JP2010031387A - 印刷用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量が少ない中性抄造においても、優れたサイズ性を付与できるとともに、サイズプレス吸液量が増加することなく、摩擦係数の低下抑制に優れた印刷用紙を提供すること。
【解決手段】本発明の印刷用紙は、少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体と填料との混合物からなる製紙用添加剤、およびアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の印刷用紙は、少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体と填料との混合物からなる製紙用添加剤、およびアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、サイズ性と摩擦係数の低下抑制に優れた印刷用紙に関する。
印刷用紙の品質に対する要求は年々高度になってきているが、中でも印刷が反対面から透けて見える現象、いわゆる「裏抜け」を防止する要求レベルが高くなっている。裏抜けを少なくするためには、紙の不透明度を上げることが最も効果的であることが知られている。紙の不透明度を上げる方法としては、比散乱係数が高く不透明度の上昇効果が大きい填料を配合し、紙中灰分を上昇させることが有効である。特に炭酸カルシウムは、比散乱係数が高く、紙料と比較して安価である点が有利であることから、中性抄造への移行が進んでいる現在、紙中における炭酸カルシウムの配合量は徐々に増加する傾向にある。
しかし、炭酸カルシウムなど紙中填料の増加は繊維間結合を形成できる繊維量が減少することから、紙の強度を著しく低下させる。また近年においては生産性の向上を意図して、抄紙機の高速化・広幅化が進んでいるが、抄紙機が高速化するほど、原料がワイヤー上に歩留まらず、白水系に流出する、いわゆる歩留りの低下が起こる。さらに、ネットワークを作る繊維量が減少することから、ワイヤー上の歩留まりはいっそう低下する。また、填料、特に炭酸カルシウムを多量に用いる最近の中性抄造方法では、内添サイズ剤である中性ロジンサイズ剤の効果が著しく低下することが知られており、必要なサイズ性を確保するために、大量の中性ロジンの添加が必要となり、抄紙系の汚れや薬品コストの上昇が問題になる。また、中性ロジンサイズ剤はサイズ性の発現のために硫酸アルミニウムの添加が必要となるが、硫酸アルミニウムを増配すると抄紙系のpHが低下して炭酸カルシウムが溶解し、抄紙機で水酸化アルミニウムや硫酸カルシウム(石膏)が析出して、欠陥や断紙の要因となる。
また、紙中灰分が高くなると、中性ロジンサイズ剤の効果が低減するため、高灰分条件に優れる内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤(以下、「AKDサイズ剤」という。)を用いることがある。しかし、AKDサイズ剤はサイズ性の立ち上がりが遅いため、サイズプレスでの吸液量が増加し、アフタードライヤーの乾燥負荷が増大することから、抄速が低下して摩擦係数が著しく低下する。摩擦係数が低下すると、用紙断裁時に用紙が滑りやすくなって紙が揃わず断裁不良品が多くなり、PPC用紙ではコピー機での搬送性トラブル(重送や紙詰まり)が起きる。さらに、AKDサイズ剤の添加量が多いときには抄紙機の汚れが問題になる。また、ASA(アルケニルコハク酸無水物)サイズ剤を用いた場合、添加量が多いと中性ロジン、AKDサイズ剤以上に抄紙機が汚れやすく、欠陥や断紙が頻発する問題が起きる。
そこで、填料自体の歩留まり、あるいは紙力などを改善することを目指した技術が提案されている。例えば、次の通りである。
(1)特許文献1
カチオン性ポリマー又は両性ポリマーで被覆・吸着処理したカチオン性炭酸カルシウムをパルプスラリーに配合して、填料の歩留りや紙力低下を抑制することが記載されている(請求項1、段落[0007])。また、実施例1として、ジメチルアミノエチルアクリレートとアクリルアミドとの水溶性ポリマーで軽質炭酸カルシウムを被覆処理して、パルプスラリーに添加することが記載されている(段落〔0006〕参照)。
(2)特許文献2
填料をデンプンと有機高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド(PAM))で処理することが記載されている(特許請求の範囲参照)。
(3)特許文献3
AKD、ASAなどのセルロース反応性サイズ剤をカチオン澱粉などの分散剤で水中に分散させた液を、炭酸カルシウムなどの填料と接触させた充填剤の製造方法によれば、高充填であってもサイズ性の低下を抑制できることが記載されている(請求項1、段落〔0007〕及び段落〔0008〕参照)。
(4)特許文献4
カチオン変性AKDで処理された填料(好ましくはPCC(沈降炭酸カルシウム)を用いれば、サイズ剤の必要使用量を減少できることが記載されている(段落〔0009〕参照)。
(5)特許文献5
金属イオン(アルミニウム、バリウム、リチウム、マグネシウムなどのイオンの共存下で、C12〜C22水溶性脂肪酸塩(好ましくはステアリン酸ナトリウムにより被覆した填料(炭酸カルシウム、白土、酸化チタンなどを用いれば、内添サイズ剤の吸着を抑制できることが記載されている(特許請求の範囲参照)。
(1)特許文献1
カチオン性ポリマー又は両性ポリマーで被覆・吸着処理したカチオン性炭酸カルシウムをパルプスラリーに配合して、填料の歩留りや紙力低下を抑制することが記載されている(請求項1、段落[0007])。また、実施例1として、ジメチルアミノエチルアクリレートとアクリルアミドとの水溶性ポリマーで軽質炭酸カルシウムを被覆処理して、パルプスラリーに添加することが記載されている(段落〔0006〕参照)。
(2)特許文献2
填料をデンプンと有機高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド(PAM))で処理することが記載されている(特許請求の範囲参照)。
(3)特許文献3
AKD、ASAなどのセルロース反応性サイズ剤をカチオン澱粉などの分散剤で水中に分散させた液を、炭酸カルシウムなどの填料と接触させた充填剤の製造方法によれば、高充填であってもサイズ性の低下を抑制できることが記載されている(請求項1、段落〔0007〕及び段落〔0008〕参照)。
(4)特許文献4
カチオン変性AKDで処理された填料(好ましくはPCC(沈降炭酸カルシウム)を用いれば、サイズ剤の必要使用量を減少できることが記載されている(段落〔0009〕参照)。
(5)特許文献5
金属イオン(アルミニウム、バリウム、リチウム、マグネシウムなどのイオンの共存下で、C12〜C22水溶性脂肪酸塩(好ましくはステアリン酸ナトリウムにより被覆した填料(炭酸カルシウム、白土、酸化チタンなどを用いれば、内添サイズ剤の吸着を抑制できることが記載されている(特許請求の範囲参照)。
また、内添サイズ剤としてAKDとカチオン化変性脂肪酸サイズ系を添加することで、抄紙系内に汚れを発生させることなく、灰分が15%以上の印刷用紙でもサイズ度が得られる技術が提案されている(特許文献6)。さらに、AKDを含むアニオン性もしくはカチオン性エマルジョンなど合成サイズ剤と硫酸アルミニウムなどの金属塩を添加することでサイズ度が向上する技術が提案されている(特許文献7)。また、インクジェット記録シートにおいて、填料としてカチオン性水溶性高分子により表面処理した炭酸カルシウムを含有し、内添サイズ剤として中性抄紙用変性ロジンを使用して抄造した原紙上に、インク受理層塗液を塗工することが提案されている(特許文献8)。
上記特許文献1は、カチオン性もしくは両性ポリアクリルアミドを用いて前処理することで填料自体の歩留りや紙力を確保するものであり、親水性ポリマーであるため填料および紙へ疎水性を付与する能力がなく、紙のサイズ性低下を抑制する効果は低い。上記特許文献2も、澱粉とカチオン性の有機高分子電解質を併用した前処理法であり、上記特許文献1と同様の効果を付与しようとするものである。
上記特許文献3〜4は、AKDやASAなどの反応性サイズ剤、あるいはカチオン変性AKDで填料を前処理することで疎水性向上を図ろうとするものであるが、使用量が多い場合や処理温度が比較的高い場合には、紙の滑り問題や製紙工程内の汚れ問題を誘発する恐れが大きい。
また、上記特許文献5は、脂肪酸塩により填料を被覆するものであり、比表面積の大きい填料に対する内添サイズ剤の吸着を抑制する手法として効果的であるが、過剰の金属イオンの添加は製紙工程内の状態を変化させ、薬品の効果に影響を与える恐れがある。
