JP2010032600A - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】画像流れと、残留電位の上昇の双方を抑制する体積抵抗率を安定して制御することができ、400nm付近の光の吸収が低く感光特性を阻害させず、耐久性に優れる表面層を有する電子写真用感光体を提供する。
【解決手段】導電性基体上に順次形成された光導電層と表面層とを有する電子写真用感光体において、光導電層は珪素原子を主成分として含有する非晶質層であり、表面層は、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、及び窒素原子を含有する。
【選択図】図1
【解決手段】導電性基体上に順次形成された光導電層と表面層とを有する電子写真用感光体において、光導電層は珪素原子を主成分として含有する非晶質層であり、表面層は、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、及び窒素原子を含有する。
【選択図】図1
Description
本発明は電子写真装置に用いる電子写真用感光体に関する。
電子写真装置に用いる電子写真用感光体(以下、感光体ともいう。)の感光性部材として、珪素原子を主成分とし、更に、水素原子やハロゲン原子等を含有する非晶質の堆積膜は高性能、高耐久、無公害であり、実用化されている。このような堆積膜を用いた感光体は、種々の性能要求に合わせて、種々の層構成を有するものが提案されている。なかでも表面層を備えたものは、感光体に耐磨耗性、電荷保持性、耐環境性等に優れ、多用されている。
電子写真装置のカラー化の進展に伴い、画像の高解像度化の要求が高く、これに対応するため、露光レーザー光の波長を短くしてスポット径を小さくし、静電潜像の解像度を高めるという技術が注目されている。これは、レーザー光のスポット径の下限がレーザー光の波長に正比例することによる。従来の電子写真装置においては、画像露光の際に600〜800nmの発振波長を有するレーザー光が一般的に用いられており、この波長をさらに短くすることで画像の解像度を高めることができる。近年、発振波長の短い半導体レーザーの開発が急速に進んでおり、400nm近傍に発振波長を有する半導体レーザーが実用化されている。
しかし、短波長の露光レーザー光を用いて静電潜像を形成する場合、表面層における露光レーザー光の吸収が問題となる。アモルファス炭化珪素等の表面層は400nm近傍の露光レーザー光の吸収が大きくなり、感光体の感度が著しく低下してしまう。そのため、膜厚の調整や露光強度等を調整する必要が生じ、耐久性に問題が生じてしまう。
そこで、400nm付近の短波長光の吸収を抑制し、耐摩耗性や耐酸化性等を維持することができる表面層として、亜鉛原子、アルミニウム原子、及び酸素原子で構成された表面層(特許文献1)が報告されている。
アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子を主成分とした膜は一般的には透明導電性薄膜として、比較的低い体積抵抗率を有するものとして用いられている。感光体の表面層が、低い体積抵抗率を有すると電子写真画像に画像流れを生じるという不都合が生じる、逆に体積抵抗率が高くなり過ぎると残留電位が上昇し良好な電子写真画像が得られなくなってしまう。このため、表面層は、画像流れの抑制と、残留電位の上昇の抑制の双方を満たす体積抵抗率を有することが要請される。しかしながら、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子を主成分とする膜は、表面層に求められる体積抵抗率を有する原子組成比の範囲は狭く、また、原子比率によっては画像形成プロセス条件によって充分な耐久性が得られない場合がある。短波長光の吸収が低く、画像流れと残留電位の上昇が抑制された画像が得られ、耐久性に優れる表面層とするこれら原子組成比の調整は非常に困難であって、これらの原子の組成比の調整が、表面層の安定した製造上の障壁となっていた。
特開平6−83091号公報
本発明の課題は、画像流れと、残留電位の上昇の双方を抑制する体積抵抗率を安定して制御することができ、400nm付近の光の吸収が低く感光特性を阻害させず、耐久性に優れる表面層を有する電子写真用感光体を提供することにある。
本発明者らは、400nm付近の短波長光の透過率が高く、原子組成比が多少変動しても、画像流れや残留電位の上昇の双方を抑制できる体積抵抗率を与えることができ、しかも、耐久性を有する表面層を見い出すべく鋭意研究を行った。その結果、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子に、窒素原子を含有させることにより体積抵抗率を安定して制御することができ、短波長光の吸収が低く、耐久性に優れる表面層が得られることの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、導電性基体上に順次形成された光導電層と表面層とを有する電子写真用感光体において、光導電層は珪素原子を主成分として含有する非晶質層であり、表面層は、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、及び窒素原子を含有するに関する。
本発明の電子写真用感光体は、画像流れと、残留電位の上昇の双方を抑制可能な体積抵抗率を安定して制御することができ、400nm付近の光の吸収が低く感光特性を阻害させず、耐久性に優れる。
本発明の電子写真用感光体は、導電性基体上に、光導電層と表面層とを有する。
[導電性基体]
本発明の電子写真用感光体に用いる導電性基体は、その上に設けられる光導電層及び表面層を支持し得る強度を有するものである。その材質としては、例えば、アルミニウム、クロム、モリブデン、金、インジウム、ニオブ、テクネチウム、バナジウム、チタン、白金、鉛、鉄等の金属、これらを含む合金、例えば、アルミニウム合金、ステンレス等を挙げることができる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のシートやフィルム、ガラス、セラミック等の光導電層を形成する面を導電処理したものも使用できる。
本発明の電子写真用感光体に用いる導電性基体は、その上に設けられる光導電層及び表面層を支持し得る強度を有するものである。その材質としては、例えば、アルミニウム、クロム、モリブデン、金、インジウム、ニオブ、テクネチウム、バナジウム、チタン、白金、鉛、鉄等の金属、これらを含む合金、例えば、アルミニウム合金、ステンレス等を挙げることができる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のシートやフィルム、ガラス、セラミック等の光導電層を形成する面を導電処理したものも使用できる。
