以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る物体検出装置1が、車両100のバックドア50を開閉する開閉制御システムに備えられている場合の例として説明する。物体検出装置1は、バックドア50を開扉する際、バックドア50が車両100に近接する障害物に接触しないように、当該物体検出装置1としての超音波センサから送信された超音波に対する反射波に基づいて所定の検出範囲8内に存在する物体を検出する機能を備えている。
図1は、車両の開閉制御システムにおける超音波センサ(物体検出装置)1の検出範囲8を示す車両100の上面図であり、図2は、図1の検出範囲8を示す車両100の側面図である。なお、このバックドア50は上下開閉式の揺動ドアである。
超音波センサ1からは、超音波が送信され、この超音波が物体に当たって反射波が生じ、この反射波を当該超音波センサ1が受信する。超音波センサ1は、この送信から受信までの時間により、検出範囲8内に物体が存在するか否かを判定する。後述する制御部(ドアECU(electric control unit)3)は、その判定結果に基づいて、物体の存在をブザーや警告表示などにより報知したり、駆動部(ドアアクチュエータ)4を制御したりする。例えば、検出範囲8内に物体があると判定された場合には、バックドア50の開閉操作を停止させるなどの制御を行う。その結果、バックドア50と物体との接触を回避することが可能になる。
図1に示すように、ヒンジ13を揺動軸として揺動する車両のバックドア50の中央部、一般に車両のエンブレム15が設置される近傍に、超音波センサ1のセンサヘッド20が配置される。このセンサヘッド20の送信方向の中心軸Cは、図2に示すように、バックドア50の表面12Aに略沿って、下方に傾斜している。中心軸Cがバックドア50の表面12Aに「略沿う」とは、具体的にはこの中心軸Cがバックドア50の表面12Aと成す角度が45°以内に収まることをいう。超音波センサ1の前方には検出範囲8が、超音波センサ1を含む平面上においては四角形状、そして空間的には切頭円錐状に拡がっている。超音波センサ1は、その原理上、送信波の残響が受信波となり、物体を検知することができない不検出範囲9をセンサヘッド20の近傍に有している。
なお、仰角αを60°以下かつ0°以上に設定すれば、低出力の超音波センサでも適用が可能となる。さらに、仰角αを45°以下かつ0°以上とすればさらに検知感度が向上する。もちろん、仰角αは90°前後であってもよく、この場合には、バックドア50の表面12Aの全体を検知対象とすることができる。また、本実施形態では、センサヘッド20がエンブレム15の近傍に設置される場合を例示したが、ライセンスプレート(図示せず)の近傍、例えばライセンスプレートを照明するライセンスプレートランプの近傍に設置されてもよい。
超音波センサ1のセンサヘッド20は車両100のバックドア50に配置されているため、このバックドア50の開閉の際に超音波センサ1はバックドア50と共に動くことになる。その結果、図3に示すように、超音波センサ1の送信方向の中心軸Cは、常に車両100のバックドア50の表面に略沿った状態となり、バックドア50の開扉と共に検出範囲8も動くことになる。したがって、バックドア50の開扉方向に物体が存在する場合、これを容易に検知することができる。
さらに、図1〜図3に示すように、超音波センサ1の検出範囲8にはバックドア50の開閉側の端部(表面12Aの先端部)12aが含まれている。バックドア50の開閉側の端部12aは、バックドア50の開扉時に最も動き出しの早い箇所、すなわち最も物体に接触し易い箇所である。従って、この端部12aを超音波センサ1の検出範囲8に含むことにより、バックドア50の開扉時における物体検知をより確実なものとすることができる。
図4は、本発明に係る超音波センサ1の概略構成を模式的に示したブロック図である。図4に示されるように、この開閉制御システムは、超音波センサ1と、バックドア50を開閉駆動するドアアクチュエータ4と、超音波センサ1の検知結果に基づいてドアアクチュエータ4を駆動させ、さらにガススプリング16のアシストを受けてバックドア50を開閉制御する制御部としてのドアECU3とを備えて構成される。
超音波センサ1は、送信部21と受信部22とを有したセンサヘッド20と、包絡線検波部23と、A/D変換部24と、距離電圧生成部25と、角度電圧生成部26と、Maxホールド部27と、物体存在判定部28と、を有して構成される。ここで、超音波センサ1は、CPUを中核部材として物体の検出に関する種々の制御を行うための上述の機能部をハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。以下、本超音波センサ1の各部の構成について説明する。