さらには、上記技術において填料を前処理するための処理剤の分子量は比較的低い範囲にあるため、製紙工程内の電気伝導度が高く、アニオントラッシュ量が多いと、填料およびパルプ繊維と処理剤自体との相互作用を阻害し、性能を低下させる恐れもある。
上記特許文献3〜4は、AKDやASAなどの反応性サイズ剤、あるいはカチオン変性AKDで填料を前処理することで疎水性向上を図ろうとするものであるが、使用量が多い場合や処理温度が比較的高い場合には、紙の滑り問題や製紙工程内の汚れ問題を誘発する恐れが大きい。
また、上記特許文献5は、脂肪酸塩により填料を被覆するものであり、比表面積の大きい填料に対する内添サイズ剤の吸着を抑制する手法として効果的であるが、過剰の金属イオンの添加は製紙工程内の状態を変化させ、薬品の効果に影響を与える恐れがある。
さらには、上記技術において填料を前処理するための処理剤の分子量は比較的低い範囲にあるため、製紙工程内の電気伝導度が高く、アニオントラッシュ量が多いと、填料およびパルプ繊維と処理剤自体との相互作用を阻害し、性能を低下させる恐れもある。
特許文献6では、サイズ発現の主体にはAKDを使用し、AKDのパルプへの定着性を上げることを重点に、定着剤としてカチオン化変性脂肪酸系サイズ剤を用いることが記載されているが、AKDが主体であるためか適正な範囲の摩擦係数を得ることは難しかった。特許文献7では、硫酸アルミニウムなどの金属塩をAKDなどの合成サイズ剤定着後に用いることで、サイズ効果が向上することが記載されているが、摩擦係数の低下や抄紙機の汚れなど、AKDサイズ剤が抱える問題を改善することはできなかった。また、特許文献8では、サイズ発現の主体が変性ロジンであり、高いサイズ性を得ることは難しい。
そこで、本発明の主たる課題は、填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量が少ない中性抄造においても、優れたサイズ性を付与できるとともに、サイズプレスでの吸液量が増加することなく、摩擦係数の低下抑制に優れた印刷用紙を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成からなる。
(1)請求項1に係る発明の印刷用紙は、原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤とサイズ剤を含有する印刷用紙であって、前記共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、前記サイズ剤がアルキルケテンダイマー系サイズ剤であることを特徴とする。
(2)請求項2に係る発明の印刷用紙は、前記共重合体がカチオン性共重合体、または、アニオン性モノマー(C)を含む両性共重合体であることを特徴とする。
(3)請求項3に係る発明の印刷用紙は、前記両性共重合体の前記カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対する前記アニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が0.1〜90%であるモノマー成分を重合して得られることを特徴とする。
(4)請求項4に係る発明の印刷用紙は、前記共重合体1重量部に対して前記アルキルケテンダイマー系サイズ剤を0.1〜3重量部含有することを特徴とする。
(5)請求項5に係る発明は、前記填料が炭酸カルシウムであることを特徴とする。
(1)請求項1に係る発明の印刷用紙は、原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤とサイズ剤を含有する印刷用紙であって、前記共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、前記サイズ剤がアルキルケテンダイマー系サイズ剤であることを特徴とする。
(2)請求項2に係る発明の印刷用紙は、前記共重合体がカチオン性共重合体、または、アニオン性モノマー(C)を含む両性共重合体であることを特徴とする。
(3)請求項3に係る発明の印刷用紙は、前記両性共重合体の前記カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対する前記アニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が0.1〜90%であるモノマー成分を重合して得られることを特徴とする。
(4)請求項4に係る発明の印刷用紙は、前記共重合体1重量部に対して前記アルキルケテンダイマー系サイズ剤を0.1〜3重量部含有することを特徴とする。
(5)請求項5に係る発明は、前記填料が炭酸カルシウムであることを特徴とする。
本発明は、原紙に疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤、およびAKDサイズ剤を含有することで、次の効果が奏される。
(1)填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量の少ない中性抄造においても、効率的に強サイズ性を付与することできるため、硫酸バンド添加量の増加による水酸化アルミニウムや硫酸カルシウム(石膏)の析出を回避できる。
(2)少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体と填料との混合物からなる製紙用添加剤とAKDサイズ剤とを併用することにより、AKDサイズ剤の添加量を少なくできるため、サイズプレス吸液量が増加することなく、摩擦係数の低下抑制に優れた印刷用紙を得ることができる。また、アフタードライヤーの乾燥負荷が低減され、抄速の低下を防ぐことができるため、操業性も向上する。
(1)填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量の少ない中性抄造においても、効率的に強サイズ性を付与することできるため、硫酸バンド添加量の増加による水酸化アルミニウムや硫酸カルシウム(石膏)の析出を回避できる。
(2)少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体と填料との混合物からなる製紙用添加剤とAKDサイズ剤とを併用することにより、AKDサイズ剤の添加量を少なくできるため、サイズプレス吸液量が増加することなく、摩擦係数の低下抑制に優れた印刷用紙を得ることができる。また、アフタードライヤーの乾燥負荷が低減され、抄速の低下を防ぐことができるため、操業性も向上する。
1.製紙用添加剤
本発明で用いられる第一の製紙用添加剤は、4級化率が特定以上のカチオン性共重合体で前処理した填料を有効成分とするものであり、第二の製紙用添加剤は、4級化率が特定以上で、アニオン当量とカチオン当量の比率が所定範囲にある両性共重合体で前処理した填料を有効成分とするものであり、本発明の印刷用紙は、これらの製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して湿式抄造したものである。
疎水性基含有モノマーを必須成分とするカチオン性または両性共重合体を填料と混合(前処理)し、填料に適度の撥水性を付与すると、撥水性の付与された填料がアニオン性を帯びたパルプ繊維に効率良く吸着して、紙に効果的なサイズ性が付与される。そして、この填料によれば、内添サイズ剤を用いないか、減量しつつ、充分なサイズ性を確保することができるので、抄紙機の汚れが発生しにくく、しかも、内添サイズ剤より比較的少量で高いサイズ度が得られる。
本発明で用いられる第一の製紙用添加剤は、4級化率が特定以上のカチオン性共重合体で前処理した填料を有効成分とするものであり、第二の製紙用添加剤は、4級化率が特定以上で、アニオン当量とカチオン当量の比率が所定範囲にある両性共重合体で前処理した填料を有効成分とするものであり、本発明の印刷用紙は、これらの製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して湿式抄造したものである。
疎水性基含有モノマーを必須成分とするカチオン性または両性共重合体を填料と混合(前処理)し、填料に適度の撥水性を付与すると、撥水性の付与された填料がアニオン性を帯びたパルプ繊維に効率良く吸着して、紙に効果的なサイズ性が付与される。そして、この填料によれば、内添サイズ剤を用いないか、減量しつつ、充分なサイズ性を確保することができるので、抄紙機の汚れが発生しにくく、しかも、内添サイズ剤より比較的少量で高いサイズ度が得られる。
<第一の製紙用添加剤の共重合体>
