上述した特許文献1の気密式引戸装置によると、2個のローラごとに設けられているガイドレールは、上下の段差をもって配置されているため、引戸装置の全体の上下寸法が大きくなり、この上下寸法を小さくすることが難しい。
本発明の目的は、上下寸法を小さくすることができる気密式引戸装置を提供するところにある。
本発明に係る気密式引戸装置は、開口部を開閉する扉体と、この扉体の開閉移動を案内するためのガイド部材と、このガイド部材に前記扉体を案内させるために前記扉体に取り付けられ、前記ガイド部材に移動自在に係合した係合部材と、前記扉体及びこの扉体に対して不動となっている不動部材のうち、少なくとも一方に配置され、全閉位置に達したときの前記扉体の厚さ方向の片側と前記不動部材との間を気密状態にするための気密部材と、全閉位置に向かって閉じ移動している前記扉体をこの扉体の厚さ方向に移動させることにより、前記全閉位置に達したときの前記扉体を前記不動部材に近づけて前記気密部材により前記扉体の厚さ方向の片側と前記不動部材との間を気密状態にするための扉体厚さ方向移動手段と、を備えている気密式引戸装置において、前記扉体厚さ方向移動手段が、前記扉体を前記係合部材に対して扉体厚さ方向に遊動自在かつ原位置に復帰可能とするための扉体遊動、復帰手段と、前記不動部材に配置され、全閉位置に向かって閉じ移動している前記扉体を、この扉体の厚さ方向のうちの前記不動部材の側へ押圧するための押圧手段と、を含んで構成されていることを特徴とするものである。
この気密式引戸装置では、扉体厚さ方向移動手段が、扉体を係合部材に対して扉体厚さ方向に遊動自在かつ原位置に復帰可能とするための扉体遊動、復帰手段と、不動部材に配置され、全閉位置に向かって閉じ移動している扉体を、この扉体の厚さ方向のうちの不動部材の側へ押圧するための押圧手段と、を含んで構成されているため、全閉位置に向かって移動している扉体に押圧部材から不動部材の側への押圧力が作用すると、扉体は、閉じ移動しながら、扉体遊動、復帰手段による扉体の係合部材に対する扉体厚さ方向への遊動機能により、ガイド部材に案内されている係合部材に対して不動部材の側へ移動し、これにより、扉体が全閉位置に達したときには、扉体の厚さ方向の片側と不動部材との間は気密部材によって気密状態となっている。
また、扉体が全閉位置から全開位置に向かって開き移動したときには、扉体は、扉体遊動、復帰手段による扉体の係合部材に対する原位置復帰機能により、ガイド部材に案内されている係合部材に対して不動部材の側とは反対側へ移動し、これにより、扉体は扉体厚さ方向の原位置に復帰する。
そして、本出願に係る気密式引戸装置によると、たとえ、係合部材の個数が扉体の開閉移動方向に複数個となっていても、これらの係合部材を同じガイド部材に転動自在に係合させることができるため、複数のガイド部材を上下の段差をもって配置する必要はなく、また、複数個の係合部材を、これらの係合部材ごとに設けられた複数のガイド部材に転動自在に係合させても、これらのガイド部材を上下の段差をもって配置する必要はないため、本出願に係る気密式引戸装置の全体の上下寸法を小さくすることができる。
なお、本発明において、扉体の厚さ方向の片側と不動部材との間を気密部材によって気密状態とすることは、扉体の全周に渡って行ってもよく、扉体の全周の一部だけについて、例えば、扉体の上部だけについて行ってもよい。
また、本発明に係る気密式引戸装置において、扉体に押圧部材からの押圧力が直接的に作用するようにしてもよく、あるいは、扉体に、押圧部材からの押圧力を受けるための被押圧部材を設け、この被押圧部材を介して押圧部材の押圧力が扉体に作用するようにしてもよい。
後者によると、扉体に押圧部材からの押圧力が直接的に作用することはないため、扉体の安全性を確保した状態で、扉体を押圧部材からの押圧力で不動部材の側へ移動させることができる。
また、このように扉体に、押圧部材からの押圧力を受けるための被押圧部材を設ける場合であって、扉体が、扉体本体と、この扉体本体に結合された係合部材用ブラケットとを含んで構成され、この係合部材用ブラケットに前述の係合部材が取り付けられている場合には、係合部材用ブラケットに前述の被押圧部材を配置することが好ましい。
これによると、扉体の主要部分となっている扉体本体に被押圧部材を配置しなくもよいため、被押圧部材を配置するための特別の工夫を扉体本体に行う必要がなくなり、扉体本体の形状や構造を単純化することができる。
また、押圧部材と被押圧部材の形状や構造は、扉体が全閉位置に向かって閉じ移動しているときに、押圧部材からの押圧力が被押圧部材に作用することにより、扉体を閉じ移動させながら不動部材の側へ移動させることができるものであれば、任意なものでよい。その一例は、押圧部材と被押圧部材とのうち、少なくとも一方を、扉体の開閉移動方向に対してこの扉体の厚さ方向へ傾斜した傾斜面を有するテーパー部材とすることである。
これによると、テーパー部材により、閉じ移動している扉体を不動部材の側へ円滑に移動させることができる
さらに、押圧部材と被押圧部材とのうち、少なくとも一方を、扉体の開閉移動方向に対してこの扉体の厚さ方向へ傾斜した傾斜面を有するテーパー部材とする場合には、押圧部材と被押圧部材とのうち、一方を、扉体の開閉移動方向に対してこの扉体の厚さ方向へ傾斜した傾斜面を有するテーパー部材とし、他方を、この傾斜面に転動自在に当る回転部材としてもよい。
これによると、扉体を閉じ移動させながら不動部材の側へ移動させることは、回転部材がテーパー部材の傾斜面に当って転動することによって行われるため、閉じ移動している扉体を不動部材の側へ移動させることを、一層円滑に行わせることができる。
なお、回転部材は、ローラでもよく、あるいは、ボールでもよく、テーパー部材の傾斜面に当って回転移動するものであれば任意な形状、構造のものでよい。
また、本発明に係る気密式引戸装置において、押圧部材と被押圧部材のそれぞれの個数は、1個でもよく、あるいは、扉体の開閉移動方向に配置された複数個でもよい。
後者によると、扉体の開閉移動方向に配置された複数個の押圧部材から、扉体の開閉移動方向に配置された複数個の被押圧部材に、閉じ移動している扉体を不動部材の側へ移動させる押圧力が作用するため、この扉体の不動部材の側への移動をより確実に行わせることができる。
