JP2010046010A - イネ属の植物を形質転換する方法 - Google Patents

イネ属の植物を形質転換する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ‘有用品種を含む多くのイネ品種に適用が可能(普遍的な方法)であり’且つ‘形質転換効率が顕著に高い’、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法、を提供すること、を課題とする。
さらには、選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行うことなく、形質転換したイネ属の植物の植物体を得る方法を提供することを、を課題とする。
【解決手段】 アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換するにあたり、;予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウムを培養して懸濁した懸濁液に、イネ属の植物のカルスを浸漬し、その後、当該カルスを、吸収できる液量の90〜110%の共存培養用液体培地を吸収させた濾紙の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、;当該カルスに前記外来遺伝子を高効率で導入することを特徴とする、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法を、を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、イネ属の植物を形質転換する方法に関し、詳しくはアグロバクテリウム法によりイネ属の植物を高効率で形質転換する方法に関する。
イネは、コムギやトウモロコシと並び、主要な穀類の一つであり、特にアジア地域においては、主食として極めて重要な作物である。
現在および将来に予想される食料問題やエネルギー問題において、収量の増産、耐病性、寒冷地や乾燥地などへの抵抗性、味質向上、エネルギー資源に利用に適した非可食部、などに繋がる形質を有するイネの品種や系統の作出は、極めて重要である。
そのような中、近年、イネにおいて、ゲノム解析で明らかになった情報から、網羅的に表現型解析(フェノーム的解析)を行うために、ハイスループットで大量に形質転換体を作出する系の開発が求められ、形質転換系の改変がすすめられてきた。しかし、日本晴、キタアケなどの一部のイネ品種以外は、未だ形質転換効率が低く、数万の形質転換体を用いた大規模解析が難しい状況にある。
また近年、GM植物の実用化に向けて、抗生物質抵抗性遺伝子を利用しない新たな選抜マーカー(ALS、NiR遺伝子等)が開発されているが、その選抜効率は低い。
アグロバクテリウム法による形質転換法は、多くの双子葉類の植物においては、極めて有用な外来遺伝子を導入する方法である。特に、エレクトロポレーション法やパーティクルガン法に比べて、形質転換処理が簡便であり、またその効率も安定している。さらには1個体あたりに同じ遺伝子が複数導入されにくい(一遺伝子を導入した個体が得られやすい)、などの点で優れた利点を有する。
そこで、イネにおいても、アグロバクテリウム法の利用が試みられたが、イネを含む単子葉類に属する植物に対しては、効率が‘極めて低い’。
そのため、イネにおいても、アグロバクテリウム法を利用可能にするために、各種条件(カルス誘導条件、共存培養条件、各種添加物、培養日数、培養温度、アグロバクテリウム濃度等)の改変を行うことで、形質転換効率を向上させる研究が行われてきた(例えば、特許文献1、非特許文献1,2参照)
しかしながら、これらの多くの方法は、形質転換効率の高い日本晴やキタアケなどの限定された品種を用いた研究であり、有用品種を含む多くの品種に適用が可能な普遍的な方法ではない。
今後の実用化に向けて、‘有用品種を含む多くのイネ品種に適用が可能であり’且つ‘形質転換効率が顕著に高い’方法の開発が求められており、さらには選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行うことなく、形質転換したイネ属の植物の植物体を得る方法の開発、が求められている。
国際公開WO94/00977号 Plant Cell Rep. 22 (2004) 653-659. Plant Mol. Biol. Rep. 15 (1997) 16-21.
本発明は、上記の課題を解決し、‘有用品種を含む多くのイネ品種に適用が可能(普遍的な方法)であり’且つ‘形質転換効率が顕著に高い’、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法、を提供すること、を課題とする。
さらに本発明は、選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行うことなく、形質転換したイネ属の植物の植物体を得る方法を提供することを、を課題とする。
本発明者は、予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウムを培養して懸濁した懸濁液に、イネ属の植物のカルスを浸漬し、その後、当該カルスを、‘吸収できる液量に対して所定範囲の液量の共存培養用液体培地、を吸収させた濾紙’の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、;共存培養時に‘カルスの増殖を抑制せず’且つ‘過剰なアグロバクテリウムの増殖を抑制する’ことができ、当該カルスに前記外来遺伝子を高効率で導入できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に係る発明は、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換するにあたり、;予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウムを培養して懸濁した懸濁液に、イネ属の植物のカルスを浸漬し、その後、当該カルスを、吸収できる液量の90〜110%の共存培養用液体培地を吸収させた濾紙の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、;当該カルスに前記外来遺伝子を高効率で導入することを特徴とする、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法である。