送信部21は、送信信号として超音波を送信する。送信部21は、送信機として機能し、送信信号は所定のタイミング毎に出力される。所定のタイミングとは、少なくとも超音波センサ1の検出範囲8を、超音波が往復することが可能な時間以上毎であると好適である。送信部21は、超音波の送信毎に、後述の包絡線検波部23aに対して、送信信号を伝達する。
受信部22は、夫々異なる位置に配置され、到達した超音波を夫々の受信信号として受信する。ここで、図5に示されるように、超音波センサ1は、1つの送信部21と、複数の受信部22a〜22cとからなる振動部を有するセンサヘッド20から構成される。特に、これらの受信部は、水平方向及び鉛直方向に位置をずらして並設された少なくとも3つの受信部22a〜22cを有してなる。本実施例においては、後述する基準受信信号に係る超音波を受信する第1受信部22aと、第1受信部22aと水平方向に並んで配設される第2受信部22bと、第1受信部22aと鉛直方向に並んで配設される第3受信部22cと、から構成される。超音波センサ1は、これら3つの受信部22a〜22cを備えることにより、3次元的に物体が検出範囲8内に存在するか否かを判定することが可能となる。
4つの振動部は、正方形の各頂点部に1つの振動部が対応する形態で配置される。この正方形の一辺の長さd、即ち隣接する振動部の間隔dが小さいほど、物体を検出する際の分解能が高くなる。但し、間隔dが狭いと、他の振動部の振動の影響を受け易くなるため、間隔dは適切に設定される。また、送信波の1/2波長は、振動部の間隔dよりも充分小さい値に設定される。一例として、間隔dは10〜12mm程度とすることができる。送信波の周波数が40kHzの場合、その波長は8.5mmとなり、1/2波長は4.25mmであるから、振動部の間隔dよりも充分小さい値となり、分解能が確保される。図5においてx軸は車幅方向、z軸は超音波センサ2の送信方向の中心軸Cに沿う方向、y軸はx軸及びz軸に直交する方向の軸である。z軸は、4つの振動部が配置される正方形の重心20cを貫く軸である。
超音波センサ1は、図5に示されるように、夫々の受信部22a〜22cの位置は異なるように配置されるため、1つの物体からの距離も異なっており、3つの受信部22a〜22cは、当該物体からの反射波を異なった時刻に受信する。したがって、この異なる時刻を用いて、送信部21の正面方向と物体との水平方向のずれ、及び送信部21の正面方向と物体との鉛直方向のずれを特定することが可能である。
このように、受信部22は、第1受信部22a、第2受信部22b及び第3受信部22cからなり、夫々異なる位置に配置される。そして、到達した超音波を夫々の受信信号として受信する。到達した超音波とは、送信部21により送信された超音波に対する物体からの反射波を含む。受信部22は、このような到達した超音波を、夫々の受信部22a〜22cの受信信号として受信する。各受信部22a〜22cは、超音波の受信毎に、後述の包絡線検波部23a〜23cに対して、受信した超音波を伝達する。
包絡線検波部23は、複数の包絡線検波部23a〜23cから構成される。包絡線検波部23aは、送信部21から伝達された送信信号及び第1受信部22aから伝達された受信信号を検出し、包絡線を取得する。また、包絡線検波部23bは、第2受信部22bから伝達された受信信号を検出し、包絡線を取得する。更に、包絡線検波部23cは、第3受信部22cから伝達された受信信号を検出し、包絡線を取得する。なお、包絡線検波部23a〜23cは、ダイオード、抵抗、及びコンデンサの簡素な電子素子から形成可能であり、抵抗及びコンデンサの時定数に応じて(即ち、部品定数の決定により)適切に包絡線を取得することが可能である。包絡線検波部23a〜23cにより取得された包絡線は、夫々、後述のA/D変換部24に伝達される。
A/D変換部24は、複数のA/D変換部24a〜24cから構成される。A/D変換部24aは、包絡線検波部23aから伝達された包絡線を、Hi若しくはLowに2値化されたデジタル信号(以下、2値化信号とする)に変換する。このデジタル変換は、例えばA/D変換部24をコンパレータで形成し、非反転端子に包絡線を入力し、反転端子にデジタル変換する際の変換閾値電圧を入力すると好適である。このようにA/D変換部24を構成することにより、包絡線をデジタル変換することが可能となる。また、A/D変換部24bは、包絡線検波部23bから伝達された包絡線を2値化された2値化信号に変換する。更に、A/D変換部24cは、包絡線検波部23cから伝達された包絡線をデジタル変換する。A/D変換部24aにより得られた2値化信号は、後述の距離電圧生成部25に伝達される。また、A/D変換部24b及び24cにより得られた2値化信号は、後述の角度電圧生成部26に伝達される。
