JP2010043312A - 耐爪飛び性に優れたほうろう用鋼板 - Google Patents

耐爪飛び性に優れたほうろう用鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】耐爪飛び性を改善するため、ならびに従来材並みの加工性を確保することが可能なほうろう用鋼板を提供することを目的とする。
【解決手段】C:0.0005〜0.0030%、Si:0.05%以下、Mn:0.01〜0.2%、P:0.02%以下、S:0.006%以下、Al:0.005%以下、N:0.001〜0.003%、O:0.015〜0.05%、酸不溶Nb:0.025%以上酸可溶Nb:93/12×(%C)+93/14×(%N)以上であり、かつ、93/12×(%C)+93/14×(%N)+0.040以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板であり、この鋼板中に、MnNb26の結晶構造を有する長径1μm以上の介在物が存在する耐爪飛び性に優れたほうろう用鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は耐爪飛び性に優れたほうろう用鋼板に関するものである。
ほうろうとは、金属板表面にガラス成分を薄く焼き付けた素材であり、金属の強度とガラスの耐食性および美観性を兼ね備えている。表面が硬く滑らかなため疵や汚れがつきにくく衛生的である。そのため、台所用品、医療器具、科学容器等の広範な分野で使用されている。ほうろう用鋼板は、成形後、鋼板に釉薬を塗布し、800℃以上の高温大気中で焼成して製造される。このため、爪飛びや黒点等のほうろう特有の欠陥を起こす場合がある。
爪飛びは、釉薬中に含まれる水素が焼成時に鋼中に拡散侵入し、冷却時に鋼中から水素ガスとして放出される際に、ほうろう層と鋼板の界面に集積し、高圧となりほうろう層をはじき飛ばすことにより生じるほうろう層の欠陥である。はじき飛ばされた痕の形状が爪の形に似ていることから、爪飛びと呼ばれる。
最近では、ほうろう製品メーカーからの鋼板に対する要望が厳しくなっており、一層の耐爪飛び性の向上や、一層複雑な成形を可能とする成形性の向上などが求められている。
爪飛び対策としては、鋼板内部に水素をトラップするサイトを設け、鋼板/ほうろう層界面への急激な水素の集積を抑制することが重要となる。そのために、ほうろう用鋼板では多量の介在物(酸化物)や析出物を生成、分散させることで、水素トラップ能を改善したものが提案されている。
特開2001−316760号公報 特開平10−183300号公報 特表2005−510624号公報
特許文献1は、MnO主体の介在物を形成したものである。冷間圧延などの圧延加工によって介在物周辺に生じる空隙を水素トラップサイトとして利用している。介在物の組成として、MnO系介在物のほか、SiO2系、Al23系、MnS系などが見られるとしているが、Al23系は耐爪飛び性の向上に寄与は見られず、MnO系やMnS系が水素トラップ効果があるとしている。特許文献1では、結晶粒界に多数存在する転位も水素トラップサイトとして利用しており、このため、結晶粒の粗大化を抑制するために、介在物の組成、大きさ、形状、比率、個数を規定している。
特許文献2は、Nb酸化物、Nb炭窒化物、B酸化物、B窒化物を生成させて耐爪飛び性を改善している。介在物や析出物と地鉄との隙間に水素をトラップすることを利用している点は、特許文献1の介在物周辺に生じた空隙を利用している点と同様である。介在物(酸化物)を形成する酸素の含有量が過剰な場合の課題、例えば連続鋳造時のピンホールや、粗大介在物や、ほうろうの前処理の酸洗時の膨れ欠陥を抑制するために、酸素の含有量を従来鋼より低くし、それによって従来材より低下する耐爪飛び性をNb、Bの炭窒化物の生成および焼鈍条件により補っている。特許文献1と異なり、Mnは耐爪飛び性を含むほうろう性への影響は小さいとしている。
