JP2010024489A - 被覆Fe‐Ni合金線、及びそれを用いた撚線並びに電線 - Google Patents

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太一郎 西川
Misato Kusakari
美里 草刈
Yoshihiro Nakai
由弘 中井
Masao Sanai
正雄 佐内
Atsushi Yoshida
敦 吉田
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Abstract

【課題】高強度で低熱膨張率を有し、且つ捻回特性に優れた被覆Fe‐Ni合金線を提供する。
【解決手段】被覆Fe‐Ni合金線は、Cを0.2〜0.4質量%、及びNiを25〜45質量%含有するインバー合金からなるFe‐Ni合金線の表面に被覆層を備えており、被覆層が、Mg、Si、Fe、Mn、Cu、Cr、Zn、及びTiからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.6〜6質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。そして、被覆Fe‐Ni合金線の断面における被覆層の占積率が10%以上30%以下であり、線径が1.5mm以上15mm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、架空送電線などの芯線に利用される被覆Fe‐Ni合金線、及びそれを用いた撚線並びに電線に関する。特に、高強度で低熱膨張率を有し、且つ捻回特性に優れた被覆Fe‐Ni合金線に関する。
従来、架空送電線や架空配電線として、鋼線の単線又は撚線からなる芯線を中心としてその周囲に硬アルミ線を撚り合わせた鋼芯アルミ撚線(ACSR)が広く使用されている。この鋼線の表面には、耐食性を付与する目的で、亜鉛めっきや純アルミの被覆が施されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、コンフォーム押出機により芯線となる鋼線の周囲にAl‐Zr系合金を複合一体化してダイを通して押出し成型する導電用耐熱アルミニウム覆鋼線の製造方法が開示されている。この製造方法は、鋼線に被覆されるAl‐Zr系合金おいて、ZrをAlマトリックス中に微細に析出させることで、耐熱性の向上を図ることを特徴としている。
また、特許文献2には、従来の鋼線に代えて、低い熱膨張率を有するインバー合金線(Fe‐Ni合金線)を芯線として用いることが提案され、また、所定の化学成分からなるインバー合金線(高強度低熱膨張合金線)が開示されている。
特開昭63‐230220号公報 特開2002‐256395号公報
架空送電線などの芯線となる被覆鋼線に要求される特性としては、高い引張強さ、低い熱膨張率、その他撚線として使用することを考慮して捻回特性に優れることが、重要である。例えば、撚線前の素線の状態において、被覆鋼線(径D=3.1〜3.8mm)は、次の要求特性を全て満足することが望まれる。
(要求特性)
引張強さ:1274MPa(130kgf/mm2)以上
線膨張係数:3.7ppm/K以下(15〜230℃)、10.8ppm/K以下(230〜290℃)
捻回値:20回/100D以上
巻付性:被覆鋼線の径の1.5倍の円筒に緊密に8回巻き付けて、表面割れや折れが生じないこと
しかし、従来技術では、これら特性を高いレベルで同時に実現することが困難であった。
特許文献1では、鋼線を使用しているため、高い引張強さを有しているが、線膨張係数の要求特性を満足しないと推測される。また、特許文献1では、捻回特性について何ら検討されていない。
また、特許文献2では、インバー合金線を使用しているため、低い熱膨張率を有しているが、インバー合金線は鋼線と比較して引張強さが低いため、捻回特性を維持しつつ強度の向上を図る必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、高強度で低熱膨張率を有し、且つ捻回特性に優れた被覆Fe‐Ni合金線を提供することにある。
本発明者らは、架空送電線などの芯線として、インバー合金線(Fe‐Ni合金線)を用いると共に、このFe‐Ni合金線の表面にアルミ合金を被覆することで、捻回特性を維持した状態で強度を改善することを提案する。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線は、Cを0.2〜0.4質量%、及びNiを25〜45質量%含有するインバー合金からなるFe‐Ni合金線の表面に被覆層を備えており、被覆層が、Mg、Si、Fe、Mn、Cu、Cr、Zn、及びTiからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.6〜6質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。そして、被覆Fe‐Ni合金線の断面における被覆層の占積率が10%以上30%以下であり、線径が1.5mm以上15mm以下であることを特徴とする。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線によれば、Fe‐Ni合金線が上記した化学成分のインバー合金からなるため、熱膨張率が小さく、線膨張係数の要求特性を満足することができる。また、このインバー合金からなるFe‐Ni合金線の表面に、上記した元素を所定量含有するアルミ合金を被覆しているため、純アルミを被覆した場合と比較して、要求される捻回特性を十分に満足すると共に、引張強さの向上を図ることができる。
