JP2010046000A - 風味改良剤の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
官能評価などに基づく欠点を解決し、光トポグラフィ装置を使用し、被験者に、濃度の異なる味覚物質水溶液または特定濃度の味覚物質水溶液に濃度の異なる風味改良剤を添加した水溶液を飲ませた際の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法を提供すること。
【解決手段】
濃度の異なる味覚物質水溶液を複数調整し、被験者にそれぞれの試料を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、味覚物質の適正濃度を評価する方法、および、前記の適正濃度を下回る、または、上回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液に対し、さらに、風味改良剤を添加し、その際、風味改良剤濃度の異なる試料を複数調整し、被験者にそれぞれの水溶液を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、風味改良剤の適正濃度を評価する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、味覚物質の適正濃度および風味改良剤の評価方法に関する。さらに詳しくは、濃度の異なる味覚物質水溶液を複数調整し、被験者にそれぞれの試料を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、味覚物質の適正濃度を評価する方法、および、前記の適正濃度を下回る、または、上回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液に対し、さらに、風味改良剤を添加し、その際、風味改良剤濃度の異なる試料を複数調整し、被験者にそれぞれの水溶液を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、風味改良剤の適正濃度を評価する方法に関する。
飲食物の風味の評価方法としては、もっぱらヒトの感覚にたよった官能評価が重用されている。官能評価は、総合的な評価には適しているが個人差、感覚疲労、体調変化などの主観的要素が影響する欠点がある。その主観的な評価に客観性を与えた手法としてQDA法(定量的記述分析法)があるが、共通用語の選定やパネルの訓練などに時間を要する。
また、液体クロマトグラフをはじめとする種々のクロマトグラフや匂いセンサ、味センサなどの機器による評価が利用されている。液体クロマトグラフなどの機器による評価は客観的であるが、対象項目ごとの分析が必要であり総合的な評価を行うにはかなりの時間を要する。そして、ヒトの嗅覚、味覚を代用したセンサは、測定時間は短いが、安定性や再現性、被験者による官能評価との相関性に問題がある。
そこで、ヒトによる主観評価を客観化するために、これらに加えて、生体内に生じている生理応答を観察・計測する精神生理学の手法を採用することが試みられている。精神生理学とは、瞳孔の大きさ、心拍数、血圧、脳波、脳磁波、脳血流、ストレスホルモン濃度など計測できる生体反応の指標を手がかりにして、心の状態や動きを研究する心理学の新しい領域である。ヒトは匂いを嗅ぐことによって感覚や情動が変化すると同時に、血圧の変動や心拍数、唾液中ストレス物質の変化といった生理応答を示す。これらの生理応答の観察・計測は、従来の機器分析や官能評価とは異なった角度から風味を評価する方法であり、新たな風味評価の一手法となる。
ほとんどの感情情報を最終受容する場、演算処理の場、対応する出力を指示する場である大脳皮質には毛細血管が密に存在しており、血液中のヘモグロビンには近赤外線を吸収しやすいという性質がある。これを利用して近赤外線を頭皮上に照射して反射光を検出すれば、大脳皮質の血流量がわかり、ひいてはその活性の状態もわかることとなる。
非特許文献1は、近赤外線を使用してヘモグロビン量を計測する装置(以下、光トポグラフィ装置という)を開示している。この計測装置は、特定の波長域にある近赤外線(NIR)を光ファイバーを用いて被験者頭部の一方の側から入射する。被験者の頭部内に入射された近赤外線は一部が頭部内の組織により吸収され、残の部分は大脳皮質を経由して頭皮上の検出器で検出される。検出された近赤外線の強度を測定して被験者頭部内の吸収率が測定される。光トポグラフィ装置は、陽電子放射断層撮影法(PET法)や機能的磁気共鳴画像法(fMRI法)のように大がかりで拘束性が強いものではないという利点がある。