距離電圧生成部25は、1つの受信部22aにより受信された受信信号を基準受信信号とし、送信部21から超音波が送信されてから基準受信信号が受信されるまでの間の時間に応じた電圧を距離電圧として生成する。ここで、1つの受信部とは、本実施形態では、第1受信部22aが該当する。第1受信部22aにより受信された受信信号は、本超音波センサ1における種々の処理において、基準受信信号として扱われる。ここで、上述のように、送信部21は、超音波の送信毎に、包絡線検波部23aに対して、送信信号を伝達している。また、第1受信部22aは、超音波の受信毎に、包絡線検波部23aに対して、受信信号を伝達している。そして、これらの送信信号及び受信信号は、A/D変換部24aにより2値化信号に変換されている。距離電圧生成部25は、このような2値化信号に基づいて、送信部21から超音波が送信されてから、第1受信部22aにより基準受信信号が受信されるまでの間の時間を反射時間として取得する。
そして、距離電圧生成部25は、当該反射時間に応じた電圧を距離電圧として生成する。反射時間に応じた電圧とは、A/D変換部24aにより変換された2値化信号である。距離電圧生成部25は、この2値化信号から、距離電圧を生成する(後述する)。
ここで、上述のように、反射時間は、送信部21から超音波が送信されてから、基準受信信号が受信されるまでの間の時間である。送信部21から物体に超音波が到達するまでの超音波の速度と、超音波が当該物体に反射してから第1受信部22aが受信するまでの超音波の速度とは、略等しいため、反射時間の半分の時間と超音波の速度(340m/秒)との積が送信部21から物体までの距離に相当する。距離電圧生成部25は、上述の2値化信号におけるHi状態の半分の期間を送信部21から物体までの距離に相当する量(反射時間)として扱う。距離電圧生成部25は、このような反射時間に基づき、送信部から超音波が送信されてから基準受信信号が受信されるまでの間の時間に応じた電圧を距離電圧として生成する。
距離電圧の演算においては、詳細は後述するが、RC直列回路が利用される。距離電圧生成部25は、上述の2値化信号におけるHi状態の半分の期間だけコンデンサCを所定の電流で充電し、Hi期間の終了時点におけるコンデンサCの端子間電圧を、距離電圧として取得する。このようにして取得された距離電圧は、後述のMaxホールド部27に伝達される。なお、上述のようにRC直列回路を用いて距離電圧を生成する構成であれば、距離電圧生成部25は、コンパレータ、抵抗、コンデンサ、及びトランジスタの簡素な素子から構成可能である。
角度電圧生成部26は、基準受信信号が受信された時点と1つの受信部(第1受信部22a)以外の受信部22b及び22cにより受信信号が受信された時点との時間差に応じた電圧を角度電圧として生成する。ここで、角度電圧生成部26は、角度電圧生成部26a及び26bからなる。第1受信部22a、第2受信部22b及び第3受信部22cからは、超音波の受信毎に、夫々包絡線検波部23a〜23cに対して、受信信号が伝達される。そして、包絡線検波部23a〜23cは、伝達された受信信号から包絡線を取得し、取得された包絡線をA/D変換部24a〜24cに伝達する。A/D変換部24a〜24cは、伝達された包絡線を2値化信号に変換する。このため、基準受信信号が受信された時点は、A/D変換部24aから伝達される2値化信号に基づき特定可能である。
ここで、本物体検出装置1は、3つの受信部22a〜22cのうち、2つの受信部で構成される一対の受信部対を一方の受信部が異なる組み合わせで2組構成し、角度電圧生成部26が、2組の受信部対において受信信号が受信された時点の夫々の時間差に応じた電圧を夫々の角度電圧として生成する。3つの受信部22a〜22cのうち、2つの受信部で構成される一対の受信部対を一方の受信部が異なる組み合わせで2組構成するとは、本実施形態の場合、第1受信部22aと第2受信部22bとで構成される一対の受信部対と、第1受信部22aと第3受信部22cとで構成される一対の受信部対と、が相当する。
角度電圧生成部26aは、A/D変換部24aから伝達される2値化信号と、A/D変換部24bから伝達される2値化信号とに基づき、基準受信信号が受信された時点と、第2受信部22bにより受信信号が受信された時点との第1時間差を演算する。そして、この第1時間差に基づき後述する角度電圧を生成する。また、同様に、角度電圧生成部26bは、A/D変換部24aから伝達される2値化信号と、A/D変換部24cから伝達される2値化信号とに基づき、基準受信信号が受信された時点と、第3受信部22cにより受信信号が受信された時点との第2時間差を演算する。そして、この第2時間差に基づき後述する角度電圧を生成する。このように生成された夫々の角度電圧は、後述の物体存在判定部28に伝達される。なお、これらの第1時間差及び第2時間差は、詳細は後述するが2値化されたデジタル信号(2値化信号)で示される。