上記導電性基体の形状は、例えば、円筒状、若しくは、シートをベルト状に加工したもの等とすることができる。導電性基体の表面は平滑又は微細な凹凸を有するものであってもよい。その厚さは、光受容部材を形成し得るように適宜決定するが、光受容部材としての可撓性が要求される場合には、基体としての機能が充分発揮できる範囲内で薄いことが好ましい。基体は製造上の容易さ、取扱い上の容易さ、機械的強度等の点から、例えば、10μm以上を挙げることがでできる。
[光導電層]
本発明における光導電層は、380〜500nmの波長の光に感度を有するものであり、珪素原子を主成分とする非晶質層(アモルファスシリコン層ともいう。)であり、堆積膜(アモルファルシリコン堆積膜ともいう。)として形成することができる。アモルファスシリコン層は非晶質部分を主として含有するものであれば、目的とする特性が得られる範囲内で、多結晶や微結晶の部分を含んでいてもよい。アモルファスシリコン層は、高硬度で、安定性を有し、生産コストの点等において有利であり、表面層と相俟って、機械的ストレスを受けた場合、界面において膜剥離が生じにくく、感光体の耐久性の向上を図ることができる。また、その上に表面層を成膜する際、真空プロセスを使用した場合であっても、脱ガス等による層変化が少なく、表面層の形成に及ぼす影響が少ないことから、好ましい。
本発明における光導電層は、380〜500nmの波長の光に感度を有するものであり、珪素原子を主成分とする非晶質層(アモルファスシリコン層ともいう。)であり、堆積膜(アモルファルシリコン堆積膜ともいう。)として形成することができる。アモルファスシリコン層は非晶質部分を主として含有するものであれば、目的とする特性が得られる範囲内で、多結晶や微結晶の部分を含んでいてもよい。アモルファスシリコン層は、高硬度で、安定性を有し、生産コストの点等において有利であり、表面層と相俟って、機械的ストレスを受けた場合、界面において膜剥離が生じにくく、感光体の耐久性の向上を図ることができる。また、その上に表面層を成膜する際、真空プロセスを使用した場合であっても、脱ガス等による層変化が少なく、表面層の形成に及ぼす影響が少ないことから、好ましい。
上記光導電層は、珪素原子の他、水素原子、ハロゲン原子を含有していてもよい。これらの原子は珪素原子の未結合手と結合し、層品質、特に光導電性及び電荷保持特性を向上させ得る。光導電層中の水素原子の含有量は露光系の波長に合わせて適宜変化させることができ、例えば、珪素原子と水素原子の和に対して10〜40原子%等とすることができる。特に、水素原子やハロゲン原子の含有量がある程度多くなると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。380〜500nmの波長の露光に対する感度を向上させるためには、かかる光学的バンドギャップの拡大のために、光導電層中の水素原子の含有量は珪素原子と水素原子の和に対して15原子%以上とすることが好ましい。
また、上記光導電層は伝導性を制御する原子を含有していてもよい。伝導性を制御する原子は、光導電層中に万偏なく均一な分布状態で含有されていてもよく、厚さ方向に含有量が漸次変化する、段階的に変化する等、不均一な分布状態で含有されてもよい。伝導性を制御する原子としては、半導体分野におけるいわゆる不純物を用いることができる。具体的には、周期表13族に属する原子(以後「第13族原子」とも略記する。)、又は周期表15族に属する原子(以後「第15族原子」とも略記する。)を挙げることができる。第13族原子としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等を挙げることができ、特に、硼素、アルミニウム、ガリウムが好適である。また、第15族原子としては、例えば、燐、砒素、アンチモン、ビスマス等を挙げることができ、これらのうち特に燐、砒素、アンチモンが好適である。伝導性を制御する原子の光導電層中の含有量は、0.05原子ppm以上、5原子ppm以下とすることができる。画像露光の到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しないものであってもよい。
上記光導電層は、その他、物性の制御性、製造上の点から、ヘリウム原子等を含有していてもよい。
上記光導電層の層厚は、所望の電子写真特性が得られること、経済性等の点から、例えば、5μm以上、50μm以下とすることができ、好ましくは、10μm以上、45μm以下、より好ましくは、20μm以下、40μm以下である。
上記光導電層の形成は、グロー放電法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等による堆積膜の形成によることができる。これらの堆積膜形成法は、製造条件、投資負荷、製造規模、要求される特性等によって選択することができるが、グロー放電法が、原料の供給が容易なこと等から、好ましい。
グロー放電法を用いた光導電層の形成方法としては、後述する高周波プラズマCVD装置を用いることができる。グロー放電法を用いた光導電層の形成方法の概略を以下に説明する。珪素原子を供給し得るSi供給用原料ガスと、水素原子を供給し得るH供給用原料ガスと、必要に応じてハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用原料ガスや、伝導性を制御する原子を供給し得る原料ガスを内部を減圧し得る反応容器内に所望のガス状態で導入する。反応容器内にグロー放電を生起させ、導入した原料ガスを分解し、予め所定の位置に設置した導電性基体上に水素原子やその他の原子と共に珪素原子を堆積成長させ、光導電層を形成する。Si供給用原料ガスとしては、SiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10等のガス状又はガス化し得るシラン類を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、層作製時の取り扱い、Si供給効率等の点からSiH4、Si2H6を好ましいものとして挙げることができる。そして、膜の物性の制御性、ガスの供給の利便性等を考慮し、これらのガスに更に、H2、He及び水素原子を含むケイ素化合物から選ばれる1種以上のガスを所望量混合して用いることもできる。
