JP2010022143A - パンタグラフ用すり板集電材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】送電用架線と接触する摺動面を備えた基材を有し、この基材が炭素繊維強化炭素複合材料からなるパンタグラフ用すり板集電材料であって、上記炭素繊維強化炭素複合材料は、中央部に配置された主摺動部2とこの主摺動部2の周縁に配置された補助摺動部3とから成り、且つ、上記主摺動部2における炭素繊維は、上記摺動面に対して全て垂直方向に延在する一方、上記補助摺動部3における炭素繊維には、上記摺動面に対して非垂直方向に延在するものが含まれていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は上記事情に鑑み、耐摩耗性を飛躍的に向上させることができるパンタグラフ用すり板集電材料を提供することを目的とする。
尚、炭素繊維が摺動面に対して全て垂直方向に延在しているとは、炭素繊維が摺動面に対して完全に90°となっている場合のみならず、炭素繊維が摺動面に対して若干傾いている場合を含むものである(即ち、全ての炭素繊維が摺動面に対して、実質的に垂直方向に延在していれば足るものである)。
このように炭素繊維に銅が含浸されていれば、架線との抵抗を小さくすることができるので、架線やすり板の摩耗が少なくなり、しかも導電性が向上するからである。
炭素繊維が、上記摺動面に対して全て平行方向に延在している連続繊維である場合、炭素繊維の延在方向の強度が非常に高くなるので、上記効果が一層発揮される。また、このようなことを考慮すれば、炭素繊維が二方向に配列したクロス繊維から成る場合には、どちらか一方の方向に配列された炭素繊維が摺動面に対して平行方向に延在していることが望ましい。
補助摺動部より主摺動部の方が耐摩耗性に優れているため、補助摺動部の面積比率が50%を超えると、耐摩耗性が低下することがある一方、主摺動部より補助摺動部の方が機械的強度が大きいので、補助摺動部の面積比率が9%未満になると、機械的強度が低下するからである。
このように炭素繊維に銅が含浸されていれば、架線との抵抗を小さくすることができるので、架線やすり板の摩耗が少なくなり、しかも導電性が向上するからである。
図1は本発明に係るパンタグラフ用すり板集電材料の一例を示す斜視図(図1においては炭素繊維の延在方向を模式的に表している)、図2はその平面図、図3は正面図、図4は側面図であり、また、図5は図2のA−A線矢視断面図、図6は図2のB−B線矢視断面図である。
ここで、上記主摺動部2と補助摺動部3とは炭素繊維強化炭素複合材料から成る。主摺動部2の作製方法としては、まず、炭素繊維を一方向に集束させなるプリプレグシートを作製し、次に、樹脂にフィラーとしての炭素粉を配合、混合したものを作製する。
次いで、前記プリプレグシート中の炭素繊維がすべて同一方向となるようにプリプレグシートを積層させ、プリプレグシートの層間に前記フィラーが含まれたフェノール樹脂を塗付した。続いて、プレス機(神藤金属工業所製WFA−50)を用いて、プリプレグシート中の炭素繊維がプレス機の台座に対して水平となるようにプリプレグシートの積層体を設置し、上部から下部方向に向かって、面圧200kg/cm2の荷重をかけ、昇温温度約10℃/minで200℃硬化することにより、炭素繊維が全て同一方向となる炭素繊維積層体を作製した。この時、得られた炭素繊維積層体の大きさは、266×36×45mmであった。さらに、上記炭素繊維積層体を昇温温度30℃/h、不活性ガス雰囲気中1000℃で焼成し、結合材である前記樹脂成分を炭素化させた後、HIP法により純銅を含浸させ、全ての炭素繊維が摺動面に対して垂直方向に延在するように、266mm×36mm×20mm(摺動部は266×36mm)の形状に炭素繊維積層体を加工し主摺動部2を得た。次に、主摺動部2の外周部にフェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製J-325)を予め塗布した炭素繊維(一方向に配列した連続繊維)を、ワインディング等の装置を用いて直接巻きつけ、昇温温度30℃/h、不活性ガス雰囲気中1000℃で焼成し、主摺動部2と補助摺動部3から構成される長さL1が270mm、幅L2が40mm、高さL3が20mm、補助摺動部3の幅L4が2mmとなるパンタグラフ用すり板集電材料を作製した。尚、補助摺動部3における炭素繊維は摺動面に対して全て平行方向に延在されている。