さらに、扉体が、前述のガイド部材から吊り下げられた上吊り式扉体となっていて、押圧部材と被押圧部材のそれぞれの個数が扉体の開閉移動方向に配置された2個となっており、閉じ側の被押圧部材についての扉体全開時の位置が、開き側の押圧部材よりも扉体開き側の位置となっている場合には、それぞれの押圧部材を、前述の不動部材に押圧部材用ブラケットを介して取り付け、前述のガイド部材を扉体の厚さ方向の片側に配置された基部を有するものとし、押圧部材用ブラケットを、この基部に結合されている第1部と、この第1部から扉体の上方を越えてガイド部材の基部とは反対側の扉体の厚さ方向の位置まで延びる第2部と、この第2部から下方へ延びる第3部と、を有するものとし、この第3部における前記扉体と対向する部分に押圧部材を配置し、閉じ側の被押圧部材についての扉体からの扉体厚さ方向突出寸法よりも、開き側の押圧部材についての扉体からの扉体厚さ方向離間寸法を大きくするようにする。
これによると、閉じ側の被押圧部材についての扉体全開時の位置が、開き側の押圧部材よりも扉体開き側の位置となっていても、閉じ側の被押圧部材についての扉体からの扉体厚さ方向突出寸法よりも、開き側の押圧部材についての扉体からの扉体厚さ方向離間寸法が大きくなっているため、扉体が全閉位置と全開位置との間を移動したときに、閉じ側の被押圧部材が開き側の押圧部材と干渉することはなく、扉体を所定どおりに全閉位置と全開位置との間を移動させることができる。
さらに、扉体が、扉体本体と、この扉体本体に結合された係合部材用ブラケットとを含んで構成され、この係合部材用ブラケットに前述の係合部材が取り付けられている場合には、係合部材用ブラケットと係合部材との間に、前述の扉体遊動、復帰手段を構成する部材となっていて、扉体を係合部材に対して前述の原位置に復帰可能とするためのばねを介設することが好ましい。
これによると、全閉位置に向かって閉じ移動している扉体が、押圧部材からの押圧力によって係合部材に対して不動部材の側へ移動することにより、ばねは圧縮変形して弾発力を蓄圧するため、扉体が全閉位置から全開位置に向かって開き移動したときには、この蓄圧された弾発力により、扉体を係合部材に対して前述の原位置へ復帰移動させることができる。
また、上記ばねは、板ばねを含む任意なばねでよく、その一例は、上記ばねを、一方に端部が係合部材の内部に侵入したコイルばねとすることである。
このように上記ばねを、一方の端部が係合部材の内部に侵入したコイルばねとすると、係合部材用ブラケットと係合部材との間の間隔が小さくなっていても、コイルばねの一方の端部は係合部材の内部に侵入しているため、このコイルばねの長さを充分に大きくすることができる。これにより、ばね力を大きくできるため、扉体を係合部材に対して前述の原位置へ復帰移動させるための上述の蓄圧された弾発力も大きくすることができる。
さらに、前述の気密部材は、扉体の厚さ方向の片側と不動部材との間で気密性を確保することができるものであれば任意な形式や構造のものでよく、その一例として、この気密部材を、磁石を含んで構成されているものとしてもよい。
また、気密部材は、不動部材だけに配置してもよく、扉体だけに配置してもよく、不動部材と扉体の両方に配置してもよい。
気密部材を、磁石を含んで構成されているものとするとともに、この気密部材を、扉体及び不動部材のうち、一方に配置する場合には、他方を、磁石に吸着される磁性を有しているものとすることが好ましい。
これによると、扉体が全閉位置に達すると、気密部材の磁石に吸着作用により、扉体の厚さ方向の片側と不動部材との間の気密性を一層有効に確保することができる。
以上説明した本発明において、前述のガイド部材はガイドレールでもよく、あるいは、スライディングレールでもよい。また、前述の係合部材は、ガイド部材はガイドレールである場合には、ローラであり、ガイド部材がスライディングレールである場合には、スライド部材である。
また、以上説明した本発明は、扉体の開閉移動が任意な手段、方式によって行われる引戸装置に適用することができ、例えば、扉体の閉じ移動と開き移動の両方が手動で行われる引戸装置にも適用でき、扉体の閉じ移動と開き移動の両方がリニアモーター又は回転式モーター等による自動装置で行われる引戸装置にも適用できる。また、本発明は、扉体の閉じ移動と開き移動のうち、一方が手動で行われ、他方が、扉体の一方の移動時に弾発力が蓄圧されるばねの蓄圧弾発力により、又はリニアモーターや回転式モーター等による自動装置により行われる引戸装置にも適用できる。さらに、本発明は、前述のガイド部材が扉体の閉じ側へ下り傾斜していて、ガイド部材のこの下り傾斜のために、扉体の閉じ移動が扉体の自重によって行われる引戸装置にも適用できる。この引戸装置の扉体の開き移動は、手動で行われてもよく、リニアモーターや回転式モーター等による自動装置により行われてもよい。
また、本発明は、ガイド部材と、このガイド部材で移動が案内される扉体との位置関係が任意な関係となっている各種の引戸装置に適用することができる。その一例は、扉体が、扉体本体の上側に配置されたガイド部材から吊り下げられた上吊り式の引戸装置であり、他の例は、扉体本体の下側に配置されたガイド部材に案内されて扉体が移動する引戸装置であり、さらに他の例は、扉体本体の上下両側に配置されたガイド部材に案内されて扉体が移動する引戸装置である。
また、本発明は、開き移動した扉体が収納される戸袋を備えていない引戸装置に適用できるとともに、このような戸袋を備えている引戸装置にも適用することができる。
本発明が、開き移動した扉体が収納される戸袋を備えている引戸装置に適用される場合には、この戸袋は、扉体の厚さ方向両側を塞ぐ面状部分を有する両面戸袋でもよく、扉体の厚さ方向片側だけを塞ぐ面状部分を有する片面戸袋でもよい。
また、戸袋は、壁の内部に形成されていてもよく、言い換えると、扉体が、開き移動した扉体が壁の内部に収納される壁収納式の扉体となっていてもよく、戸袋は、壁とは個別に形成されたものとなっていてもよい。
また、本発明は、扉体の個数が1個となっている引戸装置に適用できるとともに、扉体の個数が複数個となっている多重引き式引戸装置にも適用できる。