ここで、第1時間差に関して説明する。送信部21から物体に超音波が到達するまでの超音波の速度と、超音波が当該物体に反射してから夫々の受信部22a〜22cが受信するまでの超音波の速度とは略等しいため、第1時間差があるということは第1受信部22aから物体までの距離と、第2受信部22bから物体までの距離とが等距離でないことを示している。すなわち、物体は、送信部21の正面方向に存在しておらず、正面方向から水平方向に所定の角度を有して存在していることを示している。この第1時間差は、送信部21と物体との水平方向の角度に相当した量となる。このため、超音波センサ1は、角度電圧生成部26aにより生成された角度電圧を送信部21と物体との水平方向の角度を示す角度電圧(水平方向角度電圧)として扱う。
同様に、第2時間差は、第1受信部22aから物体までの距離と、第3受信部22cから物体までの距離とが等距離でないことを示している。すなわち、物体は、送信部21の正面方向に存在しておらず、正面方向から鉛直方向に所定の角度を有して存在していることを示している。この第2時間差は、送信部21と物体との鉛直方向の角度に相当した量となる。このため、超音波センサ1は、角度電圧生成部26bにより生成された角度電圧を送信部21と物体との鉛直方向の角度を示す角度電圧(鉛直方向角度電圧)として扱う。
角度電圧生成部26は、距離電圧生成部25と同様に、RC直列回路を利用して角度電圧を生成する。第1時間差及び第2時間差に係る2値化信号が示すHi状態の期間だけコンデンサCを所定の電流で充電し、Hi期間の終了時点におけるコンデンサCの端子間電圧を、角度電圧として生成する。このようにして生成された角度電圧は、後述の物体存在判定部28に伝達される。なお、角度電圧生成部26も、上述の距離電圧生成部25と同様に、コンパレータ、抵抗、コンデンサ、及びトランジスタの簡素な素子から構成可能である。
Maxホールド部27は、所謂Maxホールド回路から構成され、当該Maxホールド部27に入力される信号のMax値を取得する。Maxホールド回路は、コンデンサ、ダイオード、オペアンプ等から構成すると好適であるが、公知技術であるため説明は省略する。ここで、Max値とは、信号の波高が最高となる時の波高値である。したがって、本実施形態の場合、Maxホールド部27は、距離電圧生成部25から伝達される距離電圧のMax値を取得する。当該Max値は、後述の物体存在判定部28に伝達される。
物体存在判定部28は、距離電圧と角度電圧とに基づいて検出範囲8内に物体が存在するか否かを判定する。ここで、物体存在判定部28は、物体存在判定部28a及び28bからなる。物体存在判定部28aは、Maxホールド部27から距離電圧を取得し、角度電圧生成部26aから角度電圧を取得する。そして、この判定は、例えば物体存在判定部28をコンパレータで形成し、非反転端子に角度電圧を入力し、反転端子に距離電圧を入力すると好適である。
ここで、物体存在判定部28は、角度電圧生成部26により生成された角度電圧が、距離電圧によって定まる角度電圧の判定閾値以上である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定する。即ち、物体存在判定部28による物体が検出範囲8内に存在するか否かを判定する判定閾値は、距離電圧によって定められ、上述の距離電圧生成部25により距離電圧が生成される際に利用されるRC直列回路に用いられる抵抗R及びコンデンサCなどの受動部品の部品定数により決定される。したがって、物体存在判定部28は、角度電圧と距離電圧とを単に比較するだけで、物体が検出範囲8内に存在するか否かを判定することができる。即ち、物体存在判定部28は、角度電圧が距離電圧以上であれば、物体が検出範囲8内に存在すると判定し、角度電圧が距離電圧よりも小さい場合には、物体が検出範囲8内に存在しないと判定することが可能となる。
夫々の物体存在判定部28a及び28bの出力は、ドアECU3に対して出力される。ドアECU3は、バックドア50の近傍に物体があると検出された場合には、例えばドアアクチュエータ4の作動を停止させる。これにより、バックドア50が物体に接触する前に開扉を停止させることができる。
次に、超音波センサ1の動作に関して、信号波形を用いて説明する。図6は、超音波センサ2による物体検知の基本的な動作を示すタイミングチャートである。
物体検出装置1が備える発振部(図示せず)は、図6(a)に示すように、タイミング信号として、時刻a0において送信部21に対してタイミングパルスTPを出力する。タイミングパルスTPは、所定の送信タイミングとしての設定間隔(例えば10ミリ秒〜100ミリ秒)で繰り返し出力される。また、物体検出装置1は、図6(b)に示すように、タイミングパルスTPに同期してリセットされるカウンタ(図示せず)を有している。カウンタは、タイミングパルスTP間において、カウント数0〜(N−1)までのN回カウントされる。カウンタの値は、1回の送信タイミングにおける絶対時刻を示すものとなる。1カウントの周期は、超音波の波長や受信部21の設置間隔等によって定まる超音波センサ1の分解能に応じて設定される。