但し、補助摺動部3の幅L4が余り大きくなると、主摺動部2の面積が小さくなり過ぎて、すり板集電材料の耐摩耗性が低下する。したがって、このような不都合を回避するには、補助摺動部3の幅L4は5mm以下であることが望ましく、3mm以下であることが特に望ましい。
(1)主摺動部2の外周部に樹脂を塗布した炭素繊維(一方向に配列した連続繊維又は二方向に配列したクロス繊維)を、ワインディング等の装置を用いて、もしくは手動で直接巻きつけ、昇温温度30℃/h、不活性ガス雰囲気中1000℃で焼成し、主摺動部2と接着する方法。
(2)ダミーの被巻き付け体(例えば、黒鉛治具)に樹脂を塗布した炭素繊維を巻き付けた後、熱処理して得られた中空状の炭素繊維強化炭素複合材料(補助摺動部3)を主摺動部2にはめ込み熱処理して接着する方法。
(3)板状の炭素繊維板に樹脂を塗布し、これが主摺動部2を囲うように配置した後、熱処理して接着する方法。
〔実験1〕
先ず、炭素繊維を一方向に集束させてなるプリプレグシートを作製し、更に、フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製J-325)に炭素粉(東洋炭素株式会社製)を混合(混合比率は、炭素粉:フェノール樹脂=1:9)を混合した。次に、プリプレグシート間に樹脂を塗付しつつ、炭素繊維が同一方向となるようにプリプレグシートを積層させてプリプレグシート積層体を作製した。続いて、プレス機(神藤金属工業所製WFA−50)を用いて、プリプレグシート中の炭素繊維がプレス機の台座に対して水平となるようにプリプレグシート積層体を設置し、上部から下部方向に向かって、面圧200kg/cm2の荷重をかけ、昇温温度約10℃/minで200℃硬化した後、昇温温度30℃/h、不活性ガス雰囲気中1000℃で焼成して、炭素繊維積層体を作製した。その後、全ての炭素繊維が摺動面に対して垂直方向に延在するように(以下、このような炭素繊維を、炭素繊維(⊥)と記述することがある)炭素繊維積層体を図7に示す試料10の幅L11を20mm、長さL12を32mm、高さL13を10mm(摺動面10aは20mm×32mm)の形状に加工し、HIP法により銅を含浸することにより炭素繊維強化炭素複合材料を作製した。
このようにして作製した試料を、以下、試料A1と称する。
上記試料A1と同様にして作製した炭素繊維積層体を、全ての炭素繊維を摺動面に対して平行方向に延在するように加工した(以下、このような炭素繊維を、炭素繊維(//)と記述することがある)他は、上記試料A1と同様にして試料を作製した。
このようにして作製した試料を、以下、試料A2と称する。
プリプレグシートの積層時に、各プリプレグシートの炭素繊維が二方向となるように0°と90°にプリプレグシートを交互積層させ(即ち、隣接するププリプレグシートの炭素繊維が直交するようにプリプレグシートを交互積層させ)て、半数の炭素繊維を摺動面に対して平行方向に延在させる一方、残りの炭素繊維を摺動面に対して垂直方向に延在するように加工した(以下、このような炭素繊維を、炭素繊維(// ⊥)と記述することがある)他は、上記試料A1と同様にして試料を作製した。
このようにして作製した試料を、以下、試料A3と称する。
試料として従来用いられている東洋炭素株式会社製PC−78Aを用いた。このPC−78Aは、粒径の小さいコークス系原料とピッチ系バインダとを使用し、成形、焼成したカーボン焼成体に、HIP法により高温高圧下溶融した銅をカーボンの気孔に含浸することにより得られたすり板専用材であり、炭素繊維は含まれていないものである。
このようにして作製した試料を、以下、試料A4と称する。
上記試料A1〜A4の機械的な摺動特性を把握するため、粗仕上げ用サンディングベルト(荒れた架線を模擬的に表現したものであって、粒度AA−40のものを用いている)を、ベルトサンダ試験機(日立工機株式会社製BG−100)に取付け、サンディングベルトに各試料を押付けて摺動させ、各試料の摩耗状況を観察したので、その結果を図8に示す。具体的な実験条件は、試験片を30秒間摺動させた後に試験機を停止し、試験片の厚みを測定する作業を繰り返し10回行い、合計5分間摺動させた場合での試験片の摩耗状況を観察した。尚、試料数は各2個である。
図8から明らかなように、摩耗量は、炭素繊維(⊥)を備えた試料A1が最も少なく、その他の試料A2〜A4については、炭素繊維(// ⊥)を備えた試料A3、従来用いられているPC−78Aを用いた試料A4、炭素繊維(//)を備えた試料A2の順に摩耗量が増加していることが認められる。