本発明で用いられる第一の製紙用添加剤において、前処理に使用するカチオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を必須とするモノマー成分を重合し、4級化率を40モル%以上としたものである。
上記疎水性モノマー(A)は、スチレンまたはその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルなどであり、特に、スチレンまたはその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸のC1〜C12アルキルエステルが好ましい。
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味するものであり、同様に、「(メタ)アクリロ」は「アクリロ」または「メタクリロ」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
本発明で用いられる第一の製紙用添加剤において、前処理に使用するカチオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を必須とするモノマー成分を重合し、4級化率を40モル%以上としたものである。
上記疎水性モノマー(A)は、スチレンまたはその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルなどであり、特に、スチレンまたはその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸のC1〜C12アルキルエステルが好ましい。
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味するものであり、同様に、「(メタ)アクリロ」は「アクリロ」または「メタクリロ」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
上記スチレンまたはその誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸のC1〜C12アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの炭化水素エステルが挙げられ、脂肪族だけでなく、脂環系や芳香族系の炭化水素基を含有する(メタ)アクリル酸エステルも使用できる。特に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートである。
上記(メタ)アクリル酸のC1〜C12アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの炭化水素エステルが挙げられ、脂肪族だけでなく、脂環系や芳香族系の炭化水素基を含有する(メタ)アクリル酸エステルも使用できる。特に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートである。
上記カチオン性モノマー(B)は、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド等のように、分子内にカチオン性基を1個乃至複数個有するものであり、特に、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドが好ましい。
上記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミドおよび4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートとしては、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド又は3級アミノ基含有(メタ)アクリレートを、塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル、エピクロルヒドリンなどの4級化剤で4級化したモノ4級塩基含有モノマーが挙げられる。具体的には、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
上記カチオン性共重合体を構成するモノマー成分としては、上記疎水性モノマー(A) および上記カチオン性モノマー(B)以外に、必要に応じて、アニオン性モノマーを除くその他のビニルモノマーを使用することができる。
上記その他のモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、iso−プロピル(メタ)アクリルアミドのようなアミド基含有モノマー、酢酸ビニルなどが挙げられる。
上記カチオン性共重合体を構成するモノマー成分は、単用又は併用できる。モノマー成分の組成比は、填料に適度の撥水性を付与できる範囲で任意に設定できるが、疎水性モノマー(A)の含有量は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)の含有量は10〜40重量%程度がそれぞれ好ましい。
上記その他のモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、iso−プロピル(メタ)アクリルアミドのようなアミド基含有モノマー、酢酸ビニルなどが挙げられる。
上記カチオン性共重合体を構成するモノマー成分は、単用又は併用できる。モノマー成分の組成比は、填料に適度の撥水性を付与できる範囲で任意に設定できるが、疎水性モノマー(A)の含有量は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)の含有量は10〜40重量%程度がそれぞれ好ましい。
<第二の製紙用添加剤の共重合体>
一方、本発明で用いられる第二の製紙用添加剤において、前処理に使用する両性共重合体は、疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)およびアニオン性モノマー(C)を必須とし、かつ前記モノマー(B)のカチオン当量に対して前記モノマー(C)のアニオン当量の比率が所定範囲であるモノマー成分を重合し、4級化率を40モル%以上としたものである。
上記アニオン性モノマー(C)は、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類などである。
上記α,β−不飽和カルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などが挙げられる。
上記α,β−不飽和スルホン酸類としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などが挙げられる。
一方、本発明で用いられる第二の製紙用添加剤において、前処理に使用する両性共重合体は、疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)およびアニオン性モノマー(C)を必須とし、かつ前記モノマー(B)のカチオン当量に対して前記モノマー(C)のアニオン当量の比率が所定範囲であるモノマー成分を重合し、4級化率を40モル%以上としたものである。
上記アニオン性モノマー(C)は、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類などである。
上記α,β−不飽和カルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などが挙げられる。
上記α,β−不飽和スルホン酸類としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などが挙げられる。
上記両性共重合体を構成するモノマー成分のうち、疎水性モノマー(A)及びカチオン性モノマー(B)については、本発明の第一の製紙用添加剤におけるカチオン性共重合体を構成するモノマー成分として前述したものと同様である。また、必須モノマー以外のその他のビニルモノマーを使用することができる点も、第一の製紙用添加剤の場合と同様である。
上記両性共重合体を構成するモノマー成分の場合も、上記各モノマーは単用又は併用できる。モノマー成分の組成比は、填料に適度の撥水性を付与できる範囲で任意に設定できるが、疎水性モノマー(A)の含有量は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)の含有量は9.8〜40重量%程度、アニオン性モノマー(C)の含有量は0.2〜10重量%程度がそれぞれ好ましい。