本発明を多重引き式引戸装置に適用する場合には、この引戸装置は、複数個の扉体の開閉方向が同じ方向になった引き違い式引戸装置でもよく、複数個の扉体の開閉方向が逆方向となった引き分け式引戸装置でもよい。
また、本発明は、引戸装置の種類に属する装置となっている折戸装置にも適用することができる。本発明をこの折戸装置に適用する場合であって、折戸装置の開閉移動する扉体に、前述したガイド部材に移動自在に係合する係合部材が扉体の開閉移動方向に複数個設けられる場合には、この扉体における折り曲げ可能となっている折り部は、これらの係合部材のうち、例えば、最も閉じ側に配置された係合部材よりも閉じ側、あるいは最も開き側に配置された係合部材よりも開き側に形成される。
本発明によると、気密式引戸装置の上下寸法を小さくすることができるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る気密式引戸装置は、例えば、部屋と廊下のように建物内に形成されている2つの室内空間を仕切る位置において、防火等のために配置されていて、防煙のための遮煙性の機能や防音のための遮音性の機能を有しているものである。また、本実施形態に係る気密式引戸装置は、扉体の個数が1個となっていて、この扉体がガイド部材から吊り下げられた上吊り式の引戸装置である。
図1には、本発明の一実施形態に係る気密式引戸装置の全体正面図が示されている。先ずはじめに、この気密式引戸装置の全体構造について説明する。
扉体1の閉じ側に配置された戸先側縦枠2の上部と、扉体1の開き側に配置された戸尻側縦枠3の上部との間には、左右方向に開閉移動する扉体1に対して不動状態を維持する不動部材になっている上枠部材4が架け渡され、この上枠部材4の内部に収納配置されている扉体移動機構により、扉体1は左右方向へ開閉移動する。戸尻側縦枠3の全体と上枠部材4の長さの略半分は、壁5の内部に収納配置されており、この壁5における扉体1の閉じ側の端部には、竪額縁部材6が配置されている。戸先側縦枠2と、上枠部材4のうち、壁5から露出している部分と、竪額縁部材6と、床7とで囲まれている部分は、扉体1が上述の扉体移動機構で左右に開閉移動することによって開閉される開口部となっている出入口8であり、扉体1が、図1において、右側へ開き移動することにより、出入口8は開放され、扉体1が、図1において、左側へ閉じ移動し、扉体1の戸先部が戸先側縦枠2に当接することにより、扉体1は出入口8を閉じる全閉位置に達することになる。
また、図1において、扉体1が右側へ開き移動すると、扉体1は、壁5の内部に形成されている戸袋9に収納される。このため、本実施形態に係る気密式引戸装置は、戸袋9を備えたものであって、この戸袋9は壁5の内部に収納配置されている。
また、床7には、扉体1の下部に下向きに開口形成されているガイド溝部1A(図4を参照)に嵌入しているガイドローラ10が設けられ、扉体1の開閉移動は、このガイドローラ10で扉体1の下部が案内されることによっても行われる。
また、上枠部材4のうち、壁5から露出している部分には、図1のS4−S4線断面図である図4に示されているように、カバー部材11で通常時は塞がれている点検用開口部4Aが形成されており、カバー部材11は、図1に示すとおり、上枠部材4のうち、壁5から露出している部分と対応する左右方向の長さを有している。図4に示されているように、カバー部材11の上端には、上枠部材4のフック部4Bに係止される係止部11Aが形成されている。この係止部11Aがフック部4Bに係止されて、図1で示す戸先側縦枠2のブラケット部材14と竪額縁部材6のブラケット部材15とにカバー部材11が止めねじ部材12,13によって止められることにより、前述の点検用開口部4Aはカバー部材11で塞がれる。
図2及び図3には、上枠部材4の内部に配置された上述の扉体移動機構が示されている。図2は、扉体1が全閉位置に達しているときを示しており、図3は、扉体1が全開位置に達しているときを示している。次に、この扉体移動機構について説明する。
上枠部材4の内部には、扉体1の開閉移動を案内するためのガイド部材となっているガイドレール20が収納配置されている。図4に示されているように、上枠部材4における点検用開口部4Aとは扉体1の厚さ方向反対側の部分には、上枠部材4の背面部4Cが形成されており、この背面部4Cに結合された取付部材21にガイドレール20がビス等の止着具22で取り付けられている。上枠部材4の補強部材ともなっているこの取付部材21は、上枠部材4の全長又は略全長に達する長さを有し、また、図2に示されているように、扉体1の開閉移動方向へ延びる長さを有しているガイドレール20は、上枠部材4の全長よりも短い長さを有する。
図4に示されているとおり、本実施形態におけるガイド部材となっているガイドレール20は、取付部材21に止着具22で結合された基部20Aと、この基部20Aの下端から扉体1側へ延びるアーム部20Bと、このアーム部20Bの先端部に上向きに形成された被係合部20Cとからなる。また、扉体1は、扉体本体23と、この扉体本体23の上面に結合されたローラ用ブラケット24とを有し、このローラ用ブラケット24に、本実施形態における係合部材となっているローラ25が回転自在に取り付けられている。このため、ローラ用ブラケット24は、本実施形態における係合部材用ブラケットとなっている。溝付きとなっているローラ25は、ガイドレール20の被係合部20Cに上から転動自在に係合し、これにより、扉体1はガイドレール20から吊り下げられた上吊り式の扉体となっているとともに、ローラ25の転動により、扉体1はガイドレール20に案内されて開閉移動する。
ローラ用ブラケット24及びローラ25は、図2及び図3に示されているとおり、扉体1の開閉移動方向に2個24A,24B、25A,25B設けられている。