また、炭素繊維を摺動面に対して全て垂直方向に延在させた試料A1の5分間摺動後における摩耗量と、従来用いられているPC−78Aを用いた試料A4の5分間摺動後における摩耗量とを比較すると、前者は後者に対して摩耗量が48%低減していることがわかる。
〔実験2〕
図7において、幅L11を10mm、長さL12を60mm、高さL13を10mm(摺動面10aは10mm×60mm)とした他は、炭素繊維(⊥)を備えた上記試料A1と同様にして試料を作製した。
このようにして作製した試料を、以下、試料B1と称する。
図7において、幅L11を10mm、長さL12を60mm、高さL13を10mm(摺動面10aは10mm×60mm)とした他は、炭素繊維(//)を備えた上記試料A2と同様にして試料を作製した。
このようにして作製した試料を、以下、試料B2と称する。
上記試料B1、B2における電気的な集電特性を把握するため、外径310mm、内径200mm、厚さ2mmの銅円盤を取付けたすり板摩耗試験機(架線を模擬的に表現したものであって、横山製作所製)を用いて実験を行ったので、その結果を図9に示す。具体的には、試料B1、B2を銅円盤に約1kgfで押付けた状態で、銅円盤を50〜1000rpmの回転速度で摺動させ、通電させずに摺動した場合と、50Vの電圧、20Aの電流を通電させながら摺動した場合とについて摺動集電試験を実施した。そして、通電させずに摺動した場合の離線率を0%とし、通電させて摺動した場合の離線率を5%、10%、30%に変化させた。尚、離線率(%)とは、各試料と銅円盤とが離れた割合を示すものであり、離線率が高いほどアークが多く発生し、各試料の摩耗も増加すると考えた。また、試料数は各2個である。
図9から明らかなように、離線率が各々0%、5%、10%、30%の場合に、炭素繊維(⊥)を備えた試料B1では、摩耗率はそれぞれ2cm3/万km、10cm3/万km、17cm3/万km、63cm3/万kmであるのに対して、炭素繊維(//)を備えた試料B2では、摩耗率はそれぞれ3cm3/万km、17cm3/万km、27cm3/万km、101cm3/万kmであって、通電させずに摺動した場合、及び通電させながら摺動した場合とも、炭素繊維(⊥)を備えた試料B1の方が炭素繊維(//)を備えた試料B2よりも摩耗率が小さいことが認められた。
(試料1)
先ず、上記実験1の試料1と同様にして作製した炭素繊維強化炭素複合材料(主摺動部であって、大きさは実験1の試料1と異なる)の周縁に、ワインディング装置を用いて、炭素繊維(東レ株式会社製、T−700)にフェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、J−325)を塗布したものを巻きつけた。次に、昇温温度約10℃/minで200℃硬化を行なった後、昇温温度30℃/h、不活性ガス雰囲気中1000℃で焼成を行ない、更に、当該焼成物を切断することにより、図12に示すように、主摺動部2の周縁に補助摺動部3が設けられた実験用のパンタグラフ用すり板集電材料を作製した。尚、上記主摺動部2において、炭素繊維強化炭素複合材料の炭素繊維の延在方向は摺動面に対して全て垂直方向となっており、上記補助摺動部3において、炭素繊維強化炭素複合材料の炭素繊維の延在方向は摺動面に対して全て平行方向となっている。
このようにして作製したパンタグラフ用すり板集電材料を、以下、試料C1と称する。
補助摺動部3において、内幅L22を8mm、内長さL26を58mmとし、且つ、主摺動部2において、幅L27を8mm、長さL29を58mmとした。このように規制することにより、補助摺動部3の肉厚L23を1mmとした。上記構造とした以外は、上記試料1と同様にして実験用のパンタグラフ用すり板集電材料を作製した。
このようにして作製したパンタグラフ用すり板集電材料を、以下、試料C2と称する。
補助摺動部3において、内幅L22を7mm、内長さL26を57mmとし、且つ、主摺動部2において、幅L27を7mm、長さL29を57mmとした。このように規制することにより、補助摺動部3の肉厚L23を1.5mmとした。上記構造とした以外は、上記試料1と同様にして実験用のパンタグラフ用すり板集電材料を作製した。
このようにして作製したパンタグラフ用すり板集電材料を、以下、試料C3と称する。
補助摺動部3において、内幅L22を6mm、内長さL26を56mmとし、且つ、主摺動部2において、幅L27を6mm、長さL29を56mmとした。このように規制することにより、補助摺動部3の肉厚L23を2mmとした。上記構造とした以外は、上記試料1と同様にして実験用のパンタグラフ用すり板集電材料を作製した。