ハロゲン原子供給用原料ガスとしては、F2、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン化合物や、SiF4、Si2F6等のフッ化珪素を好ましいものとして挙げることができる。光導電層中に含有されるハロゲン元素の量を制御するには、例えば、基体の温度、反応容器内へ導入する原料ガス量、放電空間の圧力、放電電力を制御すればよい。
第13族原子供給用原料ガス又は第15族原子供給用原料ガスとしては、常温常圧でガス状の原料物質又は少なくとも光導電層の成膜条件下で容易にガス化し得るものを原料物質として採用することが好ましい。第13族原子供給用原料ガスとしては、B2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14等の水素化ホウ素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化ホウ素を挙げることができる。この他、第13族原子導入用の原料物質としては、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。第15族原子供給用原料物質としては、PH3、P2H4等の水素化リン、PH4I、PF3、PF5、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化リンを挙げることができる。この他、第15族原子導入用の原料物質として、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等を挙げることができる。これらの原料ガス等は必要に応じて水素ガスやヘリウムガス等により希釈して使用することができる。
これらの原料ガスを用いて光導電層を形成するには、上記原料ガスや希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力、基体温度等を適宜設定することができる。例えば、H2、He等の希釈ガスの使用量は、適宜最適範囲を選択することができるが、Si供給用原料ガスに対し、例えば3〜30倍、好ましくは4〜15倍、より好ましくは5〜10倍の範囲を挙げることができる。反応容器内のガス圧も同様に適宜最適範囲を選択することができ、例えば1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、より好ましくは1×10-1〜2×102Paを挙げることができる。放電電力もまた同様に適宜最適範囲を選択することができるが、例えば、Si供給用原料ガスの流量[ml/min(normal)]に対する放電電力[W]の比を、0.5〜8、好ましくは2〜6範囲に設定することができる。更に、基体の温度は、適宜最適範囲を選択することができるが、例えば200〜350℃、好ましくは210〜330℃、より好ましくは220〜300℃を挙げることができる。これらの条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光導電層を形成すべく相互的、且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めることが好ましい。
[表面層]
本発明における表面層は、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、及び窒素原子を含有する。これらの原子を含有することにより、その含有比率の変動に対して、画像流れと残留電位の上昇とを抑制できる適切な体積抵抗率を安定して保持することができる表面層とすることができ、更に、耐久性に優れる表面層とすることができる。表面層中の窒素原子の含有量が、0.5原子%以上、25原子%以下であることが、画像流れの抑制効果をより顕著に得ることができ、好ましい。窒素原子の表面層中の含有量が、0.5原子%以上であれば、より安定して体積抵抗率の調整ができ、画像流れ抑制の効果、残留電位抑制効果が顕著に得られる。また、窒素原子の表面層中の含有原子量が25原子%以下であれば、同一条件で形成した際の表面層中の窒素原子の含有比率の変動を抑制することができ、安定した窒素原子の含有量の制御を行うことができる。
本発明における表面層は、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、及び窒素原子を含有する。これらの原子を含有することにより、その含有比率の変動に対して、画像流れと残留電位の上昇とを抑制できる適切な体積抵抗率を安定して保持することができる表面層とすることができ、更に、耐久性に優れる表面層とすることができる。表面層中の窒素原子の含有量が、0.5原子%以上、25原子%以下であることが、画像流れの抑制効果をより顕著に得ることができ、好ましい。窒素原子の表面層中の含有量が、0.5原子%以上であれば、より安定して体積抵抗率の調整ができ、画像流れ抑制の効果、残留電位抑制効果が顕著に得られる。また、窒素原子の表面層中の含有原子量が25原子%以下であれば、同一条件で形成した際の表面層中の窒素原子の含有比率の変動を抑制することができ、安定した窒素原子の含有量の制御を行うことができる。
また、表面層中のアルミニウム原子、亜鉛原子、及び酸素原子を、式(1)を満たす範囲で含有することが好ましい。
0.7≦z/(1.50x+y)≦1.20 (1)
式中、xは表面層中に含有されるアルミニウム原子の原子%、yは表面層中に含有される亜鉛原子の原子%、zは表面層中に含有される酸素原子の原子%を示す。以下、式(1)中の、z/(1.50x+y)をCzと表記する。Czは、表面層に含有される総てのアルミニウム原子と亜鉛原子がそれぞれ酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)を形成したときこれらに含まれる化学量理論値の酸素原子に対する、実際に表面層中に含有される酸素原子の割合を示すものである。Czの値が0.7以上の場合には、画像流れを抑制する効果が顕著になる。これは、窒素原子を含有することと相俟って、導電性に寄与する亜鉛原子の元素比率が小さくなるため、画像流れが発生しない適切な範囲に体積抵抗率を調整されるためと考えられる。また、Czの値が1.2以下の場合には、特に顕著に耐久性が向上する。明確な理由は定かではないが、窒素原子の添加が効率的に行われ、膜が均質化すると共に緻密化することにより、より耐久性に優れた膜が形成されると考えられる。