請求項2に係る発明は、前記濾紙に吸収させた共存培養用液体培地の液量が、前記濾紙が吸収できる液量の96〜105%である、請求項1に記載のイネ属の植物を形質転換する方法である。
請求項3に係る発明は、前記アグロバクテリウムとの共存培養が、前記濾紙に吸収させた共存培養用培地の蒸発が抑制された密封容器内で行われるものである、請求項1又は2のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法である。
請求項4に係る発明は、前記イネ属の植物が、Oryza sativa subsp. japonica、又は、Oryza sativa subsp. indicaである、請求項1〜3のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法である。
請求項5に係る発明は、前記濾紙が、2号定性濾紙を1〜5枚重ねたものである、請求項1〜4のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法である。
請求項6に係る発明は、前記カルスが、2〜4mmの大きさのものである、請求項1〜5のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法である。
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法から得られた、形質転換されたイネ属の植物である。
本発明は、‘有用品種を含む多くのイネ品種に適用が可能(普遍的な方法)であり’且つ‘形質転換効率が顕著に高い’、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法、を提供することを可能とする。
また本発明は、選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行うことなく、形質転換したイネ属の植物の植物体を得ることを、可能とする。
さらに本発明は、イネ属の植物を形質転換した後のカルスの褐色化を抑制することを可能とする。
本発明は、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を高効率で形質転換する方法、に関する。詳しくは、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換するにあたり、;予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウムを培養して懸濁した懸濁液に、イネ属の植物のカルスを浸漬し、その後、当該カルスを、‘吸収できる液量の所定範囲内の液量’の共存培養用液体培地、を吸収させた濾紙の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、;当該カルスに前記外来遺伝子を高効率で導入することを特徴とする、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法、に関するものである。
本発明の形質転換法は、従来のアグロバクテリウム法が適用可能な植物であれば適用可能な方法であるが、特に、従来のアグロバクテリウム法の適用が難しかった‘イネ属の植物’を対象にして行った場合において、顕著な効果を奏する方法である。
本発明の形質転換法は、イネ属の植物の如何なる種類のものに対しても用いることができるが、特には、‘ジャポニカ種(Oryza sativa subsp. japonica)’、‘インディカ種(Oryza sativa subsp. indica)’、に属するものに用いることで、顕著な効果を奏することができる。
なお、具体的には、‘ジャポニカ種’の日本晴、北海飼308、コシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、キヌヒカリ、きらら397など、;‘インディカ種’のDular、Panbira、IR8、;などの品種に用いること、特には、日本晴、北海飼308、コシヒカリ、Dularといった品種に対して用いることが有用である。
本発明の形質転換法は、以下の‘カルス調製工程’と、‘アグロバクテリウム懸濁液調製工程’と、‘共存培養工程’と、を行うことを特徴とする方法である。
本発明の形質転換法における‘カルス調製工程’は、前記イネ属の植物のカルスを調製する工程である。本工程のカルス調製は、例えば、Hieiらの従来の方法(Plant J. 6 (1994) 271-282.)によって調製することができる。カルスはイネ種子、イネ未熟胚などを適当なオーキシン類を含む、固体培地の上に置き、温度25〜32℃で静置培養することで誘導することができる。(なお、ここで固体培地とは、寒天、ゲルライトなどでゲル化させた培地を指す。以下同じ。)
具体的には、まず、イネの種子を、次亜塩素酸ナトリウム溶液、を用いて種子表面を滅菌し(‘種子の休眠打破’が必要な場合は、さらに過酸化水素水で処理し)、オーキシン類(例えば2,4−D)を含むN6培地、MS培地、DKN培地、具体的には「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むN6培地、または、DKN培地」、などの固体培地上で、温度25〜32℃(好ましくは28℃付近)において、2〜4週間、静置培養することで、カルスを誘導する。
そして、誘導されたカルスは、さらに、新しく準備した上記固体培地の上に置いて、カルスの生育に適した光量(例えば50μmolm-2-1)の明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で、1〜4日間、静置培養し、成長させることで、本工程で調製したカルスとして用いることができる。
本工程で調製されるカルスとしては、好ましくは、2〜4mmの大きさのものであることが望ましい。
本発明の形質転換法における‘アグロバクテリウム懸濁液調製工程’は、予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウムを培養して、液体培地中に懸濁した懸濁液を調製する工程である。
本工程におけるアグロバクテリウムの培養は、従来の方法に従って行えばよいが、具体的には、当該アグロバクテリウムに導入してある抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質(ハイグロマイシン、カナマイシンなど)を含む固体培地〔AB培地、LB培地など(好ましくはAB培地)〕の上で、温度25〜28℃で、2〜3日間静置培養することで、アグロバクテリウムを培養することができる。