本実施形態においては、説明を容易にするために、所定の送信タイミングとしてのタイミングパルスTPの設定間隔は、100ミリ秒とする。また、カウンタの1カウントは、250ナノ秒とする。したがって、設定間隔において、N=40万となる。
送信部21は、タイミングパルスTPを入力されると、バースト波発生回路が設定個数(例えば10個)のパルス信号であるバースト波を発生し、バースト波に基づいて発振回路が所定周波数の発振信号を発生させる(図6(c))。本実施形態においてこの所定周波数は40kHzである。この40kHzの発振信号は、例えばコイル等を用いて構成された昇圧回路に入力され、当該昇圧回路で昇圧された後、送信部21へ出力される。送信部21は、共振器として機能するカバー部材等を備えた圧電素子等により構成され、昇圧された40kHzの発振信号により発振して送信波W1としての超音波を出力する(図6(d))。図6(d)において、発振信号よりも多くのバースト波が出力されているのは、送信部21の残響によるものである。
受信部22は、送信部21と同一構成であり、共振器として機能するカバー部材等を備えた圧電素子等により構成される。振動するカバー部材から応力が圧電素子に印加され、圧電素子による圧電効果に電気信号を出力する。
受信部22と送信部21とは、センサヘッド20として近接して配置されている。したがって、送信部21の近傍に存在する受信部22は、図6(e)〜(g)に示されるように、送信部21が送信する超音波を直接受信する。ここで、本超音波センサ1は、複数の受信部22a〜22cを備えている。図6(e)は第1受信部22aが受信した第1受信波を示し、図6(f)は第2受信部22bが受信した第2受信波を示し、図6(g)は第3受信部22cが受信した第3受信波を示している。センサヘッド20から比較的近い距離には、バックドア50の開閉側の端部12aと対向し、この端部12aよりも車両100から突出して設けられる突出部としてのバンパー14が存在する(図2参照)。このため、送信波はバンパー14により反射し、その反射波が受信部22に入力される。
図6(e)〜(g)に示す例では、送信部21の残響が残る期間中にバンパー14からの反射波が受信部22に到達する場合を模擬しており、図6(d)に示す送信波よりも図6(e)〜(g)に示す受信波W2の継続時間の方が長くなっている。尚、図6(e)〜(g)に示す受信波W3は、バンパー14以外の別の物体からの反射波を模擬したものである。物体からの反射波としての受信波W3と区別するため、送信波W1及びバンパー14からの反射波が含まれる受信波W2を適宜「初期受信波」と称する。
超音波センサ1が有する各機能部では、送信波W1及びバンパー14からの反射波が含まれる初期受信波W2を物体からの反射波として検波したり、位置検出したりする必要はない。従って、図6に示すように、検知範囲を定めると好適である。本実施形態では、時刻a1〜時刻a2に対応するカウンタのカウンタ値CstからCenまでの期間を検知範囲としている。別途、発振部から受信部22へマスク信号を出力して、受信信号をマスクしたり、別途設けられるサンプルホールド回路において信号を固定したりしても良い。
図6(e)において、受信波W3は物体からの反射波である。上述したように、距離電圧生成部25は、送信部21から超音波が送信されてから第1受信部22aにより基準受信信号が受信されるまでの間の時間に応じた電圧を距離電圧として生成する。この超音波の送信から基準受信信号が受信までの時間は、包絡線検波部23aが包絡線を取得し、当該包絡線に基づきA/D変換部24aにより得られる。包絡線検波部22aは、例えば、図7(a)に示される送信部21から伝達される送信信号に係る送信波W1と、図7(b)に示される第1受信部22aにより受信された受信信号に含まれる受信波W3とを抽出して、図7(c)に示されるように同じ時間軸上に合成波W4を取得する。この際、図7(b)に示される受信波W2は、上述のマスク処理により合成には用いられない。
次に、包絡線検波部23aは、図7(d)に示されるように、合成波W4から包絡線W5を取得する。この包絡線W5はA/D変換部24aに伝達される。そして、A/D変換部24aは、包絡線W5と予め設定される所定の閾値とに基づいて、包絡線W5を2値化信号に変換する。この2値化信号への変換は、包絡線W5が予め設定される所定の閾値を越えた場合にHi信号とし、包絡線W5が予め設定される所定の閾値以下の場合にLow信号となるように行われる。本実施形態では、所定の閾値は、合成波W4の振幅中心として説明するが、当該所定の閾値は、振幅中心に限定されるものではない。また、Hi信号及びLow信号の論理を反転してデジタル変換することも可能である。このようにして変換された2値化信号を図7(e)に示す。この2値化信号は、距離電圧生成部25に伝達される。そして、距離電圧生成部25は、この2値化信号に基づいて、反射時間を演算する。
