JP4783130B2 - マイクロ波ドップラーセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロ波ドップラーセンサに関するものである。
移動物体を検知するセンサの1つとしてドップラーセンサがある。特にマイクロ波を用いたドップラーセンサはマイクロ波が金属以外の物質を透過できることから、設置場所の制限が少なく、筐体や他の配置物を選ばず設置することができる。このマイクロ波ドップラーセンサは、屋内外に限らず移動する物体の状況を感知することができるので、セキュリティセンサ等のセンサとして適している。このようにセキュリティ用のセンサとして用いた場合、センサの露出を防ぐように屋根裏,床下や卓上型カレンダの裏等に配置することで室内の美観を損ねることなくまた、侵入者からセンサの存在を察知されることがないという利点がある。
図1は一般的なホモダイン検波によるドップラーセンサSの構成図を示している。図1に示すように、局部発振器1で生成されたマイクロ波は、送信アンテナ2から放射され対象物3で反射して受信アンテナ4で受信される。この受信された反射波は、局部発振器1で生成された信号と混合器5で混合される。すなわち、このドップラーセンサSでは、局部発振器1で生成されるマイクロ波(ローカル信号)と、その反射波(受信信号)とを混合してドップラー信号を検波するホモダイン検波が行われている。よって、この混合器5は検波器として機能する。
係る構成からなるドップラーセンサSは、対象物3に動きが無い場合、局部発振器1で生成されたマイクロ波と対象物3から反射してきたマイクロ波の周波数は同一周波数であるため混合器5の出力には交流的な出力が生じない。つまり、混合器5の出力は、0Hz(直流)となる。一方、対象物3がドップラーセンサに対して接近あるいは離反した場合、ドップラー効果により反射波の周波数が変化するため混合器5の出力には、その差分の信号が現れる。よって、混合器5からの信号を動体検出判定部6に与え、動体検出判定部6では、その信号の振幅が所定の規定値を超えたら動体検出が行われた(侵入者等の移動体が存在する)ものと判定する。そして、このようなドップラーセンサを応用した人体検知装置としては、例えば特許文献1等に開示されたものがある。
特開2001−283347号公報
図2は、上述したドップラーセンサSの設置状況の一例を示している。上述したようにドップラーセンサSをセキュリティ用のセンサとして用いた場合、ドップラーセンサSは、図2に示すように卓上カレンダ等の障害物(配置物)7の裏側等に設置される。障害物7が電波透過性の材質から構成されている場合、図2に示すように配置することで、図1に示す構成図は、図3に示すように描くことができる。なお、図1と図3を比較すると、図1の混合器5に替えて図3では検波器8を設けているが、上述したように図1に示したドップラーセンサSにおいてもホモダイン検波を行なっており、図3は、その動作・機能に着目して記載したものであり、基本的に図1に示すドップラーセンサSと同様のものである。
ドップラーセンサSから放射された信号は、図3に示すように、障害物7を透過して対象物3に至り、その対象物3で反射され、再び障害物7を透過して受信アンテナ4で受信される。障害物7は、電波透過性の材質から形成されるものの、マイクロ波に対して完全に透明とは言えず、送信アンテナ2から放射されたマイクロ波の一部は、障害物7で反射された後、受信アンテナ4で受信されるものもある。
このように、受信アンテナ4で受信した受信信号は、対象物3からの反射波のみでなく、障害物7からの反射波も含まれる。障害物7はアンテナから数〜数十mmの距離に位置するため、障害物7による反射レベルはかなり大きい。そのため障害物7で反射したマイクロ波によりドップラーセンサSの内部に干渉が生じ、局部発振器1や検波器8の動作点が変わってしまう。そして、その動作点の変位の方向によってノイズレベルが増大したり、検波レベルが極端に低くなったりする。