上記両性共重合体を構成するモノマー成分にあっては、カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対するアニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が0.1〜90%であることが必要である。好ましい当量比率は5〜20%であり、より好ましくは5〜15%である。すなわち、本発明における両性共重合体は、カチオン当量がリッチでアニオン当量の少ない方がサイズ効果を発現し易い。カチオン当量に対するアニオン当量の比率が多すぎると、アニオン性モノマー(C)がカチオン部分とイオンコンプレックスを形成して、パルプ繊維へのカチオンの作用を低下させ、サイズ性が発現しない恐れがあるので、上記比率の範囲のアニオン性モノマー(C)のアニオン当量が必要である。
上記両性共重合体を構成するモノマー成分の場合も、上記各モノマーは単用又は併用できる。モノマー成分の組成比は、填料に適度の撥水性を付与できる範囲で任意に設定できるが、疎水性モノマー(A)の含有量は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)の含有量は9.8〜40重量%程度、アニオン性モノマー(C)の含有量は0.2〜10重量%程度がそれぞれ好ましい。
上記両性共重合体を構成するモノマー成分にあっては、カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対するアニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が0.1〜90%であることが必要である。好ましい当量比率は5〜20%であり、より好ましくは5〜15%である。すなわち、本発明における両性共重合体は、カチオン当量がリッチでアニオン当量の少ない方がサイズ効果を発現し易い。カチオン当量に対するアニオン当量の比率が多すぎると、アニオン性モノマー(C)がカチオン部分とイオンコンプレックスを形成して、パルプ繊維へのカチオンの作用を低下させ、サイズ性が発現しない恐れがあるので、上記比率の範囲のアニオン性モノマー(C)のアニオン当量が必要である。
<4級化>
上記カチオン性共重合体または両性共重合体の4級化率は、いずれも40モル%以上であることが重要である。4級化率は、好ましくは50〜100モル%である。4級化率が40モル%未満であると、填料及びパルプ繊維への有効な撥水性付与効果が得られにくくなる恐れがある。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体の4級化に際しては、例えば、カチオン性モノマー(B)として3級アミノ基含有モノマーを含むモノマー成分を重合した後、得られた共重合体を4級化剤で4級化してもよいし、予め4級化して得られた4級アンモニウム塩基含有モノマーをカチオン性モノマー(B)として用いて重合するようにしてもよい。4級化剤としては、塩化メチル、塩化ベンジル、エピクロルヒドリンなどを用いることができる。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体の4級化率は、いずれも40モル%以上であることが重要である。4級化率は、好ましくは50〜100モル%である。4級化率が40モル%未満であると、填料及びパルプ繊維への有効な撥水性付与効果が得られにくくなる恐れがある。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体の4級化に際しては、例えば、カチオン性モノマー(B)として3級アミノ基含有モノマーを含むモノマー成分を重合した後、得られた共重合体を4級化剤で4級化してもよいし、予め4級化して得られた4級アンモニウム塩基含有モノマーをカチオン性モノマー(B)として用いて重合するようにしてもよい。4級化剤としては、塩化メチル、塩化ベンジル、エピクロルヒドリンなどを用いることができる。
<填料>
本発明の第一および第二の製紙用添加剤において、上記カチオン性共重合体または両性共重合体と混合(前処理)する填料としては、公知のものを任意で使用できる。例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用または併用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。本発明では、カチオン性共重合体および両性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に開示の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)も使用可能である。
本発明の第一および第二の製紙用添加剤において、上記カチオン性共重合体または両性共重合体と混合(前処理)する填料としては、公知のものを任意で使用できる。例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用または併用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。本発明では、カチオン性共重合体および両性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に開示の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)も使用可能である。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体による前記填料の前処理は、通常、パルプスラリーに添加する前に、予め当該共重合体の水溶液と填料スラリーとを混合撹拌することにより行う。混合温度は10〜50℃程度、混合時間は1分以上が好ましい。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体と填料とを混合する際の、填料100重量部に対する共重合体の割合は0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜5重量部であり、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。共重合体の割合が少なすぎると、充分なサイズ効果が得られないおそれがある。一方、共重合体の割合を前記範囲より多くしても、得られるサイズ性の向上効果にはあまり変化がなく、コストの無駄になる傾向がある。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体と填料とを混合する際の、填料100重量部に対する共重合体の割合は0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜5重量部であり、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。共重合体の割合が少なすぎると、充分なサイズ効果が得られないおそれがある。一方、共重合体の割合を前記範囲より多くしても、得られるサイズ性の向上効果にはあまり変化がなく、コストの無駄になる傾向がある。
2.アルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤
本発明で用いられるAKDサイズ剤は、下記一般式(1)(式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい、炭素数8〜36程度(好ましくは12〜30程度、特に好ましくは12〜20)のアルキル基または炭素数8〜36程度(好ましくは12〜30程度、特に好ましくは12〜20)のアルケニル基を示す。)で表されるものが好ましい。当該化合物のR1および/またはR2の炭素数が8未満の場合には、疎水性が小さいので、本発明の所期の目的であるサイズ効果が得られ難くなる傾向にある。また、当該化合物のR1および/またはR2の炭素数が36を越える場合には、サイズ効果が得られ難くなることは特にないが、商業上入手が困難となる。
本発明で用いられるAKDサイズ剤は、下記一般式(1)(式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい、炭素数8〜36程度(好ましくは12〜30程度、特に好ましくは12〜20)のアルキル基または炭素数8〜36程度(好ましくは12〜30程度、特に好ましくは12〜20)のアルケニル基を示す。)で表されるものが好ましい。当該化合物のR1および/またはR2の炭素数が8未満の場合には、疎水性が小さいので、本発明の所期の目的であるサイズ効果が得られ難くなる傾向にある。また、当該化合物のR1および/またはR2の炭素数が36を越える場合には、サイズ効果が得られ難くなることは特にないが、商業上入手が困難となる。