また、被覆Fe‐Ni合金線の断面における被覆層の占積率が10%以上30%以下であるため、被覆Fe‐Ni合金線に適度な導電率を持たせることができる。被覆層の占積率が10%未満の場合、適度な導電率を持たせることができず、30%超の場合、その分Fe‐Ni合金線の占積率が低下するので、引張強さなどの要求特性を満たさなくなる虞がある。なお、耐食性を付与することを考慮して、被覆層の厚さは少なくとも50μm以上とすることが好ましい。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線は、線径が1.5mm以上15mm以下であるため、架空送電線などの芯線用素線として好適に利用できる。
以下、本発明の被覆Fe‐Ni合金線において、Fe‐Ni合金線(インバー合金)の化学成分とその含有量、及び被覆層(アルミ合金)の化学成分とその含有量を限定した理由を説明する。
(被覆層)
Mg、Si、Fe、Mn、Cu、Cr、Zn、及びTi:合計で0.6〜6質量%
これら元素は、Alに含有することで、アルミ合金の引張強さと靭性を高める効果がある。例えば、JIS H 4000:2006に規定される2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台、及び8000番台のアルミ合金を利用してもよい。特に、Mgはアルミ合金の引張強さと靭性を高める効果が大きいので、上記元素のうち少なくともMgを含有することが好ましい。また、これら元素の合計含有量が0.6質量%未満では、十分な効果が得られず、6質量%超では、靭性の低下を招くため、被覆層の形成が困難となったり、被覆後の加工時、例えば伸線加工や撚線加工において被覆層が破断するなどの虞がある。
(Fe‐Ni合金線)
C:0.2〜0.4質量%
Cは、固溶強化元素であると共に、後述する他の元素と結合し炭化物を生成するための必須元素であり、引張強さを高める効果がある。しかし、過剰に含有すると、捻回特性が劣化すると共に、線膨張係数が大きくなるため、上限を0.4質量%とした。
Ni:25〜45質量%
Niは、線膨張係数を低める効果があり、その効果を得るために25〜45質量%とした。
Fe‐Ni合金線は、上記した元素と、残部がFe及び不可避的不純物から構成されていてもよいが、上記元素以外に、以下に説明するような元素を含有してもよい。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線において、Fe‐Ni合金線は、V、Nb、及びMoからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.1〜3.0質量%含有することが好ましい。
これら元素は、Cと結合し炭化物を生成する元素であり、この炭化物がFe‐Ni合金中に微細に析出することで、引張強さを高める効果がある。しかし、過剰に含有すると、捻回特性が劣化するため、上限を3.0質量%とした。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線において、Fe‐Ni合金線は、Al、Si、Mn、Cr、Ti、Zr、Hf、W、及びCuからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0超〜2.0質量%以下含有することが好ましい。
これら元素は、Fe‐Ni合金線の強化に有効である。しかし、過剰に含有すると、捻回特性が劣化するため、上限を2.0質量%とした。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線において、Fe‐Ni合金線は、上記したNiの一部がCoに置換され、そのCoのFe‐Ni合金線中の含有量が0超〜5.0質量%以下であることが好ましい。
Coは、Niと同様に、線膨張係数の低減に有効である。しかし、多量の添加は、コスト高の原因となるため、上限を5.0質量%とした。また、NiとCoの合計含有量が25〜45質量%の範囲外では、目的の効果が得られない。
上記した本発明の被覆Fe‐Ni合金線を複数撚り合わせることで本発明の撚線とすることができ、撚線とする場合、本発明の被覆Fe‐Ni合金線の線径を1.5mm以上5mm以下とすることが好ましい。また上記した本発明の撚線は、架空送電線や架空配電線などの電線の芯線に好適に使用できる。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線は、Fe‐Ni合金線の表面に特定のアルミ合金の被覆層を備える構成であり、高強度で低熱膨張率を有し、且つ捻回特性に優れる。
表1に示す化学成分のFe‐Ni合金を溶解・鋳造した後、熱間圧延を実施して、線径12mmの線材に加工した。その後、線材に伸線加工(一次伸線)を行い、線径8.3mmのFe‐Ni合金線に加工した。次に、Fe‐Ni合金線を還元雰囲気中、670℃、2時間の条件で熱処理した後、皮剥ぎを実施して、線径8.0mmのFe‐Ni合金線に加工した。更に、Fe‐Ni合金線に伸線加工(二次伸線)を行い、線径4.3mmのFe‐Ni合金線に加工した。
次いで、得られたFe‐Ni合金線の表面にAl‐3質量%Mg合金を押出被覆により被覆し、被覆層を形成した。このとき、被覆後のFe‐Ni合金線(但し、被覆層を含む)の断面における被覆層の占積率が20%となるように設定し、被覆層を含むFe‐Ni合金線(被覆Fe‐Ni合金線)の線径は4.8mmであった。
