロキサン結合を順次構築すれば良く、例えば、水酸基又はアルコキシ基(好ましくはメトキシ基)を有するシロキサン化合物やポリシロキサン化合物を使用して、前記架橋方法と同様に縮合させる方法が例示できる。得られたポリシロキサン骨格を上記架橋反応に供することで、架橋シリコーンゴムが得られる。
一方、シロキサン結合を順次三次元状に形成すれば、例えば、網目状に架橋されたポリシロキサン骨格を形成できるが、これを架橋シリコーンゴムとして使用しても良い。そのためには、水酸基又はアルコキシ基(好ましくはメトキシ基)を少なくとも三つ有するシロキサン化合物やポリシロキサン化合物を併用して、前記架橋方法と同様に縮合させれば良い。
なお、これらポリシロキサン骨格の形成時には、水酸基やアルコキシ基以外の架橋可能な基を有する構成単位を適量使用しても良い。
本発明においては、前記架橋シリコーンゴムとしては、直鎖状のジメチルポリシロキサン骨格(前記Rがいずれもメチル基である構成単位(I)が直鎖状に結合したもの)を架橋させた構造を有するもの、又はシロキサン結合を順次三次元状に形成して網目状に架橋させたポリシロキサン骨格を有するものが好ましい。
このように本発明においては、シリコーンゴムとして架橋済みのものを使用する。また、このようなものであれば、市販品を使用しても良い。
一方、例えば、未架橋のオルガノポリシロキサンのベースモノマーを、硬化剤を使用して架橋させる際に、各種添加剤等との混練を同時に行って得られたシリコーンゴムは、その架橋シリコーンゴムが成分(b)との混練時に分散性が劣り、成形品とした場合に、ブツが生じるなど表面形状が劣るだけでなく機械特性にも劣る。
成分(a)は、前記架橋シリコーンゴムを公知の方法で微粉末化することで得られる。また、あらかじめ微粉末化された市販品を成分(a)として使用しても良い。
本発明においては、微粉末化された架橋シリコーンゴムがさらにシリコーン樹脂で被覆された微粉末状のものを、成分(a)として使用しても良い。ここでシリコーン樹脂とは、ケイ素化合物を主成分とする合成樹脂であればいずれでも良く、公知のものから適宜選択して使用できる。例えば、オルガノポリシロキサンを主鎖とするものが好ましく、上記の微粉末化された架橋シリコーンゴムとして使用できる材質のものでも良い。微粉末化された架橋シリコーンゴムをシリコーン樹脂で被覆する場合には、公知の方法を適用すれば良い。例えば、水酸基又はアルコキシ基と、好ましくはビニル基等のアルケニル基とを有するシラン化合物を、微粉末化された架橋シリコーンゴムと混合し、塩基性又は酸性触媒の存在下で反応させて、前記架橋シリコーンゴムの表面にアルケニル基を導入する。次いでこれを、例えば、一部のケイ素原子に水素原子が結合しているシリコーン樹脂と付加反応させる方法が挙げられる。
また、このようなシリコーン樹脂で被覆された成分(a)としては、市販品を使用しても良い。
成分(a)は、平均粒径が0.5〜80μmのものが好ましく、1〜40μmのものがより好ましい。
成分(a)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び使用比率は、目的に応じて適宜調整すれば良い。
成分(b)は特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、オルガノポリシロキサン分子中の複数箇所にイソシアネート基(−N=C=O)が導入されたイソシアネート誘導体と、多価アルコールとを反応させて得られたものが挙げられる。あるいは、イソシアネート基を複数有し、前記イソシアネート誘導体に該当しないイソシアネート化合物をさらに併用して反応させて得られたものでも良い。
使用する前記イソシアネート誘導体、イソシアネート化合物及び多価アルコールは、目的に応じて適宜選択すれば良い。
前記イソシアネート誘導体としては、オルガノポリシロキサンの二箇所の分子末端にイソシアネート基を有するものが好ましい。
前記イソシアネート化合物としては、二箇所の分子末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物が好ましい。
前記多価アルコールとしては、分子の末端に水酸基を有するものが好ましく、少なくとも一箇所の分子末端に水酸基を有する2価アルコールがより好ましく、二箇所の分子末端に水酸基を有する2価アルコールが特に好ましい。
さらに本発明においては、前記イソシアネート誘導体、イソシアネート化合物、多価アルコール以外に、その他の各種添加剤を共存させて加熱混錬することにより、ウレタン結合の形成と各成分の混錬とを同時に行って得られた樹脂組成物を成分(b)として使用しても良い。ここで「添加剤」としては、例えば、後記のように熱可塑性シリコーンゴム組成物に配合できるものとして例示した「公知の各種添加剤」が挙げられる。
また、成分(b)として市販品を使用しても良い。
熱可塑性シリコーンゴム組成物において、成分(b)の配合量が下限よりも少ないと、機械特性や成形加工性に劣り、所望の成形品を得られない傾向がある。一方、成分(b)の配合量が上限よりも多いと、シリコーンゴム特有の柔軟性、耐熱性、密封性等が低下する傾向にある。これは、成分(a)の配合比率が、相対的に低下するためであると考えられる。
成分(b)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び使用比率は、目的に応じて適宜調整すれば良い。
熱可塑性シリコーンゴム組成物は、前記成分(a)及び(b)以外に、さらに成分(b)以外の熱可塑性樹脂(以下、成分(c)と略記する)を200質量部以下配合し、混練して得られるものが好ましい。
