JP2010046748A - 電動工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インターナルギヤ34を機軸J方向の回転許容位置と回転規制位置との間で変位させることにより、変速装置Hの減速比が外部トルクに応じて自動変速されて高速低トルク出力状態と低速高トルク出力状態とを出力可能な電動工具において、変速後のインターナルギヤ34の位置をロックするモードロック機構60を設けた構成とする。
【選択図】図4
Description
例えば、ねじ締め機では、締め付け当初は小さなトルクで足り、締め付けが進行するに従って徐々に大きな回転トルクが必要となる。このため、締め付け当初では変速装置の減速比を小さくして高速低トルクを出力し、締め付け途中で変速装置の減速比を大きくして低速高トルクを出力することが、迅速かつ確実なねじ締めを行う観点で要求される機能となる。しかも、締め付け途中の段階で、出力軸に付加される締め付け抵抗(外部トルク)が一定値に達した時点で自動的に減速比が切り換わることが使い勝手の点で要求される。
下記の特許文献には、電動モータの出力軸とねじ締めビットを装着した出力軸との間に二段階の遊星歯車機構を有する変速装置を介装したねじ締め機が開示されている。この従来のねじ締め機の変速装置によれば、ねじ締め当初では二段目遊星歯車機構のインターナルギヤを介して一段目遊星のキャリアと二段目遊星のキャリアが直結される結果、高速低トルクが出力されて迅速なねじ締めがなされる。ねじ締めが進行して使用者がねじ締め機の押し付け力を強くすると、二段目遊星歯車機構のインターナルギヤが軸方向へ相対変位して一段目遊星歯車機構のキャリアから切り離される一方、その回転が固定されることにより第2段遊星での減速が加わる結果当該変速装置の減速比が大きくなって低速高トルクが出力されて確実なねじ締めがなされる。
本発明は係る従来の問題を解消するためになされたもので、電動工具の変速装置において、自動変速モードを選択した場合に外部トルクによって高速低トルクモードから低速高トルクモードへ、あるいはその逆にモードが切り換わり、かつこの切り換わったモードが確実に維持される結果、作業効率を高め、安定した作業品質を確保できるようにすることを目的とする。
請求項1記載の電動工具によれば、駆動源としての電動モータの回転動力は、第1及び第2遊星歯車機構を有する変速装置によって二段階で変速されてスピンドルに出力される。しかも、インターナル規制部材によって第2遊星歯車機構のインターナルギヤが回転する状態と回転が規制された状態とに切り換えることにより、変速比を変化させて高速かつ低トルクが出力される高速低トルクモードと低速かつ高トルクが出力される低速高トルクモードとに切り換えることができる。
また、自動変速モードを選択すると、スピンドルに付加される外部トルクが一定値に達した時点で、インターナルギヤの回転が許容される高速低トルクモードからインターナル規制部材によって回転が許容されない低速高トルクモードへ、あるいはその逆にモードが切り換わる。
しかも、外部トルクに基づいて一旦切り換わった後のモードがモードロック機構によってロックされることから、その後外部トルクが変化してもスピンドルから出力される回転数及び出力トルクは安定して出力される。
このように、請求項1記載の電動工具によれば、変速装置において一旦切り換わったモードがモードロック機構により確実に維持されることから、従来よりも作業効率を向上させ、また使用者が変わった場合でも安定した作業品質を確保することができる。
請求項2記載の電動工具によれば、自動変速モードに代えて固定モードを選択することにより、高速低トルクモード若しくは低速高トルクモードを作業形態に合わせて任意に選択することができる。固定モードのうち高速低トルクモードを選択すると、当該電動工具の作業行程の全行程において常時スピンドルを高速かつ低トルクで回転させることができる。このため、この高速低トルクモードでは、作業を迅速に行うことができる。逆に固定モードのうち低速高トルクモードを選択すると、電動工具の作業行程の全行程において常時スピンドルを低速かつ高トルクで回転させることができる。このため、この低速高トルクモードでは大きな出力トルクで作業を確実に行うことができる。
例えば、電動工具としてねじ締め機に適用した場合に、自動変速モードを選択することにより、ねじ締め当初は高速低トルクモードで迅速にねじ締めを行い、ねじ締め抵抗が大きくなった最終段階では低速高トルクモードで締め残しのない確実なねじ締め作業を行うことができる。
