JP2010023013A - ケイ素の同位体を分離する方法 - Google Patents

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一良 山本
Yoichi Enokida
洋一 榎田
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佳代 澤田
Takahiko Sugiyama
貴彦 杉山
Akihiro Miyata
章弘 宮田
Hiroshi Sugai
弘 菅井
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Abstract

【課題】 工業規模での生産性向上が見込めるケイ素の同位体分離方法を提供する。
【解決手段】 ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムの水溶液10を、I型の強塩基性イオン交換樹脂を充填した充填塔18に流して、I型の強塩基性イオン交換樹脂にケヘキサフルオロケイ酸ナトリウムを吸着させ、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムとI型の強塩基性イオン交換樹脂の前端界面に重同位体のケイ素を濃縮させる工程と、チオシアン酸ナトリウムの水溶液12を充填塔18に流して、吸着されたケヘキサフルオロケイ酸ナトリウムをチオシアン酸ナトリウムに置換させ、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムとチオシアン酸ナトリウムの後端界面に軽同位体のケイ素を濃縮させる工程とにより、ケイ素の同位体を分離する。
【選択図】図1

Description

本発明は一般的にはケイ素の同位体を分離する方法に関する。本発明は特に、イオン交換(置換)クロマトグラフィーを利用してケイ素の同位体を分離する方法に関する。
天然に算出するケイ素(シリコン)には、質量数が異なる3つの同位体、すなわち質量数28の28Si、29の29Si、および30の30Siが含まれている。ケイ素はそれ自体で半導体デバイス等の主要材料であるとともに、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの耐熱性の優れた構造材料としても広く利用されている。その利用の際、同位体レベルで材料組成を制御することができれば、熱物性や核的性質の点から、より優れた半導体材料および構造材料としての特性を示すことが期待されている。特に、核スピン選択則を原理とする量子コンピュータの素材として使用するためには、あるいは半導体の放熱性を格段に高めるためには、ケイ素の同位体分離は欠くことのできない技術である。さらに、工業的には、大量のケイ素を安価に同位体分離できる方法が望まれている。
ケイ素の同位体分離方法として、従来からガス遠心法とレーザー法がある。ガス遠心法は、海外において実施されているが、工業規模での生産を想定すると、ウラン濃縮技術の転用としての核兵器生産技術として国際的監視にさらされ、特に国際的な査察に応じるための対策に相当な費用がかかり、また生産時間の制約を受けるため、経済性を向上させることが難しいという問題点がある。
一方、レーザー法は、同位体分離されたケイ素の重要性に鑑み、日本において技術提案がなされている。具体的には、公開特許公報2003−311129号や公開特許公報2002−331227号に記載されているような提案が既に行われている。このレーザー法は、装置の拡大化に原理的な問題を有し、並列に多数基の装置を並べて生産量の向上を図る必要があり、工業規模での生産性向上に問題がある。また、ガス遠心法およびレーザー法の双方とも、分離対象物質がケイ素を含む気体の化合物であり、体積あたりのケイ素量が少ないので、大量生産のための反応容器や移送機器が大型になり、経済的な生産が難しいという問題点を有している。
特許公開2003−311129 特許公開2002−331227
本発明の目的は、量産可能で経済性のある、言い換えれば工業規模での生産性向上が見込めるケイ素の同位体分離方法を提供することである。
本発明の目的は、ガス遠心法あるいはレーザー法の問題点を回避または軽減することが可能なケイ素の同位体分離方法を提供することである。
本発明によれば、ケイ素の同位体を分離する方法であって、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムの水溶液を、I型の強塩基性イオン交換樹脂を充填した充填塔に流して、前記I型の強塩基性イオン交換樹脂に前記ケヘキサフルオロケイ酸ナトリウムを吸着させ、前記ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムと前記I型の強塩基性イオン交換樹脂の前端界面に重同位体のケイ素を濃縮させる工程と、チオシアン酸ナトリウムの水溶液を前記充填塔に流して、吸着された前記ケヘキサフルオロケイ酸ナトリウムを前記チオシアン酸ナトリウムに置換させ、前記ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムと前記チオシアン酸ナトリウムの後端界面に軽同位体のケイ素を濃縮させる工程とを含む方法が提供される。
本発明によれば、ケイ素の同位体分離対象のケイ素化合物として水溶性の化合物を利用することにより、ケイ素の同位体分離装置における反応容器(充填塔)や移送機器等を小型化できる。その結果、生産設備費や運転費を低減でき、経済的にケイ素の同位体分離をすることができる。
本発明によれば、イオン交換(置換)クロマトグラフィーを利用しているので、イオン交換樹脂を充填した充填塔の大型化や多数化により、工業的に大量のケイ素を安価で同位体分離をすることができる。
発明を実施するための最良の形態について、実施例を示しながら説明する。なお、以下の実施例では、特定の化合物(材料)を用いた場合について説明しているが、本発明はこれに限られるものではなく、他の化合物についても適用可能であり、また本発明の趣旨を逸脱しない範囲でいかなる変形も可能であることは当業者には明らかであろう。