そして、当該増殖したアグロバクテリウムは、液体培地中〔アセトシリンゴンを含むAAM培地、N6培地など、(好ましくはアセトシリンゴンを含むAAM培地)〕に懸濁することで、懸濁液を調製することができる。
なお、本工程において、増殖したアグロバクテリウムの液体培地中への懸濁は、OD600の値が0.01〜0.4、好ましくは0.02〜0.2、さらに好ましくは0.04〜0.2、最も好ましくは0.04、になるように懸濁することが望ましい。
なお、OD600の値が、当該所定範囲より大きくても小さくても、形質転換効率が低下し好ましくない
本工程に用いる‘アグロバクテリウム’は、アグロバクテリウム法に用いることができるものであれば如何なる種類のものでも用いることができ、特に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefacience)EHA101株、EHA105株、LBA4404株などを用いることができるが、具体的には、EHA101株を用いることできる。
また、‘予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウム’とは、外来遺伝子をサブクローニングしたバイナリーベクターをアグロバクテリウムに保持させることによって、調製されたものである。
なお、バイナリーベクターとしては、pIG121Hm、pCAMBIAシリーズなどを用いることができるが、具体的には、pCAMBIA1301を用いることができる。
本発明の形質転換法における‘共存培養工程’とは、「カルスを、‘吸収できる液量に対して所定範囲の液量の共存培養用液体培地、を吸収させた濾紙’の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行う工程」である。なお、図1に、本発明の実施の一態様の共存培養の状態を示す写真像図を示す。
本共存培養工程を行うにあたり、まず、上記カルス調製工程で得られた‘カルス’を、上記アグロバクテリウム懸濁液調製工程で得られた‘アグロバクテリウム懸濁液’に浸漬する。
当該浸漬は、1〜5分間、好ましくは2分間程度行うことが望ましい。なお、浸漬後のカルスは、(例えば濾紙上に置いて、)余分な懸濁液を十分に取り除くことは、共存培養時に過剰なアグロバクテリウムが増殖することを抑制できる点で望ましい。
そして、浸漬後の当該カルスを、‘吸収できる液量に対して所定範囲の液量の共存培養用液体培地、を吸収させた濾紙’の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行う。当該共存培養を行うことにより、当該カルスに、アグロバクテリウムが感染し、前記外来遺伝子が導入される。
なお、当該外来遺伝子の導入は、カルスのゲノムDNA中に導入されるため、トランジェントな遺伝子導入法でなく、安定的に形質転換を行うことが可能な方法である。
本工程において、‘濾紙が吸収できる液量に対する所定範囲の液量’とは、濾紙が吸収できる液量を100%とした場合に、その吸収できる液量の90〜110%、好ましくは91〜109%、さらに好ましくは96〜105%、最も好ましくは、濾紙が吸収できる液量とほぼ等しい液量の100%付近、の液量を指すものである。
本発明は、濾紙に吸収させた前記液体培地の液量が、上記所定の範囲にある場合にのみ、‘カルスの増殖を抑制せず’且つ‘過剰なアグロバクテリウムの増殖を抑制する’ことができ、形質転換効率を顕著に向上させることを可能とする方法である。
なお、濾紙に吸収させた前記液体培地の液量が、上記所定の範囲より少ない場合、乾燥によって、カルスの増殖、及び、アグロバクテリウムの増殖が共に抑制されすぎることにより、形質転換効率が低下し好ましくない。
また、上記所定の範囲より多い場合、アグロバクテリウムが過剰に増殖しすぎることにより、形質転換効率が低下し好ましくない。
本工程において用いる‘濾紙’としては、定性濾紙、定量濾紙等の親水性の高い分析用濾紙であれば、如何なるものでも用いることができる。例えば、統一規格である1〜5号定性濾紙(ワットマン社、ADVANTEC東洋社などから入手可能)を、0.26mm(2号定性濾紙1枚に相当)以上、好ましくは0.26mm(2号定性濾紙1枚に相当)〜1.3mm(2号定性濾紙5枚に相当)、さらに好ましくは0.52mm(2号定性濾紙2枚に相当)〜1.3mm(2号定性濾紙5枚に相当)、の範囲の‘厚さ’、になるように、好適な枚数を組み合わせて用いることができる。
また、濾紙の‘大きさ’としては、入手できる定性濾紙の規格の大きさのものであれば、如何なるものでも用いることができる。また、複数枚の濾紙を組み合わせて並べて、面積を大きくすることも可能である。
なお、具体的には、直径9cmの2号定性濾紙を1枚(吸収できる液量約1.83mL)以上、好ましくは1〜5枚(吸収できる液量約1.83〜9.16mL)、さらに好ましくは2〜5枚(吸収できる液量約3.66〜9.16ml)を、本工程に用いることができる。
本工程における、共存培養は、前記濾紙に吸収させた共存培養用培地の蒸発が抑制された密封容器内で行うことが望ましい。
例えば、プラスチックシャーレ、ガラスシャーレ、マジェンタボックスを密封して行うことができるが、具体的には、パラフィルムでシールした直径9cmのプラスチックシャーレ内で行うことができる。
なお、密封が不完全であった場合、共存培養中に培養容器中の水分が失われてしまい、最適な培地量と異なる条件下での共存培養となり安定した形質転換効率が得られなくなり、好ましくない。
本工程における共存培養は、2〜4日間、暗黒下で行うものである。
また、本工程における共存培養の温度は、24〜30℃、好ましくは25〜28℃付近、さらに好ましくは25℃付近で行うことが望ましい。
温度が、上記所定の温度より高い場合、アグロバクテリウムが過剰増殖しやすくなり、また、T−DNA領域の植物ゲノム(カルスゲノム)への転移効率が低下し(それにより形質転換効率が低下し)好ましくない。
また、温度が上記所定の温度より低い場合には、カルスおよびアグロバクテリウムの増殖が抑制され(それにより形質転換効率が低下し)好ましくない。
本工程における、‘共存培養用液体培地’としては、L-システインおよびアセトシリゴンを含むN6培地、DKN培地、などの液体培地を用いることができる。好ましくは、100〜400mg/LのL-システインを含むものであることが望ましい。