この場合、成分(b)は、成分(a)及び(c)の相溶化剤として機能する。そして、成分(c)を配合することにより、熱可塑性シリコーンゴム組成物及びその成形品に、さらに種々の特性を付与できる。
成分(c)は、熱可塑性を有するものであれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択し得る。具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン−メタクリル酸コポリマーアイオノマー樹脂等のアイオノマー樹脂;超高分子量ポリプロピレン等のポリプロピレン;ポリブテン;4−メチルペンテン−1ポリマー;環状ポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリ酢酸ビニル;ポリビニルアルコール;ポリメタクリル酸メチル;酢酸セルロース;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル;脂肪族又は芳香族ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリアリレート;ポリエーテルエーテルケトン;液晶ポリマー;熱可塑性ポリウレタン;熱可塑性エラストマー;生分解性ポリマー;及びこれら樹脂からなる群から選択される二種以上の共重合体が例示できる。なお、これら樹脂において、不斉炭素原子を有するものは、イソタクチック、シンジオタクチック及びアタクチックのいずれの構造でも良い。そして、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体及び周期的共重合体のいずれでも良い。
なかでも、成分(c)としては、ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンが特に好ましい。ポリエチレンを配合することにより、特に優れた柔軟性や表面の潤滑性を成形品に付与できる。このような成形品として、特に医療用チューブが好適である。
成分(c)の配合量は、成分(a)100質量部に対して200質量部以下であるが、50〜200質量部であることが好ましい。成分(c)の配合量が上限よりも多いと、良好な特性の成形品が得られない傾向にある。
成分(c)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び使用比率は、目的に応じて適宜調整すれば良い。
熱可塑性シリコーンゴム組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内において、前記成分(a)、(b)及び(c)以外に、さらに公知の各種添加剤を配合したものでも良い。添加剤として具体的には、相溶化剤;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;結晶核剤;ブロッキング防止剤;シール性改良剤;ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤;ポリエチレンワックス等の滑剤;着色剤;顔料;アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト、クレー又はカーボン等の無機充填剤;有機系又は無機系の発泡剤;水和金属化合物、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、アンチモン又はシリコーン等の難燃剤等が例示できる。
配合する添加剤の種類や量は、目的に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されない。そして、それぞれの添加剤は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び使用比率は、目的に応じて適宜調整すれば良い。
熱可塑性シリコーンゴム組成物は、例えば、成分(a)及び(b)、さらに必要に応じて成分(c)や前記添加剤を配合して溶融混練することで得られる。この時、これら成分をすべて配合してから溶融混練しても良いし、これら成分を任意の順序で順次配合しながら溶融混練しても良い。
溶融混練の方法は特に限定されず、例えば、単軸混練機、二軸混練機、ロール、バンバリーミキサー又はニーダー等の混練機を使用して、公知の方法で行えば良い。また、例えば、適当なL/Dの二軸混練機や加圧ニーダー等を使用して、連続的に溶融混練しても良い。
溶融混練時の温度は、配合する成分の種類や組み合わせ等に応じて適宜調整し得るが、通常は150〜240℃であることが好ましく、170〜230℃であることがより好ましい。
本発明の成形品は、上記熱可塑性シリコーンゴム組成物を成形してなるものである。かかる成形品としては特に、優れた柔軟性、耐熱性及び密封性等を有することが要求されることから医療用器具が好適である。特に好ましい医療用器具として、具体的には、内視鏡用鉗子栓、あるいは内視鏡のうち体腔内に挿入する挿入部を外装するチューブや各種処置具用のチューブ等の医療用チューブが例示できる。
内視鏡用鉗子栓の具体例を図1に、医療用チューブの具体例を図2にそれぞれ例示する。
図1に例示する内視鏡用鉗子栓1は略筒状であり、その上面部10の略中央部には、例えば、該鉗子栓1の内部空間部に連通し、穿刺針等の処置具を挿入するための挿入用貫通孔11が形成され、さらに、内視鏡の処置具挿通口に設けられている口金部に装着される口金取り付け部12が形成されている。なお、本発明において各部の形状や構成は、ここに示すものに限定されるものではなく、サイズとともに目的に応じて適宜設定し得る。