非特許文献2には、光トポグラフィ装置を用いて茶のフレーバーを官能評価する際の脳活動をモニタリングし、脳のどの部位が活動しているかを開示している。
電気学会誌,Vol.123,No.3,2003,160−163頁 Appetite,Vol.7,2006,220−232頁
本発明は、官能評価などに基づく欠点を解決し、上記した光トポグラフィ装置を使用し、濃度の異なる味覚物質水溶液を複数調整し、被験者にそれぞれの試料を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、味覚物質の適正濃度を評価する方法、および、前記の適正濃度を下回る、または、上回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液に対し、さらに、風味改良剤を添加し、その際、風味改良剤濃度の異なる試料を複数調整し、被験者にそれぞれの水溶液を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、風味改良剤の適正濃度を評価する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、先に、光トポグラフィ装置の有する上記特性に着目し、該光トポグラフィ装置を使用し、風味改良剤を添加した味覚物質または飲食物を飲食したときの脳血流の変化を測定し、同じ試料を連続して飲用するとその順応性により脳血流量の変化は小さくなる傾向があることを利用し、該測定結果に基づいて該風味改良剤の種類若しくは添加量を選択する味覚物質または飲食品の風味改良方法を開示した(特開2007−252350)。
また、本発明者らは、香料を添加した飲食物を飲食または嗅いだときの脳血流の変化量が、ターゲットフレーバーに対してイミテーションフレーバーが適正であるかどうかをファミリア度(「違和感のない」、「安心感」、「自然」、「慣れ親しんでいる」、「馴染み」などの度合い)として評価できることを開示した(特願2007−227994)。
しかしながら、特開2007−252350および特願2007−227994においては、味覚物質の濃度と脳血流量の応答強度の間、または味の強度と脳血流量の応答強度の間の詳細な対応関係や、味覚物質に風味改良剤を添加し、官能的に風味が修飾された時の、風味の強度と脳血流量の応答強度の間の詳細な対応関係についてまでは解明できなかった。
本発明者らは、風味を左右するにおいまたは味における試料溶液の濃度の影響について、光トポグラフィ装置を用いて計測できないかと考え、鋭意検討した結果、今回、水飲用後の試料溶液飲用時の脳血流の変化量が、試料溶液の濃度に依存して異なり、においと味(以下、風味ということがある)における試料溶液濃度の適性を脳血流の変化量を測定することにより評価することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、濃度の異なる味覚物質水溶液を複数調整し、被験者にそれぞれの試料を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、血流変化の応答強度により、味覚物質の適正濃度を評価する方法を提供するものである。
また、本発明は、前記の適正濃度を下回る、または、上回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液に対し、さらに、風味改良剤を添加し、その際、風味改良剤濃度の異なる試料を複数調整し、被験者にそれぞれの水溶液を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、風味改良剤の適正濃度を評価する方法を提供するものである。
さらに本発明は、脳血流が、大脳皮質の血流であることを特徴とする前記の味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法を提供するものである。
さらにまた本発明では、脳血流量変化が、血液中のヘモグロビン量の変化を近赤外分光法により測定することを特徴とする前記の味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法が提供される。
本発明では、さらに 脳血流量変化が大脳前頭外側部の脳血流量変化であることを特徴とする前記の味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法を提供することができる。