図2に示されているように、ガイドレール20の扉体開き側の端部には、扉体1の全開位置を規定するための戸当り部材30が取り付けられている。この取り付けは、ガイドレール20のアーム部20Bを上下から挟む戸当り部材30のベース部30Aと挟着部材31とをビス等の結合具32で結合することによって行われている。戸当り部材30は、扉体1側に向けて本体部30Bに突設されたゴム等の弾性材料からなるストップ部材33と、本体部30Bに取り付けられ、板ばねの折り曲げで形成されている係止部材34とを有する。一方、扉体1に設けられている2個のローラ用ブラケット24A,24Bのうち、扉体開き側のローラ用ブラケット24Bの後端には板状の受け部材35が結合され、この受け部材35には小径ローラによる被係止部材36が取り付けられている。
扉体1を、図1や図2で示されている把持部1Bを把持した手によって開き側に移動させ、この移動が全開位置に達すると、図3から分かるように、被係止部材36は、一旦上向きに湾曲変形してもとの形状に弾性復帰する係止部材34に係止されるとともに、受け部材35はストップ部材33に当接し、係止部材34が被係止部材36を係止することにより、扉体1は全開位置に停止する。
また、扉体1の把持部1Bに閉じ側への手動操作力を作用させた場合には、被係止部材36は上向きに弾性変形する係止部材34から離脱するため、扉体1は、ガイドレール20に案内されて閉じ側へ移動する。
図2に示されているように、ガイドレール20の扉体閉じ側の端部には、扉体1を自動的に閉じ移動させるための自動閉鎖装置40が配置され、この自動閉鎖装置40は、ケーシング40Aに結合されているブラケット41を介してガイドレール20に取り付けられている。自動閉鎖鎖置40は、ケーシング40A内に回転自在に収納されたリール42を有しており、このリール42の内部には渦巻きばねが配置され、この渦巻きばねの一端はリール42に結合されているとともに、他端はケーシング40Aに結合されている。また、リール42には、ナイロン紐又はワイヤー等からなる紐状部材43の一端が結合され、リール42に巻回されているこの紐状部材43は、ケーシング40Aから導出され、紐状部材43の他端は、扉体1に2個設けられているローラ用ブラケット24A,24Bのうち、扉体閉じ側のローラ用ブラケット24Aに結合されている。
扉体1が、この扉体1の戸先側の端部が戸先側縦枠2に当接している全閉位置に達しているときに、扉体1を把持部1Bで上述のように開き側へ移動させたときには、紐状部材43がリール42を回転させながら自動閉鎖装置40から繰り出され、このとき、リール42の内部の上述の渦巻きばねがリール42の回転で蓄圧される。このため、この後に把持部1Bから手を離すと(扉体1が全開位置に達しているときには、前述のように、把持部1Bに手動操作力を作用させて被係止部材36を係止部材34から離脱させると)、渦巻きばねの蓄圧力によってリール42には、扉体1の開き移動時とは逆方向へリール42を回転させようとする回転力が生じるため、この回転力で緊張する紐状部材43の引張力により、扉体1は閉じ側へ引っ張られ、全閉位置まで自動的に移動する。
また、図2に示されているように、ガイドレール20には、閉じ側への扉体1の移動速度を低速化させて制動させ、扉体1を全閉位置に減速させて到達させるためのシリンダ式制動装置50が取り付けられている。この制動装置50は、シリンダ本体51と、このシリンダ本体51にガイドレール20の長さ方向に伸縮自在に挿入されたピストンロッド52とを有する。シリンダ本体51は、ブラケット部材53を介してガイドレール20に取り付けられている。ピストンロッド52の先端部には、扉体1に2個設けられているローラ用ブラケット24A,24Bのうち、扉体開き側のローラ用ブラケット24Bの前述した受け部材35に磁力で接続分離自在となっているキャッチ部材54が取り付けられている。
扉体1が図2で示す全閉位置に達しているときには、扉体1に設けられている前述の受け部材35が、シリンダ本体51に対して収縮しているピストンロッド52の先端部のキャッチ部材54に当接している。扉体1を開き側へ移動させると、受け部材35とキャッチ部材54とが上記磁力で連結されているため、ピストンロッド52はシリンダ本体51に対して伸び作動する。このピストンロッド52が伸び作動限に達してもさらに扉体1が開き側に移動すると、受け部材35とキャッチ部材54とが分離し、ピストンロッド52はその位置で停止する。また、扉体1が自動閉鎖装置40の駆動力で閉じ側へ移動し始め、そして扉体1が所定位置に達すると、受け部材35はキャッチ部材54に当接し、扉体1がさらに閉じ側へ移動することにより、ピストンロッド52は受け部材35からの押圧力によってシリンダ本体51に対して収縮作動する。
シリンダ本体51には、ピストンロッド52が伸び作動したときに多量のエアをシリンダ本体51の内部に吸引し、ピストンロッド52が収縮作動したときにはこのエアを絞りながら排出するバルブが設けられている。このため、ピストンロッド52が伸び作動する扉体1の開き移動時には、扉体1を軽く移動させることができ、また、ピストンロッド52が収縮作動する扉体1の閉じ移動時には、扉体1がシリンダ本体51の内部のエア圧力によって制動されながら移動し、これにより、扉体1は、減速された速度で閉じ限位置である全閉位置に達することになる。
図8には、扉体1に設けられている前述のローラ用ブラケット24と、このローラ用ブラケット24に取り付けられているローラ25との部分を拡大した平面図が示されており、また、この図8は、扉体1が全閉位置に達しているときを示している。そして、図9は、扉体1が全閉位置から全開位置の側へ移動したときを示している。前述したように、扉体1は扉体本体23と、この扉体本体23の上面に取り付けられたローラ用ブラケット24とを有し、このローラ用ブラケット24は、扉体本体23から鉛直に立ち上がった立上部26を備えている。この立上部26には、ローラ25の中心部に挿入された中心軸60の基端部が結合され、この中心軸60も、ローラ用ブラケット24等と共に扉体1を構成する部材となっており、ローラ25は、扉体1の厚さ方向を軸方向とするこの中心軸60を中心に回転自在となっているとともに、ローラ25は中心軸60に沿って扉体1の厚さ方向に遊動自在となっている。立上部26とは反対側へのローラ25の遊動限位置は、中心軸60の先端部に設けられているストッパー部材61によって規定されている。