式中、xは表面層中に含有されるアルミニウム原子の原子%、yは表面層中に含有される亜鉛原子の原子%、zは表面層中に含有される酸素原子の原子%を示す。以下、式(1)中の、z/(1.50x+y)をCzと表記する。Czは、表面層に含有される総てのアルミニウム原子と亜鉛原子がそれぞれ酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)を形成したときこれらに含まれる化学量理論値の酸素原子に対する、実際に表面層中に含有される酸素原子の割合を示すものである。Czの値が0.7以上の場合には、画像流れを抑制する効果が顕著になる。これは、窒素原子を含有することと相俟って、導電性に寄与する亜鉛原子の元素比率が小さくなるため、画像流れが発生しない適切な範囲に体積抵抗率を調整されるためと考えられる。また、Czの値が1.2以下の場合には、特に顕著に耐久性が向上する。明確な理由は定かではないが、窒素原子の添加が効率的に行われ、膜が均質化すると共に緻密化することにより、より耐久性に優れた膜が形成されると考えられる。
Czの値は、以下の測定値に基づいて得られるものを採用することができる。およそ12mm×12mmの大きさに切り出した感光体の表面層に対し、2mm×2mmの範囲を4kVで5分間スパッタして表面付着物を取り除く。アルミニウム原子と亜鉛原子と酸素原子の原子をESCA(Quantum 2000 Scaning ESCA:PHI社製)で測定する。照射条件は以下のとおりである。X線(Al−κα線:1486.6eV)を15kV−25W(ビームサイズ径約φ100μm)、電子中和銃のエミッション電流20μA、スパッタエッチングをアルゴンイオン(加速電圧4kV、2mm×2mm)で行う。そして、各元素の光電子測定は以下の条件で行う。Acquisition Lowerは、Al−2p:74eV、Zn:1022eV、O−1s:525eV、N−1s:392eVとし、Acquisition Widthを20eV、No. of Sweepsは5として光電子測定する。得られた値から組成比(すなわちx、y、z)を得、Czを算出する。
上記表面層の膜厚は、所望の電子写真特性及び充分な機械的強度が得られる範囲であればよく、具体的には、0.05μm以上を挙げることができ、0.1μm以上を好ましい範囲として挙げることができる。また、残留電位の発生の抑制、経済性等の点から、3μm以下を挙げることができ、好ましくは1μm以下である。
上記表面層の形成は、スパッタリング法を始めとする、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD、熱CVD法等の堆積膜形成法によって形成することができる。これらの堆積膜形成法は、製造条件、投資負荷、製造規模、要求される特性等によって選択することができるが、スパッタリング法が、金属酸化膜の形成が容易なことから最適である。スパッタリング法を使用する場合、ターゲットとしてアルミニウム原子と亜鉛原子とが占めるターゲット面の面積の比率を調整して用い、反応ガスとして酸素ガス、窒素含有ガスを使用することにより、得られる堆積膜の組成を簡単に調整することができる。また、ターゲットとして酸化アルミニウムと酸化亜鉛とを用い、窒素含有ガスと、必要に応じて酸素ガスを導入して所望の組成の堆積膜を形成することができる。更に、ターゲットとして窒化アルミニウムと窒化亜鉛とを用い、酸素ガス、必要に応じて窒素ガスを導入して所望の組成の堆積膜を形成することができる。ターゲットに供給する電力として高周波電力を用いる必要があるが、酸素ガスを導入しながら堆積膜の形成を行う場合には、放電が安定するため、好ましい。
[機能層]
本発明の電子写真用感光体においては、上記層の他、各種機能層を有していてもよい。その一つとして、光導電層と表面層間に設けられる光感度を向上させる機能を有する中間層、導電性基体と光導電層との間、又は、光導電層上に電荷注入阻止層を設けることもできる。電荷注入阻止層は、光導電層と同様の材質を主成分とすることが好ましい。電荷注入阻止層としては、具体的には、水素原子やハロゲン原子によって未結合手を終端したアモルファスシリコンをベースとし、第13族元素、第15族元素等のドーパントを含有させたものを挙げることができる。このような伝導性を有する層を光導電層の上層又は下層に設けることにより、光導電層へのキャリアの注入を阻止することができる。下部電荷注入阻止層には必要に応じて、炭素原子、窒素原子、及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有させることにより、光導電層の密着性を向上させることもできる。
本発明の電子写真用感光体においては、上記層の他、各種機能層を有していてもよい。その一つとして、光導電層と表面層間に設けられる光感度を向上させる機能を有する中間層、導電性基体と光導電層との間、又は、光導電層上に電荷注入阻止層を設けることもできる。電荷注入阻止層は、光導電層と同様の材質を主成分とすることが好ましい。電荷注入阻止層としては、具体的には、水素原子やハロゲン原子によって未結合手を終端したアモルファスシリコンをベースとし、第13族元素、第15族元素等のドーパントを含有させたものを挙げることができる。このような伝導性を有する層を光導電層の上層又は下層に設けることにより、光導電層へのキャリアの注入を阻止することができる。下部電荷注入阻止層には必要に応じて、炭素原子、窒素原子、及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有させることにより、光導電層の密着性を向上させることもできる。
[電子写真用感光体]
本発明の電子写真用感光体として、例えば、図1に示す構成のものを挙げることができる。図1に示す電気写真用感光体は、導電性基体1101上に、電荷注入阻止層1201、光導電層1202、表面層1301が順次形成されたものである。
本発明の電子写真用感光体として、例えば、図1に示す構成のものを挙げることができる。図1に示す電気写真用感光体は、導電性基体1101上に、電荷注入阻止層1201、光導電層1202、表面層1301が順次形成されたものである。
[高周波プラズマCVD装置]
本発明の電子写真用感光体の製造方法の一例を、使用する製造装置を挙げて、具体的に説明する。電荷注入阻止層、及び光導電層の製造方法の一例として、図3の概略構成図に示す高周波プラズマCVD装置を用いた方法を説明する。
本発明の電子写真用感光体の製造方法の一例を、使用する製造装置を挙げて、具体的に説明する。電荷注入阻止層、及び光導電層の製造方法の一例として、図3の概略構成図に示す高周波プラズマCVD装置を用いた方法を説明する。
図3に示す高周波プラズマCVD装置は、主として、反応容器3110を有する堆積装置3100、原料ガス供給装置3200、及び反応容器3110内を減圧する排気装置から構成されている。
堆積装置3100に設けられる反応容器3110内には円筒状の導電性基体3112を載置する受け台3123、導電性基体の加熱用ヒーター3113、及び原料ガス導入管3114が設置される。更に、高周波マッチングボックス3115を介して高周波電源3120に接続される電極3111が設けられる。