最後に、得られた被覆Fe‐Ni合金線に伸線加工を行い、線径3.5mmの被覆Fe‐Ni合金線を作製した。そして、Fe‐Ni合金線の化学成分がAのものを試料1-1、Fe‐Ni合金線の化学成分がBのものを試料1-2とした。各試料はいずれも、断面における被覆層の占積率が20%、被覆層の厚さが180μmであった。
化学成分がBのFe‐Ni合金線について、皮剥ぎ後、二次伸線前に、Al‐3質量%Mg合金の被覆層を形成した被覆Fe‐Ni合金線を作製した。ここでは、皮剥ぎ迄の工程、及び被覆層の形成は、先に説明した試料1-2の製造方法と同じであり、被覆層を含むFe‐Ni合金線(被覆Fe‐Ni合金線)の線径は8.9mmであった。最後に、この被覆Fe‐Ni合金線に伸線加工を行い、線径3.5mmの被覆Fe‐Ni合金線を作製した。この被覆Fe‐Ni合金線を試料1-3とした。この試料は、断面における被覆層の占積率が20%、被覆層の厚さが180μmであった。
また、比較として、化学成分がBのFe‐Ni合金線の表面に純Alの被覆層を形成した以外は、先に説明した試料1-2と同様にして、線径3.5mmの被覆Fe‐Ni合金線を作製した。この被覆Fe‐Ni合金線を試料100とした。この試料は、断面における被覆層の占積率が20%、被覆層の厚さが180μmであった。
Figure 2010024489
作製した各試料について、引張強さ、線膨張係数、及び捻回特性について評価を行った。その結果を表2に示す。なお、引張強さ、線膨張係数、及び捻回特性の試験方法は、次のとおりである。
引張強さは、ゲージ長さ250mmの試験片を作製し、これを用いて測定した。
線膨張係数は、長さ25mmの試験片を作製し、抵抗加熱による加熱時の長さ変化を差動トランスにより測定した。
捻回特性は、捻回値と巻付性を測定することにより評価した。捻回値は、長さ350mm(線径Dの100倍)の試験片を作製し、この試験片の片端を固定して捻り試験を行い、破断するまでの回数を求めた。巻付性は、1.5D(線径Dの1.5倍)及び1.0D(線径Dの1.0倍)の円筒に緊密に8回巻き付けた後、巻き戻した状態で外観を調べた。そして、各円筒に巻き付け、巻き戻しを行ったとき、表面割れや折れなどの欠陥が生じた場合を×、生じなかった場合を○とした。
Figure 2010024489
表2の結果から、Al‐Mg合金の被覆層を備える試料1-1〜1-3は、純Alの被覆層を備える試料100と比較して、引張強さが高く、引張強さの要求特性を十分に満たしていることが分かる。また、試料1-1〜1-3は、1.0Dでの巻付性も良好な結果を示しており、十分な捻回特性を有していることが分かる。更に、皮剥ぎ後、二次伸線前に被覆層を形成した試料1-3は、二次伸線後に被覆層を形成した試料1-2と比較して、引張強さが向上している。これは、試料1-3の方が被覆後の伸線加工度が大きく、被覆層の加工硬化により、強度が向上したものと考えられる。
以上の結果から、本発明の被覆Fe‐Ni合金線は、高強度で低熱膨張率を有し、且つ捻回特性に優れることが分かる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、Fe‐Ni合金線又は被覆層の化学成分を適宜変更したり、被覆Fe‐Ni合金線の被覆層の占積率や線径を適宜変更してもよい。
本発明の被覆Fe‐Ni合金線は、高い引張強さ、低い熱膨張率、及び優れた捻回特性が要求される、例えば架空送電線などの芯線用素線に好適に利用できる。

Claims (7)

  1. Fe‐Ni合金線の表面に被覆層を備える被覆Fe‐Ni合金線であって、
    前記Fe‐Ni合金線は、Cを0.2〜0.4質量%、及びNiを25〜45質量%含有するインバー合金からなり、
    前記被覆層は、Mg、Si、Fe、Mn、Cu、Cr、Zn、及びTiからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.6〜6質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、
    前記被覆Fe‐Ni合金線の断面における前記被覆層の占積率が10%以上30%以下であり、
    線径が1.5mm以上15mm以下であることを特徴とする被覆Fe‐Ni合金線。
  2. 前記Fe‐Ni合金線は、V、Nb、及びMoからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.1〜3.0質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の被覆Fe‐Ni合金線。
  3. 前記Fe‐Ni合金線は、Al、Si、Mn、Cr、Ti、Zr、Hf、W、及びCuからなる群から選択される少なくとも一種を合計で0超〜2.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆Fe‐Ni合金線。
  4. 前記Fe‐Ni合金線は、前記Niの一部がCoに置換され、そのCoのFe‐Ni合金線中の含有量が0超〜5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆Fe‐Ni合金線。
  5. 線径が1.5mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆Fe‐Ni合金線。
  6. 請求項5に記載の被覆Fe‐Ni合金線を用いたことを特徴とする撚線。
  7. 請求項6に記載の撚線を芯線に使用したことを特徴とする電線。
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