具体的には、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、グルコース(5 g/L)、L−システイン(100 mg/L)およびアセトシリンゴン(15 mg/L)を含むN6培地、または、DKN培地」、などの液体培地を用いることができる。
本発明の形質転換法は、上記工程から主になるものでるが、これらの工程を経ることにより、共存培養時に‘カルスの増殖を抑制せず’且つ‘過剰なアグロバクテリウムの増殖を抑制する’ことができ、アグロバクテリウムの感染に適した状態を安定して維持することを可能にするものである。
それにより、本発明は、‘カルスへの形質転換効率を、顕著に向上させること’ができるものである。
また、本発明は、アグロバクテリウムの過剰増殖が原因と考えられるイネカルスの褐色化を抑制することも可能となる。
なお、上記したように、本発明は‘有用品種を含む多くのイネ品種に適用が可能’な方法(普遍的な方法)である。
また、本発明においては、上記共存培養工程後に得られたカルスは、顕著に高い効率(頻度)で形質転換されたものであるため、‘選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行うことなく’培養することで(即ち下記の‘無選抜培養’を行うことで)、形質転換されたイネ属の植物体を得ることを可能とするものである。
なお、‘従来法’では、形質転換効率が低いため、共存培養後に得られたカルスに対して、‘選抜マーカー遺伝子〔抗生物質耐性遺伝子(例えばハイグロマイシン)や栄養要求性遺伝子〕を用いた選抜培養(前記抗生物質を含有する培地や栄養要求性の培地での培養)’を行って、形質転換された植物体を選抜することが必須となる。
本発明においては、上記選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行わずに、上記共存培養工程後に得られたカルスから、形質転換されたイネ属の植物体を得ることができる。
具体的には、まず、上記共存培養工程後に得られたカルスを、選抜培地でない培地(選抜に用いる抗生物質を含有しない培地や栄養要求性でない培地)で、培養する。
当該培養は、N6培地、DKN培地などの固体培地(具体的には、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、メロペン(25 mg/L)、ゲルライト(3 g/L)を含むN6固体培地」)の上で、温度25〜32℃で(具体的には28℃)、カルスの生育に適した光量(例えば50μmolm-2-1)の明条件下(具体的には、明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)において、7〜14日(具体的には10日間)静置培養する。
その後、当該カルスから細胞塊を剥離させる。
‘カルスからの細胞塊の剥離’は、‘当該カルスの表面から200〜400μmの細胞塊(小細胞塊)を剥離’させるものである。
これは、上記共存培養での形質転換はカルスの表面で起こる事が多いため、カルス表面から剥離させた細胞塊を集積させた後に、用いることが望ましいからである。
剥離される操作としては、懸濁、振とう、押しつぶし、などの操作によって行うことができるが、具体的には、カルスをスパーテル等で約3mmに砕き、10mlの駒込ピペットでの懸濁操作後、400μmのナイロンメッシュで駒込ピペットを使いながら濾過し、ついで、200μmのナイロンメッシュを通過できない小細胞塊(200〜400μmの細胞塊)を集めることで、行う。
得られた当該細胞塊(小細胞塊)は、メロペンを含むN6培地、MS培地、DKN培地などの固体培地、具体的には「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、メロペン(25 mg/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むN6培地、」上で、温度25〜32℃で(具体的には28℃)、生育に適した光量(例えば50μmolm-2-1)の明条件下(具体的には、明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)において、7〜14日間(具体的には7日間)、静置培養し、当該細胞塊を成長肥大させる。
その後、成長肥大させた細胞塊は、‘再分化用固体培地’、具体的には、再分化用MS固体培地「メロペン(25 mg/L)、スクロース(30 g/L)、ソルビトール(20 g/L)、カザミノ酸(2 g/L)、カイネチン(2.5 mg/L)、NAA(0.1 mg/L)およびゲルライト(4 g/L)を含むpH5.7に調整したMS固体培地」上において、温度25〜32℃(具体的には28℃)、生育に適した光量(例えば50μmolm-2-1)の明条件下(具体的には、明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で、14〜30日間(具体的には21日間)、静置培養することで、再分化したイネ属の植物体を得ることができる。
なお、得られた再分化したイネ植物体は、固体培地(MS培地など)上で、植物体が成長するまで(例えば根が発根するまで)、上記と同様の温度や光条件で静置培養した後、鉢上げすることができる。
上記のようにして得られた、再分化したイネ属の植物体は、従来法(‘数万個体以上に1個体’の割合で形質転換体を含む)に比べて極めて高い効率(頻度)で形質転換された個体を含む(‘約100〜250個体に1個体’の割合で形質転換体を含む)ものであるので、得られる全ての再分化植物体よりゲノムDNAを抽出し、導入遺伝子の存在をPCR法により判別し、形質転換体を選抜することが可能である。また、GUS、GFPなどのレポーター遺伝子を予め組込んだ前記バイナリーベクターを用いることで、形質転換体を容易に選抜することが可能である。
また、形質転換により‘導入した外来遺伝子’が、植物体の形態に影響を与えるものである場合(例えば葉の形態や植物体の色、成長率など)、表現型を手がかりに、直接、形質転換体を選抜することも可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例1(濾紙に吸収させる培地の液量の検討1)
1)イネカルスの調製