このようにして作製したパンタグラフ用すり板集電材料を、以下、試料C4と称する。
上記実験2の試料1と同様にして実験用のパンタグラフ用すり板集電材料を作製した。
このようにして作製したパンタグラフ用すり板集電材料を、以下、試料C5と称する。
試料C1〜C5の曲げ強度を把握するため、引張圧縮試験機(株式会社今田製作所製SDW500S−SH)を用い、曲げ強度を測定したので、その結果を図13に示す。なお、実験は、支点間距離を40mmとし、試験片中央に毎秒約3kgfの均一速度で直行に荷重を加えて、試験片が破壊した最大荷重を測定し、この最大荷重を曲げ強度とした。また、試料数は各2個である。
図13から明らかなように、補助摺動部を設けない試料C5では、曲げ強度が12MPaであって十分な曲げ強度が得られないのに対して、補助摺動部を設けた試料C1〜C4では、曲げ強度が100MPa以上であって十分な曲げ強度が得られることが認められる。したがって、主摺動部の周縁に補助摺動部を設けることにより、優れた摺動集電特性を維持しつつ、機械的強度が向上することがわかる。
以上のことから、補助摺動部の面積比率は9%以上50%未満であることが好ましい。
(試料1〜5)
試料1〜5としては、上記実験3で示した試料C1〜C5を用いた。
上記試料C1〜C5における耐衝撃性を調べるため、シャルピー衝撃試験機(前川試験機製作所株式会社製)を用い、長手方向の側面略中央部にハンマーを衝突させる(図12のC方向から衝突させる)ことにより、50Jの衝撃を加えてシャルピー衝撃値を測定したので、その結果を表1に示す。尚、試料数は各2個である。
表1から明らかなように、主摺動部の周縁に補助摺動部が設けられていない試料C5のシャルピー衝撃値は2.7kJ/m2であるのに対して、主摺動部の周縁に補助摺動部が設けられた試料C1〜C4のシャルピー衝撃値は、各々9.3kJ/m2、18.5kJ/m2、32.9kJ/m2、31.3kJ/m2、であり、主摺動部の周縁に補助摺動部が設けられた試料C1〜C4は主摺動部の周縁に補助摺動部が設けられていない試料C5より、シャルピー衝撃値が約3.4〜12.2倍大きくなっていることが認められる。このことから、主摺動部の周縁に補助摺動部を設けるのが好ましいことがわかる。尚、このような実験結果となった理由は、主摺動部の周縁に補助摺動部が設けられた試料C1〜C4では、シャルピー衝撃値の比較的低い主摺動部の内部で衝撃が吸収され、補助摺動部により試験片形状が保持されることにより、全体として高い衝撃値になったものと推測される。
2 主摺動部
3 補助摺動部
5 さや
Claims (7)
- 送電用架線と接触する摺動面を備えた基材を有し、この基材が炭素繊維強化炭素複合材料からなるパンタグラフ用すり板集電材料であって、
上記炭素繊維強化炭素複合材料における炭素繊維は、上記摺動面に対して全て垂直方向に延在していることを特徴とするパンタグラフ用すり板集電材料。 - 上記炭素繊維には銅が含浸されている、請求項1に記載のパンタグラフ用すり板集電材料。
- 送電用架線と接触する摺動面を備えた基材を有し、この基材が炭素繊維強化炭素複合材料からなるパンタグラフ用すり板集電材料であって、
上記炭素繊維強化炭素複合材料は、中央部に配置された主摺動部とこの主摺動部の周縁に配置された補助摺動部とから成り、且つ、上記主摺動部における炭素繊維は、上記摺動面に対して全て垂直方向に延在する一方、上記補助摺動部における炭素繊維には、上記摺動面に対して非垂直方向に延在するものが含まれていることを特徴とするパンタグラフ用すり板集電材料。 - 上記補助摺動部における炭素繊維が、上記摺動面に対して全て平行方向に延在している連続繊維体、二方向に交互積層させてなるクロス繊維体、又は、三次元的に配向させてなるランダム繊維体から成る、請求項3記載のパンタグラフ用すり板集電材料。
- 上記摺動面の全面積に対する上記補助摺動部の面積の比率が9%以上50%未満である、請求項3又は4に記載のパンタグラフ用すり板集電材料。
- 上記主摺動部の炭素繊維には銅が含浸されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載のパンタグラフ用すり板集電材料。
- 上記補助摺動部の炭素繊維には銅が含浸されている、請求項6に記載のパンタグラフ用すり板集電材料。
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