排気装置は排気バルブ3118を介して反応容器3110に接続され、反応容器内に所望の減圧状態を形成する真空ポンプ(図示せず)、反応容器内の気圧を測定する真空計3119、真空を解除するリークバルブ3117が設けられる。
原料ガス供給装置3200は、SiH4,H2,CH4,NO,B2H6,CF4等の原料ガスボンベ3221〜3225が設けられる。各原料ガスボンベは、それぞれバルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、マスフローコントローラー3211〜3215、流出バルブ3251〜3255、バルブ3260を介して、反応容器3110内の原料ガス導入管3114に接続される。原料ガス供給装置3200には圧力調整器3261〜3265が設けられ、原料ガスの圧力が調整できるようになっている。
この高周波プラズマCVD装置を用いた堆積膜の形成方法について説明する。まず、予め脱脂洗浄した導電性基体3112を反応容器3110内の受け台3123上に設置する。次に、排気装置を駆動し、反応容器3110内を排気する。真空計3119の表示を見ながら、反応容器3110内の圧力が、例えば、1Pa以下の所定の圧力になったところで、導電性基体の加熱用ヒーター3113に電力を供給し、導電性基体3112を、例えば、50〜350℃の所定の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置3200より、Ar、He等の不活性ガスを反応容器3110内に供給して、不活性ガス雰囲気中で基体の加熱を行うこともできる。
次に、ガス供給装置3200原料より堆積膜形成に用いる原料ガスを反応容器3110内に供給する。用いる原料ガスを収納したガスボンベのバルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255を開き、マスフローコントローラ3211〜3215に流量設定を行い、ガスボンベから反応容器内へ原料ガスを供給する。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、真空計3119の表示を見ながらメインバルブ3118を操作し、反応容器3110内の圧力が所望の圧力になるように調整する。所望の圧力が得られたところで、高周波電源から高周波電力を印加すると同時に、高周波マッチングボックス3115を操作して、電極3111に、例えば、1MHz〜30MHzのRF帯の高周波電力を供給し放電を生起させる。その後、速やかに高周波電力を所定の電力に調整し、反応容器内3110内に導入された原料ガスを分解し、導電性基体3112上に珪素原子等を堆積させ、珪素原子を主成分とする非晶質の堆積膜を形成させる。このとき、均一の堆積膜を形成するため、受け台を所定の速度で回転させることも有効である。所望の膜厚が形成された後、高周波電力の供給を停止し、ガス供給装置のバルブを閉じ、原料ガスの供給を停止し、メインバルブ3118を開き、反応容器3110内を1Pa以下の圧力まで排気し、堆積膜の形成を終了する。
多層構造の光導電層の場合や、電荷注入阻止層を連続して形成する場合は、反応容器に供給する原料ガス種及び供給量をバルブ操作を行い調整して上記操作を反復すればよい。
総ての堆積膜形成が終わった後、メインバルブ3118を閉じ、リークバルブ3117を開き、不活性ガスを導入して反応容器3110内を大気圧に戻した後、光導電層が形成された導電性基体3112を取り出す。
[スパッタリング装置]
次に、表面層の製造方法の一例として、図2の概略構成図に示すスパッタリング装置を用いた方法を説明する。
次に、表面層の製造方法の一例として、図2の概略構成図に示すスパッタリング装置を用いた方法を説明する。
図2に示すスパッタリング装置には、堆積膜の形成を行う反応容器2101が設けられ、反応容器は排気路2301を介して排気装置2201に接続され、内部に所望の真空度を形成できるようになっている。反応容器2101にはその内部の圧力を測定する圧力計2102が設けられる。
反応容器2101内には、光導電層が形成された導電性基体2100を支持する基体ホルダー2105が配置され、基体ホルダー2105は回転軸2107を介してモーター2108に接続され、モーターの回転が基体ホルダーに伝達されるようになっている。また、導電性基体2100は、基体ホルダー2105、回転軸2107、接地部材2109及び反応容器2101を介して接地されている。導電性基体2100の上部は、その内側に堆積膜が形成されるのを防ぐため、キャップ2110で被覆されている。基体ホルダー2105内にはヒーター又は冷却水の循環パイブ等を設け、導電性基体2100の温度調整を行うようにしてもよい。
反応容器2101には、スパッタリングガス及び反応ガスを供給するガス供給装置2400が接続されている。ガス供給装置2400には、スパッタリングガスボンベ2411、2421、反応ガスボンベ2431、窒素原子導入ガスボンベ2441が備えられる。
スパッタリングガスボンベ2411は、反応容器内に開口2111を有し、バルブ2511〜2514、マスフローコントローラー2413を備える供給管2304により反応容器2101に接続され、スパッタリングガスを反応容器内に供給可能となっている。供給管2304には圧力調整器2412が設けられ、供給するスパッタリングガスの圧力が調整できるようになっている。スパッタリングガスボンベ2421、反応ガスボンベ2431、窒素原子導入ガスボンベ2441もスパッタリングガスボンベ2411と同様にそれぞれ供給管2305、2306によって反応容器に接続され、収納するガスを反応容器内へ供給可能になっている。スパッタリングガスボンベに収納されるガスとしては、ArやHe、Xe等の不活性ガス、反応ガスボンベに収納されるガスとしては、酸素ガス等、窒素原子導入ガスボンベに収納されるガスとしては、N2、NO、NO2等である。スパッタリングガスと反応ガス、窒素原子導入ガスを、同一のノズルから反応容器内へ供給する構成とすることもできる。