本発明によれば、味覚物質の適正濃度や特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を効率的かつ客観的に評価することができる風味評価方法を提供することができる。
本発明では被験者に、味覚物質水溶液または味覚物質水溶液に風味改良剤を添加した溶液を飲ませ、その際の脳血流量変化を測定することにより味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する。味覚物質の適性濃度とは、官能的に望ましい強度を有する濃度である。また、風味改良剤の適性濃度とは、味覚物質の適性濃度を下回る、または、上回る濃度の味覚物質に添加することにより、味覚物質の適性濃度における官能的な風味の強度を感じさせる事ができる、風味改良剤の添加濃度である。その際の脳血流量変化の応答強度が大きいほど風味の強度が強く、低いほど風味の強度が弱いと評価する事が可能である。
試料水溶液の飲用および脳血流量変化の測定は次のように行う。被験者を安静な状態にしておき、まず水を口に含み、水を口中全体に行き渡らせ、口に含んでから30秒後に飲み込み、その後60秒間安静にする。次に試料溶液を口に含み、試料溶液をじっくり口中で味わい、試料溶液を口に含んでから30秒後に飲み込み、その後、再び60秒間安静にする。次に、再び水を口に含み、水を口中全体に行き渡らせ、口に含んでから30秒後に飲み込み、その後60秒間安静にする。その後、先とは別の試料溶液を口に含み、その試料溶液をじっくり口中で味わい、その試料溶液を口に含んでから30秒後に飲み込み、その後、再び60秒間安静にする。このように、水の飲用と試料溶液の飲用を交互に繰り返す。試料は1回の実験で4〜5点程度行うことができる。あらかじめ選択した4〜5点の試料を前記手順にて順次評価する。これらの試料を評価している間、飲用や安静の時間もふくめ脳血流量を測定し、その変化を記録する。また、官能評価は試料を口に含んで、味わっている30秒間に行い、1連の4〜5点の評価が終了後、試料の風味の強度について最後にまとめて官能評価を記入する。
このような手順で試料溶液の飲用を行った場合、大脳前頭外側部において、口に含んでから徐々に脳血流量が上昇し、約5秒から約30秒程度の間に脳血流量が最大値を示す。その後、徐々に脳血流量は下降し、口に含んでから約60秒でほぼ元のレベルとなる。そこで、ある特定の脳の部位における口に含んでから約5秒から約30秒までの脳血流量の「最大値」から、口に含んだ瞬間から約15秒までの脳血流量の「最小値」を引いた値を脳血流量変化の応答強度とする。今回、この応答強度は特定の脳の部位においては官能的な味の強度と極めて良く一致することが見出された。したがって、複数の被検者を用い、得られた味の強度に対応する味覚物質水溶液の濃度を平均化することで、一般的なその特定の味覚物質水溶液の適正濃度を評価することができると考えられる。
本発明における風味評価方法は、被験者が味覚物質水溶液を官能評価している際に、被験者に装着した光トポグラフィ装置を用いて脳血流量変化を測定することにより行うことができる。光トポグラフィ装置の各チャンネル(CH)の脳血流量のデータを統計処理することにより味覚物質水溶液の適正濃度を評価することができる。本発明で使用する光トポグラフィ装置としては、例えば、日立ETG−4000型光トポグラフィ装置((株)日立メディコ製:52チャンネル)を例示することができる。
脳血流量変化の応答強度を計測するための脳の部位は大脳前頭外側部を使用することができる。この部位においては、味の強度と応答強度の間に正の相関関係が見られる傾向がある。大脳前頭外側部の脳血流量変化の応答は、日立ETG−4000型光トポグラフィ装置を使用した場合、左脳ではチャンネル8,9,10,18,19,20,21,29,30,31,39,40,41,42,50,51,52を挙げることができ、また右脳ではチャンネル1,2,3,11,12,13,14,22,23,24,32,33,34,35,43,44,45を挙げることができる。またこれらのチャンネルのうち、チャンネル33,34,44,40,41,51が特に好ましい。
味覚物質水溶液の濃度と味の強度の一般的な関係としては、横軸に味覚物質の濃度を取り縦軸に官能的評点を取った場合、濃度が高まると共に官能的な評点も高くなる、いわゆる右肩上がりの傾向が見られる。