例えば、障害物7からの反射波は、本来の局部発振器1が生成するマイクロ波(ローカル信号)と混合され検波器8に注入される。本来のローカル信号に対し障害物7からの反射波の位相差が同相の関係になるような場合は、図4に示すように検波器8にとってローカル信号の注入量過多の状態となり、逆相の関係にある場合はローカル信号の注入量不足の状態となる。
ローカル信号の注入量過多の状態になると、局部発振器1の出力に含まれる振幅性ノイズが検波出力のノイズレベルを増大させる。ローカル信号の注入量不足の場合には図4に示す様な検波器の特性から、対象物からの反射波に対して検波効率が下がるため、感度が低くなる。
このような状態において対象物の検出をドップラーセンサの出力の振幅が閾値を超えるか否かの判定で行う場合、本来のドップラー信号にノイズが重畳することになり判定時の誤動作原因となる。
さらに、障害物7がたとえば卓上型カレンダのように軽いものの場合、風や周囲の工事等の影響を受けて振動しやすく、そのように振動した場合にはその振動による障害物7の表面の移動をドップラーセンサSが検知し、動体があると認識するおそれがあるという問題も生じる。これらの問題は障害物が天井板、床板、壁などであっても同様に発生することが考えられ、特に壁などの場合には風の影響を大きく受けることになる。
本発明は、ドップラーセンサの前面にある障害物の影響を受けることなく高感度にかつ誤動作なく移動物体を検出できるマイクロ波ドップラーセンサを提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明に係るマイクロ波ドップラーセンサは、所定周波数のマイクロ波を生成する局部発振器と、前記マイクロ波を放射する送信アンテナと、その送信アンテナから放射されたマイクロ波の反射波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナから受信したマイクロ波と前記局部発振器から出力されるマイクロ波を混合する第1の混合器と、前記第1の混合器の出力と位相が90度異なる第2の混合器と、前記第1の混合器の出力を2値化する第1の2値化処理部と、前記第2の混合器の出力を2値化する第2の2値化処理部と、前記第1の2値化処理部の出力と前記第2の2値化処理部の出力から動体を検出する動体検出判定手段とを備え、前記動体検出判定手段は、前記第1の2値化処理部または前記第2の2値化処理部から出力されるパルスをカウントし、カウント値が閾値を超えたら前記動体があると判定するものであり、かつ、パルスの周期が基準値より短い場合には前記カウントの対象にしない機能と、パルスの周期が前のn回と比較して対象とする前記動体ではあり得ない急加速/ 急減速に相等する周期のパルスの場合には前記カウントの対象にしない機能と、前記第1の2値化処理部と前記第2の2値化処理部の出力から物体の移動方向を検出し、今回の移動方向がその前のn回の移動方向と同じでない場合には前記カウントの対象にしない機能を備えるようにした。
そして、前記第1の2値化処理部から出力されるパルスと、前記第2の2値化処理部から出力されるパルスの位相差が+90°もしくは−90°付近でない場合や、前記第1の2値化処理部から出力されるパルスと、前記第2の2値化処理部から出力されるパルスの周期がアンバランスの場合に、前記動体検出判定手段は、前記パルスのカウント値を減じる処理を行うようにするとよい。さらにまた、前記2値化処理部は、交流的な0Vを閾値として2値化処理を実行するようにするとよい。
本発明では、ドップラーセンサの前面にある障害物の影響を受けることなく高感度にかつ誤動作なく移動物体を検出することができる。
図5は、本発明の好適な一実施の形態を示している。図に示すように、マイクロ波ドップラーセンサ10では、所定周波数の出力信号を生成する局部発振器11の出力が第1ミキサ12並びに送信アンテナ13に接続されている。また、第1ミキサ12には、受信アンテナ14にて受信した受信信号も入力され、そこにおいて受信信号に基づく信号と局部発振器11からの出力信号とが周波数混合される。受信アンテナ14と第1ミキサ12の間に第1位相器16を挿入配置し、当該受信信号をその第1位相器16を経由して第1ミキサ12に入力するようにしている。そして、第1ミキサ12において、第1位相器16にて位相が変えられた受信信号と、局部発振出力(送信信号)とが周波数混合される。第1位相器16は、位相を45度遅延させるものであり、具体的には、λ/8の線路長を持つパターンにより構成する。