このようにモード切り換え部材の機軸方向の変位が許容される状態では自動変速モードとなる。
これに対してモード切り換え部材を機軸方向の一方または他方の位置に固定すると、固定モードとなる。この固定モードでは、スピンドルに付加される外部トルクの変化に関係なく、出力モードが高速低トルクモード若しくは低速高トルクモードに固定される。
すなわち、モード切り換え部材を機軸方向の一方の位置に固定操作すると固定モードのうち高速低トルクモードに固定される。この高速低トルクモードでは、インターナルギヤが回転許容位置に固定されて作業の全工程においてスピンドルは外部トルクに関係なく高速かつ低トルクで回転する。
逆に、モード切り換え部材を機軸方向の他方の位置に固定操作すると、固定モードのうち低速高トルクモードに固定される。この低速高トルクモードでは、インターナルギヤを回転許容位置側に付勢するばね付勢力が当該インターナルギヤに作用しない状態となる。このため、スピンドルに対して僅かな外部トルク(電動モータの起動トルク)が付加された時点でインターナルギヤは回転許容位置から回転規制位置に移動することから、電動モータ起動直後からスピンドルには低速高トルクが出力され、実質的に低速高トルクモードに固定された状態となる。
モード切り換え部材の機軸方向の移動操作は、当該電動工具の外部から使用者が任意に操作することができる。
なお、本明細書では、機軸方向は、第2遊星歯車機構のインターナルギヤの回転軸線に沿った方向の意味で用いる。多くの場合、この機軸方向(機長方向)は、スピンドルの軸線方向に一致し、また電動モータの出力軸の軸線方向に一致し、当該電動工具の工具本体の長手方向となる。
第2段遊星歯車機構におけるインターナルギヤ(第2段インターナルギヤ)を機軸方向に変位させるための構成については、種々態様の構成を適用することができる。例えば、第2段インターナルギヤと第1段遊星歯車機構におけるキャリア(第1段キャリア)との間に相互に噛み合うクラッチ歯を周方向に沿って介在させることによって実現することができる。この場合、第2段インターナルギヤが第1段キャリアに接近する方向(回転許容位置側)にばね付勢されており、スピンドルに対して一定以上の外部トルクが付加され、これが第2段インターナルギヤに付加されて第1段キャリアに対して相対回転を生じることにより当該第2段インターナルギヤをばね付勢力に抗して回転規制位置へ変位させる構成とすることができる。
請求項5記載の電動工具によれば、固定モードでは、機軸方向に固定されたモード切り換え部材によりばね付勢力が受けられてインターナルギヤに作用しない状態とされる。
この電動工具1は、本体部2とハンドル部3を備えている。本体部2は概ね円柱体形状を有するもので、その長手方向(機軸方向)の中程から側方へ突き出す状態にハンドル部3が設けられている。本体部2とハンドル部3は、機軸方向(図1において左右方向)に対して左右に二分された2つ割りハウジングを相互に突き合わせて結合したハウジングを備えている。以下、本体部2のハウジングを本体ハウジング2aと言い、ハンドル部3のハウジングをハンドルハウジング3aと称して必要に応じて区別する。
ハンドル部3の基部前側には、トリガ形式のスイッチレバー4が配置されている。このスイッチレバー4を使用者が指先で引き操作すると電動モータ10が起動する。また、ハンドル部4の先端には、バッテリパック5を取り付けるためのバッテリ取り付け台座部6が設けられている。このバッテリパック5を電源として電動モータ10が作動する。
電動モータ10は、本体部2の後部に内蔵されている。この電動モータ10の回転動力は、三つの遊星歯車機構を有する変速装置Hにより減速されてスピンドル11に出力される。スピンドル11の先端には、先端工具を装着するためのチャック12が取り付けられている。
三つの遊星歯車機構は電動モータ10からスピンドル11に至る動力伝達経路に介在されている。以下、動力伝達経路の上流側から第1段遊星歯車機構20、第2段遊星歯車機構30、第3段遊星歯車機構40と言う。第1〜第3段遊星歯車機構20,30,40の詳細が図2に示されている。第1〜第3遊星歯車機構20,30,40は、電動モータ10の出力軸10aに同軸に配置され、またスピンドル11に同軸に配置されている。以下、スピンドル11の回転軸(電動モータ10の出力軸10aの回転軸)を機軸Jとも言う。この機軸J上に電動モータ10、第1〜第3段遊星歯車機構20,30,40及びスピンドル11が配置されている。この機軸Jに沿った方向が当該電動工具1の機軸方向であり、この機軸方向が本体部2の長手方向となる。