炭素数8〜36程度のアルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘニコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、1−オクチル−2−デシル基、1−ヘキシル−2−オクチル基等が挙げられる。また、炭素数8〜36程度のアルケニル基としては、かかる各種のアルキル基の内部に不飽和二重結合を有するアルケニル基が挙げられ、具体的には、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘニコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、1−オクチル−2−デセニル基、1−ヘキシル−2−オクテニル基等を例示できる。
AKDサイズ剤の具体例としては、例えばオクチル酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、ヘントリアコンタン酸等の飽和一塩基酸から誘導されるアルキルケテンダイマー;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸等の不飽和一塩基酸から誘導されるアルケニルケテンダイマー;ヤシ油、パーム油、オリーブ油、落花生油、菜種油、硬化牛脂油、ラード等の天然油脂から調製される天然油脂由来ケテンダイマー等が挙げられる。これらの中でもサイズ効果の観点より、ステアリン酸から誘導されたアルキルケテンダイマーおよび/または硬化牛脂油から調製された天然油脂由来ケテンダイマーが好ましい。これらは2種以上を組み合わせて用いることができる。
3.印刷用紙
本発明の印刷用紙は、前記製紙用添加剤およびAKDサイズ剤をパルプスラリーに添加し、これを湿式抄造することにより製造される。
(添加量)
本発明では共重合体と填料を混合して製紙用添加剤とし、製紙用添加剤をパルプスラリーに添加する添加形態を取るが、製紙用添加剤中の共重合体の対パルプ絶乾重量当たりの添加量としては、通常0.05〜0.4重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。また、AKDサイズ剤の添加量は、対パルプ絶乾重量当たり0.05〜0.15重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.12重量部である。製紙用添加剤中の共重合体とAKDサイズ剤との使用割合は、製紙用添加剤中の共重合体1重量部に対してAKDサイズ剤0.1〜3重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部である。AKDサイズ剤の割合が少なすぎるとサイズ効果が発現せず、また、AKDサイズ剤の割合が多すぎるとサイズプレスの吸液量が増加し、アフタードライヤーの乾燥負荷が増大することから抄速が低下し、また、摩擦係数が著しく低下すると共に汚れが問題となり経済的に不利である。なお、製紙用添加剤とAKDは別個に添加しても良いし、あらかじめ混合しておいてもよい。また、製紙用添加剤とAKDの添加順は、どちらが先でも良い。
本発明の印刷用紙は、前記製紙用添加剤およびAKDサイズ剤をパルプスラリーに添加し、これを湿式抄造することにより製造される。
(添加量)
本発明では共重合体と填料を混合して製紙用添加剤とし、製紙用添加剤をパルプスラリーに添加する添加形態を取るが、製紙用添加剤中の共重合体の対パルプ絶乾重量当たりの添加量としては、通常0.05〜0.4重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。また、AKDサイズ剤の添加量は、対パルプ絶乾重量当たり0.05〜0.15重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.12重量部である。製紙用添加剤中の共重合体とAKDサイズ剤との使用割合は、製紙用添加剤中の共重合体1重量部に対してAKDサイズ剤0.1〜3重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部である。AKDサイズ剤の割合が少なすぎるとサイズ効果が発現せず、また、AKDサイズ剤の割合が多すぎるとサイズプレスの吸液量が増加し、アフタードライヤーの乾燥負荷が増大することから抄速が低下し、また、摩擦係数が著しく低下すると共に汚れが問題となり経済的に不利である。なお、製紙用添加剤とAKDは別個に添加しても良いし、あらかじめ混合しておいてもよい。また、製紙用添加剤とAKDの添加順は、どちらが先でも良い。
本発明において優れた効果が得られる理由は次のように推察される。AKDサイズ剤は、紙中灰分の高い条件下に適するサイズ剤である。しかし、AKDサイズ剤は、摩擦係数を低下させ、また、サイズ度の立ち上がりが遅いため、サイズプレス吸液量が増加しやすい。一方、本発明で用いられる製紙用添加剤は、摩擦係数を低下させることなく、サイズプレス吸液量も増加せずにサイズ性を向上させることができる。そこで、AKDサイズ剤と製紙用添加剤とを適切な割合で併用して添加することで、サイズ性が高く、サイズ性の立ち上がりが早い、摩擦係数に優れた印刷用紙が得られると考えられる。また、AKDサイズ剤は、疎水性の非常に高い炭素数18前後の直鎖アルキル基を疎水基として持つ。また、AKDサイズ剤は、カチオン性澱粉などのプラス電荷を有する水溶性高分子を保護コロイドとして水中に分散させ、エマルションにして用いられる。そのため、アニオン基を有するパルプ繊維に吸着しやすい。一方、製紙用添加剤は、填料例えば炭酸カルシウムに適度の撥水性を付与することができ、これがアニオン性を帯びたパルプに吸着するため、このような製紙用添加剤とAKDサイズ剤とを併用することで、より繊維表面を均一にサイズ性付与物質が被覆することができるため、高いサイズ性を得られるものと考えられる。
(パルプ)
前記パルプスラリーを構成するパルプ繊維は、特に制限はなく、NBKP、LBKPなどの木材パルプ;TMPやGPなどの機械パルプ;脱墨パルプ(DIP)等の製紙用に通常使用されるもののほか、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維等を、あるいはこれらの混合物を使用できる。
前記パルプスラリーを構成するパルプ繊維は、特に制限はなく、NBKP、LBKPなどの木材パルプ;TMPやGPなどの機械パルプ;脱墨パルプ(DIP)等の製紙用に通常使用されるもののほか、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維等を、あるいはこれらの混合物を使用できる。
(填料)
本発明において、前記製紙用添加剤とは別に填料を配合してもよいし、配合しなくてもよい。填料としては、酸性抄紙あるいは中性抄紙において一般に使用されている填料であればよく、特に限定されるものではない。例えば、中性抄紙では、クレー、シリカ、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。本発明では、本発明における両イオン性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、炭酸カルシウム−シリカ複合物(特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)も使用可能である。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。填料の配合量としては、不透明度等の点から、パルプ重量に対して2〜30重量%が好ましい。
本発明において、前記製紙用添加剤とは別に填料を配合してもよいし、配合しなくてもよい。填料としては、酸性抄紙あるいは中性抄紙において一般に使用されている填料であればよく、特に限定されるものではない。例えば、中性抄紙では、クレー、シリカ、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。本発明では、本発明における両イオン性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、炭酸カルシウム−シリカ複合物(特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)も使用可能である。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。填料の配合量としては、不透明度等の点から、パルプ重量に対して2〜30重量%が好ましい。