また、扉体1の厚さ方向に互いに対向しているローラ用ブラケット24の立上部26とローラ25との間には、コイルばね62が介入され、このコイルばね62のばね力により、ローラ25には、ローラ25を立上部26から離間させようとする弾発力が作用している。また、コイルばね62の形状は截頭円錐形となっており、このコイルばね62の長さ方向の一方の端部である截頭部62Aは、扉体1の厚さ方向に立上部26と対向しているローラ25の側面27に形成されている穴28からローラ25の内部に侵入している。
なお、ローラ25の内部には、このローラ25を中心軸60を中心に円滑に回転自在とするためのボールベアリング63が組み入れられており、このボールベアリング63の構成部材である内輪部材63Aの軸方向両端面のうち、立上部26と対向している一方の端面に、コイルばね62の截頭部62Aが当接しており、また、立上部26とは反対側の他方の端面が前述のストッパー部材61に当接したときに、ローラ25は、扉体1に対する上述の遊動限位置に達している。
以上の説明では、ローラ25が扉体1に対して扉体厚さ方向に遊動自在となっていると述べたが、ローラ25は、前述したとおり、ガイドレール20の被係合部20Cに係合していて、図4で示したガイドレール20の基部20Aや取付部材21からこの被係合部20Cまでの扉体1の厚さ方向の寸法は、言い換えると、ガイドレール20のアーム部20Bの長さ寸法は、扉体1の開閉移動方向に変化していないため、ローラ25が扉体1の厚さ方向に移動することはなく、そして、ローラ25がガイドレール20の被係合部20Cに係合した後は、扉体1がローラ25に対して扉体厚さ方向に遊動自在となる。また、ローラ用ブラケット24とローラ25との間にコイルばね62が配置されているため、ローラ用ブラケット24の立上部26がローラ25に近づき方向へ扉体1がローラ25に対して扉体厚さ方向に移動した場合には、圧縮されるコイルばね62のばね力により、扉体1には、扉体1がローラ25に対して原位置へ復帰しようとする弾発力が作用することになる。
このため、扉体1をローラ25に対して扉体厚さ方向に遊動自在としている中心軸60と、ローラ用ブラケット24とローラ25との間に配置されているコイルばね62とにより、扉体1をローラ25に対して扉体厚さ方向に遊動自在かつ原位置に復帰可能とするための扉体遊動、復帰手段64が構成されている。
この扉体遊動、復帰手段64は、扉体1の開閉移動方向にそれぞれ2個24A,24B,25A,25B配置されているローラ用ブラケット24及びローラ25ごとに設けられている。
図6は、全閉位置に達した扉体1に、これから説明する押圧部材70からの扉体厚さ方向への押圧力が作用していることを示している平面図であり、図7には、扉体1が全開位置に達したときにおける扉体1と押圧部材70との位置関係の平面図が示されている。これらの図6及び図7に示されているように、押圧部材70はガイドレール20に押圧部材用ブラケット71を介して取り付けられているとともに、扉体1の厚さ方向におけるガイドレール20の配置側とは反対側に配置されている。
図4に示されているとおり、押圧部材用ブラケット71は、ガイドレール20の扉体厚さ方向片側に配置された前述の基部20Aに結合されている第1部72と、この第1部72から扉体1の上方を越えて基部20Aとは反対側の扉体1の厚さ方向の位置まで延びる第2部73と、この第2部73から下方へ延びる第3部74と、を有し、この第3部74における扉体1と対向する部分に押圧部材70が配置されている。この押圧部材70は、本実施形態では、軸方向が上下方向となっている中心軸75を中心に回転する回転部材であるローラとなっている。また、押圧部材用ブラケット71の第1部72をガイドレール20の基部20Aに結合することは、基部20Aに形成されている溝20D内に挿入された板ナット76に第1部72をビス等の止着具77で止着することによって行われている。
このような押圧部材70及び押圧部材用ブラケット71は、図6及び図7に示されているように、ガイドレール20に、扉体1の開閉移動方向にそれぞれ2個70A,70B,71A,71B配置されている。これらの押圧部材70A,70B及び押圧部材用ブラケット71A,71Bの配置は、図6から分かるように、全閉位置に達したときの扉体1における2個のローラ用ブラケット24A,24Bの位置と一致している。
また、図6に示されているとおり、それぞれのローラ用ブラケット24A,24Bには、押圧部材70からの押圧力を受けるための被押圧部材78が結合されており、扉体1の厚さ方向に押圧部材70と対向しているこの被押圧部材78は板材の折り曲げ品である。また、被押圧部材78は、扉体1の厚さ方向に対して傾斜している傾斜面79を有するテーパー部材となっており、この傾斜面79は、扉体1の閉じ側へ延びるにしたがって押圧部材70の側とは反対側の扉体厚さ方向へ延びている面となっている。このような被押圧部材78も、それぞれのローラ用ブラケット24A,24Bごとに設けられているため、被押圧部材78は、扉体1に、この扉体1の開閉移動方向に2個78A,78B配置されている。
また、図6と図7から分かるように、2個の被押圧部材78A,78Bのうち、扉体1の閉じ側の被押圧部材78Aについての扉体1の全開時の位置は、2個の押圧部材70A,70Bのうち、扉体1の開き側の押圧部材70Bよりも扉体1の開き側の位置となっている。また、図6に示されているように、扉体1の閉じ側の被押圧部材78Aについてのローラ用ブラケット24Aの立上部26を含む扉体1からの扉体厚さ方向突出寸法L1よりも、扉体1の開き側の押圧部材70Bについてのローラ用ブラケット24Bの立上部26を含む扉体1からの扉体厚さ方向離間寸法L2が大きくなっている。
図5は図1のS5−S5線断面図である。この図5に示されているように、図4の扉体1の下部に下向きに形成されている前述のガイド溝部1Aには、2個のガイド部材90、91が、扉体1の開閉移動方向にずれ、かつ、扉体1の厚さ方向に分かれて配置されている。扉体1の厚さ方向のうち、押圧部材70や被押圧部材78と同じ側に配置されている一方のガイド部材90は、扉体1の開閉移動方向に長くなった長さを有しているとともに、扉体1の開き側の端部は傾斜面90Aとなっており、この傾斜面90Aは、被押圧部材78の傾斜面79と同じく、扉体1の閉じ側へ延びるにしたがって押圧部材70の側とは反対側の扉体厚さ方向へ延びている面となっている。また、他方のガイド部材91は、一方のガイド部材90よりも扉体1の開閉移動方向に短くなった長さを有しているとともに、扉体1の閉じ側の端部は傾斜面91Aとなっており、この傾斜面91Aは、一方のガイド部材90の傾斜面90Aと平行をなす面になっている。