反応容器内の導電性基体2100と対向する位置には、ターゲットユニット2600、2700が配置されている。これらのターゲットユニットはそれぞれ同じ構成とすることができ、以下、ターゲットユニット2600について説明する。ターゲットユニット2600には、主として、スパッタリング材料であるターゲット2611、ターゲットを保持するターゲットホルダー2621、ターゲット2611を反応容器2101から絶縁するための絶縁物2641、磁石2631等が設けられる。ターゲット2611は、導電性基体2100の長さや反応容器2101の大きさに合わせて最適な大きさとし、スパッタリング面2612の侵食やそれに伴う熱変形等によって所望の膜厚分布や膜特性が得られなくなるまで繰り返し使用することができる。また、ターゲット2611の形状としては、平板状、筒状等であってもよく、基体ホルダー2105側をスパッタリング面2612とすることもできる。ターゲット材料としては、酸化亜鉛と酸化アルミニウムとの組合せ(この場合、反応ガスとして窒素原子含有ガスを用いる。)、また、窒化アルミニウムと窒化亜鉛との組合せ(この場合、反応ガスとして酸素ガスを用いる。)等を用いる。さらに、ターゲット材料として酸窒化アルミニウムと酸窒化亜鉛等を用いることもできる。
ターゲット2611のスパッタリング面2612の反対側には磁石2631が設けられ、スパッタリング面2612に平行な磁界を形成することができる。磁界の形成によってスパッタリング面2612近傍に高密度なプラズマを生成させ、ターゲットからスパッタリングされる粒子を増加させ、堆積膜の形成速度を速めることができる。磁界の強度は堆積膜の形成速度等の条件に合わせて調節する。ターゲット2611がスパッタリングによる熱を受けて変形したり、磁石2631の磁性が失われるのを抑制するため、ターゲット2611を冷却する冷媒媒体の循環系2651、2652が設けられる。ターゲット2611や磁石2631は、絶縁物2641によって反応容器2101から絶縁されてターゲットホルダー2621に保持されている。
ターゲット2611に電源を供給する電源2662が電源ケーブル2661を介して接続され、カソードとしてのターゲット2611と、アノードとしての反応容器2101間に放電を発生させ、スパッタリングガスのプラズマを生起させることができる。ターゲット材料が導電性でない場合は、電源2662として高周波電源を用いることができる。
また、ターゲットホルダー2621は導電性基体2100の母線方向に沿って移動可能な構成としてもよい。また、ターゲット2611の基体に対する面の角度を変更可能な構成を採ることもできる。これによって母線方向の膜厚むらを低減させ、また、亜鉛原子とアルミニウム原子の混合比を調整し成膜速度を制御することが可能となる。
ターゲット2611の移動手段としては、モーターのシャフトに接続される移動子や、エアシリンダ等を挙げることができる。反応ガスの濃度分布によって膜特性や膜厚にむらが生じる可能性がある場合は、スパッタリングガス導入ノズル2111の方向を変位させる機構やターゲット2611からの距離を移動させる機構を設け、膜厚のむらを相殺するようにこれらを移動させてもよい。
また、上記移動手段はターゲット2611に設けたものを示したが、導電性基体とターゲットが相対的に移動するものであればよく、ターゲットを固定し、導電性基体に移動手段を設けたり、又は、双方に移動手段を設けたものであってもよい。
また、成膜条件によっては、導電性基体2100の周方向や母線方向に添ってスパッタされた粒子の到達量にむらが生じる場合、スパッタされた粒子が堆積する領域を限定するシールド2120を設けることができる。シールドとしては、例えば、導電性基体2100のターゲット2611、2711が設けられる側と反対側の導電性基体を被覆するものを挙げることができる。
図4に、シールド2120の一例を示す。シールド2120は、導電性基体2100の外周を被覆するように設けられ、ターゲット2611、2711と対向する領域に開口を有する。導電性基体2100のターゲット2611、2711の対向する側と反対側には、堆積膜が形成されず、モーター2108の回転に伴い導電性基体2100を回転させることにより、導電性基体の周方向に亘って均一な膜厚の堆積膜を形成することができる。
反応容器2101の上方には、導電性基体2100を反応容器に搬入出する際、反応容器内の真空度を維持可能とするロードロック室2103が設けられる。ロードロック室2103は搬送路2302、ゲートバルブ2505を介して反応容器2101に接続される。ロードロック室2103には、ロードロック室2103内を真空排気するための排気装置2202が排気路2303を介して接続されている。また、ロードロック室2103には圧力計2104が設けられると共に、導電性基体2100を基体ホルダー2105に支持した状態で反応容器2101とロードロック室2103の間を搬入出するための昇降機(不図示)が取り付けられている。導電性基体2100はロードロック室2103に設けられた扉2106から搬入出される。
図2に示すスパッタリング装置は、導電性基体2100を鉛直に配置したものであるが、導電性基体2100を水平に配置し、ターゲット2611、2711を導電性基体と相対的に水平方向に移動可能な構成を有するものであってもよい。
このようなスパッタリング装置を用いた表面層の形成手順を具体的に説明する。
まず、反応容器2101内に形成する堆積膜に必要なターゲット2611、2711をセットした後、バルブ2502を開いて排気装置により反応容器2101内部を排気しておく。同時に光導電層を形成した導電性基体2100を、扉2106よりロードロック室2103内の基体ホルダー2105にセットする。次に扉2106を閉じ、バルブ2501を開いてロードロック室2103内部を排気する。
反応容器2101、ロードロック室2103内部が共に充分な真空度、例えば0.1Pa以下になった時点で、ゲートバルブ2505を開き、移送ハンド等(図示せず)で導電性基体2100をセットした基体ホルダー2105を反応容器2101内に設置する。
その後、移送ハンド等(図示せず)をロードロック室2103内に戻し、ゲートバルブ2505を閉じる。
次にスパッタガス及び反応性ガス、窒素原子導入ガスを、それぞれバルブ2513、2523、2533、2543を開いて、供給手段2400より反応容器2101内に供給する。真空計2102の測定に基づき、反応容器2101内の圧力が所定の圧力となったところで電源2662、2772より電力を印加してグロー放電を発生させる。
この際、回転軸2107をモーター2108により回転させ、導電性基体2100の周方向に均一に堆積膜を得る。 所定の厚さの堆積膜が形成されたところで、電源2662、2772よりの電力の供給を止め、堆積膜の形成を終える。
同時にバルブ2513、2523、2533、2543を閉じ、反応性ガス、スパッタガス、窒素原子供給ガスの供給を終え、一旦、反応容器2101内を例えば0.1Pa以下の圧力まで排気する。所定の圧力になった後、ゲートバルブ2505を開いて基体2100をロードロック室2103に引き上げ、ゲートバルブ2505を閉じる。