また、本発明では、JIS P 8251、ISO 1762に準拠して測定される紙中灰分が10%以上であることが望ましい。紙中灰分が10%以上であると、比較的低分子量の既存サイズ剤は、比表面積が大きい填料に吸着されてしまい、サイズ性を確保しにくくなることから大量の添加が必要となり、それに伴う弊害が大きくなるためである。
(その他添加剤)
前記パルプスラリーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン化デンプン、アクリルアミド系共重合体(PAM系ポリマー)、PVA系ポリマーなどの紙力剤、硫酸アルミニウム、ロジン系樹脂などのサイズ剤、濾水剤、歩留り向上剤、耐水化剤、蛍光染料あるいは紫外線防止剤などの各種薬品を添加できることは言うまでもない。特に蛍光染料は、白色度を高めるために好ましく用いられる。
前記パルプスラリーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン化デンプン、アクリルアミド系共重合体(PAM系ポリマー)、PVA系ポリマーなどの紙力剤、硫酸アルミニウム、ロジン系樹脂などのサイズ剤、濾水剤、歩留り向上剤、耐水化剤、蛍光染料あるいは紫外線防止剤などの各種薬品を添加できることは言うまでもない。特に蛍光染料は、白色度を高めるために好ましく用いられる。
(抄紙方法)
本発明の印刷用紙は、特に、中性抄造により得られる中性抄紙であることが、本発明の効果を有意に発揮させることができる点で好ましい。
抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。表面処理剤は塗布しても良いし、しなくても良い。表面処理剤を塗布する場合、表面処理剤の成分には特に限定は無く、またサイズプレスの型式も限定はなく、2ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、シムサイザーのような液膜転写方式サイズプレスなどを適宜用いることができる。カレンダーは通常の操業範囲内の線圧で用いられる。またソフトカレンダーも好ましい。
本発明の印刷用紙は、特に、中性抄造により得られる中性抄紙であることが、本発明の効果を有意に発揮させることができる点で好ましい。
抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。表面処理剤は塗布しても良いし、しなくても良い。表面処理剤を塗布する場合、表面処理剤の成分には特に限定は無く、またサイズプレスの型式も限定はなく、2ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、シムサイザーのような液膜転写方式サイズプレスなどを適宜用いることができる。カレンダーは通常の操業範囲内の線圧で用いられる。またソフトカレンダーも好ましい。
表面処理剤としては例えば、生澱粉や、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを単用又は併用できる。その中でも表面強度向上効果にすぐれるヒドロキシエチル化澱粉が好ましい。また、表面処理剤には前記の薬剤の他に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、カチオン性サイズ剤などの表面サイズ剤を併用塗布することができる。
(種類、用途)
本発明の印刷用紙の種類は、任意であって特段の制限はなく、例えば、上質または中質印刷用紙、新聞用紙、アート紙、キャストコート紙等の原紙、PPC用紙、インクジェット記録用紙、レーザープリンター用紙、感熱記録用紙、感圧記録用紙等の記録用紙などが挙げられる。
本発明の印刷用紙の種類は、任意であって特段の制限はなく、例えば、上質または中質印刷用紙、新聞用紙、アート紙、キャストコート紙等の原紙、PPC用紙、インクジェット記録用紙、レーザープリンター用紙、感熱記録用紙、感圧記録用紙等の記録用紙などが挙げられる。
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。また、薬品添加率については、特に指定が無い場合は、固形分の添加率を示す。有姿と指定している場合は、固形分ではなく薬品そのものの添加率を示す。例えば1%濃度の薬品を固形分で0.2%添加する場合、有姿では20%添加となる。
なお、以下の実施例および比較例において、共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより下記の条件で測定した。
カラム:昭和電工(株)製「Asahipak GF−7M HQ」、「Asahipak GF−310 HQ」
機器:昭和電工(株)製「GPC SYSTEM−21H」
なお、以下の実施例および比較例において、共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより下記の条件で測定した。
カラム:昭和電工(株)製「Asahipak GF−7M HQ」、「Asahipak GF−310 HQ」
機器:昭和電工(株)製「GPC SYSTEM−21H」
<評価方法>
得られた印刷用紙を下記の方法により評価し、結果を表1に示す。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠して測定した。
・摩擦係数:抄紙後、デカーラー(紙の巻き癖を直す装置)で処理後、A4サイズに断裁した用紙をISO 15359に準拠して静摩擦係数、動摩擦係数を測定した。
・サイズプレス吸液量:2ロールサイズプレスにおける吸液量を測定した。
得られた印刷用紙を下記の方法により評価し、結果を表1に示す。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠して測定した。
・摩擦係数:抄紙後、デカーラー(紙の巻き癖を直す装置)で処理後、A4サイズに断裁した用紙をISO 15359に準拠して静摩擦係数、動摩擦係数を測定した。
・サイズプレス吸液量:2ロールサイズプレスにおける吸液量を測定した。
<カチオン性および両性共重合体の合成例>
(1)合成例1
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素導入管を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、イソプロパノール30部、疎水性モノマーとしてスチレン50部、メタクリル酸メチル20部、ブチルアクリレート10部、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート20部、n−ドデシルメルカプタン1.5部を加え、攪拌しながら加熱し、温度を85℃まで上昇させた。
次いで、温度を85〜90℃に保持しながら、t−ブチルパーオキシエチルヘキサネート1.5部とイソプロパノール3部からなる重合開始剤溶液を3時間で全量滴下し、1時間熟成させて、反応を完結させた。
その後、温度を80℃に保持してカチオン性共重合体中和用の90%酢酸8.5部と温水260部を30分かけて添加して1時間保持し、4級化剤としてエピクロルヒドリン9.5部を添加して80℃で2時間保持し、完全に水溶化させた。
冷却後、水を添加して、固形分20%のカチオン性共重合体水溶液を得た。
なお、得られた共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%であった。
(1)合成例1
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素導入管を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、イソプロパノール30部、疎水性モノマーとしてスチレン50部、メタクリル酸メチル20部、ブチルアクリレート10部、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート20部、n−ドデシルメルカプタン1.5部を加え、攪拌しながら加熱し、温度を85℃まで上昇させた。
次いで、温度を85〜90℃に保持しながら、t−ブチルパーオキシエチルヘキサネート1.5部とイソプロパノール3部からなる重合開始剤溶液を3時間で全量滴下し、1時間熟成させて、反応を完結させた。
その後、温度を80℃に保持してカチオン性共重合体中和用の90%酢酸8.5部と温水260部を30分かけて添加して1時間保持し、4級化剤としてエピクロルヒドリン9.5部を添加して80℃で2時間保持し、完全に水溶化させた。
冷却後、水を添加して、固形分20%のカチオン性共重合体水溶液を得た。