第1段キャリア23の前面中心には第2段太陽ギヤ31が一体に設けられている。この第2段太陽ギヤ31には三つの第2段遊星ギヤ32〜32が噛み合わされている。この三つの第2段遊星ギヤ32〜32は、第2段キャリア33に回転自在に支持されている。また、この三つの第2段遊星ギヤ32〜32は、第2段インターナルギヤ34に噛み合わされている。この第2段インターナルギヤ34は、機軸J回りに回転可能かつ機軸J方向に一定の範囲で変位可能な状態で本体ハウジング2aの内面に沿って支持されている。この第2段インターナルギヤ34の詳細については後述する。
第2段キャリア33の前面中心には第3段太陽ギヤ41が一体に設けられている。この第3段太陽ギヤ41には三つの第3段遊星ギヤ42〜42が噛み合わされている。この三つの第3段遊星ギヤ42〜42は、第3段キャリア43に回転自在に支持されている。また、この三つの第3段遊星ギヤ42〜42は、第3段インターナルギヤ44に噛み合わされている。この第3段インターナルギヤ44は本体ハウジング2aの内面に沿って取り付けられている。この第3段インターナルギヤ44は、機軸J回りに回転不能かつ機軸J方向に移動不能に固定されている。
第3段キャリア43の前面中心にスピンドル11が同軸に結合されている。スピンドル11は、軸受け13,14を介して本体ハウジング2aに対して機軸J回りに回転自在に支持されている。このスピンドルの先端にチャック12が取り付けられている。
図2は、第2段インターナルギヤ34のクラッチ歯34a〜34aが第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aに噛み合った状態を示している。この噛み合い状態では、第2段インターナルギヤ34は機軸J方向について後側(図2において左側)の回転許容位置に位置しており、この回転許容位置では第2段インターナルギヤ34は第1段キャリア23と一体で回転し、従ってこの場合には第2段太陽ギヤ31と第2段インターナルギヤ34が一体で回転する。スピンドル11を経て第2段インターナルギヤ34に一定以上の外部トルクが付加されると、第1段キャリア23に対して相対回転してクラッチ歯34aとクラッチ歯23aの噛み合いが外れ、その結果第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側(図2において右側)へ変位する。
第2段インターナルギヤ34は、圧縮ばね35によって上記回転許容位置側へ付勢されている。このため、第2段インターナルギヤ34はこの圧縮ばね35の付勢力に抗して機軸J方向前側(クラッチ歯23a,34aが外れる方向)へ変位する。また、この圧縮ばね35の付勢力に基づいて、第2段インターナルギヤ34が前側へ変位して減速比が切り換わるための一定の外部トルクが設定されている。
圧縮ばね35は、第2段インターナルギヤ34の前面に対して押圧板36を介在させて作用している。すなわち、第2段インターナルギヤ34は、その前面に当接された円環形状の押圧板36を介して作用する圧縮ばね35の付勢力によってクラッチ歯34a,23aが噛み合う方向であって回転許容位置側に押し付けられている。
押圧板36の後側には転動板37が配置されている。転動板37も円環形状を有しており、第2段インターナルギヤ34の周囲に沿って機軸J回りに回転可能に支持されている。この転動板37と、第2段インターナルギヤ34の周面に設けたフランジ部34bの前面との間には、多数の鋼球38〜38が挟み込まれている。この鋼球38〜38と転動板37が、第2段インターナルギヤ34を回転自在に支持しつつ圧縮ばね35の付勢力を作用させるためのスラスト軸受けとして機能する。
これに対して、両モード切り換え部材39,39が前側へ平行移動すると、押圧板36が圧縮ばね35に抗して前側へ平行移動される。押圧板36が前側へ平行移動されると、圧縮ばね35が第2段インターナルギヤ34に作用しなくなる。圧縮ばね35の付勢力が第2段インターナルギヤ34に作用しない状態では、クラッチ歯34aとクラッチ歯23aとの噛み合い状態を保持する力がなくなるため、当該第2段インターナルギヤ34に回転方向の僅かな外力(例えば伝動モータ10の起動トルク)が付加されると、第1段キャリア23に対して相対回転し、その結果当該第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側へ変位する。