イネ(品種:‘日本晴’)の種子を、籾殻を除去後、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液に30分間、次いで1%過酸化水素水に3時間(種子の休眠打破)、そして再度10%次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分間浸漬することで、種子表面を滅菌した。滅菌後、当該種子を滅菌水で3度洗浄した。
次に、当該種子を、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むpH5.7に調整したN6固体培地(Sci. Sin. 18 (1975) 659-668)」(即ち、N6D固形培地)を用いて3週間静置培養することで、カルスを誘導した。
そして、活発に増殖しているカルスを、再度上記と同一組成の固体培地に移して3日間静置培養することで、成長したイネカルスを調製した。なお、培養は、温度28℃、50μmolm-2-1の明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で行った。
2)アグロバクテリウム懸濁液の調製
アグロバクテリウムのバイナリーベクターとしては、pCAMBIA1301(アクセッションナンバー:F234297、http://www.cambia.org/daisy/cambia/2046/version/1/part/4/data/pCAMBIA1301.pdf)を用いた。なお、当該ベクターのマップを図2に示す、
上述のバイナリーベクターを保持するアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefacience EHA101株)を、ハイグロマイシン(50 mg/L)、カナマイシン(50 mg/L)および寒天(15 g/L)を含むAB固体培地(Proc Natl. Acad. Sci. 71 (1974) 3672-3676)上において、28℃で3日間静置培養した。
そして、増殖したアグロバクテリウムを、アセトシリンゴン(15 mg/L)を含むAAM液体培地(Plant J. 6 (1994) 271-282)中に、‘OD600の値が0.04’になるように懸濁することで、アグロバクテリウム懸濁液を調製した。
3)アグロバクテリウムとの共存培養
上記1)で得られた2〜4mm程度の大きさのカルスを、上記2)で得られたアグロバクテリウムの懸濁液に2分間浸漬し、その後、カルスを2号定性濾紙(東洋ADVANTEC社製)上に置き、余分な懸濁液を十分に取り除いた。
その後、9cmプラスチックシャーレ内に、‘直径9cmの2号定性濾紙(東洋ADVANTEC社製)3枚’に、共存培養用液体培地「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、グルコース(5g/L)、L−システイン(100 mg/L)およびアセトシリンゴン(15 mg/L)を含むN6液体培地」を、‘表1’に記載の所定量吸収させたものを準備した。なお、当該濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)が100%吸収できる液量は、約5.5mlである。
そして、当該濾紙の上に前記カルスを置き、プラスチックシャーレの蓋を被せてパラフィルムでシールすることで密閉した。
その後、‘温度28℃’において、暗黒下で3日間静置することで、当該カルス表面に付着したアグロバクテリウムとの共存培養を行った。
なお、対照として、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、グルコース(5 g/L)、L−システイン(100 mg/L)、アセトシリンゴン(15 mg/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むN6固体培地」に、直径9cmの2号定性濾紙(東洋ADVANTEC社製)を1枚置き、その上に前記カルスを置いた、ことを除いては、上記と同様の操作を行なって、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
4)選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養、および、形質転換効率の測定
上記3)で得られた共存培養後のカルスを50mlの遠心管に移し、水40mlを加え、浸盪した。この操作を2回繰り返し、最後に50mg/Lのメロペン(大日本住友製薬)を含む水40mlに懸濁した。
そして、カルスを2号定性濾紙(東洋ADVANTEC社製)上に移し、余分な水分を除いた後、選抜用固体培地「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、メロペン(25 mg/L)、ハイグロマシン(50 mg/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むN6固体培地」の上に置き、温度28℃、50μmolm-2-1の明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で、4日間静置培養することで、ハイグロマイシンでの選抜培養を行い、形質転換されたイネカルスを選抜した。
その後、形質転換効率の測定は、GUS染色で発色したスポット数を計測することで行った。
常法に従って調製したGUS染色液(100mM sodium phosphate buffer pH7.0、1mM X-Gluc(5-Bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide)、2.5mM フェリシアン化鉄(K3Fe(CN)6)、2.5mM フェロシアン化鉄(K4Fe(CN)6・3H2O))に、上記選抜したカルスを浸漬し、37℃で1日間静置することで、GUS染色を行った。
発色反応後、カルスを2号定性濾紙(東洋ADVANTEC社製)上に移し、余分な水分を除いた後、実体顕微鏡で観察し、カルス1個あたりの発色した青色スポット数(形質転換された細胞数)を計測した。計測は、5個以上のカルスについて計測する操作を、同じ実験を3回繰り返し行い、‘カルス1個あたりの発色した青色スポット数の平均値’を算出した。また、計測した最大値を100とした時の各値の相対値、および、対照の計測値を1とした時の相対値(表1括弧内)も算出した。結果を表1に示す。(なお、6.5mlの試験区のみは1回の実験の平均値を示す。他の試験区は全て3回の実験の平均値を示す。)
5)形質転換植物体の再分化、および、導入された外来DNAの確認