本発明では上記の測定条件下においては、脳血流量変化の応答強度が味の強度と正の相関関係があり、脳血流量変化の応答を測定し、血流変化の応答強度により、味覚物質の適正濃度を評価できることを見出した。
本発明において、味覚物質とは、特に制限されるものではなく、甘味、酸味、苦味、旨味、辛味などの味覚などが挙げられ、これらの味覚物質として具体的には、甘味物質としては、砂糖などの糖類、カンゾウ抽出物、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物など、あるいはアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムなどの人工甘味料などが挙げられる。酸味物質としては、レモンなどに含まれる有機酸などであり、苦味物質としては、ホップ抽出物(フムロン類)、カフェイン、キナ抽出物(キニン)、ナリンジン、テオブロミン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物などの食品に使用されるもの、オウレンのベルベリン、センブリのスエルティアマリン、ニガキのカシン、ゲンチアナのゲンチオピクロシド、キハダのオバクノンなどの生薬中の苦味物質、アルカロイドなどの医薬用途の物質、ポリフェノール類(カテキン、イソフラボン、クロロゲン酸)などの食品含有物質などが挙げられる。また、香料成分の中でもメントール、ハッカ油などは後味に苦味を感じるものもある。旨味物質としては、イノシン酸、グアニル酸などの核酸類、グルタミン酸、アラニン、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸類などが挙げられ、辛味物質としては、唐辛子中のカプサイシン、胡椒中のピペリン、生姜中の6−ジンゲロールなどを挙げることができる。
本発明ではまた、味覚物質水溶液の適正濃度を下回る、または、上回る濃度の水溶液に何らかの風味改良剤を添加することにより改善する方法を提供する。例えば、飲料の開発において、カロリー低減のため砂糖摂取量を下げる目的で砂糖濃度を風味的に最も好ましい濃度を下回る濃度に設定し、それをシュガーフレーバーで補う、また、スープにおいて塩分摂取量を低減させる目的で、風味的に最も好ましい濃度である食塩濃度より低い濃度に設定し、それを、塩味エンハンサーで補うなどである。
風味改良剤としては前記味覚物質に対して相乗効果を発揮する物質であれば特に制限されるものではなく、例えば香料による風味の改善効果、シュガーフレーバーなどの香料による光甘味度甘味料の呈味改善効果、アミノ酸と核酸系調味料の併用などによる旨味物質の相乗効果、香料による苦味のマスキング効果、甘味料による苦味や渋味のマスキング効果、光甘味度甘味料の併用によるそれぞれの光甘味度甘味料の欠点の解消効果、酸による塩味の増強効果、香料による塩味の増強効果などが例示できる。
例えば、適正濃度を下回る味覚物質水溶液に風味増強効果のある風味改良剤を添加していき、横軸に風味改良剤の濃度を、縦軸に官能的評点を取った場合、風味改良剤の濃度が高まると共に官能的な評点も高くなる、いわゆる右肩上がりの傾向が見られる。
本発明では前記の測定条件下においては、脳血流量変化の応答強度が官能評価における味の強度と正の相関関係があり、脳血流量変化を測定し、血流変化の応答強度により、風味改良剤の適正濃度を評価できることを見出した。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)基本味を呈する味覚物質水溶液の味の強度と脳活動に関する検討
本実施例では代表的な基本味である甘味および酸味を呈する味覚物質について濃度を変えたものを被験者に飲用させ、その際の脳血流量変化を測定し、大脳前頭外側部の脳血流がどのように変化するかを検討した。
試料、被験者、測定装置および測定方法を次に示す。
[試料]
試料1:砂糖水溶液:0%、2%、4%、6%、8%
試料2:アスパルテーム水溶液:0%、0.012、0.024%、0.036%、0.048%
試料3:クエン酸水溶液:0%、0.01%、0.05%、0.1%
[被験者]
任意に選択した被験者10名(20歳代から50歳代の男女)
[測定装置]
日立ETG−4000型光トポグラフィ装置((株)日立メディコ製:52チャンネル)
[測定方法]
光トポグラフィ装置に連結された多数のセンサを備えたプローブを被験者の頭部に装着した後、各試料を飲用させ測定を行った。図1に示すタイムスケジュールに従って安静後、最初に水を飲用させ、次に試料を飲用させ風味を積極的に評価するようにした。試料の飲用順は1種類の味覚物質水溶液について、低濃度側から高濃度側に行った。官能評価は図2に示す評価表に従って味の強度を0:無味、3:弱い、6:普通、9:強い、12:非常に強い、として評価した。