また、図4に示されているとおり、前述の上枠部材4の下側の床7には、沓摺り部材92が配置されているとともに、この沓摺り部材92の配置位置は、扉体1の厚さ方向のうち、扉体1の開閉移動経路に対してガイドレール20の前述の基部20Aの側へずれた位置となっている。また、沓摺り部材92は、上枠部材4の長さ方向(扉体1の開閉移動方向)の全長のうち、扉体1で開閉される開口部となっている図1〜図3の出入口8の左右方向の幅範囲に配置され、このような長さを有している沓摺り部材92には、図4に示されているように、扉体1の側に向かって開口した溝92Aが形成され、この溝92Aに、気密部材100が嵌入固定されている。この気密部材100は、出入口8の左右方向の幅範囲の全長に渡る長さを有する。
また、図4に示されているように、上枠部材4には、沓摺り部材92の真上の位置においてチャンネル部材93が結合配置され、扉体1の側に向かって開口しているこのチャンネル部材93は、図2及び図3から分かるように、沓摺り部材92と同じく、出入口8の左右方向の幅範囲に配置されているとともに、チャンネル部材93の溝部にも気密部材100が嵌入固定されている。この気密部材100も、出入口8の左右方向の幅範囲の全長に渡る長さを有する。
さらに、図5〜図7に示されているように、前述の戸先側縦枠2には、全閉位置に達したときの扉体1の厚さ方向の片側の面と対向する位置において、上下方向に延びる溝部94が扉体1の側に向かって開口形成され、また、扉体1の厚さ方向両側に2個ある前述の竪額縁部材6のうち、戸先側縦枠2の溝部94と同じ側の竪額縁部材6Aにも、上下方向に延びる溝部95が扉体1の側に向かって開口形成されている。これらの溝部94,95にも気密部材100が嵌入固定され、また、これらの溝部94,95に嵌入固定された気密部材100は、床7から扉体1の扉体本体23の上端部までの長さを有している(図2及び図3を参照)。
気密部材100が配置されている以上説明した沓摺り部材92と、上枠部材4に結合されているチャンネル部材93と、戸先側縦枠2と、竪額縁部材6Aは、開閉移動する扉体1に対して不動となっている不動部材となっている。また、扉体1が全閉位置に達したときには、前述した戸袋9から出入口8に進出している扉体1の部分の厚さ方向両面のうち、気密部材100側の片側の面における上辺部と下辺部と左右の側辺部とが気密部材100と対向しているとともに、後述の説明から分かるように、これらの4つの辺部からなる全周に気密部材100が当接し、これにより、扉体1と沓摺り部材92との間、扉体1とチャンネル部材93との間、扉体1と戸先側縦枠2との間、及び扉体1と竪額縁部材6Aとの間が、火災等の災害発生時において、それぞれ気密状態となるようになっている。
そして、気密部材100は、例えば、耐熱性を有する合成樹脂等で形成されており、また、気密部材100は扉体1の厚さ方向への弾性を有している。
また、それぞれの気密部材100は、沓摺り部材92と上枠部材4の気密部材100について示されている図4から分かるように、上枠部材4におけるガイドレール20の取り付け部材となっている取付部材21よりも扉体1の側へ突出した突出量を有している。
なお、上記4個の気密部材100のうち、一部の気密部材100、例えば、沓摺り部材92に配置されている気密部材100を、沓摺り部材92と共に省略してもよい。
次に、本実施形態に係る気密式引戸装置の作用について説明する。全開位置にあった扉体1が前述した自動閉鎖装置40による自動移動力によって閉じ移動し、この閉じ移動によって扉体1が、全閉位置から所定距離までの位置に達すると、前述のシリンダ式制動装置50による制動によって扉体1の移動速度が減速し、この減速された速度で扉体1はさらに全閉位置に向かって移動する。
そして、扉体1が全閉位置に近づくと、扉体1のローラ用ブラケット24に設けられている被押圧部材78の傾斜面79が、不動部材となっている上枠部材4に、押圧部材用ブラケット71を介して取り付けられている押圧部材70に当接することになる。この当接状態を維持しながら扉体1がさらに閉じ移動を継続すると、扉体1のローラ25は、ガイドレール20の直線的に延びている前述の被係合部20Cに係合し続けているため、扉体1は、押圧部材70から被押圧部材78の傾斜面79に作用する押圧力と、図8及び図9で説明した中心軸60が構成部材となっている扉体遊動、復帰手段64の作用とにより、閉じ移動しながら、ローラ25に対し、扉体1の厚さ方向の片側となっている気密部材100が配置された側へ移動することになる。また、このときには、扉体遊動、復帰手段64の構成部材となっている前述のコイルばね62が圧縮され、これにより、コイルばね62に弾発力が蓄圧される。このときの状態が図8で示されている。
また、全開位置に達していた扉体1が全閉位置に近づくまで、扉体1の下部のガイド溝部1Aに挿入されている図1及び図4のガイドローラ10によって案内されているガイド部材は、図5に示されている長寸法のガイド部材90と短寸法のガイド部材91のうち、長寸法のガイド部材90となっているが、扉体1が全閉位置に近づくと、ガイドローラ10によって案内される部分は、ガイド部材90の傾斜面90Aから短寸法のガイド部材91の傾斜面91Aへ移行し、扉体1が全閉位置に達したときには、ガイド部材91を介してガイドローラ10から作用する押圧力により、扉体1の下部も、扉体1の厚さ方向の片側となっている気密部材100が配置された側へ移動している。
このため、扉体1が、図2及び図6に示されているように、全閉位置に達したときには、扉体1の厚さ方向両面のうち、気密部材100側の片側の面における上辺部と下辺部と左右の側辺部とからなる全周に気密部材100が当接しており、これにより、扉体1と沓摺り部材92との間、扉体1とチャンネル部材93との間、扉体1と戸先側縦枠2との間、及び扉体1と竪額縁部材6Aとの間が、それぞれ気密状態となっているため、防煙のための遮煙性や防音のための遮音性が確保されることになる。
