JP2010039220A - 偏光レンズおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐衝撃性や生産性に優れ、しかも虹模様等の色ムラや歪みが発生し難い偏光レンズおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 偏光レンズ1は、偏光膜10の両面に一対の保護フィルム11、12が積層された偏光シート2と、偏光シート2の裏側に一体に固着されるレンズ基材層3と、を備え、レンズ基材層3が熱可塑性ポリウレタンからなる。偏光レンズ1の製造方法は、偏光シート2を、所定の曲率で曲げ加工する工程と、曲げ加工された偏光シート2に対応する形状をなすキャビティが凹設された金型に、偏光シート2の表側がキャビティに沿うようにして、偏光シート2を装着する工程と、偏光シート2が装着された金型内に熱可塑性ポリウレタンを充填し、射出成形によって偏光シート2の裏側にレンズ基材層3を形成する工程と、を含んでいる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、偏光レンズおよびその製造方法に関する。
近年アウトドアスポーツやレジャー等屋外での活動が盛んになるにつれ、太陽光より目を守るサングラスの使用が世界的に増加している。サングラスには偏光レンズが用いられており、この偏光レンズとしては、大きくプラスチック製のものとガラス製のものとに分類できるが、一般的にプラスチック製のものの方がガラス製のものよりも軽量で取り扱いが容易であり安全性も高いことから、多用される傾向にある。
プラスチック製の偏光レンズでは、ポリビニルアルコール等からなる偏光膜をプラスチック樹脂の間に挟み込んだ構造のものが採用されている。その代表的なものがCR−39を用いた注型成形による偏光レンズである。
しかしながら、CR−39製の偏光レンズは、耐衝撃性が十分でなく割れ易いという欠点を有している。また、CR−39のような熱硬化性樹脂の成形には、注型成形は適当な製造方法ではあるが、注型成形では、樹脂を金型内で重合硬化させるために長時間を要し、一つの規格に対して金型を多数準備しなければならないことから、生産性が悪いという問題があった。
これに対して、偏光膜の裏側にポリカーボネートを射出成形することによって積層した偏光レンズが知られている(例えば特許文献1)。このような偏光レンズであれば、強度を増加させて耐衝撃性を優れたものとできる上、注型成形に比べてタクトタイムがきわめて短く、準備する金型も少なくて済むことから、生産性を向上させることが可能である。
特開平8−52817号公報
ところが、ポリカーボネートを射出成形して構成した偏光レンズの場合、虹模様等の色ムラや歪みが生じ易く、偏光レンズとしての光学特性が不十分であることが明らかとなった。偏光レンズは本来的には、偏光膜の性質に基づき、一定方向にだけ振動する光波を通過させるが、ポリカーボネートの複屈折によって、上記光波が回旋ないし屈曲させられることが、虹模様等の色ムラや歪み発生の要因であると考えられる。
ポリカーボネートは、光弾性係数が高いため、わずかな応力がかかっても複屈折を生じ易い。したがって、射出成形されるポリカーボネートでは、射出充填や冷却過程における流動残留応力ないし熱応力に伴って、複屈折が形成されてしまうのは不可避とも言える。
しかしながら、偏光レンズに生じる虹模様等の色ムラや歪みは、視力や視界に悪影響を及ぼし得るものであり、好ましいものではない。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性や生産性に優れ、しかも虹模様等の色ムラや歪みが発生し難い偏光レンズおよびその製造方法を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の偏光レンズは、偏光膜の両面に一対の保護フィルムが積層された偏光シートと、該偏光シートの裏側に一体に固着されるレンズ基材層と、を備え、該レンズ基材層が熱可塑性ポリウレタンからなることを要旨とする。
請求項2に記載の偏光レンズは、請求項1に記載の構成において、該一対の保護フィルムがポリカーボネートからなり、少なくとも一方が延伸されていることを要旨とする。
請求項3に記載の偏光レンズは、請求項1または2に記載の構成において、該レンズ基材層に、視力矯正の度を入れるための研磨面が形成されたことを要旨とする。