なお、得られた共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%であった。
(2)合成例2
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素導入管を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、イソプロパノール25部、90%酢酸7.6部を入れ、撹拌しながら温度を80℃まで加熱した。
次いで、疎水性モノマーとしてスチレン30部、iso−ブチルメタクリレート50部、アニオン性モノマーとして無水マレイン酸1部、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート19部のモノマー混合物に、n−ドデシルメルカプタン1.5部とアゾビスイソブチロニトリル1部を溶解した混合液を、フラスコ内温を80〜85℃に保ちながら3時間で全量滴下し、1時間熟成させて反応を完結させた。
その後、温度を80℃に保持して温水300部を添加して1時間保持し、4級化剤としてエピクロルヒドリン9部を添加して80℃で2時間保持し、完全に水溶化させた。
冷却後、水を添加して、固形分20%の両性共重合体水溶液を得た。
なお、単量体成分におけるアニオン性モノマーのアニオン当量をカチオン性モノマーのカチオン当量に対する比率(百分率)で示すと17%、また、得られた共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%であった。
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素導入管を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、イソプロパノール25部、90%酢酸7.6部を入れ、撹拌しながら温度を80℃まで加熱した。
次いで、疎水性モノマーとしてスチレン30部、iso−ブチルメタクリレート50部、アニオン性モノマーとして無水マレイン酸1部、カチオン性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート19部のモノマー混合物に、n−ドデシルメルカプタン1.5部とアゾビスイソブチロニトリル1部を溶解した混合液を、フラスコ内温を80〜85℃に保ちながら3時間で全量滴下し、1時間熟成させて反応を完結させた。
その後、温度を80℃に保持して温水300部を添加して1時間保持し、4級化剤としてエピクロルヒドリン9部を添加して80℃で2時間保持し、完全に水溶化させた。
冷却後、水を添加して、固形分20%の両性共重合体水溶液を得た。
なお、単量体成分におけるアニオン性モノマーのアニオン当量をカチオン性モノマーのカチオン当量に対する比率(百分率)で示すと17%、また、得られた共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%であった。
<印刷用紙の製造例1>
[実施例1]
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分0.25%となるように炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」、以下同じ。)に添加し、製紙用添加剤とした。
フリーネスを420mLに調整した原料パルプ(LBKP100%)に対し、対パルプ固形分に対し有姿0.5%の液体硫酸バンド、対パルプ固形分0.5%のカチオン変性澱粉、上記で得た合成例1の製紙用添加剤を対パルプ固形分20%(共重合体のパルプ固形分に対する添加率は表1参照、以下同じ。)、対パルプ固形分0.15%のAKDサイズ剤(ハリマ化成社製「AK−720H」)、対パルプ固形分100ppmの歩留まり向上剤を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を、オントップ型ツインワイヤー抄紙機を用いて抄紙速度1200m/分で抄紙して印刷用紙(坪量64g/m2、紙中灰分15%)を得た。
[実施例1]
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分0.25%となるように炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」、以下同じ。)に添加し、製紙用添加剤とした。
フリーネスを420mLに調整した原料パルプ(LBKP100%)に対し、対パルプ固形分に対し有姿0.5%の液体硫酸バンド、対パルプ固形分0.5%のカチオン変性澱粉、上記で得た合成例1の製紙用添加剤を対パルプ固形分20%(共重合体のパルプ固形分に対する添加率は表1参照、以下同じ。)、対パルプ固形分0.15%のAKDサイズ剤(ハリマ化成社製「AK−720H」)、対パルプ固形分100ppmの歩留まり向上剤を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を、オントップ型ツインワイヤー抄紙機を用いて抄紙速度1200m/分で抄紙して印刷用紙(坪量64g/m2、紙中灰分15%)を得た。
[実施例2]
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.0%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.0%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[実施例3]
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.75%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.05%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.75%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.05%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[実施例4]
合成例1に代えて合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分0.25%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.15%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
合成例1に代えて合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分0.25%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.15%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[実施例5]
合成例1に代えて合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分1.0%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
合成例1に代えて合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分1.0%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[実施例6]
合成例1に代えて合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分1.75%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.05%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
合成例1に代えて合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分1.75%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を対パルプ0.05%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[比較例1]