また、全閉位置から扉体1を開き移動させた場合には、扉体1の閉じ移動時において、扉体遊動、復帰手段64のコイルばね62が圧縮されていて、このコイルばね62に弾発力が蓄圧されているため、この蓄圧された弾発力により、扉体1は、開き移動しながら、ローラ25に対し、気密部材100が配置された側とは反対側に移動し、また、扉体1の下部も、ガイドローラ10で案内されるガイド部材が、図5のガイド部材91からガイド部材90に移行するため、気密部材100が配置された側とは反対側へ移動することになり、これにより、扉体1はもとの位置に戻ることになる。
なお、図8は、扉体1が全閉位置に達したときを示しており、これに対して図9は、扉体1が全閉位置に達する少し手前の位置又は全閉位置から全開位置へ向かって少し開き移動した位置に達したとき、言い換えると、扉体1が全閉位置の近傍の位置に達しているときを示しており、この図9の位置に扉体1が達したときには、コイルばね62の弾発力により扉体1は気密部材100から離間しているため、被押圧部材78は、押圧部材70よりも扉体厚さ方向外側へ突出した状態となっている。
前述したように扉体1が開閉移動した場合に、この扉体1がローラ25に対して扉体1の厚さ方向に移動するようになっている本実施形態に係る装置では、扉体1にローラ用ブラケット24を介して取り付けられている中心軸60の長さは、この中心軸60に、扉体1が開閉移動しても扉体厚さ方向の位置が変わらないローラ25が配置されているため、ローラ25についての中心軸60の軸方向長さ(言い換えると、ローラ25の厚さ寸法)よりも長くなっており、すなわち、この中心軸60の長さは、扉体1が、扉体1の厚さ方向における図8で示された位置と図9で示された位置との間を往復移動できる長さに設定されており、また、コイルばね62の弾性変形可能量は、ローラ25に対する扉体1の扉体厚さ方向の移動量と同じ又はこの移動量よりも大きく設定されている。
なお、扉体1の厚さ方向における図8で示された上記の位置とは、扉体1が全閉位置に達しているときにおける扉体1の扉体厚さ方向の位置であって、扉体1が気密部材100に当接したときにおける扉体1の扉体厚さ方向の位置であり、また、扉体1の厚さ方向における図9で示された上記の位置とは、扉体1が、被押圧部材78が押圧部材70から外れた位置に達しているときにおける扉体1の扉体厚さ方向の位置であって、扉体1が気密部材100から離れたときにおける扉体1の扉体厚さ方向の位置である。
また、本実施形態では、図4から分かるように、ローラ用ブラケット24の立上部26における押圧部材70側の面は、扉体本体23における押圧部材70の側の面と一致又は略一致しているため、扉体1が全閉位置に達したときには、それぞれの気密部材100(このときの気密部材100は、扉体本体23との接触によって弾性圧縮変形している。)における扉体1側の先端部から押圧部材70における扉体1側の端部までの距離は、扉体本体23の厚さ寸法と、ローラ用ブラケット24の立上部26に取り付けられている被押圧部材78についての扉体厚さ方向寸法との合計値と同じ又は略同じになっている。このような寸法関係は、扉体1の開閉移動方向に2個ずつ設けられている押圧部材70A,70Bと被押圧部材78A,78Bについて成立している。
以上説明した本実施形態によると、全閉位置に向かって閉じ移動している扉体1をこの扉体1の厚さ方向に移動させることにより、全閉位置に達したときの扉体1を不動部材になっている沓摺り部材92とチャンネル部材93と戸先側縦枠2と竪額縁部材6Aに近づけ、これらのチャンネル部材93と戸先側縦枠2と竪額縁部材6Aに配置されている気密部材100により、扉体1の厚さ方向の片側と、沓摺り部材92、チャンネル部材93、戸先側縦枠2、竪額縁部材6Aとの間を気密状態にするための扉体厚さ方向移動手段は、扉体1をローラ25に対して扉体厚さ方向に遊動自在かつ原位置に復帰可能とするための扉体遊動、復帰手段64と、不動部材となっている上枠部材4にガイドレール20と押圧部材用ブラケット71を介して配置されている押圧手段70とによって構成されているため、扉体に2個設けられているローラごとに2本のガイドレールを用意するとともに、これらのガイドレールにそれぞれのローラを転動自在に係合するとともに、2本のガイドレールを上下の段差をもって配置し、これらのガイドレールにおける扉体の閉じ側の端部を気密部材の側へ屈曲した成分を有する屈曲部とした場合と異なり、ガイドレールが配置される上枠部材4の上下寸法が大きくならず、すなわち、引戸装置の全体の上下寸法が大きくならず、この上下寸法を小さくすることができる。
また、本実施形態によると、扉体1には、押圧部材70の押圧力を受けるための被押圧部材78が設けられているため、この被押圧部材78を介して押圧部材70の押圧力が扉体1に作用するようになっており、このため、扉体1に押圧部材70からの押圧力が直接的に作用することはなく、このため、扉体1の安全性を確保した状態で、扉体1を押圧部材70からの押圧力で気密部材100の側へ移動させることができる。
また、被押圧部材78は、扉体1に設けられているローラ用ブラケット24に配置されているため、扉体1の主要部分となっている扉体本体23に被押圧部材78を配置しなくもよく、被押圧部材78を配置するための特別の工夫を扉体本体23に行う必要がないため、扉体本体23の形状や構造を単純化することができる。
また、被押圧部材78は、扉体1の開閉移動方向に対してこの扉体1の厚さ方向へ傾斜した傾斜面79を有するテーパー部材となっているため、この傾斜面79により、閉じ移動している扉体1を気密部材100の側へ円滑に移動させることができる
さらに、本実施形態では、押圧部材70を、被押圧部材78の傾斜面79に転動自在に当る回転部材となっているローラとしているため、扉体1を閉じ移動させながらこの扉体1を気密部材100の側へ移動させることを、押圧部材70が被押圧部材78の傾斜面79に当って転動することによって行わせることができ、このため、閉じ移動している扉体1を気密部材100の側へ移動させることを、一層円滑に行わせることができる。