上記選抜された形質転換カルスを、再分化用固体培地「メロペン(25 mg/L)、ハイグロマイシン(50 mg/L)、スクロース(30 g/L)、ソルビトール(20 g/L)、カザミノ酸(2 g/L)、カイネチン(2.5 mg/L)、NAA(0.1 mg/L)およびゲルライト(4 g/L)を含むpH5.7に調整したMS固体培地(Physiol. Plant 15 (1962) 473-497)」上に移して、28℃、明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で、3週間静置培養することで、再分化したイネ植物体を得た。
次に、再分化したイネ植物体を、「メロペン(25 mg/L)、ハイグロマシン(50 mg/L)、スクロース(30 g/L)およびゲルライト(4 g/L)を含むpH5.7に調整したMS固体培地」上に移して静置培養し、根の発根を確認後、鉢上げした。
その後、得られた再分化植物体のうちの6個体から、CTAB法によりDNAを抽出した。そして、導入したpCAMBIA1301上のGUS遺伝子における配列(配列番号1,2)をプライマーとして用いて、PCR(94℃5分、〔94℃30秒、56℃20秒、72℃1分〕を35サイクル、72℃5分)を行い、再分化植物体のDNAにpCAMBIA1301に由来する外来DNA配列が導入されたかどうかを確認した。
PCRの増幅産物を電気泳動しEtBr染色した結果を図3に示す。なお、図3において、各レーンは次のサンプルを泳動したものである。
(レーンM:サイズマーカー、レーンP:pCAMBIA1301のプラスミドDNAそのものを鋳型にしてPCRを行ったポジティブコントロール、レーンN:日本晴由来DNAを鋳型にしてPCRを行ったネガティブコントロール、レーン1〜6:上記得られた植物由来DNAを鋳型にしたPCRを行った増幅産物。)
表1より明らかなように、共存培養用液体培地を吸収させた濾紙上で、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、形質転換効率が向上することが明らかになった。
具体的には、当該濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)が90.9%〜109.1%吸収できる量(5.0〜6.0ml)の当該液体培地を吸収させた濾紙上で行った場合、対照である固体培地で行った時に比べて、顕著に(具体的には約11倍以上)形質転換効率が向上することが明らかになった。
特に、当該濾紙が100%吸収できる量と同量(5.5ml)の当該液体培地を吸収させた濾紙上で行った場合、形質転換効率が著しく向上する(対照である固体培地で行った時の約50倍に向上する)ことが明らかになった。
また、図3の結果より、調べた6個体の再分化イネ植物体のDNA中に、pCAMBIA1301に由来する外来DNA配列が導入されたことが示された。
実施例2(濾紙に吸収させる液体培地の液量の検討2)
1)イネカルスの調製
実施例1と同様にして、イネ(品種:日本晴)のカルスを調製した。
2)アグロバクテリウム懸濁液の調製
実施例1と同様にして、アグロバクテリウム懸濁液(OD600の値:0.04)を調製した。
3)アグロバクテリウムとの共存培養
前記濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)に、共存培養用液体培地を‘表2’に記載の所定量を吸収させたこと、および、前記共存培養時の温度を‘25℃’で行ったこと、を除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
4)選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養、および、形質転換効率の測定
実施例1と同様にして、形質転換されたイネカルスを選抜した。そして、実施例1と同様にして形質転換効率を測定した。結果を表2に示す。(なお、5.25mlの試験区のみは2回の実験の平均値を示す。他の試験区は全て3回の実験の平均値を示す。)
表2より明らかなように、当該濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)が95.5%および104.5%吸収できる量(5.25および5.75ml)の共存培養用液体培地を吸収させた濾紙上で行った場合との比較から、当該濾紙が100%吸収できる量と同量(5.5ml)の当該液体培地を吸収させた濾紙上で行った場合に、‘形質転換効率が最大になること’が示唆された。
なお、上記実施例1,2より、アグロバクテリウムとの共存培養における‘濾紙に吸収させる共存培養用液体培地の液量’は、90〜110%、好ましくは91〜109%、より好ましくは95〜105%、最も好ましくは100%程度、が望ましいことが分かった。
実施例3(品種の検討)
1)イネカルスの調製
表3に記載の‘各品種(日本晴、北海飼308、コシヒカリ、Dular)’のイネの種子に対して、実施例1の記載と同様にして種子表面を滅菌した。
次に、日本晴、北海飼308、Dularの当該種子については、実施例1と同様にして、イネのカルスを調製した。
また、コシヒカリの当該種子については、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むpH5.7に調整したN6固体培地」(即ちN6D固形培地)を用いて‘1週間’静置培養し、ついで、種子全体を、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むpH5.7に調整した‘DKN固体培地’(Breed. Sci. 50 (2000) 197-202)」に移して‘3週間’静置培養することで、カルスを誘導した。
そして、活発に増殖しているカルスを、再度上記と同一組成のDKN固体培地に移して3日間静置培養することで、成長したイネカルスを調製した。なお、培養は、温度28℃、50μmolm-2-1の明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で行った。
2)アグロバクテリウム懸濁液の調製
実施例1と同様にして、アグロバクテリウム懸濁液(OD600の値:0.04)を調製した。
3)アグロバクテリウムとの共存培養