このモード切り換えリング50を機軸J回りに一定の角度範囲で回転操作することにより、当該電動工具1の回転出力が、スピンドル11に付加される外部トルクが前記圧縮ばね35の付勢に基づいて設定された一定値に達した時点で「高速低トルク」出力状態(高速低トルクモード)から「低速高トルク」出力状態(低速高トルクモード)に自動的に切り換わる自動変速モードと、「高速低トルク」出力状態に固定された高速固定モードと、「低速高トルク」出力状態に固定された高トルク固定モードの3つの動作モードを任意に切り換えることができる。
図3に示すようにこのモード切り換えリング50には、本体ハウジング2aの4箇所の挿通溝孔2b〜2bに対応して(整合する位置に)4つの切り換え溝部51〜51が設けられている。各切り換え溝部51に、上下2本のモード切り換え部材39,39の各端部であって本体ハウジング2aから突き出された部分が進入している。
各切り換え溝部51は、機軸J回り方向に長い高速固定モード用の後側溝部51bと、同じく機軸J回り方向に長い高トルク固定モード用の前側溝部51cと、両溝部51b,51cを連通する自動変速モード用の中間溝部51dを有する概ねクランク形(S字形)に形成されている。機軸J方向の位置について、後側溝部51bが後側(図3において左側)に、前側溝部51cがこれよりも前側(図3において右側)に、概ね溝幅分だけずれて配置されている。
後側溝部51bと前側溝部51cを連通する中間溝部51dは、機軸J方向の長さについて、本体ハウジング2の挿通溝孔2bとほぼ同じ長さで機軸J方向に長く形成されている。図3は、上下2本のモード切り換え部材39,39のそれぞれの両端部がこの中間溝部51d内に位置した状態を示している。この場合、モード切り換えリング50は、自動変速モードに切り換えられている。図3では、各モード切り換え部材39の端部が中間溝部51dの後側に位置している。この状態では、スピンドル11に一定値以上の外部トルクが作用していない状態であって、押圧板36を介して第2段インターナルギヤ34に圧縮ばね35の付勢力が作用し、その結果当該第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に保持されて第1段キャリア23と一体で回転する状態となっている。この状態が本実施形態における電動工具1の変速装置Hの初期状態となっている。
この自動変速モードでは、上下2本のモード切り換え部材39,39がそれぞれ中間溝部51d内を機軸J方向に変位可能な状態となるため、スピンドル11に一定値以上の外部トルクが付加されると、第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35に抗して機軸J方向前側の回転規制位置に変位する。この状態が図4及び図5に示されている。スピンドル11に付加される外部トルクが一定値以下に低下すると、後述するモードロック機構60の解除により第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35によって機軸J方向後側の回転許容位置に戻されて、第1段キャリア23と一体で回転可能な初期状態に戻される。この状態が図2及び図3に示されている。
これに対して、スピンドル11に付加される外部トルクが一定値以上に達して第2段インターナルギヤ34が前側の回転規制位置に変位することによりそのクラッチ歯34a〜34aと第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとの噛み合いが外れた状態では、第2段遊星歯車機構30の減速比は大きくなる結果、スピンドル11は低速かつ高トルクで回転する。自動変速モードでは、前者の高速低トルク出力状態と後者の低速高トルク出力状態との切り換えがスピンドル11に付加される外部トルクに基づいて自動的になされる。前者の高速低トルク出力状態では、モード切り換え部材39,39は、図3に示すように中間溝部51dの後側に位置する。後者の低速高トルク出力状態では、モード切り換え部材39,39は、図5に示すように中間溝部51dの前側に位置する。すなわち、上下2本のモード切り換え部材39,39は、第2段インターナルギヤ34と一体となって機軸J方向に変位する。