さらに、第2位相器17並びに第2ミキサ18を設け、局部発振器11の出力を第2位相器17を介して第2ミキサ18に与えるとともに、受信アンテナ14で受信した受信信号を第2ミキサ18に与えるようにしている。これにより、第2ミキサ18では、局部発振出力(送信信号)を第2位相器17にて位相が変えられた信号と、受信信号とが周波数混合される。この第2位相器17も、位相を45度遅延させるものであり、具体的には、λ/8の線路長を持つパターンにより構成する。
そして、第1,第2ミキサ12,18の出力は、それぞれ、2値化処理部19に与えられ、そこにおいて2値化処理された信号が動体検出判定部20に与えられ、動体の有無を判断するようになる。
各2値化処理部19は、それぞれゼロクロスを基準に2値化処理を行なう。これにより、たとえば、波形信号のプラス側が1でマイナス側が0に変換される。もちろん、本発明では、このように2値化処理する際の基準値(閾値)をゼロクロスにする必要はなく、任意の値を設定できる。例えば、プラス側に所定量だけオフセットすることにより、ノイズに基づく微小の振幅値からなる振動波形が生じていても2値化出力を0のままにすることができる。但し、その閾値をあまり大きい値に設定すると、弱い信号レベルに対して反応しなくなるので、閾値はゼロ或いはそれに近い値(ノイズを考慮した値)とするのがよい。
2値化処理部19は、たとえばコンパレータにより構成しても良いし、高い増幅度をもったアンプでも良く、要は各ミキサ12,18からの出力を交流的にみた0V(ゼロクロスの場合)を境に2値化できるものであればよい。
係る構成からなるマイクロ波ドップラーセンサ10の動作原理を説明しつつ、動体検出判定部20の機能を説明する。まず、局部発振器11から出力される信号は、送信アンテナ13から放射され、その前方に位置する対象物30に到達し、そこで反射された反射波が受信アンテナ14で受信される。この受信アンテナ14で受信した受信信号の周波数つまり反射波の周波数は、対象物30が固定されているとすると、出力信号の送信周波数、つまり局部発振器11の発振周波数と同一となる。また、対象物30が動体の場合には、ドップラー効果により、反射波の周波数は出力信号の送信周波数と異なる。
従って、まず対象物30が動体とすると、第1ミキサ12では、局部発振器11からの信号が注入されるとともに、受信アンテナ14で受信したドップラー信号が第1位相器1 6にて位相が45度遅れた信号が入力される。従って、第1ミキサ12の出力は、第1 位相器16がない場合に比べて位相が45度遅れた信号が出力されることになる。
一方、第2ミキサ18では、局部発振器11からの信号が第2位相器17を通過することにより位相が45度遅れ、係る位相遅れをした信号が注入されるとともに、受信アンテナ14で受信したドップラー信号は、そのまま位相遅れを生じることなく第2ミキサ1 8に与えられる。従って、第2ミキサ18の出力は、第2位相器17がない場合に比べて位相が45度進んだ信号が出力されることになる。
従って、第1ミキサ12と第2ミキサ18からそれぞれ出力される混合信号の位相差は、90度となる。さらに、動体が接近してきた場合と、離反していった場合では、送信信号の周波数に対するドップラー信号の周波数の変化の方向が反転するため、第1ミキサ12からの出力信号と、第2ミキサ18から出力信号の位相差が反転する。よって、どちらのミキサからの信号が進んでいるかにより、動体の移動方向(接近/離反)を判定することができる。
一方、対象物30の位置が変化しない場合には、対象物30にて反射してもドップラー効果は起こらず、反射波の周波数は送信アンテナ13から放射された信号、つまり、局部発振器11から出力される信号の周波数と同一となる。従って、第1,第2ミキサ12,18の出力は0Hzとなる。よって、連続的な信号となるので、第1,第2ミキサ12,18の出力において、位相差は考える必要が無く、各出力の位相差は0とみなせるので、各2値化処理部19の出力も0となる。よって、本実施の形態では、動体の有無並びに動体の移動方向を判別できる。