特許文献3は、特許文献1、2と同じく酸化物を利用しているが、酸化物と地鉄との空隙を利用するというより、冷延工程で酸化物が破砕されることにより形成される酸化物内部の隙間の利用を強調している。介在物の組成としては、Nb−V−Mn−Si−Fe複合酸化物が挙げられているが、特に組成は規定していない。むしろ、例えばMn量の変化により、酸化物組成が大きく変化すること、ひいては圧延時の酸化物の延伸および破砕の状態に大きな影響を及ぼすことが記載されており、それによる水素トラップ能の変化を防止するために、鋼板を高温に長時間保持した際の密度変化量を制御することが、特許文献3の特徴である。具体的には、水素ガス中での850℃の温度で20時間の焼鈍前後の密度変化が0.02%以上であることが必要としている。密度変化は鋼中空隙内壁面の水素トラップ能の活性度を表す指標と解釈している。
この様に、介在物、析出物など様々な種類の水素トラップサイトが活用されているが、ほうろうの釉薬の種類や焼成条件によっては、爪飛びが発生する場合があり、厳しくなり続けるユーザーの要求に対しては必ずしも十分でない。そして、特許文献3の密度変化を指標とする場合、長時間の評価試験が必要であり、工程の増加、納期や製造コストの増加を招くことも課題となる。本発明は、上述した問題点を解決するために考案したものであり、耐爪飛び性を改善するため、ならびに従来材並みの加工性を確保することが可能なほうろう用鋼板を提供することを目的とする。
そのための本発明の要旨は以下の通りである。なお、本明細書中に記載する元素含有量における%表示は、特に断りが無い限り、全て質量%とする。
(1)質量%で、
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.05%以下、
Mn:0.01〜0.2%、
P:0.02%以下、
S:0.006%以下、
Al:0.005%以下、
N:0.001〜0.003%以下、
O:0.015〜0.05%、
酸不溶Nb:0.025%以上
酸可溶Nb:93/12×(%C)+93/14×(%N)以上であり、かつ、93/12×(%C)+93/14×(%N)+0.040以下、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板であり、
この鋼板中に、MnNb26の結晶構造を有する長径1μm以上の介在物を存在させたことを特徴とする、耐爪飛び性に優れたほうろう用鋼板。
(2)酸不溶Nbと固溶Nbの合計であるtotal−NbとMnの質量比が、(%Mn)/(%total−Nb)≦1.2を満たすことを特徴とする、上記(1)に記載されたほうろう用鋼板。
(3)前記MnNb26の結晶構造を有する介在物の平均組成が、(%MnO)+(%Nb25)≧85を満たすことを特徴とする、上記(2)に記載されたほうろう用鋼板。
本発明により、耐爪飛び性が大きく向上し、ほうろう層の欠陥が格段に低減し、あるいは欠陥が無い、ほうろう用鋼板を製造することができる。加工性も従来材並みを確保できる。
次に、本発明の構成要件がもたらす作用、すなわち本発明の技術思想を詳細に説明する。本発明の実施の形態については、その後に成分範囲の限定理由と共に述べることとする。
まず、本発明の技術思想について説明する。本発明者らは、耐爪飛び性や水素トラップ能を一層改善するためには、圧延時に介在物周囲および介在物内部に形成される空隙をさらに増やすことが有効と考え、特に、介在物の種類や組成の影響に着目した。後述する様に、介在物の種類や組成を変更した鋼板試料を多数作成し、耐爪飛び性、水素トラップ能、ならびに介在物周辺や内部の空隙形成挙動を検討した。