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.5%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.5%となるように炭酸カルシウムに添加して製紙用添加剤とし、AKDサイズ剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[比較例2]
製紙用添加剤を添加せず、代わりに炭酸カルシウムを対パルプ固形分20%添加し、AKDサイズ剤を対パルプ固形分0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
製紙用添加剤を添加せず、代わりに炭酸カルシウムを対パルプ固形分20%添加し、AKDサイズ剤を対パルプ固形分0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[比較例3]
製紙用添加剤を添加せず、代わりに炭酸カルシウムを対パルプ固形分20%添加し、AKDサイズ剤を対パルプ固形分0.2%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
製紙用添加剤を添加せず、代わりに炭酸カルシウムを対パルプ固形分20%添加し、AKDサイズ剤を対パルプ固形分0.2%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
[比較例4]
紙用添加剤を添加せず、代わりに炭酸カルシウムを対パルプ固形分20%添加するとともに中性ロジンサイズ剤を対パルプ固形分0.2%添加し、AKDサイズ剤を対パルプ固形分0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
紙用添加剤を添加せず、代わりに炭酸カルシウムを対パルプ固形分20%添加するとともに中性ロジンサイズ剤を対パルプ固形分0.2%添加し、AKDサイズ剤を対パルプ固形分0.1%添加した以外は、実施例1と同様に印刷用紙を得た。
上記表1の添加率対填料*1は共重合体の填料に対する添加率(対填料固形分)を示し、添加率対パ*3は製紙用添加剤のパルプ固形分に対する添加率を示している。そして、添加率対パ*2は共重合体のパルプ固形分に対する添加率を示し、上記添加率*1に添加率*3を掛けた値である。また、AKD/共重合体*4は共重合体に対するAKDの割合を示している。
表1から次のようなことが示される。
なお、本発明において、サイズ性は、サイズプレス吸液量から55ml/m2以下で良好、56〜59ml/m2で悪く、60ml/m2以上で非常に悪いと判断し、サイズ性のステキヒトサイズ度は、30〜50秒で非常に良好、20〜29秒で良好、9〜19秒で悪く、0〜9秒で非常に悪いと判断し、更に、静摩擦係数は0.55〜0.75、動摩擦係数は0.40〜0.55であることが望ましく、それ以上でもそれ以下でも問題があると判断したが、具体的には、摩擦係数が低くなったことで紙が滑りやすくなり、用紙断裁時に紙が揃わなくなり、コピー機での搬送性に問題が生じる。
なお、本発明において、サイズ性は、サイズプレス吸液量から55ml/m2以下で良好、56〜59ml/m2で悪く、60ml/m2以上で非常に悪いと判断し、サイズ性のステキヒトサイズ度は、30〜50秒で非常に良好、20〜29秒で良好、9〜19秒で悪く、0〜9秒で非常に悪いと判断し、更に、静摩擦係数は0.55〜0.75、動摩擦係数は0.40〜0.55であることが望ましく、それ以上でもそれ以下でも問題があると判断したが、具体的には、摩擦係数が低くなったことで紙が滑りやすくなり、用紙断裁時に紙が揃わなくなり、コピー機での搬送性に問題が生じる。
(1)実施例1〜6は、サイズプレス吸液量が良好で、ステキヒトサイズ度が非常に良好で、静及び動摩擦係数が望ましい値であるから、サイズ性が良好で摩擦係数の低下抑制が優れていることが示されている。
(2)例えば、サイズプレス吸液量に関して、比較例2〜4のサイズプレス吸液量は56ml/m2以上であるのに対して、実施例1〜6のそれが55ml/m2以下であるから、実施例1〜6はサイズプレス吸液量が良好であることを示している。
(3)ステキヒトサイズ度に関して、比較例1、2及び4のステキヒトサイズ度は1718〜24秒の範囲であるのに対して、実施例1〜6のそれは30〜35秒の範囲であることから、実施例1〜6はサイズ性に優れることを示している。そして、実施例1(両イオン性共重合体とAKDサイズ剤との合計で0.2%)と比較例3(AKDサイズ剤を0.2%)を比較すると、両者のサイズ剤添加率は同等であるが、比較例3の静及び動摩擦係数は0.50、0.30であるのに対して、実施例1のそれは0.55、0.41であることから、原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤とAKDサイズ剤を配合することで、摩擦係数の低下を抑制できることを示している。
(4)実施例1〜6の静摩擦係数は0.55〜0.59の範囲にあり、実施例1〜6の動摩擦係数は0.41〜0.46の範囲にあるので、実施例1〜6はその静及び動摩擦係数値が望ましい値を示しているから、摩擦係数の低下が抑制されていることを示している。
(2)例えば、サイズプレス吸液量に関して、比較例2〜4のサイズプレス吸液量は56ml/m2以上であるのに対して、実施例1〜6のそれが55ml/m2以下であるから、実施例1〜6はサイズプレス吸液量が良好であることを示している。
(3)ステキヒトサイズ度に関して、比較例1、2及び4のステキヒトサイズ度は1718〜24秒の範囲であるのに対して、実施例1〜6のそれは30〜35秒の範囲であることから、実施例1〜6はサイズ性に優れることを示している。そして、実施例1(両イオン性共重合体とAKDサイズ剤との合計で0.2%)と比較例3(AKDサイズ剤を0.2%)を比較すると、両者のサイズ剤添加率は同等であるが、比較例3の静及び動摩擦係数は0.50、0.30であるのに対して、実施例1のそれは0.55、0.41であることから、原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤とAKDサイズ剤を配合することで、摩擦係数の低下を抑制できることを示している。
(4)実施例1〜6の静摩擦係数は0.55〜0.59の範囲にあり、実施例1〜6の動摩擦係数は0.41〜0.46の範囲にあるので、実施例1〜6はその静及び動摩擦係数値が望ましい値を示しているから、摩擦係数の低下が抑制されていることを示している。
以上の実施例1〜6及び比較例1〜4の結果から、本発明の印刷用紙は、填料として炭酸カルシウムを使用し、硫酸バンドを使用しないか硫酸バンド使用量が少ない中性抄造においても、原紙に疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤、およびAKDサイズ剤を含有することで、優れたサイズ性を付与できるとともに、サイズプレスでの吸液量が増加することなく、摩擦係数の低下抑制に優れた印刷用紙が得られているから、上述した本発明の課題を達成していることは明らかである。
Claims (5)
- 原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤とサイズ剤を含有する印刷用紙であって、
前記共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、前記サイズ剤がアルキルケテンダイマー系サイズ剤であることを特徴とする印刷用紙。 - 前記共重合体がカチオン性共重合体、または、アニオン性モノマー(C)を含む両性共重合体であることを特徴とする請求項1記載の印刷用紙。
- 前記両性共重合体の前記カチオン性モノマー(B)のカチオン当量に対する前記アニオン性モノマー(C)のアニオン当量の比率が0.1〜90%であるモノマー成分を重合して得られることを特徴とする請求項2記載の印刷用紙。
- 前記共重合体1重量部に対して前記アルキルケテンダイマー系サイズ剤を0.1〜3重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷用紙。
- 前記填料が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷用紙。
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JP2008191713A JP2010031387A (ja) | 2008-07-25 | 2008-07-25 | 印刷用紙 |
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-
2008
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