上述した基本的な検出原理では、発明が解決しようとする課題の欄でも説明したように、ドップラーセンサの前に設置した障害物による誤動作のおそれがある。そこで、動体検出判定部20は、以下に示す所定の基準によって判別されるSN比を基に動体検出を行なうようにした。これにより、障害物からの反射波に基づく影響や、障害物が振動したことに動体と誤検出することなどなく、真の検出対象物である動体を精度良く検出できる。なお、以下の説明において、第1ミキサ12の出力を2値化処理部19において2値化した信号をIF1とし、第2ミキサ18の出力を2値化処理部19において2値化した信号をIF2と称して説明する。
まず、図6は、移動体が存在しない場合の、時間経過にともなう第1ミキサ12,第2ミキサ18の出力(IF1アンプ出力,IF2アンプ出力)と、第1ミキサ12,第2ミキサ18に接続され各2値化処理部19の出力(IF1コンパレータ出力,IF2コンパレータ出力)の状態を示している。また、図7は、弱い反射レベルの移動体が存在する場合の時間経過にともなう第1ミキサ12,第2ミキサ18の出力(IF1アンプ出力,IF2アンプ出力)と、第1ミキサ12,第2ミキサ18に接続され各2値化処理部19の出力(IF1コンパレータ出力,IF2コンパレータ出力)の状態を示している。
両図から明らかなように、反射レベルが弱い移動体の場合には、移動体が無い場合に比べて振幅の最大値にわずかな差が見られる程度である(アンプ出力参照)。これに対し、本実施の形態では、ゼロクロスによる2値化処理を行なうようにしたため、移動体の有無いかんに関わらず2値出力が反転を繰り返すパルス列を構成するが、以下に説明するように、移動体が存在する場合にはその2値化出力波形のパターン(周期,タイミング等)に特徴が見られる。そこで、従来のようにドップラー信号の振幅情報を用いるのではなく、本実施の形態では、このパターンを用いることで、移動体の検知判定を行なうようにした。
また、図8は、ドップラーセンサ10の前に障害物を設置し、その障害物を前後に移動させてドップラーセンサの距離を変化させたときの、距離に対する各出力レベルの特性を示している。図8(a)は、障害物の前面で対象物を所定条件で前後運動させたときのドップラーセンサの第1ミキサ12の出力レベル(信号レベル:Sレベル)と、対象物が存在しないときの第1ミキサ12の出力レベル(雑音レベル:Nレベル)とを示している。図8(b)は、図8(a)で測定したSレベルとNレベルから障害物とドップラーセンサの距離を変化させたときのSN比を示したものである。
この図8からわかるように、Sレベルの最小値と最大値の値の変化率は大きく、同様にNレベルの変化率も大きい。これに対し、SN比の変化率は、Sレベル,Nレベル個別に見たときに比べ比較的小さい。すなわち障害物とドップラーセンサの距離による影響が一番少なくなるのはSN比であり、SN比の変化で移動物体の検知を行う方法がドップラーセンサの前面に障害物があるような場合に最も適した判定方法であるといえる。
そこで、SN比の判定方法として、本実施の形態の動体検出判定部20は、対象物からの反射と思われる有意な信号によるパルスのみを+カウントし、ノイズや対象物でない反射波による信号と考えられるものはカウントしないようにした。このようにすることでカウント値が所定値となったときに所定のSN比を得ていると判定することができる。さらに、パルスには、信号と似たパターンを持つノイズ成分も含まれるので、係る場合のパルスは−カウントすることで、精度良くSN比を求めることができる。すなわち、対象物の反射波である場合には+カウントし、周期からして明らかにノイズであると判断される場合はカウントせず、信号波形とは似ているが対象物の反射波とは異なるパターンの場合は−カウントする形をとることでカウント値が所定値となったときに所定のSN比を得ていると判定するようにした。そして、カウントするか否かの具体的な判定基準は、以下のように設定している。