実験では、水素トラップ能を電気化学的水素透過試験法で評価した。この試験法は、鋼板の厚さ方向に水素が透過する時間を測定する方法で、ほうろう用鋼板の水素トラップ能の評価で一般的に用いられている。この試験法では、測定された時間が長いほど水素トラップ能が高いことを意味する。この試験法の評価結果は、水素透過時間(分)を板厚(mm)の2乗で除したT値(分/mm2)で示され、従来は、爪飛びを防止するためにはT値が高々15(分/mm2)であれば良いとされていた。ただし、ユーザー要求が厳しくなっている現状では、より高いT値を有する鋼板が望まれている。そして、実験では、T値と介在物の種類や組成の関係を調査するために、電子顕微鏡を用いて、鋼板断面の介在物の形状、および介在物周囲(すなわち、介在物/地鉄の界面)や介在物内部の空隙形成挙動を観察した。
その結果、水素トラップ能を改善(T値を増加)するために、MnOとNb25がモル比1:1で複合したMnNb26、すなわちコロンバイト(columbite)を主体として有する介在物(以下、この介在物をMnNb26系介在物と記載する場合もある。)を分散させることが、特に有効であることを見出した。なお、特許文献1から3には、MnNb26(コロンバイト)についての記載は無い。
従来用いられていたMnOなどの介在物よりも、MnNb26系介在物が有効である理由として、以下の点が考えられる。すなわち、(a)圧延時に変形しにくいため、地鉄との界面に空隙を形成し易いこと、(b)圧延時に介在物の内部に亀裂が入り、新たに空隙を形成し易いこと、(c)MnNb26系介在物が凝固後の鋳片、ひいては鋼板中に多数、微細分散するため介在物/地鉄間の界面積が増加するので、上記(a)の機構による空隙形成が促進されること、の3点である。これらが複合して有利に作用することにより、水素トラップである介在物周囲(介在物/地鉄の界面)や介在物内部に形成される空隙が増加して、水素トラップ能、すなわちT値が高くなると考えられる。
(a)については、MnNb26系介在物は従来活用いられていたMnO系介在物などよりも圧延時の変形が少ないため、地鉄との界面に空隙が形成され易い。観察結果では長径1μm以上の介在物の周辺に空隙形成が見られた。
(b)については、主に長径が5μm以上のMnNb26系介在物で観察されている。長径が5μm以上であれば、冷間圧延時に介在物内部に亀裂が発生し易く、亀裂部の破面が圧延方向に乖離して新たに空隙が形成されて、そこが水素トラップサイトとなると考えられる。
(c)については、MnおよびNbのいずれもが弱脱酸元素であることが関与している。MnやNbの様な弱脱酸元素の酸化物は鋳片内に残存する介在物個数が、強脱酸元素の場合よりも多い。これは、弱脱酸元素の酸化物は溶鋼中で粗大化しにくく微細なまま溶鋼中に懸濁し続けて、湯面への浮上速度が小さいためである。一方、AlやTiなどの強脱酸元素を添加した場合、生成した酸化物は急速に成長し粗大化するので浮上速度が大きく、容易に浮上する。その結果、鋳造時までに残存する溶鋼中の介在物は弱脱酸元素の場合よりも少なくなる。
弱脱酸元素で脱酸した場合、脱酸後の溶鋼中の溶存酸素が高いことも有利に作用する。溶鋼中に多量の溶存酸素が残存しているため、凝固時に凝固組織間にMn、Nbと共に酸素が多く偏析する。その結果、凝固組織間に多数の微細酸化物が生成する。このような酸化物は凝固開始から凝固終了までの限られた時間内に生成するのでほとんど粗大化せず、凝固組織間に生成するので浮上もしない。この結果、凝固組織間に微細なまま多数の酸化物が分散する。さらに、脱酸後の溶存酸素濃度が高いと、介在物/溶鋼間の界面エネルギーが低減するため、溶鋼中で一層凝集合体しにくくなることも、介在物の微細分散に有利に作用する。一方、強脱酸元素の場合は、脱酸後の溶鋼中の溶存酸素が非常に低いため、凝固時に凝固組織間に酸化物はほとんど生成しない。以上の理由により、MnNb26系介在物は溶鋼中、凝固後の鋳片内、および鋼板中に多数、微細分散すると考えられる。この様にして、介在物/地鉄間の界面積が増加する結果、上記(a)の機構により形成される空隙体積が増加することになる。