日本晴、北海飼308、Dularの得られた前記カルスについては、前記濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)に共存培養用液体培地を‘5.5ml’を吸収させたこと、および、前記共存培養時の温度を‘25℃’で行ったこと、を除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
また、コシヒカリの得られた前記カルスについては、共存培養用液体培地として、「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、グルコース(5g/L)、L−システイン(100 mg/L)およびアセトシリンゴン(15 mg/L)を含む‘DKN液体培地’」を用いたこと、前記濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)に共存培養用液体培地を‘5.5ml’を吸収させたこと、および、前記共存培養時の温度を‘25℃’で行ったこと、を除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
4)選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養、および、形質転換効率の測定
日本晴、北海飼308、Dularの共存培養後の前記カルスについては、ハイグロマイシンでの選抜培養を‘7日間’行ったことを除いて、実施例1と同様にして、形質転換されたイネカルスを選抜した。
また、コシヒカリの共存培養後の前記カルスについては、選抜用固体培地として「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、メロペン(25 mg/L)、ハイグロマシン(50 mg/L)およびゲルライト(3 g/L)を含む‘DKN固体培地’」を用いたこと、および、ハイグロマイシンでの選抜培養を‘7日間’行ったことを除いて、実施例1と同様にして、形質転換されたイネカルスを選抜した。
そして、‘10個以上’のカルスについて計測する操作を行ったことを除いて、実施例1と同様にして形質転換効率を測定した。結果を表3に示す。また、GUS染色したカルスの実体顕微鏡写真を図4に示す。また、GUS染色する前のカルスの状態を図5に示す。
表3および図4より明らかなように、日本晴、北海飼308、コシヒカリ、Dularのいずれの品種においても、共存培養用液体培地を吸収させた濾紙上で、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、形質転換効率が‘顕著に’向上することが明らかになった。
この結果、日本晴、北海飼308、コシヒカリは、‘ジャポニカ種(Oryza sativa subsp. japonica)’であり、Dularは、‘インディカ種(Oryza sativa subsp. indica)’であることから、本技術は、‘イネ属の植物において普遍的に適用できる’可能性が高いことが示された。
また、図5が示すように、対照である固体培地で共存培養を行ったものでは(特にDularにおいて)‘カルスの褐色化’が顕著に見られたが、共存培養用液体培地を吸収させた濾紙上で共存培養を行ったものでは、‘カルスの褐色化’が抑制されることが明らかになった。
これは、共存培養時のアグロバクテリウムの過剰増殖が抑制されたために、褐色化が起こらなかったためと考えられる。
実施例4(共存培養時の温度およびアグロバクテリウム濃度の検討)
1)イネカルスの調製
実施例1と同様にして、イネ(品種:日本晴)のカルスを調製した。
2)アグロバクテリウム懸濁液の調製
アグロバクテリウムの懸濁液のOD600の値を、‘表4’に記載の所定濃度に調製したことを除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウム懸濁液を調製した。
3)アグロバクテリウムとの共存培養
前記濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)に共存培養用液体培地を‘5.5ml’を吸収させたこと、および、共存培養の温度を‘表4’に記載の温度で行ったこと、を除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
4)選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養、および、形質転換効率の測定
実施例1と同様にして、形質転換されたイネカルスを選抜した。そして、実施例1と同様にして形質転換効率を測定した。結果を表4に示す。
表4が示すように、共存培養時の温度が28℃で行うよりも、25℃で行う方が、形質転換効率が有意に高いこと(平均値では約1.5〜3.0倍)が示された。
なお、25℃で共存培養を行った場合では、アグロバクテリウムの濃度の濃淡(OD600が0.04〜0.2)に関わらず、形質転換効率に差は見られなかったが、28℃で共存培養を行った場合は、アグロバクテリウムの濃度が、OD600が0.04の時(最大)と0.2の時では、有意差があること(平均値では約1.8倍)が示された。
これらのことは、28℃で共存培養を行った場合、アグロバクテリウムが(特に濃度が濃い場合に)過剰増殖しやすく、カルスに損傷を与えて形質転換効率を減少させているためと考えられる。
以上のことより、‘25℃’付近の温度で共存培養を行うことで、形質転換効率を高めることができ、アグロバクテリウムの濃度を変化させても安定して行うことできることが示された。
実施例5(濾紙の枚数の検討)
1)イネカルスの調製
実施例1と同様にして、イネ(品種:日本晴)のカルスを調製した。
2)アグロバクテリウム懸濁液の調製
実施例1と同様にして、アグロバクテリウム懸濁液(OD600の値:0.04)を調製した。
3)アグロバクテリウムとの共存培養
前記濾紙(直径9cmの2号定性濾紙)を‘表5’に記載の枚数用いて、共存培養液を‘表5’に記載の所定量(各濾紙が100%吸収できる液量とほぼ同量)を吸収させたこと、および、前記共存培養時の温度を‘25℃’で行ったこと、を除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
4)選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養、および、形質転換効率の測定
実施例1と同様にして、形質転換されたイネカルスを選抜した。
そして、8個のカルスについて計測する操作を‘1回のみ’行ったことを除いて、実施例1と同様にして、形質転換効率を測定した。結果を表5に示す。