そして、距離電圧生成部25は、図7(e)の包絡線の2値化信号を用いて、反射時間に係る2値化信号を生成する。この生成は、図7(e)に示される包絡線の2値化信号の立ち上がりを検出し、1つ目の立ち上がりでHi状態とし、2つめの立ち上がりでLow状態とするようにして行われる。このように演算された、反射時間に係る2値化信号を図7(f)に示す。このようにして演算された反射時間を符号trで示す。
距離電圧生成部25は、反射時間に係る2値化信号を用いて、送信部21から物体までの距離に応じた距離電圧を生成する。距離電圧の生成においては、図8(a)で示されるようなRC直列回路が利用される。RC直列回路は、所定の抵抗値を有する抵抗Rと十分に放電されているコンデンサCとスイッチSWとが直列に接続され、スイッチSWの一端に電源Vが接続される。そして、コンデンサCの端子のうち、抵抗Rと接続されない側の端子は接地される。このように接続されたRC直列回路において、t=0でスイッチSWをONにすると、抵抗Rが有する抵抗値に応じて電源Vから電流が流れ、コンデンサCの充電を開始する。このように充電が開始されると、コンデンサCの端子間電圧は、図8(b)で示されるように時間の経過と共に上昇する。例えば、コンデンサCの充電を早くしたい場合には抵抗Rの抵抗値を小さくするかコンデンサCの容量を大きくすると良く、コンデンサCの充電を遅くしたい場合には抵抗Rの抵抗値を大きくするかコンデンサCの容量を小さくすると良い。
距離電圧生成部25は、反射時間trに係る2値化信号におけるHi状態の半分の期間を送信部21から物体までの距離として扱う。したがって、この距離も、2値化信号により示される。距離電圧生成部25は、このような距離の2値化信号と上述のRC直列回路の充電特性を用い、距離の2値化信号が示すHi状態の期間だけコンデンサCを所定の電流で充電し、Hi期間の終了時点におけるコンデンサCの端子間電圧を、距離電圧として生成する。
図9は、距離の2値化信号のHi状態の半分の期間(1/2×tr)だけコンデンサCを充電した場合の例を示している。図9に示されるように、Hi期間(1/2×tr)の時間に応じて、コンデンサCは充電され、コンデンサCの端子間電圧はV0まで上昇している。距離電圧生成部25は、このようにして送信部21から物体までの距離に応じた距離電圧を生成する。
ここで、距離電圧生成部25により得られた距離電圧は、角度電圧の判定閾値となる。したがって、角度電圧生成部26により生成された角度電圧が、距離電圧によって定まる角度電圧の判定閾値以上である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定することが可能となる。この判定閾値は、受動部品の部品定数により決定することが可能である。
角度電圧生成部26は、上述のように、第1時間差を取得する。図10(a)は第1受信波における受信波W3を示し、図10(b)は、第2受信波における受信波W3を示したものである。角度電圧生成部26aは、夫々の受信波W3が受信された時点の時間差を取得する。この時間差は、包絡線取得部23b及び23cにより取得された包絡線を用いて、A/D変換部24bによりデジタル変換される。このように得られた第1時間差を符号td1で示す。
角度電圧生成部26aは、距離電圧生成部25と同様に、第1時間差td1に基づいて2値化信号を生成し(図10(c)参照)、当該2値化信号と、RC直列回路とを用いて角度電圧を生成する。ここで、角度電圧は、基準受信信号と第2受信部22bが受信した受信信号とにより得られた、送信部21の正面方向と物体が存在する方向との間の水平方向の角度に応じた水平方向角度電圧であると好適である。この場合、第1時間差td1は、第1受信部22aにより受信された受信信号と第2受信部22bにより受信された受信信号とに係る時間差であるため、この時間差は送信部21の正面方向と物体が存在する位置の水平方向の角度に相当する。
同様に、角度電圧生成部26は、図11(a)に示される第1受信波における受信波W3と、図11(b)は、第3受信波における受信波W3とに基づいて、第2時間差td2を演算する。そして、角度電圧生成部26bは、図11(c)に示されるような第2時間差td2の2値化信号とRC直列回路とを用いて角度電圧を生成する。この場合、基準受信信号と第3受信部22cが受信した受信信号とにより演算された、送信部21の正面方向と物体が存在する方向との間の鉛直方向の角度に応じた鉛直方向角度電圧であると好適である。したがって、第2時間差td2は、第21受信部22aにより受信された受信信号と第3受信部22cにより受信された受信信号とに係る時間差であるため、この時間差は送信部21の正面方向と物体が存在する位置の鉛直方向の角度に相当する。