以上の(a)〜(c)の理由により、鋼板中に、MnNb26を含有する介在物を形成することは、水素トラップサイトである介在物周囲や介在物内部の空隙形成を促進するので、水素トラップ能向上、すなわち耐爪飛び性向上に有効である。そこで、鋼板中に存在する長径1μm以上の介在物が、MnNb26の結晶構造を有するようにすることで、従来よりも耐爪飛び性を向上でき、T値を15よりも大きくすることができることを見出した。
ちなみに、長径が1μm以上の介在物の内、MnNb26を質量比で50%以上含有する介在物が、個数比率で50%以上であると、T値が17以上に安定しやすくなり、鋼板の部位による変動が小さくなるため好ましい。
そして、MnNb26系介在物を安定して形成するための方策を検討した結果、鋼板中に含有されるMnと、酸不溶Nbと酸可溶Nbの合計であるtotal−Nb(以降、t−Nbと記載)の濃度比が影響することを見出した。Mn量とt−Nb量の比(%Mn)/(%t−Nb)を変えると、生成するMnOとNb25の量の比が変わる。ちなみに、(%Mn)/(%t−Nb)が高い場合は、Nb25に対してMnOの生成量が多いため、MnNb26の結晶構造のものと過剰のMnOが生成する。この過剰MnOが多い場合、鋼板の水素トラップ能は低下する。これは、MnNb26に比べてMnOが圧延中に延伸し易く、地鉄との界面に空隙が形成されにくく、また内部に亀裂が生じにくくなるためと推定される。このため、過剰MnOは少ないほど水素トラップ能は向上し、具体的には(%Mn)/(%t−Nb)≦1.2とすることで、T値は21以上を確保できるので望ましいことが実験的知見に明らかになった。
さらに、鋼板中の介在物の組成と水素トラップ能の関係を詳細に調査した結果、介在物中に含有されるMnNb26以外の化合物の含有量を低減することが、水素トラップ能を改善するために有効であることを見出した。発明者の実験では、(%Mn)/(%t−Nb)が近い値の場合でも、T値が異なる場合があった。
この原因は、介在物中に含有されるMnNb26以外の化合物含有量により、圧延時の介在物の変形能が変化し、その結果、介在物周囲および介在物内部の空隙形成能が変化するためであることを突き止めた。例えば、介在物中に含まれるMnNb26以外のSiO2やMnSの含有率が高くなると、圧延中の介在物の変形が容易になり、介在物周辺および内部の空隙が形成されにくくなる結果、T値が低下するので好ましくない。具体的には、長径1μm以上のMnNb26系介在物の平均組成で、(%MnO)+(%Nb25)が85以上であると、T値を24以上にできるので好ましいことが実験的知見から明らかになった。
なお、ここで、評価対象の介在物を長径1μm以上のものとした理由は、介在物周辺や内部の空隙形成を電子顕微鏡で観察できるサイズであるためである。これより小さな介在物では空隙形成の判断が困難になる。以上の3点の技術思想に基づき、本発明の要件を構成した。
次に、本発明の実施の形態について、まず、成分範囲の限定理由を詳細に説明する。
C:0.0005〜0.0030%
Cは、鋼板の強度を確保するために必要な元素である。C含有量の上限は、0.0030%とする。これより高いと、プレス加工に必要な延性が得られないためである。一方、下限は現実的な操業時間内で脱炭できる濃度である0.0005%とする。
Si:0.05%以下
Siは、脱酸あるいは強度向上に有用な元素であるが、その酸化物は、MnNb26系介在物中に多量に含有されると、介在物が低融点化する結果、圧延時に延伸し易くなるので、介在物の空隙形成能が低下する。また、Si濃度が高くなると、鋼板が硬くなり加工性が低下する。これらの理由から、Si含有量の上限は0.05%とする。下限は特に規定せず、0%を含む。
Mn:0.01〜0.2%