1.パルス周期からみて明らかにノイズと判断できるパルスや、対象物によらない反射波による信号と考えられるものは、カウントしない。この条件に合致するものとしては、下記のaからcに示すものがある。
a.パルスの周期が短すぎたら、そのパルスは対象物によるものではない。
すなわち、風や振動などで障害物が揺れた場合、移動速度は速い(たとえば、人間の移動速度に対して)。また、特に、ノイズによる信号波形は正負が短時間で切り替わる成分を含んでいるため、パルスの周期が短くなる。よって、対象とする移動体ではあり得ない程、速い速度に相等する周期のパルスの場合には、検出対象物ではないと推定し、カウントの対象外とする。カウント対象外とする周期の閾値は、動体検出判定部20に設定しておく。たとえば、図6中、矢印Aで示す区間の波形がこれに該当し、センサノイズ等と判定しカウントしない。
b.パルスの周期は、その前n回(例:3回)のパルス幅と同じくらいでなければ、そのパルスは対象物によるものではない。
すなわち、たとえば、人間などの場合、移動速度が変化したとしても限度があり、対象とする移動物体ではあり得ない程、急加速/急減速に相等する周期のパルスと考えられるためカウントの対象外とする。たとえば、図6中、矢印Bで示す区間の波形がこれに該当し、センサノイズ等と判定しカウントしない。
c.今回のパルスの接近/離反方向は、その前n回(例:5回)のパルスの移動方向と同じでなければ、そのパルスは対象物によるものではない。
すなわち、振動している場合には、移動方向は接近と離反を繰り返すことになるため、移動方向が同一方向のパルスが所定数(n回)連続して発生しない場合には、物体が「移動」ではなく「振動している」と考えられるためカウントの対象外とする。
2.信号と似たパターンをもつが、対象物からの反射波とは異なるパターンの場合は「―カウント」とする。この条件に合致するものとしては、下記のd,eに示すものがある。
d.IF1(第1ミキサ12に接続される2値化処理部19の出力)とIF2(第2ミキサ18に接続される2値化処理部19の出力)との位相差が+90°もしくは−90°付近でなければ、そのパルスは対象物によるものではない。上述したように、2出力ドップラーセンサによる出力が対象物からのドップラー信号の場合、その位相差は約90°の関係となるため(図11等参照)、係る関係にない場合には、周期性はあるものの対象物からのドップラー信号ではないと考えるため、「−カウント」する。
e.IF1とIF2のパルスの周期がアンバランスならば、そのパルスは対象物によるものではない。
すなわち、2出力ドップラーセンサの場合、対象となる移動物体に対する2つの出力の周期は同様となるはずである。また、回路中のノイズや外部から回路中に誘導されるノイズは振幅性ノイズであり、本来のドップラー信号の場合のようにIF1とIF2の間で所定の位相差は発生せずアンバランスな周期であるともいえる。一方、周期がたまたまマッチした場合には+カウントされてしまうため、明らかにノイズと認識できる場合には−カウントすることでこの問題を解決する。なお、カウント値をマイナスし続けると本来の信号時におけるカウント開始値が所定の値にならなくなるため、−カウントは所定の値で頭打ちするようにしている。そして、本実施の形態では、このアンバランスなパターンがn回分(例:4回)溜まると、カウントを−1するようにしているが、このnの値は適宜設定すればよい。
3.対象物からの信号であると考えられるものは、「+カウント」する。
具体的には、上記のa〜eに該当する信号以外は対象物からの信号によるものとして、カウントを+する。
図9,図10は、上述した基準を踏まえた動体検出判定部20の機能を示すフローチャートである。このソフトウエア処理の説明に先立ち、図11に基づいて、IF1(第1ミキサ12に接続される2値化処理部19の出力)とIF2(第2ミキサ18に接続される2値化処理部19の出力)の出力の関係を説明する。図11において、IF1が立下がったときから立上がるまでの時間を「IF1Low幅」とする。IF1Low幅はドップラー信号が発生している場合その半波分の出力を現し、このIF1Low幅からは移動体の移動距離を測定することができる。したがって、IF1Low幅があまりに狭い場合にはノイズもしくは対象物が現実離れした速い速度で移動する状態を表すこととなり有効な信号とはいえない。