また、本実施形態によると、押圧部材70と被押圧部材78のそれぞれの個数は、扉体1の開閉移動方向に配置された2個となっているため、閉じ移動している扉体1を気密部材100の側へ移動させることを、2個の押圧部材70から2個の被押圧部材78に同時に作用する押圧力により、扉体1の開閉移動方向の全長に渡って有効に行わせることができる。
さらに、本実施形態では、前述したように、それぞれの押圧部材70は、不動部材となっている上枠部材4に押圧部材用ブラケット71を介して取り付けられており、ガイドレール20は、扉体1の厚さ方向の片側に配置された基部20Aを有するものとなっており、押圧部材用ブラケット71は、この基部20Aに結合されている第1部72と、この第1部72から扉体1の上方を越えてガイドレール20の基部20Aとは反対側の扉体1の厚さ方向の位置まで延びる第2部73と、この第2部73から下方へ延びる第3部74と、を有し、この第3部74における扉体1と対向する部分に押圧部材70が配置されており、図6で説明したように、2個の被押圧部材78のうち、閉じ側の被押圧部材78Aについての扉体1からの扉体厚さ方向突出寸法L1よりも、2個の押圧部材70のうち、開き側の押圧部材70Bについての扉体1からの扉体厚さ方向離間寸法L2が大きくなっている。
このため、閉じ側の被押圧部材78Aについての扉体1の全開時の位置が、開き側の押圧部材70Bよりも扉体1の開き側の位置となっていても、寸法L1よりも寸法L2が大きくなっていることにより、扉体1が全閉位置と全開位置との間を移動したときに、閉じ側の被押圧部材78Aが開き側の押圧部材70Bと干渉することはなく、扉体1を所定どおりに全閉位置と全開位置との間を移動させることができる。
なお、扉体1の閉じ側に配置される被押圧部材78A及び押圧部材70Aと、扉体1の開き側に配置される被押圧部材78B及び押圧部材70Bとの間隔を大きくし、これにより、閉じ側の被押圧部材78Aについての扉体1の全開時の位置が、開き側の押圧部材70Bよりも扉体1の閉じ側の位置となるようにしてもよい。これによると、2個の被押圧部材78A,78Bの形状と寸法を同じにすることができ、また、2個の押圧部材用ブラケット71A,71Bの形状と寸法も同じにすることができるため、これらの被押圧部材78A,78Bと押圧部材用ブラケット71A,71Bの製造を容易に行えることになる。
また、本実施形態では、ローラ用ブラケット24とローラ25との間には、前述の扉体遊動、復帰手段64を構成する部材となっていて、気密部材100の側へ移動した扉体1をローラ25に対して原位置に復帰可能とするためのコイルばね62が介設されており、このコイルばね62の一方の端部となっている截頭部62Aを、図8及び図9で説明したように、ローラ25の穴28からのこのローラ25内部に侵入させたため、ローラ用ブラケット24の立上部26とローラ25との間の間隔が小さくなっていても、コイルばね62の長さを充分に大きくすることができる。これにより、コイルばね62のばね力を大きくできるため、扉体1が気密部材100の側へ移動することによってコイルばね62に蓄圧され、扉体1をローラ25に対して前述の原位置へ復帰移動させるための弾発力も充分に大きくすることができる。
また、本実施形態では、図4に示されているように、ローラ用ブラケット24は、扉体本体23の上面に結合されたベース部124(図6も参照)を有しており、このベース部124から前述した立上部26が立ち上がっているとともに、この立上部26に対するベース部124の位置は、ガイドレール20の基部20Aや取付部材51の側の位置となっていて、この位置は気密部材100に近い位置となっているため、立上部26に対するベース部124の位置を図4で示された位置とは反対側の位置とした場合よりも、気密部材100に扉体1を当接させるために必要となる扉体1の扉体厚さ方向移動量を小さくすることができ、また、装置全体についての扉体厚さ方向寸法を小さくすることができる。
以上説明した実施形態では、不動部材となっている上枠部材4には、ガイドレール20と押圧部材用ブラケット71を介してローラによる押圧部材70が配置され、扉体1のローラ用ブラケット24には、テーパー部材となっている被押圧部材78が配置されていたが、押圧部材をテーパー部材とし、被押圧部材78を回転部材であるローラとしてもよい。図10は、このように押圧部材70’をテーパー部材とし、被押圧部材78’を回転部材であるローラとした実施形態を示している。
図11で示す実施形態に係る扉体1’は、この扉体1’の扉体本体23の戸先側(閉じ側)の端部に柔軟性を有する合成樹脂又はゴム等で形成された柔軟部材101が取り付けられたものとなっている。
扉体1’が全閉位置に近づくまでは、気密部材100が配置されている戸先側縦枠2の溝部94を形成している部分2Bと、扉体1’との間の扉体厚さ方向の間隔は、L3となっている。この間隔L3を維持したまま扉体1’が全閉位置から所定距離に達すると、この後の扉体1’は、前述した扉体遊動、復帰手段64と押圧部材70,70’の作用により、間隔L3を小さくしながら、言い換えると、戸先側縦枠2の部分2Bに近づきながら全閉位置に達することになる。このため、間隔L3から入れた指が、扉体1’と戸先側縦枠2の部分2Bとの間で挟まれるおそれがあるが、図11の実施形態では、扉体1’の扉体本体23の戸先側の端部に柔軟部材101が取り付けられ、扉体1’が全閉位置又は略全閉位置に達したときに、扉体1’の厚さ方向に戸先側縦枠2の部分2Bと対向する扉体1’の部分は、柔軟部材101となっているため、指の安全性を確保することができる。
図12は、気密部材100’を、内部に磁石102が収納配置されたものとした実施形態を示している。この実施形態によると、扉体1が全閉位置に達すると、扉体1の扉体本体23の表面部材23Aは鉄等の磁性を有する金属で形成されているため、磁石102にこの表面部材23Aが吸着されることになる。このため、扉体1の扉体本体23が気密部材100’に一層確実に当接し、扉体1と戸先側縦枠2との間の気密性を向上させることができる。
このように磁石102を備えた気密部材100’は、前述した沓摺り部材92、チャンネル部材93、竪額縁部材6Aにも配置される。