角度電圧生成部26a及び26bは、第1時間差td1に係る2値化信号及び第2時間差td2に係る2値化信号と上述のRC直列回路の充電特性を用いて、水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧を生成する。図12は、第1時間差td1に係る2値化信号及び第2時間差td2に係る2値化信号のHi状態の期間(td1及びtd2)だけコンデンサCを充電した場合の充電特性を示している。図12に示されるように、Hi状態の期間(td1及びtd2)に応じて、コンデンサCは充電され、コンデンサCの端子間電圧は夫々V1及びV2まで上昇している。角度電圧生成部26a及び26bは、このようにして送信部21の正面方向から物体が存在する方向との角度に応じた水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧を生成する。
物体存在判定部28は、角度電圧生成部26により生成された角度電圧が、距離電圧によって定まる角度電圧の判定閾値以上である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定する。ここで、距離電圧から角度電圧の判定閾値が決定されているため、物体存在判定部28は角度電圧と距離電圧とを比較することにより、検出範囲8内に物体が存在するか否かを容易に判定することが可能となる。
次に、本超音波センサ1が行う物体検出判定に関して図13に示すフローチャートを用いて説明する。超音波センサ1が有する送信部21から所定時間毎に超音波が送信される(ステップ#01)。送信部21から送信された超音波に対する反射波に基づく超音波を受信部22が受信する(ステップ#02)。
包絡線検波部23aが、送信部21から送信された送信信号と第1受信部22aにより受信された基準受信信号とから合成信号を生成し、包絡線を取得する(ステップ#03)。そして、A/D変換部24aは、取得された包絡線をデジタル変換する(ステップ#04)。
距離電圧生成部25は、A/D変換部24aによりデジタル変換された信号に基づき、例えばRC直列回路の充電特性を用いて、距離電圧を生成する(ステップ#05)。この距離電圧は、後述の角度電圧生成部26により生成される角度電圧の判定閾値となる。
一方、角度電圧生成部26は、第1受信部22aにより受信される基準受信信号と第2受信部22bにより受信された受信信号との第1時間差、及び前記基準受信信号と第3受信部22cにより受信された受信信号との第2時間差を取得する(ステップ#06)。そして、角度電圧生成部26は、第1時間差及び第2時間差に基づき、水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧を生成する(ステップ#07)。これらの水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧は、例えばRC直列回路の充電特性を用いて生成される。
物体存在判定部28は、水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧が、距離電圧以下であるか否かを判定する。水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧が、距離電圧以下である場合には(ステップ#08:Yes)、物体存在判定部28は、物体が検出範囲8内に存在すると判定し(ステップ#09)、処理を終了する。
一方、水平方向角度電圧及び鉛直方向角度電圧のいずれか一方が、距離電圧よりも大きい場合には(ステップ#08:No)、物体は検出範囲8内に存在しないと判定し(ステップ#10)、ステップ#01から処理を継続する。このようにして、本超音波センサ1は、検出範囲8内に物体が存在するか否かを適切に判定することが可能となる。また、これらの物体存在判定に係る各種処理は、複雑な演算を行う必要がなく、単純な回路で実現することができるため、マイコン等を用いることなく低コストで実現することが可能である。
〔その他の実施形態〕
上記実施形態において、包絡線検波部23aは、送信信号及び基準受信信号の包絡線を取得し、A/D変換部24aは送信信号の包絡線と基準受信信号の包絡線とに基づいて反射時間を演算するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、送信信号と基準受信信号との立ち上がりを検出することにより包絡線を取得することなく、反射時間を演算することは当然に可能である。