モード切り換えリング50を図2〜図5に示す自動変速モード位置から、図7に示す高速固定モード位置に回転操作すると、変速装置Hの動作が高速固定モードに切り換わる。この場合、モード切り換えリング50を使用者から見て時計回り方向(図3及び図5においてツマミ部50aを紙面手前に倒す方向)に一定角度回転操作すると自動変速モードから高速固定モードに切り換わる。モード切り換えリング50を高速固定モードに切り換えると、上下2本のモード切り換え部材39,39の両端部がそれぞれ後側溝部51b内に相対的に進入した状態となる。この状態では、両モード切り換え部材39,39は機軸J方向後側の位置に固定され、前側へ変位不能な状態となる。このため、スピンドル11に一定値以上の外部トルクが付加された場合であっても、図6に示すように第2段インターナルギヤ34は回転許容位置に保持されて第2段遊星歯車機構30は減速比の小さな状態に保持され、その結果スピンドル11には高速低トルク状態が出力される。このようにモード切り換えリング50を図7に示す高速固定モードに切り換えると、変速装置Hの出力状態は高速低トルク出力状態に固定される。
また、この高速固定モードでは、上下2本のモード切り換え部材39,39が、自動変速モードにおける初期状態と同様モード切り換え溝部51の後端部に当接し、これにより圧縮ばね35の付勢力の全部若しくは一部がこのモード切り換え部材39,39で受けられることから、第2段インターナルギヤ34の回転抵抗を小さくすることができ、ひいては当該電動工具1の消費電力(電流値)を下げることができる。
これに対してモード切り換えリング50を高速低トルクモード位置に回転操作すると、上下2本のモード切り換え部材39,39の機軸J方向の位置が後側に固定される結果、第2段インターナルギヤ34は回転許容位置にロックされ、従ってスピンドル11には外部トルクの変化に関係なく常時高速低トルクが出力される。
逆に、モード切り換えリング50を低速高トルクモード位置に回転操作すると、上下2本のモード切り換え部材39,39の機軸J方向の位置が前側に固定される結果、第2段インターナルギヤ34に対して圧縮ばね35の付勢力が作用しない状態となる。このため、電動モータ10を起動すると、第2段インターナルギヤ34がその起動トルク等の僅かな外部トルクによって瞬時に回転規制位置に変位し、この回転規制位置で以下説明するモードロック機構60によってロックされる。このため、この低速高トルクモードでは、第2段インターナルギヤ34が実質的に常時回転規制位置にロックされた状態となり、従ってスピンドル11に付加される外部トルクの変化に関係なく常時低速高トルクが出力される。
このモードロック機構60は、第2段インターナルギヤ34を機軸J方向前側の回転規制位置に保持する機能と、この回転規制位置に位置する第2段インターナルギヤ34を回転不能にロックする機能を有している。
第2段インターナルギヤ34の外周面であってフランジ部34bの後側には、係合溝部34cが全周にわたって設けられている。この係合溝部34c内の、周方向3等分位置には係合壁部34d〜34dが設けられている。一方、本体ハウジング2aには、その周方向の三等分位置に1つずつ係合球61が保持されている。この三つの係合球61〜61が特許請求の範囲に記載したインターナル規制部材の一実施形態に相当するもので、それぞれ本体ハウジング2aに設けた保持孔2c内に保持されている。この保持孔2c内において各係合球61は、本体ハウジング2aの内周側に出没可能に保持されている。三つの係合球61〜61の周囲には、ロックリング62が配置されている。このロックリング62は、機軸J回りに回転可能な状態で本体ハウジング2aの外周側に支持されている。
このロックリング62の内周面には、周方向に深さが変化するカム面62a〜62aが三つの係合球61〜61に対応して周方向三等分位置に設けられている。各カム面62aに1つの係合球61が摺接されている。各カム面62aに対する係合球61の摺接作用によりロックリング62が機軸J回りに一定の範囲で回転すると、各係合球61が保持孔2c内において本体ハウジング2aの内周側に突き出さない退避位置(図11に示す位置)と、突き出す係合位置(図12に示す位置)との間を移動する。
これに対して、図12に示すように第2インターナルギヤ34が圧縮ばね35に抗して、若しくは圧縮ばね35の付勢力が作用しない結果、回転規制位置に移動すると、各保持孔2cに対してフランジ部34bが外れて係合溝部34cが位置する状態となる。このため、各係合球61が本体ハウジング2aの内周側へ変位して係合溝部34c内に嵌り込み、この嵌り込み状態が捩りコイルばね63の付勢力によって保持される。各係合球61が係合溝部34c内に嵌り込んだ状態に保持されることにより、第2段インターナルギヤ34が回転規制位置に保持されるとともに、各係合球61が係合壁部34dに係合されることによりその機軸J回りの回転がロックされた状態となる。なお、第2段インターナルギヤ34が回転規制位置にロックされると、そのクラッチ歯34a〜34aと第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとの噛み合いが外れた状態に保持される。