表5より明らかなように、定性濾紙の厚さ(2号濾紙の枚数)を0.26mm(1枚)〜1.3mm(5枚)の範囲で行った場合においても、各濾紙が100%吸収できる液量とほぼ同量の液量を吸収させて共存培養を行うことで、形質転換効率が高く維持されることが示された。
なお、特には、0.52mm(2枚)〜1.3mm(5枚)の範囲で行った場合に、形質転換効率が高く維持されることが示された。
実施例6(無選抜培養)
選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養を行うことなく、形質転換された植物体を得ることを試みた。
1)イネカルスの調製
実施例1と同様にして、イネ(品種:日本晴)のカルスを調製した。
2)アグロバクテリウム懸濁液の調製
実施例1と同様にして、アグロバクテリウム懸濁液(OD600の値:0.04)を調製した。
3)アグロバクテリウムとの共存培養
前記濾紙(直径9cmの2号定性濾紙3枚)に共存培養用液体培地を‘5.5ml’を吸収させたこと、および、前記共存培養時の温度を‘25℃’で行ったことを除いて、実施例1と同様にして、アグロバクテリウムとの共存培養を行った。
4)「無選抜培養」と形質転換植物体の再分化、および、形質転換効率の測定
上記、アグロバクテリウムとの共存培養後、‘選抜試薬(抗生物質など)’を含まない「2,4−D(2 mg/L)、プロリン(10 mM)、カゼイン加水分解物(300 mg/L)、スクロース(30 g/L)、メロペン(25 mg/L)およびゲルライト(3 g/L)を含むN6固体培地」の上に置き、温度28℃、50μmolm-2-1の明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で、10日間培養した(図6Aの段階)。
その後、カルスを薬さじで3mmほどに砕いた後、駒込ピペットでよく懸濁し、200〜400μmのナイロンメッシュを用いて濾過することで、200〜400μmの小細胞塊を集めた(図6Bの段階)。
集めた‘小細胞塊’を再度N6固体培地の上に移し、温度28℃、50μmolm-2-1の明条件下(明期16時間と暗期8時間の明暗周期下)で、7日間培養することで、細胞塊を成長肥大させた(図6Cの段階)。
その後、成長肥大させた全ての細胞塊を、‘実施例1の5に記載の再分化用固形培地からハイグロマイシンをのぞいた以外は同一組成の固形培地’の上に移し、再分化させたイネ植物体を得た(図6Dの段階)。(なお、上記図6A〜Dに示す写真は、各段階の一部の細胞塊(植物体)を、実施例1に記載の方法と同様にしてGUS染色したものである。)
その後、形質転換効率の測定は、上記N6固体培地の上に移した‘小細胞塊’に対する、‘GUS染色された再分化植物体’の数の割合を計測することで行った。なお、GUS染色は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
なお、計測は、100個以上の小細胞塊について計測する操作を3回行った(試験1〜3)。結果を表5に示す。
表5の結果が示すように、本発明の方法でアグロバクテリウムとの共存培養を行うことによって、100〜256個の小細胞塊に対して1個体の割合で、‘選抜マーカー遺伝子を用いた選抜を行うことなく’、形質転換されたイネ植物体を得ることができる事を明らかになった。
なお、選抜マーカー遺伝子を用いた選抜培養を行うことなく、このような高い頻度で形質転換体が得られるとの報告は、今までなされていない。
本発明は、食料問題やエネルギー問題において、有用な形質を有するイネの品種や系統の作出に貢献できることが期待される。
また本発明は、形質転換効率の低い植物のGM植物の開発、遺伝子解析(遺伝子機能解析)が飛躍的に進展することが期待される。
本発明におけるアグロバクテリウムとの共存培養の状態を示す写真像図である。 バイナリーベクターpCAMBIA1301の特徴を示す模式図である。 実施例1において、再分化イネ植物体への外来DNA導入の有無を示す、PCR産物の電気泳動図である。 実施例3における選抜培養後に、カルスをGUS染色した写真像図である。barの長さは5mmを表す。 実施例3における選抜培養後の写真像図である。barの長さは5mmを表す。 実施例5における各段階のカルス(もしくは植物体)を、GUS染色した写真像図である。Aにおいてbarの長さは5mmを表す。Bにおいてbarの長さは500μmを表す。Cにおいてbarの長さは1mmを表す。Dにおいてbarの長さは10mmを表す。

Claims (7)

  1. アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換するにあたり、;予め外来遺伝子が導入してあるアグロバクテリウムを培養して懸濁した懸濁液に、イネ属の植物のカルスを浸漬し、その後、当該カルスを、吸収できる液量の90〜110%の共存培養用液体培地を吸収させた濾紙の上に静置し、アグロバクテリウムとの共存培養を行うことにより、;当該カルスに前記外来遺伝子を高効率で導入することを特徴とする、アグロバクテリウム法によりイネ属の植物を形質転換する方法。
  2. 前記濾紙に吸収させた共存培養用液体培地の液量が、前記濾紙が吸収できる液量の96〜105%である、請求項1に記載のイネ属の植物を形質転換する方法。
  3. 前記アグロバクテリウムとの共存培養が、前記濾紙に吸収させた共存培養用培地の蒸発が抑制された密封容器内で行われるものである、請求項1又は2のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法。
  4. 前記イネ属の植物が、Oryza sativa subsp. japonica、又は、Oryza sativa subsp. indicaである、請求項1〜3のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法。
  5. 前記濾紙が、2号定性濾紙を1〜5枚重ねたものである、請求項1〜4のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法。
  6. 前記カルスが、2〜4mmの大きさのものである、請求項1〜5のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のイネ属の植物を形質転換する方法から得られた、形質転換されたイネ属の植物。
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