Mnは、MnNb26を形成するために本発明では必須の成分であり、適正量を含有しなければならない。後述する濃度範囲のNbと反応してMnNb26を形成するために、最低限必要な濃度として、下限を0.01%とする。一方、0.2%を超えて添加しても、水素トラップ能は向上せず飽和してしまう。これは、粗大なMnNb26が生成しやすくなるためと推定される。このほか、Mnが過剰に含有されると鋼板の硬度が増して加工性が低下する。以上の理由により、上限を0.2%とする。
P:0.02%以下
Pは固溶して強度を上昇させる効果はあるが、過剰に含まれると鋼板の延性を劣化させるため好ましくない。このため本発明では、P含有量の上限を0.02%とする。下限は0%を含む。
S:0.006%以下
Sは、低融点のMnSを形成し、熱間圧延時に延伸するため、含有量の増加に伴い鋼板の延性を劣化させる。また、MnNb26系介在物の周囲にMnSが多量に生成した場合、圧延時に介在物と地鉄間の界面に本来形成されるはずの水素トラップサイトとしての空隙を埋めてしまう。さらに、多量のSがMnをMnSとして固定した場合、MnNb26を形成するために必要なMn量が低減する結果、MnNb26の生成量が低減する。このため、S含有量の許容可能な上限を0.006%とする。下限には0%を含む。
Al:0.005%以下
Alは強力な脱酸元素であり、多量に添加するとAl23が優先して生成し溶鋼中の酸素が消費される結果、溶鋼中でMnNb26が十分に形成されなくなり、また、MnNb26系介在物が形成されても、介在物中のAl23濃度が高くなると介在物が粗大化して浮上し易くなる。このため、凝固開始までの溶鋼中に残存する介在物個数が著しく低減する。さらに、Al添加後の溶存酸素濃度が低いので、凝固中の介在物生成量も低減する。この様に、Al含有量が過剰な場合、MnNb26系介在物が十分に形成されないため水素トラップ能が大幅に低下するので、Al含有量の許容可能な上限を0.005%とする。この場合のAl量は、酸可溶Alと酸不溶Alの合計であるtotal−Al量である。下限値は特に規定せず、0%を含む。なお、Al添加前の溶鋼中の溶存酸素濃度に応じて、Al添加量を調節すれば、鋳片ひいては鋼板のAl含有量を0.005%以下とすることは可能であるため、本発明において、Alを予備脱酸剤として使用することは可能である。
N:0.001〜0.003%
Nは強度向上に作用するが、含有量の増加に伴い延性が低下するため、上限を0.003%とする。一方、現実の操業では0.001%未満まで脱窒することは困難なため、0.001%を下限とする。
O:0.015〜0.05%
Oは、含有量が高いほど介在物量が多いことを示す、介在物量の指標である。現状以上に耐爪飛び性を向上させるためには、0.015%以上が必要であるため、下限を0.015%とする。一方、O含有量が0.05%を超えると、粗大な介在物が延性の低下を引き起こすため、上限を0.05%とする。
酸不溶Nb:0.025%以上
鋼板中に含有されるNbは、酸不溶Nbと酸可溶Nbに分けることができる。両者はNb酸化物が酸に不溶である(ただし、フッ酸と硫酸は除く)性質を利用して、分離して分析することができる。このうち、酸不溶Nbは、本発明で水素トラップ能発現に寄与する最も重要な元素であり、鋼板中で主としてMnNb26として存在する。発明者らの実験結果によれば、酸不溶Nbが0.025%未満では、従来のT値である15を超えて大きくすることができない。そして、鋼板から電解抽出した介在物にX線を照射して結晶構造をX線回折法で調査しても、MnNb26の回折パターンが明確に検出できず、MnNb26の生成を検証することが困難である。したがって、酸不溶Nbの含有量を0.025%以上とする。酸不溶Nbが多いほど水素トラップ能は向上する点では好ましいが、0.2%を超えると介在物が粗大となり加工性が低下するため、0.2%以下であることが望ましい。
酸可溶Nb:93/12×(%C)+93/14×(%N)以上であり、かつ、93/12×(%C)+93/14×(%N)+0.040以下