最初に本発明で利用する装置について説明する。図1は、本発明のケイ素の同位体分離を実現する装置、言い換えればイオン交換(置換)クロマトグラフィーを実現するための装置100の構成を示す図である。ボンベ10には、ケイ素を含む同位体分離の対象とする化合物の水溶液を入れる。ボンベ12には、置換剤となる水溶液を入れる。ボンベ10または12を出た水溶液は、脱気装置14で脱気された後、ポンプ16によって充填塔(カラム)18に送られる。充填塔(カラム)18には、イオン交換樹脂を充填する。充填塔18内の溶液は、温度調節器(恒温槽)20によって所定の温度に維持される。充填塔18を出た溶液は圧力制御用のリストリクタ22を経て、フラクションコレクタ24で分離、回収される。
図1の装置100を用いて実験をおこなった。ボンベ10に、ケイ素を含む同位体分離の対象とする化合物としてヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(NaSiF)を純水に溶解した水溶液を入れた。ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムの濃度は21.4ミリモル/リットルとした。充填塔(カラム)18には、I型の強塩基性イオン交換樹脂(塩型:CL型)を充填し使用した。室町ケミカル株式会社製陰イオン交換樹脂ムロマックを適用した場合のイオン交換樹脂の交換容量は33.5ミリ当量であった。イオン樹脂の充填はスラリー充填法を用い、その充填率は57%であった。充填塔の内径は8.0mmとした。充填塔18内は、恒温槽20に温水を循環させることにより、27℃に維持した。
ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(NaSiF)の水溶液を毎分1.5ミリリットルの流速で充填塔18に供給して、ケイ素の同位体分離を行った。図2にその結果を示す。図2で、ラインAは30Si/28Siの比を示し、ラインBは29Si/28Sの比を示す。ラインCはSiの濃度である。図2から、充填塔(カラム)18からの流出量が700mlから780mlの範囲において、30Si/28Siの比が29Si/28Sの比よりも大きくなっており、ケイ素の重同位体(30Si)の濃縮がおこっていることが観測された。このケイ素の重同位体の濃縮は、使用したI型の強塩基性イオン交換樹脂(塩型:CL型)にヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(NaSiF)が吸着しその界面となる前端界面が形成され、この前端界面付近で生じている。なお、分離係数は1.000015であった。
図1の装置100を用いて、実施例1と同じ条件(構成)で、今度はボンベ12に置換剤となる、濃度43.0ミリモル/リットルのチオシアン酸ナトリウム(NaScN)の水溶液を入れて実験をおこなった。この水溶液を充填塔18に毎分1.5ミリリットルの流速で供給して、ケイ素の同位体分離を行った。図3にその結果を示す。図3で、ラインAは30Si/28Siの比を示し、ラインBは29Si/28Sの比を示す。ラインCはSiの濃度である。図3から、充填塔(カラム)18からの流出量が650mlから780mlの範囲において、30Si/28Siの比が29Si/28Sの比よりも小さくなっており、ケイ素の軽同位体(28Si)の濃縮がおこっていることが観測された。このケイ素の軽同位体の濃縮は、使用したチオシアン酸ナトリウム(NaScN)がヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(NaSiF)に置換し、その際に両者の界面となる後端界面が形成され、この後端界面付近で生じている。なお、分離係数は1.000015であった。
実施例1と2の結果から、ケイ素の同位体分離が、水溶液を用いたイオン交換(置換)クロマトグラフィーによって実現できることが明らかになった。なお、図1の装置100は一つの実施形態であり、さらに充填塔の大きさとその個数、ポンプの容量等の選択と最適化により、連続して大量のケイ素の同位体分離をおこなうことも、当業者にとっては自明なことである。
本発明の一実施例のケイ素の同位体分離を実現する装置の構成を示す図である。 本発明の一実施例のケイ素の同位体分離の結果(濃縮の様子)を示す図である。 本発明の一実施例のケイ素の同位体分離の結果(濃縮の様子)を示す図である。
符号の説明
10、12 ボンベ
14 脱気装置
16 ポンプ
18 充填塔(カラム)
20 温度調節器(恒温槽)
22 リストリクタ
24 フラクションコレクタ
100 同位体分離装置

Claims (4)

  1. ケイ素の同位体を分離する方法であって、
    ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムの水溶液を、I型の強塩基性イオン交換樹脂を充填した充填塔に流して、前記I型の強塩基性イオン交換樹脂に前記ケヘキサフルオロケイ酸ナトリウムを吸着させ、前記ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムと前記I型の強塩基性イオン交換樹脂の前端界面に重同位体のケイ素を濃縮させる工程と、
    チオシアン酸ナトリウムの水溶液を前記充填塔に流して、吸着された前記ケヘキサフルオロケイ酸ナトリウムを前記チオシアン酸ナトリウムに置換させ、前記ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムと前記チオシアン酸ナトリウムの後端界面に軽同位体のケイ素を濃縮させる工程と、を含む方法。
  2. 前記2つの工程の各々において、前記充填塔内の溶液は所定の温度に維持されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記I型の強塩基性イオン交換樹脂は塩型(CL型)である、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 前記重同位体のケイ素は30Siを含み、前記軽同位体のケイ素は28Siを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2899176A1 (en) 2014-01-24 2015-07-29 Ibiden Co., Ltd Ceramic structure

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