また、IF1の立下りの後に発生するIF2の立上りからIF1の立上りまでの時間や、IF1の立下りの後に発生するIF2の立下りからIF1の立上りまでの時間を「最新状態保持時間」とする。ドップラー信号である場合、IF1とIF2の位相差が90度であることから最新状態保持時間は計算上IF1Low幅の1/2となる。この関係が成り立てばドップラー信号であると判定してもよい。そうでない場合は位相差の発生しない振幅性雑音等であると考えられ、有効な信号とはいえない。ただし、本実施の形態ではこれらのノイズ等がドップラー信号に重畳しているような状況を考え、IF1Low幅の1/4から3/4までを許容幅として判定するようにした。
さらに、最新状態保持時間のHであるときとLであるときで、そのときの対象物がドップラーセンサに対して接近しているのか離反しているのかを判定することができる。具体的には、対象物がドップラーセンサに接近しているときはIF1に比べてIF2の出力が90度遅れ、対象物がドップラーセンサから離反しているときにIF1に比べてIF2の出力が90度進むように位相器を構成した場合、図に示すように、対象物がドップラーセンサに接近しているときは最新状態保持時間はHを示し、離反しているときはLを示すこととなる。このようにIF1の立上り時に対象物の接近/離反を判定できるようになることで、この「判定の履歴をみれば有効な対象物であるかそうでないかを判定することができる。つまり、障害物である壁が風で揺られている状態や卓上型カレンダ等が工事の影響を受け振動している場合、履歴の中で接近,離反を繰り返すこととなりこの場合は有効な信号ではないものと判定することが可能となる。また、対象物が植物などであった場合や、風による影響があった場合においても、有効な信号でないと判定することが可能となる。
上述した内容を前提に図9,図10に記載のフローチャートを説明する。処理開始後、CPUの処理としてIF1、IF2のH、L状態を取り込み処理、IF2の最新状態保持時間のカウントならびにIF1のLow幅をカウントする(S20)。これらの処理はS20としてこの位置に記載したが必要に応じて適宜行われる処理であり、他のステップにおいて特に記載しない。
その後、IF1の立下がりを検出したか否かを判断する(S30)。立下がりを検出しない場合(S30でNo)には、IF1の立上がりを検出したか否かを判断する(S32)。また、分岐判断の処理ステップS30でYes、つまり、S30においてIF1の立下りを検出したなら、IF1Low幅を測定するタイマの値をクリア(S31)した後、処理ステップS32に飛び、IF1の立上がりを検出したか否かを判断する(S32)。立上がりを検出しない場合には、過去のIF2のH,L状態の更新を行なった(S61)後、処理ステップS20に戻り、上述した処理を繰り返す。
一方、IF1の立上りを検出すると(S32でYes)、IF1Low幅が検出されるため、有効でない信号を除外するための処理を行う。つまり、S33においてIF1Low幅が短かすぎないかを確認し、またS34において最新状態保持時間が短すぎないかを確認する。最新状態保持時間はドップラー信号によるものであったとしても、IF1Low幅の1/2であり、この値が小さすぎることはIF1Low幅での判定と同様に有効な信号であるとはいえない。この2つの判定は前述した有効でない信号においてカウントしない場合のaに該当する。これらの判定において有効でない信号であると判定された場合(S33,S34の何れがYes)は最新状態保持時間のH、L状態を履歴として記録した(S61)後にS20に戻る。