酸化物を形成していない酸可溶Nbは、鋼板中に固溶している固溶Nbと、炭窒化物を形成しているNbに分けられる。良好な加工性と、非時効性を確保するためには、CおよびNを固定する必要がある。このため、酸可溶Nb量は、93/12×(%C)+93/14×(%N)以上とする。一方、CおよびNを固定する以上の過剰なNbは、再結晶温度が上昇し、同一温度で加熱すると再結晶率が低下する結果、延性が低下する。このため、過剰Nbの許容可能な上限を0.040%とした。したがって、CおよびNの固定に必要なNbと過剰Nbを合わせた酸可溶Nbの上限は、93/12×(%C)+93/14×(%N)+0.040以下とする。
その他の不可避的不純物は極力少なくすることが望ましいが、本発明による鋼板の耐爪飛び性、延性に悪影響を及ぼさない範囲に限り許容できる。
本発明の鋼板を製造するためには、上記成分範囲の溶鋼を、例えば、転炉と真空脱ガス装置を用いて溶製し、連続鋳造して鋳片とし、一般的な常法によって、加熱、熱延、冷延、焼鈍すれば良い。通常のほうろう用鋼板を作成する条件範囲であれば、圧延時の介在物の変形や破砕挙動は極端に変わることは無いため、本発明により水素透過能の優れた、ほうろう用鋼板を得ることができる。
介在物がMnNb26の結晶構造を有する、すなわち、MnNb26を含有することを検証するためには、例えば、X線回折法を用いることができる。鋼板を電解して介在物を電解抽出し、X線回折法で回折パターンを測定する方法である。実際の介在物では、MnNb26以外の化合物が含まれる場合が多いが、MnNb26の標準試料から得られる回折パターンと比較し、MnNb26の回折パターンが含まれているか調査すれば良い。
回折パターンだけからはMnNb26含有量の定量評価は困難であるが、試料から得られた回折パターンの中で、MnNb26の回折線ピークが高く明瞭であるほど好ましい。
なお、介在物組成は、電子顕微鏡に設置されているEPMA装置を用いれば、定量的な分析が可能である。
以下に、実施例および比較例に基づいて本発明を詳細に説明する。
表1に示す成分の鋼板の製造方法について示す。まず、転炉で脱炭精錬した溶鋼300tをRH式真空脱ガス装置で、炭素を0.003%以下まで脱炭した。次に、Alを添加して予備脱酸し、Nb以外の成分を調整した後、最後にフェロニオブを添加しNb濃度を調整した。この溶鋼を連続鋳造機で鋳造し、幅1200mm、厚さ250mmの鋳片とし、ガス切断し、1コイル単位とした。こうして得られた鋳片から、以下の工程を経て、1.2mm厚の鋼板を作成した。すなわち、鋳片を1130〜1150℃に加熱した後、仕上温度925〜975℃で、4.0mmまで熱間圧延し、730〜770℃で巻き取った。次に、1.2mmまで冷間圧延(圧下率70%)した後、730〜770℃で連続焼鈍を行い、圧下率1.0%で調質圧延した。
こうして作成した鋼板から試料を採取し、水素トラップ能、介在物中のMnNb26の有無、介在物組成、加工性を評価した。水素トラップ能は、電気化学的水素透過試験法でT値を測定した。鋼板の幅方向の3ヶ所からT値測定試料を採取し、その平均値を求めた。評価基準は、3ヶ所のT値の平均が17以上である場合に合格とした。T値は高いほど好ましい。介在物中のMnNb26の有無は、鋼板を電解して採取した電解残さの結晶構造をX線回折法で調査した。MnNb26の回折パターンが検出された場合を合格とした。介在物組成は、鋼板表面を研磨した後、走査型電子顕微鏡で介在物を観察し、電子顕微鏡に付属するEPMA装置によって定量分析した。観察対象は、長径1μm以上の介在物を20個とし、平均組成を次に述べる方法で算出した。ちなみに、介在物を20個としたのは、充分に信頼性が得られることを、本発明者が既に知見していることに基いている。