本発明の熱可塑性シリコーンゴム組成物は成形加工性に優れ、柔軟性や密封性にも優れるので、このような内視鏡用鉗子栓の作製に際し、各部材を別途成形してそれらを組み立てても良いが、一体に成形して作製することも容易である。
また、図2に例示する医療用チューブ2は、内径がd、外径がdであり、ここでは単純化するために中心軸方向の長さが短めのものを例示しているが、本発明においてこの長さは特に限定されるものではない。内径d及び外径dも、目的に応じて適宜設定すれば良く、本発明の熱可塑性シリコーンゴム組成物は成形加工性に優れるので、例えば、内径d及び外径dが数mm程度のサイズのチューブも容易に作製できる。
本発明の医療用チューブは、成形が容易であるだけでなく、柔軟性や表面の平滑性に優れ、所定の時間折り曲げて使用した場合でも、割れ等の劣化が生じ難い。
熱可塑性シリコーンゴム組成物の成形方法は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から適宜選択すれば良い。具体的には、押出成形機、射出成形機、ブロー成形機又はカレンダー成形機等を使用する方法が例示でき、所望の形状に成形できる。
成形時の温度は、熱可塑性シリコーンゴム組成物の種類や成形方法に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されないが、溶融混練時の温度と同様で良い。
本発明の熱可塑性シリコーンゴム組成物は、従来のものよりも、成分(a)の配合量を多くすることができる。したがって、かかる組成物及びその成形品は、シリコーンゴム特有の優れた柔軟性、耐熱性及び密封性を損なうことなく、優れた機械特性や耐磨耗性等を有する。また、成分(b)として、種々の熱可塑性ポリウレタン樹脂の成分をシリコーン変性して使用でき、さらに、成分(c)として種々の熱可塑性樹脂を使用できるので、目的に応じて多様な熱可塑性シリコーンゴム組成物及び成形品を提供できる。さらに、可塑剤が不要なので、その成形品からの滲み出しという問題点も生じない。これらの特性から、本発明の成形品は、特に医療用器具としての用途が好適である。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
<成分(a)>
・(a−1)KMP−598(信越化学工業株式会社製):直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を有するシリコーンゴムパウダー。球状、平均粒子径13μm、真比重0.97。
・(a−2)KMP−605(信越化学工業株式会社製):球状シリコーンゴムパウダーの表面をシリコーン樹脂で被覆したパウダー。球状、平均粒子径2μm、真比重0.99。
<成分(b)>
・(b−1)Elast−Eon E2A(AorTechバイオマテリアルズ社製)
・(b−2)レザミンPS−60000(大日精化工業株式会社製)
<成分(c)>
・(c−1)NOVATEC HD HF111(日本ポリエチレン株式会社製):高密度ポリエチレン、比重0.945、MFR=0.05g/10min(190℃、2.16kg荷重)
実施例及び比較例で作製した各ペレットを以下の試験に供して、特性及び成形性を評価した。
(1)機械特性
JIS K 6301に準拠し、試験片として2mm厚プレスシートを3号ダンベル型に打ち抜いたものを使用した。引張速度を500mm/分とし、次の基準で評価した。
○:破断時の伸びが200%以上である。
×:破断時の伸びが200%未満である。
(2)射出成形性
50t射出成形機で50mm×100mm×3mmのシートを220℃で射出成形し、成形品の外観を目視により観察し、フローマーク、ブツ発生の有無を、次の基準で評価した。
○:成形品表面の鏡面性が良好であり、ブツの発生もない。
×:成形品表面にフローマークや材料の剥離等による模様が発生し、ブツも目立つ。
(3)押出成形性
20mm押出機にて幅20mm×厚さ1mmの平板を200℃で押出成形し、成形品の表面外観や形状を観察し、次の基準で評価した。
○:成形品表面の鏡面性が良好であり、形状も安定し、ブツの発生もない。
×:成形品表面において、「鏡面性が悪い」、「模様が発生する」、「エッジがきれいに出ない」、「ブツが目立つ」及び「メヤニが発生する」のうちの少なくとも一つの不良を有する。
(4)内視鏡用鉗子栓特性
50t射出成形機で内視鏡用鉗子栓を220℃で射出成形し、その作業性や密封性を、次の基準で評価した。
○:チューブの挿入が容易であり、抜き差しの繰り返しで密封性は低下しない。
×:「大きな力を要するためチューブの挿入が困難である」及び「抜き差しにより密封性が低下する」のうちの少なくとも一つの不良を有する。
(5)チューブ特性
20mm押出機にて外径3mm、内径2mmのチューブを200℃で押出成形した。このチューブを長さ10cmに切り取り、折り曲げて両端を当接させることで管状とし、この状態を保持するように、当接面から2cmの部位にクリップを装着して固定した。1時間静置後にクリップを外し、チューブの状態を次の基準で評価した。
○:チューブに割れ、白化、しわがない。
×:チューブに割れ、白化、しわがある。
[実施例1]