[結果]
図3には、最初に水を口に入れ飲んだ後、次に試料を口に入れ飲んだ時の、大脳前頭外側部の代表的な計測点であるチャンネル52における典型的な酸素化ヘモグロビンの経時的な変化量のグラフを示している。同図において、0〜90秒が水に対する応答、90〜180秒が試料に対する応答である。応答強度は「飲用開始の指示を0秒とした時、(5〜30秒の脳血流量の最高値)−(0〜15秒の脳血流量の最低値)」とした。
(1)試料濃度と味の強度の官能評価
砂糖濃度0〜8%、アスパルテーム濃度0〜0.048%、クエン酸濃度0〜0.1%の官能評価における味の強度の項目において、いずれも高濃度側になるほど味が強くなるとの評価結果が得られた。また、試料濃度と味の強度の間には正の相関(R=相関係数)が見られ、試料濃度と味の強度の平均値の関係は良好な直線性を示した(R値:砂糖0.99、アスパルテーム0.96、クエン酸0.91)。
(2)試料濃度と応答強度の関係
試料濃度と応答強度の関係においては、砂糖濃度0〜8%、アスパルテーム濃度0〜0.048%の時およびクエン酸濃度0〜0.1%の時に左右の前頭外側部で、試料濃度がいずれも高濃度側になるほど応答強度が大きくなる傾向が見られた。また、試料濃度と応答強度の間には正の相関(R=相関係数)が見られ、試料濃度と大脳前頭外側部の代表的な計測点であるチャンネル41における脳血流量変化の平均値の関係は良好な直線性を示した(R値:砂糖0.99、アスパルテーム0.83、クエン酸0.90)。
これらの官能的な味の強度と大脳前頭外側部の代表的な計測点であるチャンネル41における脳血流量変化の応答強度との関係を図4に示す。味の強度と応答強度の間には正の相関(R=相関係数)が見られ、両者の平均値の関係は良好な直線性を示した(R値:砂糖0.97、アスパルテーム0.94、クエン酸0.99)。
(3)大脳皮質領域における応答部位
前記のような傾向が検出される大脳皮質領域は大脳前頭外側部であり、左脳ではチャンネル8,9,10,18,19,20,21,29,30,31,39,40,41,42,50,51,52において、また、右脳ではチャンネル1,2,3,11,12,13,14,22,23,24,32,33,34,35,43,44,45において、試料の官能評価における味の強さと応答強度には正の相関が見られた。一例として、砂糖水溶液を試料とした時の、各チャンネルにおける、味の強さと応答強度の間の相関係数(R)を図5に示す。大脳前頭外側部に該当するチャンネル付近では味の強さと応答強度の間に相関が見られ、一般的に相関があると考えられる相関係数(R)>0.4のチャンネルはチャンネル19,20,21,29,30,31,39,40,41,42,51,52,12,23,33,34,35,43,44,45であり、大脳前頭外側部に該当する領域である。
以上より、被験者に濃度の異なる味覚物質水溶液を飲ませた時の脳血流量変化の応答強度は、その被験者の感じる味の強度と正の相関が強く見られ、味覚物質の適正濃度の評価に有効であるという結果が示されたものと考えられる。
(実施例2)味覚物質水溶液に風味改良剤を賦香した試料溶液と脳活動に関する検討
本実施例では、実施例1において選択した適正濃度を下回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液として2%砂糖水溶液を選択した。そこに、さらに風味改良剤として各種濃度のエチルマルトール(シュガーフレーバーの一つで、甘味増強作用があると考えられる)を添加し、被験者にそれぞれの水溶液を飲ませ、その際の脳血流量変化を測定し、脳血流量変化の応答強度により、風味改良剤の適正濃度を評価した。
[試料]
試料4:砂糖2%水溶液+エチルマルトール(0ppm、0.05ppm、10ppm、20ppm)
[被験者]
任意に選択した被験者10名(20歳代から50歳代の男女)
[測定装置]
日立ETG−4000型光トポグラフィ装置((株)日立メディコ製:52チャンネル)
[測定方法]
5点の試料を実施例1と同様に図1に示したタイムスケジュールに従い、エチルマルトールの添加量の少ないものから多いものへ順次官能評価を行い図2に示す官能評価表に記入した。
[結果]
図6には0〜8%濃度の砂糖水溶液における味の強度と応答強度の関係、および、2%砂糖水溶液にエチルマルトールを0.05〜20ppm濃度で添加したときの味の強度と応答強度の関係を示す。