ロックリング62のロック位置は、捩りコイルばね63に保持されることから、当該変速装置10は低速高トルク側に保持される。ロックリング62のロック位置は、使用者の手動操作により解除することができる。使用者は、ロック位置に保持されたロックリング62を手動操作により捩りコイルばね63に抗してアンロック位置に回転操作すると、各係合球61が退避位置に退避可能となるため、第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35によって回転許容位置に戻される。第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に戻されると、そのクラッチ歯34a〜34aが第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aに噛み合わされた状態になる。また、第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に戻されると、そのフランジ部34bによって保持孔2cが塞がれるため各係合球61が退避位置に保持される。このため、使用者はその後ロックリング61から指先を離しても当該ロックリング62が捩りコイルばね63に抗してアンロック位置に保持される。このようにロックリング62をアンロック位置(初期位置)に戻すための構成として手動操作により行う構成とする場合の他、例えば前記したトリガ形式のスイッチレバー4の操作によって自動的にアンロック位置に戻す構成とすることができる。
L2×W=(195mm)2×0.6kg=約23,000(kg・mm2)
この点、自動変速装置を備えた従来の電動工具では、バッテリパックの重心の機軸からの距離が比較的短かったため、機軸J回りに振るために必要な慣性モーメントIが小さく設定されていた。このため、自動変速により動作モードが高速低トルクモードから低速高トルクモードに切り換わると、これにより発生する慣性モーメントにより電動工具が機軸J回りに振られやすく、その結果ハンドル部を把持しが使用者が当該電動工具1を振られないように大きな力で保持しておかなければならず、この点で使い勝手が悪い問題があった。
本実施形態に係る電動工具1によれば、機軸J(スピンドル11の回転中心)から従来よりも離れた位置にバッテリパック5の重心Gが位置するように設定されて、機軸J回りの慣性モーメントIが従来よりも大きく設定されているので、自動変速により発生する機軸J回りの反動によっては振り回されにくくなり、従って使用者は従来よりも小さな力でハンドル部3を把持しておけば当該電動工具1の位置を楽に保持しておく(機軸J回りに振られることなく静止させておく)ことができ、この点で使い勝手が従来よりも向上している。
このトルク変動に対する振り回し防止の効果は、機軸Jからバッテリパック5の重心Gまでの距離Lが大きいほど高くなり、またバッテリパック5の質量Mが大きくなるほど高くなる。
しかも、本実施形態の場合、変速装置Hが低速高トルク出力状態に切り換わると、モードロック機構60によってその出力状態(第2段インターナルギヤ34の回転規制位置)が自動的にロックされるので、従来のように両出力状態間で動作状態がばたつくことがなく、安定した品質の作業を効率よく行うことができる。
さらに、本実施形態に係るモードロック機構60によれば、第2段インターナルギヤ34に設けた係合溝部34c内に係合球61〜61が捩りコイルばね63の間接的付勢力により嵌め込まれることにより、第2段インターナルギヤ34が回転許容位置から十分な距離だけ機軸J方向前側へ前進してクラッチ歯34a〜34aと第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとの間に十分なクリアランスが発生した状態となる。このため、回転する第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aに対して回転固定された第2段インターナルギヤ34のクラッチ歯34a〜34aが接触することを確実に回避することができ、これにより低速高トルク出力状態における当該電動工具1の静音化を図ることができる。