処理ステップS33,S34の分岐判断が何れもNoとなった場合、最新状態保持時間がIF1Low幅の1/4〜3/4か否かを判断する(S40)。最新状態保持時間がIF1Low幅の1/4〜3/4にない場合(S40でNo)は、2出力ドップラーセンサの特徴である位相差90°の関係ではないと判定できる。この判定は前述した有効でない信号においてカウントしない場合のe(位相判定)に該当する。さらにIF1とIF2の位相ズレ具合を評価するため、複数回この状況が発生したらカウント値をマイナスするようにした(S41,S42)。すなわち、処理ステップS41において所定回数(n回)通過した場合はカウント値を−1するようにしている(S42)。
IF1とIF2の位相差は一見90°付近に見えても、IF1とIF2の周期そのものがアンバランスの場合にも対象物からのドップラー信号によるものでないと判定できる。そこで、次に周期バランス判定を行なう。つまり、IF2の最後のパルス幅がIF1のLow幅とアンバランスか否かを判断する(S43)。アンバランスでない場合(S43でNo)には、処理ステップS61に飛び、上述した処理を繰り返す。一方、アンバランスの場合(S43でYes)には、S44に飛び、このアンバランスである状態がn回続いているか否かを判断し(S44)、n回続いていない場合にはS61に戻り、n回続いている場合にはカウント値をさらにマイナス1する(S45)。なお、処理ステップS41とS44におけるnの値は、同じ値をとっても良いし、異なる値に設定しても良い。
一方、上述した処理ステップS40の分岐判断においてIF1とIF2の関係が適正であると判定された場合は、接近離反の過去の履歴を利用して対象物が前後移動しているかどうかを判定する(S50)。同じでない場合(S50はNo)は、今回の判定処理を終了し、S60に飛ぶ。この判定は前述した有効でない信号においてカウントしない場合のd(却下判定)に該当する。すなわち有効な信号でない場合はカウントをプラスせず無視する。
過去n回同じ場合には、処理ステップS51に飛び、過去のIF1Low幅の履歴からn回とも所定幅内に含まれることを確認する。すなわち対象物が通常の動体であればその加速度はそれほど高くなく、履歴n回のIF1Low幅は急激に変化しない。所定値外であれば急激な変化が発生していることになり、有効な信号であるとはいえない。この判定は前述した有効でない信号においてカウントしない場合のbに該当する。上記判定により除外されなかった信号(S51でYes)は、適正なドップラー信号であると判定することができるため、カウント値をプラスする(S52)。
その後、履歴として使用するIF1Low幅を記録し(S53)、S60においてカウント値を判定し、所定の値以上となっている場合には所定の対象物であると判定するようにしている。たとえば、カウント値が10となれば所定の対象物がゆっくり動作したとしても10波分のドップラー信号をカウントすればよく判定に大きな遅れが生じることはない。
なお、処理ステップS40からS45までの処理でIF1とIF2がアンバランスな状態、たとえば図6に見られるようなノイズ状態が続けば、カウント値はマイナスされるため誤動作が発生することはない。また、マイナス値は0で頭打ちするようにしておけばドップラー信号がない状態が連続した直後に発生したドップラー信号の検出に影響を与えることもない。
本実施の形態によれば、2出力ドップラーセンサからの信号レベルの大きさ、およびノイズレベルの大きさに依存せず、SN比の大きさにより判定を行うことから、マイクロ波ドップラーセンサにおける図6のような変動に強い。
図12は、本発明の参考例としての一形態を示している。本形態では、局部発振器11の出力がミキサ21並びに送信アンテナ13に接続されている。また、ミキサ21には、受信アンテナ14にて受信した受信信号も入力され、そこにおいて受信信号に基づく信号と局部発振器11からの出力信号とが周波数混合される。そして、ミキサ21の出力は、2値化処理部19により2値化される。2値化処理部19はコンパレータによるものでも良いし、高い増幅度をもったアンプでも良く、要はミキサ21からの出力を所定電圧(例えば、ゼロクロス)を境に2値化できるものであればよい。
本形態では、第1の実施の形態のように2出力ドップラーセンサでないので、接近/離反を検出することはできず、上述した1のa,bと3(a,b以外は「+カウント」)に基づく判定処理を行なうことになる。