請求項4に記載の偏光レンズの製造方法は、偏光膜の両面に一対の保護フィルムが積層された偏光シートを、所定の曲率で曲げ加工する工程と、曲げ加工された該偏光シートに対応する形状をなすキャビティが凹設された金型に、該偏光シートの表側が該キャビティに沿うようにして、該偏光シートを装着する工程と、該偏光シートが装着された金型内に熱可塑性ポリウレタンを充填し、射出成形によって該偏光シートの裏側にレンズ基材層を形成する工程と、を含み、該偏光シートと該レンズ基材層を形成する熱可塑性ポリウレタンとが、境界面で融着して一体化されるようになされたことを要旨とする。
請求項5に記載の偏光レンズの製造方法は、請求項4に記載の構成において、射出成形時の条件として、熱可塑性ポリウレタンの樹脂温度が180℃〜250℃、かつ金型温度が50℃〜100℃であることを要旨とする。
本発明の偏光レンズによれば、偏光膜の両面に一対の保護フィルムが積層された偏光シートの裏側に、熱可塑性ポリウレタンからなるレンズ基材層を一体に固着した構成としたため、耐衝撃性に優れるだけでなく、虹模様等の色ムラや歪みが発生し難い。しかも、本発明の偏光レンズの製造方法によれば、射出成形によって偏光シートの裏側にレンズ基材層を容易に一体形成できるため、生産性が非常に良い。
本発明の実施形態を、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態の偏光レンズ1を示す断面図である。
図1に示すように、偏光レンズ1は全体として、表側に凸となるように緩やかに湾曲した断面円弧状に形成されている。偏光レンズ1は、ごく薄い偏光シート2と厚みのあるレンズ基材層3とを積層一体化して構成されており、偏光シート2の裏側にレンズ基材層3が密実に固着された構造をなしている。
偏光シート2は、偏光膜10の表裏両面に一対の保護フィルム11、12が積層接着されたものである。偏光膜10は、ヒドロキシル基を有する樹脂、例えばポリビニルアルコール樹脂を一軸延伸するとともに、偏光子としてヨウ素系化合物あるいは二色性染料等を含浸させることによって形成される。偏光膜10は、ポリエステルポリオール樹脂等を原料としたものでもよい。
偏光膜10は脆く、耐湿性に劣るため、これを保護する必要がある。そのため、偏光レンズ1では、保護フィルム11、12を設けて偏光シート2を構成している。保護フィルム11、12の樹脂素材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン等を採用し得るが、耐熱性・耐水性および耐衝撃性が高く、優れた透明性を有するという観点から、ポリカーボネートが最適である。偏光シート2は、偏光レンズ1の形成過程で高温となり得るため、所定の耐熱性を備えていることが好ましい。
保護フィルム11、12は、例えば、ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート系共重合体等を用いて、キャスト法あるいは押出成形法等によって製造することができる。少なくとも一方の保護フィルム11または12は延伸処理されていることが好ましい。これにより、内部応力が緩和され、偏光レンズ1の視界を良好に保つことが可能となる。
偏光シート2は、その総厚さが300〜800μmとなるように設定する。厚さが300μmよりも小さくなると、偏光度や強度が不足するおそれがある。逆に厚さが800μmを超えると、偏光シート2の曲げ加工が行い難くなったり、レンズ基材層3の成形厚を制限するおそれがあり好ましくない。
保護フィルム11、12は、それぞれ厚さが200〜500μmの範囲にあるのがよい。厚さが200μmよりも小さくなると、偏光膜10との接着作業が困難となるおそれがある。逆に厚さが500μmを超えると、偏光シート2の重厚化に繋がるおそれがあり好ましくない。
一方、レンズ基材層3に接する保護フィルム12が薄すぎると、レンズ基材層3の成形時の熱や圧力等によって、保護フィルム12ないし偏光シート2が破断するおそれがある。よって、特に保護フィルム12の厚さは200μm以上が好ましい。
偏光膜10と保護フィルム11、12とを接着するための接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。接着剤は、透明性に優れて変色し難く、耐熱性を有するものであることが好ましい。
レンズ基材層3は、熱可塑性ポリウレタンによって構成する。熱可塑性ポリウレタンとしては、ポリエステル系ポリウレタンやポリエーテル系ポリウレタンが好適に用いられる。より具体的には、脂肪族系ウレタンが耐黄変性に優れ、加水分解しにくいため好ましい。