表1に示す配合比(質量部)で各原料をスクリュー径20mmの二軸混練機に投入し、190℃、60rpmの条件で溶融混練し、熱可塑性シリコーンゴム組成物のペレットを得た。次いで、得られたペレットからサンプルを作製し、上記(1)、(2)及び(4)の評価に供した。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本実施例の内視鏡用鉗子栓は良好な特性を有していた。
[実施例2]
原料の配合比が表1に示す通りであること以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、成分(b)の配合量を少なくしても、本実施例の内視鏡用鉗子栓は良好な特性を有していた。
[実施例3]
原料の配合比が表1に示す通りであること以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、成分(b)の配合量を多くしても、本実施例の内視鏡用鉗子栓は良好な特性を有していた。
[実施例4]
原料の配合比が表1に示す通りであること以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、異なる種類の成分(a)を使用した場合でも、本実施例の内視鏡用鉗子栓は良好な特性を有していた。
[実施例5]
原料の配合比が表1に示す通りであること以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、異なる種類の成分(b)を使用した場合でも、本実施例の内視鏡用鉗子栓は良好な特性を有していた。
[実施例6]
表2に示す配合比(質量部)で各原料をスクリュー径20mmの二軸混練機に投入し、190℃、60rpmの条件で溶融混練し、熱可塑性シリコーンゴム組成物のペレットを得た。次いで、得られたペレットからサンプルを作製し、上記(1)、(3)及び(5)の評価に供した。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本実施例のチューブは良好な特性を有していた。
[実施例7]
原料の配合比が表2に示す通りであること以外は、実施例6と同様にして、評価を行った。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、成分(c)の配合量を多くしても、本実施例のチューブは良好な特性を有していた。
[比較例1]
原料の配合比が表1に示す通りであること以外は、実施例1と同様にして、評価を試みた。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本比較例では、成分(b)の配合量が少なすぎることにより、機械特性及び射出成形性に劣り、内視鏡用鉗子栓を成形できなかった。このように、良好な成形加工性を有する熱可塑性シリコーンゴム組成物を得るためには、成分(b)の配合量を、特定の値よりも多くする必要があることが確認された。
[比較例2]
原料の配合比が表1に示す通りであること以外は、実施例1と同様にして、評価を試みた。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本比較例では、成分(b)の配合量が多すぎることにより、成形により得られた内視鏡用鉗子栓は特性が劣るものであった。このように、特性が良好な医療用器具を得るためには、成分(b)の配合量を、特定の値よりも少なくする必要があることが確認された。
[比較例3]
原料の配合比が表2に示す通りであること以外は、実施例6と同様にして、評価を行った。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本比較例では、成分(c)の配合量が多すぎることにより、成形により得られたチューブは特性が劣るものであった。このように、特性が良好な医療用器具を得るためには、成分(c)の配合量を、特定の値よりも少なくする必要があることが確認された。
Figure 2010047684
Figure 2010047684
本発明は、熱可塑性エラストマーの代替として利用可能であり、特に各種医療用器具への利用に好適である。
本発明に係る内視鏡用鉗子栓を例示する斜視図である。 本発明に係る医療用チューブを例示する斜視図である。
符号の説明
1・・・内視鏡用鉗子栓、2・・・医療用チューブ、10・・・上面部、11・・・挿入用貫通孔、12・・・口金取り付け部

Claims (3)

  1. 架橋シリコーンゴムパウダー100質量部及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂5〜150質量部を配合し、混練して得られる熱可塑性シリコーンゴム組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
  2. 前記熱可塑性シリコーンゴム組成物が、さらに前記シリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂以外の熱可塑性樹脂を200質量部以下配合し、混練して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
  3. 架橋シリコーンゴムパウダー100質量部及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタン樹脂5〜150質量部を配合し、混練して得られることを特徴とする熱可塑性シリコーンゴム組成物。
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