また、主として自動変速モード及び高速固定モードにおいて、圧縮ばね35の付勢力の全部若しくは一部が2本のモード切り換え部材39,39によって受けられることから、初期状態等の無負荷時(アイドリング時)における第2段インターナルギヤ34の必要回転トルクを小さくすることができ、これにより当該電動工具1の消費電力(電流値)を小さくすることができる。
この第2実施形態に係るモードロック機構70では、回転規制位置におけるインターナルギヤ34の回転を規制するための手段としてワンウェイクラッチ71が用いられている。また、この第2実施形態のモードロック機構70では、インターナルギヤ34の全周にわたって同様の係合溝部72が設けられているが、第1実施形態における係合壁部34dに相当する部位が省略されている。その他の構成については第1実施形態と同様に構成されているため、同位の符号を用いてその説明を省略する。
第2実施形態の場合、ワンウェイクラッチ71そのものの構成については従来公知の技術であるので詳細な説明は省略する。このワンウェイクラッチ71が、インターナルギヤ34と本体ハウジング2aとの間に介装されている。このワンウェイクラッチ71により規制(ロック)される回転方向は、回転許容位置におけるインターナルギヤ34の回転方向とは逆方向に設定されている。インターナルギヤ34がトルクの増大により軸方向に移動して第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとインターナルギヤ34のクラッチ歯34a〜34aが切り離されると、遊星歯車機構の特性からインターナルギヤ34の回転方向が逆になり、この逆方向の回転がワンウェイクラッチ71によってロックされる。以上のことから、インターナルギヤ34は回転許容位置から回転規制位置に移動すると、結果的に何れの方向にも回転せず、本体ハウジング2a側に回転について固定された状態となる。
また、インターナルギヤ34が回転規制位置に移動すると、その全周にわたって形成された係合溝部72内に3つの係合球61〜61が進入して、当該インターナルギヤ34の回転許容位置への変位(機軸J方向の移動)が規制された状態となる。
このように構成された第2実施形態に係るモードロック機構70によっても、インターナルギヤ34が回転許容位置に位置する状態では、これが第1段キャリア23と一体で回転することにより高速低トルクが出力される。この高速低トルクモードで加工が進行してスピンドル11に一定以上の外部トルクが付加された時点でインターナルギヤ34が圧縮ばね35に抗して回転規制位置に移動し、この段階でインターナルギヤ34がワンウェイクラッチ71によってその回転がロックされるとともに、係合溝部72内に係合球61〜61が進入することによりその機軸J方向の移動が規制され、これにより当該変速装置Hが低速高トルクモードでロックされる。このことから、変速装置Hにおいて一旦切り換わったモードがモードロック機構70によって確実に維持されることから、第1実施形態と同様に従来よりも作業効率を向上させ、また使用者が変わった場合でも安定した作業品質を確保することができる。
また、第1段遊星歯車機構20も省略することができ、変速装置として一組の遊星歯車機構を用いて実施することができる。この場合、電動モータ10の出力軸10aに取り付けた第2段太陽ギヤ31にフランジ部を設け、このフランジ部の前面に例示したクラッチ歯23a〜23aに相当するクラッチ歯を設けて、このクラッチ歯に対して第2段インターナルギヤ34のクラッチ歯34a〜34aを離脱可能に噛み合わせる構成とすることができる。
さらに、モード切り換え部材として上下2本の軸(ピン)を例示し、これを外部操作により機軸J方向に変位させることによって圧縮ばね35の付勢力が第2段インターナルギヤ34に作用する状態と作用しない状態を切り換える構成を例示したが、これとは異なる態様で係る機能を実現することができる。また、モード切り換えリング50の回転操作によりモード切り換え部材を機軸J方向に変位させる構成を例示したが、モード切り換えリング50を省略して使用者が直接モード切り換え部材を機軸J方向に移動させ、その位置を保持する構成としてもよい。
さらに、インターナル規制部材として周方向三等分位置に係合球61〜61を配置する構成を例示したが、これに換えて係合軸あるいは係合突起等を用いてもよい。また、モードロック機構60として周方向に深さが変化するカム面62aを有するロックリング62と、これを機軸J回りに付勢する捩りコイルばね63を用いる構成を例示したが、その他の態様で同等の機能を実現することができる。例えば、本体ハウジング2aの周方向適数カ所にインターナル規制部材としてのディテント機構を配置して第2インターナルギヤ34を回転規制位置において回転不能に固定する構成とすることができる。