ゲートバルブ2505が閉じたことを確認した後、バルブ2507を開き、ロードロック室2103内を大気圧とし、扉2106を開いて、導電性基体2100を取り出し、電子写真用感光体の形成を終える。
以下、図1に示す電子写真用感光体を作製した。
導電性基体として外径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面を鏡面加工したシリンダーを用い、電荷注入阻止層、光導電層を図3に示すプラズマCVD装置を用いて、表1に示す条件で、順次形成した。電源は、周波数13.56MHzを用いた。
表面層は、図2に示すスパッタリング装置を用いて、少なくともアルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、窒素原子を含有し、膜厚1μmに形成した。
ターゲットには母線方向の長さが120mm、幅が80mmの平板状の酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛を用いた。また、導電性基体の中心軸と酸化アルミニウムターゲットの中心からスパッタリング面の距離が80mm、酸化亜鉛ターゲットの中心からスパッタリング面の距離が80mmとなるようにした。アルミニウム原子と亜鉛原子の原子比率を調節するために酸化アルミニウムターゲットと酸化亜鉛ターゲットのそれぞれに印加する電力を調整した。実施例7及び8では原子比率調整のために酸化アルミニウムターゲットをアルミニウムターゲットに交換し、酸化亜鉛ターゲットを亜鉛ターゲットに交換して表面層を作製した。電源には、周波数が13.56MHzのRF電源を用いた。
[実施例1、比較例1]
表面層を表2に示す条件で作製した。
表面層を表2に示す条件で作製した。
上記の手順により実施例1及び比較例1において電子写真用感光体の作製は各7回ずつ行った。作製した電子写真用感光体から任意の5本を選択し、これら5本の電子写真用感光体について表面層中の原子比率を測定し、平均値を原子比率とした。測定は、ESCA(測定条件:Quantum 2000 Scaning ESCA:PHI社製)により測定した。測定は、作製した電子写真用感光体の母線方向中央部から12mm×12mmの大きのサンプルを切り出し、そのサンプルをESCA内にセットした後、サンプル上の2mm×2mmの範囲を4kVで5分間スパッタして表面付着物の影響を取り除いた上で行った。
上記測定結果から、Czの値を算出した。更に、窒素原子の元素比率については、5回の測定により較差(最大値と最小値の差)をバラツキΔANとして求めた。結果を表3に
示した。
示した。
得られた電子写真用感光体のうち、上記測定に用いなかった2本の中から任意に1本を選択し、電子写真装置に搭載し、下記の要領にしたがって帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量の評価を行った。結果を表3に示す。使用した電子写真装置はデジタル複写機(iR6000:キヤノン(株)製)の画像露光光源を発振波長405nmを主として出力する半導体レーザーに改造した改造機(以下、改造機という。)である。
[帯電能]
改造機の画像露光光(レーザー)を遮断して、主帯電器に+6kVの高電圧を印加してコロナ帯電を行う。このとき感光体上に発生する表面電位(即ち、暗部帯電電位)を現像器に相当する位置に表面電位計(TREK社製 Model334)のセンサを設置して測定し、その値を感光体の帯電能とした。
改造機の画像露光光(レーザー)を遮断して、主帯電器に+6kVの高電圧を印加してコロナ帯電を行う。このとき感光体上に発生する表面電位(即ち、暗部帯電電位)を現像器に相当する位置に表面電位計(TREK社製 Model334)のセンサを設置して測定し、その値を感光体の帯電能とした。
[画像流れ]
気温30℃、湿度80%RHの環境下で、改造機の原稿台に全面6ポイントひらがな文字チャート(文字チャート)を置いて電子写真画像を形成して画像流れについて評価した。画像流れの評価結果は、電子写真画像上の印字面積の総計を求め、比較例1の結果を1.00として相対比較を行った。
気温30℃、湿度80%RHの環境下で、改造機の原稿台に全面6ポイントひらがな文字チャート(文字チャート)を置いて電子写真画像を形成して画像流れについて評価した。画像流れの評価結果は、電子写真画像上の印字面積の総計を求め、比較例1の結果を1.00として相対比較を行った。
[光感度]
改造機の現像器位置で感光体の暗部帯電電位が450Vとなるように帯電器に印加する帯電電流を調整する。この帯電電流を維持したまま、感光体に画像露光光(レーザー)を照射し、現像器位置で感光体の明部表面電位が50Vとなるように画像露光光の強度を調整する。このときの画像露光光強度を感光体の光感度とした。
改造機の現像器位置で感光体の暗部帯電電位が450Vとなるように帯電器に印加する帯電電流を調整する。この帯電電流を維持したまま、感光体に画像露光光(レーザー)を照射し、現像器位置で感光体の明部表面電位が50Vとなるように画像露光光の強度を調整する。このときの画像露光光強度を感光体の光感度とした。
[残留電位]
光感度の測定と同様に、現像器位置で感光体の暗部表面電位が450Vとなるように調整した後、強度1.2μJ/cm2の画像露光光を感光体に照射して明部表面電位を測定し、この電位を感光体の残留電位とした。
光感度の測定と同様に、現像器位置で感光体の暗部表面電位が450Vとなるように調整した後、強度1.2μJ/cm2の画像露光光を感光体に照射して明部表面電位を測定し、この電位を感光体の残留電位とした。
[ゴースト]
光感度の測定と同様に、現像器位置で感光体の暗部帯電電位を450Vになるように設定した後、反射濃度0.7の中間調原稿の端部に反射濃度1.3、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に設置しコピー画像を形成する。ここで得られた中間調画像上に認められる直径5mmの黒丸が形成するゴースト部分と、中間調部分の反射濃度の差を計測した。反射濃度の測定は反射濃度計(504分光濃度計:X−Rite Inc.製)を用いて計測した。ゴーストは数値が小さいものほど優れている。
光感度の測定と同様に、現像器位置で感光体の暗部帯電電位を450Vになるように設定した後、反射濃度0.7の中間調原稿の端部に反射濃度1.3、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に設置しコピー画像を形成する。ここで得られた中間調画像上に認められる直径5mmの黒丸が形成するゴースト部分と、中間調部分の反射濃度の差を計測した。反射濃度の測定は反射濃度計(504分光濃度計:X−Rite Inc.製)を用いて計測した。ゴーストは数値が小さいものほど優れている。