また、熱可塑性ポリウレタンは、ISO868によって測定されたショア硬さが50D以上であることが好ましい。ショア硬さが50D未満であると、レンズ基材層3の裏面を研削・研磨等する際に鏡面を出し難くなる。
さらに、熱可塑性ポリウレタンは、ビカット軟化点が好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。ビカット軟化点が100℃未満であると、車のダッシュボード等の高温となり得る場所に偏光レンズ1が放置された際に、変形する可能性がある。ビカット軟化点が100℃以上であれば、成形後にハードコートやアニール等の後処理を施すことも容易となる。
レンズ基材層3の厚さは2〜15mmに設定する。レンズ基材層3の厚さが2mmよりも小さくなると、強度が不足するおそれがある。逆にレンズ基材層3の厚さが15mmを超えると、重量が増加し過ぎて取り扱いが不便になり好ましくない。
偏光レンズ1は度無しレンズとして用いられる他、度の入った視力矯正用のレンズにも適用される。すなわち、偏光レンズ1のレンズ基材層3の内面側(裏面側)を、図1に点線で示した如くの研磨面15を形成するように研磨することで、視力矯正用の度入りレンズを得ることができる。偏光レンズ1では、レンズ基材層3が熱可塑性ポリウレタンから構成されており、このような加工も容易に行える。
レンズ基材層3の厚さや研磨面15の形状は、生じさせるべき度数によって調整される。このようにして得られた視力矯正用のレンズは、例えば、眼鏡のフレームに直に装着して使用できる。
なお、偏光レンズ1は、通常のサングラスの他に、前掛け式のサングラスやゴーグルなど様々な光学製品に幅広く用いられ得ることは言うまでもない。
次に、偏光レンズ1の製造方法の一例について説明する。
(a)まず、偏光膜10の両面に保護フィルム11、12を接着して偏光シート2を形成し、製造する偏光レンズ1の曲率に合わせて偏光シート2を曲げ加工しておく。この曲げ加工は、真空成形、圧空成形、プレス成形等の既知の方法によって行うことができる。
(b)曲げ加工を施した偏光シート2を、金型にセットする。金型は通常ガラス製で、曲げ加工を施した偏光シート2の形状に対応する湾曲面をなすキャビティが凹設されたものである。偏光シート2は、偏光シート2の凸側(表側)がキャビティ底面に満遍なく接触するようにして、この金型に装着される。偏光シート2を、粘着剤等で金型に仮固定して、安定させるようにしてもよい。
(c)金型内に熱可塑性ポリウレタンを充填し、射出成形によってレンズ基材層3を形成する。このとき、金型に装着されている偏光シート2の保護フィルム12とレンズ基材層3を形成する熱可塑性ポリウレタンとが、境界面で融着して均一に一体化されることとなり、偏光シート2の凹側(裏側)にレンズ基材層3を密実に固着させることができる。
熱可塑性ポリウレタンが帯熱粘着状態にある間に、偏光シート2と熱可塑性ポリウレタンとを圧着するようにしてもよい。このようにすることで、偏光シート2とレンズ基材層3との間に気泡等が入るのをより確実に防止することができる。
(d)冷却脱型すれば、偏光レンズ1が得られる。必要に応じて、バリ取り、洗浄などの仕上げ処理を行う。
レンズ基材層3を形成する熱可塑性ポリウレタンは、融着性に優れており、射出成形と同時に、偏光シート2とレンズ基材層3とを容易に一体化させることができる。よって、偏光シート2とレンズ基材層3との間に、接着剤層等を設ける必要がない。また、タクトタイムが短く(1分〜10分)、準備する金型も最小限で済むため、生産性がきわめて良好である。
なお、偏光シート2とレンズ基材層3との密着強度をより向上させるために、必要に応じて保護フィルム12にプライマー処理またはプラズマ処理を施すようにしても構わない。
上記の射出成形時の条件としては、熱可塑性ポリウレタンの樹脂温度180〜250℃、かつ金型温度50〜100℃に設定するのがよい。この範囲内であれば、従来の注型成形やポリカーボネート樹脂等の射出成形と比べて低温でありながら、光学特性の良好な偏光レンズ1を製造することができる。
[実施例1] 偏光子を含浸したポリビニルアルコールからなる厚さ50μmの偏光膜の両面に、一軸延伸されたポリカーボネートからなる厚さ300μmの保護フィルムをそれぞれ積層接着して偏光シートを形成した。この偏光シートに、アルミニウム製の曲率型(曲率:100R、外形:70φ)を用いて、真空成形による曲げ加工を施した。