酸化物構成元素として、主にMn、Nb、Al、Si、Oが検出されるが、一部、耐火物などから混入したと考えられる他成分が検出される場合もあった。Sが検出された場合はMnSであると見なした。上記元素の定量分析結果を酸化物組成として、MnO、Nb25、Al23、SiO2などに換算し、MnSを除いて酸化物系介在物組成を算出した。加工性は引張試験をJIS5号試験片を用いて行った。評価基準は、延び量が50%以上を合格とした。最後に、鋼板に釉薬を塗り、850℃で焼成し、爪飛びの発生状況を評価した。
表1に鋼板の成分値を示す。試料No.1から10が本発明例であり、No.11から13は比較例である。比較例では、介在物からMnNb26は検出されなかった。T値の平均は15以下であり、水素透過能は従来なみであった。焼成後のほうろう層には、長さ2mm以上の爪飛びが鋼板1m当たり2個以上発生した。
一方、本発明例のNo.1から10では、MnNb26が検出され、T値の平均値は17以上を示しており、水素透過能は良好であった。No.2と3の鋼板では、各部位のT値は3枚とも平均値±1の範囲内で安定していたが、No.1では平均値±1.5の範囲であった。No.1の鋼板では、MnNb26を質量比で50%以上含有する介在物の個数比率が45%にとどまったが、No.2と3はそれぞれ50%、55%であった。伸びの値は50%以上であり、加工性も合格であった。焼成後のほうろう層の爪飛び性も良好であり、No.1から3では、長さ1mm以下の爪飛びが鋼板1m当たり1ヶ所発生したにとどまった。
本発明例のうち、No.3から10は、(%Mn)/(%t−Nb)が1.2以下であるため、介在物周辺や内部に空隙が形成されやすくなり、各試料のT値の平均は21以上とより良好であった。部位によるT値の変動も少なく、No.3から10の全ての試料で、各部位のT値は平均値±1以内で安定していた。MnNb26を質量比で50%以上含有する介在物の個数比率は50%から100%であった。焼成後のほうろう層の爪飛び性はさらに良好で、点状の欠陥が鋼板1m当たり1ヶ所発生したのみであった。
さらに、本発明例のNo.7から10は、介在物の平均組成で、(%MnO)+(%Nb25)が85%以上であり、MnOやNb25以外の酸化物量が少なかった。このため、介在物周辺や内部に空隙が一層形成され、T値の平均は24以上と非常に良好であった。焼成後のほうろう層には欠陥が全く発生しなかった。
Figure 2010043312

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.0005〜0.0030%、
    Si:0.05%以下、
    Mn:0.01〜0.2%、
    P:0.02%以下、
    S:0.006%以下、
    Al:0.005%以下、
    N:0.001〜0.003%、
    O:0.015〜0.05%、
    酸不溶Nb:0.025%以上
    酸可溶Nb:93/12×(%C)+93/14×(%N)以上であり、かつ、93/12×(%C)+93/14×(%N)+0.040以下、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板であり、
    この鋼板中に、MnNb26の結晶構造を有する長径1μm以上の介在物を存在させたことを特徴とする、耐爪飛び性に優れたほうろう用鋼板。
  2. 酸不溶Nbと固溶Nbの合計であるtotal−NbとMnの質量比が、(%Mn)/(%total−Nb)≦1.2を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のほうろう用鋼板。
  3. 前記MnNb26の結晶構造を有する介在物の平均組成が、(%MnO)+(%Nb25)≧85を満たすことを特徴とする、請求項2に記載のほうろう用鋼板。
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