(1)エチルマルトール濃度と味の強度の官能評価
砂糖2%の水溶液に対してエチルマルトールを0.05〜20ppmで添加濃度を増やしていくと、添加濃度が増えるにしたがい官能的な甘味強度が増加していく傾向が見られた。
(2)エチルマルトール濃度と応答強度の関係
エチルマルトールの添加濃度の増加に伴い、左右の前頭外側部で、エチルマルトール濃度と応答強度が正の相関を示す事が確認された。すなわち、2%砂糖水溶液にエチルマルトールを賦香した試料は2%砂糖水溶液単独よりも大きく、味とにおいの統合による相乗効果が起こっている事を示唆する結果が得られた。
以上より、被験者に適正濃度を下回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液に対し、さらに、濃度の異なる風味改良剤を添加し、被験者にそれぞれの水溶液を飲ませ、その際の脳血流量変化を測定した際の、脳血流量変化の応答強度が、風味改良剤の適正濃度の評価に有効であるという結果が示されたものと考えられる。
以上の結果より、大脳前頭外側部の脳活動は風味を構成する味やにおいによって左右されることがわかった。そして大脳前頭外側部の脳血流量は甘味や酸味の濃度に依存して増加することが確認でき、甘いにおいを賦香した砂糖溶液を飲用した時の脳血流量の変化は、砂糖単独による変化よりも大きく、着目した脳活動はにおいによっても確かに変化し、においによって味の応答が修飾されることを計測することができた。
実験を実施した時のタイムスケジュールを示す説明図である。 実験を実施した時の官能評価シートである。 大脳前頭外側部(チャンネル52)における、水の後で試料を飲んだ後の典型的な酸素化ヘモグロビンの経時的な変化量を示す図である。 大脳前頭外側部(チャンネル41)における、0〜8%砂糖水溶液、0.006〜0.048%アスパルテーム水溶液および0〜0.4%クエン酸水溶液の官能的な味の強さと脳血流量変化の応答強度との関係を示す図である。 52個のチャンネルのうち、大脳前頭外側部に該当するチャンネル19,20,21,29,30,31,39,40,41,42,51,52,12,23,33,34,35,43,44,45において、砂糖試料の味の強さと砂糖試料を飲用した時の応答強度の相関係数(R)>0.4であり、相関が見られることを示す図である。 大脳前頭外側部(チャンネル41)における、0〜8%濃度の砂糖水溶液の官能的な味の強度と脳血流量変化の応答強度の関係、および、2%砂糖水溶液にエチルマルトールを0.05〜20ppm濃度で添加したときの官能的な味の強度と脳血流量変化の応答強度の関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 濃度の異なる味覚物質水溶液を複数調整し、被験者にそれぞれの試料を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、官能評価による味の強度と脳血流量変化の応答強度が対応することを利用して、味覚物質の適正濃度を評価する方法。
  2. 請求項1に記載の適正濃度を下回る、または、上回る濃度から選択される特定濃度の味覚物質水溶液に対し、さらに、風味改良剤を添加し、その際、風味改良剤濃度の異なる試料を複数調整し、被験者にそれぞれの水溶液を飲用させ、その時の脳血流量変化を測定し、官能評価による味の強度と脳血流量変化の応答強度が対応することを利用して、風味改良剤の適正濃度を評価する方法。
  3. 脳血流が、大脳皮質の血流であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法。
  4. 脳血流量変化が、血液中のヘモグロビン量の変化を近赤外分光法により測定することを特徴とする請求項1〜3にいずれか1項に記載の味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法。
  5. 脳血流量変化が大脳前頭外側部の脳血流量変化であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の味覚物質の適正濃度、または、特定濃度の味覚物質水溶液に対する風味改良剤の適正濃度を評価する方法。
JP2008212086A 2008-08-20 2008-08-20 風味改良剤の評価方法 Active JP4974383B2 (ja)

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