[磨耗量]
約2mmのスポット径で感光体表面に垂直に光を照射し、分光計(大塚電子製 MCPD−2000)を用いて、反射光の分光測定を行う。得られた反射光の干渉波形をもとに表面層の膜厚を算出する。この際、光導電層の屈性率を3.30、表面層の屈折率を1.90として計算した。感光体上の3点(それぞれ感光体端部から50mm位置と中央位置)について測定し、平均値を評価の対象とした。膜厚の測定を耐久試験前と、50万枚画像形成後、更に、100万枚画像形成後の3回行い、耐久試験前との差分で磨耗量を評価した。
約2mmのスポット径で感光体表面に垂直に光を照射し、分光計(大塚電子製 MCPD−2000)を用いて、反射光の分光測定を行う。得られた反射光の干渉波形をもとに表面層の膜厚を算出する。この際、光導電層の屈性率を3.30、表面層の屈折率を1.90として計算した。感光体上の3点(それぞれ感光体端部から50mm位置と中央位置)について測定し、平均値を評価の対象とした。膜厚の測定を耐久試験前と、50万枚画像形成後、更に、100万枚画像形成後の3回行い、耐久試験前との差分で磨耗量を評価した。
表中、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量(50万枚)、磨耗量(100万枚)の値は比較例1におけるそれぞれの値を1.00とした相対値で示す。帯電能は、数値が大きいほど優れていることを示し、特に0.90以上であれば良好な特性の感光体といえる。また、画像流れについては、数値が小さい程良好であり、特に0.9以下であれば画像流れが認識できない良好な画像が得られる。光感度は、数値が小さいほど優れていることを示し、特に1.10以下であれば幅広いプロセス条件に適応可能であって良好であるといえる。残留電位は、数値が小さいほど優れていることを示し、特に3.00以下であれば幅広いプロセス条件に適応可能であって良好であるといえる。ゴーストは、数値が小さいほど優れていることを示し、2.50以下であれば、実用機による画像の出力において色ムラとしてほとんど認識されない良好な特性とあるといえる。
実施例1及び比較例1の結果から、窒素原子を導入することにより光感度、残留電位を良好な範囲に維持しながら、帯電能やゴースト、画像流れを改善することができ、更には磨耗量が減少して耐久性が向上することが分かる。
[実施例2〜6]
表面層の形成を、表4に示す条件とした他は実施例1と同様に、感光体を作製し、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量について評価を行った。結果を表5に示す。
表面層の形成を、表4に示す条件とした他は実施例1と同様に、感光体を作製し、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量について評価を行った。結果を表5に示す。
実施例2〜実施例6の結果から、窒素原子の元素比率が25原子%までは元素比率のバラツキなく窒素原子の導入が可能で、安定した膜生成ができることが分かった。また、実施例1と実施例2の結果から、窒素原子の元素比率が0.5原子%以上で、顕著に画像流れ抑制効果と耐久性向上の効果が得られることが分かった。
[実施例7、8]
表面層の形成を、ターゲットとしてアルミニウムターゲットと亜鉛ターゲットとを用い、表6に示す条件とした他は実施例1と同様に、感光体を作製し、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量について評価を行った。結果を表7に示す。
表面層の形成を、ターゲットとしてアルミニウムターゲットと亜鉛ターゲットとを用い、表6に示す条件とした他は実施例1と同様に、感光体を作製し、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量について評価を行った。結果を表7に示す。
[実施例9、10]
表面層の形成を、表8に示す条件とした他は実施例1と同様に、感光体を作製し、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量について評価を行った。結果を表9に示す。
表面層の形成を、表8に示す条件とした他は実施例1と同様に、感光体を作製し、帯電能、画像流れ、光感度、残留電位、ゴースト、磨耗量について評価を行った。結果を表9に示す。
実施例7〜10の結果から、Czが0.70以上では画像流れ抑制の効果がより顕著に得られることが分かった。また実施例9及び実施例10の結果から、Czが1.20の実施例9の方がCzが1.23の実施例10に比べ耐久性の向上効果がより顕著に得られることが明らかとなった。このことから、Czを1.20以下とすることでより顕著な耐久性向上効果が得られることが解った。これらのことから、亜鉛・アルミニウム・酸素の元素比率はCzが0.7以上、1.2以下の範囲とすることで画像流れ抑制効果及び耐久性の向上効果がより顕著に得られることが分かった。
以上説明したように電子写真用感光体の表面層において、少なくともアルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、窒素原子を含有することにより、表面層の体積抵抗率を精度よく制御することができる。そして、400nm付近の短波長側でも感光特性を損なうことなく画像流れが抑制された耐久性に優れた電子写真用感光体を提供することができる。
1101、2100、3112 導電性基体
1202 光導電層
1301 表面層
1202 光導電層
1301 表面層
Claims (3)
- 導電性基体上に順次形成された光導電層と表面層とを有する電子写真用感光体において、光導電層は珪素原子を主成分として含有する非晶質層であり、表面層は、アルミニウム原子、亜鉛原子、酸素原子、及び窒素原子を含有することを特徴とする電子写真用感光体。
- 表面層が窒素原子を0.5原子%以上、25原子%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1記載の電子写真用感光体。
- 表面層が、アルミニウム原子、亜鉛原子、及び酸素原子を、式(1)を満たす範囲で含有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用感光体。
0.7≦z/(1.50x+y)≦1.20 (1)
(式中、xは表面層中に含有されるアルミニウム原子の原子%、yは表面層中に含有される亜鉛原子の原子%、zは表面層中に含有される酸素原子の原子%を示す。)
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