上記実施形態では、物体存在判定部28は、角度電圧生成部により生成された角度電圧が、距離電圧によって定まる角度電圧の判定閾値以上である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。物体存在判定部28は、距離電圧生成部により生成された距離電圧が角度電圧によって定まる距離電圧の判定閾値以下である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定するような構成とすることも可能である。即ち、距離電圧の判定閾値が、角度電圧によって定まるような構成とすることも当然に可能である。このような構成であっても、距離電圧と角度電圧とを単純比較することで、物体が検出範囲8内に存在するか否かを判定することが可能である。
また、上記実施形態では、物体存在判定部28は、角度電圧生成部26により生成された角度電圧が、距離電圧によって定まる角度電圧の判定閾値以上である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定するとして説明した。例えば、物体存在判定部28は、距離電圧が検出範囲8に応じた検出範囲電圧より大きい場合に、物体が検出範囲8内に存在しないと判定するような構成とすることも可能である。このような構成であれば、距離電圧に基づき物体が検出範囲8内に存在しないかを判定することが可能となる。
上記実施形態では、受信部22が、基準受信信号に係る超音波を受信する第1受信部22aと、第1受信部22aと水平方向に並んで配設される第2受信部22bと、第1受信部22aと鉛直方向に並んで配設される第3受信部22cと、から構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、水平方向及び鉛直方向に並設された少なくとも3つの受信部22a〜22cを有し、当該3つの受信部22a〜22cのうち、2つの受信部で構成される一対の受信部対を一方の受信部が異なる組み合わせで2組構成し、角度電圧生成部26a及び26bが、2組の受信部対において受信信号が受信された時点の夫々の時間差に応じた電圧を夫々の角度電圧として生成するとしても良い。即ち、第1受信部22a、第2受信部22b、及び第3受信部22cが、直線状に配置されていなくても良い。このような場合には、当該直線状に配置されていない受信部と、他の受信部とを組み合わせて、2組の受信部対を構成し、夫々を受信部対における受信信号が受信された時点の時間差に基づいて角度電圧を生成することも可能である。
上記実施形態では、距離電圧生成部25及び角度電圧生成部26が、RC直列回路の充電特性を用いて、距離電圧及び角度電圧を生成するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。即ち図14の実線(a)で示される飽和特性に限らない。一点鎖線(b)で示されるような線形特性であっても良いし、点線(c)で示されるような指数関数の特性であっても良い。これらの特性は、検出範囲8及び超音波センサ1の特性に応じて適切に選択することが可能である。
また、上述のような各種特性は、t=0(秒)において、電圧が0(V)となるように図示した(図8、図9、図12及び図14参照)。しかしながら、本発明の適用は、これに限定されるものではない。例えば、図15に示されるようにt=0(秒)での電圧が、所定の電圧(例えば、Va(V))となるように設定することも当然に可能である。
上記実施形態では、角度電圧生成部26により生成された角度電圧が距離電圧によって定まる角度電圧の判定閾値以上である場合に、物体が検出範囲8内に存在すると判定し、当該判定閾値が、受動部品の部品定数により決定されるとして説明した。係る場合、特に検出範囲8の境界上に物体が存在する場合には、距離電圧と角度電圧とが等しくなるよう、距離電圧生成部25が距離電圧を生成し、角度電圧生成部26が角度電圧を生成する。受動部品の部品定数は、このように設定すると、物体存在判定部28は、単に距離電圧と角度電圧とを比較するだけで、物体が検出範囲8内にあるか否かを容易に判定することが可能となる。
上記実施形態では、超音波センサ1の検出範囲8が、超音波センサ1を含む平面上においては四角形状に拡がっているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。検出範囲8を四角形状に代えて、扇形形状とすることも可能であるし、他の形状とすることも可能である。また、超音波センサ1は、物体を検知することができない不検出範囲9を有しているとして説明した。しかしながら、不検出範囲9を有さない超音波センサ1を用いることも可能である。
上記実施形態では、超音波センサ1が、第1受信部22a、第2受信部22b、及び第3受信部22cの3つの受信部22を有するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、検出範囲8が水平平面のみの場合には、第1受信部22a及び第2受信部22bで受信部22を構成することも可能である。或いは、検出範囲8が鉛直平面のみの場合には、第1受信部22a及び第3受信部22cで受信部22を構成することも可能である。更には、4つ以上の受信部から受信部22を構成することも可能である。