次いで、上記曲げ加工を施した偏光シートをガラス製の金型内にセットし、偏光シートの裏側に、ガラス転位温度−10℃の熱可塑性ポリウレタン(ポリエーテルポリウレタン樹脂)を充填するとともに射出成形によって一体化させ、厚さ2.2mmのレンズ基材層を形成した。このとき、熱可塑性ポリウレタンの樹脂温度は200℃、金型温度は60℃であった。100秒間冷却した後に型抜きして、実施例1に係る偏光レンズを得た。
[比較例1] 実施例1と同一構成の偏光シートおよび金型を用意し、偏光シートの裏側に、分子量18000のポリカーボネートを充填するとともに射出成形によって一体化させ、同様に厚さ2.2mmのレンズ基材層を形成した。このときポリカーボネートの樹脂温度は270℃、金型温度は70℃であった。120秒間冷却した後に型抜きして、比較例1に係る偏光レンズを得た。
実施例1および比較例1によって得られた偏光レンズを、偏光性をもった偏光板の上にそれぞれ配置するとともに、偏光板裏側の光源から光を照射して、偏光レンズの見え方を比較した。
図2A、図2B、図3A、図3Bにその結果を示す。図2A、図2Bは実施例1に係る偏光レンズのもので、図2Aは偏光レンズと偏光板の偏光軸が互いに平行になるように配置した場合、図2Bは偏光レンズと偏光板の偏光軸が互いに直角になるように配置した場合である。図3A、図3Bは比較例1に係る偏光レンズのもので、図3Aは偏光レンズと偏光板の偏光軸が互いに平行になるように配置した場合、図3Bは偏光レンズと偏光板の偏光軸が互いに直角になるように配置した場合である。
この結果から明らかなように、比較例1に係る偏光レンズでは、虹模様等の色ムラや歪みが発生しているのに対し、実施例1に係る偏光レンズでは、虹模様等の色ムラや歪みは全く見られなかった。
次に、実施例1および比較例1によって得られた偏光レンズに、先端が尖鋭状のタガネ(重量1kg)を、所定の力にて偏光レンズの表側からそれぞれ垂直に押し当てて、耐衝撃性をテストした。
図4、図5にその結果を示す。図4は実施例1に係る偏光レンズのもので、図5は比較例1に係る偏光レンズのものである。
これに示すとおり、実施例1および比較例1に係る偏光レンズでは、いずれもタガネが突き刺さって貫通し、割れを生じなかったが、実施例1に係る偏光レンズの方が、比較例1に係る偏光レンズよりも貫通穴が小さく、より高い耐衝撃性を備えていることが確認できた。
本発明は、耐衝撃性や生産性に優れ、しかも虹模様等の色ムラや歪みが発生し難い偏光レンズおよびその製造方法を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
実施形態の偏光レンズを示す断面図である。 実施例1に係る偏光レンズを示す図である。 実施例1に係る偏光レンズを示す図である。 比較例1に係る偏光レンズを示す図である。 比較例1に係る偏光レンズを示す図である。 実施例1に係る偏光レンズを示す図である。 比較例1に係る偏光レンズを示す図である。
符号の説明
1 偏光レンズ
2 偏光シート
3 レンズ基材層
10 偏光膜
11、12 保護フィルム
15 研磨面

Claims (5)

  1. 偏光膜の両面に一対の保護フィルムが積層された偏光シートと、
    該偏光シートの裏側に一体に固着されるレンズ基材層と、を備え、
    該レンズ基材層が熱可塑性ポリウレタンからなる偏光レンズ。
  2. 該一対の保護フィルムがポリカーボネートからなり、少なくとも一方が延伸されている請求項1に記載の偏光レンズ。
  3. 該レンズ基材層に、視力矯正の度を入れるための研磨面が形成された請求項1または2に記載の偏光レンズ。
  4. 偏光膜の両面に一対の保護フィルムが積層された偏光シートを、所定の曲率で曲げ加工する工程と、
    曲げ加工された該偏光シートに対応する形状をなすキャビティが凹設された金型に、該偏光シートの表側が該キャビティに沿うようにして、該偏光シートを装着する工程と、
    該偏光シートが装着された金型内に熱可塑性ポリウレタンを充填し、射出成形によって該偏光シートの裏側にレンズ基材層を形成する工程と、を含み、
    該偏光シートと該レンズ基材層を形成する熱可塑性ポリウレタンとが、境界面で融着して一体化されるようになされた偏光レンズの製造方法。
  5. 射出成形時の条件として、熱可塑性ポリウレタンの樹脂温度が180℃〜250℃、かつ金型温度が50℃〜100℃である請求項4に記載の偏光レンズの製造方法。
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