上述した各形態によれば、ゼロクロスにより2値化処置を行っているため、特定レベルを閾値とした2値化方式と比べ、閾値の調整が不要となる。これは、ドップラーセンサの個体差や状態変化によらず、常に最良の閾値設定がされることになる。
一般的なドップラーセンサを説明する巣である。 ドップラーセンサの設置状況の一例を示す図である。 従来の問題点を説明する図である。 従来の問題点を説明する図である。 本発明に係るマイクロ波ドップラーセンサの第1の実施の形態を示す図である。 動作原理を説明する図である。 動作原理を説明する図である。 動作原理を説明する図である。 物体検出部の機能を説明するフローチャートである。 物体検出部の機能を説明するフローチャートである。 動作原理を説明する図である。 マイクロ波ドップラーセンサの参考例としての一形態を示す図である。
符号の説明
10 ドップラーセンサ
11 局部発振器
12 第1ミキサ
13 送信アンテナ
14 受信アンテナ
16 第1位相器
17 第2位相器
18 第2ミキサ
19 2値化処理部
20 動体検出判定部
21 ミキサ
30 対象物

Claims (5)

  1. 所定周波数のマイクロ波を生成する局部発振器と、
    前記マイクロ波を放射する送信アンテナと、
    その送信アンテナから放射されたマイクロ波の反射波を受信する受信アンテナと、
    前記受信アンテナから受信したマイクロ波と前記局部発振器から出力されるマイクロ波を混合する第1の混合器と、
    前記第1の混合器の出力と位相が90度異なる第2の混合器と、
    前記第1の混合器の出力を2値化する第1の2値化処理部と、
    前記第2の混合器の出力を2値化する第2の2値化処理部と、
    前記第1の2値化処理部の出力と前記第2の2値化処理部の出力から動体を検出する動体検出判定手段とを備え、
    前記動体検出判定手段は、前記第1の2値化処理部または前記第2の2値化処理部から出力されるパルスをカウントし、カウント値が閾値を超えたら前記動体があると判定するものであり、
    かつ、パルスの周期が基準値より短い場合には前記カウントの対象にしない機能と、パルスの周期が前のn回と比較して対象とする前記動体ではあり得ない急加速/ 急減速に相等する周期のパルスの場合には前記カウントの対象にしない機能とを備えるとともに、
    前記第1の2値化処理部から出力されるパルスと前記第2の2値化処理部から出力されるパルスの位相差から前記送信アンテナから放射されたマイクロ波を反射した物体の移動方向を検出する機能を備えたことを特徴とするマイクロ波ドップラーセンサ。
  2. 前記動体検出判定手段は、前記送信アンテナから放射されたマイクロ波を反射した物体の移動方向を検出し、今回の移動方向がその前のn回の移動方向と同じでない場合には前記カウントの対象にしない機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ドップラーセンサ。
  3. 前記第1の2値化処理部から出力されるパルスと、前記第2の2値化処理部から出力されるパルスの位相差が+90°もしくは−90°付近でない場合、前記動体検出判定手段は、前記パルスのカウント値を減じる処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波ドップラーセンサ。
  4. 前記第1の2値化処理部から出力されるパルスと、前記第2の2値化処理部から出力されるパルスの周期がアンバランスの場合、前記動体検出判定手段は、前記パルスのカウント値を減じる処理を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ波ドップラーセンサ。
  5. 前記2値化処理部は、交流的な0Vを閾値として2値化処理を実行することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロ波ドップラーセンサ。
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