また、電動工具1としてドライバドリルを例示したが、穴明け用の電動ドライバあるいは電動ねじ締め機との単能機に適用することもできる。さらに、電動工具は例示した充電式バッテリを電源とするものの他、交流電源を電源とするものであってもよい。
2…本体部、2a…本体ハウジング、2b…挿通溝孔、2c…保持孔
J…機軸(スピンドルの回転軸)
3…ハンドル部、3a…ハンドルハウジング
4…スイッチレバー
5…バッテリパック、G…重心、M…質量
10…電動モータ、10a…出力軸
11…スピンドル
12…チャック
13,14…軸受け
H…変速装置
20…第1段遊星歯車機構
21…第1段太陽ギヤ
22…第1段遊星ギヤ
23…第1段キャリア、23a…クラッチ歯
24…第1段インターナルギヤ
30…第2段遊星歯車機構
31…第2段太陽ギヤ
32…第2段遊星ギヤ
33…第2段キャリア
34…第2段インターナルギヤ
34a…クラッチ歯、34b…フランジ部、34c…係合溝部、34d…係合壁部
35…圧縮ばね、36…押圧板、37…転動板、38…鋼球
39…モード切り換え部材
40…第3段遊星歯車機構
41…第3段太陽ギヤ、42…第3段遊星ギヤ、43…第3段キャリア
44…第3段インターナルギヤ
50…モード切り換えリング、50a…ツマミ部
51…切り換え溝部
51b…後側溝部(高速固定モード用)
51c…前側溝部(高トルク固定モード用)
51d…中間溝部(自動変速モード用)
60…モードロック機構(第1実施形態)
61…係合球
62…ロックリング、62a…カム面
63…捩りコイルばね
70…モードロック機構(第2実施形態)
71…ワンウェイクラッチ
72…係合溝部
L…機軸Jからバッテリパックの重心までの距離
Claims (5)
- 駆動源として電動モータと該電動モータの回転動力を減速してスピンドルに出力するための変速装置を内蔵した電動工具であって、
前記変速装置は、動力伝達経路の上流側の第1段遊星歯車機構と、下流側の第2段遊星歯車機構と、該第2段遊星歯車機構のインターナルギヤの軸回りの回転を規制するインターナル規制部材を備え、
前記インターナルギヤの回転が許容されて前記スピンドルに高速低トルクを出力する高速低トルクモードと、前記インターナルギヤの回転が前記インターナル規制部材により規制されて前記スピンドルに低速高トルクを出力する低速高トルクモードとを前記スピンドルに付加される外部トルクに基づいて切り換える自動変速モードと、該自動変速モードとは別に、前記高速低トルクモードと前記低速高トルクモードの少なくとも一方に固定した固定モードとを任意に選択して切り換え可能であり、
かつ前記自動変速モードでは、前記外部トルクに基づいて切り換わったモードを、その後の外部トルクの変化に関係なく保持するモードロック機構を備えた電動工具。 - 請求項1記載の電動工具であって、前記固定モードでは、前記高速低トルクモードに固定された状態と前記低速高トルクモードに固定された状態とを任意に選択して切り換え可能な構成とした電動工具。
- 請求項2記載の電動工具であって、外部操作により機長方向に変位可能なモード切り換え部材を備え、該モード切り換え部材の機長方向の変位が許容されることにより前記インターナルギヤが機長方向について一方の回転許容位置と他方の回転規制位置との間を変位可能に支持されて前記自動変速モードとされる一方、該モード切り換え部材の機長方向の変位が規制されることにより前記固定モードとされ、
前記自動変速モードでは、該インターナルギヤが前記回転許容位置側にばね付勢されて、該ばね付勢力により前記回転許容位置に位置する状態ではその回転が許容されて前記高速低トルクモードとされ、前記ばね付勢力に抗して前記回転規制位置に位置する状態では前記インターナル規制部材によってその回転が規制されて前記低速高トルクモードとされ、
前記固定モードのうち前記低速高トルクモードを選択した状態では、前記モード切り換え部材により前記インターナルギヤに対して前記ばね付勢力が作用しない状態とされる構成とした電動工具。 - 請求項3記載の電動工具であって、前記モード切り換え部材の外部操作が、操作リングの回転操作によりなされる構成とした電動工具。
- 請求項3記載の電動工具であって、前記固定モードでは、前記モード切り換え部材により前記ばね付勢力が受けられて前記インターナルギヤに対して前記ばね付勢力が作用しない状態とされる構成とした電動工具。
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